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まわし一枚、少女の相撲取り

露出/羞恥 全5章 約51分で読了(25,076字) 短編 2026年4月25日

あらすじ

放課後の校庭の片隅で、眞鍋美佳は相撲仲間の男子たちと毎日のように稽古に明け暮れていた。負けず嫌いの美佳は、男の子たちに混じって土俵入りし、必死に四つに組む。ある暑い日のこと、高橋茂がふと、汗で透けた美佳のTシャツの下を見ながら、「女の子とは所詮、Tシャツ着て本当の相撲取りじゃないよね。体と体がぶつかり合う感じが違うんだよね」と口にした。その言葉に、美佳は胸がチクリと疼く。悔しさがこみ上げてくる。茂や他の男子たちの顔を見渡すと、拓也がいたずらっぽく笑い、寛はじっとこちらを見つめている。美佳は歯を食いしばり、「そんなことない。私だって本当の相撲取りだもん」と宣言する。その夜、布団の中で茂の言葉が頭を離れない。Tシャツの下で、最近ほんのり膨らみ始めた胸が、なんだか熱く感じられる。

第1章 稽古場の一言

第1章: 稽古場の一言

放課後の校庭は、夏の日差しをたっぷりと浴びて、土の匂いを熱く膨らませていた。

グラウンドの隅にこしらえた簡素な土俵は、子どもたちの足で踏み固められ、表面がつやつやと光っている。その真ん中で、眞鍋美佳は息を弾ませながら、がっしりとした体格の高橋茂と四つに組んでいた。彼女の細い腕は、茂の太い二の腕に絡みつき、踏ん張る足の裏には砂がくっついてざらつく。

「うっ……!」

歯を食いしばる声が、熱い空気の中に漏れた。

美佳の額には、大粒の汗がにじみ出て、頬を伝い落ちる。半袖の白いTシャツは、背中全体が汗で深く濡れ、薄い綿地が肌に張り付いていた。肩にかかった黒髪もびっしょりと湿り、首筋にへばりつく感触が、いらだたしいほどだった。

「まだまだだな、美佳!」

茂が嗤った。彼の声は、変わりかけの嗓音で少しざらついていた。

美佳は黙って、更に力を込める。スレンダーだが、相撲の稽古で鍛えられた柔らかな筋肉が、細い腕に浮かび上がる。それでも、茂のがっしりとした肩幅と、がたいの良さには敵わない。じわじわと押し戻され、土俵の縁が足の裏に近づくのを感じた。

――くそっ。

負けず嫌いの心が、焦りの炎を燃え上がらせる。

男の子たちに混じって相撲を取るようになって、もう何年になるだろう。小さい頃から、近所の男の子たちと取り組んでは転がされ、泣きながらまた立ち上がってきた。五年生になった今では、同じクラスの男子の中でも、そう簡単に負けることはなくなっていた。つもりだった。

でも、高橋茂だけは別だ。

彼は群を抜いて力が強く、何より相撲がうまい。美佳が必死に技をかけようとしても、軽くいなされてしまう。そんな歯がゆさが、今日も胸の奥をじんわりと焦がしていた。

「ほら、もうだめだろ!」

茂が一気に押し込んだ。

美佳の足が土俵の縁を踏み外し、砂の上にずりっと滑る。がくんと腰を落とし、転びそうになるのを、ぎりぎりで踏みとどまった。

「ちぇっ……また負けかよ」

ぽつりと呟くと、茂は満足そうに胸を張った。

「当たり前だろ。お前、女の子なんだからさ」

その言葉に、美佳はぷいと頬を膨らませた。

「女の子だからって関係ないよ! 練習すればできるようになるんだもん!」

「でもさ」

茂は、汗で透けた美佳のTシャツの胸元に、ちらりと目をやった。ほんのりと膨らみ始めたそのあたりは、薄い白地の下に、小さな影を落としている。

「女の子とは所詮、Tシャツ着て本当の相撲取りじゃないよね」

ふいと放たれた言葉に、美佳の動きが止まった。

茂は続けた。無造作に、しかし確かに意味を込めて。

「体と体がぶつかり合う感じが違うんだよね。まわし締めて、肌と肌が直接ぶつかるのとは、全然違うって」

空気が、ほんの少し重くなった。

美佳は、自分の胸がチクリと疼くのを感じた。それは、今まで感じたことのない種類の痛みだった。悔しさとも、恥ずかしさともつかない、熱い塊が喉の奥にこみ上げてくる。

「……な、何言ってるのよ」

声が、思ったより小さく震えているのが、自分でもわかった。

土俵の脇で見ていた佐藤拓也が、いたずらっぽく口元を歪めた。

「おっ、茂、それなんか深いこと言い出したな」

「だろ? だって本当のことだもん」

茂は涼しい顔をしている。彼には、悪気はないのだろう。単純に、思ったことを口にしただけなのかもしれない。でも、その無造作さが、美佳の胸を更に締め付けた。

――違う。

――私だって、本当に相撲がしたいんだ。

――Tシャツを着てたって、本気なんだよ。

唇を噛みしめながら、美佳はそっと自分の胸に手を当てた。Tシャツの下で、ほんのりと温かい膨らみが、掌に触れる。最近、急に気になり始めたあの感触が、今、妙に生々しく感じられた。

小林寛は、相変わらず無口で、土俵の端に座っていた。だが、彼の目が美佳の体をじっと見つめているのを、美佳は感じた。そばかすのある顔から、灰色がかった瞳が、汗で濡れたTシャツの布地に張り付いているのを、はっきりと見て取れた。

その視線が、何故か肌に刺さるように疼いた。

「……違うよ」

美佳は、ゆっくりと顔を上げた。

茂と拓也と寛。三人の男子の顔を、順番に見渡す。茂は相変わらず勝ち誇った表情、拓也は興味津々な目、寛は熱く静かな視線。

歯を食いしばると、口の中に鉄のような味が広がった。

「そんなことない。私だって本当の相撲取りだもん」

声は、少しだけ力強くなっていた。

茂は眉を上げた。

「へえ、そういうこと?」

「そういうことよ!」

美佳は踏み出した一步を、土俵の中心に刻み込む。砂がはねて、裸足の甲にかかる。

「明日も稽古するからね! 絶対に、茂を負かしてやるから!」

「おう、面白くなってきたじゃん」

拓也が手を叩いた。

寛は、微かに息を吸い込む音を立てた。それだけだったが、美佳には、その小さな音がなぜか耳に残った。

その日は、いつもより早く稽古が終わった。

夕日が校庭をオレンジ色に染め始める中、美佳はランドセルを背負い、ひとりで歩道を歩いていた。茂の言葉が、頭の中でぐるぐると回り続けている。

――体と体がぶつかり合う感じが違う。

――本当の相撲取りじゃない。

くちゅんと、道端の小石を蹴飛ばした。

「そんなことないのに……」

呟きは、熱い風に消えてしまった。

家に着き、風呂に入り、晩ごはんを食べても、胸の奥にこびりついたもやもやは消えない。お母さんが「どうしたの、元気ないね」と心配そうに声をかけてきても、美佳は「なんでもないよ」と笑ってごまかした。

布団に入ると、天井の木目がぼんやりと見えた。

部屋は暗く、窓の外からは虫の声が聞こえている。もうすぐ夏休みだというのに、なんだか胸が苦しい。

茂の言葉が、もう一度、頭の中をよぎった。

――女の子とは所詮。

――肌と肌が直接ぶつかるのとは、全然違うって。

……肌と肌。

そっと、自分の腕を撫でてみる。Tシャツの袖越しに、柔らかく温かい肌の感触が伝わる。相撲でぶつかり合う時、茂たち男子は、まわし一枚で肌を露出している。あのぎらぎらとした汗の光り方、筋肉の動きが直接見えるあの感触。

美佳は、いつも半袖のTシャツに短パンだった。

もちろん、女の子だから、それ以上は脱げない。当たり前のことだ。でも、その「当たり前」が、今日に限って、なぜか鋭い棘のように胸に刺さって離れない。

ふと、Tシャツの裾をめくってみた。

暗闇の中で、自分の腹が見える。平坦で、少しだけ稽古でついた筋肉が硬く浮かび上がっている。その上に、ほんのりと膨らみ始めた胸が、小さな影を作っている。

指先で、そっと触れた。

柔らかく、温かい。最近、急に膨らみだしたここが、なんだか妙に熱く感じられる。茂がちらりと見たその場所が、今、自分で触ると鼓動を打っているように思えた。

――あれ、私……。

ぱっと手を離し、布団をぐいっとかぶった。

顔が熱い。何でだろう。別に、悪いことなんてしてないのに。ただ相撲がしたいだけなのに。

でも、寛のじっと見つめる視線を思い出す。

拓也のいたずらっぽい笑いを思い出す。

そして、茂の、あの無造作で確信に満ちた言葉を思い出す。

次の日、学校で茂に会ったら、何て言おう。また稽古をする時、あの土俵の上で、どうやって立ち向かおう。Tシャツのままじゃ、本当の相撲取りじゃないって言われたままでいいのか。

――いやだ。

布団の中で、拳をぎゅっと握りしめた。

絶対にいやだ。私だって、本当に相撲がしたい。男の子たちと同じように、がっつりと四つに組んで、土の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、本当の勝負がしたい。

でも、どうやって?

その答えは、まだ見えていない。

ただ、胸の奥で、何かがゆっくりと動き始めているのを感じた。今まで気にしたことのなかった自分の体が、ふと、大きくて厄介なものに思えてきた。

窓の外で、蝉の声が一斉に響いた。

夏の夜は、まだまだ深くならない。

第2章 まわし一枚の決意

第2章のシーン

第2章: まわし一枚の決意

前日の茂の言葉は、美佳の胸の奥に棘のように刺さったまま抜けなかった。

放課後の校庭は、同じ時間、同じ場所で、同じように陽が傾き始めている。土俵と称した砂地の円形のスペースには、すでに茂と拓也、寛の三人の姿があった。彼らはそれぞれまわしを締め直し、肩を回し、いつもの稽古前の準備に余念がない。

美佳は校舎の影から一歩踏み出した。

――違う。私だって。

心の中で繰り返す言葉が、震える膝をわずかに支えてくれる。手に握りしめた白いさらし布は、朝からカバンに隠し持っていた。母親に内緒で、使い古した浴衣の帯を切って自分で用意したものだ。

「お、来たな」

茂がまず気づいた。彼は腕組みをしたまま、少し挑戦的な笑みを浮かべている。

「今日もTシャツで頑張るのか? まあ、女の子だし、仕方ないけどさ」

その言葉が、最後の引き金になった。

美佳は土俵の縁まで歩み寄ると、カバンをそっと地面に下ろした。拓也が興味深そうに眉を上げ、寛は砂利の上で足をずらす小さな音を立てた。彼の視線が、自分の半袖のTシャツの上を、じっと這っているのを感じる。

暑い。夕方だというのに、陽の名残りが肌をじりじりと焼く。

「……違うよ」

声が少しだけ震えたが、美佳はしっかりと茂を見据えた。

「今日は、同じ格好でやる」

拓也が口を開いた。

「え、どういうこと?」

美佳は答えない。代わりに、両手でTシャツの裾をつかんだ。綿の生地は、少し汗ばんでいて、肌に張り付くような感触がある。指先が震えている。心臓が喉元まで上がってきそうな鼓動を打つ。

ゆっくりと、裾をめくり上げていく。

まず腹が見えた。平らで、相撲の稽古で少しだけ腹筋の線が浮かんでいる幼い腹部。外気が汗で湿った肌に触れ、鳥肌が立つのが自分でもわかる。くすぐったいような、冷たいような。

「おっ……」

拓也の声が、普段より半音高かった。

めくり上げる手を止めない。脇腹が見え、肋骨のわずかな盛り上がりが現れる。そして、下着の上端――いつもの白い綿の子ども用スポーツブラの縁が、ちらりと見えた瞬間、美佳は一息に、Tシャツを頭の上まで引き上げた。

脱ぎ捨てる。

肩から腕を抜くとき、髪が少し絡んだ。もつれた黒髪をかき分けながら、脱いだTシャツをカバンの上に放り投げる。上半身は今、スポーツブラだけで覆われている。薄い布越しに、ほんのりと膨らんだ胸の輪郭がはっきりと浮かび上がる。まだ小さい、けれど確かにそこにある、柔らかなふくらみ。

空気が、肌に直接触れる。

今までとはまったく違う感覚だった。風が胸の上を、腹を、背中を撫でていく。汗が冷え、逆に体中が火照ってくるようだ。顔から首筋にかけて、一気に血が上る熱さが走った。

「ま、マジで……」

拓也が呆然としたように呟く。

茂は腕組みを解き、目を少し見開いていた。彼の表情から、からかいの色が一瞬引いた。驚きと、何か別の、言葉にできない感情が混ざっているように見えた。

寛は、一言も発しない。ただ、灰色がかった瞳が、美佳の胸元から腹へ、そして再び胸へと、ゆっくりと移動している。彼の喉が、ごくりと動いた。

――見てる……みんな、私の体を……

その視線の重みが、肌をじりじりと焼く。恥ずかしい。逃げ出したい。でも、ここで引いたら、茂の言った通りになってしまう。

美佳は歯を食いしばった。

カバンから白いさらし布を取り出す。長さはおよそ二メートル。彼女はそれを胸の前で広げると、一端を脇に挟み、もう一端を背中に回し始めた。

布が素肌に触れる。さらりとした、少し硬い感触。何度も巻きつける。ぎゅっと引っ張るたびに、スポーツブラの下にある柔らかい膨らみが押し付けられ、形がくっきりと布に浮かび上がる。上から巻きつけていくので、胸は布によって押さえつけられ、少し平らに潰されるような圧迫感がある。

巻き終わると、端を胸の前で結ぶ。結び目が、ちょうど胸の谷間のあたりに来る。

下半身は、短パンの下にもう一枚、同じようにさらし布を巻いていた。朝、トイレでこっそりと巻きつけてきたものだ。これで、上半身も下半身も、男子たちと同じ「まわし一枚」の状態になった。

美佳はゆっくりと顔を上げた。

「……ほら」

声はかすれていた。喉が渇いている。

「同じ格好でしょ? だから、私も本当の相撲取りだ」

茂は数秒間、黙って彼女を見つめていた。その視線は、彼女の胸元に巻かれた白い布、その下にくっきりと浮かぶ幼い乳房の形を、確かめるように通り過ぎる。そして、彼は鼻で笑った。

「……ああ、そうだな。まわしは巻いたな」

彼は肩をすくめた。

「でも、それだけじゃ意味ないぞ。本当に同じかどうかは、組んでみなきゃわかんねえからな」

「組むよ」

美佳は即座に答えた。足を土俵の中へ踏み入れた。砂利が素足の裏にごつごつと当たる。いつもの感触だ。でも、上半身の軽さ、布一枚で風が直接肌を撫でる感覚は、すべてを違うものに変えていた。

拓也がくすくすと笑った。

「すげえなあ、美佳。本当にやっちゃったよ。で、その……その布、ちゃんと止まってるの? 組んでるうちに外れたりしない?」

「大丈夫だよ。しっかり巻いたから」

美佳はそう言いながら、内心ではどきどきが止まらなかった。確かに、ぎゅっと巻きつけてはいるが、激しく動けば緩んでくるかもしれない。結び目が解けるかもしれない。その想像が、また一層恥ずかしさをかき立てる。

寛が、ようやく口を開いた。彼の声は低く、少し掠れていた。

「……寒くない?」

その心配そうな、しかしどこか熱を帯びた問いかけに、美佳は首を振った。

「平気。動いてたら汗かくし」

「そ、そうか……」

寛はまた黙り、視線を土俵の砂利に落とした。しかし、その耳たぶが少し赤くなっているのが、美佳にも見て取れた。

茂が土俵の中央に立った。彼はがっしりとした肩を前に出し、腰を落とす。いつもの、四つに組む前の姿勢だ。

「よし、来い。最初は俺とだ。いつも通り、ちゃんと四つに組んでからな」

「わかってる」

美佳も腰を落とした。砂利が膝の裏に当たる。胸に巻いた布が、体を屈めるたびに少しずつ押し付けられ、柔らかい肉が布の上からも形を変えるのを感じる。

二人の距離が縮まる。

茂の体からは、すでに汗の匂いがほのかに漂っていた。男の子特有の、少し酸っぱいような、しかしどこか生き生きとした匂い。今まで何度も嗅いだことのある匂いなのに、今日はなぜか、鼻の奥にじんと響く。

手と手が触れ合う。

まずは右手同士が、軽く触れる。茂の掌は、すでに温かく、少し湿っている。美佳は彼の指の間に自分の指を絡める。四つに組むための、最初の動作だ。

次に左手。

そして、一気に距離が詰まる。

体がぶつかる。

今まで何度も経験した衝撃だった。茂のしっかりとした肩、分厚い胸板が、自分の体に押し寄せてくる。いつもなら、その間にTシャツの薄い生地が一枚挟まっている。それがクッションになり、衝撃を和らげていた。

今日は違った。

茂の右肩が、美佳の左胸――白いさらし布に覆われた、柔らかな膨らみの真上に、直接ぶつかった。

衝撃は、確かに柔らかい。

硬い骨や筋肉の塊が、布一枚を隔てただけで、その下にある弾力のある柔らかい肉団子に沈み込むような感触。押し付けられる。ぎゅっと。布越しに、相手の体温がじわっと伝わってくる。茂の汗でわずかに湿った肌が、さらし布の上を滑るように擦れる。

「……んっ」

声が、零れた。

短く、息を詰まらせたような、しかしどこか甘くふやけた音。美佳自身、その声が出たことに驚いた。顔が一気に熱くなる。恥ずかしさが、頭のてっぺんからつま先までを走った。

茂の動きが、一瞬止まった。

彼は至近距離で、美佳の顔を見下ろしていた。目と目の距離は、三十センチもない。彼の黒い瞳が、わずかに揺らいでいるように見えた。

「……なんだ、その声」

彼の声も、いつもより低く、濁っていた。

「痛いのか?」

「違う……!」

美佳は慌てて否定した。でも、どう説明すればいいのかわからない。痛いわけじゃない。むしろ……変な感じ。今までにない感覚。ぶつかった衝撃が、胸の奥深くまでじんわりと響いて、それがなぜか股のあたりまで微かに震えが伝わるような。

「痛くないなら、いいだろ」

茂はそう言いながら、再び押し込んでくる。今度は左肩が、美佳の右胸に当たる。同じように、柔らかく沈み込む感触。布が擦れる。彼の鎖骨の硬さが、胸の柔らかい頂点を、わずかに押し上げる。

また、体の奥で何かが疼く。

美佳は必死に耐えた。声を漏らさないように、唇を噛みしめる。でも、呼吸が自然に荒くなっていく。はあ、はあ、と息が喉を通るたびに、胸が布に押し付けられ、また緩む。その繰り返りが、何かを刺激しているようだった。

「おいおい、もう息上がってんじゃねえか?」

拓也が脇から声をかけた。彼は土俵の縁に座り、あごを乗せた手の上から、興味津々に二人の組み手を見つめている。

「女の子だし、まわし一枚じゃ体力持たねえよ、きっと」

「……持つよ」

美佳は歯ぎしりしそうな声で言った。茂の押し込みに耐えながら、自分も踏み込んでいく。足の裏で砂利を掴み、腰を前に押し出す。

体と体が、より密着する。

茂の腹筋が硬く盛り上がった腹が、美佳のへその下あたりに当たる。彼は背が少し高いので、自然にそうなる。その圧迫が、下腹部にじんわりとした熱を生み出した。

「ふん……まだやるか」

茂が唸るように言った。彼も呼吸が荒くなっている。しかし、それはこれまでの稽古とは明らかに違う種類の荒さだった。息遣いが熱く、一つ一つに力が込められている。

彼は右足を一歩引くと、美佳の体を左へ捻ろうとする。体勢を崩すための、基本的な技だ。

美佳はそれに耐え、逆に右へ押し返す。

その時だ。

茂の左腕が、彼女の背中をぐっと抱き寄せるように回り、掌が彼女の背中のさらし布の結び目に、偶然触れた。

びくり。

美佳の背筋が跳ねた。

茂の指先が、背中で結んだ布の結び目を、わずかに擦り上げた。ぎゅっと縛った結び目は硬く盛り上がっている。その盛り上がりを、彼の指の腹が通り過ぎる。ほんの一瞬の接触だったが、布越しに伝わる彼の体温と、圧迫が、背中全体に痺れるような感覚を走らせた。

「っ……!」

今度は声にならない息が漏れた。

茂はその微かな変化に気づいたか、掌をぱっと離した。しかし、その離し方が、どこか慌てているように見えた。

「……お前、背中、汗びっしょりじゃねえか」

彼はそう呟いた。声がかすれている。

「そ、そうかな……」

美佳は俯き加減に答えた。本当に汗で背中が濡れているのか、それとも別の理由で肌が火照っているだけなのか、自分でもわからない。ただ、茂の手が触れた場所が、今もぽかぽかと熱を帯びて残っている。

「まあ、いいや。続けろ」

茂は再び体制を整えた。しかし、その目つきは先ほどより鋭く、美佳の体の動きを、細かく追っているようだった。彼の視線が、彼女の胸元に巻かれた布の、わずかに緩んで浮き上がった部分を、何度もちらりと掠めていく。

次の組み手は、より激しかった。

あるいは、美佳の感覚がより敏感になっていただけなのかもしれない。

茂の肩が胸にぶつかるたびに、柔らかい衝撃が波のように広がる。彼の脇腹が、彼女のわき腹に擦れる。布同士がこすれ合い、ざらざらとした音を立てる。汗が混じり合い、布が次第に湿り、重たくなる。

美佳は、次第に自分の体の中に生まれている変化に気づき始めていた。

胸の先端が、布に擦れるたびに、ちくちくと疼く。それは痛みというより、むずがゆいような、かゆいような、しかし放っておけないような感覚。脚の付け根、股のあたりが、じんわりと熱を持ってきている。内腿の内側が、汗ではなく、別の温かい湿りで少しぬめり始めているような錯覚さえ覚える。

――なに、これ……

怖い。気持ち悪い。でも、なぜかそこから目を離せない。

茂が大きく踏み込み、体全体で押してきた。美佳は耐えきれずに、後ろにずるずると足を滑らせる。砂利が背中に当たり、少し痛い。

「ほら、押されてるぞ」

茂の声が上から響く。彼は優位に立って、さらに体重をかけてくる。その重みが、美佳の上半身全体にのしかかる。胸が押し潰され、呼吸が苦しい。

そして、茂の腹が、彼女の下腹部に、より強く密着する。

ぐりっと。

硬い筋肉の塊が、柔らかい腹を通り越して、さらに下へ圧迫をかけてくるような。股の間の、あの敏感な場所が、間接的にではあるが、圧迫される。

「あ……っ」

美佳は目を見開いた。

股間の奥で、ぴくんと何かが跳ねた。電気が走ったような、しかしそれは熱い電気だった。一瞬、体の力が抜けそうになる。腰がぐらりと震えた。

そのわずかな隙を、茂は見逃さなかった。

「よし!」

彼は低く叫ぶと、美佳の体を思い切り左へ捻り倒した。

美佳は抵抗できなかった。体が思うように動かない。股のあたりの熱と痺れが、まだ体中を駆け巡っている。背中が砂利にぶつかり、埃の匂いが鼻を突く。

「ふう……一本!」

茂が勝利を宣言する声が、少し遠くに聞こえる。

美佳は仰向けに倒れたまま、空を見上げていた。夕焼けが始まり、雲が薄橙色に染まり始めている。胸が上下に激しく動く。吸い込む空気が、肺の奥で熱く燃えるようだ。

そして、倒れた姿勢で気づいた。

胸に巻いたさらし布の結び目が、完全に胸の谷間からずれ、左の乳房のふくらみの真上に乗っている。布が汗で肌に張り付き、左胸の先端の小さな突起が、布の上からくっきりと浮かび上がっている。

それを、上から見下ろす人影が、三つある。

茂、拓也、寛。

三人とも、倒れた彼女を見下ろしている。拓也はいたずらっぽい笑みを浮かべ、茂は複雑な表情で眉をひそめ、寛は……寛は、彼女の胸元に張り付いた布の、そのくっきりとした浮かび上がりを、一言も発せずに凝視していた。

彼の灰色の瞳が、吸い込まれるように、その一点を見つめている。

美佳は慌てて体を起こそうとした。しかし、腕に力が入らない。

「……もう、一本取られちゃったよ、美佳」

拓也が言った。

「まあ、でもまわし一枚でここまで頑張ったんだから、えらいっちゃえらいけどさ」

「……うるさい」

美佳はようやく肘で体を支え、起き上がった。胸の布がずり落ちそうになるのを、素早く手で押さえる。その動作が、また自分で自分の胸を押さえつけることになる。柔らかい肉が掌に収まる感触に、またぞっとするような恥ずかしさが走る。

茂は黙って彼女に手を差し伸べた。

「……立てるか?」

彼の声には、いつものからかいがなかった。むしろ、どこか固く、ぎこちない。

美佳は少し迷ったが、その手を取った。茂の掌が、また彼女の手を包んだ。温かく、汗ばんでいて、がっしりとしている。

引き上げられる力で、彼女は立ち上がった。

立ち上がったとき、茂の目が一瞬、彼女の胸元を掠めた。彼はすぐに目をそらし、自分のまわしの結び目を直すふりをした。

「……あんまり無理するなよ。その格好で、本気で組んだら、お前すぐ壊れちまうだろ」

「壊れないよ」

美佳は言い張った。しかし、声には自信がなかった。

体の中に、確かに何かが目覚めつつある。それは怖いものだった。でも、なぜか、その怖さの裏側に、もう一度組んでみたい、もう一度あの柔らかい衝撃を感じてみたい、という紛れもない欲求が、微かに蠢いていた。

稽古はその後、拓也と寛も交えて続けられた。

拓也と組むときは、彼がわざとらしく「おっとっと、触っちゃいけないところに手が行きそうで怖いなあ」などと冗談を言いながら、しかししっかりと組み手をしてくれた。彼の手が美佳の腰のあたりを支えるとき、その掌の熱が、短パンの下のさらし布を通してじんわりと伝わってきた。

寛との組み手は、沈黙の中で行われた。

彼はほとんどしゃべらなかった。ただ、組む前におずおずと手を差し伸べ、四つに組むときの力加減が、誰よりも慎重で優しかった。しかし、その分、体と体が密着する時間が長くなった。彼のほっそりとした胸板が、美佳の胸にゆっくりと押し付けられ、離れるときには布がくっついて離れないほど汗で湿っていた。

寛の息づかいが、彼女の耳元で、ひときわ熱く荒くなった瞬間もあった。

そのたびに、美佳は自分の股間が、またじんわりと熱を帯びるのを感じた。

日が完全に傾き、校庭の隅が薄暗くなり始めたころ、稽古は終わった。

男子たちはそれぞれまわしを解き、Tシャツに着替え始めた。美佳は彼らから少し離れた木陰に立ち、胸のさらし布を解き始めた。

結び目をほどく。ぐるぐると巻かれた布が、緩んでいく。最後の一枚が外れると、スポーツブラに覆われた胸が露わになる。ブラの上からも、汗で肌がテカテカと光っている。ブラのカップの縁に、さらし布の跡が赤くくっきりと残っていた。

彼女はさっとカバンから脱いだTシャツを引っ張り出し、素早く頭からかぶった。綿の生地が汗ばんだ肌に張り付く感じが、いつも以上に異様に感じられた。服を着ているのに、なんだか裸でいるような、むき出しのままのような気がしてならない。

「おう、じゃあな、美佳」

茂が背中を向けて手を上げた。

「明日も来るんだろうな? まわし、また持って来いよ。せっかく同じ格好になったんだから、それでどっちが強いか、本気で勝負しようぜ」

彼は振り返らずにそう言い、拓也と一緒に校庭の門の方へ歩き出した。

寛だけが、少し遅れて立ち去った。彼は一度、木陰にいる美佳の方へ振り返り、口を開きかけたが、結局何も言わずに俯いて、小走りに茂たちを追いかけた。

美佳は一人、残った。

カバンを肩にかけ、校舎の影を通って正門へ向かう。道すがら、胸のあたりがまだほてっているのを感じた。ブラのカップの中では、先端がちくちくといたずらに疼き続けている。脚を閉じて歩くたびに、内腿の内側がこすれ、なんだかぬめっとした感触が増していくような気がした。

家に着くまで、その感覚は消えなかった。

風呂に入り、鏡の前で体を拭いているとき、美佳はふと、胸の膨らみをまじまじと見つめてしまった。ほんのりと膨らんだそのふくらみの頂点に、小さなつぶつぶが立っている。今日、あれだけ布に擦られて、まだ敏感になっているのだ。

彼女はそっと手の平で、左の胸を包んでみた。

柔らかい。温かい。そして、掌に収まるその感触が、なぜか茂の肩がぶつかったときの感覚を鮮明に呼び覚ます。

――あの時、声が出ちゃった……

また、顔が熱くなる。

彼女は慌てて手を離し、バスタオルで体をぐるぐると巻いた。でも、体の奥で蠢くあの熱は、タオルでは拭いきれないものだった。

布団に入り、天井を見つめながら、美佳は考えた。

明日も、まわしを巻いて行こう。

怖い。恥ずかしい。でも、あの感触を、もう一度確かめたい。あの、体の奥で何かがぴくんと跳ねる瞬間を。

彼女は布団の中でそっと脚を閉じた。股のあたりが、またじんわりと温かい。

――私、変なのかな……

疑問は、答えのないまま、闇の中に消えていった。

第3章 触れ合う熱、疼き出す体

第3章: 触れ合う熱、疼き出す体

まわし一枚の稽古は、あの日から確かに日常へと溶け込んでいった。

初めての翌日、美佳はカバンの中に白いさらし布を畳み込み、少し早めに校庭へ向かった。胸の内側では、期待と怖さが絡み合い、どちらが上回っているのか自分でもわからない。ただ、もう一度あの感触を確かめたいという衝動だけが、足を前に運ばせた。

土俵には、すでに茂の姿があった。

「お、来たか」

彼はまわしの端を引き締めながら、ちらりと美佳の方を見た。視線は一瞬、彼女が持つカバンの中身へと走る。昨日と同じか、それとも――という問いを瞳に宿しているように見えた。

美佳は黙ってカバンからさらし布を取り出した。

動作は昨日より少しだけ確かになっていた。Tシャツを脱ぎ、素早く胸に布を巻きつける。結び目を背中で固く結ぶとき、指先が震えていないことに自分で気づいた。

「……今日もやるんだな」

茂がそう呟いた。声には、からかいも驚きもなく、ただ事実を確認するような響きがあった。

「当たり前でしょ」

美佳はきっぱりと言った。まだスポーツブラの上からだが、布を巻き終わった胸をそっと手で押さえ、形がくっきりと浮かび上がらないか確かめた。

拓也と寛も続いて到着した。

「おー、今日もまわし姿か! もう慣れたみたいだな、美佳」

拓也は相変わらず調子のいい口調で、しかし目は彼女の胸元をしっかりと捉えている。寛は無言でうなずくだけだが、その灰色の瞳が彼女の体を撫でるように上下に動くのがわかった。

稽古はいつも通り始まった。

最初は拓也との組み手。彼は昨日より少し力を込めてくる。がっしりとした腕が美佳の背中をぐいと抱き寄せ、胸と胸が密着する。布越しに、拓也の汗ばんだ肌の熱が伝わってくる。

「うぉっと、危ない危ない」

拓也が笑いながら体勢を崩そうとする。その動きに合わせて、美佳の胸が彼の胸板にぎゅっと押し付けられる。柔らかい肉が布の上から潰されるような圧迫。そして離れるとき、汗でぬれた布同士がちゅるりと音を立てて剥がれる。

その瞬間、胸の先端が、布の内側でざらりと擦れた。

「……っ」

美佳は息を詰まらせた。昨日感じたあのちくちくとした疼きが、また股の奥まで細い針でつつかれるように走る。

「ん? どうした?」

拓也が覗き込むように顔を近づけた。彼の息が頬に温かく触れる。

「何でもない」

美佳は顔を背けた。でも、頬が熱くなっているのが自分でもわかる。

次は寛との組み手。

彼は相変わらず無口で、四つに組む前にぺこりと小さく会釈をした。組むときの力加減は優しく、まるで壊れ物を扱うかのようだ。しかし、その分、体と体が触れ合っている時間が長くなる。

寛のほっそりとした腕が美佳の背中を包む。彼の掌が、背中のさらし布の結び目に、そっと触れる。

びくり。

美佳の肩が跳ねた。結び目の硬い盛り上がりを、寛の指の腹が確かめるように撫でたからだ。ほんの一瞬の接触なのに、背中全体に痺れるような感覚が広がる。

寛はすぐに手を引っ込めた。彼の耳たぶが真っ赤に染まっている。

「……ご、ごめん」

かすれた声でそう言い、彼は目を伏せた。

「いいよ……」

美佳も俯いた。背中の、触れられた一点が、ぽかぽかと熱を帯びて残っている。何だか変だ。変なのに、なぜかもっと触れてほしいような、そんな矛盾した欲求が胸の奥で蠢く。

そして、茂との組み手。

今日の茂は、昨日とは明らかに違っていた。からかうような余裕がなく、ただ真剣に、目を光らせて組み合ってくる。彼の黒い瞳が、美佳の動きを一瞬も逃さず追っている。

「いくぞ」

低い声でそう宣言すると、茂は一気に距離を詰めた。がっしりとした肩が、美佳の胸にぶつかる。昨日と同じ柔らかい衝撃。しかし今日は、その衝撃がより深く、体の芯まで響くように感じられた。

揉み合いが続く。砂利の上で足を踏みしめ、体を捻り、押し合う。汗が噴き出し、さらし布はみるみるうちに汗で重たくなる。布が肌に張り付き、動くたびにちゅるちゅると剥がれる音がする。

そして、ある組み手の拍子だった。

茂が美佳の体勢を崩そうと、右腕をぐいと彼女の背中に回した。その時、彼の指が、背中のさらし布の結び目に、偶然ではなくほぼ確信を持って触れた。

ぐいっと。

指先が結び目を掴み、わずかに引き上げる。

「あ……」

美佳の声が漏れた。結び目が緩む。ぐっと縛ったはずの布が、背中の中央でほんの少したるむのを感じた。

次の瞬間、茂が思い切り体を押し込んできた。

胸と胸が激しくぶつかり合う。たるんだ布が、その衝撃でずり上がった。胸の下の方で布がたるみ、そこに汗でぬれたスポーツブラの上から、ぽつんと尖った乳首が、直接さらし布の内側に擦りつけられる。

「んんっ……!」

足が竦んだ。

今までにない感覚が、胸の先端から腰の奥まで一直線に走る。ちくちくとした疼きではなく、じんわりと広がる熱い痺れ。布のざらりとした感触が、敏感に立った先端をこする。一度、また、と動きに合わせて繰り返される摩擦。

美佳の膝ががくんと震えた。体の力が一気に抜けていく。

「……どうした」

茂の声が、至近距離で響く。彼は組み手を緩めず、顔を寄せて彼女の表情を覗き込んでいる。その瞳の奥に、何かが燃えているような光が見えた。

「止めろって言うのか?」

「……言わない」

美佳はかすれ声で答えた。声が震えている。でも、止めてほしいわけじゃない。この感じが、怖いくらい気持ちいい。もっと、あの摩擦が続いてほしい。

茂は何も言わず、再び押し込んできた。

今度はわざとなのか、体の角度を変えて、胸と胸がより密着するようにしてくる。たるんだ布が、美佳の左胸の乳首を、ぐりぐりと押し付けるように擦る。

「はあ……っ」

吐息が甘く歪んだ。股のあたりが、じわっと熱くなる。内腿の内側に、汗とは違う温かい湿りが滲み始めるような感覚。あの場所が、むずがゆくなる。

稽古は続いたが、美佳の中では何かが変わっていた。

組み合うたびに、男子たちの体が自分の体に触れる感覚が、すべて快感へと変換されていく。茂の肩が胸に当たる衝撃。拓也の掌が腰を支える時の圧迫。寛の胸板が擦れ合う時のこすれ。

すべてが、体の奥で火をつける薪のように燃え上がる。

稽古が終わり、みんなで雑巾がけを始めた。校舎の隅にたまった砂利や土を掃き出す作業だ。美佳は雑巾を手に、額の汗を拭いながら床を拭いていた。

その時、背後から拓也が近づいてきた。

「美佳」

彼の声が、耳元でひそやかに響く。普段の調子のいい口調ではなく、低く、深い声だった。

振り返ると、拓也は雑巾をぶら下げたまま、彼女のすぐそばに立っていた。茶髪のくせ毛が汗でひっつき、額に張り付いている。彼の目が、彼女の汗でぬれた胸元のさらし布を、じっと見下ろしている。

「なに……」

「汗、すごいじゃん。もうびっしょりだよ」

拓也はそう言いながら、さらに一歩近づいた。二人の距離は、組み手の時より近い。彼の体から漂う、少年特有の汗と土の混じった匂いが、美佳の鼻をくすぐる。

そして、拓也は鼻をすするように小さく息を吸った。

「……汗臭くなってきたな」

一瞬、間を置く。

「でも、いい匂いだ」

その言葉が、美佳の体を貫いた。

「え……」

声が出ない。拓也の目が真剣だった。からかっているわけじゃない。本当に、彼女の匂いを嗅いで、そう言ったのだ。

股間が、じんわりと熱を帯びた。今まで感じていたあのむずがゆい熱が、一気に確かな欲望へと形を変えるような。内腿の内側が、ぬめっとした湿りで確かに濡れているのを感じた。

拓也はそれ以上何も言わず、にやりと笑うと雑巾がけを再開した。しかし、その笑みにはいつものいたずらっぽさはなく、どこか満足げな、達成感のようなものが浮かんでいた。

美佳はその場に立ち尽くした。股間の熱が消えない。いや、むしろ強まっていく。雑巾を握る手に力が入り、指の関節が白くなる。

寛が遠くからちらりと彼女を見ている気がした。茂は校庭の隅で一人でまわしを解き始めていたが、時折こちらの方を振り返る。みんな、何かを感じている。みんな、知っているんだ。

――私、変なの……

その夜、風呂から上がった美佳は、洗面所の鏡の前に立った。

湯気で曇った鏡を手で拭い、そこに映る自分の姿をまじまじと見つめた。肩にかかる黒髪はまだ湿っていて、水滴が鎖骨に伝って落ちる。湯船に長く浸かっていたせいか、肌は少しピンクがかってほてっている。

視線は自然と、胸へと向かった。

スポーツブラは洗濯かごに入れ、今は何も着けていない。ほんのりと膨らんだ胸のふくらみ。まだ小さいけど、確かに女の子の形をしている。その頂点に、薄いピンク色の小さなつぶつぶが立っている。今日あれだけ布に擦られて、少し赤くなっているようだ。

美佳はそっと手を伸ばし、左の胸を掌で包んだ。

柔らかい。温かい。そして、指先でそっとつぶつぶに触れると、びくりっと小さな電流が走った。股間が、またじんわりと熱くなる。

鏡の中の自分は、頬を染め、目を潤ませている。なぜか恥ずかしいのに、手を離せない。右手で左胸を揉んでみる。柔らかい肉が指の間に収まり、形を変える。もっと強く、ぎゅっと握ってみる。少し痛いけど、それ以上に気持ちいい。

視線は下へと移動する。

まだ子どものような平らな腹。その下、腰のくびれがわずかにある。そして、腿の付け根のあたり。彼女はそっと手を下ろし、パジャマのパンツの上から、その場所を触った。

ぽかぽかと熱い。

布の上からでも、確かに熱を持っているのがわかる。そっと圧力をかけると、奥で何かがぴくんと跳ねるような感覚があった。

――ああ……

目を閉じる。鏡の中の自分を見つめるのが、なぜか恥ずかしくなってきた。でも、目を開けるとまた自分の体がそこにある。胸の膨らみ。腰の曲線。そして、あの熱い場所。

茂の肩がぶつかった感覚を思い出す。あの柔らかい衝撃。胸がぎゅっと押し付けられる圧迫。拓也の囁き。「いい匂いだ」。寛の指が背中の結び目を撫でた感触。

すべてが、体の内側で絡み合い、一つの欲求へと収束していく。

もっと触られたい。

もっと強く、ぐいっと押し付けられたい。

あの感触を、もう一度、もっとはっきりと感じたい。

美佳はパジャマの上からそっと股間をこすった。布越しに、微妙なぬめりを感じた。汗じゃない。違う何か。

怖い。気持ち悪い。変態みたい。

でも、手が止まらない。

こする。優しく。そしてまた少し強く。股の奥で、あのぴくぴくする感覚が強くなる。腰が自然に前に突き出る。背中がぞくぞくとする。

「あ……ん……」

小さな吐息が漏れた。鏡の中の自分が、目を半眼にして、頬を赤く染めている。みっともない。でも、やめられない。

もっと、もっと。

指の動きが速くなる。パジャマの布地が敏感な部位を擦る。ざらりとした感触が、じんわりとした快感へと変わる。胸も空いている。左手で右の胸を揉みながら、つぶつぶを指でつまむ。

「はあ……はあ……」

息が荒くなっている。頭がぼんやりする。体が熱い。股間がもっと熱い。あの場所が、ぷくっと膨らんでいるような気がする。押すたびに、奥で何かが響く。

そして、突然の足音に我に返った。

廊下から母親の声が聞こえる。

「美佳? まだ洗面所にいるの? 早く寝なさい」

「は、はい! 今行きます!」

慌てて手を離す。股間から手を引くと、パジャマの布が少しだけ湿っているのがわかった。ひんやりとしている。

鏡の中の自分は、目を見開き、混乱した表情を浮かべている。頬は真っ赤で、胸は上下に激しく動いている。吐く息がまだ熱い。

――私、いま、何をしてたんだろう……

怖くなった。でも、同時に、あの感覚をもう一度味わいたいという欲求が、強く胸を掴んだ。

美佳は急いで洗面所を出た。布団に入り、暗闇の中で目を見開いたまま天井を見つめた。股間の熱はまだ消えていない。むしろ、意識すればするほど強くなる。

あの触れ合いが怖い。

でも、もっと欲しい。

明日も、まわしを巻いて稽古に行こう。茂と組み合おう。拓也の声を聞こう。寛の視線を感じよう。

だって、あの時だけ、この体の疼きが意味を持つから。

美佳は布団の中でそっと脚を閉じた。股間がじんわりと温かい。その熱が、まるで新しい自分の一部であるかのように、ゆっくりと体中に染み渡っていく。

第4章 土俵の下で濡れる秘密

第4章: 土俵の下で濡れる秘密

夏の終わりは、夕方の風にほのかな涼しさが混じり始めていた。

校庭の片隅にある土俵には、砂利が今日もきれいに均されていた。最後の稽古という言葉が、どこからともなく自然に決まっていた。新学期が始まれば、こうして放課後に集まることも難しくなるからだ。

美佳は木陰でカバンを開き、白いさらし布を取り出した。

指先が少し震えた。今日で終わりなんだ、という思いが、胸の奥でひっそりと疼いた。もうあの感触を味わえなくなる。その考えが、なぜか寂しさよりも強い焦燥を生み出していた。

「お、今日も来てるじゃん」

拓也の声が背後から聞こえた。

振り返ると、彼はすでにまわしを締め終え、汗拭き用のタオルを肩にかけていた。茶髪のくせ毛が汗で少し湿り、額にぺたりと張り付いている。

「当たり前でしょ。最後だもん」

美佳はそう返すと、ゆっくりと半袖のTシャツの裾をめくり上げた。

肌が外気に触れる。もう慣れたはずなのに、毎回この瞬間は胸が高鳴る。布が巻きつけられるたびに、スポーツブラの下にある柔らかい膨らみが押し付けられ、形がくっきりと浮かび上がる。

結び目を背中で固く結ぶとき、彼女はふと茂の視線を感じた。

土俵の縁に立つ茂が、こちらをじっと見つめていた。黒い瞳に、いつものからかいや挑発はなかった。むしろ、何かを深く考えているような、重たい沈黙が漂っている。

「どうしたの?」

美佳が尋ねると、茂はぱっと目をそらした。

「……別に。早くしろよ。今日は最後だ、本気で勝負しようぜ」

その声は、どこか固く締まっていた。

寛も到着し、無言でうなずきながらまわしを締め直した。彼の灰色の瞳が、美佳の胸元を一瞬掠めると、すぐに砂利の上に落ちた。耳たぶがほんのり赤くなっている。

四人が土俵を囲んだ。

空は夕焼けの始まりを告げる薄橙色に染まり始め、雲の端が金色に縁取られている。風が吹き抜けるたびに、木々の葉がざわざわと音を立てた。

「じゃあ、最初は俺とだな」

茂が土俵の中央に踏み出した。

腰を落とし、がっしりとした肩を前に構える。その姿は、いつも以上に威圧的に感じられた。美佳は息を深く吸い込み、自分も腰を落とした。

砂利が素足の裏にごつごつと刺さる。

――最後だ。思い切りやろう。

心の中でそうつぶやき、美佳は茂の目を見据えた。

距離が縮まる。

手と手が触れ合い、指が絡む。茂の掌は、すでに温かく、少し汗ばんでいた。その熱が、美佳の指先から腕へ、そして胸の奥へと伝わってくる。

そして、体がぶつかった。

「ぐっ……」

衝撃が、胸の柔らかい膨らみを直撃する。

茂の右肩が、左胸のふくらみの真上に沈み込む。布一枚を隔てただけの肌の熱。汗で湿った皮膚が、さらし布の上を滑るように擦れ合う。

「ん……!」

声が喉の奥で軋んだ。

美佳は唇を噛みしめ、踏み込む。足の裏で砂利を掴み、体重を前に乗せていく。茂も押し返してくる。二人の体は、ぎりぎりまで密着し、互いの呼吸が混ざり合う。

汗の匂い。土の匂い。そして、どこか甘く酸っぱい、少年の体臭。

そのすべてが、美佳の鼻をくすぐり、体の内側でじんわりと火をつける。

「ふん……まだやれるか?」

茂が唸るように言った。

彼は左足を一歩引くと、美佳の体を右へ捻ろうとする。力強い腕が彼女の背中をぐいと抱き寄せ、胸と胸がより強く押し付けられる。

その時だ。

茂の腹筋が硬く盛り上がった下腹部が、美佳のへその下あたりに、ぐりっと押し込まれてきた。

「あ……」

柔らかい衝撃が、下腹部の奥深くまで響く。

股の間のあの敏感な場所が、間接的に圧迫される。一瞬、電気が走ったような痺れが、腰の裏側をくすぐるように駆け上がった。

美佳の膝が、わずかに震えた。

「どうした、もう限界か?」

茂の声が、至近距離で響く。彼の息が頬に温かく触れる。黒い瞳が、美佳の顔を鋭く覗き込んでいる。

「……違うよ」

美佳はかすれ声で答えた。

でも、体が言うことを聞かない。股間がじんわりと熱を帯び、内腿の内側にぬめっとした湿りが滲み始めるのを感じていた。あの感覚が、また来た。怖いくらい気持ちいいあの感覚。

茂は何も言わず、再び押し込んできた。

今度はわざとなのか、体の角度を微妙に変え、下腹部同士がより密着するようにしてくる。硬い筋肉の塊が、柔らかな腹を通り越し、さらに下へと圧迫をかける。

「はあ……っ」

吐息が甘く歪んだ。

美佳は目を閉じそうになるのを必死にこらえた。でも、体の奥で何かがぴくぴくと跳ね始める。胸の先端も、布に擦られてちくちくと疼いている。

揉み合いが続く。

砂利の上で足を滑らせ、体勢を立て直し、また押し合う。汗が噴き出し、さらし布はみるみるうちに重たくなる。布が汗で肌に張り付き、動くたびにちゅるりと剥がれる音が、恥ずかしいほどにはっきりと聞こえる。

拓也と寛が土俵の縁で見守っている。

その視線が、肌をじりじりと焼く。特に寛の灰色の瞳が、美佳の胸元に張り付いた布の、くっきりと浮かび上がった形を、一言も発せずに追いかけているのを感じた。

「ほら、そろそろ決めるぞ」

茂が低く宣言した。

彼は一気に力を込め、美佳を土俵の端へと押し詰めていく。足がずるずると後退し、砂利が背中に当たる位置まで追い込まれる。

もう後がなくなった。

美佳は必死に耐える。が、茂の体が彼女の体全体に覆いかぶさるように密着する。

胸と胸。腹と腹。脚と脚。

すべてが汗でぬれた肌と布で接し、擦れ合う。

そして、茂が最後の一押しをかけた。

ぐいっ。

彼の汗だくの腹が、美佳のさらし布の上を、ゆっくりとこするように動いた。

その摩擦が、たるんだ布の内側で、彼女の左胸の乳首を直接こすり上げる。

「あ、んんっ……!」

足が竦んだ。

今までにない強烈な感覚が、胸の先端から腰の奥まで一直線に走る。熱い。痺れる。気持ちいい。怖い。すべてが混ざり合い、頭の中が真っ白になる。

声が、大きく甘く漏れてしまった。

茂の動きが、ぴたりと止まった。

彼の顔が、美佳の至近距離に迫る。目と目の距離は、二十センチもない。彼の黒い瞳が、大きく見開かれ、何かを理解したような、しかし混乱した光を宿している。

「……美佳」

声が、低く濁っていた。

「声、出てるよ」

その一言で、美佳の顔から血の気が引いた。

恥ずかしさが、頭のてっぺんからつま先までを一瞬で駆け巡る。熱かった体が、今度は凍りつくような冷たさに包まれる。

「で、でも……」

言い訳が浮かばない。

茂はじっと彼女の表情を見つめていた。その目に、からかいや嘲りはなかった。むしろ、深い驚きと、何か別の、言葉にできない感情が渦巻いているようだ。

そして、彼はゆっくりと体を離した。

その隙を突かれて、美佳は力の抜けた体を支えきれず、後ろへと倒れ込んだ。

背中が砂利にぶつかり、小さな埃の雲が上がる。視界には、夕焼けに染まった空が広がっていた。

仰向けになったまま、美佳は動けなかった。

呼吸が荒く、胸が激しく上下する。でも、それ以上に気になったのは、股間のあたりに広がる異様な感覚だった。

温かい。

じっとりと湿っている。

汗とは明らかに違う、ねっとりとした湿りが、下腹部のさらし布に滲み出ているのを感じた。

――なに、これ……

恐る恐る脚を動かそうとすると、内腿の内側がぬめっとこすれ合う。あの場所が、ぽかぽかと熱く、まるで火照っているようだ。

そして、上から覗き込む影が三つ。

茂、拓也、寛。

三人とも、倒れた彼女を見下ろしている。拓也は口を少し開け、驚いたような表情を浮かべている。寛は目を大きく見開き、彼女の股元あたりをじっと凝視していた。

茂は複雑な顔をして、唇を噛みしめている。

「あのさ、美佳……」

拓也が小声で口を開いた。

「もしかして……それ、汗じゃないよね?」

その言葉に、美佳は体が硬直した。

顔が火照る。恥ずかしさで死にたいほどだった。でも、同時に、股間のぬめりがなぜか気持ちよくて、もっとこすりたくなるような、矛盾した欲求が胸を掴む。

「……黙れよ、拓也」

茂が低い声で制した。

彼は屈み込み、美佳に手を差し伸べた。でも、その手が途中で止まり、彼は一瞬躊躇ったように見えた。

「立てるか?」

声には、いつもの強さがない。むしろ、どこかよそよそしく、ぎこちない。

美佳はうなずくことしかできなかった。茂の手を取ると、引き上げられる力で立ち上がった。

立ち上がった瞬間、脚の間の湿りがさらに広がるのを感じた。まわしが重たく、冷たくなっている。汗ならもっとさっぱりしているはずなのに、このねっとりとした感触は、間違いなく別のものだった。

「……今日は、ここまでにしとくか」

茂がそう言い、目をそらした。

「え? でもまだ……」

拓也が言いかけたが、茂の鋭い視線に押され、口をつぐんだ。

寛は一言も発せず、ただ下を向いていた。でも、彼の耳が真っ赤に染まっているのが、夕日に照らされてはっきりと見えた。

美佳は俯いたまま、胸のさらし布をそっと押さえた。布の下では、心臓が暴れるように鼓動している。股間の熱は消えず、むしろ意識するたびに強まっていく。

――私、変だ。

――みんな、気づいてる。

――でも、止まらない。

その思いが、胸の奥で渦巻いた。

四人は無言で着替え始めた。美佳は木陰に隠れるようにして、胸の布を解いた。結び目をほどく指先が震えている。

白い布が緩み、外れる。スポーツブラに覆われた胸が露わになる。ブラの上からも、肌が赤くほてっているのがわかった。特に左胸の先端が、ちくちくと疼き続けていた。

彼女は素早くTシャツをかぶった。綿の生地が肌に張り付く感触が、今日は特に異様に感じられた。

「じゃあな……」

茂が背中を向けて言った。

振り返らず、そのまま校庭の門の方へ歩き出そうとする。

「茂」

美佳が思わず呼び止めた。

茂の足が止まった。彼はゆっくりと振り向いた。夕焼けの光が彼の横顔を赤く染め、表情が読み取りづらかった。

「……なんだ」

「明日……もう、来ないんだよね?」

その問いに、茂は一瞬目を伏せた。

「ああ。夏休みも終わるしな。それに……」

言葉を切る。

「それに?」

「……いいや、なんでもない」

彼は再び背を向けた。

「お前、あの声……まあ、いい。気にすんな」

そう言い残すと、今度は本当に歩き出した。拓也が「おーい、待ってよ!」と追いかけ、寛も小走りについて行った。

美佳は一人、木陰に残された。

夕日が校庭を深い橙色に染めていた。砂利の土俵が、長い影を落としている。もう誰もいない。だけど、肌にはまだ男子たちの体温が残っているような気がした。

彼女はそっと下腹部に手を当てた。

Tシャツと短パンの上からでも、あの湿りが少しずつ広がっているのがわかった。怖くなって手を離すと、指先が少しだけ湿っていた。

――これが、女の子なんだ。

心の中で、そう呟いた。

怖い。恥ずかしい。みっともない。

でも、なぜか涙が出そうになるほど、切なくて、寂しくて、そして体の奥が熱い。

美佳は土俵の縁に座り、膝を抱えた。顎を膝の上に乗せ、夕焼け空を見上げる。雲がゆっくりと流れていく。

股間の熱が、ゆっくりと体中に染み渡っていく。

あの感触を、もう一度味わいたい。

茂の肩が胸にぶつかる衝撃。拓也の囁き。寛の視線。すべてが、この体を疼かせた。

そして、あの声。あの甘く漏れた声を、茂に聞かれてしまったこと。

顔がまた熱くなる。

でも、それと同時に、股の奥でぴくんと何かが跳ねた。

美佳はそっと脚を閉じた。内腿がこすれ合い、ぬめっとした感触が増す。もう、汗なんかじゃない。これは、私の中から溢れ出たものなんだ。

夕日が沈み始め、空の色が深みを増していく。

彼女は立ち上がり、カバンを肩にかけた。家路につく前に、もう一度土俵を見つめた。

砂利の上には、四人の足跡が無数に残っている。そして、彼女が倒れた場所には、少しだけ色が濃い、湿った跡があった。

美佳は俯き、歩き出した。

歩くたびに、股間の湿りが広がる。内腿がこすれるたびに、微かな快感が腰を駆け上がる。

もう、誰にも言えない。

この秘密を、ずっと胸にしまっておこう。

でも、きっと明日も、明後日も、この体は疼き続ける。

茂の言葉を思い出す。

『女の子とは所詮、Tシャツ着て本当の相撲取りじゃないよね』

あの時は悔しかった。でも今、わかる気がする。

本当に違うんだ。体が、心が、求めるものが。

風が吹き、まだ暑い夏の名残りを運んでくる。

美佳は震える吐息を漏らし、歩き続けた。

足元に長い影が、ゆらゆらと揺れている。

第5章 妄想相撲

第5章: 妄想相撲

家に着くまでの道のりが、なぜかいつもより長く感じられた。

美佳は玄関のドアを開け、そっと靴を脱いだ。リビングから母親の声が聞こえてくるが、何を言っているのか耳に入らない。頭の中は、まだ校庭の土俵の上に残っていた。股間のじっとりとした湿りが、歩くたびに短パンの内側で広がり、冷たくなっていく感覚だけがはっきりと意識に残る。

「おかえり。遅かったね、稽古熱心だなあ」

母親が台所から顔を出して言った。

「……うん」

それだけ答えるのが精一杯だった。美佳はすぐに階段を駆け上がり、二階の自分の部屋に駆け込んだ。カバンを床に放り投げ、背中をドアに預ける。胸が高鳴っている。息が荒い。

――みんな、あの声、聞こえてた。

――あの湿り、気づかれてた。

顔が火照る。布団に倒れ込み、天井を見つめた。夕方の薄明かりが、部屋を柔らかな影で満たしていた。

風呂に入るまでの時間が、異様に長く感じられた。湯船に浸かっている間も、肌に触れるお湯の感触が、茂の汗ばんだ肌の熱を思い出させた。胸を洗うたびに、布に擦られたあの感覚がよみがえり、指先が震える。

スポーツブラを脱いで鏡を見た。左の乳首が、ほんのり赤くなっていた。そっと触れると、ちくっとした疼きが走り、股の奥がじんわりと熱を帯びた。

――ダメだ、もう。

慌ててタオルで体を拭き、パジャマに着替えた。綿のパンツが股間に当たると、まだ少し湿っているような気がした。気のせいかもしれない。でも、確かにあのぬめりは、家に帰るまでずっと続いていた。

布団に入り、電気を消した。

暗闇が訪れると、今度は逆に感覚が研ぎ澄まされていく。目を閉じれば、すぐに校庭の風景が浮かんだ。夕焼け空。砂利の土俵。そして、三人の影。

茂の顔が、至近距離で迫ってくる。

『声、出てるよ』

あの低い声が、耳の奥で繰り返される。恥ずかしさで体が縮こまる。でも、それと同時に、股間がまたじんわりと温かくなる。パジャマの布が、その熱を優しく包み込む。

――なんで、こんなことになるんだろう。

美佳は布団の中でそっと脚を開いた。閉じていたときよりも、股間の熱がはっきりと感じられる。内腿の内側が、こすれ合うたびに微妙なぬめりを伝えてくる。

手が、自然に下腹部へと向かった。

パジャマの上から、そっとその場所を触る。柔らかい膨らみがある。昨日洗面所でしたときよりも、その形がはっきりとわかるような気がした。押してみると、奥でぴくんと小さな跳ねる感覚があった。

目を閉じる。

土俵の上で、茂に押し付けられていたあの瞬間を思い出す。汗でぬれた腹が、さらし布の上を擦り上げる。その摩擦が、乳首を直接こすり上げる。

「んっ……」

思わず声が漏れた。暗い部屋の中に、甘く湿った吐息が散らばる。

手の動きが少し強くなる。パジャマの布地が、敏感な部位をざらりと擦る。昨日よりもっと大胆に、もっとはっきりと快感を求めるように。

そして、妄想が始まった。

目の裏に浮かぶのは、校庭の土俵ではない。もっと小さな、囲まれた空間。体育館の隅の畳の上かもしれない。そこに、美佳はいた。上半身は裸。下半身もまわしだけ。男の子とおなじ稽古着姿だ。

向かいには、茂が立っている。

彼もまわし一枚。がっしりとした肩幅。汗で光る胸板。腹筋がくっきりと刻まれ、その下に──美佳は視線をそらした。まわしの結び目のところが、少し盛り上がっているように見える。

「いくぞ」

茂が低く言う。

組み合う。体がぶつかる。汗でぬれた肌が、直接さらし布に押し付けられる。今回はTシャツもスポーツブラもない。茂の熱い胸板が、美佳の柔らかい膨らみをぐいっと押しつぶす。

「あ……」

美佳の喘ぎが、妄想の中で響く。

茂はさらに強く押し込んでくる。体を密着させ、ゆっくりと腰を動かす。その動きで、硬くなった彼の腹筋が、美佳の下腹部をこするように擦り上げる。

まわしの布が、股間に食い込む。

ぐりっと、柔らかい肉の割れ目に、布の縁が深く押し入れられる。後ろからは、拓也と寛が見ている。彼らの視線が、美佳のお尻に張り付く。まわしが食い込んで、両脇の肉がはみ出し、肛門の皺まではっきりと見えているはずだ。

「見てる……みんな、見てる……」

妄想の中の美佳が、恥ずかしさに顔を背ける。

でも、体は逃げない。むしろ、茂の腰の動きに合わせて、自分から擦り付けるように動く。食い込んだまわしが、膣の入口あたりを強く刺激する。布のざらつきが、小さな陰核をこすり上げる。

「はあ、あ……そこ、もっと……」

現実の布団の中で、美佳の手の動きが速くなる。

パジャマの上からでは物足りなくなって、いつの間にかパンツの中に手を滑り込ませていた。指先が直接、熱く湿った肉のひだに触れる。ぬめっとした感触。昨日感じたよりも、ずっと多く愛液が滲んでいる。

妄想はさらにエスカレートする。

茂が美佳を土俵際まで押し詰める。激しい押し合いの中で、彼の腰が一度、強く前に突き出る。

その時、食い込んでいたまわしの縁が、ちょうど陰核のてっぺんを、ぐりっとこすり上げる。

「あっ! んんっ──!」

美佳の体が跳ねる。

現実の布団の中で、腰が浮く。股間をこする指の動きが、無意識に激しくなる。人差し指で、小さな突起を直接つまみ、くるりと撫で回す。

妄想の中では、美佳がその刺激に耐えきれず、膝の力が抜ける。

倒れ込む。背中が畳にぶつかる。上から茂が覆いかぶさるように覗き込む。その横で、拓也と寛が、あえいでいる彼女の股間をじっと見下ろしている。

まわしがはずれかかっている。

布がたるみ、ぱっくりと割れた股間が露出する。まだ幼いけど、ぷっくりと膨らんだ陰唇が、愛液でびっしょりと光っている。その中央で、小さな陰核が真っ赤に腫れ上がり、ぴくぴくと震えている。

肛門も丸見えだ。きゅっと締まった皺が、後ろで見つめる二人の視線に晒される。

「ああ……だめ、見ないで……」

妄想の美佳が泣き声を上げる。

でも、現実の美佳は、もう止められない。股間をこする指が、陰核を中心に激しく動く。もう一方の手は、パジャマの上から胸を揉みしだいている。乳首を指でつまみ、ひねる。

「茂、拓也さん、寛さん……みんな、みんな……」

名前を呼びながら、腰をくねらせる。

妄想の中では、三人が近づいてくる。茂が膝をつき、美佳の股間を覗き込む。拓也が横にしゃがみ込み、寛は後ろからお尻を見下ろす。

そして茂の指が、濡れそぼった陰唇に触れる。

「こんなに、濡れてるのか……」

彼の呟きが、美佳の耳に熱く響く。

指先が、ぷっくりと開いた入口をこする。ぬめっとした愛液が、指に絡みつく。

「あ、やだ……やめて……」

でも、腰は逆にそちらへと押し出している。

茂の指が、小さな陰核を見つけ、そっとつまむ。

「ここか」

くるり、と撫で回される。

「いっ!」

現実の美佳の体が、布団の上で大きく跳ねた。

股間をこする指の動きが、絶頂を目前にした痙攣のような速さになる。もう、理性も羞恥心も吹き飛ぶ。ただ気持ちいい。ただ、もっと、もっと欲しい。

妄想の中で、茂がその指で陰核を強くこする。

円を描くように。速く。そしてまた強く。

美佳の体が弓なりに反る。口が開き、声にならない喘ぎが漏れる。

「あ、あああ……っ、い、いっちゃう……!」

現実でも、限界が近い。下腹部の奥で、熱いものが爆発しようとしている。股間全体が痺れ、腰ががくがくと震える。

そして、茂が最後の一擦りを加える。

妄想の中の美佳は、目を見開き、声を上げる。

「あああん──!」

現実の布団の中で、美佳の体が硬直する。

股間から、じわっと熱いものが溢れ出す。愛液が、こぼれ落ちるほどではないが、確かに指を濡らし、パンツの内側にじんわりと染み込んでいく。腰がぴくぴくと痙攣し、全身に快感の波が何度も押し寄せる。

目を開けると、暗い天井が見えた。

呼吸が荒い。胸が激しく上下している。パジャマの胸元は汗で少し湿っている。股間は、言い知れぬぬめりと熱に包まれていた。

ゆっくりと、股間から手を抜く。

指先がべとつく。暗闇でも、その湿りが光っているように感じられた。鼻を近づけると、ほのかに甘酸っぱい匂いがした。あの日、拓也が嗅いだ匂いと同じかもしれない。

――私、いま、イッちゃった……

そう認識したとき、また股間がじんわりと疼いた。

恥ずかしさが遅れて襲ってくる。布団の中で、あんな妄想をして、一人でイってしまった。茂と拓也と寛を思い浮かべて、あんなことを考えて。

顔が熱くなる。布団をかぶりたい。消えてしまいたい。

でも、同時に、もう一度あの快感を味わいたいという欲求が、強く胸を掴んだ。

美佳はゆっくりと体を起こした。窓の外には、もうすっかり夜が訪れていた。街灯の明かりが、カーテンの隙間から細く差し込んでいる。

彼女はベッドの端に座り、暗闇の中で自分の手を見つめた。

この指で、さっきあんなことをした。この体が、あんな声を出した。あの妄想の中で、三人の男子に股間を覗かれ、陰核をこすられてイッてしまった。

現実ではありえない。でも、もしも……

もしもあの稽古が、もっとエスカレートしたら?

もしも茂が本当に、あんな風に指を伸ばしてきたら?

考えるだけで、また股間がじんわりと熱くなる。パンツの内側が、さっきの愛液でまだ湿っている。こすらなくても、あの場所がむずがゆくてたまらない。

美佳はそっと布団に戻り、横向きに寝た。

膝を胸の前に引き寄せると、股間の熱がよりはっきりと感じられた。もう一度手を入れたい衝動に駆られるが、こらえた。さっきので十分だったはずなのに、体はまだ求めている。

明日から、もう稽古はない。

夏休みも終わる。茂や拓也、寛と放課後に会うことも、まわし一枚で組み合うこともなくなる。

その現実が、突然重くのしかかってきた。

寂しい。でも、それ以上に、この疼きをどうしたらいいのかわからない怖さがあった。もう誰とも触れ合えないなら、この体の熱はどうなってしまうんだろう。

目を閉じると、また妄想が浮かんできた。

今回は、体育館の物陰だ。みんなが帰った後、茂だけが残っている。彼が近づいてきて、黙って美佳のさらし布に手を伸ばす……

「あ……」

また、喘ぎ声が漏れそうになるのを、美佳は必死にこらえた。

布団の中で、そっと脚を閉じた。内腿がこすれ合い、微かな快感が腰を伝う。もうダメだ。この体は、本当に変になってしまった。

窓の外から、遠くで電車の走る音が聞こえる。

美佳はその音に耳を澄ませながら、ゆっくりと眠りにつこうとした。でも、股間の熱はなかなか冷めない。まるで、あの夏の稽古の記憶が、体の奥深くに火種を残していったかのようだった。

――また、明日の夜も……

――こっそり、あの妄想、してみようかな……

そう思うと、また少しだけ、体が軽く震えた。

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読み終えたあとの余韻に。

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登場人物
  • 眞鍋美佳 まなべ みか
    女性 ・ 11

    外見: 肩にかかる程度の短めの黒髪、茶色の瞳、スレンダーだが相撲の稽古で鍛えられた柔らかな筋肉が少しついた体型、身長は140cmほど。服装: 普段は半袖のTシャツに短パン、学校では体操服。負けず嫌いで活発、男の子に混じって相撲を取ることを何とも思わない無邪気さを持つが、内心では少しだけ男の子たちとの体力差に焦りを感じている。

  • 高橋茂 たかはし しげる
    男性 ・ 11

    外見: 刈り上げに近い短い黒髪、黒い瞳、がっしりとした体格で肩幅が広く、身長は美佳より少し高い。服装: よく伸びた綿のTシャツとボロボロになった短パン。性格は勝ち気で、自分が一番強いと思っており、美佳が女の子であることを時に強調してからかう。しかし根は単純で、相撲がただ好きな少年。

  • 佐藤拓也 さとう たくや
    男性 ・ 11

    外見: くせ毛の茶髪を短く刈り込んでいる、細目で茶色の瞳、ほっそりとした体型だが動きは機敏。服装: 清潔感のあるTシャツとジーンズ。お調子者で冗談が好きだが、観察眼は鋭い。茂の発言に一番最初に反応し、美佳の変化を興味深そうに見つめる。

  • 小林寛 こばやし ひろし
    男性 ・ 11

    外見: そばかすのある顔、金色がかった茶髪を目立たない程度に伸ばしている、青に近い灰色の瞳、平均的な体格で背は低め。服装: 無地のポロシャツとカーゴパンフ。大人しく目立たないが、目線は熱く、美佳の体をじっと見つめることがある。言葉少なだが、内心では強い欲望を抱えている。

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