第1章: ぼくは男の子?それとも女の子?(続き 2/2)
拓也が驚いたように声を上げた。
健太も、優希の股間から足を離した。優希はそのまま砂利の上にぺたりと寝たまま、胸を大きく上下させて息をしている。目は半分開いているが、焦点が合っていない。頬は真っ赤で、額には脂汗がにじんでいた。
「な、なんだよ……めっちゃぐったりしちゃって」
健太が、困惑したように言った。
拓也が優希の顔をのぞき込む。
「優希?大丈夫か?……本当にギブアップしたみたいだな」
二人は顔を見合わせて、にやにやし始めた。
「やったー!俺たちの勝ち!」
健太がガッツポーズを取った。
拓也もそれに続き、勝ち誇ったように笑った。
優希には、その声が遠くから聞こえるようだった。頭の中はまだぼんやりして、体は鉛のように重い。でも、一番強く感じるのは、股間のあたりの、じんわりと続く熱だった。あのびくびくする感じは少しずつ引いていったけれど、お腹の下はまだほてっていて、ショートパンツのクロッチの部分が、ひんやりと濡れているような……いや、むしろべっとりと、何かがにじんでいるような感触がした。
――なんだろう、これ。
優希はゆっくりと体を起こした。足元がふらつく。
「あ、起きた」
健太が声をかけてきた。
「すっげーギブアップしてたな優希。女子には電気アンマ効かないって言ってたのに、めっちゃ効いてたじゃん」
優希は俯いて、自分の股間を見た。薄い色のショートパンツの真ん中が、ほんのり濃い色に変わっているような……気がした。すぐに視線をそらし、立ち上がった。
「……ち、違うよ。ただ転んで頭打っただけだもん」
嘘だった。頭は打っていない。あの感じは、頭からじゃなくて、もっとずっと下から来た。
でも、なぜかそれを認めるのが、すごく恥ずかしかった。今まで男の子みたいに振る舞ってきたのに、そんなことでぐったりしてしまう自分が、なんだか情けなくて。
「もう、帰る」
優希はそう言って、そばに置いたランドセルをひっつかんだ。
背中に、二人の笑い声が追いかけてくる。
「おーい、また明日もプロレスやろうぜ!」
「今度は優希がもっと頑張れよな!」
優希は振り返らずに、校庭を駆け出した。
家に着くまでの道のり、ずっと股間の違和感が気になった。歩くたびにショートパンツの生地が擦れて、さっきのあのびくんとする感覚を、かすかに思い出させた。下着のなかが、本当に濡れているんじゃないかという不安。そして、それと同時に、あの熱くてぼんやりする感じをもう一度味わってみたいという、つぶやくような欲望。
――僕、どうしちゃったんだろう。
玄関のドアを開けながら、優希は心の中で呟いた。
男の子のように強くいたい。でも、あの時感じたものは、今までの「強さ」とは全然違うものだった。それは、体がぐったりとして、何もできなくなってしまう、弱くて恥ずかしい感じ。
でも……気持ちよかった。
その認めた瞬間、顔がまた熱くなるのを感じた。
自分の部屋に上がり、ドアを閉めた優希は、そっとショートパンツのウエストに手をかけた。ゆっくりと下ろし、下着を見た。
白い綿のパンツのクロッチ部分が、確かにべっとりと、透明に近い液体で濡れていた。まだ匂いはほとんどない。でも、その光景を見つめながら、優希の股間はまたじんわりと熱を帯びてきた。
――あの時、健太の足が、もっと直接にあたってたら……。
考えるだけで、体が軽く震えた。
優希はパンツを脱ぎ、裸足で部屋の真ん中に立った。そして、ふと目に入った勉強机の角に、自分の股間を押し当ててみた。
固い木の角が、柔らかい割れ目に食い込む。
「……んっ」
また、あの感じが、かすかに蘇った。
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