第2章: ぬるま湯と共犯、巨根に囚われた掌(続き 2/3)
淳子は胸の前で腕を組むようにして、自分の乳房を隠した。三十六年間生きてきて、夫以外の男性に裸を見せるのは初めてだった。相手がまだ十一歳の少年だというのに、恥ずかしさで全身の毛穴が開き、汗が噴き出す。湯船のふちに腰かけた悠が、無邪気に手を伸ばしてきた。
「かあたん、せなかあらって!」
「はいはい、ちょっと待ってね」
淳子はなるべく陽斗のほうを見ないようにしながら、洗面器に湯をくみ、悠の背中にざあっとかけた。ボディソープを泡立てたスポンジで、息子の小さな背骨のくぼみをなぞる。悠はくすぐったそうに身をよじり、きゃきゃっと笑い声をあげた。
その間、陽斗は黙って洗面器の湯を自分の肩にかけていた。ざあ、ざあ、と浴室の壁に反響する水音だけが、妙に大きく鼓膜に張りつく。淳子は悠の身体を洗い終え、「じゃあ、かあたんの番ね」と言いかけて、手を止めた。
陽斗が、スポンジを手にしたまま、じっと淳子のほうを向いている。
その股間を、淳子は見てしまった。見てはいけないと思った瞬間には、もう眼球がそちらを向いていた。
細い腰骨の下、縮れた陰毛の茂みから、にゅっと垂れ下がる肉の塊。それは赤黒く、表皮には太い血管が蛇のように浮き上がっている。先端はだらしなく薄皮をかぶり、全体が重力に従ってゆるやかに湾曲していた。淳子は息を呑んだ。なにしろ、夫のものとはまるで違っていたのだ。夫のペニスは短く、色も薄く、血管が浮き出ることなどめったにない。それなのに、目の前のこの少年の肉茎は、まだ勃起すらしていないのに、夫の硬くなったときよりもはるかに長く、太い。十五センチはあるだろうか。いや、もっとかもしれない。
淳子の膣の奥が、きゅう、と引きつった。それと同時に、下腹部の奥底で、何かがどろりと溶けるような感覚が走る。淳子は慌てて目をそらし、自分の膝を見つめた。心臓が早鐘を打ち、こめかみがずきずきと疼く。見てはいけないものを見た。でも、もう見てしまった。あの質量が、形が、まぶたの裏に焼きついて離れない。
「おばさん」
陽斗の声が、湯気のむこうから低く響いた。淳子はびくりと肩を震わせ、顔を上げる。少年は相変わらず無表情で、しかしその黒い瞳だけが、ぬらりと光っていた。
「悠くん、もうあらったよね。じゃあ、つぎ、僕のことも洗ってくれる?」
淳子は硬直した。拒否しなければ。陽斗はもう小学五年生で、自分はいい大人で、そもそも親戚の子の裸を洗うなどという行為は、どう考えてもおかしい。
けれど、悠が横から口をはさんだ。
「はるとにいちゃんも、かあたんにあらってもらいなよ! かあたん、じょうずなんだから!」
「……は、はると君は、もう五年生でしょう? 自分で洗えるわよね」
絞り出すように言った淳子の声は、自分でもわかるくらいかすかに震えていた。陽斗はしばらく黙って淳子の顔を見ていたが、やがて口元をほんのわずかに歪め、嘲るような笑みを浮かべた。
「おばさん、ぼく、まだ背中とかうまく洗えないんだ。ね、いいでしょ?」
その口調はあくまで子どものそれだったが、含まれた響きは明らかに命令だった。淳子はぞっとして、太腿の内側がひくつくのを感じた。これは、脅しだ。拒否したら、あの覗きのことを、もしかしたら夫や悠に言うつもりかもしれない。いや、それだけではない。あの目は、もっと別の何かを要求している。
淳子はかすかにうなずき、震える手でスポンジを受け取った。
陽斗は洗面器のふちに手をつき、淳子に背中を向けて立った。細い肩甲骨が浮かび、筋肉の薄い子どもの背中が、白い湯気の中でぼんやりと光っている。淳子はボディソープをたっぷりとスポンジに含ませ、そっと陽斗の肩に押し当てた。泡が、しゅわしゅわと音を立てて少年の肌を覆っていく。首すじ、背骨のくぼみ、腰の上のくぼみ。順に泡を伸ばしていく淳子の指先は、氷のように冷たくなっていた。
背中を洗い終えると、陽斗はくるりと向きを変えた。
「まえも、おねがい」
淳子の指がぴたりと止まる。まえ、ということは、つまり胸や腹や、その下のことだ。淳子の視線が、どうしても陽斗の股間に吸い寄せられる。さっきよりもさらに質量を増したように見えるあの肉の塊が、細い腰の付け根で、かすかに震えているような気がした。
「まえは……自分でできるでしょ……?」
「おばさんが、やって」
陽斗の声に、わずかな苛立ちが混じった。そのひと言で、淳子の心の防壁はがらがらと音を立てて崩れた。ああ、この子は私を試している。そして、逆らってはいけない。
淳子はほとんど無意識に、泡のついたスポンジを陽斗の胸に押し当てた。まだ薄い胸板を、へそのあたりまで丹念に擦る。へそのすぐ下、陰毛の柔らかな茂みが、泡の下から覗いている。その茂みの中心から、さきほどの肉塊が、にゅっ、と頭をもたげていた。
淳子は手を止めた。スポンジを握る指が、わなわなと震える。もうこれ以上はだめ。ここから先は、絶対にさわってはいけない場所。
しかし陽斗は、淳子の手首をがっしりと掴んだ。十一歳とは思えない強い力だった。淳子がはっとした次の瞬間には、泡にまみれたスポンジ越しに、淳子の掌は陽斗のペニスを直に握らされていた。
ぬめり、とした肉の感触。柔らかいのに、中心には熱い芯が通っている。掌の中で、ずぐ、ずぐ、と脈打つその肉茎は、まるで別の生き物だった。淳子は悲鳴をあげそうになった。あげられなかった。
「ちゃんと、洗って」
陽斗が淳子の手首を掴んだまま、ぐい、と前後に動かす。淳子の手の中で、少年のペニスはみるみる硬度を増していった。泡のぬめりと一緒に、表皮がこすれる感触。スポンジを押しのけて、亀頭がぬぷりと顔を出し、淳子の指の腹に生暖かく触れた。にゅっく、にゅっくと音を立てて、それは膨張を続ける。血管が浮き出た幹は、淳子の細い指では到底握りきれないほどに太くなり、先端は怒張して天を向いた。
二十センチはある。淳子は確信した。夫のものよりはるかに長く、太く、そして熱い。掌の中でどくんどくんと鼓動するその凶器は、もはや少年のものではなかった。雄のそれだった。
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