第4章: 土俵の下で濡れる秘密
第4章: 土俵の下で濡れる秘密
夏の終わりは、夕方の風にほのかな涼しさが混じり始めていた。
校庭の片隅にある土俵には、砂利が今日もきれいに均されていた。最後の稽古という言葉が、どこからともなく自然に決まっていた。新学期が始まれば、こうして放課後に集まることも難しくなるからだ。
美佳は木陰でカバンを開き、白いさらし布を取り出した。
指先が少し震えた。今日で終わりなんだ、という思いが、胸の奥でひっそりと疼いた。もうあの感触を味わえなくなる。その考えが、なぜか寂しさよりも強い焦燥を生み出していた。
「お、今日も来てるじゃん」
拓也の声が背後から聞こえた。
振り返ると、彼はすでにまわしを締め終え、汗拭き用のタオルを肩にかけていた。茶髪のくせ毛が汗で少し湿り、額にぺたりと張り付いている。
「当たり前でしょ。最後だもん」
美佳はそう返すと、ゆっくりと半袖のTシャツの裾をめくり上げた。
肌が外気に触れる。もう慣れたはずなのに、毎回この瞬間は胸が高鳴る。布が巻きつけられるたびに、スポーツブラの下にある柔らかい膨らみが押し付けられ、形がくっきりと浮かび上がる。
結び目を背中で固く結ぶとき、彼女はふと茂の視線を感じた。
土俵の縁に立つ茂が、こちらをじっと見つめていた。黒い瞳に、いつものからかいや挑発はなかった。むしろ、何かを深く考えているような、重たい沈黙が漂っている。
「どうしたの?」
美佳が尋ねると、茂はぱっと目をそらした。
「……別に。早くしろよ。今日は最後だ、本気で勝負しようぜ」
その声は、どこか固く締まっていた。
寛も到着し、無言でうなずきながらまわしを締め直した。彼の灰色の瞳が、美佳の胸元を一瞬掠めると、すぐに砂利の上に落ちた。耳たぶがほんのり赤くなっている。
四人が土俵を囲んだ。
空は夕焼けの始まりを告げる薄橙色に染まり始め、雲の端が金色に縁取られている。風が吹き抜けるたびに、木々の葉がざわざわと音を立てた。
「じゃあ、最初は俺とだな」
茂が土俵の中央に踏み出した。
腰を落とし、がっしりとした肩を前に構える。その姿は、いつも以上に威圧的に感じられた。美佳は息を深く吸い込み、自分も腰を落とした。
砂利が素足の裏にごつごつと刺さる。
――最後だ。思い切りやろう。
心の中でそうつぶやき、美佳は茂の目を見据えた。
距離が縮まる。
手と手が触れ合い、指が絡む。茂の掌は、すでに温かく、少し汗ばんでいた。その熱が、美佳の指先から腕へ、そして胸の奥へと伝わってくる。
そして、体がぶつかった。
「ぐっ……」
衝撃が、胸の柔らかい膨らみを直撃する。
茂の右肩が、左胸のふくらみの真上に沈み込む。布一枚を隔てただけの肌の熱。汗で湿った皮膚が、さらし布の上を滑るように擦れ合う。
「ん……!」
声が喉の奥で軋んだ。
美佳は唇を噛みしめ、踏み込む。足の裏で砂利を掴み、体重を前に乗せていく。茂も押し返してくる。二人の体は、ぎりぎりまで密着し、互いの呼吸が混ざり合う。
汗の匂い。土の匂い。そして、どこか甘く酸っぱい、少年の体臭。
そのすべてが、美佳の鼻をくすぐり、体の内側でじんわりと火をつける。
「ふん……まだやれるか?」
茂が唸るように言った。
彼は左足を一歩引くと、美佳の体を右へ捻ろうとする。力強い腕が彼女の背中をぐいと抱き寄せ、胸と胸がより強く押し付けられる。
その時だ。
茂の腹筋が硬く盛り上がった下腹部が、美佳のへその下あたりに、ぐりっと押し込まれてきた。
「あ……」
柔らかい衝撃が、下腹部の奥深くまで響く。
股の間のあの敏感な場所が、間接的に圧迫される。一瞬、電気が走ったような痺れが、腰の裏側をくすぐるように駆け上がった。
美佳の膝が、わずかに震えた。
「どうした、もう限界か?」
茂の声が、至近距離で響く。彼の息が頬に温かく触れる。黒い瞳が、美佳の顔を鋭く覗き込んでいる。
「……違うよ」
美佳はかすれ声で答えた。
でも、体が言うことを聞かない。股間がじんわりと熱を帯び、内腿の内側にぬめっとした湿りが滲み始めるのを感じていた。あの感覚が、また来た。怖いくらい気持ちいいあの感覚。
茂は何も言わず、再び押し込んできた。
今度はわざとなのか、体の角度を微妙に変え、下腹部同士がより密着するようにしてくる。硬い筋肉の塊が、柔らかな腹を通り越し、さらに下へと圧迫をかける。
「はあ……っ」
吐息が甘く歪んだ。
美佳は目を閉じそうになるのを必死にこらえた。でも、体の奥で何かがぴくぴくと跳ね始める。胸の先端も、布に擦られてちくちくと疼いている。
揉み合いが続く。
砂利の上で足を滑らせ、体勢を立て直し、また押し合う。汗が噴き出し、さらし布はみるみるうちに重たくなる。布が汗で肌に張り付き、動くたびにちゅるりと剥がれる音が、恥ずかしいほどにはっきりと聞こえる。
拓也と寛が土俵の縁で見守っている。
その視線が、肌をじりじりと焼く。特に寛の灰色の瞳が、美佳の胸元に張り付いた布の、くっきりと浮かび上がった形を、一言も発せずに追いかけているのを感じた。
「ほら、そろそろ決めるぞ」
茂が低く宣言した。
彼は一気に力を込め、美佳を土俵の端へと押し詰めていく。足がずるずると後退し、砂利が背中に当たる位置まで追い込まれる。
もう後がなくなった。
美佳は必死に耐える。が、茂の体が彼女の体全体に覆いかぶさるように密着する。
胸と胸。腹と腹。脚と脚。
すべてが汗でぬれた肌と布で接し、擦れ合う。
そして、茂が最後の一押しをかけた。
ぐいっ。
彼の汗だくの腹が、美佳のさらし布の上を、ゆっくりとこするように動いた。
その摩擦が、たるんだ布の内側で、彼女の左胸の乳首を直接こすり上げる。
「あ、んんっ……!」
足が竦んだ。
今までにない強烈な感覚が、胸の先端から腰の奥まで一直線に走る。熱い。痺れる。気持ちいい。怖い。すべてが混ざり合い、頭の中が真っ白になる。
声が、大きく甘く漏れてしまった。
茂の動きが、ぴたりと止まった。
彼の顔が、美佳の至近距離に迫る。目と目の距離は、二十センチもない。彼の黒い瞳が、大きく見開かれ、何かを理解したような、しかし混乱した光を宿している。
「……美佳」
声が、低く濁っていた。
「声、出てるよ」
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