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熟年離婚で死にぞこないの元会社員が、スーパーのレジ打ち女王様に夕飯と射精管理で生かされるまでの記録

シニア官能 / 誘惑 全5章 約62分で読了(30,634字) 2026年8月26日

あらすじ

定年間際に妻から熟年離婚を突きつけられた三島徹。生きる気力を失い、毎晩18時以降の半額惣菜だけを口にする老人の前に、スーパーのレジ打ち・梨紗子が現れる。世話焼きな笑顔で家に上がり込み、台所に立つ彼女のスカートから覗く太もも。羞恥と飢餓の果てに男は支配を乞う。

第1章 18時以降の半額惣菜しか口にできなかった男がスーパーのレジ打ちに手料理を押しつけられるまで

第1章: 18時以降の半額惣菜しか口にできなかった男がスーパーのレジ打ちに手料理を押しつけられるまで

午後六時を回ると、三島徹の一日はようやく動き出す。カーテンを閉め切った六畳間の空気は、彼自身の寝汗と加齢の匂いで澱んでいた。それでも腹の奥が鈍く疼く時刻になると、彼はくたびれたジャージに腕を通す。蛍光灯の白い光を避けるようにうつむいて、いつものスーパーへと向かう。店の自動ドアが開くたび、肉や魚の匂いに混じって、揚げ油の焦げた甘い香りが鼻の奥をくすぐった。夕方の店内は、割引シールを貼る店員の動きに合わせて、主婦や老人たちが静かに商品棚へ吸い寄せられていく。徹もその一人だった。彼の買い物かごに入るのは、黄色い値引きシールの貼られた惣菜ばかり。コロッケ、焼きそば、煮魚。どれも温め直せば食べられるもので、栄養の偏りより空腹を満たすことが先だった。

徹はレジの列に並び、前の客の背中が遠ざかるのを待った。

「いらっしゃいませ。……あ、三島さん、こんばんは」

その声は、乾いた店内に一滴の水が落ちるように耳へ届く。レジでピッと商品のバーコードを読み取るのは、上田梨紗子という女性だった。黒い髪を後ろでひとつに束ね、スーパーの薄い水色の制服エプロンを着ている。化粧っ気は薄いのに、切れ長の二重まぶたは笑うたびに色っぽく細まった。色白の首筋から胸元へかけて、しっとりと汗ばんでいるのが、レジの蛍光灯の下で妙に艶めかしく見えた。

「また今日も、それだけですか? 身体に悪いわよ、毎日それじゃあ」

梨紗子はかごの中をちらりと覗き込み、半ば呆れたように言った。声は明るいのに、どこか有無を言わせぬ響きがあった。徹は返す言葉もなく、ただ頭を下げる。彼の口から出るのは、いつもの「ありがとうございます」という小さな礼だけだった。

「三島さん、最近すごく痩せたでしょ。顔色も土みたいな色してるし。ちゃんとお米、炊いてる?」

梨紗子の指はレジを打ちながらも、その目は徹の顔をじっと見つめていた。見られている。そう思うだけで胸の奥がきゅうと縮んだ。半年前まで、こんなふうに自分の体を案じてくれる人間は一人もいなかった。いや、妻の美冴は最後の五年間、彼の存在をまるで空気のように扱った。出ていった日も、彼女の背中は夕方の玄関からすっと抜けていき、残ったのは離婚届の白い封筒だけだった。

「夕飯、作ってやるわよ。あんた、住所どこ?」

突然の言葉に、徹はレジ台の端を掴んだまま固まった。聞き間違いかと思ったが、梨紗子はにこりともせず、むしろ真剣な顔で彼の目を見ている。彼女の前には別の客が並び始めていた。

「え、いや、ですから……そんな、悪いですよ」

「はい、これレジ袋。で、住所は?」

有無を言わせない声だった。二人の子どもを女手ひとつで育てた人間は、きっとこういう声を出せるのだろう。徹は唾を飲み込み、消え入るように自宅の住所を口にした。梨紗子はそれを聞くと、レシートの裏にボールペンを走らせ、小さく頷いた。

「仕事上がりに行くから。八時までには着くわよ」

そう言うと、彼女はすぐに次の客へ向かって「いらっしゃいませ」と声を張った。

家に帰り着いた徹は、しばらく玄関に立ち尽くした。本当に来るのだろうか。なぜ自分のような年寄りの男に、あの女性がそこまで世話を焼くのか。頭の中で何度も同じ疑問が渦を巻いた。部屋は散らかっていた。食べかけの惣菜の容器が流しに重なり、テーブルの上にはティッシュの空き箱と錠剤のシートが転がっている。彼は慌ててゴミ袋を引っ張り出すと、ペットボトルや容器を無造作に突っ込んだ。自分の惨めさを、他人に見せたくなかった。

八時を少し過ぎた頃、インターホンが鳴った。

徹は心臓を掴まれたように動けなくなった。息を整えてからドアを開けると、制服のままの梨紗子が立っていた。彼女の手にはスーパーの袋があり、そこから長ネギの先と豆腐の容器が覗いていた。仕事の後だというのに、髪の束ね目は崩れていない。

「お邪魔しますよ。……電気、暗くない? 気分も暗くなるからちゃんと点けなさいよ」

梨紗子はそう言いながら勝手に上がり込む。すれ違った瞬間、彼女の身体から甘い汗の匂いと、どこか酸っぱい乾いた匂いが混ざって流れてきた。精製された香水ではなく、レジで何時間も働いた後の生の肌の匂いだった。徹の腹の奥が、空腹とは違う痺れ方で反応する。

「台所借りるわね。野菜、洗わなきゃ。……米、ないの? あるなら炊いて」

梨紗子は迷いなく流しに立ち、袖をまくり、袋から食材を取り出した。彼女の背中は狭い台所の中で妙に大きく、頼もしく見えた。エプロンの紐が腰のあたりでぎゅっと結ばれ、その下のふっくらとした腰が動くたびに、スカートの布が張りつく。

徹は米びつの蓋を開け、しばし茫然とした。蛇口から水が流れる音が、静かな部屋を満たしていく。まな板の上で小松菜が刻まれるたび、軽いトントンという音が彼の胸の内側にまで響いた。

梨紗子が背伸びをして、戸棚の上の皿を取ろうとした瞬間だった。

制服のスカートの裾が持ち上がり、太ももの白い肉が露わになった。むっちりと張った肤は、蛍光灯の光を受けて素肌の下の青い血管が透けるほどだった。それだけでも徹は息を呑んだ。だが、スカートの下にのぞいた下着の布地が、彼の眼球を縫い止めた。薄いレース地はほとんど透けていて、白い肌の奥に黒っぽい陰りがぼんやりと浮かんで見える。彼女が身じろぐたび、布地が肌に吸いつくように動く。

徹は金縛りにあったように、その箇所から目を離せなかった。

「……何見てるの?」

梨紗子は戸棚から皿を下ろすと、そのまま振り返り、しっとりした笑みを浮かべた。バレていた。血液が一気に顔へ上り、徹は首を振ったが、目線の逃げ場が見つからない。彼女は何もなかったように、まな板へ向き直る。

「もう少しでできるから。あんた、食器出して」

その言葉に徹は救われたように、食器棚から茶碗と箸を取り出した。指先が震える。妻がいなくなってから、自分がこんなふうに誰かの指示で動くなんて思ってもいなかった。指示されることが、こんなにも温かく感じるとは。

やがて台所から、油の焦げる匂いと出汁の落ち着く香りが同時に立ち上ってきた。フライパンの中で野菜と豚肉がじゅっと音を立て、醤油の焦げる匂いが食欲を暴力的に刺激する。湯気が窓のない部屋へ広がり、徹の鼻腔をくすぐった。

完成したのは、豚肉と小松菜の甘辛炒め、豆腐とわかめの味噌汁、それに白いご飯。特別なものではなかった。だが、徹の食卓に上がる夕食としては、あまりにも鮮やかで、あまりにも湯気が多かった。

二人分の食事が並ぶ。梨紗子はエプロンを外しながら、小さく息をついた。

「ほら、食べなよ。あんた、あたしが作ったんじゃ味が薄い? そうでもないでしょ?」

徹は箸を手に取り、声を出そうとしたが、喉の奥が熱くふさがるようになった。

「いただきます」

やっとの思いで絞り出した声は、思ったより情けなく震えていた。彼は豚肉を一口、箸でつまんで口へ運ぶ。甘辛いタレが舌の上でとろけ、咀嚼するたびに米の甘味が追いかけてくる。視界が滲み、食べ物の形が揺らいだ。涙だった。妻がいなくなってから初めて、自分はまともな食事を口にしている。そう思うと、目の奥が痛むほど熱くなった。

梨紗子は何も言わず、味噌汁をひとくち啜った。

「あんたさ、一人で死ぬ気だったの」

顔を伏せたままの徹に、梨紗子の声が静かに落ちてくる。

「死ぬ気……では、なかったです。でも、生きてる気もしなくて」

自分の声がこんなに正直に人へ向かうのは、何年ぶりだろう。徹は箸を置いて、膝の上で拳を握った。

梨紗子は豆腐を崩しながら、ぽつりと言った。

「あたしもね、二人育て終えて、家に帰ると静かでさ。誰かのために作るのが、癖になってんの。あんたみたいな、放っておけない男がいたほうが、案外こっちの気も晴れるのよ」

彼女の言葉を、徹は黙って噛み締めた。噛み締めるたびに、梨紗子という女が自分を「必要」で満たしてくれる。それは性欲よりずっと深いところを、じわじわと温めた。

食事が終わり、後片付けを始めようとした徹を、梨紗子は手で制した。

「いいから、座ってなさい。皿はあたしが洗うわよ。その代わり、あんた湯沸かして、お茶の一杯でも淹れなさい」

徹は素直に従った。小さく「はい」と答える自分の声が、少しだけ柔らかくなっているのがわかった。ガスコンロに火をつけ、薬缶の水が沸く音を聞く。シュンシュンと細かい音が、静かな台所を満たしていく。洗い物をする梨紗子の背中を、彼は初めてゆっくりと眺めた。エプロンを外した制服の背中が、湿った布地の下で息づいている。

やがてお茶を淹れ、二人は向かい合った。梨紗子は湯呑みを持ち、ふぅふぅと冷ましながら徹を見た。

「明日から、あたしが来て夕飯作るから。そのつもりでいなさいよ」

また有無を言わせぬ声だった。徹は湯呑みを膝に置いたまま、しばらく黙った。断る理由は、この世のどこにもなかった。

「お願いします。……すみません。本当に、よろしくお願いします」

頭を下げると、首の骨が小さく音を立てた。梨紗子は満足そうに笑い、湯呑みを一口含む。

「じゃあ、明日は何が食べたい? 聞いてるんだから、ちゃんと答えて」

二人の間で、テレビも点いていない部屋の空気がしんと揺れた。徹は考えた。食べたいものなど、この半年、考えたことがなかった。だけど今、口の中に残る味噌汁と豚肉の甘辛さが、自分の胃にしっかり根付いている。

「なんでもいいです。上田さんの作るものなら、なんでも」

そう答えると、梨紗子は片方の眉を上げ、肩を軽くすくめた。

「そういうの、いちばん困るのよ。まあいいわ。あたしが決めてきてあげる」

梨紗子が帰り支度を始める頃には、時計の針は十時に近かった。彼女は玄関でサンダルを履きながら、くるりと振り返った。

「明日も仕事終わりに来るから。待ってなさい」

徹は「はい」と頭を下げ、ドアが閉まるまで見送った。耳の奥にはまだ、梨紗子のスカートの下の薄い布地と、白い太ももの後ろ姿が焼きついている。彼はすぐに風呂を沸かす気にもなれず、台所の椅子に座り、洗われた食器がきちんと伏せてあるのを眺めた。

台所にはまだ出汁と油のにおいが残っていて、流しの隅には小松菜の切れ端がひとつ落ちていた。徹はそれを指で摘み、口の先に当ててみる。冷たい茎の香りが、ふっと鼻を抜ける。あの女がここにいたという実感が、細い糸のように彼の心へ絡みついた。

布団に入っても、徹は眠れなかった。天井の木目を眺め、目を閉じるたびに梨紗子の太ももの白さがまぶたの裏に蘇る。それは欲情だけではなかった。見捨てられた男が、明日の夕飯を約束された夜の、どうしようもないほどの安堵とざわめきだった。胃のあたりに、まだ温かい夕食が残っている。彼は自分の腹に手のひらを当て、その温かさが消えないように、ゆっくりとかき抱いた。

夜は深く更け、外では街灯を包む雨の気配が、しとしとと窓を濡らしていた。

第2章 スカートの中を覗いた老人がスーパーの女王様にフェラ寸止めからクンニまで調教される夜

第2章のシーン

第2章: スカートの中を覗いた老人がスーパーの女王様にフェラ寸止めからクンニまで調教される夜

翌日、徹は朝の光で目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む陽射しが、畳の上に細く長い線を引いている。昨日まで存在を忘れていた朝というものが、こんなにも明るいものだったのかと、彼はしばらく布団の中で天井を眺めた。体の奥に、まだ昨夜の味噌汁の塩気が残っているような気がした。胃のあたりを手のひらで押さえると、そこは確かに温かく、誰かの作った夕食を食べたという事実が、内臓の芯まで染みていた。

起き上がり、洗面所へ向かう。鏡に映った男は、昨日までの自分とどこか違って見えた。無精髭の下の頬はまだ窪んでいるが、目の下の隈がほんの少し薄い。徹は蛇口をひねり、冷たい水を両手で受けて顔に打ちつけた。それから石鹸を泡立て、無造作に伸びた髭を剃り始める。妻が出て行ってから、こんなことは何ヶ月もなかった。剃刀の刃が肌を滑るたび、皮膚の上に新しい自分が薄く現れていくようだった。

夕方、スーパーへ向かう足取りは、昨日までと明らかに違っていた。夕暮れの空気は生温かく、どこかの家の夕飯の匂いが微かに流れてくる。自動ドアの前に立つと、あの揚げ油の甘い匂いが鼻をくすぐる。それだけで胸が騒いだ。

店内に入り、いつもの惣菜コーナーへは行かず、野菜の並ぶ棚の前で立ち止まる。小松菜、豆腐、豚肉。どれも昨夜、梨紗子が使っていた食材だった。かごにそれらを入れる自分が、妙にこそばゆい。

レジに並ぶと、梨紗子は前の客に「ありがとうございました」と声を張っていた。徹の番になる。

「こんばんは。……あら、髭剃ったのね」

梨紗子は商品を受け取りながら、ちいさく目を見開いた。

「ええ、まあ……今日は、自分でも何か作ってみようかと」

「へえ。それならあたし、行く必要なかったかしら」

「そんな、来てほしいです、というか」

「わかってるわよ。冗談。……でも、あんたがそういう顔するようになったの、嬉しいわ」

レジ袋を受け取る時、梨紗子の指先がほんの少し、徹の手首に触れた。それは一瞬の接触だったが、体温の高い指の腹の感触が、骨の上にじんわりと残った。袋の取っ手を握り直しながら、徹は自宅へと急いだ。

部屋に戻ると、昨夜と違って空気が澄んでいる。朝のうちに窓を開け、ゴミをまとめ、台所を拭いたからだ。彼は買ってきた食材を流しに置き、エプロンの代わりに古いシャツを羽織った。包丁を握るのは、いつ以来だろう。玉ねぎを刻もうとしたが、涙で視界がぼやけた。それは辛さによる涙なのか、それとも、自分がまた包丁を握る日が来るなんて、という思いからなのか、自分でもわからなかった。

八時少し前に、インターホンが鳴った。

ドアを開けると、梨紗子が立っていた。今日も制服のままだ。彼女の手には、スーパーの袋がある。

「お邪魔します。……あんた、先に作ってたの?」

「いえ、まだ下ごしらえの途中で」

「ふうん。まあいいわ、あたしも持ってきたから。一緒にやりましょう」

梨紗子は隣に並び、手際よく袋から食材を取り出した。二人で台所に立つというのは、妙に落ち着く行為だった。彼女の二の腕が、時々徹の腕に触れる。そのたびに、彼の呼吸はほんの少し浅くなった。

食事が出来上がり、並べられたのは、鮭の塩焼き、大根の煮物、それからなめこの味噌汁。湯気が立ち上る。灯りを落とし気味の部屋の中で、白い米粒がしっとりと光を吸っていた。

「今日は鮭が安かったのよ。焼き加減、見てなさいよ、皮がパリッとしてるから」

徹は「いただきます」と手を合わせ、まず味噌汁を一口すする。出汁の香りが鼻腔を抜け、喉の奥がじわりと緩んだ。煮物の大根を箸で割ると、中まで汁が染みている。食べるたび、体の隅々にまで味が行き渡るような、深い充足があった。

「美味しいです。すごく」

「でしょ。あんた、昨日より顔色いいわよ。人間、ちゃんと食えば変わるの」

食事が終わり、梨紗子が洗い物を始める。徹は食器を拭きながら、彼女の後ろ姿を盗み見た。昨夜、あのスカートの下に透けていた下着の光景が、まぶたの裏で何度も明滅する。薄い布に包まれた、あの白い太ももの奥。思い出すたび、体の中心がずきりと疼いた。自分がそんな目で彼女を見ていることが、恥ずかしくてたまらない。それでも視線を外せない。洗い物をする梨紗子の腰が動くたび、スカートの布がしっとりと揺れる。

三日目の夜だった。

梨紗子は小さな折りたたみ式の作業台を使って、少しだけ低い卓の上に食器を置いていた。献立は鶏肉の照り焼きと、ほうれん草のおひたし、かき玉汁。食べ終えて、彼女がスプーンを片付けに立ち上がろうとした時、ことん、と音がした。

「あら、落ちちゃった。……悪いけど、拾ってくれる?」

梨紗子は卓の下を指さした。銀色のスプーンが、卓の脚の傍らに横たわっているのが見えた。

徹は何の疑いもなく、椅子から腰を下ろし、四つん這いになって手を伸ばした。スプーンを掴もうとした、その瞬間だった。顔を上げた先に、梨紗子の膝が大きく開いていた。スカートの布が太ももの上で乱れ、薄い下着の布地がはっきりと目に飛び込んでくる。蛍光灯の明かりを背に受けたその場所は、影が濃く落ち、肌の白さが浮き上がっていた。レース越しに、皮膚の下の青い血管が透けて見える。湿り気を帯びたような、かすかに甘い匂いが、卓の下の沈んだ空気にたまっていた。

徹は硬直した。喉の奥から、空気だけが抜けていく。手を伸ばしたまま、指先がぴくりと痙攣した。

梨紗子は何も言わない。ただ、上から徹の頭を見下ろしている。その沈黙が、数秒にも、数分にも感じられた。彼がようやく体を引こうとした瞬間、梨紗子のしなやかな指が、徹の手首を掴んだ。退がらせない、とでも言うように。

「なに見てるの?」

低く、濡れたような声だった。鼓動が一気に跳ね上がる。彼女はスカートの裾を、片手でゆっくりと持ち上げた。あの時よりもはっきりと、下着の奥の隆起が目に入る。布地の中心は少しだけ濃い色に変わっていて、湿り気を帯びた輪郭がくっきりと浮かんでいた。体温と匂いが、顔面にのしかかってくる。腰の奥が疼いて、徹は自分の身体が暴走しそうになるのを必死で抑えた。

「あんた、さっきから後ろ姿見てたでしょ。……こういうこと考えてたんでしょ」

声には笑みが混じっているのに、目はまったく笑っていなかった。徹は首を振った。振ることしかできなかった。しかし梨紗子の指は手首から離れ、今度は彼の頬をそっとなぞった。

「顔、真っ赤」

囁くような声に、全身の血が逆流する。彼女の膝が、卓の下でほんの少し開かれる。スカートが捲り上がり、太ももの内側が露わになった。白い腿はむっちりと張っていて、内側の柔らかい肉が光を弾いている。徹の視線が、そこに縫い付けられた。

梨紗子は卓の下から立ち上がると、流れるように椅子を動かし、台所へ向かった。何事もなかったように、シンクの前に立つ。だが、振り返った顔は妙に艶っぽく、唇が薄く開いていた。

「片付け、手伝って」

「はい……」

徹は立ち上がり、へたりそうな膝をなんとか伸ばした。心臓が耳の奥で鳴っている。スプーンを握った手のひらには、汗が滲んでいた。

後片付けを終え、二人は茶を飲むでもなく、部屋の真ん中に向かい合って立っていた。外はすっかり暗く、雨がぽつぽつと窓を叩き始めていた。

「今夜、あんた、どうしてほしいかわかってるの」

梨紗子が一歩、足を踏み出す。ふくよかな体から、汗と甘い化粧の匂いが薄く立ち上る。

「わかって、いません」

絞り出すように言うと、梨紗子は笑った。喉の奥から転がるような、低い笑い声。

「正直でいいわ。……じゃあ、これから二つだけ、あんたの体に教える」

彼女は徹をソファの方へ押し、座らせた。そして自分のスカートをたくし上げ、ゆっくりと跨るようにして彼の頭を両手で包む。豊満な下腹部が、顔のすぐ先にある。熱と重みをまとった空気が、徹の思考を溶かす。

「あんたの口、今からあたし専用にするから。わかったわね」

命令のようで、甘やかすような声。徹は頷くこともできず、ただ唇を戦慄かせた。彼女が下着を脱ぐ気配。細い布が肌から離れる音が、耳のすぐ側でくちりと鳴った。視界いっぱいに、暗い繁みと、その奥から覗く、薄い肉の襞の複雑な曲線が広がる。匂いが濃くなる。チーズにも似た、発酵したような生の匂い。酸い甘い、とろりとした匂い。腺から湧く唾液が、舌の下に溜まる。徹は目を閉じ、彼女の太ももにしがみつくように顔を埋めた。舌が自然と伸び、硬く閉じた肉の中心に触れた。

「ん……」

梨紗子の喉が小さく鳴る。徹は夢中で舌を這わせた。ぬるりとした愛液が唇につき、味が口の中に広がる。生温かく、わずかに塩辛い、生き物の味。上から梨紗子の指が徹の髪を掴み、ゆっくりと前後に動かす。舌先を小豆のような粒に這わせると、彼女の内腿がぎゅっと徹の頭を挟んだ。耳のすぐ横で肉が柔らかく潰れ、雨の音と血液の流れる音が交じり合う。口の端から混ざった液体が垂れ、顎を伝って畳の上に落ちた。くちゅくちゅ、という濡れた音が、静かな部屋の中でやけに大きく響く。

果てには彼女が軽く達したのか、太ももが痙攣し、腰が波打った。彼女の指が徹の耳たぶを抓る。

「とっても、素直でいい子じゃない」

荒い息のまま、梨紗子が囁いた。徹は涙でぼやける視界の中で、彼女の太ももの肌に唇を押しつけていた。恥ずかしさと飢えが同時に喉の奥でせり上がり、呼吸が震える。

彼女の手が、徹のジャージの上から股間をふわりと握った。布越しに、芯を持ち始めている自分がいた。触れられただけで、驚くほど堅く張り詰めている。

「あら、もう。……これ、ずっとこうしてたの」

梨紗子は感心したように、掌の中で形を確かめる。それから、するりとジャージと下着を膝まで下ろした。空気に晒された一物を、彼女の左手が根元からそっと包み込む。指が熱い。額にじわりと汗が滲む。窓の外では雨が本降りになり、打ちつける音が部屋の静けさを縁取っていた。

梨紗子はしゃがみ込み、まず舌先を先端に乗せた。ちゅく、という小さな吸い付きの音が洩れる。ぬるぬると舌が這い、一周し、それから根元まで深く咥え込む。口の中が熱く、柔らかく、粘液に満ちている。彼女の頬が内側から膨らみ、ゆっくりと頭を動かすたび、くちゅくちゅと卑猥な水音が立った。徹は声を押し殺すことができなかった。

「はっ……うぅ……っ」

喉の奥から、今にも泣き出しそうな息が次々に漏れる。歯を食いしばろうとすると顎が震えた。射精したい。腰が浮き、自分でもみっともないと思うほど先走りが溢れて、彼女の舌に絡みついていく。あと少し、あと数回しごかれれば、破裂してしまいそうだった。

その瞬間、梨紗子が根元をきつく握った。

「うぁ……!」

射精が、せき止められる。睾丸の奥で、熱い塊がぐるぐると逆巻いた。痛みとも快感ともつかない痺れが会陰から腰の奥へ駆け上がり、徹は身をよじって悲鳴を漏らした。

「……だめよ。まだ、出しちゃ」

梨紗子は口を離し、濡れた唇をちろりと舐めながら見上げた。その目は、獲物を哀れむよりずっと優しく、だからこそ底意地の悪い光を帯びている。妻に見捨てられた六十五歳の男が、鼻水を垂らし、腹を波打たせながら射精を我慢している。その惨めさを、彼女は真正面から味わっている。

「お願い……お願いします……出さしてください……」

気がつくと、徹は懇願していた。喉がひくひくと引き攣れ、情けない声が何度も唇を割って出ていく。

「イきたいの?」

「はい、イきたいです、もう……限界で……」

「限界、ねえ」

梨紗子は笑った。こういう時のための笑みを、彼女はどこで覚えたのだろう。ちいさな子供をあやすような口調で、その実、締め上げる手はゆるめない。

「自分がイくのに、何か足りないって思わない?」

「何が足りないって……そんな……」

「あんたが気持ちよくなるためには、あたしが気持ちよくなってなくちゃ。順番、間違えないでくれる?」

そう言うと、梨紗子は根元を握ったまま立ち上がり、再び徹の顔の前に腰を突き出した。彼女の指が自身の花弁を押し開く。肉の内側が、唾液と愛液でてらてらと光っている。むせ返るような匂いが、彼の顔を包んだ。

「イキたかったら舐めなさい」

徹はその言葉に、壊れたようにしゃぶりついた。鼻を埋め、舌を突き入れ、しゃぶる。涙と涎と愛液が混ざり、お互いの汁が泡立つほど夢中で舐め続けた。股ぐらに顔を埋められたまま、梨紗子の太ももは汗ばんで、内側の肉が彼の耳を締めつける。舌の先が奥の入り口をちろちろと刺すと、彼女の腰がぴくりと震え、徹の後頭部を両手で押さえつけた。呼吸は彼女の匂いで満たされ、喉の奥にまで生温かい蜜が流れ込んでくる。うまく息ができない。それでも舌を止められなかった。

やがて梨紗子の体が大きく弓なりに反り返り、くぐもった声が天井へ抜けた。徹の顔を挟む太ももの肉が小刻みに跳ね、びしょ濡れの花芯を舌で吸われるたび、腰が何度も突き出されてくる。

「じゅうぶん……じゅうぶんよ。……あー、もう、こんなに」

梨紗子は徹の顔からそっと腰を引き、乱れた髪を指で整えながら笑った。それから、未だ射精を許されず反り立ったままの一物を、ぬめった手でゆるく包み、ほんの数回、先端を親指でくちくちと擦り上げた。

「おねがいします、もう、ほんとうに……」

「だめ。今夜はね、あんた、イカないまま眠るの。それが、あんたの体に一番よく効くから」

ぎりぎりまで高まった快楽が、またも打ち棄てられる。金玉のあたりがずしりと重く、じわじわした苦しみが腹の底に青黒く溜まっていく。徹は前のめりに崩れ、梨紗子の太ももにしがみついた。泣きながら、彼女の柔らかい内腿へ何度も頬を擦りつける。今はもう、恥も体裁もなかった。

彼女はそんな徹の頭を、子供を褒めるようにして何度も撫でた。

「素直すぎるのよ、あんた。……かわいいわ。だから、毎日でも来たくなっちゃうのよ」

雨音がしきりに窓を叩いていた。汗と唾液と体液の匂いが、部屋の空気に重く沈んでいる。徹は乱れた呼吸のまま、梨紗子の太ももからようやく顔を上げた。物干し台の影が壁に揺れ、雨粒の跡がガラスの上を幾筋も伝っている。彼の一物はまだ痛いほど張りつめたまま、光の下で薄く濡れて震えていた。

梨紗子は身支度を整えると、玄関の近くで振り返った。

「明日はもっとすごいことを教えてあげる」

耳元に、そう囁かれた。甘い声の奥に、ぞくりとするような冷たさがあった。徹の肩が跳ねる。彼女の香水の残り香が、湿った空気と混じって、鼻腔の奥まで染み込んでくる。心臓がまだ鳴りやまない。

「おやすみなさい、徹さん」

「……おやすみなさい」

嘶くような声だった。ドアが閉まる。カチャリ、と小さな金属の音。部屋に一人になった徹は、濡れそぼった自分の中心を見下ろし、壁に手を突いてゆっくりと座り込んだ。射精を拒まれた熱は残りの血を掻き集め、脳の奥でまだぐずぐずと燻っていた。果たされなかった欲望の芯が、雨に濡れた窓の向こうへ透明に延びている。

彼はそこから動けず、浅い呼吸のまま、ただ自分の情けない尻をつけた畳の上で、彼女の舌と匂いと、あの柔らかすぎる太ももの感触を反芻していた。

第3章 スーパーの輪ゴムで根元を縛られた65歳の男が許しを乞いながら肛門バイブで開かれるまで

第3章のシーン

雨音は夜半過ぎには止んでいた。けれど徹の耳の奥では、あの湿った囁きが水たまりのように澱んでいて、いつまでも乾く気配がない。明日はもっとすごいことを教えてあげる。布団に横たわったまま、彼は天井の節穴を見つめていた。節穴の暗がりが、ゆっくりと呼吸しているように見える。あれから一睡もできなかった。瞼を閉じるたび、梨紗子の舌が這い回った感触と、射精を堰き止められた瞬間の、睾丸の奥で暴れる熱の塊が甦ってくる。下肢の中心は、まだ完全に萎えてはいなかった。じくじくと脈打ち、腹の底から張り上げるような疼きを訴えている。徹は浴衣の前を合わせ直し、汗で張りつく襟元を指でつまんだ。

次の夜、梨紗子は仕事帰りの足でまた家に来た。彼女がスーパーの袋から取り出したのは、里芋と鶏肉、それに細長い大根だった。台所の蛍光灯が、袋の口から覗く野菜の泥を白く浮かび上がらせる。あの甘い化粧の匂いと、レジで何時間も立ち仕事をした後の酸い汗の匂いが、玄関の空気をゆっくりと侵食していった。

「今夜はね、鶏と里芋の煮物にするわ。あんた、座ってないで手伝いなさいよ」

梨紗子はそう言うと、自分の鞄から何かを取り出した。それは束になった、細い輪ゴムだった。スーパーの青果コーナーで野菜を束ねるための、黄色い小さな輪が幾つも連なっている。彼女はそれを手のひらに載せ、ゆっくりと徹の目の前へ差し出した。

「これ、わかるでしょ。レジの裏で、あたしが毎日触ってるもの。野菜を縛る、ごく普通の輪ゴムよ」

徹は黙って、その黄色い輪を見つめた。心臓が鮫肌を立てるようにざわつく。昨日までの彼なら、ただの文房具か何かとしか思わなかった。だが今は違う。梨紗子の掌に載った途端、あの細いゴムは、自分の身体を締め上げるための道具に変化していた。唾液が喉の奥でねばつき、指先がじわりと湿っていく。

「今日の夕飯ができるまで、ここに巻かせてもらうわよ。あたしが許すまで、あんたは一滴も溢しちゃだめ。わかったわね」

彼女の声は台所の湯気のように淡々としていた。徹は返事の代わりに、深く頷くことしかできなかった。けれど顎がかくかくと震え、関節の外れそうな音が耳の内側で鳴っている。梨紗子は流しに手を洗いに行くと、石鹸の泡を丁寧に流し、その濡れた指先で徹のベルトへ伸びてきた。

下半身を裸にされた徹は、台所の冷えたタイルの上に立っていた。蛍光灯の光がいやに白く、彼の痩せた腰骨と、屈辱で赤らんだ腿の内側を照らす。梨紗子はしゃがみ込み、黄色い輪ゴムを何本か束ねる。一重では細すぎるからと、三本の輪を撚り合わせて、太さを増していた。撚られたゴムの冷たい感触が、まだ芯を持ち始めたばかりの一物の根元に触れる。

「ちょっと冷たいわよ、動かないで」

彼女の指が、皮膚のたるみを器用に避けながら、亀頭のすこし下でゴムをきつく巻きつけた。一回、二回、三回。捻じりの入った輪が食い込み、血流をせき止める感覚が下腹部に走る。痛いというより、熱い。自分の中の液体が、出口を失くして逆流していくようだった。

「くっ……ぅ……」

徹は喉を仰け反らせ、両手で流しの縁を掴んだ。爪がステンレスの冷たい面を鳴らす。梨紗子は満足げに立ち上がり、エプロンの紐を結ぶと、まな板に向かった。

「さて、料理に取りかかるわよ。あんた、いつまでも裸で立ってないで、そこへ跪きなさい。あたしの足元で、おとなしくしてるの」

四つん這いになった徹の目の前を、梨紗子のふくらはぎが行き来する。スカートの裾が揺れ、肉感的な足首がかすかに汗ばんでいた。彼女は衣擦れの音をさせながら、冷蔵庫を開け閉めし、まな板の上で鶏肉を切る。ドス、ドス、と包丁の落ちる音が、床に伝わって徹の膝の骨まで揺らした。

「今日の煮物はね、里芋を下茹でしないでそのまま煮るのよ。ぬめりが出るから、あんたの舌みたいに、しあわせな味になるの」

梨紗子はそんなことを言いながら、笑った。声は上から落ちてくるのに、台所の空気がじわりと温まって、出汁と醤油の焦げる香りが広がった。徹は犬のように顔を上げ、その匂いを吸い込む。鼻の穴が膨らみ、涎が口内に溢れてくる。話している間も、彼の一物は痛いほど張り詰め、根元の輪ゴムがめりめりと肉へ食い込んでいった。

「あんた、煮物の香りで感じてるの? 先っぽ、もう濡れてきたわよ」

梨紗子はちらりと足元を見下ろし、くすくすと喉を鳴らした。彼の先端からは透明な汁が滲み、重力に引かれて細い糸を引いている。それは床のタイルに小さな水たまりを作り始めていた。羞恥で耳の裏まで燃えた。けれど肉体の芯は、その恥ずかしさを喜びに変換する回路を、すでに覚えてしまっていた。

「今夜は、台所で食べましょう。あんた、そのままじゃ座りにくいでしょうけど、床でお行儀よくしてなさいよ」

梨紗子はそう言って、煮物と豆腐の味噌汁、それから大根のなますを器に盛っていく。彼女は食事の支度を終えると、すうっと制服のエプロンを外した。露わになったのは、あの薄い、水色のカットソーだった。さらに彼女は、ぷっくりとした腰の上でスカートをほどく。するりと落ちる布の下には、レースの下着が一筋だけ。透けるほど薄く、肉厚な股間の形をあたたかく浮かび上がらせている。裸エプロンとまではいかないが、その肉感的な輪郭が、徹の眼球を焼いた。

「あたしも裸に近いわ。あんただけ惨めじゃなくて、お揃いみたいでしょ」

彼女は微笑んだ。それは風呂上がりの優しさでも、母の親切でもなく、相手を裸にしておきながら自分は肉の形を見せつける、あの笑みだった。梨紗子はゆっくりと卓を跨ぎ、床に座り込む。彼女の股間の位置が、膝立ちとなった徹の頭の高さとちょうど揃った。むわっと、すえた蜜の匂いが鼻先へ迫る。クロッチの布地はくっきりと湿り、陰毛の曲線を濡れた黒に変えていた。

「食べながら、あたしのここも舐めなさい。あたしが気持ちよくなるまで、食事はお預けよ。あんたの根元は、夕飯の間も絶対に離さないわ」

彼女の指が徹の一物に絡み、輪ゴムの位置をぐりっとずらした。鋭い拘束が再び食い込み、徹は悲鳴を噛んだ。けれど口はすぐに、彼女の膨らんだ下腹部へ吸い寄せられた。蜜壷を布越しに吸う。下着の繊維が舌に絡み、ぬるりとした汁が染み出して唇を濡らした。れろり、と舌を這わせるたび、梨紗子の腰が小刻みに揺れる。彼女は箸で煮物をつつきながら、上からひやりと冷たい笑みを落としてきた。しゃぶりながら煮物の汁が咽へ垂れ、彼は食べるのと舐めるのとを同時に強いられる。鼻腔は彼女の汁と出汁の香りで混ざり合い、脳の縁を溶かしていく。

「んっ、上手……。あんた、ちゃんと、ふ……、舌を奥まで入れて……」

梨紗子の声がわずかに揺れた。太ももがむずかるように動き、内腿の肉が徹の耳を挟み込む。彼は夢中になった。ちゅぷ、ちゅぷ、と卑猥な音を立て、下着の股間へ顔を埋める。びしょ濡れのクロッチ越しに、襞の奥の入口まで舌先をねじ込んでいく。

その間も、一物は暴れていた。輪ゴムの戒めは夜の時間が経つごとにきつく感じられ、先走りが糸を引いて畳の上へ落ちる。煮物の器からは、甘辛い湯気が立ち上っていた。梨紗子は噛み締めるようにして、里芋を口へ運ぶ。彼女の咀嚼が終わるたび、腰がゆっくりと前後し、徹の舌に押しつけられる。ぐちゅ、ぐちゅ、と下品な水音が台所の壁に反射した。徹はもう自分が食事をしているのか、彼女の液を啜っているのか分からなかった。腹の底から空腹とは違う飢えがむくむくと湧き、喉の奥がひくひくと喰い縋る。

「もっと……乱して……」

自分でも驚くほど濁った声が出た。梨紗子は行儀悪く箸を置いた。煮物の器を脇へ押しやると、両脚を大きく広げ、下着の裾を横へずらす。ぬかるんだ襞が露わになり、蜜がとろとろと垂れている。ぬめる穴の上の方が、ひくひくと呼吸していた。

「命令されなくても、おまえの舌はもうあたしの下着に吸いついてるだろ。……ほら、顔を隠すんじゃない。奴隷の分際で、ご主人様の足の間に跪いてるくせに」

梨紗子の内腿が、がっしりと徹の首を捕まえた。彼は息継ぎも許されず、鼻先を陰毛の茂みへ埋める。舌をめいっぱい伸ばし、溢れる蜜を掬い取るように舐め続けた。喉が鳴り、腹が鳴った。炊きあがった米の匂い、鶏の脂、煮えた醤油、それから熟れた女の体液。さまざまな匂いが粘膜で混じり合い、徹の頭蓋をぐらぐらと揺らした。

やがて梨紗子が長い吐息を落とした。太ももの肉が弧を描いて跳ね、ぬるぬるとした愛液が徹の顎を伝って胸にまで落ちる。彼女は疲れたように体を後ろへ倒し、両肘をついて床を見つめていた。目はとろりと溶け、唇が半開きになっている。

「さ、ご馳走はおあずけよ。……あぁ、すごい顔。我慢の汁、お皿みたいに溜まってる。かわいいわ」

梨紗子は這うようにして、徹の正面へ回ると、その白く太い指で彼の一物を根元からそっと包んだ。輪ゴムの食い込んだ部分からは、内出血めいた赤い筋が浮き、張り詰めた肉は彼女の手の中でひとりでに跳ねた。彼女は若い男にするように、掌全体で扱き上げる。ぬるつく先走りがぎちぎちと音を立て、黄色い輪ゴムがカエルの卵みたいに濡れて光った。

「出したい? せっかくの煮物、一皿分をね、あんたの根本で味付けしてるのよ。潤って、痛くなって、苦しくなって、それでも、ほんの少し気持ちよくしてあげる。この時間が一番、あんたの顔がいい」

「お願いします……少しでも、少しでいいから……ふれるのを、やめないで……」

徹は這いつくばったまま懇願した。鼻の奥が痛く、喉の奥は女の汁と出汁でべとべとに濡れている。梨紗子は唇の端を上げると、空いた左手で彼の睾丸を掌に包み、下からゆるゆると揉んだ。あまりの感覚に、徹の背中が弓なりにしなった。腰の骨が床へ付き、肩が反り返る。

「いっぱい我慢できたら、食後の愉しみがあるわよ」

彼女の囁きは湯気より熱かった。夕食の白い米粒が、卓の上で艶々と冷めていく。徹は、まだ一滴も精を放てずに、台所の床で梨紗子の手に支配されていた。食後、梨紗子は食器を流しへ運ぶと、裸の下半身を晒したまま戻ってきた。彼女の股間はすっかり濡れそぼり、膨らんで赤く色づいている。彼女は床に座り込んだ徹の腰へ跨った。

「じゃあ、今日はご褒美よ。あんたの、いちばん悲しくて、いちばん正直なところを、あたしが食べてあげる」

衣擦れの音が近づき、彼女はゆっくりと腰を落とした。ぬるりとした肉の口が、凄まじい熱をまとって一物の先端に触れる。先走りの蜜と女の汁が混ざり合い、くちゅ、という音が二人のつなぎ目から聞こえた。あのまま一気に沈められ、徹は息を止めた。内側は溶けたゼリーのように熱く、うねる襞が彼の形を覚えようと絡みついてくる。梨紗子の吐息が上から落ち、汗の粒が彼の胸に落ちた。

彼女もまた、奥まで咥え込んだ瞬間、ふ、と唇の端から息を逃がした。熱く滾った肉の芯が、潤みきった内襞をこじ開け、ずりゅ、と沈み込んでくる。その圧が、喉の奥を鳴らすほどの満ち足りなさを呼ぶ。夕飯のあいだ、彼の舌で散々に舐めさせ、焦らし抜いた自分の奥が、ひくひくと痙攣しながら侵入を歓んでいる。指は畳を掴み、内腿の内側がかすかに戦慄く。この痩せた男の一物を、今、自分の汁で包み込んでいる。その事実が、梨紗子の脊髄を這い上がるような快感となって、腰を重くした。

「……ふ、ぅ……大きくなったわね……あんた、ちゃんと奥まで届いてる……」

彼女の声は少しだけ、台所の湯気のように湿って震えていた。汗の粒がこめかみを伝い、開いた唇の端へ落ちる。一物を根本まで呑み込み、肉の壁がぎゅうっと絡みつくたび、腹の芯から熱い呵責のような疼きがせり上がる。彼の筋張った痩せた腰と、節だった骨の感触が、動くたびに彼女の内腿や下腹へ当たった。その硬さえ、じわじわとした火種になる。

「気持ちいいでしょう。……あんたの顔、もう、何がなんだか分からなくなってる。あたしの中も、さっき舐められたせいで、溶けてるみたいなのよ……」

彼女はゆっくりと腰をグラインドさせた。熟れた雌の内奥がずちゅ、ずちゅと卑猥な音を立て、彼の先端を締めつけながら擦り上げる。肉襞が擦れるたび、梨紗子の後頭部へ痺れが抜けていった。彼女は唇を噛み、顎をほんのわずかに上げる。目尻が潤み、陰毛の茂みを汗が伝っていく。徹の下腹から背筋へ、稲妻のような痺れが走った。今までの焦らしがすべて凝縮され、輪ゴムで堰き止められた熱が暴発しそうになる。睾丸の中が重く、熱い。彼は梨紗子の丸い腰にしがみつき、声にならない喘ぎを漏らした。

「あぁ……っ、だめです、もう……出したい、出したら、わたし……」

「だめよ。まだ出さないの。この輪ゴムが許さないわ」

彼女はそう言うと、意図的に腰を沈めた。最深部で小さく揺らぎ、絡みつく襞が一物の先を搾る。同時に、彼女の内壁も、絞り取るように彼の形を確かめた。輪ゴムで膨れあがった一物が、奥へ押し込まれるたびに、梨紗子の腰骨の奥を甘く痺れさせる。子宮のあたりまで満たされているようで、唇からこぼれる吐息は、もはや命令の響きを失っていた。徹の目の奥に白い光が明滅した。指が畳を掻き、顎ががくがくと震える。涙が目の縁に滲み、止めどなく頬を流れ落ちた。

「おねがいです、許してください、もう、ほんとうに……ここで、わたし、死んでしまう……」

「死なないわよ。あんた、きちんとあたしの上で、情けない顔して生きてる。ほら、もっと腰を使って。あたしが気持ちよくなるたび、あんたの先が奥で泣いてるのがわかるわ」

彼女は笑った。喉の奥から、ずるりと淫猥な音がする。梨紗子の太ももが汗で濡れ、彼の痩せた横腹にまとわりついた。粘液まみれの結合部が、ぐちゅぐちゅと泡立ちながら乱れていく。彼女の肉襞は彼の張りを根元ごと絞り、快感を絞り取るように蠕動した。徹はもう息をしているのかも判然としなかった。射精の堰を塞がれたまま、彼女の内部で打ち震えるだけだ。梨紗子自身も、下腹部の奥に潮が満ちるような、眩暈にも似た切なさを溜めながら腰を揺らしていた。

「よく我慢できたわね。……今日は、これで許したげる」

そう言って彼女は素早く腰を持ち上げた。一物が露わになった瞬間、彼女の指が輪ゴムをつまみ、ぷつん、と小気味よい音を立てて外した。痛みと同時に、溜まりきった欲望が解き放たれる。徹の身体が跳ねた。精液が自分の腹や彼女の乳房をめがけて、どく、どく、と音を立てて噴き上がる。老人とは思えないほど、と彼女は後で笑った。それは何度も、白い濁りを畳の上へ散らしながら、長く長く吐き出された。

「……綺麗。ね、あんたの奥、あたしが撫でると、すごくいい声で泣くのよ」

梨紗子は崩れ落ちた徹の脚を持ち上げ、ずい、と上体を起こした。彼女の指は、精液でぬめる股間を通り過ぎ、閉じた後ろの蕾へと伸びていく。あのまま固く閉じた窄まりに、人差し指の先がちいさく沈みかけた。徹はたまらず身をよじった。

「な、なにを……」

「あたしが言ったでしょ。もっと気持ちいいこと教えてあげるって。あんたの、まだ誰にも触らせてない穴。ここを開くとね、あんた、前とは違う場所で女みたいに泣けるのよ」

彼女の声には、あやすような響きがあった。だがその指の動きは的確だった。ぬるついた液を蕾へ塗り込み、くるくると円を描きながら、括約筋をゆるめていく。生まれてからこのかた誰にも侵入を許したことのない入り口が、異様な熱と圧力を訴えている。

「力を抜いて。……お尻を開くときは、口を開けるのよ。そうすると、少し楽になるから」

徹は言われるままに口を開いた。すると、ふっ、と息が抜け、後孔がわずかに綻んだ。梨紗子の指が、その瞬間を逃さず、第一関節まで埋め込まれる。異物感が腸の入口を押し上げ、腹の奥で、痛みと紙一重の火照りに変わった。

「あ……! ひ、くぅ……ぁ……!」

「熱い。ちゃんと、あたしの指を咥えてる。……じっとしてなさい。もっと、深いところに触るわよ」

彼女は指をゆっくりと進め、直腸の前壁をなぞり始めた。ぬるぬると滑る腸壁の薄い膜の向こうに、ある一点が頭をもたげている。ゴツゴツとした、くりっとした粒。彼女の指先がそこを押し上げると、徹の全身が稲妻に撃たれたように跳ねた。視界が痺れる。喉から引き攣れた声が漏れ、手足が宙を掻いた。腹の底から、かつてない深い快楽が噴き上がり、自分のものとは思えぬ叫びが後孔からではなく、開いた口から溢れ出した。

「ここよ。あんたの、前立腺。男のくせに、こういう場所があるのよ。女のことも、男のことも、両方わかる場所。あんたの一番かわいい場所ね」

梨紗子は意地悪く笑い、その粒を指の腹でぐりぐりと押し潰すように刺激した。同時に、萎えかけた一物を空いた手でゆるく扱き上げる。前後からの感覚が食い違い、徹の腹筋がびくんびくんと痙攣を始めた。口の端から、だらりと涎が垂れる。味噌汁と台所の空気と、自分の体液が混ざったような、ねっとりとした自失の溶液が、喉を満たしていく。

「すごい、感じてるじゃない。しかも、肛門がきゅっと締まるの。女の子みたい。かわいいお尻じゃない」

彼女は指の根元まで飲み込ませると、前立腺を押し込みながら二本目を挿れかけた。狭い入口がずりゅ、と鳴き、徹の喉がひくりと跳ねる。涙と涎と汗で顔じゅうぐちゃぐちゃになった老人の後孔を、彼女の指がぐちゅぐちゅと掻き回した。

「あ……うぅ……で、でます……また、出てしまいます……上田さん……!」

「出なさい。あたしが奧で支えててあげるから。あんたのいちばん深い声、ちゃんと、あたしに吐き出しなさい」

指先がとどめを刺す。二本の指が腸の中でばらばらに動き、前立腺をねじり上げる。同時に、扱く掌が亀頭の下の窪みを親指で擦り上げた。徹の身体がのけぞり、腰が浮く。白く泡立った精液が、二度目の噴出をみせた。今度は一度目よりずっと濃く、少なく、尿道が焼けるような痛みを伴った。どぶり、と吐き出したそれは、梨紗子の手首まで濡らし、畳に染みを作っていった。

「……いい子。……よく、我慢したわ。今夜は、いい顔だったわよ」

梨紗子は指をゆっくりと抜いた。後孔の内壁が去り際にちゅぅっと吸いつく。外界から切り離された後の、ぽっかりした寂しさが尻の奥に残る。彼女は立ち上がると、流しで手を洗い、それから水差しの冷たい水を一口含んだ。そして、仰向けで息を乱す徹の上へ、ゆっくりと戻ってくる。

「いっぱい汗かいたでしょ。喉を潤してあげる」

そう言って梨紗子は、徹の顔のすぐ上で、ふたたび股間を開いた。下着はもう脱ぎ捨てている。桃いろの襞がぱっくりと開き、尿道が淡い光の中に見えていた。深い陰毛が影を落とす。彼は何が起ころうとしているのか、朦朧とした頭で理解する。この状況で、彼女が「喉を潤す」と言った。それは水差しのことではないのだ。そう悟った瞬間、ぬるい、強い流れが、額から鼻梁を伝い、唇の割れ目へ落ちてきた。

温かい。彼女の体内で育てられた液体が、容赦なく徹の顔面を打つ。耳、首、鎖骨、そして飢えた口の奥にまで流れ込んでくる。僅かに塩辛く、酸い。男の精液とは違う、女のからだの一番奥からの味だった。彼は必死に咽で受け止め、ごく、ごく、と飲み込んだ。一滴もこぼすまいと口を開ける。いつの間にか、喉は女の水を求めて動いていた。温かい尿が食道を伝うたび、胸の底が揺さぶられるような感動が、胴の芯を貫いていく。

「……ずいぶん、良い飲みっぷりね。あんたの渇き、これでようやく癒えるんでしょう」

梨紗子の放尿が細くなり、やがて滴になる。ぽた、ぽた、と顎を伝って畳へ落ちた。徹は目を閉じ、唇を戦慄かせた。自分の浅ましい姿が、頭の芯を凍らせる。六十五の男が、若い女の小水を浴び、咽を鳴らして飲み干している。その恥辱の底で、しかし、不思議な充足が静かにひらいた。妻も社会も自分を必要としなかった。けれど今、この女だけは、一番奥の一番汚いものまで自分に注いでくれる。捨てられなかった、必要とされなかった男の身体中に、温かい流れがゆき渡っていくようだった。彼は声もなく泣いた。唇が笑いの形に引き攣れ、目尻から生ぬるい涙が流れ落ちていった。

梨紗子は黙ってその顔を見下ろし、それから、卓の隅に置いた手拭いを取った。輪ゴムを外してもなお張りの残る一物を、彼女は指先でとん、と弾いた。くるりと腰をひねり、彼の脇へ寝そべると、畳の上に放り出された肩へ、ざらりとした乾いたタオルをかけてよそった。

「動かなくていいわよ。……あんたの腹、こんなに痩せてるのに、すごくあったかい。今夜は寝るまで、こうして撫でててあげるから」

彼女のふっくらした掌が、徹の汗ばんだ腹をゆっくりと円を描く。まだ呼吸の荒い彼は、天井を仰いで、梨紗子の体温を感じていた。下腹には尿と精液と汗と、それから自分の体液が混ざり合い、冷えはじめた泥のようにこびりついている。換気を忘れた部屋は、濃厚な性の匂いでむせかえるようだった。

外はすっかり静まり、遠くの街灯が窓を薄く青く染めていた。

第4章 聖水とバイブに震える身体で買い物へ出た徹がスーパーのレジで小声の命令に濡れる昼下がり

夕刻の空気が、台所の流しに残った野菜くずの匂いをほのかに運んでくる。徹は浅い眠りの底で、その匂いと、昨夜の淫らな匂いが混ざり合うのを感じていた。梨紗子の指先が腹の上を這う。汗ばんだ産毛を逆立てるように、ゆっくりと、ほとんど愛撫とも呼べぬほど曖昧に。時折、へその下の窪みへ親指が沈み、小さな肉の渦をくるりと撫でる。その指が離れるたび、徹の腹筋は薄い波のように震えた。

夜の空気は重く沈殿し、性の残り香を閉じ込めていた。吸い込むたびに肺の奥がどろりと濡れるようで、息をするたびに甘く苦い味が舌の付け根へ滲む。外では街灯の青白い灯りが、カーテンの隙間から一本の細い刃のように畳を切り裂き、徹の手元を冷たく照らしていた。

どれほどそうしていたのか、やがて午前の陽射しが部屋の隅へ届き始める。徹は喉の奥にへばりつく渇きで目を開いた。畳の目に沿って、朝の光が埃を金色に浮かび上がらせている。隣では、梨紗子が背を向けて眠っていた。小さく丸まり、肩から背中へかけての線が幼くも見える。スーパーの制服の胸元がはだけ、はち切れんばかりの乳房の重みが浅い寝息に合わせてゆっくり上下している。白い肌は青白い光の中で陶器のように鈍く光り、腰のくびれから太腿へ落ちる曲線が、乱れたシーツの波のようだった。

徹は昨夜の彼女の姿を思い浮かべようとして、すぐにやめた。あの飢えた獣の目をした夜の女王は、朝の光の中ではただの疲れた中年女に過ぎなかった。いや、そう見えるのは自分の傲慢だろうか。そう思いながら、音を立てぬよう起き上がり、足元に丸まったタオルケットを彼女の腰のあたりへそっと掛け直した。

下半身は、乾いた体液でひどくかさついていた。尿と精液と汗が混ざり、畳の上で黄ばんだ地図のような染みを作っている。太腿の内側はひりつき、陰茎の先端は下着に貼りついて剥がすときに鋭い痛みを走らせた。徹は黙って風呂場へ向かい、蛇口をひねる。ぬるい湯が膝から下を流れ落ちるたび、昨夜の感覚が皮膚の裏から浮き上がってくるようだった。

尻の奥にずるりと飲み込まれた指の感触。あの瞬間、肛門を開くよう命じた声。いや、声より先に、目で命じられていたのかもしれない。湯は足元の排水溝へ吸い込まれ、汚れを黒く溶かしながら流れ去っていく。だが、梨紗子が体の芯に残した火種だけは、流れずに燻り続けている。ぬるい湯がその火種を冷やすどころか、柔らかな熱で包み、かえって深く染み込ませていくのを徹はただ感じていた。

数週間が過ぎるうち、徹の頬には赤みが戻っていた。足取りも、あてどなく外へ向かうようになる。早朝に目が覚めれば、近所の川沿いを三十分かけて歩くのが習慣になった。夜明け前の空気は肺の奥を刺すように冷たく、額に滲む汗が首筋を伝って背中へ落ちる。そのひんやりとした一筋が、死んでいた時間を確かに断ち切っていくようで心地よかった。

川の水面が朝の光を反射し、銀色の鱗のように揺れる。立ち止まって見ていると、かつて妻とこの道を歩いた記憶が遠く霞んで消え、代わりに夕方訪れる女の笑い声が、耳の奥で小さく反芻される。うつむく癖はまだ抜けない。けれど、空を見上げられる朝があるということが、妙に心を軽くした。いや、心が軽いのではない。空を見上げたくなるほど、心が飢えているのだ。本当に生きた心地がするのは、梨紗子の命令に触れた瞬間だけだとしても、その瞬間へ向けて歩くために、朝があるように徹は思っていた。

彼女の躾は、昼間にも影を伸ばした。ある日、出かける直前に玄関で呼び止められ、トランクスを脱ぐよう命じられる。靴を履きかけた姿勢のまま、徹は言葉を失った。外はまだ明るく、近所の主婦が自転車で通り過ぎる気配がする。梨紗子は革の鞄を開け、小さな楕円型のバイブを取り出した。手のひらで転がすと、シリコンの表面が朝の光を弾いて、ぬらりと光った。

「これ、しまって行きなさい。先っぽだけでいいから。今日は三時間、これ付きでお散歩してらっしゃい」

梨紗子の唇が薄く開き、白い前歯が覗く。その笑みは、昨夜ベッドの上で見せたものと少しも違わなかった。

「三時間……ですか」

「お店に着いたら、あたしの顔を見なきゃいけないわよ。途中で抜くなんて、絶対にだめ。わかったわね」

はい、と喉の奥で答える。いや、答えたつもりだった。梨紗子が満足したのは、しっかり引き締まった徹の声ではなく、その顔に浮かんだ諦めと期待の混じった表情を見たからかもしれない。徹は縁側に座らされ、尻を突き出す姿勢を取らされた。午前の風が後ろの窄まりに触れるだけで、内臓がきゅうと縮む。

梨紗子はひんやりしたローションをアナルの窄まりへ垂らした。冷たい液体が皺と皺の間を伝い落ちる。彼女は使い古した輪ゴムを左手の中指に巻きながら、右手でバイブの先端をその窄まりへ押し当てた。冷たい異物がゆっくりと沈んでいく。括約筋をこじ開けられ、ぞわぞわと胎の奥へ水がしみるような痺れが走った。

「ん……ぅ……」

「我慢しないで。外を歩いたら、すぐ分かるから。男の蕾も、濡れるってことがね」

ちゅぷ、と音を立てて、バイブは途中まで咥え込まれた。残りの部分を梨紗子が指で弾くと、体内に埋まった部分が震え、徹の腰が大げさに跳ねた。立ち上がるよう促され、恐る恐る一歩踏み出す。内腿から腹の底へ響く重みが、肛門の内壁をすり抜けるたび、どこか遠くの神経を甘く擦り上げる。表に出た途端、川風が股の間を吹き抜け、綿のズボンと肌の間に生ぬるい空気が入り込んだ。何かが隠れているという後ろめたさが全身の毛穴を開かせ、そのひとつひとつから汗が滲んでいくのが分かった。

昼下がりのスーパーは、想像以上に混んでいた。主婦や老人客がかごを提げ、蛍光灯の白い光の下をゆっくり移動している。店内に流れる安っぽい音楽が、不安に早まる心臓の音を覆い隠してくれた。徹は小さな買い物かごを手に、まず野菜の棚へ足を向けた。かぼちゃ、里芋、青ネギ。梨紗子が今晩作るであろう食材を、姿勢を正して選ぶ。ひとつ手に取るたび、商品の硬さや冷たさが必要以上に指先へ沁みた。

歩くたびに、アナルのバイブが体内の肉を甘く刺激する。腰に微弱な疼きが生まれ、太腿の内側がじっとりと湿っていくのを自覚する。レジへ向かう主婦の買い物かごに、自分の尻の穴が晒されているようだった。いや、実際は誰も見ていない。見ていないからこそ、汗ばんだ手のひらでレシートを握りしめながら、この身体の中に隠した異物だけが、自分と梨紗子だけの秘密として腸の奥で重く脈打っていた。

レジが近い。胸が潰れそうに鳴っている。梨紗子の高い声が、レジを打つ一定のリズムと混ざって聞こえてくる。

「お待ちのお客様、どうぞー」

彼女は昨夜の女とは思えぬほど澄ました表情で、商品のバーコードを次々と読み取っていた。黒髪を後ろできっちりと束ね、水色のエプロンを胸元でぴんと締めている。レジの蛍光灯が首筋に落ちる影を作り、うっすら浮いた汗が光って見えた。徹は唾を飲み込み、列の最後尾へ並ぶ。前の老人が小銭を探す間、梨紗子は一瞬だけ徹の方を見た。その視線が、彼の下腹を舐めるように下りて、戻る。

徹の番が来た。梨紗子は商品を受け取り、てきぱきと袋へ入れていく。バーコードを読み取る機械の音が、やけに鋭く耳に響いた。

「……今、どれだけ濡れてるか教えて」

声は抑えられている。唇をほとんど動かさず、喉の奥から絞り出すような低い声。前後の客には、単なる世間話か何かにしか聞こえないだろう。だが、その言葉は太く熱い針のように徹の肛門へ突き刺さり、腸の奥でこすれた。バイブが、内壁の一点をずりりと擦り上げる。息が漏れかけて、徹は口を閉じた。

「……すみません。それは……言えません」

うつむいて答えるのが精一杯だった。額には汗が浮き、頬は火照っている。指先がレジ台の縁を握りしめて、関節が白く変色していた。梨紗子は微笑んだ。レジの女の顔ではなく、昨夜、徹の耳たぶを甘く噛みながら命令した、あの女の顔で。

「正解。ちゃんと我慢できたわね」

彼女は商品を通し終えると、レジ袋の中へ手を入れる。そして、青果コーナーの黄色い輪ゴムを一本、するりと滑り込ませた。商品の隙間に落ちる、あの黄色い輪。パッと見ただけでは、ただのサービスで入った輪ゴムにしか見えない。けれど、それが今夜、徹のどこを縛るのか。何のために使われるのかを知っているのは、この場に二人だけだった。

輪ゴムを見た瞬間、徹の奥の穴が、愛液とは違う粘液でぐちゅりと鳴った。バイブの先が腸壁に当たるたび、飢えが腹の底で渦を巻く。いや、飢えというより、尿意にも似た切迫感。体の中に溜まったものを吐き出したいのか、それとももっと深く詰め込みたいのか、自分でも分からない奔流が下半身を置き去りに奥へ奥へと押し寄せるようだった。

「お会計、四五八円になります」

透き通った声。五百円玉を差し出す手が震えていたことを、梨紗子は見ていたはずだ。彼女の細い指先が、徹の震える指から硬貨を受け取った。一瞬、触れ合った指先は氷のように冷たかった。

店を出た途端、外の湿った空気が肌にまとわりついた。夕方にはまだ早い。薄曇りの空は重く垂れ込み、川原の方から犬の鳴き声が一際大きく聞こえてくる。徹はレンガ色の舗道を急いだ。だが、急げば急ぐほどバイブがアナルの奥で跳ね、内臓を甘く掻き乱す。ズボンの前は、尿や精液とは別の透明な汁で下着に張りつき、歩くたびに陰茎の敏感な裏筋と擦れていた。

ポケットの中で、輪ゴムを握る。細いゴムの輪が手汗を吸い、指の腹に食い込む。手のひらの中でぐにゃりと曲がり、絡まる感触が、自分の腹の奥で梨紗子の指が這い回る感触と重なった。これが夜、自分を締め上げるのか。あのレジで客の前では見せなかった彼女の声が、もっと低く、もっと甘く、命令を下す。そう思うだけで、尾骶のあたりがぞわぞわと泡立ち、恐ろしさと期待が同時に背筋を這い上った。

彼の足は、恐怖から逃げるのではなく、彼女の待つ家へ、彼女の掌中へ、一歩一歩吸い寄せられていく。歩幅が縮まり、気づけばほとんど小走りになっていた。後孔を満たすバイブの重さは、梨紗子の指がまだ自分の肛門に埋まっているような錯覚を生む。歩くたび、その指が腸壁の同じ場所を何度も何度も押し上げ、腹の底の一点をとろとろに溶かしていくようだった。舗道を曲がり、家の門が見えたとき、徹の呼吸は浅く引き攣れていた。すでに汗が頬を伝い、口の中は乾いて、粘りのある唾液が舌の根に絡みつく。

玄関の鍵を開け、扉を閉めた瞬間、自分がどれだけ限界だったかを悟ってその場にしゃがみ込んだ。バイブが体の奥を押し上げ、視界の縁が白む。尻の穴がおのずと締まり、中で苦しそうに脈打つのが分かる。ポケットからくしゃくしゃのレシートと、ねじれた黄色い輪ゴムがこぼれ出た。徹はそれを、祈るように拳の中へ握りこんだ。指の間から滲む汗が輪ゴムに吸われて、冷たい。その冷たさが、梨紗子の指先の冷たさと重なって、股間の痛みにも似た快感をさらに強く煽る。

梨紗子が来る。チャイムが鳴るまで、ここで呼吸を整えねば。整うはずがない。整えばいい、とも思っていない自分がいる。下着の中は、もう何が溢れてもおかしくないほど湿っていた。太腿の裏まで粘液が伝い、座り込んだタイルの上に小さな染みを作っていく。息を吸うたび、肛門の肉がバイブを絞り、そのたびに嫌でも分かる。自分は、彼女に生かされている。彼女の命令に、身体ごと縛られている。その感覚だけが、この空っぽの家の中で、たしかに徹の鼓動を打たせていた。

ブザーはまだ、鳴らない。

第5章 毎晩の手料理と命令で生きる意味をつないだ男が女王様の家で共依存の居場所を見つけるまで

第5章: 毎晩の手料理と命令で生きる意味をつないだ男が女王様の家で共依存の居場所を見つけるまで

玄関の床にしゃがみ込んだまま、徹は自分の呼吸が獣のように浅く速いのを聞いていた。後孔に埋めたバイブはまだ熱を持ち、内壁にそって微かに脈打つ。ポケットから溢れたレシートの端が、指の間で汗を吸ってふやけていた。輪ゴムを握った拳から、黄色い輪の一本が垂れている。梨紗子が来る。ブザーが鳴るまで、あと何分だろう。太陽はカーテンの向こうで傾きかけ、部屋の中の空気が夕方の重たさを孕み始めていた。

そのとき、唐突に携帯が震えた。畳に置いたままの端末が、低い羽音のような音を立てる。徹は肩を跳ねさせ、這うようにして手を伸ばした。画面に浮かぶのは、上田梨紗子の短い文面だった。

「今夜はやめとくわ。かわりに、あんたが夜ごはん作って持っていらっしゃい。あたしの家、教えるから」

心臓が喉の奥で跳ねた。意味を掴むまでに、何度も文面を読み返す。彼女の家。あの梨紗子が、自分の領域へ招き入れるというのか。これまで一方的に踏み込まれ、支配される側だった徹の胸に、初めて手渡された鍵のような、あたたかくて鋭い動揺が刺さった。それから気づく。後孔のバイブが、次第に強く存在を主張している。彼女に触れられなくても、この体はすでに命令に縛られていた。尻を締めると、奥がじゅぷりと水音を立てる。散歩から帰ってからずっと、腸の襞が異物を搾りつけるように蠢いている。夕飯を作って持っていかなくては。梨紗子の家へ。彼はゆっくりと腰を上げ、壁に手をついて立ち上がった。輪ゴムをもう一度ポケットへ押し込み、空っぽの冷蔵庫を開ける。

庫内に残っていたのは、青ネギ、卵が三つ、半端に余った豆腐、それから昨日炊いた冷や飯の塊。梨紗子のあの濃厚な献立には到底敵わないが、今の徹に作れる精いっぱいの品を並べるしかない。彼は冷や汗が滲む背中を自覚しながら、まず米を研いだ。指先が水に触れると、ほんの少し体の火照りが遠のく。研ぎ汁を捨て、釜に米と水を張る。次に青ネギを小口に刻み、解した豆腐と溶き卵を準備する。味噌汁の出汁は、冷蔵庫の端に残った顆粒出汁の袋を探り当てた。包丁の音が、しんとした台所に小さな律動を作る。刻んだ青ネギの青い匂いが鼻をくすぐった。ガスに火が点り、油の香りが浮き上がる。卵が薄く焼ける匂い。豆腐を崩して味噌汁に落とすと、湯気の味が立ち上った。

出来上がったのは、冷や飯を炒めた青ネギと卵の即席炒飯、そして豆腐と青ネギの味噌汁。彼はそれを重箱へ詰め、清潔な布巾で包んだ。梨紗子が来て作るものには遠く及ばない。けれど、自分が誰かのために夕飯を拵えたのは、何年ぶりだろう。たった二品で、しかも店屋物よりも素っ気ない。腹の底から、情けなくも誇らしいような、くすぐったい泡が込み上げてくる。彼は包みを抱え、アナルのバイブを抜くべきかどうか迷った。梨紗子はいつも、彼の隠し事をすぐに見抜く。わざわざ教えずとも、この体内の異物は彼女に捧げるために入れたままでいるべきなのかもしれない。彼は下着を直すと、バイブのぬるい重みを胎の奥に抱えたまま、玄関の靴を履いた。

外はすでに青い宵闇が降りかけていた。送られた地図を頼りに、大通りから一本入った古いアパートの階段を上る。手すりの塗装は剥げ、外灯の下で階段のコンクリートが白っぽく乾いていた。約束の号室の前で、彼は深く息を吐く。何度か胸を押さえ、震える指でインターホンを押した。

少しの間があって、ドアが開く。立っていたのは、スーパーの制服ではなく、くすんだ花柄の部屋着を着た梨紗子だった。薄化粧の顔は夕方の光を奪われて、輪郭が柔らかく沈んでいる。髪は解かれ、黒い束が白い首筋に幾つも張りついていた。彼女のふくらんだ乳房が、薄い部屋着の布地を内側から押し上げている。

「へえ。ちゃんと来られたじゃない。夜、外歩くの、久しぶりでしょ」

「はい。……お邪魔します。あの、作りました。見よう見まねで、こんなものしか」

包みを差し出す手が、わずかに震えた。梨紗子はそれを受け取ると、火照った紙包みの重みを両手で量るようにして、ふっと鼻で笑った。

「中身は後でね。どうぞ、入って。靴、ちゃんと揃えるのよ」

徹は背中を熱くして、上がり框で靴を揃えた。部屋は六畳一間だった。狭い台所には流しと古いコンロがあり、その横に化粧品の瓶が無造作に置かれている。フローリングの茶色が擦り切れ、窓際の折り畳みベッドのマットレスには薄い毛布が丸まっていた。壁際の物干し竿に、洗い立ての下着が几帳面に掛けられている。水色のレース、紫の透けた布、真っ黒な細い紐。どの布も薄闇の中で湿気を放ち、甘やかな洗剤の匂いが鼻先へ届く。自分の知っていた梨紗子の部屋は、スーパーの制服の中で秘密裏に脈打つ女の匂いそのもので、徹はまともに顔を上げられなかった。

彼女は卓を片付けると、重箱の包みを開き、目をほそめた。

「あら。意外とちゃんとしてる。味噌汁も、青ネギと豆腐が無駄なく入ってるじゃない。卵の炒め加減も、これなら食べられるわ」

「お口に合うか……わかりませんが」

「味は食べてからよ。あんた、今夜は、あたしの家で食べるの。そこに座って待ってなさい。茶碗と汁椀、今出すから」

梨紗子は狭い台所に立ち、炊飯器の横から器を取り出す。彼女の太い腰が動くたび、ぱりぱりと擦れる化繊の衣擦れ音がした。炊飯器の蓋には米粒がひとつこびりつき、蛇口の根元に乾いた水垢が白く残っている。積み重ねられた洗い物の表面で、天井の蛍光灯が丸く反射した。完璧な支配者の台所ではない。だが、だからこそ、彼女の生きた年月が剥き出しで並んでいる。徹の胸はしめつけられ、目頭がじんと熱くなった。彼女が誰かと暮らした痕跡が、ここには静かに沈んでいる。二人の子どもを育てた女が、ひとりで夜を迎える部屋。それを見せてくれたことが、どんな愛撫より彼の奥へ沁みた。

やがて温め直された炒飯と味噌汁が、二人分、小さな卓の上に並ぶ。湯気が立ち上り、窓ガラスを薄く曇らせた。梨紗子が味噌汁を一口啜る。彼女の唇が汁に触れ、ちいさな吐息が湯気の中へ落ちた。

「……悪くない。あんた、あたしのいない夜も、これで飢え死にしないで済むわね」

「うまくできたか、ずっと不安でした。だけど、自分で作って、こうして上田さんの前で食べてもらうのが……へんな話ですが、今日の一番の目的みたいでした」

「あたし、何も教えてないのに勝手に覚えて。……世話のかかる男だこと」

梨紗子が、薄く笑った。その笑い声が、乾いた小さな部屋の角でくすぐったく反響する。徹はスプーンで炒飯をすくい、口へ運んだ。青ネギの苦味と卵のまろやかさが、硬い米と一緒に潰れて広がる。彼は何度も噛みしめた。ここは自分の家ではないのに、梨紗子が同じ空間で夕飯を食べている。それだけで、腹の底から体温が湧く。食卓の下で、彼の後孔に呑まれたバイブが、彼自身の脈に合わせてぬくぬくと揺れた。全身が、内側と外側から同時に満たされていくようだった。

食事を終えると、梨紗子は食器を流しへ下げ、窓の鍵を確認した。彼女は洗面所へ行き、ややあってから戻ってくる。口を漱いだのか、歯磨きの残り香が、ひんやりした空気の中に浮いた。彼女は折り畳みベッドの端に腰掛け、徹を手招きした。

「ここへ来て、あたしの膝に触りなさい。……違う。いきなりじゃなくて、ちゃんとわきまえて」

徹は這い寄るような歩みで近づき、彼女の足元に座った。部屋着の裾から、洗い石鹸の匂いが染みた太ももの肌がこぼれる。彼はそっと、彼女の右の膝頭を指でなぞった。生温かい。梨紗子の膝は、働く女の固い骨と、女の柔らかな脂肪が一つの曲線の中に混ざっていた。

「あんたさ、バイブ、入れたままでしょ。歩くの、辛くなかった?」

「……途中で抜くことはできませんでした。あなたに言われたわけでもないのに、私、外すのが惜しくて」

「馬鹿ね。……でも、今日は特別だから、そのお尻の穴、もう少し飲ませててあげる。代わりに、その手を見せて」

梨紗子はポケットから、スーパーの袋に紛れていたのだろう、黄色い輪ゴムを数本取り出した。今夜は家に呼ぶと決めていたから、職場からわざわざ持ち帰ったのだ。彼女は徹の両手首を重ねさせ、きつく撚った輪ゴムを、何重にも巻いていく。ゴムが皮膚へ食い込む感覚が、筋肉の上でじりじりと鳴く。束ねられた指先が、震えながら互いをもみ合った。

「ベッドに仰向け。……寝なさい」

ベッドのスプリングが体重を受け止め、きしむ。彼女は部屋着の前を脱がず、まず下着を脱ぎ去った。布が肌から離れる音が、徹の耳の間近でささやく。彼女がベッドの上に片膝を立て、片足をまたいで乗り上げる。跨ったまま、梨紗子は身を屈め、徹の服をひとつひとつ脱がしていく。したたかに汗の染みたシャツを剥ぐと、閉めた窓のせいで酸欠の鳥のように、彼の浅い呼吸が白く跳ねた。

「今夜はね、あたしが食べさせてやるんじゃないの。あんたが食卓を用意して、あたしはそれを受け取った。……だから、もっとすごいこと、教えてあげる。あんたの一番深いところと、あたしの一番深いところを、つなぐのよ」

梨紗子の低い声は、台所の卵の焦げる匂いまで吸い込んで湿っていた。彼女は下着を取ったまま、膝を進めて、彼の口元へ腰を近づける。夜の陰影の中で、彼女の陰毛は黒い川の流れのようにうねっていた。茂みの下から、ふっくらした肉が開き、柔らかい鈴口のような襞が覗いている。あの生々しい匂いが、蒸れて、甘く、徹の思考を手放させる。まだ何も始まっていないのに、彼の舌は唇の裏で唾液を溜め、浅く喘いだ。

「綺麗に舐めなさい。あんた、そういう舌を持ってるんだから、静かに、ゆっくり、あたしの場所を味わって」

彼女の指が後頭部を掴み、押しつける。徹は口を開け、まず太腿の内側に舌を這わせた。汗ばんだ皮膚の下で、青い血管が浮いて吸いつく。肉が熱い。それから、おずおずと中央の裂け目へ顔を沈める。唇が襞の外唇に触れた瞬間、ぬるりとした液が彼の口元へ溢れた。ぐしゅ、と唾液と愛液が混ざる。彼女の腰が、上から光を受けた蛇のように動く。舌を縦に割って、奥の入り口を柔らかく叩く。上の肉粒を唇で包んで吸うと、梨紗子の内腿がぴくりと跳ね、彼の耳を太い肉で挟んだ。

「ん……くう……っ、上手。そうやって吸われると、あんたの口の中まで全部、ぐしゃぐしゃになる。……あたしの汁、ちゃんと味わってる」

彼女の腹が、彼の鼻先で小さく波打つ。むちむちとした腰が前後して、彼の舌に粘膜の襞をこすりつける。徹は口をいっぱいに開き、熱く柔らかな穴の入口を舌で掻き回した。ぐちゅ、ぷちゅ、と粘液が泡立ち、顎の裏へ流れていく。首に食いこむ彼女の指が、彼の頭を逃がさない。目蓋の裏に、暗い部屋の中の蛍光灯の残像が揺れていた。目の奥は汗と涙で滲み、彼女の下腹部がぼんやり光って見える。

梨紗子が不意に腰を浮かせ、徹の舌から身を離した。夜の水音が、二人の間でぴちょんと途切れる。荒い息のまま、彼女はベッドの上で立ち膝になると、汗をぬぐい、うつ伏せになった徹の身体をつま先で軽く押した。

「うつ伏せになって、腰をもちあげなさい。肛門のふち、あたしの指で広げる。バイブを抜いたら、もっと深いもの、入れてあげる」

言われるがまま、徹は寝具に爪を立て、腰を突き上げた。彼女の指が、ビニルの手袋でもはめたようにひんやりしたぬるい油を、窄まりの縁へ塗りつける。それから、小さな円を描いて揉む。後孔が勝手にひくひくと開閉して、中のバイブを押し出そうとする。梨紗子はくすりと漏らして、突起の根元を掴み、ゆっくり、引き抜いた。抜かれた腸が、あとに残る熱へすがるように収縮し、徹の喉奥から「うぅ」と粘った叫びが漏れた。

「……ごらん、こんなに開いてる。あんたの穴、あたしのかたち、覚えてきてるわよ」

何かを取り出す音。金属の留め具が打ち合う、濡れた夜の輪郭。彼女は硬いものを、彼の窄まりに冷たく当てた。大きい。バイブより、ずっと太く、ずっと重い。梨紗子が指で入口を揉みほぐし、括約筋をくつろげた。ぐ、と圧がかかる。徹は歯を噛み殺し、額の汗をマットに押しつけた。彼女の掌が彼の尻肉を掴み、白い柔らかい指が食い込む。それが、自分の彼女の手だと思うと、奥の羞恥が熱に変わり、体の芯がずぶりと沈んでいく。

「入れます。もっと、そのお尻で呼吸しなさい」

はじめは冷たい。次に熱い。最奥へ届く太さが、内臓を裏から開くようで、徹の口から酸欠の魚のような息が流れた。彼女のものが完全に埋まった瞬間、体の内から見えない釘を打たれたように、彼の意識はぐらりと揺れた。肛門の入り口が彼女のものを根元まで咥え込んで、中で拍動のように締まった。

「……良いわ。この場所が、あんたの一番深いところよ。あんた、もう、あたしなしで夜を作れない体でしょう」

梨紗子は汗ばんだ白い胴を彼の背中へ重ね、彼の耳へ胸を押しつける。吸いつくような二つの肉の重み。温かい息が、徹の項を打った。彼女は挿入したものを抜き差しし、執拗に前立腺を擦り上げる。どちゅ、くちゅ、と濡れた腸が引き攣れる音。徹は両手首の輪ゴムを食い込ませ、涙と涎で顔を歪めた。彼の陰茎は、触れられもしないのに張り詰め、浅黒い下腹へ先走りを飛ばしていた。

「あっ、ぅう……そこ、おなかの、おく……上田さん、ぁ……わたし、もう、なにも……」

「なにも、じゃない。あたしのものになってるんだから、あなたの失くなる世界で、一緒に落ちなさい。……ほら、いくよ。あたしの中まで、あんたの奥をぶつけて」

梨紗子は更に速く腰を使った。ベッドはリズミカルに軋み、窓の下で虫の音が狂ったように鳴いていた。壁に掛かったスケスケの下着が、二人の生む熱気で揺れる。煮え切った空気の中で、炒飯と味噌汁の匂いが薄く消えていく。涙の味が口の中に滲んだ。

「徹さん、あんた、あたしのものになったね」

絞り出すような彼女の声が、頭上から降ってきた。徹は喉を反らし、自分の一番深いところを彼女に貫かれながら、涙と一緒に笑う。

「はい。……私の身体も、夜も、全部、上田さんのものです」

声はとぎれとぎれだった。梨紗子は息を押し殺し、最後の数回、激しく彼を揺さぶる。徹の前立腺が圧さえられ、彼女の掌が腹の下へ回って、張りつめた陰茎を根元から搾り上げた。輪ゴムで縛られた両手の代わりに、彼女の指が真っ白な快楽を導く。射精は二人の汗の中で起こった。どく、どくと熱い液が彼女の指の谷を伝い、シーツへ重たい花を咲かせる。同時に、彼の体は激しく跳ね、意識の縁がぴかぴかと火花を散らした。梨紗子もまた、長い吐息を飲み込みながら、ゆっくりと体を倒して彼の背中にしがみついた。

呼吸が、少しずつ静まる。互いの液と汗と吐息が、湿った空気の底に沈んでいく。徹は両手首に食い込んだ輪ゴムの火照りと、彼女が離れた後の窄まりの、失われた余韻を感じていた。彼の体には、妻が出て行ったあの春以来、長く渇いていた何かが満ちていた。

夜明け前に目を覚ましたのは、台所から流れる湯気の匂いのせいだった。梨紗子が起き出して、味噌汁を温めている。彼女の影が、薄青い窓の向こうでゆらゆらと動いていた。徹は身体を起こし、まとわりつくシーツを這って窓へ近づく。初めて開いた窓から、朝の空気が滑り込んだ。乾いた魚の骨と、近所の排水溝と、土のにおいが、かすかな夜明けの風に混じる。梨紗子が振り返り、卵を割った。殻の割れる音が、台所で軽く弾けた。彼女の部屋着の背が見える。あの背が、徹の夜を仕舞い、朝を温めてくれる。手首の輪ゴムはもう外れていたが、その痕は赤く、彼の人生に刻まれた環のように残っていた。

やがて、卵焼きの甘い匂いが流れてくる。徹は窓を閉め、台所へ向かった。梨紗子が指先で、白い皿の縁をそっと持ち上げた。

徹は黙って、その皿を受け取り、椅子を出した。陽が昇り、磨りガラスの向こうで朝が白く広がっていく。彼の腹から、空腹が静かに、しかし確かに湧いてくるのを感じた。生きる匂いだった。

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読み終えたあとの余韻に。

OVA 夏妻 #2 を FANZA で見る →
登場人物
  • 三島徹 みしま とおる
    男性 ・ 65

    外見: 白髪交じりの無造作な短髪、無精髭、落ちくぼんだ茶色の瞳、猫背、痩せた体躯、身長175センチ。服装: くたびれたジャージ、伸びきったTシャツ、サンダル。定年間近で妻美冴に熟年離婚を突きつけられ、無気力に引きこもる日々を送る。梨紗子の支配の中で、自分が誰かに必要とされる快感を初めて知る。控えめで真面目。一人称は「私」。上田梨紗子を「上田さん」と呼ぶ。語尾は「〜です」「〜ます」の丁寧語だが、命令されると「は、はい」と詰まる。動揺すると声が掠れ、本気で感じると「すみません、すみません」と同じ言葉を繰り返す。反応は鈍いのに感度だけは良く、触れるたびに身体が跳ねる。濡れ場では羞恥に喘ぎながらも、梨紗子の体を求めるのをやめられない。

  • 上田梨紗子 うえだ りさこ
    女性 ・ 45

    外見: 黒髪を後ろで一つにまとめた低めの位置、切れ長の二重まぶた、色白、ふっくら肉感的、身長162センチ。服装: スーパーの制服エプロン、私服では安物のフレアスカート、胸元の開いた薄いニット、スケスケの下着。2人の子を育て上げたシングルマザー。明るく世話焼きな顔と、相手の弱みを見抜き支配するサディストの顔を併せ持つ。徹のような弱った男の性癖を嗅ぎ当て、愛おしむように虐めて、手料理と過激なプレイで心身を満たしていく。一人称は「あたし」。三島徹を「徹さん」と呼ぶ。語尾は「〜よ」「〜でしょ」「〜なさい」と親しげで上から目線。世話焼きモードでは早口で畳み掛け、プレイでは一転して低く落ち着いた声で命令する。からかうときは語尾に小さく笑いを含み、本気で叱るときはため息をつく。怒鳴るより静かに突き放すほうが多い。

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