隣の部屋で聞く妻の嬌声と絶頂

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第5章: 隣の部屋で啼く夫と、新しい主人

第5章のシーン

第5章: 隣の部屋で啼く夫と、新しい主人

あの夜から、木下家の時間は、ねじ曲がってしまった。

壁に掛かった時計は秒を刻んでいるのに、部屋の空気は粘着質の蜜のように絡みつき、まるで沼の底で腐敗していくかのように澱んでいる。剛力刀也が来ない日、家は異様な静寂に包まれるが、それは安どなどではなく、次の訪れを待ちわびる、湿っぽい期待感に満ちていた。雅恵は、そんな歪んだ日常に、すでにその身と心を慣らしていた。

台所では、もう裕二の好物である優しい味噌汁の香りはしない。献立は、もっぱら剛力が好む、塩と脂に満ちた濃厚な肉料理、そして彼の地元である九州の、がつんとくる郷土料理だ。その日も、雅恵はエプロン姿で豚骨のラーメンを自前で作っていた。濃厚な白濁したスープの湯気が立ち上り、獣の脂と骨の匂いが家中に充満して、裕二の胸を締め付ける。

その匂いは、もはや家庭の温かさなどではない。ただ、男の獣欲を満たすための調度品が発する、けばけばしい匂いだった。

玄関のチャイムが鳴ることは、とっくになくなっていた。

カチャリ、と乾いた鍵が開けられる音が、裕二のいる書斎の薄いドアを突き抜けて脳に響く。ただいま、という声もない。ただ、重い革靴が乱暴に脱がれる音と、床を威圧するような、自信に満ちた足音がリビングに向かっていく。裕二は書斎の椅子に子供のように縮こまり、息を殺した。隣のリビングから、雅恵の、蜜を含んだように柔らかな声が聞こえる。

「お帰りなさいませ、剛力様。お風呂、ちょうど沸きましたから」

「ああ、悪いな。今日はくそ疲れた」

剛力様。その呼び方に、裕二の心臓がえぐり取られるような痛みを感じた。妻が、他の男を、まるでこの家の唯一の主人であるかのように呼んでいる。その声には、かつて自分に向けられた温かさとは全く違う、隷属と、そして見えない鞭を恐れるような媚びが混じり合っていた。裕二は顔を両手で覆った。指の隙間から、漏れ聞こえてくる会話が、彼をさらに深い絶望の淵へと突き落としていく。

「うまい、ご馳走様だ。今日のも最高の味だぜ、雅恵。お前の作る飯は、やっぱり一番だ」

「……嬉しいです。もっと、たくさん食べてもらわないと」

「そうだ。その後で、たっぷり運動させてくれるからな」

その言葉が持つ、あからさまな性的な含意。裕二は、それが自分の妻に向けられているという事実に、胃が腑に落ちるほど捻れるような悪寒がした。食事の後、二人が寝室に向かう足音。そして、ドアが静かに、しかし決定的に閉まる音。それが合図だった。裕二は、ぐにゃりと椅子から崩れ落ちるように膝をつき、汚い音を立ててズボンのファスナーに手をかけた。

隣の部屋から、聞こえてくる。

まず、衣ずれの、じゅりじゅりという音。そして、雅恵の、小さく漏れるような、甘い吐息。ひくっ、と布団が大きく揺れる音。裕二は、自分の陰萎したようなペニスを無理やり掴み、ぐりぐりと痛々しくこすり始めた。屈辱だった。しかし、この屈辱なしには、もう自分は興奮できないのだと、彼は悟っていた。

「んっ…あ、ああっ…!」

雅恵の声。それはもう、苦痛や抵抗の色など微塵もない。ただ、純粋な快楽に蕩けきった、牝の啼き声だった。ずっぽずっぽ、という、下品で生々しい音。あの巨根が、妻の膣内を容赦なく蹂躙している音だ。裕二は、その音を耳に焼き付けながら、自分の弱小で頼りないペニスをしごく。指先から伝わるのは、あの男のものとは比べ物にならない、哀れな硬さだけだ。

「そうだ、その声だ。もっと大きな声で、啼いてみろ」

剛力の、低く、支配的な声。裕二は、その声を聞くたびに、体中が羞恥で熱くなるのを感じる。自分の妻が、目の前で、他の男に啼くように命じられている。その状況が、彼の歪んだ欲望を煽り立てる。

「ひゃんっ!だめぇっ!そんなに、奥を…!ああんっ!」

「お前は、俺のモノだ。この膣も、この子宮も、全部俺のものだ。そうだろう?」

「はいっ!…あなたのものです…!剛力様の、膣です…!」

その告白を聞いた瞬間、裕二の頭が真っ白になった。妻は、もう自分のことを何一つ考えていない。ただ、あの男に奉仕し、その快楽に溺れることだけを求めている。その事実が、絶望であり、同時に、彼のオナニーを加速させる最後のスイッチだった。じゅるじゅる、という、より激しい音。ベッドがきしんで軋む音。雅恵の甲高い嬌声が、連続して響き渡る。

裕二は、片手で冷たい壁に突っ立ちながら、必死に腰を動かした。隣の部屋で繰り広げられる、夫婦の寝室での情事。その音は、もはや耐え難い拷問ではなく、彼の日常そのものだった。彼は、妻の絶頂の声を合図に、自分の掌の中に、惨めな量の白濁液を吐き出した。ぴちゃり、という小さな音が、書斎の静寂に消えた。

やがて、隣の部屋の音が静まる。

しばらくすると、雅恵の、それまでとは全く違う、満ち足りたような、小さなため息が聞こえた。裕二は、汚れた手を拭うこともせず、そのまま床に座り込んだ。寝室のドアが開き、雅恵が一人で出てくる。彼女は、裕二の方を一瞥するが、その目には何も映っていない。まるで、部屋の隅に置かれた家具を見るような、無関心で冷たい視線だ。彼女は水を飲みに台所へ向かい、再び寝室へと戻っていく。その背中には、もう妻としての温もりも、女としての恥じらいもなかった。ただ、一頭の雌が、自分の所属する縄張りへと帰っていく、そんな姿だけがあった。

木下家は、もはや木下裕二の家ではなかった。

新しい主人と、その忠実な雌。そして、その隣の部屋で、絶望の音を慰めに自らを慰める、元夫。歪んだ形ではあるが、この三人の新しい関係は、この夜を以て、不動のものとして確立されたのだった。

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AIが紡ぐ大人の官能短編『妄想ノベル』案内人です

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