第3章: ブラを浮かせた30秒、歓声と連写が永遠に伸びる勝利の余韻
第3章: ブラを浮かせた30秒、歓声と連写が永遠に伸びる勝利の余韻
座り込んだ私の頭上からも、レンズが覗き込む気配がしていた。うつむいたままの私の視界には、自分の膝小僧と、コンクリートの床に広がるスカートのベージュの布地だけ。でも、頭のてっぺんから背中にかけて、無数の視線が刺さるような熱を感じる。太陽とは違う、人の目だけが持つ熱だった。
ブラウスが胸に張りついている。さっきまでの緊張でかいた汗が、白い布地を肌にぴったりと貼りつかせていた。ブラのワイヤーが汗ばんだ肌に食い込んで、息をするたびに窮屈な圧迫感が胸を締めつける。指先を持ち上げようとすると、自分の手がかすかに震えているのが見えた。
怖いんじゃない。違う。胸の奥がぐらぐらと煮え立つような期待で、手が震えてるんだ。
私は第一ボタンに指をかけた。汗で湿った布地が指先にしっとりと絡む。ボタンを外すのに少し手間取って、そのぶんだけ背中に突き刺さる視線の熱が強くなった気がした。ようやくボタンが外れて、ブラウスの襟元がゆるむ。隙間から会場の熱風が入り込んで、鎖骨のあたりの汗ばんだ肌にひんやりと触れた。
気持ちいい。そんな思いが自然と口元をゆるませる。
「なあ……もっと」
掠れた声が、どこからか届いた。すぐ近く。さっき迷彩ベストの男が立っていた方角からかもしれない。でも確かめるために顔を上げることはしなかった。私はまだ、この熱に浮かされたような感覚に浸っていたかったから。
私はブラウスの胸元をハンカチで拭うふりをした。白い布で鎖骨のくぼみをそっと押さえ、それから胸の谷間のあたりへとハンカチを滑らせる。汗でしっとりした肌の上を布が撫でていく感触が、必要以上にゆっくりに感じられた。カメラのファインダー越しに、この動きがどう見えているのかを想像すると、太ももの内側がひくんと震える。
ハンカチを握ったままの左手で、私はブラウスの襟元を少しだけ横に引いた。右手の指先が、自分の左胸のふくらみの上をなぞる。布越しにブラの縁の硬さを感じ、そのワイヤーが食い込んでいたあたりの肌が、まだじんじんと疼いていた。
右の指を、ブラのカップの縁にそっとかける。レースの縁取りが指の腹にざらりと触れた。私は息を止め、ほんの数センチだけカップを持ち上げた。ワイヤーが肌から離れる解放感が、じわりと胸の下に広がる。
薄暗い布の奥から、乳輪の縁がちらりと覗いているのが自分でも見えた。淡い桜色の輪郭が、ブラの影から少しだけ顔を出している。完全には見せない。まだ焦らす。その駆け引きが、背筋をぞくぞくと走り抜けた。
周囲から、ため息が重なる。一人じゃない。何人もの息遣いが混ざり合い、熱のこもった空気の塊みたいになって私の肌に降りかかってくる。
「ああ……」
「見えてる……見えてるぞ……」
誰の声かもわからない。ただ、自分が掌握している感覚だけがはっきりとあった。彼らは私が見せたがっているのを知っている。私は彼らが見たがっているのを知っている。その共犯じみた空気が、会場の熱気よりも熱く私を包んだ。
心臓が早鐘を打つ。指先がさらに持ち上がる。もう迷わなかった。
一気にブラを浮かせた。カップが持ち上がり、左の乳房の頂点が完全に露出する。ほんのりと桜色に染まった乳首が、会場のむっとした空気に触れて、きゅっと固くなっていく感触。胸全体が熱を持ち、心臓の鼓動に合わせて小さく震えているのがわかった。
視界の端で、フラッシュが白く炸裂した。
それから、シャッター音。カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ。一人じゃない。何人ものカメラが同時に連写を始めて、その音が雨のように降り注ぐ。さっきまでのお尻の露出とは比べものにならない反応。あの金髪の子のところからも、たぶん何人か戻ってきている。その確信が胸の奥で弾けた。
私は顔を伏せたまま、唇の端が上がっていくのを感じていた。見られてる。こんなにたくさんのレンズが、私の、誰にも見せたことのなかった乳首を、食い入るように撮っている。
時間の流れが急にゆっくりになった。三〇秒が、三〇秒じゃなくなる感覚。連写のシャッターの一音一音が引き伸ばされ、その合間に流れる沈黙がやけに長く感じられる。フラッシュが焚かれるたびに、まぶたの裏が白く灼けて、残像がゆらゆらと踊った。
「もうちょっと……」
「右も……右も見せて……」
さっきとは違う声。何人もの男たちのねだるような言葉が重なり、溶け合い、一つの大きなうねりになって私を押してくる。私はまだ焦らすように、右手をゆっくりと右胸の上に這わせた。ハンカチを持つ左手はそのままに、右手だけでブラウス越しに右の乳房の丸みをなぞる。布越しに伝わる自分の肌のやわらかさと、その奥で硬くなり始めている乳首の感触。
指先が右のブラの縁に届いた。今度は少しだけ手順を変えて、レースの縁をゆっくりとずらしていく。左と同じように一気にではなく、じわじわと。乳輪のほんの一部が覗いたところで手を止め、周囲の反応をうかがう。
ため息がまた重なった。今度は焦れたような、もどかしそうなため息。でも私はすぐには動かない。カップの縁を指でつまんだまま、ただじっと待つ。自分の息が上がっているのがわかった。胸が上下するたびに、露出した左の乳首が空気に触れてひりつく。
「お願い……」
その一言が、やけにはっきりと耳に届いた。お願い。私に懇願している。今朝までは、地味で誰からも見向きもされなかった私に。
指先が震えながら、右のブラを押し上げる。ワイヤーが外れ、布地が持ち上がり、そして右の乳首もまた、会場の熱気と無数の視線の前に晒された。左右の乳房が完全に露出して、汗でてらてらと光っている。心臓の鼓動に合わせて、胸の先端が小さく震えるたび、シャッター音がまた激しさを増した。
今、私は見られているんじゃない。私が、見せているんだ。
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