第1章: 夏の終わり、染みつく視線

第1章: 夏の終わり、染みつく視線
夏休みの朝、優弥は佳奈の家のチャイムを押すのがいつもの日課だった。インターホン越しに「はーい」と跳ねる声が聞こえ、すぐに玄関が開く。佳奈は白い半袖のワンピースをひらりと揺らし、麦わら帽子をかぶって飛び出してきた。その手には小さなビニールバッグ。中にはタオルと水着が入っている。学校のプール開放日は、今年の夏も二人だけの小さな冒険だった。優弥は紺色のランドセルの代わりに肩掛けのスポーツバッグを提げ、佳奈の横に並ぶ。通りに蝉の声が降り注ぎ、アスファルトの照り返しが足首を焦がした。
「今日はけのびの競争しよ。ゆうや、絶対まけないからね」
佳奈は大きな茶色の瞳をきらめかせ、優弥の手を自然に握る。その手のひらは少し汗ばんでいて、さらさらと乾いた温もりが指の隙間に絡んだ。優弥は胸の奥がほわりと温かくなるのを感じ、指をしっかりと絡め返す。佳奈のツインテールが小さく揺れ、シャンプーの甘い香りが風に流れてきた。自分たちは特別なんだ——そう思うだけで、視界全体がやわらかな陽射しで満たされる気がした。だが、その日は何かが違っていた。プールの塩素の匂いが近づくにつれて、胸の鼓動がほんの少し早くなるのは、走ってきたからだけではない気がした。
更衣室で水着に着替えると、佳奈はもうプールサイドで待っていた。紺色のスクール水着が細い肩からぴたりと貼りつき、まだ幼い腰のくびれから太ももへと流れる線が、日の光に照らされている。濡れていないのに、布地はすでに肌に吸いつくようで、胸のあたりはぺったんことしているのに、二つの小さな膨らみが布を押し上げていた。優弥はふと目を留めてしまい、慌てて視線を水面に落とす。心の中で「なにをみてるんだ」と自分を責める声がするのに、再び目を上げたときには、もう佳奈の鎖骨から肩への白い線をなぞっていた。
佳奈は「つめたい!」と歓声をあげ、バシャバシャと水に入る。優弥も後を追い、水飛沫が太陽にキラキラと散った。泳ぎ疲れて浅いプールサイドに腰掛けると、佳奈がぴたりと隣に座る。濡れた水着はさらに密着し、肩のストラップが少しずれていた。鎖骨の下、水着の縁から覗く肌がプールの水でしっとりと輝き、まだ小さな乳首の膨らみが布地の紺色を尖らせている。優弥の胸は早鐘を打ち、指先が震えた。佳奈はそんな優弥の視線に気づかず、足をバタバタさせて笑っている。
「ゆうや、なにぼーっとしてるの? あ、もしかしてわたしのかみ、変?」
「ちがう……なんでもない」
そう答えながらも、目は佳奈の股間へと吸い寄せられていた。濡れた水着が割れ目にぴったりと食い込み、ふっくらとした盛り上がりがくっきりと浮かんでいる。まるで熟した桃の割れ目のように、そこだけ布地が濃い色に変わり、奥に何かが隠れているのを主張していた。優弥の下腹部がじんわりと熱くなり、水の中で縮こまる自分のペニスが、なぜか少しだけ硬さを帯びた気がした。戸惑いと恥ずかしさが込み上げ、水をかき混ぜて立ち上がる。
「もう一回、泳ごう!」
声がうわずっていたけれど、佳奈は元気よく「うん!」と応え、再び水の中へ消えた。プールの水は冷たく、それでも股間の熱はなかなか去らなかった。
夏休みが終わる直前、町内会の夏祭りが開かれた。夕闇がせまる境内には提灯が灯り、焼きそばのソースの焦げる匂いと金魚すくいの水の匂いが混ざり合う。優弥は甚平姿で、佳奈を探して人混みを歩いた。やがて、子供神輿の列がわっしょいという掛け声とともに近づいてくる。神輿の担ぎ手は地元の小学生たちで、先頭には佳奈がいた。
佳奈は白い半被に赤いふんどしという出で立ちで、額に汗を光らせながら神輿の棒を肩に担いでいる。半被の襟元からは細い鎖骨が覗き、ふんどしの布は太ももの付け根でぎゅっとくい込んでいた。動くたびに布がずれ、白い肌の奥まった部分がちらりと露わになる。優弥の視線がそこに縫い付けられた瞬間、心臓がぐっと掴まれたように跳ねた。ふんどしの端から、ぷっくりと膨らんだ大陰唇の肉がはみ出していたのだ。それは桃色がかった白さで、提灯の赤い光に照らされ、汗でしっとりと濡れていた。佳奈はそれを気にするそぶりもなく、「わっしょい!」と声を張り上げ、太ももを高く上げて進んでいく。そのたびにふんどしがさらに食い込み、割れ目のくっきりとした線が布の上からも見てとれた。
優弥の股間が、痛いほどに熱を持った。ペニスがズボンの布を押し上げ、じんじんと脈打つ感覚に、頭がくらくらする。これはなんなんだ——そう自問しても、答えはわからず、ただ目が離せなかった。佳奈の汗ばんだ肌、はみ出た肉の柔らかそうな膨らみ、それらが頭に焼きついて、夜になっても布団の中で甦った。
それでも、普段の佳奈は変わらなかった。学校が始まると、紺色のジャンパースカートに白いブラウス姿で、毎朝門の前で待っていた。優弥が近づくと、ぱっと笑顔を咲かせて手を差し出す。
「おはよう、ゆうや! きのうのしゅくだい、むずかしくなかった?」
「うん……さんすうがちょっと」
手を握ると、夏の日と同じ温もりが返ってくる。放課後も、校庭の桜の木の下で待ち合わせ、手を繋いで帰るのが変わらぬ習慣だった。夕陽が長く伸びる歩道を、二人の影が並んで揺れる。佳奈はその日の出来事を弾んだ声で話し、優弥は相槌を打ちながら、手の感触に小さな幸せを噛みしめる。この手は自分だけのものだ——そう信じていた。夏のプールで感じた熱も、祭りで覚えた疼きも、佳奈への恋心が育っていく証だと思い込もうとしていた。

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