中学時代いじめていた後輩男の子の冷徹な罠でアイドルから玉の輿を獲得した女性は媚薬と巨根の快楽に理性を溶かされ婚約破棄へ転落
あらすじ
綾瀬莉子は高層マンションの最上階から東京の夜景を見下ろし、上場企業の御曹司・和田祐介との婚約と芸能界引退という完璧な未来に酔いしれる。祐介の優しい言葉に、自分は過去を全て清算したと確信する莉子。しかし、彼女のスマートフォンには、差出人不明の古い校舎の写真が添付されたメッセージが届く。「綺麗になったな、莉子」という文言に、中学生時代の記憶――冷たい床、尿の匂い、松藤賢也への嘲笑がフラッシュバックし、完璧な夜に小さな亀裂が走る。
第4章: シャンパングラスに溶ける薬
第4章: シャンパングラスに溶ける薬
会場となったのは、都心の高級ホテルが誇るプライベートバンケットホールだった。
壁面を覆う深紅のビロードが、空気そのものに重たくなるような艶めきを滲ませ、天井から幾重にも垂れ下がるシャンデリアの黄金の光は、呼吸するたびに肺へと入り込んでくる蜂蜜色の霧のようだ。
集まっているのは、どこかで見たことのあるプロデューサーや広告代理店の重役、数人の若手俳優、それにきらびやかなドレスで着飾ったモデルたち。
莉子は入口でコートを預けると、ゆっくりとその中へ歩を進めた。
白のシルクカクテルドレスが、歩くたびにさらさらと膝のあたりで揺らめき、肩をむき出しにしたデザインがシャンデリアの光を受けて、彼女の白磁のような肌をいっそう浮き立たせている。
手にしたクラッチバッグの中で、スマホが短く震えた気がしたが、莉子はあえて無視した。
婚約者の祐介からかもしれない、と思ったのだ。
今夜のパーティーのことは内緒にしている。
芸能界引退を発表し、すでに将来の社長夫人としての顔を持ち始めた彼女にとって、こうした業界の内輪の集まりに顔を出すのは、本来ならば避けるべきことだった。
だが、あの「Rebirth Night」と名づけられた白い封筒の招待状――高級感のある紙の質感、手書きの筆致、そして何よりも芸能界を引退する直前の、最後の煌めきのようなイベントへの誘い――が、彼女の心の奥底で、長いあいだ蓋をしてきた何かを、細い爪先でこじ開けようとしているようで、放っておけなかったのだ。
--これは、最後の夜になる。
--私が“綾瀬莉子”として、光のなかに立てる、最後の夜。
そう自分に言い訳をすることで、莉子は胸の奥に燻る後ろめたさを、どうにか押さえつけていた。
「綾瀬莉子さん……ですね」
突然、背後から声をかけられ、莉子ははっと振り返った。
その瞬間、彼女の胸の内で、まるで古い傷口が一度に開くような、鈍くて冷たい痛みが走る。
そこに立っていた男は、間違いなく、松藤賢也だった。
中学時代とは別人のように洗練されたダークスーツをまとい、短く整えられた黒髪と、冷たい光を宿した細い目だけが、むしろあの頃よりも研ぎ澄まされている。
痩身だが、スーツの下の肩幅はしっかりとして、かすかな威圧感を放っていた。
彼の唇が、薄く弧を描く。
「お久しぶりです。こんなところで会うなんて、奇遇ですね」
その声は低く、滑らかで、まるでベルベットの裏地に縫い込まれた剃刀のようだった。
莉子は言葉を失い、ただ大きく見開いた茶色の瞳で彼を見つめ返すことしかできない。
心臓が早鐘を打ち、指先が冷たくなっていく。
なぜ、ここに、おまえが――そう叫びたかったが、のどが張りついて声が出ない。
「どうかなさいましたか。顔色が優れないようだ」
賢也はそう言って、近くを通りかかったウェイターのトレイから、細長いシャンパングラスを二つ取り上げた。
無色透明の液体の中で、目に見えないほど小さな泡が、無数に立ち昇っては消えている。
彼はその一つを、まるで古い儀式の捧げもののように、莉子の目前に差し出した。
「まあ、当然かもしれない。十数年ぶりに、昔の……親しい友人に会ったんだからな」
「これでも飲んで、落ち着いてください。特別な美肌サプリ入りだそうですよ。女性には嬉しいでしょう」
その言葉には、かすかな嘲笑が込められているように莉子には感じられた。
しかし、周囲の好奇の視線を感じ、ここで取り乱すわけにはいかないという計算が、彼女の中のタレントとしての仮面を無理やり引き上げる。
震える指でグラスを受け取り、彼女はかろうじて微笑みの形を口元に作った。
「……ありがとう。賢也くん、よね? ずいぶん、立派になって」
「おかげさまで、あなたのお導きのおかげですよ、莉子先輩」
賢也の冷ややかな呼びかけに、莉子の背筋を冷たい汗が伝う。
彼女はほとんど無意識に、逃げ出すようにそのシャンパンを一口、口に含んだ。
冷えた液体が、のどを焼くような感覚はなく、むしろ舌の上で奇妙な甘さを残しながら、するりと食道を通り過ぎていく。
その直後、口内の粘膜全体が、かすかに痺れるような、薄荷とも違う独特の感覚に包まれたのを莉子は感じたが、それは一瞬のことで、すぐにシュワシュワとした炭酸の刺激にかき消された。
「どうです、美味しいでしょう」
賢也はそう言って、自分のグラスに口をつけることもなく、ただじっと莉子が飲むのを見つめている。
彼の目は氷のように冷たく、しかし奥底には抑えきれない愉悦の炎が揺らめいているようだった。
莉子はその視線から逃れられず、もう一口、さらに一口と、まるで強いられたようにシャンパンを飲み進めた。
やがて、体の芯からじんわりと温かいものが広がり始めるのを莉子は自覚した。
それはアルコールの熱とは違う、もっと根源的で、甘い毒のような熱だった。
会場の音楽が、少しずつ、くぐもったビートの塊のように聞こえ始める。
視界の輪郭が、まるで水を含んだ絵の具のように、柔らかににじみ、溶けていく。
何よりも戸惑ったのは、彼女の心臓が、恐怖とは別の理由で、その鼓動を速め、体温を押し上げているという事実だった。
「……なん、だろ……なんか、熱く……」
莉子は額に手をやった。
うっすらと汗がにじんでいる。
それと同時に、彼女の下腹部の奥深く――子宮のあるあたりが、ずくん、と重く、鈍い疼きを訴え始める。
まるで体内に熱い蜜が溜まっていくような、不快なのに、どこか甘美な予感に満ちた感覚だった。
賢也はその変化を見逃さなかった。
彼はゆっくりと莉子に近づき、ほとんど耳元に唇を寄せるようにして、囁いた。
「効いてきたようだな。美肌だけじゃなくて、気分も良くなる成分が入ってるんだ。体の芯から、ぽかぽかして、すべてが楽しくなる。そうだろう?」
違う、これはおかしい――莉子の理性の一片が、かすかに警鐘を鳴らしている。
しかし、その声は、全身を満たし始めた多幸感という名の濃い霧によって、すぐにかき消されてしまう。
目の前の賢也の冷たい目つきさえも、今はなぜか親しみ深く、体の奥の疼きを刺激するものに感じられ始めていた。
登場人物
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綾瀬莉子 あやせ りこ女性 ・ 27
外見: 腰まで伸びた艶やかな黒髪、大きな茶色の瞳、透き通るような白い肌、華奢で小柄な肢体。服装: 上品なワンピースやブランドスーツ、清楚な印象を与えるアイドル服。表向きは可憐で清純、内面は計算高く過去に弱者を虐めていた二面性を持つ。
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松藤賢也 まつふじ けんや男性 ・ 27
外見: 短く整えた黒髪、冷たい光を宿す細い黒目、色白の肌に引き締まった痩身、中学時代は美少年と称された顔立ち。服装: ダークスーツやシックなカジュアル、隙のないビジネススタイル。内向的で傷つきやすかった過去を秘め、今は冷徹な知性と復讐心を内に燃やす。
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和田祐介 わだ ゆうすけ男性 ・ 29
外見: 短い茶色の髪、柔和な茶色の瞳、均整のとれた健康的な体格、爽やかな印象。服装: 高級ビジネススーツ、清潔感あるカジュアル。温厚で誠実、莉子の裏の顔を知らずに一途に愛する。
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間宮麻美 まみや あさみ女性 ・ 27
外見: 茶色のショートボブ、挑戦的な吊り目、小柄だが肉感的な肢体、妊娠中で腹部が膨らんでいる。服装: カジュアルなマタニティウェアや派手な夜のドレス。中学時代は不良グループのリーダー格で、現在は表向き平凡な主婦だが欲望に弱い。