第4章: 最初のポーズで座り、次にM字にしゃがみ込み、左右に開いた膣口の中まで鉛筆の先と視線に貫かれる

第4章: 最初のポーズで座り、次にM字にしゃがみ込み、左右に開いた膣口の中まで鉛筆の先と視線に貫かれる
高柳さんが小さく息を吸い込む気配が、静寂のヴェールを破った。
「十五分、ご自由に」
その言葉を合図に、室内の空気がきゅっと締まる。鉛筆の芯が紙の目地をひっかく音が、いっせいに降り始めた。ざり、ざり、ざり……かすかな振動が床を伝わって、モデル台のブランケット越しに私の太腿の裏まで届いてくるようだ。
私は、まず正座に近い姿勢で坐っていた。膝をぴたりと揃え、両手を重ねて太腿の上に置く。肩の力を抜いて、呼吸をゆるやかに。そんなふうに装いながら、意識のすべては股のあいだに吸い寄せられていた。かかとが無意識のうちに陰部に触れていて、その熱とぬめりがじかに伝わってくる。正座の窮屈さがかえって、閉じた脚の奥にある柔らかな肉を圧迫して、とろりと滲む愛液が下着もないまま肛門のあたりにまで伝いそうになるのを感じていた。
五感が、ありえないほど研ぎ澄まされている。蛍光灯の放つ白い光が、私の露出した背中や肩に降り積もる感触さえ感じ取れてしまいそうだった。窓からの陽射しが腕の産毛を金色に縁どり、空調の微風が乳首の先端をかすめて、そのたびに尖ったそれがひくりと震える。
それ以上に、男たちの視線が熱かった。正面のイーゼル越しに、十人の男たちの目が私の身体のどこかに注がれている。鎖骨の窪みを見つめる者。乳房のふくらみを追う者。太腿の付け根に食い入る者。それぞれの視線がまるで細い針みたいに肌に刺さって、そのたびに小さな疼きが生まれ、それが集まって子宮の奥できゅんきゅんと渦を巻く。
鉛筆の音が、私の耳のなかで増幅されていく。ざり、ざり、ざり、ざり。誰かが紙の上で手をすばやく動かすたび、芯と紙の摩擦音がまるで私の性器を直接擦っているみたいに感じられた。ざり、という音のたびにクリトリスがぴくんと震え、別の誰かが濃い線を引くために鉛筆を寝かせる、あのざあ、という低い音には、膣口がきゅうっと窄まる。
耳を澄ませば、かすかな吐息も聞こえてくる。正面やや左の、若い学生風の男の子。私の顔と股間を見比べながら、時折はっ、と短く息を漏らしている。あの子はきっと、私のつるつるの恥丘を描いているんだ。無毛のそこは、どうしても目立つもの。太陽の下で元彼に見られた日から、ずっと剃り続けている私の秘部は、陶器みたいに滑らかで、かえって真ん中の割れ目の存在感が際立ってしまう。
右側の作業着の年配男性は、深い皺の刻まれた目を細めて、私の乳房のあたりをじっくりと観察していた。あの視線は、性欲というよりも、モデルを前にした真摯なまなざし……そう思うと、かえって背徳感が増す。芸術のために真面目に見つめられているのに、私はその視線を官能に変換して、こっそりと濡れているのだ。
自分の太腿のつけ根が、じわりと熱くなっていく。ブランケットに触れている部分の肌が、愛液で湿っているのがわかる。正座のせいで圧迫された陰部から溢れた蜜が、かかとにまで達していて、ほのかに甘酸っぱいような自分の匂いが、静かな空気のなかに立ちのぼっている気がした。
誰かが、それを嗅ぎつけただろうか。あの匂い、なんだろう、って。
そう思うだけで、膣がきゅうきゅうと締まり、新たな粘液がどろりと溢れ出る。私は自分の顔が赤くなっていくのを感じながら、うつむき加減に、正面の男たちのようすをちらりと盗み見た。スーツ姿の中年男性が、眉をひそめるようにして私の脚のあいだを見つめている。その視線の先には、閉じたはずの大陰唇の合わせ目からとろりと滲み出た透明な液が、太腿の内側を細く伝っているのが見えているはずだ。
「……すごい」
誰かが思わず呟いた。ごく小さな声だったけれど、静寂の張りつめた部屋にははっきりと響いた。その瞬間、イーゼルの向こうで空気がかすかに揺れた気がした。みんな、見ている。私のあそこから何かが溢れているのを、確かに見ている。その確信が、さらなる蜜を呼び寄せる。
鉛筆の音が、さっきよりも速くなる。ざりざりざりざり。芯が紙の上を走る速度が増すほど、私の心臓も早鐘を打つ。太腿の内側を愛液が伝い落ちる感触に、思わず脚の力を抜きたくなるのを必死でこらえた。開いてしまいたい。見せてしまいたい。でも、まだ、まだだめ。最初のポーズは、あくまでも「おとなしい私」でいなければ。
時間の感覚が、ぐにゃりと歪んでいく。十五分が永遠にも一瞬にも感じられる。汗が、こめかみから一滴、頬を伝って顎にたまった。呼吸が浅く速くなっているのが自分でもわかる。それでも私は、膝の上に重ねた両手をぎゅっと握りしめて、じっと坐り続けた。
どれだけ経っただろう。高柳さんの低い声が、熱に浮かされた私の意識に染み込んでくる。
「……では、次のポーズに移りましょう」
私ははっとして顔を上げた。視界がかすんでいる。涙?違う、これは興奮で潤んでいるんだ。高柳さんは眼鏡の奥の目を細めて、穏やかな口調で続けた。
「少し開いた姿勢をお願いできますか。そうですね……しゃがみ込んで、膝を左右に大きく開いていただければ」
しゃがみ込んで、膝を左右に大きく開く。それはつまり、M字開脚の姿勢。ハプニングバーでも何度かしたことはあるけれど、こんな明るい部屋で、しかも芸術の場として、正面からじっくり見つめられながら。
頭のなかが、かあっと熱くなった。それなのに、私の口は勝手に動いている。
「……はい」
か細い声が、自分のものであることが信じられない。私はゆっくりと正座を崩し、モデル台の上にしゃがみ込んだ。ブランケットの柔らかな布地が、足の裏と尻のあいだでくしゃりと潰れる。膝を、まずは揃えてしゃがみ、それから……ゆっくりと、左右に開いていく。
右の膝が、右へ。左の膝が、左へ。
太腿の内側の筋肉が伸びて、股関節がじんわりと開いていく感覚。閉じていた大陰唇が、それに引っ張られるように左右に少しずつ離れていくのがわかる。空気が、いままで覆われていた粘膜に触れて、ひやりとした。
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