第3章: # 酔いが呼ぶ大胆な接触

# 第3章: 酔いが呼ぶ大胆な接触
空になったビールジョッキが、テーブルに二つ、三つと並ぶ。
次第に、居酒屋の明かりはぼんやりと甘く濁って見えはじめた。
オレンジ色の光が、りなの肌を柔らかく照らし、キャップの下から零れた茶髪が鎖骨にかかり、微かに揺れている。
みつるはグラスを口に運びながら、それでも、視線の端で彼女の一挙手一投足を追っていた。
彼の目が、私の襟元や、ジーンズに包まれた太ももにしばしば留まるのを、私は感じていた。
ふわりと、甘く官能的な香水の香りが、ほのかな汗の湿り気と混じり合う。
自分の中に、ある熱が、ゆっくりと灯り始めているのを自覚した。
「……あら、もうこんな時間」
私はスマホの画面をちらりと見て、そう呟いた。
声は、意識的に少し低く、艶を帯びさせてみせる。
「みつる、まだ飲める?」
こっちを見て、目尻を下げて笑った。
かつての少女めいた無邪気さはなく、今のこの笑顔には、男を焦らすような余裕が滲んでいる。
「まあ……なんとか」
みつるはそう答えた。
だが、彼の声には微かな上ずりが混じっていた。
ビールの酔いもあるだろう。
けれど、それ以上に――私という存在そのものが、彼の理性を溶かし始めているようで、胸の奥がくすぐったくなった。
「じゃあ……もうちょっと、近くで話さない?」
そう言うと、私はさっさと席を立った。
そして、彼の隣の椅子に、躊躇いなく腰を下ろす。
肩が、みつるの上腕に触れた。
――ひやり。
彼が、わずかに、しかし確実に震えたのを感じた。
薄いキャミソールの生地越しに、私の肌の温もりが、彼のシャツの袖を通して伝わっていく。
夏の夜の空気より少し高めの、ほのかに汗ばんだ体温。
「あー……ちょっと、酔っちゃったかも」
困ったように首をかしげながら、私は彼の目をじっと見つめた。
彼の喉が、小さく動いた。
「みつるの腕……細いね」
そう呟くと、私は指先を伸ばし、彼の腕を、そっと撫でるように動かした。
シャツの上からとはいえ、爪の先が皮膚をかすめる、かすかな感触。
彼が、息をのんだ。
触れられた部分が、見る見るうちに火照っていくのが、手のひらに伝わってくるようだった。
「昔から、運動とかしてなかったもんね」
私は、さらに彼に体を寄せた。
口元が、みつるの耳たぶのすぐ傍まで近づく。
吐息を、わざとらしく柔らかく漏らす。
「それに比べて……私、結構筋肉ついちゃってるんだよね」
そう言いながら、私は自分の上腕を、みつるの腕に押し付け、ゆっくりと擦りつけた。
柔らかな脂肪の下に、引き締まった筋肉の張り。
彼に、この身体の違いを、じかに感じさせたかった。
「……そう、なんだ」
みつるは、声を絞り出すようにして答えた。
彼の鼓動が、私の肩に触れている部分から、早鐘のように伝わってくる。
私は軽く笑った。
そして、ついに――手のひらを、彼の太ももの上に、じかに置いた。
――っ!
分厚いジーンズの生地を通して、彼の腿の肉の厚みと温もりが、じんわりと伝わってきた。
みつるは、思わず身を引こうとしたが、動けなかった。
彼の股間のあたりに、微かな硬さが生まれ、膨らみ始めるのを、私は手のひらの感覚で知った。
「ねえ……もっと、いろいろ話したいな」
私は唇を、みつるの耳朶に触れそうな距離まで近づけた。
吐息を、そっと、彼の耳の穴へと吹き込む。
「高校卒業してから、私、結構いろいろあったんだよね」
声は、ささやくように、しかし確実に肉感的な響きを込めて。
「彼氏とか……別れたり、できたり……でも、今はひとりなんだ」
みつるは、無言でうなずくだけだった。
彼の側頭部に、微かな汗が光っている。
「みつるは……やっぱり、ずっとひとりだったの?」
私は、太ももに置いた手を、ゆっくりと、内側へと撫で上げた。
ほんの数センチの動きだが、ジーンズの上からでも、その動線がどれほど刺激的か、彼は理解しているはずだ。
「……うん」
やっと、彼の声がかすれた。
「そう……だよ」
「ふーん……」
私の声には、満足と、もっと先への誘いが混じっていた。
「でも、それって……もったいないよ。みつる、顔は悪くないし」
もう一方の手も、彼のもう片方の膝の上にそっと載せた。
両手で彼の太ももを包み込むように。
彼の呼吸が、明らかに乱れ、深くなっていく。
そして――私は、大胆に一歩を踏み出した。
体をさらにぐいっと寄せ、胸を彼の上腕に押し付ける。
キャミソールの薄い生地越しに、膨らみの柔らかい感触が、確実に彼に伝わる。
「私さ……」
唇を耳元に密着させるようにして、囁く。
「今、ホテル探してるんだよね」
みつるの全身が、一瞬で硬直した。
「今日、実家に帰る予定だったんだけど……ちょっと都合悪くなっちゃって」
太ももを握っていた手の力を、ほんの少し強める。
そして、もう一方の手を、ゆっくりと、彼の太ももの付け根――危険な領域へと、さらに近づけていく。
「だから、今夜泊まるとこ、探してたんだ」
「そ……そうなんだ」
彼の声は、完全に乾いていた。
「ねえ……みつる」
ここで、最後の駒を打つ。
私はついに、つんと張った彼の股間の上に、手のひらを軽く乗せた。
ジーンズの上から、その熱と形を、掌で確かめるように。
「一緒に……来ない?」
彼の鼓動が、私の手のひらごしに、ドクンドクンと激しく響いてきた。
「だって……みつる、私のこと……見てるでしょ?」
唇が、ついに彼の耳たぶに触れた。
熱く湿った感触。
「胸元も……太ももも……ずっと、視線感じてたもん。今も……ここ、熱くなってる」
手のひらで、そっと、その膨らみを包み込むように撫でる。
「そ、それは……」
彼は反論しようとしたが、言葉は続かない。
彼の目は、私の胸元に釘付けになり、また慌ててそらす。
その様が、何よりも雄弁だった。
「私も……みつるのこと、気になってるんだよ」
声を、意図的に震わせてみせる。
「高校の時から……なんとなく、気になってた。今、こうして近くにいて……すごく、ドキドキしてる」
みつるは、深く、苦しそうな息を吸い込んだ。
彼の胸が大きく膨らみ、私の身体に触れる。
――今だ。
私は、彼の胸に顔を埋めるように寄り添った。
鼻先が、シャツの生地に触れる。
彼の汗ばんだ肌の香り、洗剤のさわやかな匂い。
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