雨の日に刻まれた背徳の記憶
あらすじ
四十五歳のフリーランスWEBデザイナー、鈴木徹は狭いワンルームで孤独な日々を送っている。単調な仕事の合間の自慰は虚しさだけを残し、なぜ本物の女がいないのかと苦い思いに沈む。ふと脳裏に蘇るのは、小学六年の夏休み、幼馴染の山田朋美と共に見たエロビデオの記憶。あの雨の日から、彼の心と性欲は十二歳の朋美の幻影に縛られ続けていた。ベッドに仰向けになり、徹は自分の人生があの夏で止まったままだと確信する。
第1章 トンネルの途中
第1章: トンネルの途中
四十五歳という年齢は、気づけば人生の折り返しをとっくに過ぎているはずなのに、徹にとってはただ長いトンネルの途中のように思えた。
狭いワンルームマンションの天井は低く、いつも薄暗い。
机の上にはMacBookと液晶タブレットが並び、隅には未整理の請求書とコンビニ弁当の空き容器が積まれている。フリーランスのWEBデザインという仕事はそれなりに食えてはいるが、社会とのつながりは薄く、昼夜の感覚も曖昧だった。
朝起きるとコーヒーを淹れ、軽くシャワーを浴びてから、画面に向かう。
クライアントからの修正依頼、バナーやLPの更新。単調で退屈な作業の連続に、ふとした瞬間に無性の渇きが襲ってくる。
昼を過ぎる頃には椅子の背にもたれ、スマホで適当にエロサイトを開くのが習慣になっていた。
画質の粗いサムネイル、見慣れた洋物のカテゴリー。
再生ボタンを押すと、英語の聞き慣れない喘ぎ声と共に、黒い肌の男と金髪女の絡み合う映像が流れる。徹の指先は自然にズボンのファスナーへと伸びていく。
股間の肉棒を握り、上下に擦り始める。
画面の中の黒人男性が巨根を激しく振るうリズムに合わせ、手の動きも速くなる。テカテカと光る肉の塊が女の穴に突き刺さり、ぬちゅぬちゅと淫らな音を立てる。
その映像を見ながら、徹は目を細める。
――なぜか、違う。
スマホの画面に映る金髪女の顔が、ふとぼやける。
気づけばその顔は、ショートカットの黒髪、ぱっちりとした大きな黒目に変わっている。頬の幼さ、口元の無邪気な曲線。
「んっ……ちゅ……」
自分の口から、思わぬ声が漏れた。
手の中で肉棒が脈打ち、先端からは粘り気のある透明な液が滲んでいる。指でこすり取ると、ぬるりとした感触が伝わる。
画面の黒人男性が腰を震わせ、白濁を吐き出す。
その瞬間、徹の下腹部に激しい収縮が走った。
「はあっ……!」
熱い液体がほとばしり、腿の上、そして床に散る。
息が荒く、胸が上下する。
だが射精したあとに残るのは、むなしさと重たい倦怠感だけだった。
机の上のティッシュの山を見て、ふと心のどこかで思う。
――なぜ、自分には本物の女がいないのか。
ベッドに仰向けになり、白い天井を見つめながら、徹は過去の記憶に引きずり込まれていく。
婚活パーティーにも出たことがある。
合コンの誘いに顔を出したこともある。
だが、目の前の女性たちと話していると、何かが欠けているように感じてしまう。彼女たちの笑顔や仕草に、心がまったく動かないのだ。
触れたいと思えない。
唇を重ねたいと想像できない。
代わりに浮かぶのは、あの夏、雨の日に見た小さな女の子の横顔だった。
朋美。
ショートカットの、黒目の大きな幼馴染。
あの日からずっと、徹の心と身体は、彼女の残像に縛られている。
別の女性の裸を目にしても、ふとした瞬間、脳裏に蘇るのは朋美の声、朋美の笑い方、朋美の短いショートパンツから伸びていた太腿。
自慰に耽るときも、結局は朋美の幻を相手にしている。
スマホの画面に映る外国人女優の顔は、気づけば朋美のものに変わっている。擦り上げる自分の手の中で、射精の瞬間に浮かぶのは彼女の笑み。
あの夏の日から三十年以上経った今でも、徹の性欲の中心には、まだ十二歳の少女の姿が焼き付いているのだった。
窓の外はもう暗い。
街灯のオレンジ色の光が、カーテンの隙間から細く差し込む。
徹は立ち上がり、冷めたコーヒーのカップを流しに運ぶ。
洗面所の鏡に映る自分の顔は、疲れきっている。白髪交じりの短い髪、くすんだ茶色の瞳。痩せ型で背が高い体型は、年齢以上に老けて見える。
ジャージのポケットに手を突っ込み、リビングに戻る。
再びMacBookの前に座り、画面を見る。
未完了のデザイン案件が三つ。納期は明日の昼まで。
だが指先が動かない。
頭の中を、あの雨の日の記憶が占領する。
雨音。
湿った空気の匂い。
古びたテレビから流れるざらついた喘ぎ声。
そして、隣に座る朋美の体温。
「すごいよね……」
彼女の囁き声が、今でも耳の奥で響く。
吐息がかかり、鼓膜がくすぐられるような感触。
徹は目を閉じる。
目の裏側に、鮮明に映像が蘇る。
小学校最後の夏休み。雨で朋美の家に遊びに来ていたあの日。
彼女がこっそり見せてくれた、両親の隠した外国のエロビデオ。
画面に映し出される黒人男性と白人女性の露骨な性行為。
初めて目にする生々しい結合の光景に、二人は息をのんだ。
徹の視線は次第に画面から、隣に座る朋美のショートパンツから覗く太腿へと移った。
白くて柔らかそうな肌。
雨に湿った石鹸の香り。
胸の奥がむず痒くなり、股間が熱を持った。
「ねぇ、徹も……やってみようか」
朋美の誘いの言葉。
戸惑う徹に、彼女はもっと具体的に命じた。
「じゃあ、徹……ズボン脱いで」
震える手でブリーフ一枚になった徹の幼いペニスを、朋美は爛々とした目で観察した。
「これが、徹のおちんちんなんだ」
ひやりとした指先が亀頭に触れた時、徹の全身に稲妻が走った。
「ねぇ……舐めてあげようか。ビデオみたいに」
「き、汚いよ……おしっこ出るとこだよ」
否定する徹の言葉を、朋美は聞き流した。
彼女はティッシュで拭いながらも、ためらうことなく小さな口を彼の性器に含んだ。
柔らかい唇と舌のぬめり。
初めての電撃的な快感が、幼い身体を貫いた。
「ん……ちゅ……ぬちゅ……」
朋美が吸う音。
ぴちゃぴちゃと生々しい水音。
そして、腹の奥で弾けるような感覚。
「うぁっ……!」
白く濁った液体が、朋美の口の中にほとばしった。
彼女は驚いたように目を見開いたが、唇を離さなかった。むしろ亀頭をしっかりと咥え込んだまま、頬を膨らませ、吐き出された熱を必死に受け止める。
徹は腰を跳ねさせ、痙攣するように吐き続けた。
「ひゃっ……はっ……あぁ……っ」
朋美は顔を赤らめながら、口の中の液体を転がすように舌を動かした。
とろりとした白濁が唇の端から糸を引き、徹の腿に落ちる。
「……出たね。これが……精子なんだ」
その光景が、徹の一生を縛りつける記憶になった。
目を開ける。
現実のワンルームに戻る。
胸の鼓動はまだ早く、額に冷や汗がにじんでいる。
股間はまた少し疼いている。さっき射精したばかりなのに。
徹はゆっくりと手を伸ばし、ズボンのファスナーを下ろす。
中から肉棒が顔を出す。まだ完全には萎えておらず、先端は湿っている。
手で包み、ゆっくりと擦り始める。
目を閉じる。
もうスマホの画面は見ない。
頭の中に朋美を呼び出す。
十二歳の彼女が、また自分の前に跪く。
ショートカットの黒髪、ぱっちりとした大きな黒目。
「徹のおちんちん……また硬くなってるね」
朋美の声が幻聴のように響く。
「また舐めてあげようか?」
温かい息が亀頭にかかる。
「んっ……ああ……」
徹は声を漏らし、手の動きを速める。
イメージの中で、朋美の小さな口が肉棒を咥え込む。
柔らかい唇、ぬめりとした舌。
くちゅくちゅと吸う音。
「ちゅ……んっ……ごくっ……」
彼女が飲み込む音。
「徹の精子……また出てきた……」
白濁が口の端から溢れる。
現実で、徹の腰が震える。
下腹部がきゅっと縮み、熱いものがこみ上げてくる。
「はあっ……! 朋美……!」
叫び声を押し殺し、肉棒を握りしめる。
びゅくっという感覚と共に、白濁がほとばしった。
手のひら、腿、そして床に散る。
息が荒く、身体が震える。
しばらくそのまま動けずにいる。
やがて静寂が訪れる。
虚しさだけが、部屋を満たす。
徹はゆっくりと立ち上がり、ティッシュで手と腿を拭う。
床に落ちた白濁も、ぞうきんでぬぐい取る。
すべてを片付け終え、再びベッドに仰向けになる。
白い天井を見つめながら、徹は思う。
――俺の人生は、あの夏で止まったままなんだ。
三十年以上経った今でも、まだあの雨の日のリビングから出られない。
朋美の唇の感触。
彼女の口の中で爆ぜた初めての快感。
あの瞬間を超えるものは、何一つなかった。
大人になった今、様々な女性と出会い、可能性はあった。
だが徹の心と身体は、十二歳の少女にしか反応しない。
それは呪いのようなものだ。
彼は目を閉じる。
また明日も、同じトンネルの中を歩き続ける。
朝起きてコーヒーを淹れ、仕事をし、スマホでエロサイトを開く。
そして朋美の幻と共に射精し、虚しさに沈む。
このループから、もう出られない。
窓の外から、遠く救急車のサイレンが聞こえる。
徹はそっと息を吐いた。
――ずっと、あのままでいい。
そう思いながら、眠りにつく。
第2章 雨の日の招待
第2章: 雨の日の招待
窓の外では、雨がざあざあと降り続けていた。
午後になっても止む気配のない雨に、徹は朋美の家のリビングで退屈そうに漫画をめくっていた。週末の計画していた野球も流れ、ただ時間が過ぎていくだけの午後だった。
「ねえ、徹くん」
隣で折り紙をしていた朋美が、ふと顔を上げた。
ショートカットの黒髪が頬にかかり、ぱっちりとした黒目がきらりと光る。半袖のタンクトップから伸びた細い腕を組んで、彼女はいたずらっぽく笑った。
「面白いもの見せてあげようか?」
徹は首をかしげた。
「面白いもの?」
「うん。でも……絶対に誰にも言っちゃダメだよ。お父さんとお母さんに内緒のものなんだ」
朋美はそう言うと、ちゃぶ台の下からごそごそと何かを取り出した。それはビデオテープで、ラベルには外国語の文字がびっしりと書かれている。
徹の胸が、わずかに高鳴った。
――なんだろう、これ。
知らない世界の匂いが、そのテープから漂ってくるように感じた。大人たちが隠すもの、子供には見せないもの。そんな予感が、幼い心臓をそっと掴んだ。
「いいの? これを見て」
「だいじょうぶ。だって、私も一度だけこっそり見たことあるから」
朋美はいたずらっぽくウインクすると、テープをビデオデッキにセットした。機械がごそりと音を立て、テレビの画面にざらついたノイズが走る。
徹は息を潜めた。
雨音が遠のき、耳の奥で自分の鼓動が響くのがわかった。
画面のノイズが収まり、ぼんやりとした映像が映し出された。古びたキッチンで、ブロンドの女性が流しに向かって立っている。蛍光灯の青白い光が、彼女の肌を不自然に浮かび上がらせていた。
「これ……外国の映画?」
徹が小声で聞くと、朋美は唇に人差し指を当てた。
「しーっ。もっと近くで見なよ」
彼女は徹の腕を引っ張り、ちゃぶ台にもっと身を寄せた。その瞬間、朋美の肩が徹の腕に触れ、温もりが伝わってきた。
徹はどきりとした。
朋美は普段から活発で、体を触れ合うことも多い幼馴染だ。でも今、その肌の感触がなぜかいつもより強く胸に響く。
画面では、女性が振り向いた。そしてドアから黒人の男性が入ってくる。二人は何か言葉を交わしているが、外国語なので意味がわからない。
でも、その会話の調子から、何かが起こりそうな気配が伝わってきた。
男性が女性に近づき、手を腰に回す。女性は少し抵抗するような仕草を見せたが、すぐにその腕を受け入れた。
「うわ……」
徹は思わず声をもらした。
男性が女性の服を乱暴に脱がせ始めたのだ。ブラウスのボタンがはじけ、白い乳房がのぞく。
――あれは、お母さんのとも違う。
母親の入浴をこっそり覗いたことはあった。でも、あれはぼんやりとした影で、これほどはっきりと形が見えるものではなかった。
画面の中の乳房は、大きくてふくよかで、先端が濃いピンク色をしていた。男性の黒い手がその上に覆い被さり、ぎゅっと握りしめる。
「あっ……」
今度は朋美のほうから小さな息づかいが漏れた。
徹は横目で彼女の様子をうかがった。朋美は画面に釘付けになり、唇をわずかに開けている。頬がほんのり赤く染まり、胸のあたりが速く上下していた。
自分の胸の奥でも、同じように鼓動が早まっているのがわかった。
映像はさらに進んでいった。
女性は完全に上半身を裸にされ、男性にベッドへと押し倒される。スカートがめくり上げられ、下着も脱がされていく。
そして──ついに、二人の体が重なり合う瞬間が来た。
男性がズボンを下ろし、巨大な黒いものが現れた時、徹は目を見開いた。
「で、でかい……」
思わず呟いてしまった。
それはこれまで見たこともない大きさで、血管が浮き出て、先端がむき出しになっていた。まるで別の生き物のように、威圧感すら感じさせる。
朋美が小さく息を吸い込んだ。
「ほら……あれが、男の人のあれなんだよ」
彼女の声はかすかに震えていた。吐息が徹の耳元にかかり、温かく湿った感触が伝わってくる。
徹はその吐息に背筋がぞくっとした。
画面では、男性がその巨大なものを女性の股間に押し当てていた。女性は顔を歪め、痛そうな声をあげている。でも、その声にはどこか甘ったるい響きも混じっていた。
ぐちゅっ、と水っぽい音がスピーカーから流れた。
男性の腰がぐいっと押し出され、黒い肉棒が女性の体の中に沈み込んでいく。
「入った……」
今度は朋美が呟いた。
彼女の声は、驚きと興奮が入り混じっていた。徹は思わず彼女の手を見た。ちゃぶ台の上に置かれた彼女の細い指が、こぶしをぎゅっと握りしめている。
自分の手も、知らないうちに膝の上で固く握られていた。
映像は残酷なほどに生々しかった。
男性の腰が前後に動き、そのたびに女性の体が揺さぶられる。結合部からはねっとりとした音が響き、女性の喘ぎ声が部屋中に溢れていた。
徹は息を詰めて見つめていた。
――ああやって、男と女はくっつくんだ。
頭では理解できなかった。でも、目の前に広がる光景は紛れもない現実だった。肉体と肉体が絡み合い、汗を光らせて動き続ける。
ふと、横にいる朋美の存在が気になった。
徹はゆっくりと顔を向けた。
朋美は相変わらず画面を見つめていたが、その頬はより赤く、唇は潤んで光っていた。ショートパンツから伸びた太腿が、かすかに震えているように見えた。
――朋美も、女の人なんだ。
その考えが、胸の奥で熱く膨らんだ。
テレビの中の女性の体と、目の前の朋美の体が、頭の中で重なり合っていく。朋美のショートパンツの下にも、あんなふうに割れ目があるのだろうか。もし触れたら、どんな感触なんだろう。
「ねえ、徹くん」
突然、朋美が声をかけた。
彼女は画面から目を離さずに、小声で続けた。
「こういうのって……気持ちいいのかな」
徹は答えに詰まった。
知らない。わからない。でも、画面の中の女性の声は、確かに苦しそうなだけではなかった。どこかとろけるような、甘い響きが混じっている。
「僕……わかんない」
「私もわからない。でも……」
朋美は一度言葉を切り、深く息を吸った。
「なんか……ドキドキするよね」
彼女がそう言うと、今度ははっきりと腰を揺らした。ショートパンツの布地が太腿に擦れ、かすかな音を立てる。
徹はその動きに目を奪われた。
朋美の太腿は、まだ子供らしい丸みを帯びていた。でも、その肌は白く滑らかで、雨の日の湿った空気の中でほんのりと汗ばんで光っていた。
――触れてみたい。
その衝動が、突然胸を突き上げた。
指先を伸ばせば、すぐに届く距離だ。朋美の温もりを確かめられる。あの柔らかそうな肌の感触を、掌で感じられる。
でも、手は動かなかった。
恥ずかしさと、何か別の恐れが、体を縛り付けていた。
映像はクライマックスに向かっていた。
男性の動きが激しくなり、女性の喘ぎ声もより甲高くなっていく。結合部からはくちゅくちゅという淫らな音が絶え間なく響き、部屋の中に生臭いような甘いような空気が充満していく。
朋美がまた小さく息を漏らした。
「ああ……もう……すごい……」
彼女の声は、まるで自分がその場にいるかのような熱を帯びていた。片手が無意識に自分の股間を押さえ、ショートパンツの布地を軽く擦っている。
徹はその様子を見て、喉がからからに渇いた。
唾を飲み込む音が、自分には大きく聞こえた。
胸の奥で、むずむずとしたかゆみのような感覚が広がっていた。それは今まで感じたことのないもので、どうしていいかわからない不安と、どこか甘い期待が混ざり合っていた。
雨はまだ降り続け、窓を打つ音が二人の背徳の時間を包み込んでいた。
テレビの画面は白く濁り、やがてノイズに戻っていった。
映像が終わっても、しばらく二人は動けなかった。
リビングには、激しい雨音と、荒い二人の呼吸だけが響いている。
――あれは、何だったんだろう。
徹は頭の中がぐちゃぐちゃだった。理解できない光景、でも目を離せなかった光景。そして、横にいた朋美の温もりと息づかい。
朋美がゆっくりと顔を向けた。
彼女の頬はまだ紅潮し、黒目が潤んで光っていた。
「……どうだった?」
声はかすれていた。
徹はうまく言葉が出ず、ただうなずくだけだった。
朋美はにっこりと笑った。その笑顔は、いつもの無邪気さを装いながら、どこか大人びた妖しさを帯びているように見えた。
「また今度、こっそり見ようね。他にもテープがあるんだ」
そう言うと、彼女はちゃぶ台から立ち上がり、ビデオテープを元の場所に戻しに行った。
徹は彼女の後ろ姿を見つめた。
ショートパンツから伸びた細い脚、柔らかそうな腰の曲線。さっきまでテレビに映っていた女性の裸体と、なぜか重なって見えた。
胸の奥のむず痒さは、ますます強くなっていくばかりだった。
――僕、どうしちゃったんだろう。
窓の外では、雨がいつまでもやまずに降り続けていた。
第3章 初めての曝け出し
第3章: 初めての曝け出し
画面の中で黒人男性の腰の動きは、次第に荒く激しくなっていた。
ぐちゅっ、ずぶっ、ぐちゅりっ――。
テレビのスピーカーからはねっとりとした水音が炸裂し、白人女性の喘ぎ声も叫びに近づいている。あの黒々とした巨大なものが、濡れ光る裂け目の奥深くまで突き刺さり、引き抜かれ、また突き込まれる。その繰り返しが、画面を支配するリズムになっていた。
徹は息を詰めて凝視していた。
股間は見ているだけなのに、なんだか熱く、重たくなっている。ショートパンツの下で、自分の小さなものが硬く膨らんでいる感覚が、恥ずかしいほどにはっきりと分かった。
――これが、セックスなんだ。
頭の中で、さっき朋美が言った言葉が繰り返される。理解できない。でも、目は離せない。体の奥がむずむずと疼き始めている。
ふと横を見ると、朋美も同じように画面に釘付けだった。
彼女の細い指が、ショートパンツの裾をぎゅっと握りしめている。太腿の付け根あたりを、無意識に押さえつけるような仕草。唇がわずかに開き、荒い吐息が漏れているのが見えた。
「……すごいね」
朋美が呟いた。
声はかすれて、震えが混じっている。徹の鼓動が、また一つ早くなった。
「こんなに、激しく動かして……女の人、痛くないのかな」
徹は何も答えられなかった。画面の中の女性は、確かに苦しそうな表情を浮かべている。眉をひそめ、唇を噛みしめ、時折「アッ!アッ!」と短い叫びをあげている。
でも、その声の奥には――苦しみだけではない何かが込められているようにも聞こえた。
「でも……気持ちよさそうでもあるよね」
朋美が続けた。
彼女は頬をほんのり赤らめ、視線を画面からそらさない。ショートパンツの股間をもじもじと動かす手の動きが、少し加速している。
徹の喉が渇いた。
唾を飲み込むと、その音がやけに大きく耳に響く。胸の奥で、何かがかき混ぜられるような、そわそわとした感覚が広がっていった。
映像はクライマックスに近づいていた。
黒人男性の動きがさらに激しくなり、腰の押し込みが深く、力強くなる。女性の喘ぎ声も甲高く、途切れ途切れになっていく。
そして――。
男性の背筋がぴんと張りつめ、喉の奥からうなるような声があがった。
次の瞬間、白く濁った液体が、女性の股間から溢れ出るのが映し出された。
「あ……出た」
朋美の声が、かすかに震えた。
徹は息をのんだ。テレビの画面に、粘り気のある白い液体がじわじわと広がっていく。女性の股間も、男性のペニスも、べっとりとその白濁で覆われている。
――これが、射精。
さっき朋美が説明してくれた言葉が、実際の映像と重なった。頭の中で知識と現実が結びつく瞬間だった。
映像はそこで終わり、ざらついたノイズが画面に走った。
部屋の中には、再び雨音だけが響き渡る。
長い沈黙が続いた。
徹はまだ画面を見つめたまま、動けなかった。胸の奥がざわめき、股間の熱が冷めない。頭の中は、さっきまでの映像でいっぱいだった。
「……ねえ、徹」
朋美の声が、静かに響いた。
徹はゆっくりと顔を向けた。
朋美は、ちゃぶ台の上で体の向きを変え、徹と真正面に向き合っていた。彼女の頬はまだ紅潮し、黒目がちの瞳が、きらりと湿って光っている。
「さっきの……見て、どう思った?」
質問に、徹は少し考え込んだ。
どう思ったか。答えられない。怖かったような、興奮したような、理解できないような――そんな感情がごちゃまぜになっていた。
「……わかんない」
正直にそう答えると、朋美はふっと笑った。
「私も、わかんない。でも……」
彼女は言葉を切ると、体を少し前に乗り出した。二人の距離が、ぐっと近くなる。
「でも、なんか……自分でも試してみたくなっちゃった」
徹の心臓が、どきんと跳ねた。
試してみたくなった。その言葉の意味を、頭が必死に理解しようとする。
「えっ……ど、どういう……」
「ほら、さっきビデオでやってたこと」
朋美はいたずらっぽく目を細めた。
「ああいうの……実際にやったら、どんな感じなんだろうって。すごく気になるんだよ」
徹の顔が、ぽっと熱くなった。
実際にやる。それはつまり――。
頭の中に、さっきの映像が鮮明に蘇る。黒人男性のペニスが、女性の股間に突き刺さる光景。ぐちゅっという水音。喘ぎ声。
それを、自分たちがやる?
「だ、だって……僕たち、子供だよ」
声が震えていた。そうだ、子供だ。そんなことしてはいけない。でも、心の奥底では――ちょっとだけ、どんな感じなのか知りたいという好奇心が、ちらりと光っていた。
「子供でも、できるんじゃない?」
朋美は真剣な表情で言った。
「だって、徹にもおちんちんあるんでしょ?私にも、あそこあるし」
「そ、それは……」
「ねえ、ちょっとだけ……見せてくれない?」
その言葉に、徹は固まった。
見せる。自分の、あの部分を。
恥ずかしさが一気に襲ってきて、顔から火が出そうだった。人前で裸になるなんて、一度もしたことがない。ましてや、女の子に――それも幼馴染の朋美に、あの部分を見せるなんて。
「い、いや……そんな……」
拒否の言葉が出かかった。
でもその時、朋美の目が、真っ直ぐに徹を見つめているのに気づいた。
彼女の瞳には、子供らしい好奇心がきらきらと輝いている。悪意はない。ただ純粋に、知りたいという欲求でいっぱいだった。
――僕も、実は……ちょっとだけ……。
心の奥で、小さな声が囁いた。
朋美のあそこを、見てみたい。どんな形をしているのか。さっきビデオで見た女性のあそこと同じなのか、それとも違うのか。
その欲望が、恥ずかしさを少しずつ押しのけていく。
「……ほんの少しだけなら」
声が、かすれていた。
朋美の顔がぱっと輝いた。
「やった!約束だよ!」
彼女はそう言うと、ちゃぶ台の上で正座し直し、徹の方に体を向けた。まるで、何か大切なものを見るかのような、真剣な眼差し。
「じゃあ……やってみようか」
徹は深呼吸をした。
鼓動が早くて、胸が苦しい。手のひらには、冷や汗がにじんでいる。
ゆっくりと、立ち上がる。
朋美の視線が、自分の体を追っている。その熱いまなざしを感じながら、徹はズボンのウエストに手をかけた。
ファスナーを下ろす音が、部屋の中に響く。
雨音だけの静かな空間で、その音がやけに大きく聞こえた。次に、ボタンを外す。ゴムが緩み、ズボンが太腿にかかる。
「……あ」
朋美が小さく息をのんだ。
徹は目を閉じ、一気にズボンを足元まで下ろした。
下半身は、ブリーフ一枚だけになった。
恥ずかしさで、全身が火照る。人前にこんな姿を晒すのは初めてだ。股間のあたりが、妙に意識されて、居ても立ってもいられない気分だった。
「わあ……」
朋美の声が、興味深そうに響いた。
徹はうつむいたまま、目を開ける勇気がなかった。でも、朋美の視線が自分の股間をじっと見つめているのが、肌で感じられる。
「これが……徹の、ブリーフね」
彼女が呟く。
「その中に、おちんちんが入ってるんだ」
そう言われて、徹はますます恥ずかしくなった。確かに、ブリーフの前には小さな膨らみがある。さっきからの興奮で、少し硬くなっている部分が、布地を押し上げている。
「……見たい?」
声が震えていた。
「うん。すごく見たい」
朋美の答えは、迷いがなかった。
徹は覚悟を決めた。
ゆっくりと、ブリーフのウエストに指をかける。ゴムの感触が、指先に伝わる。震える手で、少しずつ布を下ろしていく。
まずは腰骨が見え、次に下腹――。
そして、ついに先端が顔を出す。
「あ……」
朋美が息をのんだ。
徹は目を閉じたまま、ブリーフを足元まで下ろした。完全に下半身が露出し、幼いながらも硬く膨らんだペニスが、朋美の視線に晒された。
一瞬、沈黙が流れた。
部屋の中には雨音だけが響き、自分の鼓動が耳の中で鳴り響いている。恥ずかしさと、どこか変な興奮が入り混じり、胸が苦しくなるほどだった。
「……これが、徹のおちんちん」
朋美が、ゆっくりと言った。
声には、驚きと好奇心が詰まっていた。
「ビデオに出てきた人のは、すごく大きかったけど……徹のも、ちゃんとあるんだね」
徹はうつむいたまま、うなずいた。
言葉が出ない。全身が熱く、特に股間あたりがやけに敏感になっている。空気が肌に触れる感覚さえ、いつもと違って感じられた。
「ちょっと……近くで見てもいい?」
朋美が尋ねる。
徹はまたうなずいた。
ちゃぶ台の上で、朋美が体を乗り出してくる音がした。彼女の息遣いが、少しずつ近づいてくる。温かい吐息が、太腿のあたりにかすかに触れる。
徹は思わず身を固くした。
「うわ……すごく、熱い」
朋美の声が、すぐそばから聞こえた。
彼女はもう、徹の股間のすぐ近くまで顔を寄せているのだ。その距離感に、徹の背筋がぞくりとした。
「形も……ビデオのとはちょっと違うね」
朋美が観察しながら呟く。
「先っぽが、皮で覆われてる。でも、先端がちょっとだけ見えてる」
その指摘に、徹はますます恥ずかしくなった。
確かに、自分のペニスは包皮に覆われていて、亀頭の先端だけがわずかに顔を出している状態だ。大人の男性のように、すっかり皮がめくれているわけではない。
「これって……普通なの?それとも、徹だけ?」
朋美が純粋に疑問を口にする。
「わ、わかんない……」
徹はかすれた声で答えた。
本当に分からない。他の男の子のペニスを見たことがないから、自分の形が普通なのかどうか、比較のしようがなかった。
「でも……かわいい形してるね」
朋美が、ふっと笑った。
その言葉に、徹は顔を上げた。
朋美は、徹の股間を真剣な表情で観察している。頬は少し赤いが、目はきらきらと輝き、純粋な好奇心でいっぱいだった。
「さっきビデオのでかすぎるおちんちんより、徹のこのサイズの方が……なんか、親しみやすいかも」
彼女がそう言うと、細い指をそっと伸ばしてきた。
「触って……みていい?」
その問いかけに、徹は息を詰めた。
触られる。朋美の手で、自分のあの部分を。
恥ずかしさがまた襲ってきた。でも、それ以上に――ちょっとだけ、どんな感じなのか知りたいという気持ちが、心の隅で膨らんでいた。
「……うん」
小さくうなずく。
朋美の指先が、ゆっくりと近づいてくる。
その距離が詰まるほどに、徹の鼓動は早くなり、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。
――もう、逃げられない。
そう悟った瞬間、朋美の指先が、ついに彼のペニスの先端に触れた。
第4章 甘く生臭い衝撃
第4章: 甘く生臭い衝撃
朋美の小さな口が、ティッシュで拭われたばかりの亀頭に近づいた。
息が、先端にかかる。熱っぽくて、少し湿っている。徹は背筋をぴんと伸ばし、思わず目をぎゅっと閉じた。でも、すぐにまた開けた。見ていなければ、現実から逃げてしまうような気がしたからだ。
「……大丈夫、汚くないよ。さっき拭いたから」
朋美の声は、いつもより少し低く、落ち着いている。その口調に、徹はなぜか安心させられるような、でも同時にもっと緊張するような気持ちになった。
そして次の瞬間、柔らかい感触が包み込んだ。
「……っ」
喉の奥で息が詰まった。熱い。それに、とにかく柔らかい。唇の内側の粘膜が、亀頭全体を優しく包み込む。あたたかくて、湿り気があって、今までに感じたことのない感触だった。
朋美の目は、真正面から徹を見上げていた。まつ毛が長く、瞳は潤んで光っている。頬が少し膨らんで、口の中に何かを含んでいる形がはっきりわかる。
「んむ……」
口を動かすたびに、ぐちゅりと小さな音がした。舌が、先端の割れ目のあたりをそっとなぞる。その動きは、ビデオの中の白人女性とはまるで違う。ゆっくりで、ためらいがちで、まるで初めての食べ物を味わっているみたいだった。
徹の膝ががくがくと震え始めた。股間から背中にかけて、じんわりと熱い波が広がっていく。太腿の内側がぴくぴくと痙攣し、立てていた足が崩れそうになる。
「……朋、朋美……」
声が裏返る。思わず彼女の肩に手を置いた。指先が震えていて、しっかり支えられない。
朋美は少し口を離し、糸を引く唾液を切りながら上目遣いで見た。
「……痛い?」
その問いかけは、純粋な心配に聞こえた。でも瞳の奥には、何か別の興味がきらきらと光っている。
「ち、違う……そんなんじゃなくて……」
何が「そんなん」なのか、徹自身もわからなかった。ただ、このままではどうにかなってしまいそうな気がした。腰の奥に、みぞおちのあたりに、何かがどんどん蓄積されていく。重たくて熱くて、いっぱいになりすぎている感じ。
朋美はまた口を寄せた。今度は少し深く含み、頬をへこませて吸うような動きをした。
「くちゅ……」
音がはっきり聞こえた。濡れた音。自分の中から出ているわけではないのに、なぜか恥ずかしくなるような響き。
徹の背中が、びくんと跳ねた。腰が勝手に前に押し出される。朋美の口の中へ、もっと深く入りたくなってしまう。
「あっ……」
自分の声が、変なふうに高い。ビデオの中で女の人があげていた声に、少し似ている気がした。そのことにまた恥ずかしさがこみ上げて、顔が火照る。
朋美は両手で徹の太腿を支え、口を上下に動かし始めた。ゆっくりとしたリズムで、時々舌を絡ませながら。唾液がたまって、唇の端から白く光る糸が垂れた。
「ん……ちゅぱ……ん……」
吸う音、舌がこする音、唾液の音。それらが全部混ざり合って、耳の奥に直接響いてくる。雨の音も、テレビの音声も、もうどこか遠くにあるようだった。
徹の呼吸が荒くなった。胸が痛いほど鼓動し、喉が乾く。手のひらに汗がにじんで、朋美の肩の布地を少し濡らしている。
――やばい。なにこれ。
頭の中で言葉が渦巻く。快感というものがあれば、きっとこれなんだろう。でも、あまりにも強すぎて、怖くなってきた。このまま爆発してしまいそうで、どうしていいかわからない。
下腹部がきゅうっと締まる。急に強い収縮が走り、思わず腰を引いた。
「……だめ……もう……」
声が震えている。逃げたい。でも、朋美の口から離れたくない。矛盾した気持ちが渦を巻き、頭の中が真っ白になっていく。
朋美は口を離さなかった。むしろ、もっとしっかりと咥え込み、喉の奥まで受け止めるような動きをした。
その瞬間、全てが弾けた。
「うああっ……!」
叫び声が部屋に響いた。腰が勝手に跳ね、熱いものが勢いよく放出される。何度も、何度も、止まらない。まるで体の中の全てを搾り取られているようだった。
朋美の目がぱちりと見開かれた。でも、驚きだけではない。何かを理解したような、納得したような表情。口の中に白濁の液体が充満し、頬が膨らむ。
徹は腰を震わせながら、まだ続く放出に身をよじった。膝の力が完全に抜け、その場にしゃがみこみそうになる。
「はっ……はあっ……あ……」
息が続かない。涙がにじんで、視界がぼやける。朋美の顔が、光の輪の中でゆらゆら揺れている。
彼女は少し苦しそうに眉をひそめると、ごくん、と喉を鳴らした。そしてもう一度、ごくん。口の中が空になるまで飲み込む動きを繰り返した。
最後に口を離した時、唇の端から白い糸が伸びた。それが切れて、徹の太腿に落ちた。まだ温かかった。
朋美は手の甲で口元を拭いながら、ゆっくりと息を吐いた。
「……ふう」
その吐息の中に、ちょっとした生臭さが混じっている。徹自身の匂いだ。それに気づいて、また恥ずかしさがこみ上げた。
「……ごめん、汚くなっちゃって……」
声がかすれている。のどが痛い。
朋美は首を横に振った。頬はまだ赤く、目は潤んだまま。
「だいじょうぶ。ちょっと塩っぱい味がしたけど……そんなに嫌じゃない」
そう言って、にっこり笑った。その笑顔は、さっきまでの好奇心に満ちた表情とは少し違う。何かを成し遂げたような、満足げな輝きを帯びていた。
徹は崩れるように床に座り込んだ。足に力が入らない。股間はまだぴくぴくと痙攣していて、先端から最後の一滴がにじみ出ている。
朋美もその横にしゃがみ、顔を近づけた。
「これが射精なんだね。ビデオで見た通りだ」
彼女の指が、徹のまだ濡れ光る先端に触れた。そっとなでるように。
「へえ……出たばかりなのに、また少し硬いよ?」
その言葉に、徹は自分の体の反応を改めて意識した。確かに、射精したばかりなのに、また少しずつ血が集まっている気がする。恥ずかしさで、また顔が熱くなる。
「わ、わかんない……」
本当にわからなかった。体が、自分の意思とは関係なく動いている。快感の余韻がまだ体中を駆け巡っていて、思考がまとまらない。
朋美はにやにやと笑い、そのまま立ち上がった。窓の外を見ると、雨はまだ降り続けている。しかし、さっきまでの激しい雨脚ではなく、静かな霧雨のようなものに変わっていた。
「……面白い経験だった」
彼女が振り返って言った。
「徹の体って、すごく正直なんだね」
その言葉の意味を、徹はすぐには理解できなかった。ただ、自分が今経験したことが、この先の人生でずっと忘れられないものになるだろうという予感だけが、胸の奥に重く沈んでいった。
部屋の中には、二人の吐息と、さっきまでの行為の余韻がじんわりと漂っている。甘く、生臭く、背徳的で、それでいてどこか純粋な匂い。
徹はまだ座り込んだまま、自分の膝を見つめていた。太腿には、朋美が飲みきれなかった白濁の痕が、かすかに光っていた。
第5章 秘密の花園

第5章: 秘密の花園
朋美の言葉が、まだ唾液で湿った唇から零れるように落ちたとき、徹は自分の鼓動が喉の奥で鳴っているのを感じた。
――次は、僕が見る番なんだ。
外では相変わらず雨が降り続け、窓ガラスを流れる水の筋が部屋の光をゆがめて揺らめいていた。テレビの画面はもう静止しており、ただ砂嵐のようなノイズだけがざあっと流れている。その無機質な音と雨音が混ざり合う中で、朋美はゆっくりと立ち上がった。
彼女の動きには、さっきまで徹のペニスを口に含んでいたときとは違う、少し緊張したような硬さがあった。けれど瞳は相変わらず爛々と輝き、徹を見下ろしながら小さく息を吐いた。
「さっき、私が徹くんのを見たから……今度は私のを見せてあげる」
声はわざとらしく明るく、でもその端に震えが混じっているのが分かった。
徹はまだ床に座り込んだまま、上を見上げていた。朋美のショートパンツの裾から伸びる細い脚、その先にちらりと見える花模様のパンツの縁。さっきまで自分が目にしていたのは、画面の中の見知らぬ女の裂け目だった。でも今、目の前にあるのは朋美の、本当の身体だ。
「ほんとに……見せてくれるの?」
声が裏返りそうになるのを、必死に抑えた。
朋美は少し頬を赤らめ、うん、と小さく頷いた。
「だって、公平じゃないとね。徹くんが裸になったんだから、私もならないと」
そう言いながら、彼女は両手をショートパンツのウエストに当てた。ゴムの縁を親指で引っ掛け、一瞬ためらうような間があった。
徹は息を飲んだ。目をそらすべきか、それともこの瞬間を見逃さないべきか、頭の中が真っ白になった。けれど体は正直で、視線は朋美の手元から離れなかった。
ぐっ、と布地が伸びる音がした。
ショートパンツが腰のあたりまで下がり、白い肌が露わになる。太腿の付け根あたりまで下りてきたところで、朋美はまた少し手を止めた。吐息が荒くなり、胸が小さく上下している。
「……恥ずかしいな」
ぽつりと漏れた呟きは、今まで聞いたことのないような弱々しい響きだった。
徹は思わず言葉をかけた。
「や、やめてもいいよ……朋美、無理しなくて」
けれど朋美は首を振った。黒目の大きな瞳をぎゅっと細め、唇を噛みしめるようにして、最後の一押しをした。
ショートパンツが膝のあたりまでずり落ち、彼女は片足ずつそれを抜いていった。脱ぎ捨てられた布地は床にたたみかけられるようにして落ち、そのそばにはさっき徹が脱いだズボンが無造作に転がっていた。
そこに立っているのは、上半身には淡い水色のタンクトップを着たままの、でも下半身はパンツ一枚だけの朋美だった。
徹の視線は自然と彼女の股間に吸い寄せられた。
白い布地には小さな花の模様が散りばめられていて、年相応に可愛らしい。けれどその布の中央あたりに、ほんのりと盛り上がった影が見える。布地に押し付けられた小さな肉の膨らみが、縦に割れ目を刻んでいるのが、透けて見えるような気がした。
「これが……私のパンツ」
朋美が言った声は、なぜか誇らしげに聞こえた。
「お母さんが買ってくれたの。でも、こんなふうに他の人に見せるために着てるわけじゃないんだよ」
そう言いながら、彼女は片足をちゃぶ台の縁にかけるようにして乗せた。バランスを取るために壁に手をつき、もう一方の手をパンツのウエストに当てた。
「じゃあ……最後まで見せてあげるね」
ゴムが腰骨に引っかかり、徐々に下に引きずり下ろされていく。白い布が太腿の肌を撫でるように滑り、膝のあたりまで下がったとき、徹は思わず目を見開いた。
パンツの下から現れたのは、ショートパンツでは隠れていたもっと内側の肌だった。太腿の内側は外側よりもさらに白く、柔らかそうな質感をしていた。そしてその中心に――
「うわ……」
徹の喉が鳴った。
陰毛はまだほとんど生えていなくて、ぺたんと平坦な下腹部から、縦に割れた小さな裂け目がのぞいていた。色は薄いピンクがかった肌色で、周囲の肌よりもほんのり赤みを帯びている。複雑に折り重なった襞が、わずかに湿った光を反射していた。
朋美はその姿勢のまま、顔を赤くして言った。
「私の……おまた」
その言葉に、徹は胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。今までずっと、「女のあそこ」とか「秘所」とか、遠回しな言い方でしか考えたことのなかった部分が、目の前に実在している。しかもそれが、幼馴染の朋美の身体の一部なのだ。
「……触ってみていい?」
気づくと、そんな言葉が口から出ていた。
朋美の目がぱちりと瞬いた。一瞬、迷うような表情を浮かべたが、すぐにうん、と小さく頷いた。
「いいよ。だって、さっき私が徹くんのに触ったから」
徹は震える手を伸ばした。指先が朋美の膝のあたりから、太腿の内側を這い上がっていく。肌は思ったよりも滑らかで、ほんのり温かい。汗で湿っているわけでもないのに、何か脂っぽいようなつるりとした感触があった。
そして指先が、ついにその裂け目の縁に触れた。
「あ……」
朋美の身体がぴくりと跳ねた。
「ひ、冷たい……」
徹の指先は確かに冷たかった。外の雨で湿った空気にずっと晒されていたせいか、体温が奪われていた。けれど朋美のそこは、驚くほど熱かった。まるで身体の芯から温められた小さな窪みのように、じんわりと熱を発していた。
「ご、ごめん……」
「ううん。大丈夫」
朋美はそう言いながら、目をぎゅっと閉じた。長い睫毛が頬に影を落とし、唇を噛みしめている。恥ずかしそうな仕草なのに、腰は少し前に突き出すようにして、徹の指を受け入れようとしているように見えた。
徹はもう一度、慎重に指を動かした。人差し指の腹で、縦に走る小さな溝をそっとなぞる。表面は驚くほど柔らかく、ほんのりと張りがある。触れている部分が微妙にぬめっとして、指が滑る。
「わあ……」
思わず声が漏れた。
「朋美のここ……すごく柔らかい」
「そ、そう?」
朋美の声はかすかに震えていた。目を閉じたまま、呼吸が少し荒くなっている。
徹はもっと詳しく知りたくなった。指先に力を入れずに、裂け目の上から下までゆっくりと撫で下ろす。すると、溝の一番下のあたりで、指先が小さな窪みにはまった。ぽっかりと開いた、ほんの数ミリの穴。
「ここが……おしっこが出るところ?」
「うん……」
朋美は小さくうなずいた。
「でも、さっき私が言ったでしょ?ここから赤ちゃんもできるんだって」
徹はその言葉を思い出した。朋美が自分の精液を飲み下した後で話していたこと。この穴の奥に「子宮」というものがあって、そこで赤ちゃんが育つのだという。
指先をその小さな穴の縁に当て、ごく軽く押してみた。
「んっ……!」
朋美の腰が跳ね、太腿が小刻みに震えた。
「や、やめて……そこ、押されると変な感じ……」
「ごめん」
徹は慌てて指を離した。でも、朋美の反応がとても気になった。痛そうなわけではなくて、むしろ感じすぎて困っているような、そんな響きだった。
そしてそのとき、徹の鼻にふと甘いような、少し酸っぱいような匂いが漂ってきた。さっきからかすかに感じていたが、近づくとはっきりとした。
――これが、朋美の匂いなんだ。
雨の湿気と混ざり合い、汗とはまた違う、女の子の身体から立ち上る特有の香り。洗い立ての清潔さの中に、どこか生々しい動物のような温もりを秘めている。
徹は無意識にもう少し顔を近づけた。匂いの源を確かめたいような衝動に駆られて。
「ちょ、徹くん……なにしてるの?」
朋美が上のほうから声をかけてきた。徹が彼女の股間に顔を近づけていることに気づいたのだ。
「ごめん……でも、朋美のここから、いい匂いがする」
「えっ?匂い?」
朋美はきょとんとした声を出した。
「うん。甘いっていうか……なんか、すごく朋美って感じの匂い」
「そ、そんなの聞いたことない……」
朋美はますます顔を赤らめた。けれど、徹が自分の匂いを「いい匂い」だと言ったことが、なぜか嬉しかった。少し照れくさそうに太腿をもじもじと擦り合わせる。
その動きで、裂け目のあたりがちらりと見える。先ほどよりも少し、濡れているような気がした。光の反射が強くなり、粘膜がきらきらと輝いている。
徹はまた指を伸ばした。今度は人差し指と中指の二本で、裂け目をそっと挟むようにして開こうとした。
「あっ……!」
朋美が声を上げた。
「な、なにしようとしてるの?」
「中が見たい……どんなふうになってるのか」
徹は真剣な声で答えた。彼の中には、さっき画面で見たあの白人女性の、大きく開かれた赤い粘膜の記憶が焼き付いていた。あれと同じものが、朋美の身体の中にも隠れているのか。そんなことが信じられず、でも確かめずにはいられなかった。
指先にほんの少し力を入れる。柔らかい襞が左右に押し分けられ、その奥からまた別の襞が現れた。複雑に折り重なった薄ピンクのヒダが、ほんのりと湿って光っている。
「わあ……」
徹は息を呑んだ。
「中まで……こんなふうになってるんだ」
「み、見える?」
朋美の声は、もう泣きそうなほどに震えていた。自分で広げているわけではないのに、他人の指でこんなにじっくりと観察されるのは、想像以上に恥ずかしかった。でも同時に、どこか熱い興奮も感じていた。
徹の指がさらに奥へと進もうとする。すると、またあの小さな穴の縁に当たった。今度は指先でその周りをゆっくりと円を描くように撫でてみる。
「や……だめぇ……」
朋美の腰が逃げるようにそり返った。でも徹は離さない。むしろ、この反応が面白くて、もう一度同じところをなぞった。
「んっ! あっ……!」
今度は明らかに感じている声だった。痛いというよりは、くすぐったいような、でもそれ以上に身体の芯を揺さぶられるような感覚。
徹は顔を上げて朋美を見た。彼女は目をぎゅっと閉じ、唇を噛みしめ、頬を真っ赤に染めている。でもその表情には、苦しみだけではなく、どこかとろけそうな甘さも浮かんでいた。
「朋美……気持ちいい?」
聞いてから、そんなことを聞いていいのか分からなくなった。けれどどうしても知りたかった。
朋美は目を開け、潤んだ瞳で徹を見下ろした。しばらく黙っていたが、かすかに、本当にかすかにうなずいた。
「うん……ちょっと、変な感じだけど……気持ちいい」
その言葉に、徹の胸の中に熱いものがこみ上げてきた。さっき自分が感じたあの衝撃的な快感を、朋美も感じている。二人が同じものを分かち合っているのだ。
もう一度顔を下げ、今度は指ではなく、直接その裂け目に近づいた。匂いがより強く鼻腔をくすぐる。甘くて、少し酸っぱくて、でも嫌な匂いではない。むしろ、なぜか食欲をそそられるような、本能的な魅力を感じた。
「徹くん……まさか……」
朋美の声が上からかすれて聞こえてきた。
徹は答えなかった。代わりに、恐る恐る舌を出し、その濡れ光る小さな裂け目の上端に触れてみた。
「ひゃっ!」
朋美の全身がびくんと震えた。
舌先が感じたのは、指で触れたときよりもずっと繊細な柔らかさだった。ほんのり塩味がする。汗のような、でもそれだけではない複雑な味。そしてまたあの甘酸っぱい香りが、舌の上で広がる。
徹は夢中で舐め始めた。上から下へ、縦に走る溝をゆっくりと這い下りる。時々舌先を立てて、襞の間に差し込むようにしてみる。
「あっ……んっ……や、やめて……そんなの……」
朋美の声はますます乱れ、腰が小さく揺れている。両手で壁を掴み、バランスを保とうとしているが、膝ががくがくと震えていた。
でも徹はやめられなかった。朋美の身体から溢れ出るこの未知の感覚に、完全に魅了されていた。女の子のここは、こんなに味があって、こんなに繊細で、こんなに反応するものなのか。
舌が一番下の小さな穴に近づいたとき、朋美の身体が大きく跳ねた。
「だめっ! そこは……ああっ!」
声が裏返った。
徹は一瞬止まった。でも好奇心が勝った。舌先でそっとなぞってみる。すると、ぷにっと柔らかい肉の縁がひくつき、そこからほんのり温かい液が滲み出してきた。
「ああっ……! もう、だめぇ……!」
朋美の太腿が徹の頭をぎゅっと挟み込み、腰が痙攣するように震え始めた。壁を掴んでいた手が滑り、彼女はバランスを崩してしまいそうになった。
徹は慌てて顔を上げ、朋美を支えようと手を伸ばした。彼女の細い腰に手を回し、崩れ落ちないように抱き留める。
二人の身体が密着し、朋美の熱い吐息が徹の頭髪にかかる。彼女はもう完全に徹に寄りかかり、小さな肩を荒く上下させながら息をしている。
「はあ……はあ……徹くん……なに、しちゃったの……」
その声は、泣きそうで、でもどこか満たされたような響きだった。
徹は顔を上げて彼女を見た。朋美の瞳には涙が光り、頬は真っ赤に染まっていた。でもその表情には、さっきまでの恥ずかしそうな様子とは違う、とろりとした甘さが漂っていた。
「ごめん……でも、朋美のここ……すごく綺麗だった」
本心からそう思った言葉が、自然と口から出た。
朋美は一瞬目を見開き、それからぷっ、と小さく笑った。
「ばか……そんなこと言われても……」
でもその笑顔には、嬉しそうな色が確かに宿っていた。
外の雨はまだやまず、窓を打つ音は相変わらずざあざあと響いていた。でもリビングの中の空気は、もうさっきまでのそれとは全く違っていた。二人の吐息と体温が混ざり合い、何か甘く重いものが漂っている。
床には脱ぎ捨てられた衣服が散らばり、ちゃぶ台の上には止まったままのビデオテープ。蛍光灯の白い光が、まだ幼い二人の身体を柔らかく照らし出していた。
徹は抱き留めている朋美の腰からそっと手を離し、彼女がちゃんと立てるか確かめた。朋美は少しよろめいたが、自分の力で立ち直った。
そして、お互いの顔を見つめ合う。
何も言わなくても、二人の間に生まれたものは、もう消えることはないと分かっていた。この夏の日の、雨に閉ざされた秘密の時間は、これからずっと二人を結びつける見えない糸になるだろう。
朋美が最初に口を開いた。
「……私、もう履いていい?」
声は小さく、照れくさそうだった。
徹はうん、と頷いた。彼女がパンツを拾い、恥ずかしそうに履き直すのを見守った。白い布が再びあの秘密の花園を覆い隠すとき、なぜか少し寂しい気持ちになった。
けれど、もうあの感触も、匂いも、味も、全部覚えている。目を閉じれば、すぐに思い出せる。
朋美がショートパンツまで履き終え、ようやく落ち着いた様子で徹の方を見た。
「……ねえ、徹くん」
「ん?」
「今日のこと……絶対に誰にも言わないよね?」
その瞳は真剣で、でもどこか不安げだった。
徹はしっかりと頷いた。
「うん。絶対。約束する」
朋美はほっとしたように微笑んだ。
「私も。ずっと秘密だよ」
その言葉に、徹の胸の中に温かいものが広がった。二人だけの秘密。誰にも言えないけれど、だからこそ特別な絆。
雨音がやや弱まったように感じた。窓の外を見ると、まだ降り続いているけれど、さっきまでの激しさはない。夕方に近づいているのか、空の色が少しだけ明るくなってきた。
朋美がテレビの前に行き、ビデオデッキの停止ボタンを押した。砂嵐のノイズが消え、静寂が部屋に戻ってきた。
「もう、そろそろ徹くん帰らないと。お母さんが心配するよ」
「……うん」
徹は自分のズボンとブリーフを拾い、慌てて履き直した。身体を隠すと、さっきまでの背徳感が少し薄れるような気がした。けれど心の中の熱は、まだしっかりと残っていた。
二人でリビングを片付け、さっきまで散らばっていた衣服の痕跡を消した。まるで何もなかったかのように、部屋は元の状態に戻っていく。
でも、何かが変わった。
玄関で靴を履きながら、徹はふと振り返った。朋美が立ったまま、こっちを見送っている。
「また……遊ぼうね」
朋美が言った。
徹はうん、と答えた。でもその「遊ぶ」という言葉には、もう以前とは違う深い意味が込められていることを、二人とも知っていた。
ドアを開け、外の湿った空気が顔にかかる。雨は小雨になり、空は鉛色の雲に覆われたままだ。
徹は振り返らずに歩き出した。背中に朋美の視線を感じながら。
家に帰る道すがら、ずっと考えていた。あの感触、あの匂い、あの味。全部、忘れられない。
そして一つだけ、確信した。
――僕は、もう朋美のことが、ただの幼馴染じゃなくなった。
第6章 舌先の波

指先に絡みつく甘く酸っぱい匂い——それは、汗でもなければ、石鹸の香りでもなかった。雨に濡れた朋美の肌から滲み出た、どこか生々しく、それでいて幼い果実が熟れ始めるような、微かな甘酸っぱさ。徹はその匂いに引き寄せられるように、顔をさらに近づけた。鼻先が朋美の太腿の内側に触れる。肌は汗ばんでいて、つるりとしている。
「……変な匂い、する?」
朋美が目を細めて尋ねた。声は恥じらいに濡れ、かすかに震えていた。
徹は首を振った。言葉を探す。「ううん……朋美の匂いだ」
それは真実だった。この匂いは、今まで嗅いだことのない種類のものだが、確かに朋美から立ち上っている。ビデオの中の女の人が発していた、あの濃厚で動物めいた匂いとはまったく違う。もっと淡く、清らかさと穢れが入り混じった、複雑な香気。鼻腔の奥をくすぐり、脳の芯をじんわりと熱くする。
徹は再び指を動かした。今度は人差し指と中指の二本で、ぺたりと開かれた裂け目の両脇をそっと押さえる。柔らかい襞が指の腹に沈み込む。ぬめりが増している。先ほどより確実に、透明な湿気が滲み出ているのがわかる。
「ん……あ……」
朋美の吐息が深くなり、腰が微かに揺れた。目はぎゅっと閉じたまま、まつ毛が小刻みに震えている。
「ここ……さっきビデオで見た女の人みたいに……濡れてる」
徹が呟くと、朋美は唇を噛みしめた。頬がますます赤く染まり、息遣いが荒い。「だって……徹が、さっきあんなことしてくれたから……」
さっきあんなこと——口に含まれ、吸われ、舌でこすられたあの行為。徹の股間は、その記憶だけで再びじんと疼いた。射精したばかりなのに、また熱が込み上げてくる。
「僕も……してみたい」
声は、自分の意思とは別に溢れ出た。頭の中は、朋美の小さな口が自分を包み込んだあの感触でいっぱいだった。あの電撃的な快感を、今度は自分が朋美に与えたい。彼女のこの柔らかく湿った裂け目で、あのビデオの女の人と同じように喘いでほしい。そんな欲望が、理性を溶かしていく。
朋美の目がぱちりと開いた。黒目がちの瞳は潤み、困惑と期待が渦巻いている。「……えっ? どうするの?」
「さっき……朋美がしてくれたみたいに」徹は声を詰まらせながら言った。「口で……舐めてみたい」
「やだっ!」朋美は反射的に腰を引いた。太腿が徹の顔から離れ、隠すように両手で股間を覆う。「そんなの……汚いよ! ここ、おしっこも出るとこだもん! さっきだって、徹だって汚いって言ったじゃん!」
「ちがう」徹の声には、自分でも驚くほどの熱がこもっていた。「ちがうんだ。朋美のここ……すごく綺麗だよ。匂いも……好き」
それは嘘ではない。確かにその匂いは生々しい。でも、なぜか嫌悪感を覚えない。むしろ、もっと嗅ぎ込みたくなる。朋美の身体の奥から滲み出るこの甘酸っぱい香りに、体の芯がぞくぞくと震えている。
徹は朋美の手を、そっと掴んだ。彼女の細い手首は、驚くほど熱かった。「見せて。もう一回」
「……恥ずかしい」
「僕だって恥ずかしかった。でも……朋美が見てくれたから、もっと気持ちよくなれた」徹は真剣に彼女の瞳を見つめた。「だから……今度は僕が朋美を気持ちよくしてあげたい」
その言葉に、朋美の抵抗が少しずつ緩んでいった。覆っていた手の力が抜け、太腿がまたわずかに開かれる。目を伏せ、唇を震わせながら、彼女はかすかに頷いた。
「……じゃあ……ちょっとだけ」
許可を得た瞬間、徹の胸は高鳴った。もう待てない。彼はそのまま前のめりになり、顔を朋美の股間にうずめた。
鼻先にぴたりと柔らかい感触。熱い。そして、あの甘酸っぱい匂いが一気に濃厚になる。汗と、かすかな尿の残香と、それに混じるどこにもない甘み。徹は深く息を吸い込んだ。肺の底までその香りが染み渡る。
そして、恐る恐る舌を伸ばした。
最初に触れたのは、裂け目の上端、ふっくらとした小さな丘のような部分だった。舌先が柔らかい肉の襞に触れる。ぬるり。ほんのりと塩気があり、それでいてどこか甘い。複雑な味が舌の上に広がる。
「ひゃあっ……!」
朋美の身体が跳ねた。腰がびくんと揺れ、太腿が徹の頭を挟み込む。「や……やだ……くすぐったい……あっ……」
徹はその反応に鼓舞された。もう一度、舌で縦にゆっくりと舐め上げる。ぬちゅ、という湿った音が響く。粘膜は驚くほど柔らかく、舌に吸い付くように絡みつく。朋美の身体からまた新しい湿り気が滲み出て、舐めた部分がきらりと光る。
「んっ……あ……徹……そこ……変な感じ……」
朋美の声は泣きそうに震えている。けれど、腰は逃げない。むしろ、微かに前へ、徹の舌に押し付けてきている。その無意識の動きに、徹の股間は再びぎゅっと締まり、疼きだした。
舌の動きをさらに深める。裂け目を縦に舐め上げるだけではなく、横に這わせ、複雑に折り重なった襞の一つ一つを舌先で探る。ぺろり、と舐めるたびに、ぐちゅっとした音が小さく響く。朋美の吐息はどんどん荒く深くなり、リビングには彼女の喘ぎと、雨音と、ぬちゅぬちゅという卑猥な音だけが満ちていった。
「あぁ……だめ……もう……なにそれ……気持ちいい……や……」
朋美の言葉は次第にまとまりを失っていく。手が徹の頭を掴み、髪の毛をぎゅっと握りしめる。その力は痛いほどだが、徹はそれを止めてほしい合図とは感じなかった。むしろ、もっと、もっとという催促のように思えた。
そして、舌が裂け目のさらに上、陰核の小さな突起に、偶然触れた。
その瞬間、朋美の全身が弓のように反った。
「あああんっ!!!」
悲鳴にも嬌声にも聞こえる鋭い叫び。腰が激しく跳ね、太腿が徹の頭を強く締め付ける。徹は一瞬、息が詰まりそうになったが、その場所に舌を戻した。こんどは意識的に、そのぷくっとした小さな粒を舌先で捉える。
「やぁっ! だめ! そこっ! そこ触られたら……ああっ!!!」
朋美は狂ったように首を振り、腰を震わせた。彼女の秘部は今、途切れることなく愛液を溢れさせ、徹の舌をびしょびしょに濡らしている。ぬるっとした透明な液体が、顎から首筋へと伝い落ちる。
徹は夢中でその小さな突起を責めた。舌先でこする。くちゅくちゅと吸い付く。時折、歯茎で軽く挟むようにして刺激する。朋美の反応はそれに比例して、ますます激しくなっていく。
「あっ、ああっ……やめて……徹……やめてぇ……おかしくなる……頭が……ああんっ!!!」
彼女の声は完全に泣き声に変わっていた。でも、腰は逃げるどころか、激しく徹の顔に擦り付けている。両手で徹の頭をがっしりと抱え込み、まるでそこから離されるのを恐れるように。
徹は顔を埋めたまま、朋美の絶頂を感じ取った。彼女の内部の肉襞が、舌に触れている部分で痙攣し始める。ぐちゅぐちゅと収縮し、温かい愛液が波のように押し寄せては、また引いていく。朋美の全身がぶるぶると震え、喉からは息継ぎもできないような断続的な喘ぎが漏れ続ける。
「あぁ……あああっ……んんんっ……!!!」
その叫びは、やがて裏切れたような長い吐息へと変わった。朋美の体の力がぱったりと抜け、がくりと徹の上に崩れ落ちる。支えていた腕がはずれ、彼女は仰向けに床に倒れ、胸を激しく上下させながら空を見つめていた。
徹はゆっくりと顔を上げた。顎から胸にかけて、朋美の愛液でびしょびしょだ。口の周りはぬるりと濡れ、あの甘酸っぱい味がまだ舌の上に残っている。彼はその味をゆっくりと噛みしめながら、朋美の顔を見下ろした。
朋美は目をうっすらと開け、瞳には涙が光っていた。頬は紅潮し、唇は少し腫れて微かに開いている。息遣いはまだ荒く、ときどき身体がぴくんと痙攣する。
「……朋美」
徹が声をかけると、朋美の瞳がゆっくりと焦点を結び、徹の顔を見た。そして、彼女はとても恥ずかしそうに、でもどこか満たされたような微笑みを浮かべた。
「……変なの。徹、私……今、すごくて、頭が真っ白になった」
その言葉に、徹の胸に熱いものがこみ上げた。彼は朋美の横に座り込み、自分もまた激しく鼓動している心臓を押さえた。外ではまだ雨が降り続けていたが、部屋の中の空気はまったく違うものに変わっていた。濃厚な性の匂いと、二人の熱い吐息で満ち、これ以上ないほどに生々しく、そしてどこか神聖ですらあるような、重たい静寂が支配していた。
ふと、朋美の手が伸びて、徹の濡れた頬に触れた。指先で、彼の肌に付いた自分の愛液をそっとなぞる。
「……私の、味がした?」
その問いかけは、いたずらっぽく、そして深い恥じらいを帯びていた。
徹はうなずいた。「うん……ちょっと塩っぱくて……でも、甘いような」
「ふふ……」朋美はくすくすと笑った。その笑顔は、さっきまでの激しい陶酔の表情からは想像できないほど、子供らしい無邪気さを取り戻していた。「私、徹の味も覚えてるよ。ちょっと生臭くて……でも、嫌いじゃない」
二人はそうして、お互いの体液の味を口にした者同士として、深く、深く結ばれた実感を胸に刻み込んだ。窓を流れる雨の筋は、やがて夕暮れの淡い光を帯び始め、秘密に満ちた午後は静かに終わりへと向かっていった。
第7章 夏の残響
外の雨は、いつのまにか小降りになり、窓を打つ音がざあざあからしとしとへ、やがてぽつりぽつりと間の延びる水滴の音へと変わっていた。部屋の中には、汗と蜜と唾液が混じり合った甘ったるい匂いが、じっとりと立ち込めている。蛍光灯の白い光が、ちゃぶ台の上に転がる脱ぎ捨てられた衣服や、床ににじんだ小さな水たれを照らし出していた。
徹は、まだ朋美の太腿の間に顔を埋めたままの姿勢を、ゆっくりと解いた。首筋から背中にかけて、同じ姿勢で固まった筋肉がじんと痺れる。顔を上げると、朋美の秘部が目の前にある。さっきまで激しく収縮し、蜜を溢れさせていた小さな裂け目は、今は落ち着き、ほんのり赤く腫れたように見える。陰唇は濡れ光り、透明な液体が細い糸を引いて太腿の内側へと流れている。
「……朋美」
声がかすれた。喉が渇いていた。唾を飲み込むと、朋美の蜜の甘酸っぱい味が、まだ舌の根に残っている。
朋美は答えなかった。ちゃぶ台の上に仰向けになったまま、胸を小さく上下させて息をしている。目は半開きで、天井を見つめているが、瞳にはまだ焦点が定まっていない。頬は涙と汗でぬれ、黒い髪の毛がくっついている。
徹は震える手を伸ばし、朋美の太腿をそっと撫でた。肌は熱く、汗でしっとりと湿っている。触れると、朋美の身体がぴくりと動いた。
「……あ」
かすかな声が漏れた。朋美がゆっくりと首を動かし、徹の方を見た。黒目がちの瞳が、ゆらゆらと徹の顔を探る。
「……なに、してたの?」
声はしわがれていて、幼い。さっきの激しい絶叫の名残が、喉に痛みを残しているようだ。
徹は自分の口元を手の甲で拭った。ぬるりとした感触が、朋美の蜜でびしょびしょになっているのがわかる。
「朋美の……おまんこ、舐めてた」
直接的な言葉に、朋美の頬がぱっと赤くなった。目を伏せ、唇を噛みしめる。
「……汚いのに」
「汚くないよ」
徹はすぐに言った。心からそう思っていた。朋美の秘部から溢れ出た蜜の匂いも味も、どんなものよりも甘く、胸を熱くするものに感じられた。
「朋美のそこ……すごく綺麗だった。ぴかぴか光ってて、すごく濡れてて……僕、もっと舐めたかった」
「……ばか」
朋美が小さく呟き、顔を背けた。けれど、耳まで真っ赤になっている。片手で自分の陰部をそっと覆うような仕草をする。指が触れると、身体がまたぴくりと震えた。
「あ……痛い?」
「ううん……痛くない。ただ……びりびりする」
「びりびり?」
「ん……さっき、すごく感じたから……まだ、あそこがじんじんしてる」
朋美は恥ずかしそうに言い、そっと両脚を閉じた。太腿がこすれ合い、濡れた粘膜がくちゅっと小さな音を立てる。その音に二人ともはっとし、顔を見合わせた。
そして、ぷっと吹き出しそうになるのを、必死にこらえた。
笑いが込み上げてきた。わけのわからない、緊張が解けたような、でもどこか恥ずかしさの混ざった笑いだ。徹も口元を緩め、にやっと笑った。
「……変なの」
朋美が言い、ようやく体を起こそうとした。タンクトップの裾がずり上がり、まだ汗で光る小さな腹が見える。徹は思わずその腹を見つめ、さっき指で触れた「子宮」のある場所を想像した。
「……見ないでよ」
朋美が慌てて裾を下ろす。顔を赤くして、床に落ちた自分のパンツを拾い上げた。白い布地は、所々に透明な蜜がしみて、少し色が濃くなっている。
「……びしょびしょだ」
ぽつりと呟く朋美の声に、徹の股間がまた熱く疼いた。さっき朋美の口の中で射精したばかりなのに、また勃起し始めている自分に気づく。
「僕のも……びしょびしょだ」
徹は下を向き、自分のペニスを見た。包皮に覆われた先端はまだ赤く、朋美の唾液と自分の精液でぬれている。ブリーフもズボンも脱いだままで、下半身は完全に裸だった。
「……早く、ズボンはきなよ」
朋美が言い、そっとパンツを履き始めた。ゴムが太腿に食い込み、濡れた秘部を布地が包む。くちゅ、と湿った音がして、朋美は顔をしかめた。
「気持ち悪い……ぬるぬるする」
「拭こうか?」
徹が聞くと、朋美はきょとんとした顔で首をかしげた。
「どうやって?」
「ティッシュで」
徹はさっき朋美が使ったティッシュの箱を手に取った。何枚か抜き取り、朋美に差し出そうとした。
でも、朋美はそれを取らず、自分のパンツをまた脱ぎ始めた。
「……じゃあ、拭いて」
「え?」
「だって、私がさっき徹くんのを拭いてあげたんだから。公平でしょ?」
朋美はいたずらっぽく笑った。瞳には、さっきまでの混乱や恥ずかしさが少し収まり、いつもの好奇心が戻っているように見えた。
徹はどきりとした。朋美の裸の秘部を、今度はティッシュで拭く。その行為が、なぜかさっきの舐める行為よりもずっと恥ずかしく、刺激的に感じられた。
「……いいの?」
「うん。早くしてよ。気持ち悪いから」
朋美はちゃぶ台の端に腰かけ、両脚を軽く開いた。パンツは膝のあたりまで下がり、再び小さな裂け目が露出する。陰唇はまだ開き気味で、赤く腫れた粘膜がきらきらと光っている。透明な蜜が、ぽたぽたと太腿に落ちそうになっている。
徹は息を詰め、ティッシュを手に取った。震える指で、そっと朋美の秘部に近づける。
「ん……」
ティッシュが触れた瞬間、朋美の身体が小さく跳ねた。冷たい紙の感触が、熱くなった粘膜に刺激を与えたのだ。
「ごめん、冷たい?」
「ううん……大丈夫」
徹は慎重に、陰唇の周りから拭い始めた。ぐしゃっ、と紙が湿る音がする。蜜は思ったより多く、ティッシュはすぐにびしょびしょになった。
「たくさん……出てる」
「……ばか」
朋美は顔を赤くして、目を閉じた。長い睫毛が震えている。徹はその様子を見ながら、もう一枚ティッシュを取り、今度は裂け目の中心をそっとなぞった。
「ひゃ……!」
「痛い?」
「痛くない……ただ、くすぐったい……」
徹はさらに丁寧に、陰唇の襞の間まで紙を押し当てて拭った。ぬるりとした感触が指先に伝わり、自分の股間がさらに硬くなっていくのを感じた。
やがて、ある程度拭き取ると、朋美の秘部はまだ湿っているものの、きらきらした光は少し収まった。
「……ありがとう」
朋美が小声で言い、パンツを履き上げた。今度は、すっと腰まで引き上げ、しっかりと固定した。
「徹くんのも、拭いてあげる?」
「えっ……いいの?」
「だって、さっき私が舐めたから、きれいにしてあげないと」
朋美はにっこり笑い、徹の股間に手を伸ばした。彼女の細い指が、まだ勃起したままのペニスをそっとつかむ。
「わっ……」
徹は背筋を伸ばした。朋美の手の温もりが、敏感な亀頭に直接伝わる。
朋美はティッシュを取り、徹のペニスを包むようにして拭き始めた。先端から根元まで、丁寧に、時には少し強く擦る。
「きれい、きれい……」
子供がおもちゃを拭くような口調で、朋美は呟く。けれどその手の動きは、さっき口に含んだときのことを思い出させるように、時折指先で亀頭の割れ目をこすったり、包皮をめくったりする。
「んっ……朋美……」
「どうしたの?」
「そ、そこ……すごく感じる……」
「ふふ、ここが気持ちいいんだよね」
朋美は悪戯っぽく笑い、わざとらしくゆっくりと拭き続けた。徹は耐えきれず、腰をわずかに突き出してしまう。
やがて、拭き終わると、朋美はぱんぱんと徹の太腿を軽く叩いた。
「はい、できあがり。でもまたすぐ硬くなっちゃうね」
「……朋美のせいだよ」
「えー、私のせい?」
そう言いながら、二人はようやく床に落ちていた服を拾い、着始めた。徹はブリーフとズボンを履き、朋美はショートパンツをはいた。タンクトップは汗で少し湿っていたが、そのまま着ている。
服を着ると、さっきまでの生々しい空気が少し和らぐ。けれど、互いの身体を知り尽くしたという事実は、服の下でひそやかに燃え続けている。
二人はちゃぶ台の前に座り直し、向かい合った。外はもう夕暮れに近く、窓から差し込む光がオレンジ色に変わっていた。雨は完全に上がり、代わりに蝉の声が遠くから聞こえ始めている。
沈黙が流れる。今までの激しさとは違う、重くて甘い沈黙だ。
「……ねえ、徹くん」
朋美が口を開いた。声はまだ少ししわがれている。
「うん?」
「さっき……あれが、セックスなのかな」
徹は考え込んだ。ビデオの中で見た黒人男性と白人女性の激しい結合。自分たちがしたことは、あれとはまるで違う。でも、お互いの性器を触り、舐め、気持ちよくなった。
「……違うと思う。だって、僕たち、くっついてないから」
「くっついてない?」
「ビデオみたいに、おちんちんをおまんこに入れてない」
朋美はその言葉を聞き、ぽっと顔を赤くした。でも、すぐに真剣な顔で言った。
「……入れてみたい?」
どきん、と徹の胸が鳴った。股間が疼く。
「……入れたら、どうなるの?」
「赤ちゃんができるかもしれない」
「えっ……でも、さっき朋美が飲んじゃったし……」
「飲んだのは口の中だから、赤ちゃんはできないよ。おまんこの奥、子宮まで行かないと」
朋美は得意げに説明する。まるで性教育の先生のように。徹はその知識に驚きながらも、ますます朋美の身体への興味が深まった。
「……子宮まで、どうやって行くの?」
「おちんちんを、ずっと奥まで入れるんだよ。ビデオで見たでしょ?あの黒いおじさん、すごく奥まで突き刺さってた」
「痛くないの?」
「女の人、ああやって叫んでたから、痛いかもしれない。でも……気持ちよさそうでもあった」
朋美はそう言い、少し俯いた。手で自分の股間をそっと押さえる。
「私さっき……ああやって叫んじゃったよね。痛くなかったけど……すごく、変な感じだった」
「気持ちよかった?」
聞くと、朋美はうつむいたまま、小さくうなずいた。
「うん……気持ちよかった。今までにない感じ」
その言葉に、徹の胸が熱くなった。自分が朋美を気持ちよくさせた。その事実が、誇らしいような、でもどこか怖いような気持ちにさせた。
「僕も……気持ちよかった。朋美が口でしてくれたの」
「ふふ、よかった」
朋美は顔を上げ、にっこり笑った。その笑顔は、いつもの無邪気な幼馴染のそれに戻っているようでいて、でも瞳の奥にふとした艶が潜んでいる。
「……でも、これって、秘密だよね」
突然、朋美が真剣な声で言った。
「うん。絶対に誰にも言わない」
「約束?」
「約束」
二人は小指を絡め合った。子供らしい仕草なのに、その絆にはさっき交換した体液の重みが込められていた。
「ねえ、徹くん」
また朋美が言った。
「私……もうすぐ引っ越すんだ」
「え?」
徹は息を呑んだ。心臓が一瞬止まりそうになった。
「お父さんの仕事で、遠くに引っ越すことになったの。夏休みが終わったら……もうこっちには住めない」
「……どこに?」
「北海道。すごく遠いところ」
徹は言葉を失った。北海道。地図で見たことある。すごく遠い。飛行機か新幹線でないと行けないくらい。
「……寂しいよ」
ぽつりと呟くと、朋美の目がうるんできた。
「私も寂しい。徹くんと遊べなくなる」
「でも……また会えるよね?」
「うん。いつか。約束する」
また小指を絡め合った。でも今度は、その約束がどこかはかないものに感じられた。
夕暮れの光が部屋を赤く染めていた。二人は並んで窓の外を見つめた。雨上がりの空には、うすらピンクの雲が浮かんでいる。
「……ねえ、徹くん」
「うん?」
「今日のこと……ずっと覚えててね」
「うん。絶対忘れない」
「私も。徹くんのおちんちんの味も、匂いも……全部覚えてる」
その言葉に、徹は胸がきゅっと締め付けられた。朋美の口の中の温かさ、舌のぬめり、そして自分の精液の味。あのすべてが、記憶に焼き付いた。
「僕も……朋美のおまんこの味、匂い……全部覚えてる」
「汚いのに」
「綺麗だよ」
もう何度も交わした会話。けれど、その言葉にはいつもより深い真実が込められていた。
やがて、玄関の方から声が聞こえた。朋美のお母さんが帰ってきたのだ。
二人は慌てて、ビデオテープを元の場所に隠し、ちゃぶ台を整えた。脱ぎ捨てた服のしわを伸ばし、汗で濡れた髪をそっとかきあげる。
「明日も遊べる?」
別れ際、徹が聞いた。
「うん。まだ夏休みは残ってるから」
「じゃあ……また何かしよう」
「何を?」
朋美はいたずらっぽく笑い、徹の股間をちらりと見た。
「……また、あれ?」
「うん……また、あれ」
恥ずかしさと期待が入り混じる声で、二人は頷き合った。
その夜、徹は自分の部屋の布団の中で、朋美のことを思い続けていた。股間にはまだ彼女の手の感触が残り、口の中には彼女の蜜の味がした。あの甘酸っぱい匂いが、鼻の奥から離れない。
枕に顔を埋めると、ふと朋美の脱ぎ捨てたパンツの匂いを思い出した。汗と尿と、彼女の肌の甘い香り。その匂いを、もう一度嗅ぎたい。そう強く思った。
次の日から、残りの夏休みはまるで夢のように過ぎていった。二人はこっそりと、あの行為を繰り返した。時には徹が朋美の秘部を舐め、時には朋美が徹のペニスを口に含んだ。一度、勇気を出して互いの性器をくっつけてみたこともある。勃起した徹の亀頭を、朋美の濡れた入口にそっと当て、ぐちゅっと少しだけ押し込んでみた。
「んっ……!」
朋美が眉をひそめた。
「痛い?」
「ううん……でも、変な感じ。何かが入ってくる……」
それ以上は怖くてできなかった。けれど、その感触は二人の記憶に深く刻まれた。
そして夏休みが終わり、朋美は本当に転校していった。別れの日、駅のホームで朋美は小さな包みを徹に渡した。
「これ、あげる」
開けてみると、中には彼女の花模様のパンツが入っていた。洗濯はされているが、ほのかに彼女の匂いが残っている。
「ずっと覚えててね」
朋美は泣きそうな顔で笑った。
「うん。約束だよ」
汽車が動き出し、朋美の姿が遠ざかっていく。徹は手に握ったパンツの匂いをそっとかぎ、胸が張り裂けそうになった。
あの夏の日々は、徹が四十五歳になった今でも、色あせない記憶として生き続けている。ワンルームのベッドで、スマホの画面に映る女優の顔を朋美のものに置き換え、股間を擦るたびに、鼻腔をくすぐるのはあの甘酸っぱい匂いだ。射精の瞬間、瞼の裏に浮かぶのは、夕暮れの光の中で赤く濡れ光る朋美の秘部。そして、彼の人生はあの夏で止まったまま、長いトンネルの途中をただ歩き続けているのだった。
第8章 現在の渇き
第8章: 現在の渇き
駅前のイタリアンレストランは、ちょうどランチタイムが終わり、午後のゆったりとした時間帯に入っていた。
テーブルクロスの白さが眩しく、フォークとナイフが微かに光っている。
徹は向かい側に座る女性――中村美咲の話を聞きながら、コーヒーカップの縁に指をかけた。
「それで、結局そのプロジェクトは無事に終わったんですよ。深夜までかかっちゃったけど」
美咲が笑いながら話す。
彼女の声は明るく、話し方に無駄がなかった。三十八歳、総務課で働く事務職。婚活パーティーで名刺を交換してから、これが三度目の食事だ。
徹は相槌を打つ。
「大変でしたね」
「でも、達成感はありました。徹さんもフリーランスだと、そういうのありますよね?納期に追われたりして」
「ええ、あります」
会話は淀みなく流れる。
美咲は良い人だった。真面目で、話もしやすい。外見も悪くない。肩まで伸びたストレートの茶髪は手入れが行き届いていて、化粧も自然だ。
だが、徹の胸の奥では、何も動いていない。
美咲が笑うたびに、その口元の動きが、なぜか別の顔と重なって見える。
――ぱっちりとした黒目。
――ショートカットの髪。
――無邪気に尖らせた唇。
「徹さん、お仕事ってどんな感じなんですか?WEBデザインって、すごくセンスが必要そうですよね」
美咲が尋ねる。彼女の瞳は徹を真っ直ぐに見つめ、興味を持っていることを示していた。
徹は少し考えてから答えた。
「クライアントの要望に合わせて、バナーやランディングページを作るのが主です。地味な作業が多いですよ」
「でも、形になるものを作るって、素敵だと思います」
その言葉に、徹は内心でため息をついた。
美咲は確かに「良い人」だった。このまま付き合いを続ければ、あるいは真剣な関係に発展する可能性もないわけではない。
しかし。
彼女がナプキンを取る手の動きを見ていても、スープを飲むときの首筋の曲線を見ていても、何も感じない。
触れたいと思わない。
抱きしめたいと思わない。
唇を重ねたいと、微塵も想像できない。
「今日はありがとうございました。また時間があれば」
レストランを出て、駅の改札前で美咲が言った。彼女の顔には、少し期待を込めた微笑みが浮かんでいる。
徹も笑顔を作る。
「ええ、また連絡します」
それが嘘だと、自分でもわかっていた。
美咲は軽く手を振り、改札の中へ消えていった。
徹はその背中を見送りながら、ふと自分の胸の内を覗いた。
――何もない。
温かさも、ときめきも、少しの興奮さえも。
まるで砂漠の底に立っているような、乾いた空虚だけが広がっている。
自室に戻ったのは、午後の遅い時間だった。
マンションの廊下は薄暗く、自分の足音だけが響く。鍵を開け、狭いワンルームに入ると、コンビニ弁当の容器が机の上に散らばっていた。
徹はそれらを片付けようとし、やめる。
疲れがどっと押し寄せてくる。
シャワーを浴び、タオルで身体を拭きながら、浴室の鏡に映る自分の顔を見た。四十五歳。白髪が目立つようになり、目の下に深いくまができている。
――俺は、もう年だ。
しかし、身体の奥底では、まだあの日の熱が燻り続けていた。
ベッドに横になり、スマホを手に取る。指先が勝手に動き、エロサイトのアイコンをタップする。
画質の粗いサムネイルが並ぶ。金髪の女、黒人の男。ありふれたカテゴリーだ。
再生ボタンを押す。
英語の喘ぎ声がスピーカーから流れ出す。画面の中で、男が女の背後から激しく腰を振っている。肉と肉がぶつかる音。ぐちゅっ、ぐちゅっ。
徹の視線は、画面に釘付けになる。
だが、見ているのは女優の顔ではない。いつの間にか、その顔は別のものにすり替わっている。
――ショートカットの黒髪。
――大きな黒目。
――頬を赤らめ、唇を震わせている。
「んっ……あっ……」
画面から聞こえる喘ぎ声が、なぜかあの日の朋美の声と重なる。
徹の手が、自然にズボンのファスナーへと伸びる。チャックを下ろし、すでに硬くなっている自身のペニスを握りしめる。
手のひらの感触は、あの日朋美が触れたときの記憶を呼び起こす。
――ひやりとした指先。
――興味深そうな瞳。
――「徹のおちんちん、カチンカチンだね」
呼吸が荒くなる。
スマホを支えながら、もう一方の手で根元から先端へ、ゆっくりと擦り上げる。皮がむけ、赤く膨らんだ亀頭が露出する。
画面の中の女は、男の巨根を咥え込んでいる。唇がぬちゅっと音を立て、舌が這う。
徹の目を閉じる。
そこにいるのは、もう外国人女優ではない。
リビングのちゃぶ台の上。雨音が響く中、頬を紅潮させた朋美が、小さな口をいっぱいに開けている。
「……ちゅ……んっ……」
あの音が蘇る。
ぬるりとした唾液の感触。柔らかい舌のぬめり。口腔の温かさ。
「はあ……っ」
徹の腰が、思わず跳ねる。
手の動きが速くなる。指先で亀頭の先端をこする。敏感な部分がじんじんと疼き、背筋に熱い波が走る。
――朋美の口の中。
――あの甘く生臭い匂い。
――白濁した液体が、彼女の喉を伝っていく光景。
「くっ……!」
歯を食いしばる。
下腹部に、あの日と同じ収縮が迫ってくる。股間が熱を帯び、精巣がきゅっと締まる。
スマホの画面では、男が絶頂を迎えようとしている。腰の動きが荒くなり、唸り声が上がる。
徹は目を開ける。
だが、そこに映っている男の顔も、いつの間にか自分のものに変わっている。
十二歳の自分。真っ赤な顔をして、朋美の口の中に震えながら射精している。
「あ……ああ……!」
手の動きが止まらなくなる。
擦るリズムが速くなり、指先からはぬめりが滲む。先走りだ。塩っぽい匂いが鼻をつく。
――朋美が飲み下した。
――あの精子を、ためらいもなく。
「はっ……はあ……っ!」
腰が跳ね上がる。
腹の奥で、何かが弾ける。
びゅるっ、と熱いものが噴き出る。白濁の糸が空中に弧を描き、シャツの上、腹の上に飛び散る。
「んあっ……!」
何度も、何度も痙攣するように放出が続く。
腰が震え、足の指がぎゅっと縮こまる。
やがて、全てが終わる。
徹はベッドに倒れ込み、天井を見つめた。
胸が激しく上下し、汗が額を伝う。部屋の中には、生臭い精液の匂いがたちこめている。
虚しさが、重たい石のように胸の上に乗る。
いつものことだ。
射精した後のこのむなしさ。全てが空っぽになる感覚。
スマホの画面はまだ点いていて、無音になった動画がループしている。男と女は、もう他人の顔に戻っている。
徹はゆっくりと起き上がり、ティッシュで身体を拭った。
汚れたシャツを脱ぎ、ゴミ箱に投げ込む。
そしてまた、ベッドに横たわる。
――なぜ、俺は……。
美咲の顔が浮かぶ。彼女は確かに、現実の女性だった。真面目で、好印象で、結婚を望んでいる。
それなのに。
徹の心は、微塵も動かなかった。
目を閉じると、また朋美の顔が浮かんでくる。十二歳の、あどけない横顔。頬を赤らめ、黒目を輝かせている。
――あれから、三十年以上。
――なのに、俺はまだ……。
突然、衝動に駆られる。
徹はスマホを手に取り、検索バーを開いた。
指が震えながら、文字を打ち込む。
『山田 朋美』
検索ボタンを押す。
何百というヒットが表示される。同姓同名の他人たちのプロフィール。SNSのアカウント。ブログ。
徹はそれらを、一つ一つスクロールしていく。
顔写真がないアカウントはスキップする。年齢が合わないものは除外する。
心臓が高鳴る。
もしかしたら――。
もしかしたら、彼女もどこかで、あの日のことを覚えているかもしれない。
そんな浅はかな期待が、胸の奥でちらつく。
画面をずっと下へ、下へとスクロールさせる。
窓の外は、夕暮れのオレンジ色に染まっていた。
第9章 記憶の鎖
第9章: 記憶の鎖
スマホの画面の光が、暗い室内で徹の顔を青白く照らしていた。
山田朋美。
何百という検索結果を、徹はもう一時間以上もスクロールし続けていた。同姓同名の女性たちのSNSプロフィールが、無機質に流れていく。結婚式の写真、子どもの写真、旅行の写真。どれもが他人の人生で、彼女のものではない気がした。
――見つからない。
窓の外は完全に暗くなり、部屋にはパソコンのファンの音だけが微かに響いている。
徹はスマホをベッドに投げ出し、天井を見つめた。虚しさが、胃の底からじわじわと這い上がってくる。なぜ今更、彼女を探しているのか。三十年以上も前の出来事だ。あの夏の日は、もしかしたら朋美にとっては、忘れてしまった子供の遊びの一つでしかないかもしれない。
それでも、体は覚えている。
口に含まれたときの、柔らかい唇の感触。
舌が亀頭を包んだときの、ぬるりとした湿り気。
そして、あの甘く生臭い匂い――朋美の髪に漂う雨の匂いと、唾液と、初めて嗅いだ自分の精液の匂いが混ざり合った、唯一無二の香り。
「はあ……」
思わず吐息が漏れる。股間が、かすかに疼いた。四十五歳の今でも、あの感覚だけは鮮明に蘇る。現実の女性とのセックスでは、決して味わえない電撃的な快感。
徹は起き上がり、部屋の隅にある段ボール箱の山を見つめた。引っ越してからずっと、開けずに放置している古い荷物だ。中には、子供の頃のものも混じっているはずだ。
むくりと立ち上がり、一番古そうな箱を引きずり出す。埃っぽい匂いが立ち上る。蓋を開けると、中から色あせたノートや、プリント類、懐かしいおもちゃが現れた。
そして、その底に一冊の日記帳があった。
小学校高学年の時に使っていた、キャラクターものの薄い日記帳だ。表紙は少し破れ、角が擦り切れている。
徹はそれを取り出し、ぱらぱらと頁をめくった。稚拙な字で書かれた、日々の出来事。遠足のこと、テストのこと、友達と遊んだこと。
そして――夏休みのページで、手が止まった。
*七月二十六日 くもり時々雨*
*今日はともみちゃんの家であそんだ。雨がふってて、外にでられなかった。でも、ともみちゃんがおもしろいビデオをみせてくれた。外国のひとがでてて、ちょっとびっくりした。ともみちゃんは「すごいね」って言ってた。ぼくもすごいとおもった。なんだか、どきどきしちゃった。*
文章はそこで終わっていた。その先の詳細は、一切書かれていない。子供心に、書いてはいけないことだと感じたのだろう。
徹は日記を閉じ、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じた。たったこれだけの記録しか残っていない。あの強烈な体験が、この幼稚な文章に収められていることが、逆にむなしく感じられた。
箱の中をさらに漁ると、アルバムが出てきた。
家族写真のアルバムだ。めくっていくと、小学六年生の時の学級写真があった。整列した子どもたちの中に、小さな自分の顔。そして、その隣に――。
ショートカットの髪、ぱっちりとした大きな目。口をへの字に結び、どこかいたずらっぽい笑みを浮かべている。
朋美。
徹の指が、写真のその部分をそっとなぞった。プリントの表面は冷たく、デジタル画像とは違う、物質的な存在感がある。
――あの日、君は何を思っていたんだ。
写真の中の朋美は、当然何も答えない。
突然、スマホが振動した。メールの通知音だ。
徹はアルバムを膝の上に置き、スマホを手に取る。差出人は、中村美咲だ。
件名は「ご連絡」。
本文には、丁寧な言葉遣いで、また食事に行きませんか、と書かれていた。今週末、新しいイタリアンレストランがオープンしたので、もしよければ、と。
徹はメールを読み終え、しばらく画面を見つめた。返信しなければならない。礼儀として。
しかし、指が動かない。返事を書く気力が、どこにも湧いてこない。美咲は良い人だ。真面目で、誠実で、悪いところは何もない。
それなのに。
なぜか、彼女の顔が思い浮かばない。代わりに脳裏に去来するのは、写真の中の十二歳の少女の横顔だった。
――ダメだ。
徹は首を振り、メールへの返信を保留にした。そのままスマホを置き、アルバムをめくり続ける。
夏休みの写真が数枚、続いていた。家族で海に行ったときのもの。その中に、一枚だけ、朋美が写っている写真があった。
町内の夏祭りで、浴衣を着た朋美が金魚すくいをしている瞬間だ。背中から捉えた写真で、彼女の肩にかかった浴衣の襟元が少し乱れ、首筋が覗いている。
徹はその写真をじっと見つめた。浴衣の生地の向こうに、あの日脱ぎ捨てた白いパンツを思い出す。花模様が淡くあしらわれた、小さな下着。
そして、その下にあった――。
ぐちゅりと濡れた、小さな裂け目。
柔らかい粘膜の襞。
舌でなぞったときの、塩味と甘味が入り混じった複雑な味。
「……っ」
股間が、また疼く。ズボンの上からでも、膨らみが感じられる。徹は思わず、その部分を手のひらで押さえた。熱を持ち、脈打っている。
こんなことではいけない。四十五歳の大人が、三十年以上前の記憶だけで興奮している。異常だ。病的ですらある。
それでも、体は正直だった。
徹はアルバムを閉じ、再びベッドに倒れ込んだ。天井のシミを見つめながら、あの雨音を思い出す。窓を叩く激しい水音。テレビから流れる外国語の喘ぎ声。そして、朋美の荒い吐息。
全てが混ざり合い、一つの官能的な交響曲となって、今も耳の奥で鳴り響いている。
次の日、郵便受けに一通の封筒が入っていた。
差出人は「県立桜ヶ丘高等学校 同窓会実行委員会」とある。徹の出身高校だ。卒業以来、一度も出席したことはなかった。
徹は封筒を開け、中から案内状を取り出した。今年でちょうど三十回目の節目の同窓会だという。開催日は三週間後。場所は都内のホテル。
そして、別紙として出席者名簿の案内が同封されていた。参加申し込みをした卒業生の名前が、随時更新されていくという。
特に興味はなかった。徹は封筒を机の上に放り投げ、コーヒーを淹れに行った。いつものようにMacBookの電源を入れ、クライアントからの修正依頼メールを確認する。
退屈な作業が続く。バナーの色を少し変え、フォントサイズを調整し、レスポンシブ対応を確認する。画面を見つめながらも、頭の中は半分、あのアルバムの写真で埋め尽くされていた。
昼過ぎ、ふと同窓会の案内が気になり、実行委員会のウェブサイトを開いてみた。出席者名簿のページにアクセスする。
卒業生の名前がアルファベット順に並んでいる。たくさんの名前の中から、自分の名前を見つける。鈴木徹。その横に小さく「出席確定」と表示されている。自動登録されたのだろう。
特に感慨もなく、リストを下にスクロールさせていく。
山田。
その名字を見た瞬間、徹の手が止まった。
心臓が、どきりと跳ねる。
リストの中に、山田という名字はいくつかある。山田一郎、山田恵子、山田聡……。
そして、その中に一つ。
山田朋美。
徹は目を凝らした。本当にそう書いてある。ひらがなで「やまだ ともみ」。その横にはまだ「未定」と表示されていた。
彼女も、この同窓会に誘われている。そして、まだ返事をしていない。
――会えるかもしれない。
その考えが頭をよぎった瞬間、胸の奥に熱い塊がこみ上げてきた。期待と、恐怖が入り混じった、複雑な感覚。
あの日から一度も会っていない。彼女は今、どんな女性になっているのだろう。まだあのショートカットの髪型だろうか。それとも、長く伸ばしているだろうか。あのぱっちりとした黒目は、変わらず輝いているだろうか。
そして――あの夏の日のことを、覚えているだろうか。
覚えているはずがない。子供の遊びの一つで、彼女はすっかり忘れているに違いない。
そう思うと、むなしさが広がる。しかし同時に、もし覚えていたら……という期待も、小さく灯り続けていた。
スマホがまた振動した。美咲からだった。前のメールへの返事がまだなので、心配しているのだろうか。優しい言葉で、無理をさせてしまったかもしれないと詫び、都合の良い時に返信してくれればいい、と書かれていた。
徹はそのメールを見て、深いため息をついた。
美咲は本当に良い人だ。こんな女性を無視する自分が、情けなくなる。
しかし、今の自分には、彼女と向き合う余裕などない。頭の中は、同窓会の名簿に書かれた「山田朋美」という名前でいっぱいだ。
徹はパソコンの画面に戻り、同窓会の出席申し込みページを開いた。自分の名前の横にある「出席確定」のボタンの隣に、「参加申し込み」のフォームがあった。
迷いながらも、指がキーボードの上で止まる。
――行くべきか。
行けば、彼女に会えるかもしれない。三十年以上ぶりに。
でも、会ったら何を話せばいいのだろう。あの日のことは、もちろん口にできない。ただの旧友として、無難な近況報告をするだけなのか。
それでも……。
彼女の声をもう一度聞きたい。笑顔をもう一度見たい。
その思いが、突き動かした。
徹は息を吸い込み、フォームに必要事項を入力し始めた。名前、連絡先、メールアドレス。全てを記入し、最後に「申し込む」ボタンの上で指を止めた。
ほんの一瞬の逡巡。
そして、クリックした。
画面が切り替わり、「申し込み完了」の表示が出た。
同時に、何かが決定的に動き出した感覚があった。過去の鎖が、今の自分を縛り、引きずっていく。逃れられない流れに、身を任せるしかない。
徹は椅子にもたれ、目を閉じた。
耳の奥で、また雨音が響き始める。
第10章 再会と真実
第10章: 再会と真実
ホテルの宴会場は、卒業生たちの笑い声と乾杯の音で満ちていた。
クリスタルシャンデリアの光がテーブル上のグラスをきらめかせ、どこからか流れる懐かしいJ-POPの旋律が、三十年という時間を一瞬で縮めるようだった。徹は壁際の席に腰かけ、ウイスキーのロックグラスをゆっくりと回していた。同窓会に来たのは正解だったのか、いや間違いだったのか、もう判断がつかなかった。
「鈴木くん、やっぱり来てた!」
声の方に振り向くと、かつてのクラスメイトだった男がにこにこと近づいてくる。顔は確かに覚えている。でも名前が出てこない。徹は立ち上がり、苦笑いを浮かべた。
「お久しぶりです」
「本当だねー。でも変わらないよ、徹くんって呼んでもいい?まだそう呼びたくなっちゃう」
男は楽しそうに笑い、自分のビールグラスを掲げた。徹もそれに合わせ、グラスを軽く合わせる。チンというかすかな音。その音が、なぜかあの雨の日に聞こえたテレビのノイズと重なって聞こえたような気がした。
「今何してるの?俺は地元で不動産屋さんやってるんだけど」
「WEBデザインのフリーランスです」
「へえ、すごいじゃん。やっぱり徹くんは頭良かったもんね」
会話は表面的で、深みがない。お互いの人生をざっくりと知り、感慨を分かち合う。徹は相槌を打ちながらも、視線は宴会場の入口へと何度も向かった。
――来ないかもしれない。
――もう忘れているかもしれない。
そんな思いが胸をよぎるたびに、グラスを握る手に力が入った。
「あ、そういえばさ」
クラスメイトが突然、声のトーンを下げた。
「山田朋美ちゃん、来るって聞いたよ。確かまだ未定ってなってたけど、さっき実行委員の子が言ってた」
徹の心臓が、どきんと跳ねた。
「……そうなんですか」
「うん。彼女、今は都内で編集の仕事してるんだって。結婚はしてないみたいだけどね」
言葉は耳に入ってくるが、頭の中でしっかりと理解できない。ただ「来る」という事実だけが、胸の奥で熱く膨らんでいく。
その時、入口の方で小さなざわめきが起こった。
何人かの卒業生が集まり、笑い声が上がる。その中心に、一人の女性が立っていた。
肩まで伸びたストレートの黒髪。きりりとした眉、ぱっちりと大きな黒目。口元に浮かべた笑みは、どこかあどけなさを残しながらも、確かな大人の女性の佇まいをまとっていた。
――朋美。
徹は息を飲んだ。
写真ではわからなかった。でも目の前にいると、間違いなくあの子だった。十二歳の少女の面影をしっかりと残しながら、それでも洗練された大人の女性へと変貌している。
彼女は軽やかに周囲に挨拶を交わし、次第に宴会場の奥へと進んでくる。その動きはまるで水の流れのように滑らかで、徹の席の方にも近づいてきた。
距離が縮まる。
五メートル。
三メートル。
そして、彼女の視線が徹と合った。
一瞬、朋美の瞳がぱちりと見開かれた。驚きの色が走り、それからすぐに柔らかな笑みへと変わっていく。
「……わあ、鈴木徹くん?」
声は確かにあの子のものだった。でもトーンは少し低く、大人びていた。
徹はゆっくりと立ち上がる。膝が少し震えているのに気づく。
「……久しぶりだね。山田さん」
「やだ、『さん』って呼ばないでよ。相変わらず丁寧なんだから」
朋美は軽く笑い、徹の隣に空いていた席に自然に腰を下ろした。彼女の動作からは、ほのかな香水の香りが漂ってくる。フローラル系の、上品な香りだ。
「本当に久しぶり。何年ぶりだろう」
「……三十三年ぶりですね」
「そんなに?でも、徹くんって呼び方、今でもしっくりくるなあ。変わってないもの」
朋美は徹の顔をじっと見つめ、懐かしそうに目を細めた。その視線に徹は少したじろぎ、グラスに手を伸ばした。
「朋美の方は、ずいぶん変わったね」
「そりゃあね。子供のままだと困るでしょ」
彼女は軽く肩をすくめる仕草をした。その動きに、昔の面影がちらりと覗く。
しばらく、近況報告のような会話が続いた。朋美は編集プロダクションに勤め、趣味は旅行と料理だという。徹はフリーランスの仕事について簡潔に話し、特に大きな変化はないと伝えた。
会話はどこか表面を撫でるように進み、深いところには触れない。でも徹の胸の奥では、違う言葉が渦巻いていた。
――あの日のこと、覚えている?
――雨の音、テレビの映像、僕たちがしたこと。
――全部、覚えていてくれる?
「徹くん、相変わらずだね」
突然、朋美がそう呟いた。
「え?」
「なんていうか……遠くを見てるような目をしてる。昔からそうだったよね。みんなと遊んでいても、どこか別のことを考えてるみたいな」
その指摘に、徹はハッとした。彼女は覚えていた。自分のそんなところまで。
「……そうかな」
「うん。でも、それが徹くんらしいって思ってた」
朋美はグラスの水を一口飲み、ふと窓の外を見た。ホテルの窓からは、都会の夜景が広がっている。雨は降っていない。あの日とは違う。
時間は流れ、同窓会も終盤に差し掛かっていた。卒業生たちは次第に帰り支度を始め、名残惜しそうに別れを交わしている。
徹もそろそろ帰ろうと立ち上がると、朋美も一緒に席を立った。
「私ももう帰るよ。駅まで一緒に歩かない?」
「……ええ、いいよ」
二人は静かに宴会場を出た。廊下を歩き、エレベーターへ向かう。誰もいない空間に、急に緊張が走る。
エレベーターの中で、徹はふと尋ねた。
「転校した後、どうだった?」
「んー、最初は寂しかったよ。でもね、新しい学校でもすぐ友達ができたし。徹くんとの約束、覚えてる?」
約束。
――また会えるよね?絶対。
――うん。絶対会う。
あの日、雨が上がった夕暮れに交わした言葉だ。
「……覚えてる」
「私も覚えてた。でも、子供の約束って、なかなか叶わないものなんだね」
朋美は少し寂しそうに微笑んだ。その表情に、徹の胸がきゅっと締め付けられた。
ホテルを出て、駅へ向かう道を並んで歩く。夜風が肌を撫でる。街灯の光が二人の影を長く伸ばす。
そして、駅の入り口が近づいた時、朋美の足が止まった。
「ここでね」
徹も立ち止まる。もうすぐ別れだ。次に会うのは、また三十年後かもしれない。いや、もう二度と会わないかもしれない。
朋美は徹の方を向き、真っ直ぐに目を見つめた。その瞳の奥に、何かが揺らいでいるように見えた。
「徹くん」
声が、少しだけ小さくなった。
「あのビデオのこと、覚えてる?」
瞬間、徹の全身の血が凍りつくような感覚が走った。鼓動が大きく鳴り、耳の奥で雨音が蘇る。
「……あ」
言葉が出ない。喉が渇き、声にならない。
朋美はその反応を見て、ほんの少しだけ笑った。でもその笑みには、どこか悲しげな色が滲んでいた。
「私も……ずっと覚えてたよ。あの日、二人で見たこと。そして、その後にしたこと全部」
「……」
「でもね」
朋美は一息つき、ゆっくりと続けた。
「あれは子供の遊びだったんだよね。好奇心からした、ちょっと危ない遊び。そう思うようにしてきた」
「遊び……」
徹はやっとの思いで、その言葉を繰り返した。
「うん。子供だから、何が正しいかわからなかった。ただ面白くて、刺激的で……でも、あれは遊びだった」
朋美の目には、確信と諦めが混ざった複雑な光が浮かんでいる。彼女はそう決めつけることで、三十三年間を整理してきたのだ。
徹はその言葉を、胸の奥で咀嚼しようとした。遊び。ただの遊び。
ならば、自分が三十三年間抱き続けてきたあの感覚は何だったのか。あの甘く生臭い匂い。柔らかい粘膜の感触。電撃のような快感。全てが、ただの「子供の遊び」の一片でしかなかったのか。
「徹くんは……違うと思ってた?」
朋美が小さく尋ねた。その声には、どこかいたわるような響きがあった。
徹は答えられなかった。ただ下を向き、自分の影を見つめるだけだった。
「ごめんね、こんなこと言って。でも、あの日のことは今でも時々思い出すよ。でも、それは過去の思い出の一つで……それ以上でも以下でもないんだ」
朋美は一歩近づき、そっと徹の腕に手を触れた。その温もりが、かえって徹の心を冷たくさせた。
「じゃあね、徹くん。またどこかで会えたらいいね」
軽く手を振り、朋美は駅の階段を降りていった。その背中は迷いがなく、確かに過去を背負いながらも、きっぱりと前に進んでいるように見えた。
徹はただ立ち尽くした。
街の喧騒が遠くに聞こえる。車のクラクション、人々の話し声、店舗からの音楽。全てが現在の音で、あの日の雨音はどこにもない。
――遊びだった。
――ただの、子供の遊び。
頭では理解できる。確かに、十二歳の子供たちがしたことだ。深い意味などないかもしれない。
しかし。
体は覚えている。
口に含まれた時の、あの柔らかい唇の感触。
舌が亀頭を包んだ瞬間の、ぬるりとした衝撃。
そして、朋美が初めて絶頂を迎えた時の、痙攣する腰の熱。
それらは、今も確かに徹の股間に疼きを灯していた。四十五歳の男の身体が、三十三年前の記憶に反応し、熱を帯びようとしている。
虚しさと、滾るような欲望が、胸の中で絡み合った。
彼女にとっては過去の一片でしかなかったあの記憶が、徹にとっては人生そのものを形作る核であったという事実。その非対称性が、ただただ重くのしかかってくる。
徹はゆっくりと歩き出した。
どこへ向かうでもなく、ただ夜の街を歩く。自分の影が、また長く伸びていく。
そして心の奥で、あの雨音が再び響き始めるのを感じた。
ぬちゅっ。
くちゅ、くちゅ。
あの音は、もう決して消えることはない。
登場人物
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鈴木徹 すずき とおる男性 ・ 45
外見: 白髪交じりの短い髪、くすんだ茶色の瞳、痩せ型で背が高い。服装: カジュアルな部屋着やジャージ。WEBデザインのフリーランスとして孤独な日々を送り、幼少期の体験に深く囚われ、現実の女性関係に絶望感を抱いている。
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鈴木徹幼少期)(すずき とおる)(男性 ・ 12
外見: 短い黒髪、大きな黒目、小柄で幼い体型。服装: 半袖シャツと短パン。無邪気だが内向的で、性的な目覚めに戸惑いと興奮を覚える。
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山田朋美 やまだ ともみ女性 ・ 12
外見: ショートカットの黒髪、ぱっちりとした大きな黒目、小柄で細身。服装: ショートパンツとタンクトップ。活発で好奇心が強く、幼さながらも性的な知識を持ち、徹を誘導する大胆さを持つ。
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中村美咲 なかむら みさき女性 ・ 38
外見: 肩までのストレートな茶髪、優しい茶色の瞳、平均的で女性らしい体型。服装: オフィスカジュアルやきちんとした私服。婚活パーティーで徹が出会う女性で、真面目で結婚を望み、人当たりが良い。





