第5章: 膣に残る精液と式場見学
第5章: 膣に残る精液と式場見学
俊夫が去った後、部屋には昨夜の淫らな空気だけが濃く残っていた。
亜理砂はベッドの端に腰かけ、しばし動けなかった。シーツはぐしゃぐしゃに絡まり、あちこちに白濁した斑点が乾きかけている。自分の腿の内側も、べとべとと固まり始めた精液で汚れていた。立ち上がろうとした時、ふと股間から温かいものがじわりと流れ出る感覚があった。
――あ……。
彼女はそっとその場所に手を当てた。スカートははいておらず、下着だけだった。指先が布地に触れると、ぬるっとした湿り気が伝わってきた。俊夫が最後に中に出したのが、そう何時間も前のことではない。膣の奥深くに注がれた精液が、体温で温められながら、ゆっくりと外へ滲み出ようとしているのだ。
シャワー室へ向かう足取りは重かった。
鏡に映った自分は、目尪み、首筋にはいくつも赤い痕が浮かんでいた。俊夫が吸い付いた跡だ。彼女はそっとその一つに触れ、微かに疼く感覚に目を閉じた。
湯を浴びながら、できるだけ丁寧に股間を洗った。石鹸の泡でぬめりをこすり落とそうとするが、指を膣の入口まで入れても、なかなか奥まで届かない気がした。少し強く押し込むと、ぐちゅりと嫌な音がして、まだ温かい液体が指の腹に絡みつく。
――出てきて……。
何度も洗い流そうとした。熱いシャワーの水を直接当て、指で中をかき混ぜるようにして。それでも、粘膜に染み込んだような感覚だけは消えなかった。俊夫の匂いが、皮膚の奥に張り付いているようだった。
バスタオルで体を拭きながら、スマートフォンの着信音が聞こえた。
画面上には、健太からのメッセージが表示されていた。
『お疲れ様。出張、そろそろ終わる? 午後から式場見学の約束だけど、時間大丈夫? 楽しみにしているよ』
文字の端々に、彼の穏やかな笑顔が浮かんでくるようだった。亜理砂は胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。彼は何も知らない。昨夜、彼の婚約者が、別の男のベッドで何度も喘ぎ、中に出されることを許し、恥ずかしい写真まで撮られていたことを。
「……大丈夫、よ」
彼女は独り言のように呟き、返信を打った。
『うん、問題ないよ。そっちに直接向かうから、待っててね』
送信ボタンを押す指先が、わずかに震えていた。
ホテルをチェックアウトし、電車に乗った。指定された式場は郊外にあり、一時間近くかかる。座席に腰掛け、窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めていた。
するとまた、太ももの間にじんわりと温かいものが広がる感覚がした。
――まだ……出てくる。
彼女はぎゅっと腿を閉じた。スーツのスカートの下で、ストッキングが肌に密着している。その間に、ほんのりと湿り気が滲んでいく。俊夫の精液が、体温で溶け出し、ナプキンでは防ぎきれずに漏れているのだ。電車の振動で、その温もりがより鮮明に意識される。
恥ずかしさよりも先に、またぞろと膣の奥が疼いた。あの激しいピストンの記憶。子宮口を打ち付ける鈍い衝撃。熱い液体が注ぎ込まれる時の、ぞくっとするような快感。
――ダメ、考えちゃダメ。
彼女は首を振り、バッグから化粧鏡を取り出した。顔色を確かめ、口紅を軽く直す。そうしているうちに、目的地の駅に到着した。
式場は、小高い丘の上に立つ白亜の建物だった。広い庭にはバラが植えられ、秋の柔らかな日差しが石畳を照らしている。結婚式場らしい、清潔で厳かな空気が漂っていた。
入口近くのベンチに、健太が座っていた。
紺のスーツに身を包み、手には式場のパンフレットを持っている。彼はふと顔を上げ、亜理砂の姿を見つけると、にっこりと笑った。その笑顔は、いつものように優しく、彼女のことを心から大切に思っていることが伝わってくるような温かさに満ちていた。
「お疲れ様。遅くなかった?」
健太が立ち上がり、近づいてきた。
「ううん、ちょうどよかったよ」
亜理砂はできるだけ自然な笑顔を作ろうとした。彼の腕が軽く彼女の肩に触れる。その瞬間、彼女は全身がこわばるのを感じた。俊夫の腕とは違う、細くて優しい腕の感触。でも、その優しさが今、かえって胸を刺すように痛んだ。
「中に入ろうか。担当の方が待ってるって」
健太がそう言い、そっと彼女の背中を押した。
式場の中は、外観以上の豪華さだった。高い天井からシャンデリアが下がり、白い柱がずらりと並ぶ廊下。披露宴会場は、まるで宮殿のような広間で、テーブルには真っ白なクロスがかけられていた。
担当の女性が、明るい口調で説明を始める。
「こちらがメインホールで、最大三百名様までご利用いただけます。天井の高さがございますので、開放感がありながらも、音響も非常にクリアで……」
亜理砂はうなずきながら話を聞いているふりをした。だが、耳に入ってくるのは言葉の断片だけだった。意識の半分は、まだ股間の温もりに囚われていた。もう半分は、スマートフォンの中に保存されているあの恥ずかしい画像へと飛んでいく。
俊夫に撮られた、自分の臀部を高く突き出した写真。唾液で光る陰唇の接写。恍惚とした表情。
――あの写真、消さなきゃ。
そう思う一方で、消すのが惜しいという感情もわき上がった。昨夜だけの、二度と戻らない時間の、唯一の証拠。それを消してしまったら、全てが夢だったことになってしまう。
「亜理砂?」
健太の声で、はっと我に返った。
「どうしたの? 疲れてる?」
彼は心配そうに眉をひそめ、彼女の顔を覗き込んだ。その瞳には、純粋な憂いが浮かんでいる。彼は彼女の些細な変化にも、すぐに気づく人だった。
「ううん、大丈夫。ちょっと昨日、寝不足で」
亜理砂は微笑み、そっと手を振った。その笑顔が、どれだけ不自然であるか、自分でもわかっていた。でも、止められなかった。健太を傷つけたくなかった。この優しい人を、もっと深く傷つけることだけは避けたかった。
「そっか。無理しちゃダメだよ。今日は早めに切り上げようか?」
「平気、平気。せっかくだから、全部見ていこうよ」
彼女はそう言い、健太の腕に軽く寄りかかった。彼の体からは、清潔な柔軟剤の香りがした。俊夫の、汗と皮脂と性の匂いとは全く違う、整った生活の匂い。
説明は続き、次はチャペルへ移動した。
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