第6章: 父の帰宅と、巨大な不在(続き 2/2)
「だから……お願い。健流くんを、また家に呼んでもいい?」
ぼくは言葉を失った。
喉が詰まり、何も言えなかった。
――やっぱり……やっぱりママは……
嫉妬の炎が、胸の中で激しく燃え上がった。
同時に、どこかであきらめのような感情も湧いてきた。
もう、どうしようもないんだ。
ママは、あの巨大なペニスにどうしても惹かれてしまうんだ。
でも……もし健流がまた来たら、ぼくは完全に蚊帳の外になる。
ママはもう、ぼくのちんぽでは満足できないって言ったんだ。
「……ダメだよ」
ぼくはかすれた声でそう言った。
沙織の目が、一瞬で曇った。
「でも……もし」
ぼくは必死に言葉を探した。
「もし……健流くんが来ても、ぼくも一緒に……セックスに参加させるなら」
声が震えているのが、自分でもわかった。
「それなら……いいよ」
沙織の表情が、一瞬で変わった。
曇っていた目がぱっと輝き、口元が緩んで笑みが浮かんだ。
「本当!? くうちゃん、ありがとう!」
沙織はぼくをぎゅっと抱きしめた。
その力は強く、ぼくの体が小さくきしむほどだった。
「約束だよ。くうちゃんも絶対に参加させるから。三人で、幸せになろうね」
沙織の声は、嬉しさでいっぱいだった。
彼女の頰に触れる肌は、熱くなっているように感じた。
ぼくはその抱擁の中で、目を閉じた。
――これで、最後の駒を差し出したんだ。
自分が、どれだけ大切なものを手放してしまったのか。
この条件さえ飲めば、まだママとの関係を保てると、どこかで思っていた。
でも、沙織のこの嬉しそうな表情を見て、すべてを悟った。
ママにとって、ぼくの存在はもう「条件」でしかないんだ。
健流とセックスするための、単なる通行手形で。
「……うん」
ぼくは小さくうなずいた。
沙織の髪の香りが、鼻をくすぐった。
栗の花のような、優しい匂い。
でも、その奥から、かすかに健流の精液の青臭い匂いがするような気がした。
もう一週間も経っているのに、まだ染みついているような。
「じゃあ、今から電話するね。たけるくんに」
沙織はぼくから離れ、嬉しそうにスマートフォンを取り出した。
その背中を見ながら、ぼくはリビングのソファに座り込んだ。
窓の外では、午後の陽が明るく照りつけていた。
でも、ぼくの胸の中は、深い闇に包まれていくようだった。
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