第1章: 無表情なモデルと、蠢き始める欲望

# 第1章:無表情なモデルと、蠢き始める欲望
放課後の教室。
窓から差し込む斜陽が、白瀬凛の長い黒髪に鈍い光沢を乗せていた。
整頓されたロッカーの前で、彼女は鞄のチャックを閉めようとしていた。
その手が、ふと止まる。
足元に、誰かの影が落ちたからだ。
振り向くと、同じクラスの三谷茂樹が立っていた。
長い前髪が眼鏡のレンズにかかり、表情が見えにくい。
彼はうつむき加減で、指がもじもじと動いていた。
「あの……白瀬さん」
三谷の声は、かすかに震えていた。
凛はただ、彼を見つめた。
返事が必要かどうか、瞬時に判断する。
必要だと学んでいたので、短く応じる。
「はい」
「実は……写真部で、モデルをしてほしいんです」
三谷は言葉を続け、両手でカメラを抱える仕草をした。
「白瀬さんの……無機質な美しさが、すごく芸術的だと思うんです。僕たちの卒業制作に、ぜひ……」
凛は考える。
モデルとは、撮影される対象。
カメラの前で静止していればいい。
難しい行為ではない。
「わかりました」
彼女は即答した。
表情は、微動だにしない。
三谷の顔が、ほんの少し緩んだ。
安堵と、それとは別の、熱を含んだ何かが、瞳の奥で混ざり合う。
「ほ、本当ですか? じゃあ……今から部室に来てもらっても?」
「はい」
凛は鞄を持ち直し、三谷の後について廊下を歩き始めた。
頭の中には、具体的なイメージはない。
指示に従い、静止するだけだ。
それだけのこと。
***
写真部の部室は、校舎の最奥にあった。
ドアを開けると、埃っぽい空気が、現像液の薬品臭と混ざり合って鼻を突いた。
部屋には、すでに五人ほどの男子部員がいる。
三脚に据えられたカメラや、照明機材を準備する音が、ガチャガチャと響く。
凛が入ってくる。
部屋内の空気が、一瞬で止まる。
「おお……マジで連れてきたな、部長」
「これが噂の白瀬……」
「やべえ……写真で見るより、もっと……」
ささやき声が、飛び交う。
それらの言葉を、凛は意味として受け止める。
しかし、その声に込められた欲望や興奮のニュアンスは、彼女には読み取れない。
ただ、音として認識するだけだ。
彼女は部屋の中央に指定された場所に立ち、三谷の方を見た。
「どこに立ちますか」
「あ、ああ……そこに立っていてください。まずは、制服姿で何枚か……」
シャッター音が、コッ、コッと乾いた音で響き始める。
凛はカメラのレンズを見つめるよう指示され、その通りにする。
切れ長の瞳は、感情のないガラス玉のように、ただレンズを透過して向こう側を見つめている。
部員たちの息遣いが、次第に荒くなっていく。
凛の鋭い聴覚には、それがはっきりとわかる。
吐息が熱を帯び、喉を鳴らす音。
足をすり合わせる、そわそわとした物音。
なぜ、彼らは息を乱すのだろう。
寒くもないのに。
十分ほど経った頃、三谷がカメラから顔を上げた。
彼の頬が、わずかに赤らんでいる。耳まで朱に染まっていた。
「……その、白瀬さん。せっかくだから……もっと芸術的な、肌の露出があるほうが、作品として深みが出ると思うんですけど……」
三谷の言葉は、疑問形ですらなかった。
それでも凛は、それがリクエストであると理解した。
「肌を見せればいいのですか」
「え、えっと……そうですね。できれば……あの……」
三谷は言葉に詰まった。
彼の横にいた別の部員が、ふっと笑い声を漏らす。
「部長、そんな回りくどいこと言わなくていいじゃん。はっきり『脱いで』って言えよ」
その声は、低く、欲望に濁っていた。
凛はその言葉を聞き、理解した。
脱ぐこと。
それは行為として、単純だ。
「わかりました」
彼女はそう言うと、学ランブレザーのボタンを外し始めた。
指先の動きに、迷いはない。
一つ、また一つとボタンが外れ、ブレザーが開く。
その下の白いブラウスが現れた。
部室の中が、まるで真空にされたような静寂に包まれた。
音が、一切消える。
ただ、部員たちの息づかいだけが、荒く、熱く、室内に充満する。
凛はブレザーを脱ぎ、近くの椅子に丁寧にかける。
次にブラウスの裾をスカートから引き抜き、上から順番にボタンを外していく。
白い布地が左右に分かれる。
その下から、真っ白な肌と、学校指定の地味な白いブラが現れた。
「うわっ……」
誰かが、息をのむ。
別の誰かが、ゴクリと唾を飲み込む音がする。
カメラを構える手が、微かに震えているのが見える。
凛はブラウスも脱ぎ、ブラのフックに手を伸ばした。
パチン。
小さな音がして、ブラが前に外れる。
彼女はそれを腕から抜き取り、ブレザーの上に重ねた。
胸が露わになった。
まだ膨らみ始めて間もない、少女らしい小さな双丘。
先端のピンク色の乳首は、部屋の冷たい空気に触れ、少しだけ硬くなっている。
それらが、無防備に晒される。
「ちっ……マジか……」
「すげえ……きれい……」
ささやき声が、興奮に震える。
部員たちの視線が、一斉にその胸に集中する。
凛はそれを気にする様子もなく、次にスカートのファスナーを下ろした。
ジジジッ……と、ファスナーの音が響く。
プリーツスカートが、床に落ちる。
その下には、同じく白いショーツがあった。
彼女はそれを腰から下ろし、足を抜いた。
そして、完全に裸になる。
部室の窓から差し込む夕陽が、彼女の色白の肌を金色に染め上げた。
腰まで届く黒髪が、背中のなだらかな曲線にかかる。
くっきりと窪んだ臍。
スレンダーながらも、女性らしい曲線を描く腰。
そして腿の付け根には、慎ましやかに寄り合う薄い陰毛が、わずかに三角形を作っていた。
凛は、何も感じていなかった。
羞恥もなければ、興奮もない。
ただ、部室の埃の匂いが、裸の肌に直接触れるのが、いつもより強く感じられる程度だ。
肌が、空気のわずかな動きを敏感に捉える。
「……じゃあ、ポーズを変えていきますね」
三谷の声が、明らかにかすれていた。
彼はカメラを構え直し、目はファインダーに釘付けだ。
喉を、何度も鳴らしている。
「まず……足を少し開いてもらえますか」
凛は指示通り、肩幅ほどに足を開いた。
腿の内側の柔らかな肉が、ほんのりと広がる。
その中心にある陰部の割れ目が、薄い陰毛の間から、微かに覗く。
シャッター音が、激しく鳴り響いた。
何台ものカメラから、同時にフラッシュが焚かれる。

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