第2章: 黒いレースと個室の焼き鳥屋(続き 2/2)
自分の声が、こんなにもかすれているのに驚く。ビリーは満足そうに口元を緩め、焼き鳥の串を一本手に取った。
「アメリカでは、セックスはもっとオープンなスキンシップの手段でもあるんだ。スポーツみたいな感覚で、お互いに気持ちよくなるためのね。もちろん、無理強いはしない。でも、独身のうちだからこそ、いろんな経験をしておくのは悪くないと思うよ」
彼の言葉は恐ろしく滑らかに、私の中に染み込んでくる。貴文とのセックスは、優しくて、安定していて、でも、どこか物足りなさを感じていたのも事実だった。あのバスローブから見えた、信じられない質量の塊。もし、あれが私の膣に入ってきたら、どうなってしまうのか。恐怖と、そして、どうしても突き止めたい好奇心が、子宮のあたりでぐるぐると渦を巻く。
私はグラスを掲げるようにして、ビリーの目を見た。
「ビリー。あなたの……コックに、興味があります」
そう言うと、一瞬息が止まった。顔から火が出るかと思った。耳まで真っ赤に染まっていくのが自分でわかる。ビリーは一瞬目を丸くしたけれど、すぐに破顔した。
「正直でいいね、モモカ。僕も君のピュアな反応が、とても気に入ってるんだ」
焼き鳥を堪能したあと、ビリーは当然のように近くの酒屋へ向かった。高級な赤ワインのボトルを迷わず選び、隣のコンビニで数種類のチーズを買う。私はただ、彼の後ろを歩いていた。もう、バトラーとしてではない。ひとりの女として、これから起こることへの期待と、婚約者への罪悪感で胸が張り裂けそうになりながら。
ホテルのエレベーターの中、ふたりきりの密室で、ビリーのムスクコロンの香りがふわりと私を包んだ。あの、獣のフェロモンのような野生の匂い。それを嗅ぐたび、私の膣はまるで命が宿ったみたいに、ひくつき、とけていく。フロアを示す数字が上がっていく間、私はずっと、ワインボトルを握るビリーの野太い指を見つめていた。
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