第2章: 触れられること、舐められることの意味
第2章: 触れられること、舐められることの意味
放課後の空気は、いつもより少し湿り気を帯びていた。
廊下を歩く白瀬凛の長い黒髪が、窓から差し込む夕日の光でほのかに金色に縁取られる。彼女の足取りはいつも通り、一定のリズムで規則的だ。感情の起伏が顔に表れないため、どこへ向かっているのか、何を考えているのか、傍目には全くわからない。
彼女は昨日と同じく、写真部の部室の扉の前に立った。
ノックもせずに、そっとドアノブを回す。中からは、複数の人間の気配と、カメラのレンズキャップを外す微かな音が聞こえた。
「お、来たな、白瀬さん」
三谷茂樹が、部室の奥から顔を上げた。彼の眼鏡の奥の小さな瞳が、凛の姿を捉えると、すぐにカメラの方へと視線が滑った。部室には他に四人ほどの部員がいて、それぞれが三脚を立てたり、照明の角度を調整したりしていた。全員の視線が、一瞬で凛の上に集まる。
凛は特に何も感じなかった。
彼らが自分をどう見ているのか、その視線にどんな意味が込められているのか、想像する能力が彼女には欠けていた。ただ、部室の空気が昨日より少し熱く、埃と汗の混じったような匂いが、彼女の鋭い嗅覚をくすぐるだけだった。
「今日もお願いします。芸術的な写真を、もっと追求したいと思っていて」
三谷がそう言うと、凛はうなずいた。
「了解しました。何をすればいいですか」
彼女の声は平坦で、水が流れるような無機質な響きを持っていた。
「まずは、昨日と同じ感じで……背景を変えてみようかな。で、そのあと、新しい試みも考えているんだ」
三谷はカメラを構えながら、ちらりと賀川武志の方を瞥った。賀川は壁際に寄りかかり、既にタンクトップからたくましい腕を露わにしていた。彼は三谷の視線を感じると、口元を歪ませて薄笑いを浮かべた。
凛は指示通り、部室の中央に設えられた簡易的な背景の前に立った。白い布が垂れ下がり、その前で彼女はゆっくりと制服のボタンを外し始める。一つ、また一つと、ブレザーのボタンが外れる音だけが部室に響く。部員たちの息づかいが、わずかに深くなったのが、凛には温度の変化として感じられた。
ブラウスが脱がれ、スカートが床に落ちた。
下着も昨日と同じく、彼女は躊躇いなく外した。白く滑らかな肌が、部室の照明の下で柔らかな光沢を帯びる。胸の膨らみはまだ控えめだが、先端の小さな蕾は薄いピンク色をしており、冷たい空気に触れてわずかに硬くなっていた。腿の付け根には、細かく柔らかい陰毛が慎ましやかに生え揃っている。
「じゃあ、まずは自由にポーズを取ってみてくれる? 自然な感じで」
三谷の声が響く。
凛は特に考えることもなく、腕を少し広げ、顔を斜めに向けた。それはまるで人形のように正確で、かつ無表情な美しさだった。カメラのシャッター音が幾重にも重なる。彼女の裸体を、レンズが貪欲に切り取っていく。
「うん、いいね……でも、もっと……生命の感じが欲しいな。人間同士の、触れ合いみたいな」
三谷がそう呟くと、賀川がゆっくりと歩み出た。
「おう、じゃあ俺がやるよ。で、どうすりゃいいんだ?」
賀川の声は低く、どこか威圧的な響きを持っていた。
凛は彼が近づいてくるのを、ただ見つめていた。賀川は凛の前で立ち止まり、自分のタンクトップをまくし上げる。がっしりとした腹筋が露わになり、彼はそのまま短パンも脱ぎ捨てた。下着の下からは、既に大きく膨らんだ男根の形がくっきりと浮かび上がっている。
「これでどうだ?」
賀川は下着も脱ぎ、完全に裸になった。
逞しい筋肉の塊のような身体、そして股間からぶら下がるそれは、確かに大きく、太く、先端は濃い紅色をしていた。周囲の部員たちから、思わず息をのむ音が漏れた。
凛はその光景を、瞳孔を揺らげることなく見つめていた。
彼女の心には何の波紋も起こらなかった。それは単なる物体の配置の変化であり、特に意味を持つものではなかった。ただ、賀川の体から発せられる汗の匂いと、男独特の体臭が、彼女の鼻を少し刺激しただけだ。
「じゃあ……賀川先輩、白瀬さんの前に跪いてもらって、顔を近づける感じで。生命の源へと向かう、みたいな構図を……」
三谷がカメラを構えながら指示を出す。
賀川は「了解」と短く返事をし、そのまま凛の前にゆっくりと膝をついた。彼の顔の高さは、ちょうど凛の股間の位置になる。凛はそのまま立ち尽くし、何も考えずにポーズを維持している。
賀川の顔が近づく。
彼の吐息が、凛の下腹部の柔らかな陰毛にかかる。温かく、湿った空気の塊が、肌に直接触れる。凛はその温度を感じた。何かが接触しているという、物理的事実だけを認識した。
シャッター音が鳴る。
カメラのフラッシュが一瞬、部室を白く染めた。
「もっと近くで……リアリティが欲しいな。生命の交流ってのは、もっと生々しいものだと思うんだよね……」
三谷の声が、どこか興奮を帯びて震えていた。
賀川は「ん?」と小さく声を上げ、顔をさらに近づけた。彼の鼻先が、凛の陰毛の生え際に触れそうな距離まで近づく。吐息がより濃密になり、凛の局部の皮膚に直接かかる。
そして、賀川はちらりと三谷の方を見た。
三谷は無言で、カメラを構えたままうなずいた。
次の瞬間、賀川の舌が、凛のまだ乾いた陰唇の縫い目を、そっと這いずるように舐め上げた。
――――――
その感触は、凛の全ての認識を一瞬で塗り替えた。
ざらりとした、湿った、温かい。
他人の舌の表面の微細な突起が、彼女の感覚過敏な陰核と膣粘膜の入口を、直接こすり上げる。それは今までに経験したことのない感覚だった。鋭く、深く、そして爆発的に快楽へと変換される刺激が、腰の奥から脳天までを一瞬で貫いた。
凛の体が、自分の意志とは無関係に、ぴくっと跳ねた。
無表情だった彼女の顔に、わずかに目が見開かれる。長いまつ毛が震え、薄い色の瞳に一瞬だけ焦点が合った。
「……あ」
声ではなく、息が漏れた。
それは彼女にとって、理解できない身体の反応だった。何かが起こっている。何かが、彼女の内部で爆発している。それは痛みではなく、でもあまりにも強烈で、体の芯を揺さぶる何かだった。
賀川はその反応を見て、口元をさらに歪ませた。
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