第7章: 還らぬ肌、音を立てて壊れる日常(続き 2/2)
淳子は声を絞り出しながら、布団のなかで身体を縮こませた。夫はしばらく黙っていたが、やがて「疲れてるんだな。無理しなくていい」と言い、淳子に背を向けて横になった。その背中があまりにあっけらかんとしていて、淳子は逆に胸が詰まる思いがした。夫は疑ってもいない。まさか自分の妻が、小学五年生の少年に散々に開発され、その肉棒の形を膣に刻み込まれているなど、夢にも思っていないのだ。
暗闇のなかで、夫の寝息が規則正しく聞こえ始める。淳子はまぶたを閉じたが、眠れなかった。下腹部の奥が、ずきずきと疼いている。それは夫の愛撫に対する反応ではなく、陽斗の不在に対する飢餓だった。膣の内壁が、まだあの二十センチの剛直を覚えている。子宮口をぐりぐりと抉られた感触、奥深くに熱い精液を注がれた感覚、そしてアナルを舌で蹂躙されるあの背徳的な悦び。思い出すだけで、さっきまで乾いていたはずの膣口がじわりと湿り始める。夫の指には一滴も反応しなかった場所が、陽斗の幻影にはあっけなく屈服する。淳子は自分の身体がもはや夫のものではないことを、骨の髄まで思い知らされた。
寝返りを打つたび、太腿の内側が擦れて、ぬるりとした感触が広がるのを感じる。愛液が下着を濡らし、布団のなかにこもった自分の雌の匂いが、かすかに鼻腔をくすぐった。隣で眠る夫に気づかれないよう、淳子は唇を噛み締め、静かに息を吐く。早く陽斗のことを忘れなければと思うのに、忘れようとすればするほど、身体が疼き、子宮がきゅううと痙攣するのだった。
それから数日が過ぎても、淳子の身体は夫を受け入れなかった。夜、寝室で夫が型通りに愛撫を始めるたび、淳子は「疲れてるの」「頭が痛くて」と言い訳を重ねた。最初は気遣わしげだった夫も、やがて半ば諦めたように、淳子に背を向けて眠るようになった。夫の細く痩せたペニスを見るたび、淳子は無意識のうちに陽斗の巨根と比較している自分に気づき、激しい自己嫌悪に襲われる。それでも、比較することをやめられなかった。夫の指はあまりに細く、頼りなく、何よりその動きは型通りで、淳子のどこが感じるかをまったく理解していない。陽斗の指は、まるで地図でもあるかのように正確に、淳子の性感帯を探り当てたのに。そう考えるたび、罪悪感と共に、膣の奥がきゅううと疼いて、下着を濡らした。
生活は表面的に平穏だった。朝起きて、朝食を作り、悠を幼稚園に送り出し、家事をこなす。スーパーで買い物をし、夕方になれば夕食の支度を始める。テレビからはワイドショーの賑やかな声が流れ、悠がお絵かきをしている横で、淳子はアイロンをかけながら適当な相槌を打つ。けれどそのすべてが、薄い膜の向こう側の出来事のように感じられた。現実の淳子はまだ、あの五日間の生温かい夢のなかにおり、夫の寝室でさえ、陽斗の幻影が拭えないでいる。
ある午後、淳子は台所で夕食の下ごしらえをしながら、ふとスマホの画面を覗き込んだ。カレンダーのアプリを開き、来月の予定を確認する。夫の出張がまた入っていた。今度は三泊四日。画面の文字をなぞる指先が、かすかに震える。胸の奥で、何かが小さく弾けた。
そのとき、淳子の指はほとんど無意識に、連絡帳のアプリを立ち上げていた。スクロールしていく宛先の一覧のなかに、「陽斗」の文字がまだ残っている。削除しようと思えばいつでもできたのに、淳子はそれをせずにここまで来てしまった。あの日の朝、駅の改札で「また呼んでね」と囁いた少年の声が、耳の奥で蘇る。小さな唇が、あんなに無垢なくせに、酷く残忍な笑みを浮かべていた。そして今、その番号を前にして、淳子の指は削除ボタンを押すことができないでいる。画面を見つめる淳子の瞳は、かつての貞淑な妻のものではなかった。そこには、肉の快楽に渇き切った雌の飢えが、静かに、しかし確かに燃えていた。
夕方、幼稚園に悠を迎えに行く道すがら、淳子はふと立ち止まり、空を見上げた。晩夏の入道雲が、西日を受けて橙色に染まっている。陽斗が来たのも、こんな雲が浮かぶ夏の日だった。あの時はまだ、自分は何も知らなかった。知らなければ、こんな風に苦しむこともなかったのだろうか。けれど、知らなければ、あの暴力的なまでの快楽を知ることもなかった。淳子の内腿が、記憶のなかの巨根を思い出して、じわりと疼く。
夜、悠を寝かしつけた後、夫はすでに布団で寝入っていた。淳子は台所の片隅に立ち、シンクにもたれかかりながら、再びスマホを手に取った。画面が淡く光り、連絡帳の「陽斗」の文字を照らし出す。ためらいながら指を伸ばし、そっとその名前をタップする。発信ボタンが画面に現れ、淳子はしばらくそれをじっと見つめた。心臓がうるさいほどに脈打ち、手のひらには汗が滲んでいる。
「……だめよね、こんなこと」
淳子は呟きながら、それでもスマホを置くことができなかった。来月、夫が三泊の出張に行く。その間、悠をどこに預けるか――義母に頼むという手もある。けれど頭の片隅で、別の計画が静かに形を成し始めている。陽斗を呼ぼうか。そんなことをすれば、もう本当に戻れなくなる。夫との関係は、決定的に壊れてしまうだろう。けれど、戻れなくなることへの恐怖よりも、陽斗のあの熱い楔を再び胎内に感じたいという渇望のほうが、今の淳子にははるかに大きかった。だってもう、だめかも…わたし。
淳子はゆっくりと画面を閉じ、スマホを胸に抱きしめるように握り締めた。台所の小さな窓からは、虫の声が流れ込んでくる。隣室からは、夫の寝息と、悠の小さな寝返りの音が聞こえた。この家は、これまで通りの平穏な仮面を保っている。けれどその内側で、淳子の身体と心は、もう決定的に壊れてしまっていた。壊れて、なお、その破片は少年の肉棒を求め、疼き、濡れている。かつての淳子はもうどこにもいない。ここにいるのは、十一歳の少年に開発され、その快楽の虜となった、一匹の雌だった。
来月、また夫は出張に行く。スマホのカレンダーに印をつけながら、淳子は暗闇のなかで、かすかに微笑んだ。その笑みは、夫の前では決して見せない、濡れて妖しい光をたたえていた。
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