第1章: ぼくは男の子?それとも女の子?
第1章: ぼくは男の子?それとも女の子?
放課後の校庭は、まだ日差しが柔らかく残っていた。
サッカーゴールの脇の砂利混じりの地面で、優希は高橋健太と鈴木拓也の二人を相手に、プロレスごっこの真っ最中だった。優希の茶色のショートカットは汗でびっしょりで、安っぽいTシャツの胸のあたりには、砂の跡が薄くついていた。ショートパンツから伸びた細い脚は、男の子のようにすばしっこく動く。
「こら、優希!そんなに強く押すなよ!」
健太がぶつぶつ文句を言う。
優希はにやりと笑った。
「だってプロレスだもん。本気でやらないとつまんないじゃん」
――僕だって負けてられない。
優希は心の中でそうつぶやいた。「僕」という一人称は、もう何年も前から染みついている。名前が「ゆうき」で、服装も遊びも全部男の子みたいだから、自然とそうなった。周りの女子たちはもう、スポーツブラを着けたり、ちょっとおしゃれに気を使い始めていたのに、優希はそんなのまるで関係ない。胸の膨らみなんてまだないし、生理も来ない。だからこそ、ノーブラのままTシャツを着て、何の躊躇もなく男子と体をぶつけ合える。
でも、最近ちょっとだけ、変なことがあった。
体育の時間に体操服に着替えるとき、ふと気がついたのだ。周りの女子の水色の体操服の胸元は、どこかふっくらと布が膨らんでいる。中に何かを着けているらしい。優希の白い体操服は、薄い生地の向こうに、自分でも意識したことのない小さな突起――乳首の形が、ほんのりと透けて見えるような気がした。
そして、誰かの視線を感じた。
優希がシャツを脱いで体操服に袖を通そうとしている時、教室の隅で健太がこっちを見ていた。すぐに目をそらしたけど、あの一瞬の視線は、今までの「遊び友達としてのそれ」とは、どこか温度が違った。
「おい、優希!ぼーっとしてたら、技かますぞ!」
拓也の声で現実に引き戻された。
優希は反射的に体をひねり、拓也の背後に回り込んだ。得意の技、電気アンマだ。相手の股の間に自分の足を突っ込み、ぐりぐりと刺激する――テレビで見たプロレスラーがやっていたのを真似して、男子たちに仕掛けては楽しんでいた。
「これでどうだ!」
優希の足先が、拓也の股間にある柔らかい膨らみに当たった。
拓也は「うわっ!」と声を上げ、体をよじった。
「ひっくー!や、やめろよ優希!それ気持ち悪いって!」
「気持ち悪いって?男子にはめっちゃ効くくせに!」
優希は得意げに笑った。
でも、その笑みは次の瞬間で消える。
隙を突かれたのだ。優希が油断した一瞬、今しがた技をかけられた拓也が逆に優希の足首を掴み、体勢を崩した。優希はバランスを失い、砂利の上に仰向けに倒れた。
そして、上から健太の影が覆った。
「今度は俺の番な!」
健太の顔が、悪戯っぽく笑っている。優希は慌てて体を起こそうとするが、拓也が優希の両腕を地面に押さえつけている。
「こら、拓也!離せよ!」
「だーめだめ、今度はこっちの勝ちだ!」
優希がもがく。Tシャツの裾がめくれ上がり、まだ何の膨らみもない平らなお腹が露出する。そのさらに下、ショートパンツの中心部がぴんと張っている。
そして、健太の足が来た。
運動靴を履いたその足が、優希の股間――ショートパンツの薄い生地の真ん中に、ぐいっと突き立てられた。
「んっ!」
優希の口から、思わず声が漏れた。
今まで何度も電気アンマは仕掛けてきた。でも、自分がかけられるのは、実はあまりなかった。ましてやこんなにしっかりと、足の裏全体の圧力が股間の一点に集中してかかってくるのは初めてだ。
最初はただの衝撃だった。嫌な感じ。くすぐったいような、押しつぶされるような。
「ほら、優希もこれでギブアップだ!」
健太が足をぐりぐりと動かした。
その時、優希の体の中を、何かが走った。
嫌な感じの先に、少しだけ、変な「気持ちよさ」が混じっているような……。股間の奥深く、まだ自分でもよくわからない場所が、じんわりと温かくなり始めた。まるでそこだけが、ポカポカと火照ってきているみたいだ。
頭が、少しぼんやりする。
「や……やめ……」
優希は声に出そうとしたが、うまく言葉にならない。押さえつけられていて、息が苦しいのもある。でもそれ以上に、股間をぐりぐりと擦られるその振動が、体の芯を揺さぶっている気がした。
健太の足の動きが、さらに強くなる。
ショートパンツの生地が、股間の割れ目に食い込む。優希はその食い込みが、自分の中のどこか小さな「トンガリ」に、直接こすれているのに気がついた。それは、お風呂で偶然触れた時に、びくんと跳ねるような場所だ。
――あ……。
優希の体が、思わず跳ねた。
「おっ?まだ抵抗する気か?」
拓也が腕に力を込める。
違う。抵抗じゃない。このびくんと震える感じは、まるで体が勝手に反応しているみたいで……。
股間の熱が、一気に広がった。
お腹の下が、湯気が立つように熱くなる。頭の中のぼんやりが、もっと濃い霧に変わっていく。思考がにぶり、代わりに体の感覚だけが、くっきりと鋭くなっている。健太の靴底のゴムの感触。ショートパンツの生地が擦れるチクチクした感じ。そして、その下でじわじわと濡れていくような、得体の知れない湿り気。
「だめ……だめぇ……っ」
優希の声が、震えていた。
それはもう、本気で嫌がっているというより、自分でも理解できない何かが押し寄せてきていることへの、恐れに似ていた。
背筋が、ピンと伸びた。
足の先から頭のてっぺんまで、一本の電流が走るように体が硬直する。股間を中心に、プルプルと小さな痙攣が始まった。それはまるで、高いところから落ちる夢を見た時の、あの一瞬の身震いに似ている。でも、ずっと温かくて、ずっと奥深くから湧き上がってくる。
――あ……ああ……。
口を閉じていても、喉の奥から漏れる息が、熱くてたまらない。
視界が一瞬、白くかすんだ。
得体の知れない快感が、波のように押し寄せて、優希の小さな体をずぶりと飲み込んだ。何も考えられない。ただ、股間が熱くて、びくびく震えていて、体の力が全部抜けていくのを感じるだけだった。
押さえつけられていた腕が、だらりと地面に落ちた。
「……え?」

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