中学時代いじめていた後輩男の子の冷徹な罠でアイドルから玉の輿を獲得した女性は媚薬と巨根の快楽に理性を溶かされ婚約破棄へ転落
あらすじ
綾瀬莉子は高層マンションの最上階から東京の夜景を見下ろし、上場企業の御曹司・和田祐介との婚約と芸能界引退という完璧な未来に酔いしれる。祐介の優しい言葉に、自分は過去を全て清算したと確信する莉子。しかし、彼女のスマートフォンには、差出人不明の古い校舎の写真が添付されたメッセージが届く。「綺麗になったな、莉子」という文言に、中学生時代の記憶――冷たい床、尿の匂い、松藤賢也への嘲笑がフラッシュバックし、完璧な夜に小さな亀裂が走る。
第1章: 完璧な婚約者の仮面
第1章: 完璧な婚約者の仮面
高層マンションの最上階、窓辺に立つ綾瀬莉子の瞳に、東京の夜景が無数の宝石を散りばめたように映り込んでいた。眼下には都会の光の河が静かに流れ、遠くに東京タワーのオレンジ色の灯が霞む。彼女の細い指が、窓ガラスにそっと触れた。冷たい感触が指先から腕へと這い上がり、胸の奥にまで沁み込んでくるようだった。
莉子は深く息を吸い込んだ。ガラスに映る自分の姿を見つめる。腰まで伸びた艶やかな黒髪、透き通るような白い肌、大きな茶色の瞳。清純派アイドルとして何年も守り続けてきた、あの可憐な面影。ガラスの中の自分は、ほんの少し疲れているようにも見えたが、それでも美しかった。いや、むしろ今の自分はかつてないほど輝いているのだと、彼女は心の中で自分に言い聞かせた。
バスルームから聞こえてくる水音が止み、和田祐介が白いバスローブ姿で現れた。短い茶色の髪から水滴が垂れ、彼はそれをタオルで乱暴に拭きながら莉子に近づいてくる。
「夜景、見てたのか」
祐介の声は柔らかく、どこか照れくさそうな響きを含んでいた。彼は莉子の背後に立ち、そっとその肩に手を置く。布越しに伝わる温もりが、莉子の身体を包み込んだ。
「うん……綺麗だなって」
莉子は振り返らずに答えた。窓ガラスに映る祐介の顔を見つめながら、彼女は自分の唇がほんの少しだけ緩むのを感じる。
「莉子のほうが綺麗だよ」
祐介がそう言って、彼女の髪に顔を埋めた。首筋に彼の吐息がかかり、莉子は小さく身をすくめる仕草をした。それは演技でもなんでもなく、本当にこそばゆかったのだ。祐介の手が莉子の腰に回され、彼女の背中が彼の胸にぴったりと寄り添う。
「……祐介さん」
「なんだい」
「私、本当に幸せになってもいいのかな」
莉子の声はかすかに震えていた。それは計算された震えだった。彼女は自分の声が、男の保護欲をそそるのに最適な、ガラス細工のような脆さを帯びていることを知っていた。清純派アイドルとして培ってきた、数多の男たちの心を虜にしてきたあの声。莉子は心の奥で、自分が今、完璧な演技をしていることを自覚していた。
祐介の腕に力がこもる。
「なに言ってるんだ。当たり前だろ。俺はおまえを幸せにするためにプロポーズしたんだ」
「でも……私、芸能界にいて、いろんなことがあったし」
「過去のことなんて関係ないさ。俺が愛してるのは、今の莉子なんだから」
祐介はそう言って、莉子の身体をくるりと反転させ、まっすぐに彼女の瞳を見つめた。彼の茶色の目は澄んでいて、曇りひとつなかった。この男は本当に、心の底から自分を信じているのだと莉子は思った。自分がどれほどの嘘と計算を積み重ねてきた女か、まるで知らずに。
莉子は祐介の胸に顔をうずめた。バスローブの隙間から、彼の素肌の匂いが立ちのぼる。ほのかな石鹸の香りと、男の体温が混ざり合った匂い。莉子はその匂いを深く吸い込んだ。
「ありがとう……祐介さん」
彼女の声はくぐもっていた。莉子は目を閉じる。瞼の裏に浮かぶのは、記者会見の光景だった。溢れんばかりのフラッシュ、殺到する質問、そして祐介が自分の指にはめてくれたダイヤの婚約指輪。あの瞬間、莉子は確かに勝利を感じた。貧しい家に生まれ、中学生の頃から必死に這い上がり、アイドルという仮面をかぶり続けてきた自分の人生が、ついに報われたのだと。
芸能界を引退して、セレブの妻になる。誰もが羨む美貌と、決して揺るがない地位。もう二度と、あの頃の自分には戻らなくていい。戻りたくもない。莉子は心の中でそう呟いた。
そのとき、リビングテーブルの上に置かれた莉子のスマートフォンが、短く震えた。着信音ではなく、メッセージアプリの通知音。莉子は祐介の胸から顔を離した。
「ちょっとごめんね」
彼女はそう言ってテーブルに歩み寄り、スマートフォンを手に取った。画面には見覚えのないメールアドレスが表示されている。件名は空白。不審に思いながらも、莉子はメッセージを開いた。
そこに添付されていたのは、古い写真だった。色褪せたその画像は、薄暗い廊下を写していた。壁には剥がれかけた掲示板、床には埃が積もり、蛍光灯の光が不気味にちらついている。見間違えるはずがなかった。それは莉子が通っていた中学の、旧校舎の廊下だった。
莉子の指が凍りついたように止まった。心臓が一瞬、大きく跳ね上がり、それから嫌な冷たさが胸の奥に広がっていく。
写真の下に、短いメッセージが添えられていた。
「綺麗になったな、莉子」
その瞬間、彼女の脳裏に何かが走った。それは記憶の底に沈んでいたはずの、暗いかたまりが急浮上してくるような感覚だった。冷たい床の感触、かび臭い空気、アンモニアのような尿の匂い。そして、怯えきった少年の瞳。
莉子はスマートフォンを握りしめたまま、動けなくなった。
「どうした、莉子? 誰からだ?」
祐介の声が背中にかかる。莉子は慌ててスマートフォンの画面を伏せた。顔を上げるときには、もう彼女の表情は完璧な笑顔に戻っていた。
「ううん、なんでもないの。昔の友達から、急に連絡が来て。懐かしくて、ちょっとびっくりしちゃった」
「そうか。仲のいい友達なのか?」
「うん……まあ、そんなところかな」
莉子はさらりと嘘をついた。彼女の声にはもう動揺の色はなかった。何年もかけて磨き上げてきた、この瞬間のための仮面。どんなときでも、清純で可憐な綾瀬莉子を崩してはいけない。それが芸能界で生き抜くための、彼女の掟だった。
「今夜はもう遅いし、そろそろ寝ようか。明日も撮影があるんだろ?」
「そうだね……そうする」
莉子はゆっくりとスマートフォンをテーブルに置いた。画面はすでに暗くなっている。しかし、あの写真とメッセージは、彼女の網膜に焼きついて離れなかった。
寝室へ向かう足取りは、少しだけ重くなっていた。祐介はそれに気づかない。彼は何も知らずに、ベッドに潜り込み、莉子を優しく抱き寄せた。闇の中で、彼の寝息が規則正しく聞こえ始めても、莉子だけは眠れなかった。瞼を閉じるたびに、目の前に古い校舎の光景が蘇る。あの湿った空気、押し殺した笑い声、そして涙に濡れた少年の顔。
登場人物
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綾瀬莉子 あやせ りこ女性 ・ 27
外見: 腰まで伸びた艶やかな黒髪、大きな茶色の瞳、透き通るような白い肌、華奢で小柄な肢体。服装: 上品なワンピースやブランドスーツ、清楚な印象を与えるアイドル服。表向きは可憐で清純、内面は計算高く過去に弱者を虐めていた二面性を持つ。
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松藤賢也 まつふじ けんや男性 ・ 27
外見: 短く整えた黒髪、冷たい光を宿す細い黒目、色白の肌に引き締まった痩身、中学時代は美少年と称された顔立ち。服装: ダークスーツやシックなカジュアル、隙のないビジネススタイル。内向的で傷つきやすかった過去を秘め、今は冷徹な知性と復讐心を内に燃やす。
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和田祐介 わだ ゆうすけ男性 ・ 29
外見: 短い茶色の髪、柔和な茶色の瞳、均整のとれた健康的な体格、爽やかな印象。服装: 高級ビジネススーツ、清潔感あるカジュアル。温厚で誠実、莉子の裏の顔を知らずに一途に愛する。
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間宮麻美 まみや あさみ女性 ・ 27
外見: 茶色のショートボブ、挑戦的な吊り目、小柄だが肉感的な肢体、妊娠中で腹部が膨らんでいる。服装: カジュアルなマタニティウェアや派手な夜のドレス。中学時代は不良グループのリーダー格で、現在は表向き平凡な主婦だが欲望に弱い。