第3章: 全裸の二番出汁――浴槽で初めての絶頂、愛液が混ざる秘密のスープ

第3章: 全裸の二番出汁――浴槽で初めての絶頂、愛液が混ざる秘密のスープ
一番出汁を張った浴槽から上がったひまりは、翼が差し出してくれたバスタオルで濡れた下着ごと体を包み、しばらく脱衣所の隅でぽつんと立っていた。ブラジャーとショーツが肌にぴたりと貼りつき、湯のぬくもりをいつまでも逃がさぬよう包み込んでいる。なんだか体の芯までとろけてしまったような、それでいて自分のものではない体液のようなものがじんわりと染み出しているような、そんな奇妙な浮遊感に包まれたまま、彼女は浴室の白い壁をぼうっと見つめていた。
そこへ、隣室から翼の遠慮がちな声がかけられる。
「ひまり、もう大丈夫か……?」
びくん、とひまりの肩が跳ねた。胸のあたりをぎゅっとタオルで押さえながら、小さく返事をする。
「は、はい……なんとか……。おじさん、これ、どうしたら……」
「いや、そのまえに、ひまり。すまないが、もう一度だけ、頼めるか」
「……もういちど?」
首をかしげるひまりに、翼の声はどこか上ずっていた。店の命運をかけた必死さと、自分でも行き過ぎているとわかっている後ろめたさが、声のふるえとなって浴室のドア越しに伝わってくる。
「今度は、何も着けずに入ってほしい。……ひまりの、本当の、その……肌から、じかに溶け出すだし汁が、必要で」
一瞬、ひまりは言葉の意味をつかみかねた。何も着けずに。つまり、裸で、すべてをさらしたまま、湯に浸かれと。じわじわと理解が追いついた瞬間、耳のつけ根から頬のてっぺんまで、かあっと熱が走った。
「……な、なにも着けずに、って……」
声に出しただけで心臓が早鐘を打つ。ブラもショーツも脱いで、あられもない姿で湯船につかれと言うのか。あの、やさしかったおじさんが。店のためとはいえ、十五の親戚の娘にそんなことまで。
けれど翼の声は、押しつけるでもなく、むしろ自分自身の浅ましさを恥じるようでいて、それでいて絶望的な真剣さにみちていた。
「あのな、ひまり……ほんとに嫌なら、無理にとは言わない。でも、これが最後の希望なんだ。俺は、この商売しかできなくて。その上、お前にこんなことまでさせて、自分が情けない……」
「……おじさん……そんな、自分を責めないで……」
ひまりは背筋をのばした。タオルを握る指先に力がこもる。翼を見捨てることなど初めからない。ならばここは、思い切りよくもうひとつの恥を選ぶしかなかった。
「……うん、わかった。入る……裸で。おじさんのためなら、私、がんばる」
その返事を受けた翼は、なにかを押し殺すように「すまない、ありがとう」と短く答えたきり、あとは物音ひとつ立てなくなった。
脱衣所の時計の秒針だけがかちかちと、ひまりの鼓動に重なるように鳴っている。
先ほど翼が言った通り、浴槽にはすでに新しく清らかな湯が張られていた。温度はぬるめで、翼がガス栓をひねり新たに熱めの湯を足しておいてくれたらしい。水面に立ちのぼる湯気がゆらゆらと白く濁りながら、壁のくすんだタイルをじわりと濡らしはじめていた。ひまりはその光景を、裸になる前の最後の景色として、まぶたの裏に焼きつけるように見つめた。
ひまりはひとつ、深く息を吸った。吸って、吐いて、それから心を決める。
最初にバスタオルを脱衣かごへそっと落とした。湿ったブラジャーが肌を離れるとき、ひんやりとした空気が背中や胸元をかすめ、乳首がつんと小さな痛みをともなってしこる。それからショーツも、腿から膝へ、膝から足首へとすべり落として、一糸まとわぬ姿になった。
姿見の隅に、小さく自分が映り込んでいる。胸はまだふくらみかけで控えめながら、白い肌が湯あがりのせいでうっすら桜色に上気している。くびれた腰、そして太ももにかけてのふくよかな線。なにより恥ずかしいのは、下腹のあたりから腿のつけ根へかけて、つるりと産毛もまばらな秘部がまるで別の生き物のように自己主張していることだった。
「……み、見られてない、よね……」
誰にともなくつぶやいて、ひまりは浴槽に足をさし入れた。ぬるめの湯と思ったのに、素肌で触れると意外なほど熱く感じられ、思わず「あっ……」と声がもれる。ふくらはぎ、膝上、腿へと湯が絡みつくたび、自分の裸の境界線がじんわり溶かされてゆくようだった。
ついに腰まで沈めると、湯がやわらかな音をたてて揺れ、胸のちいさなふくらみのあたりまでぴしゃりと跳ねる。ひまりはそっと両手を胸にやった。冷えかけた指先が乳首にふれただけで、むずむずするような疼きが腹の奥へ抜けていった。
「ん……っ」
目を閉じると、かえって官能がするどくなる。いま、自分は裸で、翼のアパートの、それもラーメンのだしに使う湯のなかに浸かっている。この湯が、これから翼の手で濾され、あの焦がし醤油の香りとラードの層をもつスープに仕立てられる。たくさんの男の人たちが、知らずに自分の体を溶かした汁をすする。想像するだけで頭の芯がぼうっと熱くなり、それと同時に、下腹部の奥で何かがきゅうっと縮まるような予感があった。
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