第4章: ひまりのスープ試食…なんで、こんなに美味しいだ二番出汁は
第4章: ひまりのスープ試食…なんで、こんなに美味しいだ二番出汁は
浴室から出てきたひまりは、まだ頬をほんのりと朱に染めたまま、翼の差し出したバスタオルを胸の前でぎゅっと握りしめていた。濡れた髪の先からぽたぽたと水滴が落ち、フローリングの床に小さな染みを作っていく。翼はそんなひまりの姿を直視できず、わざとらしく台所の方向へと身体を向けた。アパートの小さなキッチンには、すでに二つの大鍋が並んでいる。片方には一番出汁――下着姿のひまりが浸かった湯。もう片方には二番出汁――全裸で、そして彼女が自らの秘部を弄った後の湯が、それぞれ黄金色に近い透明感をたたえて静かに湯気を立てていた。
「……おじさん、あたし、着替えてくるね」
ひまりの声はまだ少し掠れていて、そのかすかな震えが翼の耳の奥にこびりつく。彼は鍋を見つめたまま、大げさなくらいに明るく返事をした。
「ああ、ゆっくりでいいぞ。こっちは仕込みを始めてるから」
実際にはまだ何も始めていなかった。一番出汁と二番出汁、それぞれをどうやってラーメンのスープに仕立てるか。頭の中では何度もシミュレーションしていたが、いざその液体を前にすると、翼の手は微かに震えていた。これは単なる食材ではない。再従妹の、まだ十五歳の少女の身体を溶かし込んだ汁なのだ。しかも片方は、彼女が性的な快感に溺れた痕跡までもが混ざっているかもしれない。鍋の縁に手をかけ、そっと湯気を嗅ぐ。一番出汁からは、ほんのりと石鹸の残り香と、かすかに甘い汗のような匂いが立ちのぼった。それは清潔な少女の肌を思わせる、嫌悪感とは無縁の香りだった。
だが、二番出汁に鼻を近づけた瞬間、翼の眉根がぴくりと動いた。一番出汁よりも明らかに複雑で、むせ返るような生々しさが混じっている。汗と湯の混ざった匂いの奥に、微かに酸味を帯びた、鼻腔の奥をくすぐるような動物臭――それはまさしく、女の興奮の匂いだった。翼はとっさに顔を離し、ごくりと唾を飲み込む。自分の心臓が、ラーメン屋の寸胴鍋よりも激しく沸騰しているのを感じた。
「……これが、ひまりの」
言葉は途中で途切れ、翼はエプロンのポケットから取り出したマスクを口元に当てた。衛生面というよりは、この背徳的な香りにこれ以上当てられまいとする自己防衛だった。彼は気を取り直し、二つの小鍋にそれぞれ一番出汁と二番出汁を等量ずつ移し替える。冷蔵庫からは、昨夜のうちに仕込んでおいた鶏ガラと野菜のベーススープを取り出した。このベーススープは、翼が脱サラしてラーメン屋を開く前から何年も研究を重ねてきた、いわば彼の人生の集大成とも言える味だ。それに、ひまりの入浴後の湯をブレンドする。その比率を間違えれば、すべてが台無しになる。いや、そもそもこんな行為が世間に知られたら、台無しどころの騒ぎではない。店は潰れ、彼は社会的に抹殺され、ひまりの人生にも消えない傷を残すだろう。
「……それでも、俺は」
翼は小さく呟き、計量カップを手に取った。ベーススープ三百ミリリットルに対し、一番出汁を五十ミリリットル。まずはこの比率で試してみる。透明な湯が濁ったスープに溶け込むと、表面に浮いていた鶏油がゆっくりと広がり、光の輪を作った。菜箸でそっとかき混ぜると、醤油ダレの香ばしさと出汁の甘やかな湯気が一緒になって立ちのぼる。その香りだけで、舌の奥がじんわりと唾液を分泌し始めるのを翼は自覚した。
二番出汁も、まったく同じ比率で混ぜ合わせる。こちらは鍋に注いだ瞬間から、一番出汁とは明らかに異なる粘度を感じさせた。とろり、としているのだ。表面張力が強いのか、スープの縁がほんのわずかに盛り上がる。菜箸で混ぜると、醤油ダレの香りを突き破って、むわっとした動物性の芳香がキッチンに充満した。それは決して不快な臭いではなく、むしろ食欲を狂暴に刺激する、原始的な匂いだった。翼はごくりと喉を鳴らし、自分の股間がじわじわと熱を持ち始めているのに気づいて、エプロンの下で膝を擦り合わせた。
「お待たせ、おじさん」
背後から声がして、翼は飛び上がりそうになった。振り返ると、ひまりが先ほどとは違う服に着替えて立っている。白い半袖のブラウスに、淡いピンクのショートパンツ。濡れた髪は一本の三つ編みにまとめられ、肩のあたりで小さく跳ねていた。彼女の太ももはまだ湯上がりのせいでほんのりと赤みを帯び、むっちりとした感触を想像させる。翼は慌てて視線を鍋に戻した。
「あ、ああ。こっちはちょうど、味見の準備ができたところだ。ひまり、悪いけど、ちょっと味を見てくれないか? 一番出汁と二番出汁、どっちもラーメンに仕立てた。まずはこっちの一番出汁のほうから」
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