第1章: 偶然の再会と変わり果てた姿
# 第1章: 偶然の再会と変わり果てた姿
日曜の午後、ショッピングモールの雑貨売り場。
白く埃っぽい蛍光灯の光が、床や陳列棚を均一に照らしていた。
買い物かごを提げた主婦たちのざわめき。
どこからか流れる、軽やかなポップなBGM。
洗剤の詰め替え用を手に取り、値札を確認していた時だった。
背後から、甘く嗄れた女の声が聞こえた。
「みつるくん……?」
覚えのある響き。
すぐには誰だかわからず、ゆっくりと振り返る。
そこには、キャップを深く被った女性が立っていた。
茶色のロングヘアが肩のあたりで、ゆらり。
髪の隙間から、色白の頬と、ぽってりとした唇が覗いている。
キャップのツバの影で、目元はよく見えない。
「あれ、ほんとにみつるくんじゃん。久しぶり」
ふざけたような、軽やかな口調。
でも確かに、あの声だ。
頭の中で記憶が巡る。
高校のクラスメイト……女子で……
「えー、忘れちゃったの? 悲しいなあ」
女性がキャップのツバを、少し上げた。
茶色の瞳が、きらりと光り、僕を見つめる。
顔の輪郭、目じりのほんの少し下がった感じ……
「まさか……綾瀬さん?」
声に出した時、自分でも驚いた。
高校時代の綾瀬りなは、おかっぱの黒髪。
地味なセーラー服をきちんと着込んで、教室の隅で静かに本を読んでいた。
三年間で話したのは、数回だけ。
その彼女が、今目の前にいるこの――まるで雑誌から飛び出してきたようなギャル風の女性と、重ならない。
「正解!」
りなはにっこり笑い、僕の肩をぽんと叩いた。
その手の感触が、薄いキャミソールの生地越しに伝わってくる。
柔らかくて、少し冷たい。
「でも、もう『さん』付けはやめようよ。りなって呼んで。私もみつるって呼ぶから」
「あ、うん……」
慌てて頷く。
視線が、りなの服装に自然と向かう。
薄いベージュ色のキャミソールは、胸元がゆるく、鎖骨がくっきり露わだ。
その下には、ふっくらとした膨らみが、薄手のニット地の下に浮き上がっている。
光の加減で、透けそうなほど薄い素材。
――ノーブラ……?
ふと頭に浮かんだ言葉に、慌てて視線をそらす。
でも、もう遅かった。
目に入ってしまった形が、脳裏に焼き付く。
キャミソールの下、小さく尖った二点の突起が、ほんのりと布を押し上げている。
色は見えないけれど、確かにそこにある。
「みつる、どうしたの? 顔赤いよ」
からかうような声。
りなが一歩近づくと、甘い香りが漂ってきた。
フローラルな香水に混じって、ほのかに汗の匂い。
暑い日だったからか、その匂いが妙に生々しく感じる。
「い、いや……びっくりしてて」
「ふーん。私、変わった?」
くるりと一回転してみせる。
ミニスカートの裾がひらりと舞い上がり、細い脚が一瞬見えた。
厚底のサンダルを履いた足首は、白く、繊細だ。
「あの……すごく、変わったというか……」
「でしょ? 高校卒業してから、思い切っちゃったの」
満足げな笑顔。
高校時代の控えめな表情からは、想像もつかない大胆さ。
「ところでみつる、今どこ行くの? 用事終わった?」
「え? あ、うん……別に、買い物だけだから」
「じゃあ、時間あるよね。久しぶりだし、ちょっと飲まない? 近くにいい居酒屋知ってるんだけど」
すっかり決まった口調。
僕は一瞬躊躇う。
今日は特に予定もない。
でも、こんな突然の誘い……
「いいよ、私おごるから。ね?」
また一歩近づく。
茶色の瞳がじっと僕を見つめる。
キャミソールの胸元が、今にも目の前に迫っている。
ふくらみの頂点が、薄い布地の上で、ほんのりと色を変えているように見えた。
――やばい、本当にノーブラだ。
――乳首、浮いてる……。
ごくりと喉が鳴る。
心臓が早鐘を打ち始め、耳の奥でどくんどくんと響く。
「……うん。じゃあ、お言葉に甘えて」
声が少し上ずる。
りなは気にしない様子で、にっこり笑った。
「やった! じゃあ、こっち来て」
軽い足取りで歩き出す。
僕はその後を追う。
ミニスカートを穿いたりなの後ろ姿。
腰のくびれが強調され、ヒップが小さく揺れるたびに、薄い生地が肌に張り付くように動いた。
それを見ていると、胸の奥がざわつく。
「ねえ、みつる。高校卒業してから何してるの?」
振り返らずに聞く声が、雑踏の中ではっきり聞こえる。
「あ、大学だよ。地元の……」
「ふーん」
少し間を置いて、彼女が続ける。
「彼女とかできた?」
ぶっきらぼうな質問に、たじたじとなる。
「いや……その、まだ」
「えー、そうなんだ」
りなはくるりと振り返り、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
目がきらきらと光っている。
「……うん」
小さく頷く。
「そっか。私も今彼氏いないし」
また歩き出し、今度は僕の横に並ぶ。
肩が触れそうな距離。
甘い香水の匂いが、より濃く漂ってくる。
「あ、そうだ。みつる、お酒飲める?」
「まあ……普通には」
「じゃあ、今日はたくさん飲もうよ。私、結構強いから」
りなの肘が、軽く僕の腕をつついた。
その瞬間、彼女の上腕の柔らかさが伝わってきた。
温もりと、ほのかな弾力。
――やばい……。
視線をそらし、前方を見つめる。
ショッピングモールの出口が見えてきた。
ガラスの自動ドアの向こうには、夕暮れのオレンジ色の空が広がっている。
「ほら、あそこの角を曲がるとすぐなんだ」
指を差す手。
袖口が少しずれ、わきの下の滑らかなラインが一瞬見えた。
薄い汗で肌がほんのり光り、産毛が柔らかに逆立っている。
――どうして、こんなに……。
――綾瀬さん……りなが、こんなにエロいなんて……。
鼓動がさらに早くなる。
股間がじんわりと熱を持ち始めるのを感じた。
ズボンの前が、少しきつくなってきた。
「みつる、早く行こうよ」
りなが僕の手を掴んだ。
手のひらは小さくて柔らかい。
でも握り方はしっかりしていて、引っ張られるようにして歩き出す。
彼女の後ろ髪が揺れ、ほのかなシャンプーの匂いがした。
ミント系の、清潔な香り。
でも、その奥から漂ってくるのは、もっとプリミティブな――
女の子の、汗と体温が混ざった匂いだった。
居酒屋の看板が見えてきた。
赤い提灯がゆらゆらと揺れている。
中からは笑い声と、グラスのぶつかる音が聞こえる。
「ここここ。中に入ろう」
振り返ったりなの顔に、またあのいたずらっぽい笑み。

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