第6章: 見られる悦び――おじさんの視線の前で、私はもっと濡れてしまう
第6章: 見られる悦び――おじさんの視線の前で、私はもっと濡れてしまう
約束の月曜日が、翼の胸の奥に重たく澱む罪悪感と、それと等量の期待を連れてやってきた。午前十時、アパートのインターホンが鳴る音は、いつもより幾分か遠慮がちで、それでいて鈴の芯を震わせるような甘さを帯びている。翼は台所で鍋を磨く手を止め、エプロンで濡れた指を拭いながら玄関へ向かった。ドアを開けると、ひまりは濃紺の膝丈スカートに白いカーディガンという、普段よりもずっと“よそ行き”の装いで立っており、そのあまりに可愛らしい雰囲気の変わりように、翼は一瞬言葉を失った。
「今日は、制服じゃないんだな」
翼がそう声をかけると、ひまりはもじもじと自分のスカートの裾をつまみ、伏し目がちに答えた。
「……だって、今日は、いつもと違うことするんだよね。おじさんの前で……その、するなら、少しはちゃんとした服で来ようかなって」
彼女の最後の言葉はほとんど息だけで、翼の耳に届く前に蒸発してしまいそうなか細さだった。翼は無言でうなずき、彼女を部屋の中へ招き入れる。アパートの古びたフローリングは、今日も変わらず二人分の体重をぎしりと受け止め、台所のほうからはすでに張られた湯の、かすかな塩素の匂いが漂っていた。ひまりはいつものようにカウンターの前に立つのだが、今日はなぜか腰を落ち着けることができず、両手を前で組んだり、後ろに回したりと落ち着きがない。彼女の白いカーディガンの胸元が、浅い呼吸に合わせてふくらんではしぼみ、その度にTシャツの下の控えめな膨らみが布地をほんのわずかに押し上げているのを、翼は視線の端でとらえた。
翼は覚悟を決めるように、小さく息を吐いた。そして、カウンターを回り込まず、あえて距離を保ったまま、ひまりに言った。
「今日は、いつもの出汁取りとは少しやり方を変える。お前もわかってると思うが……俺は、その場で、お前のことを見させてもらいたい。浴室のドアは開けたままで、お前が湯に浸かって……自分を慰めるのを、ちゃんとこの目で確かめたいんだ」
ひまりの肩が、びくりとはね上がった。まつげをふるふると震わせ、唇をかすかに開くが、声はすぐには出てこない。彼女の頬が、ぼうっと火を灯したように朱に染まり、それが耳たぶやうなじへとじわじわと広がっていくのを、翼はただ黙って見つめていた。台所の蛍光灯の光が、彼女の黒く真っ直ぐな長い髪の表面を、水の流れのように滑っていた。
「……本当に、おじさん、見てるの? あたしが、その……触ってるところも、ぜんぶ?」
ひまりがようやく絞り出した声は、驚くほど澄んでいて、それでいて小さく震えていた。翼は彼女から目をそらさず、静かにうなずく。
「ああ、全部見る。それが、俺の覚悟だ。お前の恥ずかしいところも、気持ちよくなるところも、全部引き受ける。じゃないと、あの奇跡の味を二度と再現できない気がするんだ。俺は……もう、逃げない」
翼の言葉に、ひまりは長いまつげを伏せ、自分の足元を見つめた。フローリングの木目が、歪んだ波のように彼女の視界に映っているのかもしれない。彼女の胸の内では、押し寄せる羞恥と、それと同じだけの倒錯した好奇心が、とぐろを巻いて渦巻いていた。先週、翼に「見られるほうが余計に感じる」と自分の口で言ってしまった瞬間から、すでにこの瞬間を夢想しては、深夜のベッドの中で太ももをきゅっと閉じて身悶えしていたのだ。
「……うん。じゃあ……あたし、服、脱ぐから。おじさん、やっぱり、入り口のとこに座ってて」
ようやくひまりが顔を上げ、翼をまっすぐに見つめ返す。その大きな瞳の奥は、もはや戸惑いだけではなく、かすかな挑戦めいた光さえ宿していた。彼女は浴室へと向かうが、その歩みはひどくゆっくりで、スカートの裾がふわりと揺れるたびに、少女の白いふくらはぎが覗いた。翼は言われた通り、脱衣所との境にある引き戸を全開にし、そこに風呂用の小さな椅子を持ってきて腰を下ろす。浴室の白い壁、銀色の蛇口、そしてすでに湯気を立てて満たされた浴槽が、彼の眼前に広がっていた。
ひまりは脱衣所でカーディガンを脱ぎ、白いTシャツの裴を両手でつかんだ。彼女が一旦、翼のほうを振り返る。視線が交錯した瞬間、彼女の唇が恥じらいに歪み、それでもはっきりと、彼女は服を一気に脱ぎ去った。Tシャツが髪を乱し、スカートが足元に落ちる。ブラウスのホックを外す指先はかすかに震えていたが、それでも迷いはなかった。やがて、淡い水色のブラジャーとショーツだけの姿になったひまりは、両腕で自分の胸元をかばうようにしながら、翼の前を横切り、浴室へと入っていった。蛍光灯の無機質な光が、彼女の背中の曲線や、ショーツからはみ出しそうなほどむっちりとした太ももの付け根を、容赦なく照らし出す。
「おじさん……あんまり、じろじろ見ないで。まだ、始まってないんだから」
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