第3章: 全裸の二番出汁――浴槽で初めての絶頂、愛液が混ざる秘密のスープ(続き 4/4)
その瞬間、翼の手がぴたりと止まった。
「……なんでだ?」
彼の口のなかでは、今、かつてない複雑なエクスタシーが渦巻いている。一番出汁とはあきらかに異なる、深くてねっとりした密度がこの二番出汁にはあった。温度も、煮込み時間も、基本的な素材も同じはずだ。違うのは、ひまりの入浴時の状態だけ。
「おかしい……一番出汁より、こっちのほうが段違いにうまい。なんでこんな味が出るんだ?」
翼はレンゲを置き、じっと丼を見つめた。職人としての探求心が、彼の脳裏をかき乱す。
「ひまり、一番出汁のときと二番出汁のとき、なにか……その、ちがうことをしたのか?」
問いかけに、ひまりの肩がびくんと跳ねた。テーブルの下で、ぎゅっと両手を握りしめてうつむく。耳が真っ赤になっていて、膝の上においたホットパンツの腿のあたりを、もじもじとこすり合わせている。
「ち、ちがうことって……な、なにも……」
声がうわずっている。翼はその反応に、何かを察した。
(この子は、入浴中に何かをしたんだ……)
事実、ひまりの脳裏には、つい先ほどの痴態がありありと蘇っていた。湯のなかで指を這わせ、クリトリスを弄り、絶頂して、愛液をたっぷりと湯に溶かしたあの行為。一番出汁のときはただ浸かっていただけ。でも二番出汁のときは、あんなに淫らなことを——。
(それが、味に出たっていうの……?)
ひまりの羞恥は極限に達し、いまにも泣き出しそうなほど顔を赤らめている。
翼はそれ以上、追及しなかった。いや、できなかった。ひまりのその様子を見れば、何が起きたのか、おぼろげながら理解できてしまったからだ。そして、その理解が、翼の下半身を熱くさせていた。
エプロンの下で、翼の男性自身はいつのまにか固くそそり立ち、痛いほどにズボンを押し上げている。頭では罪悪感にかられながら、体はまぎれもなく、このスープの秘密に昂奮していた。
(この味は……ひまりの、その……)
自らの内で言葉にするのもはばかられる淫らな想像が、翼の理性をじりじりと焼く。しかし、それでも彼は職人だった。この味を再現できるかどうか、それが店の命運を分ける。
「……いいんだ、なにも言わなくて」
翼の声は掠れていた。
「とにかく、これでいける。俺は一番出汁のメニューはやめる。この二番出汁だけで勝負する」
「え……?」
ひまりが顔をあげる。翼の瞳には、迷いを振り切った決意の色が浮かんでいた。
「理由はわからないけど、二番出汁のほうが圧倒的にうまい。理屈じゃないんだ、これは。お前の……その、協力があったからこそ、できた味だ。俺はこれを信じる」
ひまりはただ、ほっとしたような、それでいてどこか物足りないような、複雑なため息を小さくもらすだけだった。
「……うん。おじさんがそれでいいなら、私も……うれしい」
こうして、一番出汁と二番出汁を並べての試食は、誰の目にも明らかな差異をふたりに突きつけた。片や、翼の長年の経験が生んだ確かな味。片や、十五の少女の秘めやかな体液が溶け込んだ、禁忌の味。そして勝者は、後者だった。
翼屋の運命を大きく、甘美で背徳的な方向へとねじまげるスープが、いま、産声をあげたのである。
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