第5章: 汗と愛液のレシピ――体育の日も蒸れ下着も、オナニー出汁が一番と判明するまで(続き 2/3)
だが、どんな状況で採取しても、二番出汁が一番出汁を圧倒的に凌駕する事実は揺るがなかった。体育のあとの一番出汁は、確かに汗のミネラル分がスープに独特のキレを与えた。蒸れた下着をつけたままの入浴では、スープにむせ返るようなフェロモン臭が加わり、客の食欲を狂暴に刺激した。しかし、それでもなお、ひまりが全裸で浸かり、そして湯の中で自らを慰めた二番出汁の味わいだけは、別格だったのだ。
六回目の出汁取りが終わった日のことだ。翼はいつものように二つの鍋を並べ、それぞれから小分けしたスープでラーメンを仕立てていた。ひまりは湯上がりの髪をタオルで包み、カウンターの向こうで大人しく座っている。今日は蒸し暑い日だったから、彼女の肌はまだしっとりと湿り、湯上がり特有の甘い匂いを放っていた。翼はまず一番出汁のラーメンを啜り、その味を舌の上で転がす。
「うん、今日も悪くない。汗の塩気がスープの輪郭をくっきりさせてる。これだけでも十分、客は満足するだろう」
次に、二番出汁のラーメンに箸をつける。麺を啜り上げた瞬間、翼の喉の奥がぎゅうっと収縮し、背筋を電撃のような快感が走り抜けた。何度味わっても慣れない、いや、慣れてはいけない味だった。一口ごとに脳が灼け、股間が熱く疼く。スープの一滴一滴が、舌の上でとろけるようなまろやかさを持ちながら、喉を通過するときにはかすかな酸味と獣臭を残す。それは明らかに、ひまりが湯船の中で絶頂に達した証拠の味だ。
翼は丼を置き、深く息を吐いた。そして、カウンター越しにひまりをまっすぐ見つめる。彼女は翼の視線に気づき、タオルの下で肩をびくっと震わせた。
「ひまり、俺はどうしても知らなきゃいけないことがある」
翼の声は、自分でも驚くほど低く、真剣味を帯びていた。ひまりは大きな黒い瞳をさらに見開き、小さく息をのむ。
「なあに、おじさん。急に、こわい顔して……」
「一番出汁と二番出汁の差だ。最初は、全裸と下着の差だと思ってた。汗の量とか、皮脂の溶け出し方とか、そういう理屈だってな。でも、違うんだ。汗だくの体操着で浸かった一番出汁より、全裸で浸かっただけの二番出汁のほうが、なぜか何倍も美味くなる。これはもう、理屈じゃ説明できない差だ。お前は、二番出汁のときに、湯船の中で何か特別なことをしているんじゃないのか?」
翼がそう言った瞬間、ひまりの頬がぼっと音を立てるかのように真っ赤に染まった。彼女はタオルをぎゅっと握りしめ、うつむいてしまう。露わになったうなじも、耳たぶも、すべてが朱に染まっていくのが翼には見て取れた。
「……ちがうの、あの、その」
彼女の声は蚊の鳴くようにか細く、翼の耳に届くまでに何度も途切れた。
「ひまり、正直に話してほしい。これは、店のためにどうしても必要なことなんだ。お前が何か、自分でも気づかないうちにやっていることがあるなら、それを俺はレシピに組み込みたい。でなければ、この奇跡の味を再現し続けることはできない」
翼は努めて冷静に、しかし有無を言わせぬ口調で畳みかけた。ひまりはしばらく黙り込んでいたが、やがて観念したように顔を上げる。その瞳は潤み、まつげの先には涙の粒が輝いていた。
「……言うね。でも、怒らないで。引かないでね、おじさん」
「ああ、約束する。何があっても、俺はお前のことを認めてる。お前は俺の、最高の相棒だ」
翼の言葉に、ひまりはくしゃりと顔を歪め、それから一気にまくしたてた。
「あたしね、二番出汁のとき……全裸でお湯に浸かってると、いつも、すごく……その、体が、あつくなっちゃって。それで、おじさんが隣の部屋で待ってるって思うだけで、もっともっと、胸がどきどきして。そしたら、どうしても、その……自分の、あそこを、さわっちゃうの。最初は、ちょっとだけのつもりだったんだよ? でも、気がつくと、もう指が勝手に動いてて……それで、その、お湯の中で、いっちゃうの。あたし、毎回、クリトリスをくりくりしながら、おじさんの作るラーメンのこと考えて、ぜったい、美味しくなれって念じて、それで、いっぱい、あそこから汁が出て、それがあたしの太ももを伝って、お湯に溶けてくのを感じるたびに、もっともっと気持ちよくなっちゃって……!」
そこまで言い切ると、ひまりは両手で顔を覆い、かああっと声にならない嗚咽を漏らした。肩が小刻みに震え、バスタオルがはらりと床に落ちる。露わになった彼女の白いブラウス姿は、あまりにも無防備で、そして痛々しいほどに扇情的だった。
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