⌂ トップ

【平成物語】テレクラで拾った34歳人妻とはじめての密会は「入れないで」と震える唇を無理やり貫き中出しするまでの昼下がり

不倫/浮気 全5章 約52分で読了(25,855字) 新着 短編 2026年9月11日

あらすじ

テレクラで知り合った三十四歳の人妻は、電話口で「一度だけ」と囁いた。土曜の駅前で待ち合わせた彼女は、俯きながら「やっぱり怖い」と震えている。その手を引いてホテルへ向かう。部屋の中では何度も「入れないで」と拒みながら、身体だけが正直に反応していく。決心なんて、最初からできていない。それでも私は彼女を抱いた。週に一度、半年間。遊びのつもりが、いつのまにか逃げられなくなっていたのは私のほうなのかもしれない。

第1章 「決心付いてない」と震える声

第1章のシーン

第1章: 「決心付いてない」と震える声

夜の十時を回った頃だった。俺は風呂から上がって、冷蔵庫から缶ビールを取り出したところで、机の隅に置きっぱなしだった一枚のティッシュを思い出した。電話番号と、女の偽名らしき走り書きが滲んでいた。テレクラの会員証は薄いピンク色で、安っぽいラミネート加工がされてあって、財布のカード入れからはみ出している。何の気なしに受話器を取って、番号を押した。夜のテレクラは当たり外れが大きい。大抵は事務的な声の女か、金目当ての空々しい囁きばかりだ。

だが、三回目のコールで出た声は、明らかに勝手が違っていた。若さを売りにした作り声ではなく、電話越しでも分かるほど空気を含んで、たどたどしく「もしもし」と落としてきた。

「もしもし。えっと、初めてなんだけど、これで合ってるのかしら」

三十四歳の主婦。祐子と名乗った。声は柔らかく、しかし夜の電話には不慣れな気配がこもっていた。俺は川島悟という偽名を使った。年齢も、職業も、適当に盛った。農協の職員だと告げると、彼女はほっとしたように小さく息を漏らした。農協と聞いて、誠実そうだと思ったのだろう。実際には農家のことも、職員の仕事のことも何一つ知らないのに、田舎の真面目な男を演じるのは容易だった。

会話は途切れずに続いた。笑えそうなほどくだらない話ばかりだったが、彼女はその愚にもつかない話題に丁寧に相槌を打った。夫と二人の子供がいること。長年、夜の営みはなく、触れられることすらなくなって久しいこと。最初は冗談まじりに話していたのに、近況に踏み込むにつれて声のトーンが一段低くなり、言葉の速度も遅くなった。受話器の向こうで、時おり沈黙が降り、かすかな吐息だけが湿りを帯びて届く。女が自慰をしている気配はなかった。それどころか、膝を抱えて、暗い部屋で電話口に額を寄せている姿が浮かぶようだった。

「ティッシュの広告、たまたま見つけてね。本当に、こんなことする人っているのかしらって」

その言い方が妙に生々しかった。好奇心だけではない、腹の底に古い欲望が澱んでいるのが電話越しに染み出す。俺は二本目のビールを開けながら、壁にもたれた。安宿の内線みたいな臨場感のない会話が、女の湿度を含む声だけで、ねっとりした密室に変わっていく。俺は身体の向きを変え、声を低くした。

「話してるだけでも、そっちは結構きてるんじゃない」

祐子の返答は、息を呑むのに近い一秒の間だった。

「いや……違うの、私はただ、話をしてみたかっただけで」

そうやって言い訳をするのに、声は心なしか上ずり、語尾が飲み込まれていた。沈黙のあとに甘い欠伸のような吐息が零れる。その不揃いな音を耳の奥で転がすと、俺の下肢にもじんわりと熱が滲んだ。これは使える。いや、もっと手間をかけても惜しくない、丁寧に堕とす甲斐のある女だと思った。

翌日、俺は農協の職員らしく装って、祐子の自宅へ電話を掛けた。番号を教えるときに、彼女はしきりに確認を求めた。旦那が出たら、適当な営業のふりをして切ってくれと、消え入りそうな声で念を押す。祐子が出た瞬間、電話口の空気が昨日のそれとはまったく違って、生活の物音に包まれていた。昼前の家の中が、そのまま受話器に流れ込んでくる。洗い物の乾いた音、どこかで時計が秒を刻む音。昼ドラの笑い声も沈黙に混じった。

「昨日の続き、話せないかと思って」

俺が静かに切り出すと、祐子は数秒、息を潜めた。

「あの、やっぱり……電話番号教えたの、少し後悔してるの。本当に、私みたいな女と会って、どうするの。何にもいいことないわ」

声は心底戸惑っていて、それでいて受話器を握る手の力が伝わるようだった。俺は焦らず、低く笑う。

「四十過ぎのおばさんならいざ知らず、祐子さん、三十四だろ。まだ全然いけるって」

「やめて、そういうお世辞、余計に怖くなるの。……夫に内緒で、男の人と会うなんて、したことないし」

言葉とは裏腹に、宥めれば決意が揺れる手応えがあった。俺は会って話をするだけだと繰り返した。身体には触れない。だが、こういう女は口先の約束と後悔を抱えながら、当日には必ず来る。土曜の昼前、新岐阜の駅前で待ち合わせる算段をつけると、祐子は深いため息のあとで、かすれた声を絞り出した。

「一回だけよ。……会って、話すだけだから」

その受話器を置くまでの間、彼女の家の空気が耳にまとわりついた。洗剤の匂いまで漂ってきそうな、平凡で退屈な主婦の午後。そのど真ん中から、女だけが夜の沼に足を踏み入れてくる。俺は冷めたビールの最後の一口を流し込み、自分の鼓動がわずかに速くなっているのを感じた。

土曜日。四月の半ばだというのに、昼前の駅前は妙に肌寒く、風がアーケードの柱に埃を巻いていた。俺は黒いライダースジャケットを羽織り、色褪せたジーンズのポケットに手を突っ込んで、ロータリーの脇に停めた車にもたれていた。行き交う買い物客の群れを、何とはなしに眺める。

最初に目に入ったのは、花柄のロングスカートだった。風に裾をふわりと揺らし、迷うように歩道の切れ目で足を止める。俺の記憶にある声より、ずっと小柄で頼りない。肩下までの黒髪を後ろでゆるく結び、生成りのセーターが胸元から腹まわりにかけて柔らかい曲線を浮かせていた。垂れがちな茶色い瞳が、車の前で待つ俺を捉えると、すぐに下を向く。迷子の子供みたいに、引っかかった歩幅で、それでも確実にこちらへ近づいてきた。

近くで見ると、顔は悪くなかった。いかにも、アパートの夕方に立っていそうな可愛らしい奥さんだ。目尻に年齢の気配はあるものの、頬から顎の線はつるりと張りがあって、口元は結んでいなければ愛想がよさそうに微かに上がっている。セーターの下に確かな膨らみがある。男の蛇口をひねるための女体が、生活の匂いをまとって俺の目の前に立っていた。

「あの、……悟さん、ですよね」

祐子の声は電話よりもずっと小さく、ロータリーの騒音に食われかけていた。

「わざわざ来たんだ。乗りなよ」

俺が親指で車のドアを示すと、祐子は黒いパンプスの爪先を何度か揃え、後ろを振り返った。駅の方に引き返すか迷うように唇を湿らせ、それから意を決した顔で助手席に滑り込む。バッグを両手で抱え込むように膝の上に置き、肩から斜めに掛けた細いベルトにまで力がこもっていた。

車のエンジンを掛けると、排気の音が体の芯まで響いた。俺はクラクションを指で二度叩き、混雑するロータリーをゆっくりと抜けた。隣で祐子は、窓の外を流れる駅ビルの影をじっと見ている。首筋に後れ毛が一筋かかって、それが呼吸のたびに揺れた。耳の産毛まで透けるほど肌が白い。化粧は薄く、鼻先と頬が寒さで少し赤くなっている。擦り寄せたくなるような体温が、四十センチの距離の向こうにあった。

「今更だけど、来るの、やめようって、途中まで思ってたの」

祐子が唐突に呟いた。眼鏡をかけたさばらない中学生みたいな、情けない声だった。

「来ちゃったじゃんか」

俺は軽く笑う。

「電話番号教えたの、少し後悔してるし……やっぱり、貴方みたいに若い人と、私みたいなのが二人で会うって、怖いの」

「若いって言ったって、祐子さんもまだ若いじゃん。気にすんなよ」

信号で車が止まると、隣の座席からふわりと柔軟剤の匂いがした。洗い立ての布に混じった、ほんのわずかな汗と、女の耳の後ろに残っていそうな香り。俺はハンドルを両手で握り直し、前を向いたまま唇を舐めた。

「想像より綺麗だったよ、祐子さん。女として全然いける」

「……そういうの、慣れてるのね。私、ドキドキして、何にも考えられなくて」

「分かるよ。それはこの車ん中まで染みてきてる」

本当に、身体の奥までどくどくと血が巡っているのが分かるようだった。シートベルトの上からでも、胸の膨らみは自己主張していて、柔らかそうな肉の質量を主張していた。女の決心だの浮気の言い訳だのに付き合う気は毛頭ない。車は西へ進路を取る。新岐阜の駅前から数分、ホテル街までは、車ならすぐだった。

俺は片手でギアを入れかえ、交差点を見据える。隣では祐子が、両手でバッグを握りしめたまま、窓の外の見知らぬ景色に視線を泳がせている。逃げ出すなら、今のうちだぜ、と心の中で呟きながら、俺はアクセルを踏んだ。

第2章 ホテルの部屋で崩れる「入れないで」

第2章のシーン

西へ向かう車線はがら空きで、信号に捕まるたびに隣の女の緊張がシート越しへじんわりと沁みてくる。祐子は膝の上に載せた黒い合皮のバッグを両手で握りしめ、シートベルトの肩紐に指をねじ込むようにして前だけを見つめていた。爪の先が白く変わるほど力が入っていて、それでいて顔の下半分には薄い笑みのようなものが貼りついている。平静のつもりなのだろうが、顎の輪郭が時折ひくりと痙攣するのを、俺は交差点の右折待ちでちらりと盗み見た。

駅前の大きな交差点を抜けると、景色がにわかに色を失う。チェーン店のけばけばしい看板が途切れ、窓の少ない雑居ビルが車道の両側へ灰色の壁を迫らせてくる。昼前の陽射しがフロントガラスを斜めに貫いて、祐子の首筋に薄い汗の膜を浮かせていた。その汗が光を吸って、白い肌がうっすらと青白く透ける。ほんのりと塩気のある女の肌の匂いが、かすかな柔軟剤の残り香の下から立ちのぼり、俺の鼻腔の奥をくすぐった。俺は片手でハンドルを切りながら、唇の内側を噛む。左の奥歯に、じわりと唾液の味が滲んだ。

「あの、やっぱり私、車、降ろしてほしいの」

祐子の声は空気の底を這うようだった。ロータリーの電話越しに聞いたどの声より細く、語尾が擦り切れてかすれている。

「今更なに言ってんだよ。もう着くぞ」

「だって、本当に、何もするつもりなんてなかったの。私、こういうの初めてだし、家に帰らなきゃ」

言葉を紡ぐ間に、彼女は何度も窓の外へ視線を投げた。逃げ道を測る仔犬みたいな目つきだった。だが車は止まらない。ホテル街の入り口を示す、えんじ色の看板が前方にぶら下がっている。建物の壁に沿って植えられた低い植え込みが、昼の埃をかぶって灰色にくすんでいた。葉の一枚一枚がぐったりと裏返り、生ぬるい風に揺れるでもなく縮こまっている。

「ご飯だけなら、ほら、ファミレスでもいいでしょ。なんでこんなとこ」

祐子の指がシートベルトを握り直した。ベルトの織り目に爪が食い込む音が、微かに耳へ届く。俺は答えずにアクセルを緩め、左手のラブホテルへ車を滑り込ませた。表通りの騒がしさが急に遠のいて、駐車場の砂利を踏む音だけが車内に響く。壁に描かれた派手な西洋の城の絵が、昼の光の下ではやけに間抜けに見えた。尖塔の先で、一羽の鳩が羽を休めている。

「悟さん、私、無理。お金払うから、タクシー呼んで」

「そんな金あるなら、部屋代に使えよ。ほら、降りるぞ」

エンジンを切ると、一気に静かになった。祐子は助手席から動かない。ベルトを外した俺が回り込んでドアを開けると、外気が冷たく流れ込んだ。彼女の目が、涙の一歩手前で揺れている。白い首筋に張り付いた後れ毛が、空調の残り風でふわりと浮いた。艶のない黒髪が、呼吸に合わせて細かく震えている。

「手、痛くなるだけだぜ。そんなに掴んでたら」

俺は車の外から手を差し出した。祐子は迷って、それでも俺の手を取らなかった。自分でシートベルトを外し、バッグを抱え込むようにして、黒いパンプスの先を砂利の上に下ろす。立った拍子にふらついて、俺の袖を掴みかけた。本人は気づかないふりをしたが、指先の熱さが布越しに残った。見上げるような姿勢になった祐子とは、身長差が十七センチほどもある。彼女はすぐに下を向いて、不自然に距離を詰めたままエントランスまで歩いた。パンプスの踵が砂利を噛むたび、腰のあたりで花柄のスカートが不安げに揺れる。

部屋に入ってすぐ、祐子は入り口横の壁に背をつけた。服を着たまま、スリッパにも履き替えず、逃げられない場所に追い詰められた小動物みたいに肩を上下させている。部屋は薄暗く、常夜灯の朱い光だけがツインベッドの片側を照らしていた。空気は微かに甘ったるい消臭剤の匂いで、排水溝の奥からかすかに立てる流れる水の音が、間の悪い静けさを際立たせる。壁紙の織り目が、汗ばんだ視界の隅で妙にはっきり浮かんで見えた。

「やっぱり、帰る」

祐子の口が、ようやく吐き出したのはその一言だった。

「無理だって。ここまで来て、今から帰すわけねえだろ」

一歩踏み出すと、祐子の肩が壁に擦れる音がした。逃げる隙を探して、視線だけが部屋の中を泳いでいる。俺が手を伸ばして細い手首を掴むと、腕全体が強張って、骨ごと引っ張られるような硬さが伝わってきた。抵抗の力は弱い。されるがままになりそうなのに、皮膚の下の筋肉だけが、本能的に俺を拒んでぴくぴくと跳ねている。

「触らないで……お願い」

声は涙でふやけていたが、突き放す力はほとんど入っていない。俺は片腕を腰に回し、もう片方の手で祐子の後ろ髪に触れた。結び目の下の髪が汗で湿っていて、指先にねっとりと絡みつく。耳元に顔を寄せると、彼女の吐息が断続的にかかって、俺の首筋を生暖かく撫でた。

「電話で声、聞いてるだけで濡れてた女が、よく言うぜ」

「ちが……あれは、声だけだから、まだ良かったの。顔を見たら、やっぱり怖くて」

祐子が身を捩る。その動作で、生成りのセーターの下にある胸の質量が、俺の腕に柔らかく押し当てられた。太い針目で編まれた布越しでも、脂肪の弾力がはっきり分かる。俺は細い顎を指で上向かせ、唇を重ねた。彼女は唇を閉じたまま首を反らせようとしたが、次の瞬間、鼻から小さく甘い空気が抜ける。逃げる舌先を追いかけ、唇の輪郭を舐めるように塞ぐと、祐子の手のひらが俺の肩を二度、弱く押した。その押し返す手のひらが汗でしっとりと湿って、シャツ越しに熱い。

「ごめん、そんなつもりじゃないの……わたし、まだ、こころが、決まらないの」

濡れた唇を半分開けたまま、祐子は数秒かけて途切れ途切れに言った。何度も首を振る仕草が、かえって動物的で、男を煽っている自覚がない。俺は返事の代わりに、彼女の着痩せする体を抱え上げるようにして、壁から剥がした。パンプスが片方脱げて、スリッパのないフローリングに軽い音を落とす。そのままベッドの縁まで連れて行き、白い掛け布団の上に座らせる。間近で見る首元から、甘ったるい石鹸の残り香と、薄い汗の匂いが立ち上っていた。耳の裏の産毛が、常夜灯の朱に透けて光っている。

「決心なんて、来た時点でついてるんだよ。違うか」

言葉を噛みながら、俺は片手で祐子のセーターの裾を掴んだ。彼女が咄嗟に裾を押さえるので、二つの手が腹の上で絡まり合う。拒否の形なのに、押し返す指は俺の手の甲に触れるだけで、撫でているようにも見えた。その手首をどかして、セーターの裾から手を差し入れる。素肌に触れた瞬間、祐子の腹がひくりと波を打った。脇腹から背中へかけて、薄い湯気が立つような熱さが手のひらにまとわりつく。汗で肌が微かに湿っていて、指の腹が吸い付くようだった。臍の横に張りめぐる皮膚が、驚いたように小さく痙攣する。

「やだ……こんなの、私、ほんとに、ダメなの。うち、帰らないと」

「旦那に言うのか。男とホテルに来ましたって」

祐子の抵抗が、その言葉で一度だけ強くなった。両手が俺の胸を突き、腰を後ろへ引こうとする。脚を開いたままでは力が入らないのか、パンプスの残ったほうの爪先がシーツを蹴る音が二度響いた。

「言わない……言えるわけない……だから、お願い、このままじゃ、私、わるい妻になるの」

声が涙声に変わった。目尻から一筋、汗と混じった水が頬を伝って、耳の下の窪みに消える。俺はさらに深く手を入れて、背中のホックへ指を這わせた。ブラジャーの小さな金具を片手で摘まみ、捻るように外すと、布越しだった胸の締め付けがふっと緩むのを感じる。祐子が荒く息を吸った。肋骨のあたりが、吸い込んだ空気で大きく押し上がる。

「悟さん、やめて、まだ、ほんとに……こころの準備が……」

「準備できてる女は、こんな身体してねえよ。さっきから乳首、布の上から浮き出てるぜ」

実際、ニット越しに左の乳首が硬く膨らみ、淡い桜色の染みのように見え隠れしていた。俺の指先が下から胸の重みを持ち上げるようにすると、祐子はひときわ高い声を上げる。形のいい乳房が、外したブラの中で自由に揺れて、薄い肌着の下で熱を持っていた。セーター越しに伝わる乳首の硬さが、俺の掌にくっきりと刻まれる。

「あっ……やぁ、触らないで、あたし、もう……声、出しちゃだめなのに」

目を固く閉じて、祐子は自分の口元を片手で覆った。その手の隙間から、湿った息が断続的に漏れる。俺は肩の力を抜いて、その耳元へ唇を寄せた。

「声、我慢することねえだろ。二人きりだし、部屋代もったいないしよ」

迷いのない声で囁きながら、セーターの裾を一気に捲り上げた。祐子の肌が常夜灯の光を浴びて、白い腹から浮き出た肋骨の線までが艶めかしく浮かぶ。へその下に薄い産毛の影が走っていて、女の肌を直視した瞬間、目の奥が焼けるようだった。汗の匂いが濃くなり、鼻の奥に甘く絡みつく。

日頃から胸元をきつく締め上げているせいか、祐子の肌にはブラジャーの痕がくっきりと残っていた。肩紐の跡が柔らかい肉に深く食い込み、背中には鈎型の赤い筋が一筋、汗で光っている。丸一日、下着に支えられてきた乳房が、外された後もその重みを保ったままで、呼吸のたびにぶるりと揺れる。俺がまとめて鷲掴みにすると、指の先から白い肉が溢れそうになる。掌全体が、ねっとりと吸い付くように汗ばんだ肌にめり込んでいく。

「いや……お願い、悟さん、その目で……見ないで」

祐子は片腕で胸を隠す。指の隙間から、下着からはみ出した白い膨らみが溢れ、内側へ押し潰されて形を変えていた。自分の体を隠そうとする指が、逆に乳房の柔らかさを強調している。俺は強引に腕を外させ、露わになった双丘に両手をのせた。

掌に収まりきらない重い肉が、指の間にむにゅりと食い込む。母乳を含んだようにしっとりと熱く、表面にはうっすらと汗が滲んでいた。頂の部分は、洗いたての果実みたいな薄い乳輪に包まれて、色を濃くしている。子供を産んでいるからか、乳首は大きく、しこりを思わせる硬さで俺の手のひらを押し返してきた。乳輪の周囲に、小さな汗の粒がいくつも浮かんで、常夜灯の朱を一粒ずつ溜めている。軽く摘まむと、祐子の喉がのけぞり、閉じた口の奥から「んぅ」と押し殺した音が抜ける。

「乳首、こんなに硬くしてさ。触られるの、すげえ好きなんじゃねえの」

「やめて、そんな言い方……ああっ、そこ、強く、しちゃだめ……」

指で弾くように転がすたび、祐子の太ももが内側へ閉じようと動いた。黒い花柄のロングスカートの上からでも、その必死な動きは手に取るように分かる。逃げ腰のまま、それでも乳首を追ってくる胸の重みが淫らだった。掌の下で、汗ばんだ肌が音もなく滑り、むにゅりと指の股を締めつける。

しばらくして、俺は祐子を立たせると、力の抜けた身体を浴室まで引きずるように連れて行った。狭い脱衣所はひんやりとしていて、壁のタオルかけに使われかけの白いフェイスタオルが一枚掛けてある。祐子は鏡の前で両手を胸に当てたまま、うつむいて震えていた。蛇口をひねり、湯を張った桶から、透明な滴が床の黒い人造石に落ちて弾ける。俺は後ろから彼女のスカートのホックに手をやり、下ろして床に落とした。花柄のロングスカートが足元で厚い布の輪になった。

現れたのは、白いブラジャーと淡いベージュのショーツ。下着は上が白、下が淡いベージュで、特に勝負をしてきた気配のない、生活感に溢れたものだ。白いブラジャーは決して高価なものではない。中央のレースは少し黄ばみ、カップの縁を縁取る縫い目が洗濯でくたびれていた。淡いベージュのショーツは腹の下まで深く被さる、いかにも主婦らしい機能的なデザインで、前側には控えめなリボンが付いている。腰回りに淡いゴムの痕がついていて、長時間締めつけられていた皮膚が、そこだけ赤く、柔らかく凹んでいる。昼間まで家事をしていた女の体温が、そこから湯気のように立ち上っている気がした。

「どうしてこんなことに……私、子供もいるのに」

「いるから余計に、平日できないんだろ。土曜の昼に、こうして疼くんじゃねえの」

「ちがうの、違うの……私、そんな女じゃないの」

鏡の前に立たせたまま、俺は手を伸ばして石鹸を泡立てた。白い滑りが手の中で温かく膨らみ、固形の質感が消えていく。両手いっぱいの泡を、そのまま祐子の胸に押し当てて揉み込むと、さっきよりも鮮明に乳房の重みと乳首の硬さが返ってきた。泡の下で指を開くと、白い膜が割れて肌の色が覗く。その下で硬く尖った肉の粒を指で捏ねてやると、背中がびくんと跳ねた。

「お願い、止めて……石鹸、目に、入るから……」

祐子の抗議は、浴室の狭い壁に吸い込まれて、ほとんど喘ぎ声と区別がつかない。鏡に映った目と一瞬合うと、彼女はひどく卑小な顔をして、すぐにきつくまぶたを閉じた。湯気で曇りかけた鏡の向こうに、俺の肩越しに揺れる白い乳房が、うっすらと浮かんでいる。泡にまみれた乳首が勃起しているのが遠目にも分かり、糸を引くほど濡れているように見えた。

俺は下着のままの祐子を後ろから抱えると、泡まみれの両手を白いブラの中に滑り込ませた。湿ったレースが乳首に張り付いて、それを剥がすたびに祐子の肩が跳ねる。ブラのカップの中で肉がむにゅりと動き、石鹸の泡が乳首の先から垂れ落ちる。俺は鏡越しにその光景を見せながら、耳元で「ほら、自分で見てみろよ。乳首、こんなに尖らせて」と囁いた。祐子は「見たくない」と小さく首を振るが、鏡に映る自分の胸からは目を逸らせないでいる。泡が乳輪の周りにくっきりと白い環を作り、指が動くたびにそれが歪んで消えては、また新しい泡が生まれていく。

「こんな下着、何年も使ってるやつだろ。それでこうなるんだから、よっぽど身体が疼いてたんだな」

俺の言葉に、祐子は何も答えない。ただ、太ももの内側をゆっくりと擦り合わせ、白いブラが生々しい音を立てて泡を吸い込んでいく。

脚の間へ手を進めようとすると、祐子は初めて強い力で俺の手首を掴んだ。泡の混じった手のひらが水音を立てて滑る。

「そこは、待って、それ以上は、ほんとに、だめ……」

顔を真っ赤にして、腰をくの字に曲げている。しかしその膝は笑ったように小刻みに震え、閉じた脚の内側は汗でしっとりと光っていた。俺は狭い浴室で彼女を壁に押しつけ、片手で両手首を頭上にまとめて固定する。腹が彼女の尻に当たると、その肉厚な弾力が下着越しにも温かく返ってきた。空いた手を下着の上から太ももの内側に滑らせると、祐子の唇から「ひっ」と鋭い吐息がこぼれる。

「抵抗すんなよ。余計、火がつくだけだ」

俺の指が、閉じた脚のつけ根をくすぐるように上下する。下着のクロッチは熱と湿りをたっぷり含んでいて、布の目から肉の感触が透ける。淡いベージュのショーツは、股の中心だけが濃い色に変わり、濡れて薄っすらと陰毛の形まで浮かび上がっていた。指で軽く押し上げてやると、祐子は壁に額をこすりつけ、鼻にかかった声を出した。皮脂と石鹸とが混ざり合った女の匂いが、浴室の空気をねっとりと満たしている。生暖かい湯気が、鼻の奥にまで入り込んで、息が重くなる。

「んぅ……だめ、あっ、そこ、触ったら、あたし、立てない……」

「立てなくていいんだよ。立たせねえし」

下着を横にずらして割れ目へ直に指を這わせると、溢れ出る汁が指先を一瞬で濡らした。外の皮を押し開くだけで、ぬかるんだ熱い肉が指を呑み込もうとする。まだ挿入れてすらいないのに、粘膜が吸い付いてくる明らかな反応だった。俺は指先を浅く絡め、芽のあたりを捏ねるように撫で回す。濡れた肉襞がくちゅりと音を立て、指の節にまで蜜が絡みついてくる。

「あ、あぁ……やぁ、ああっ、そんなとこ、指、うごかしちゃ……だめえ」

頭を振る祐子の後頭部が、俺の胸を叩く。遠慮のない拒否の言葉なのに、腰が俺の指に押し付けるように揺れている。拒みながら感じて、感じながら泣く。その不器用な浪打ちが掌へ伝わって、男の加虐心をゆっくりと煽った。指を一旦抜くと、ぬらついた音が浴室内に思ったより大きく響いて、祐子の耳まで潮紅する。

「聞こえたか。自分で出しといて、よくもまあ帰るとか言えたもんだな」

「いや……あたし、ほんとに、どうして……身体が、勝手に……ごめんなさい」

そうしながらも、彼女の下肢は確実に恋しがっている。皮膚の奥から、もっと奥から、何かを欲しがる女の熱が、指先を押し返すように脈打っていた。ぬめった肉襞が指を離すのを惜しむように、くぱぁ、と小さく口を開くのが分かる。

浴室から出た後、俺は半裸の祐子をベッドへ連れて行った。薄暗い常夜灯の中、白いシーツが異様にまぶしく見える。祐子は乱れた下着の上から、力なく胸元を押さえて、ベッドの端に縮こまっていた。下着のクロッチは位置がずれ、濡れて黒っぽくなった陰毛が、中央に張り付いて見える。うなじから額へかけて、湯上りの赤みが広がり、それが浅黒い乳輪の色と視線の上で重なった。白いブラのカップが片方だけ肩からずり落ちて、汗に濡れたレースが腕に絡まっている。

「悟さん、お願い、最後の一線だけは……本当に、しないでほしいの」

祐子は声を震わせて、それでも俺の腕が伸びてくるのを拒まなかった。

「今さら一線も、クソもあるか。ほら、下ろすぞ」

抵抗する腕を片手で封じ、脚の間へ割り込む。祐子の太ももは、先ほどより明らかに力が抜けていて、俺の腰を挟むようにしながら、ゆっくりと左右へ開いていった。

「や……だって、私、子供、いるんだよ……夫も……裏切るの、だ…、め、なの…に」

声は掠れ、続きが言葉にならない。俺は指で下着のクロッチを押しのけ、露わになった肉芯へ唇を落とした。生温かくて酸っぱい味が舌に広がる。口の中いっぱいに、汗と女の汁が混ざった匂いが満ちて、唾液が止まらない。祐子の身体全体が、たわんだ弓のように反り返った。

「あっ、やぁ……あああ、そんな、舐めちゃ……いやぁ」

ビクビクと震える膝の横から、俺は指を二本、ぬかるむ中へ沈めた。狭い粘膜がすぐに指全体を締めつけてきて、中の襞がはっきりと蠢いているのが分かる。人差し指を曲げ、浅い場所のざらついた肉壁を擦ると、祐子が悲痛な声を漏らした。

「ああっ、ああっ、やっぱり、おかしくなる、それ、だめ、こわいの……身体が、溶けちゃうの……」

ヒクつく膣内をゆっくりかき回すたび、くちゅり、ぐりゅりと下品な音が漏れて、目の前の陰部から透明な蜜が溢れ出る。彼女はもうベッドに横たわったまま、膝をピンと突っ張って耐えるしかない様子だった。頬には新しい涙が流れ、唇の端から唾液が一筋、顎を伝っている。舌の上に、祐子の内側の味がねっとりと残って、それが喉の奥へ流れ落ちる。

しばらくして顔を上げると、俺の唇と顎は女の汁で濡れそぼっていた。鼻の奥に、祐子の内側の匂いがべったりと残る。鉄とヨーグルトを混ぜて、さらに甘やかに発酵させたような、生物としての女の香り。祐子は腕で目を覆い、荒く呼吸しながら、時折、腹を波打たせるようにして背を丸める。俺は服を手早く脱ぎ捨てると、彼女の下着を太ももまで下ろし、脚を両側から抱えるようにして身体を重ねた。淡いベージュのショーツが、片足の甲に絡まったままになる。

「もう、無理よ、悟さん、今日は、ここで……やめて、本番は、やめて」

半泣きの彼女を、今度こそ完全に組み敷く。逃げようとする腰を右手で押さえ込み、左手で顔の汗を拭ってやる。すると祐子は、赤く腫れぼったい目で俺を見上げてきた。恐怖と期待が、暗い瞳の底でとろけるように絡み合っている。体は明らかに俺を歓迎している。秘所の粘膜はヒクつき、大陰唇の内側まで蜜で光っていた。

「こうなってる時点で、もう心は決まってるってことだろ」

耳元で低く囁くと、祐子は返す言葉を失くし、顔を横に向けたまま小さく何度も首を振る。しかし首を振る動きに合わせて、内ももが微かに開く。まるで、身体の浅い抵抗と深い欲求が、それぞれ別の場所で暴れているみたいだった。汗の匂いと、下りてきた夜のような暗さが、部屋の空気をねっとりと満たしていく。

「違う……違うの……でも、あたし、もう、どうしていいか……」

祐子の声は、掠れて消えた。その肩を押さえつけたまま、俺はゆっくりとさらに深く、女の熱に指を戻す。すると彼女は、拒む代わりに、俺の胸へしがみつくように、両腕を回してきた。汗ばんだ素肌と素肌が張り付いて、互いの鼓動まで混ざり合うような密着感だった。真っ白いシーツの上、ホテルの部屋は、昼の光を遮ったまま静かに沈み、ただ祐子の締めつけだけが、指の先で強く脈打っていた。

第3章 一線を越えた昼下がり

第3章のシーン

第3章: 一線を越えた昼下がり

祐子の腕が、俺の背中に回ったまま強張っていた。指先だけが時折ぴくりと跳ね、汗で張り付いた素肌の上を、虫の脚のように這う。その感触を背中で味わいながら、俺は彼女の耳に唇を寄せた。吐息ごと、言葉を吹き込むように。

「入れないから、入り口で遊ぶだけだってば」

祐子の太ももが、何かを堪えるように内側へ揺れた。浅い呼吸が耳に触れて、すぐ横で首を振る気配がする。声は出ない。ただ、汗ばんだ額が俺の肩口に押し付けられて、睫毛の硬い感触だけが皮膚をくすぐった。俺は身体を少し起こし、祐子の両脚の間に膝を割り込ませる。白い太ももは抵抗なく開いたが、内側の筋肉はまだ細かく震えていて、触れるたびに小刻みな痙攣が伝わってくる。

「ほんとに、それだけだよ……約束、できるの」

涙でふやけた声だった。語尾は溶けて、ほとんど空気にしか聞こえない。俺は返事の代わりに、下着を太ももの半ばまで引き下ろした。薄いベージュの布が腰の膨らみを越えて、脚の間にたわむ。露わになった茂みは黒く濡れそぼり、常夜灯の朱い光を反射して、まるで果肉を潰したみたいな鈍い照りを帯びている。鼻先に、女が発情したとき特有の匂いが濃く立ち込めた。酸味と甘みの間に、生温かな海の奥を思わせる饐えた香りがある。

俺は自分の下着を引き下げ、硬く怒張したそれを手で扱いた。根元から先端まで握り直すだけで、掌に熱が移る。皮を上下させると、くちゅる、と小さく粘液の鳴る音がした。祐子がその音に反応して、閉じた瞼の裏で眼球を動かす。首筋から胸元まで、性急な血が上ったようにピンク色に染まっていた。閉じた脚がまた開きかけて、しかし本人は足首を擦り合わせるばかりで、どうしていいか分からない顔をしている。

「足、もうちょい開いて。入り口にちょっと当てるだけだから」

自分でも呆れるほど柔らかい声が出た。女の耳に直接、砂糖菓子を一つずつ押し込むような喋り方になる。祐子の膝が、ためらいながら外側へ倒れた。その角度で、秘部の奥まった襞まで丸見えになる。薄いピンクの内襞が濡れたまま互いにくっつき、一番上で充血した肉芽が頭を覗かせている。その下の窄まりは、まだ窄みきっていないのに、とろとろと透明な蜜を溢れさせて、後ろの窪みまで伝わせていた。

先端を、ぬめる割れ目に沿って滑らせる。熱い。エンジンのかかったばかりの鉄みたいに火照っていて、その熱さだけでも射精しそうなほどだった。俺は力を抜き、亀頭の腹でぬくぬくとその溝を往復する。はじめは浅く、やがて少し角度を変えて、硬い肉芽を下から突き上げるように掠めた。

「あっ……や、それ、あたっ……」

祐子の背中が弓なりにしなって、頭が白い枕に沈んだ。口が半開きになり、舌の先が上顎に張り付いているのが見える。声は出ていないのに、喉の奥で息が詰まるたび、ひくひくっと腹が跳ねた。肉芽を擦るたびに、蜜が増えて、俺の先端をぬらぬらと包み込む。その滑りに任せて腰を突き出すと、くちゅり、くちゅりと水が噛む音が、昼のホテルには不釣り合いなほど生々しく響いた。

「それだけならって、しょ……あ、あぅ、言ったのに、これ、あたし、へん、になる」

祐子が右手を伸ばして、俺の前腕に爪を立てた。痛くはない。むしろ、その不器用な力の入れ方に、掴まなければ自分がどこかへ流れていく不安を感じているのが透けて見える。何度も「やだ」と唇が動くが、声は喉に引っかかって、上肢を押し寄せる快感に吹き飛ばされていた。太ももが閉じかけて、逆に俺の腰を強く挟み込む。その筋肉の硬さと、内側の粘膜の熱さは別々に脈打っていて、女の浅はかな理性と底意地の淫欲が体の別々の場所に住んでいるみたいだった。

「浅く動いてみると、祐子さんが俺に何をしてもらいたいのか丸見えでさ、もうどっちの言葉がほんとだか、わかんねえって感じ」

わざと煽るような声音で囁いた。祐子は首を振る。耳の下まで汗が伝って、髪の結び目から逃げ出した後れ毛が頬に張り付いている。涙の跡はもう乾きかけていて、新しい染みが目尻へ滲んでいた。

「やだ……もう、それ以上、先っぽ、あてないで……おかしくなる、ほんとに」

「先っぽだけで、そんなに言うかね。旦那には、こんなことされたことないんだろ」

「言わないで……夫のことは、今、思いたくないの」

「思いたくないって、口じゃそう言ってるけど、さっきから腰が追ってきてるぞ」

事実、俺が先端を入り口の窪みに押し付けるたび、祐子の腰がわずかに持ち上がって、呑み込みたいみたいに内側から食い付いてきていた。俺はそれをわざと浅い位置で留め、亀頭の先を入り口へ吸い込ませかけては引き、また擦る。ぐちゅ、ぬち、という水音が間近で鳴るたび、祐子の喉が裏返って、白い首筋に浮いた汗が滴り落ちる。

やがて、ぬめる熱が一際深く亀頭を包んだ。角度がずれただけのつもりだったが、窄まりは思ったより容易く先端を呑み込み、そればかりか、ずるりと裏筋まで性感帯を擦り上げる。祐子の身体が大きく跳ねた。まぶたが見開かれて、茶色い瞳が焦点もなく天井を見つめる。唇がわなわなと震えて、悲鳴みたいな声が洩れた。

「いやっ、それ入って……」

「ほんの先だろ。このぐらい、入ったうちに入んねえよ」

俺の言葉に、祐子は首を横に振る。濡れた後れ毛が白い頬に張り付き、吐息のたびに細かく揺れた。内側の粘膜が亀頭の先だけをきつく締め付けて、引き抜かれまいと吸い上げるように蠢いている。俺は腰を止め、半ばまで挿入しかけた熱の繋がりを愉しみながら、上体を倒して祐子の顔を覗き込んだ。

「ここまで入ってんだから、もう同じことだぜ。分かってるだろ」

「ちが……抜いて、悟さん、いまなら……あぁ、動かないで、お願い」

声は泣き濡れていたが、俺の腰に回った脚はほどける気配がない。むしろ、内ももが白く泡立つほど汗を含ませて、男の身体を締め上げている。俺は右手で祐子の顎を捕まえ、上向かせたまま自分の唇を押し当てた。口の端から、祐子の唾液が一筋こぼれる。舌を挿し込むと、上顎の柔らかな部分を彼女の舌先が震えながら迎えた。

唇を離すと、銀糸が二本の口のあいだに尾を引いた。祐子の目に、抵抗の色が消えかかっている。自分の身体が俺の一部を呑み込みながら、痛みすら快感に飲み込まれていくのが、表情の崩れで分かった。眉根は寄っているのに、口元がだらしなく開いて、よだれが光っている。

「は、ぁ……あたし、もう、抜かないで……抜かないで、お願い」

その科白が、祐子の口から出た。自分で仰向けになりながら腰を叩きつけてくると、結合の奥から水が押し出されて、シーツの上に染みを作る。俺は笑いを噛み殺しながら、一気に奥を突き上げた。

「そう言うと思ったよ」

肉が裂けるように狭い中を、俺のものでござりながら押し開いていく。ぬちゅ、ぐぽ、と下品な粘着音がはっきり聞こえて、そのたびに祐子は背をのけ反らせる。膣襞が物の形を覚え込むようにくねり、締め付けては緩み、緩んではまた搾り上げてくる。痛いほど熱かった。それでいて、奥へ進むたびに中は滑り、異物を異物として拒むより先に、ねっとりと女の肉が先端へ吸い付いてくる。

「あっ、ああ、そこ、おく、あたる、だめ、あたま、おかしくなる、ひぃっ」

祐子が叫ぶ。その声は、拒否の言葉を装った許し乞いに変わっている。首を左右に振りながら、白い乳房を揺らしている。こないだまで未知の女だった三十四歳の母親が、俺の下で目尻に涙を溜めて、子宮の奥を擦られるたびに腰を浮かせる。男の欲を煽るには、過ぎたるものがある。乳房の上の乳首は、硬くなって赤黒く充血し、汗の膜に覆われて桜色に照っている。

「この体、もう俺のこと離さねえだろ。旦那じゃ、こうは締まらねえって分かるぜ」

「やめて、そんなこと……あっ、言わせないで、ああっ」

祐子は両手でシーツを握り、首を反らせた。その姿勢のせいで、汗で滑る乳房が左右へこぼれ、先端が大きく揺れる。俺は身を起こすと、彼女の両足首を掴んで持ち上げ、さらに深く腰を打ち込んだ。肌と肌が触れるたびに、濡れた尻が下から突き上げられてたぷんと揺れる。白い腹の奥が、俺の先端を受け止めるたびに微かに隆起した気がした。気のせいだろう。だが、その幻の動きが、さらに深く突くことへの衝動に火をつけた。

「お前、ほんとに助平だな」

笑いが込み上げてくるのを止められなかった。祐子は声を殺し、力なく首を振る。だが、その唇は微かに綻んでいて、目の焦点はとろりと溶けたままだ。反論の言葉は、全部俺の腰の動きに飲み込まれて、一息ごとに乳白色の喘ぎへ変換される。足の指が一本一本、虚空を掴むように開き、また内側へ丸まる。

俺は挿入したまま祐子の身体をうつ伏せに反転させ、腰だけを持ち上げさせた。四つん這いの体勢になると、白い背中から大きめの尻の膨らみまでが常夜灯の下に晒された。汗で光る尾骨の窪み。背骨に沿って流れる一筋の汗。その下で、男根を呑み込んだ秘裂が赤く腫れて、溢れた蜜が大陰唇の外側まで銀色の筋をつけている。髪の生え際の産毛まで逆立つのが見えた。

「この体勢、すっげえ丸見え。自分でどんな顔して咥えてるのか、見せてやりたいくらいだな」

「も、いうの、やめて……見ないで、お願い」

そう言うくせに、こちらを振り返る祐子の瞳は濡れて光っている。見られることに羞恥よりも鈍い興奮を覚えているのが、背筋の波打ち方で伝わった。俺は尻肉を割り開くように鷲掴み、指先で窄まりの周りをなぞった。そこは恥じらいの場所で、いま初めて男に見られた場所だ。祐子が小さく悲鳴を上げて、内側が俺のものを絞めつけた。

そこまでして、ようやく本式に突き始める。抜くたび、挿れるたび、白い尻が音を立てて跳ね、汗が散った。俺の腰の骨と彼女の坐骨がぶつかり、じゅぶじゅぶと水が掻き混ぜられる。もう祐子の声には、息継ぎ以外の意味が消えかかっていた。あうぅ、ぁ、んぅ、と、子犬の鳴き声とも笑い泣きともつかぬ音を、枕に顔を押し付けて漏らしている。時おり顔を持ち上げて、乱れた黒髪のあいだからこちらを振り向いたが、その口元には唾液が泡立ち、顎を伝って落ちていた。

「中、出すぞ。出していいだろ」

「えっ、まって、それ、いま……あっあっ、だめ、なかに、出し、たら……あああっ」

言葉を待つつもりはなかった。俺は腰を二度、三度と深く打ち込んで、奥の柔らかな窪みへ先端を突き刺すと、そのまま子宮口を割るようにして精を放った。びゅる、びゅる、と痙攣するように吐き出される。ざらついた熱が、女の最奥を叩いて跳ね返るのが分かる。祐子の全身が大きく跳ねて、内腔の壁が波のように寄せては引き、俺の精をさらに奥へ運ぼうとしているみたいだった。出入りするたび、精液の泡が結合部でぐちぐちと鳴る。

「い、やぁ……あつい、あついの、まだ、でてる……あたし、なか、あっ……」

祐子の肩が落ち、顔がシーツに沈んだ。腹の下から白いものが溢れてきて、太ももの内側を伝わり、シーツの白をさらに深く染め上げる。やがて俺が怒張を抜くと、後を追うように白濁がどろりと割れ目から垂れてきた。口を開いたままの祐子の太ももに、生温かなそれが線を引く。その光景に見下ろしながら、俺はまだ息を弾ませていた。心臓が肋骨に当たって鳴っている。昼過ぎの部屋に、二人分の汗と精液と女の血の匂いが混じった饐えた空気が沈んでいた。

祐子が、ゆっくりと身体を横たえた。まなじりを赤くして、唇の端からは涎の筋が乾いている。腹の上に、自分の淫水と俺の精の混じり合った染みが光っていた。はだけた乳房の先端は赤黒く勃起したままで、呼吸のたびに白い腹が波打ち、精液がまた一滴、とろりと胎内から幼い花弁を汚している。

「これ、浮気の証拠だな。触ってみろよ」

俺は祐子の右手を取って、腹まで導いた。彼女の指先が、とろりと垂れた白濁に触れる。祐子は肩を震わせて目を閉じ、それから、恐る恐る指先を曲げて、ぬるつきを確かめるように二度、三度、腹の上へすりつけた。泣き腫らした目が開き、天井を見る。唇が震えて、なにか言いかけたが、声は息に消えた。その瞳に、乾いた諦めみたいな光が浮かんで、すぐにまぶたの裏へ隠れた。

俺はベッド脇の椅子に腰を下ろして、ミネラルウォーターの瓶を開けた。咽喉に冷たい水を流し込んでも、鼻の奥にはまだ祐子の体臭がこびりついている。窓の外は白く曇った陽が射して、ブラインドの隙間から細い光が女のむき出しの腰に落ちていた。駅のほうから、次の電車が来ることを告げるアナウンスの尾が、かすかに壁越しへ届いたようにも思えた。祐子は動かなかった。太ももが時折ひくりと痙攣して、シーツに染み込んだ白いものが、午後の光の下でてらてらと濁って乾き始めていた。

第4章 週一回の蜜会、深まる猟奇色

第4章のシーン

第4章: 週一回の蜜会、深まる猟奇色

あの最初の昼下がりから、祐子との関係は淀んだ用水路のようにゆるやかに、しかし確実に流れ続けた。土曜の昼前、新岐阜の駅近くにある月極駐車場の片隅に、彼女の白い軽自動車が停まっている。俺が近づくと、運転席の窓がひくく下がって、日焼け止めの匂いの混じった車内の空気が外へ流れ出る。祐子はいつも後悔の色を薄く顔に貼りつけていて、それでもシフトレバーに置いた指の先まで、待ちきれないように小刻みに動いていた。

半年という時間は、俺の中で彼女の輪郭を少しずつ別の形に削り直していった。会うたびに、女は柔らかく開いていく。最初は指を絡めるだけで強張っていた身体が、二度目にはキスだけで背中をしならせ、三度目には車内で俺の腿に手を置いてくるようになった。週一回。たったそれだけの間隔が、人妻の肉体をこれほどまでに変えるのかと思うと、薄暗い部屋の鍵を回すたびに喉の奥が乾いた。

ホテル代はいつも祐子が払った。会計のとき、彼女は俺から半歩後ろに下がり、財布を開く手つきだけやけに手慣れていた。主婦の家計からくすねているのか、それとも小遣いを前の日から用意しているのかは知らない。ただ、札を差し出す横顔に、後ろめたさと一緒に小さな恍惚が滲むようになったのは、三ヶ月を過ぎた頃だった。俺は連絡先を教えなかった。教えないこと自体が、祐子を支配する仕組みとして機能していた。

その日の部屋は、造りつけの間接照明が点かないまま、壁のスイッチを入れると枕元のスタンドだけが黄ばんだ光を落とした。絨毯には幾重にも掃除機の跡がついていて、目の錯覚のように渦を巻いている。祐子をベッドの縁に座らせると、彼女は自分の膝の上に両手を重ねて、指の関節が白くなるまで組んでいた。

「まだ、明るいのに。カーテン、開いてるの、見えるでしょ」

声は空気の底を這う。泣くまいとしているときの、鼻の奥を細く通った響きだった。俺は返事をせず、スーツケースの形をした古いテレビ台の袖に立てかけてあった荷物を漁った。目隠し用の細い黒布と、手首を巻くための柔らかな革紐。それらはもう何度も使われていて、布の縁は汗を吸ってくたびれている。

「目ぇ、瞑ってろ。どうせお前はそっちのが落ち着くだろ」

「……今日は、明るいまま、がいいの。顔、見せてほしいの」

祐子が消え入りそうな声でねだった。そういう日もあった。自分から懇願しておきながら、実際に四つん這いにさせると、俯いた拍子に首元から上気した匂いを立ちのぼらせる。俺は黒布を彼女の視界ごと覆い、後ろで結んだ。まず暗闇の中へ孤立させる。目隠しがずり上がらないよう、髪の毛を何本か巻き込むくらい強く。

「あっ……」

祐子の喉が鳴った。視界を塞がれた女は、声の温度が一段上がる。俺が後ろから手を回して、ブラウスの前ボタンに指をかけても、彼女は抵抗しなかった。いや、その手が伸びて、俺の指に重なった。脱がせるのを手伝うでもなく、確かめるように指の背をなぞってくる。ボタンを外すたび、祐子の呼吸が浅く乱れた。

下着は、会うたびに替わるようになっていた。その日は薄い水色のレースで、中央の小さなリボンが白い肌の上で頼りなく光っていた。ワイヤーがないのか、胸の重みでレースが張って、乳輪の厚みある予感まで透けるほど薄い。最初の頃のくたびれた白いブラジャーはもうない。女の下着が変わるのは、誰のためでもない。週に一度、男に脱がされる自分のためだ。俺はその水色の布を押し上げるように、下から二度、三度、捏ねた。むにぃ、と粘るような弾力が掌に沈む。

「下着、また新しいの。どうした、旦那に買ってもらったか」

「ちがう……自分で、買い物に行ったときに。あんたの前で着るの、これで、……おかしいの」

「殊勝だな。週一回のためにお前んちの金を使って、でも体は俺のを待ってるってことか」

「そんなんじゃ……」

否定の後半が、布越しに尖った乳首を指で挟むと空気に溶けた。背中がぶるりと震え、後れ毛が首筋に張り付く。俺は片手で両手首をまとめ、革紐を二重に巻いてベッドヘッドへ括りつけた。祐子の身体が引かれて、乳房が重力のまま揺れる。きつくはない、逃げられはしない、その中間の締め具合が、女の呼吸を浅くさせる加減だ。

「あんた、ほんとに、私が動けないの、好きね……」

「動けないんじゃなくて、動けるけど逆らわないってのがいいんだよ。ほら、足開いて」

見えていないくせに、祐子の顔が俺の声の方を向いた。甘く開いた口元が、スタンドの黄ばんだ光を飲んで濡れて見える。スカートの下から手を入れて、下着の上へ指を這わせた。薄い水色のクロッチは既に湿っていて、布地の織り目にまで女の汁が染み込んでいる。指で縦に押すと、くちゅり、と聞こえるか聞こえないかの水音がした。

「今日、もう出来上がってんじゃん。車ん中で何考えてたか、今、口で言ってみ」

「いえない……あかり、消してほしいの、おねがい」

濡れた布越しに、陰核の位置を親指の腹でゆっくりと円を描く。祐子の腰が跳ね、縛られた手首を動かして革紐がきしんだ。彼女は脚を閉じたがる。だが、その太ももの内側は汗ばんで、逆に俺の手を挟み込み、圧迫した。熱い。下着が吸った水分まで熱を帯びて、指がめり込むたびに温度が伝わってくる。

「前は入り口遊ばれるだけで泣いてたのに、今は縛られて下着濡らして、腰まで浮かせて。なあ、祐子さん、この半年でどこまで堕ちたか分かってる?」

「やぁ、意地悪、いわないで……あっ、さわんないで、そこ、くり、……ひ、ぅ」

開発された女の身体は、裏切らない。一番敏感な突起を下着の上から掠めるだけで、祐子の喉が裏返り、黒布の下で眼球がきつく閉じられるのが分かった。俺は舌と歯を使って、露わになった片方の乳首を軽く食んだ。汗の塩味と、レースの繊維の匂いが舌先に広がる。乳首は梅の実みたいに硬く膨らんでいて、しゃぶるたびに腰をのけ反らせる。ズキュン、という実際には鳴らない響きを、彼女の骨盤の痙攣から聞き取ってしまう。飢えた雌の肉が、乳首から子宮へ、真っ直ぐに火線を走らせている。

「だんなとは、どっちがいいかって、まだ答え聞いてないんだけど」

耳元へ顔を寄せて囁くと、祐子は口をきつく結んで、力いっぱい横に首を振った。黒い布の向こうで、前髪が額に張り付き、首筋に一筋、汗が流れ落ちる。逃げられない両腕が革紐を引っ張り、背中の線が弓なりに反り上がる。後ろからゆっくりと、水色のショーツを太ももまで下ろして、尻肉を割り開いた。後ろの窄まりは汗ではすかんでいるのに、石鹸で洗いたての清潔な乾きがあった。そこへ人差し指の腹を這わせると、祐子は掠れた声を漏らした。

「ゆび、やだあ……そこは、きたないから……」

「汚いとこが反応して、ひらいてきてるけどな。お前のここ、先週より柔らかいぜ」

「ちが、ちがうの。後ろは、おかしくなるから、ほんとに、そこだけは……」

「ここだけは、って口が利けるうちに言っとけよ。週一で通ってくるのは、こういうところまで俺の気が済むようにされる女だって、そろそろ覚えろ」

半分は祐子のための主従の確認で、半分は俺自身の興味だった。体毛の生え際から唾液を垂らし、後ろの窄まりを指先でくにゅりと揉む。汗で蒸れた肛門は、閉じきった蕾のようでいて、押し込むと小さく口を開けて指の第一関節まで締めつけてきた。温かく、粘膜の渇きが指を包む。女が声にならない吐息をシーツに落とすたび、中がきゅう、と痙攣して指を引き込んだ。

「面白え通り道。お前ん中、だからたまんねえわ」

「や、へん、へんになる、そこ、動かしたら……ひぅ、うぅん」

手首を縛ったまま、祐子は顔を枕に擦りつけ、息絶え絶えに善がり声を漏らした。その間も、秘所は俺の指が触れてもいないのに、とろとろと雫を溢れさせて、太ももの内側に銀色の道を引いていた。鼻の奥へ、女の熟れた生臭さと、汗の饐えた甘さが入り混じる。これが半年かけた成果だ。拒絶語はもう意味も形もなく、ただ性感を高める触媒に変わっている。俺は後ろから、ずにゅ、と一息に根本まで突き入れた。

「あっ、あぁあっ、ちょ、ッ……そんな、いきなり、おく、……ああぁ」

濡れきった肉筒は、怒張を包んで激しく蠢いた。何度も穿たれて形を覚えた内壁が、自分から裏筋へ絡みついてくると同時に、奥がぐぽ、と粘ついた音を立てて圧を返す。祐子の背中が大きく仰け反り、縛られた腕が音を立てて革紐を引いた。突き上げるたび、彼女の白い尻がたぷん、たぷんと揺れて、その震えが俺の腹へ生温かく跳ね返る。結合部からはぬちぬちと水が泡立った。その音と、鼻にかかった咆吼とも泣き声ともつかない女の声が、薄暗い部屋の壁をねっとりと這い回る。

「旦那のとっ、どっちが、……いいの、か、……あたし、じぶんの、からだが、こわいの、……これ、悟さんが、いけないんよ」

振り向いた祐子の唇から、言葉が涎と一緒に溢れた。頬は染まり、涙で濡れた黒布の下で、眉根が快楽と苦痛とを同じ形にして寄せられる。俺は腰を止めず、片手で彼女の乳房を前方から掴んだ。掌いっぱいに、熟れすぎた果肉のような熱と重さがある。指の隙間からぷくりと零れる胸の肉。その中心で、陥没しそうでいない乳首を摘んでやると、子宮がまたきゅんと締まって、俺の先端へ吸い付いた。

「旦那より俺のが気持ちいいんだろ。だから土曜に、縛られても通ってくる。それだけで、お前の中は説明がつくんだよ」

「しらない……っ、わかんないの、そんなこと、こたえられない、……あっ、あぁ、ちが、ちがうのに、そこ、ずるい、……ごめ、ん、ゆるして、賢者さん、ねえ……っ」

涙声で縋る言葉のひとつひとつが、突くたびに細かく刻まれて、女の身体をさらに火照らせていく。その従属の姿は、不意をつくほど、綺麗だと思えた。自分の家庭では手に入らない秘密を、三十四歳の主婦がすべて裸にして、俺の肉に縋っている。そのくせ、連絡先も本名も教えない。教えないまま、いまこうして胎の奥まで好き勝手に使わせる。この不均衡が、俺という男を満たした。

「出すときは、いつもどおり一番奥な。避妊なし、それ以外あり得ないって、もう分かってんだろ」

「あっ、いや、でも、それ、……あぁあっ、あたし、また、なかの、いちばん、おくに、欲しい、のか、……っ、も、いや、……ほんとは、すごい、欲しい……ああっ」

最後の方は叫ぶような懇願に変わっていた。体中の筋肉が緊張して、縛られた手首が真っ赤に擦れているのに、祐子は自分から腰を打ちつけてくる。俺は限界まで挿入して、奥の柔らかな窪みへ亀頭を埋めたまま、どくどくと精を注ぎ込んだ。避妊具越しではない、生の熱が女の粘膜を打つたびに、内側が歓喜するみたいに収縮した。白い尻を掴む指に力が入り、肉に爪の跡がつく。祐子は声にならない声をあげ、腹を痙攣させながら、俺の精液を一滴残らず受け止めるように腰を震わせた。

結合を解くと、どろりと白濁が女の入り口から溢れて、シーツの上に濃い染みを作った。祐子は息も絶え絶えに横向きへ崩れ、手足の自由を失ったまま黒布の中で目を閉じていた。乱れた水色のレースが片足に絡まり、むき出しの腿へ精液が垂れている。その太ももは、もう逃げる力を持っていなかった。

その後、俺は汗で張り付くシャツを肩に掛けて、廊下の突き当たりにある非常階段へ出た。外の空気が、肺の中の饐えた残りを外へ押し流す。昼とは思えないほど空が曇り、遠くのホームから、女性のアナウンスがまるで他人の人生の栞みたいに流れてくる。新岐阜駅、普通列車、各方面行き。耳を澄ませば、風の向こうで微かな線路の継ぎ目も鳴っている。

煙草を一本銜えて、火を点けた。指先にはさっきまで触れていた女の粘度が残っていて、煙草の紙が微かにしっとりする。俺はフェンスへ寄りかかって、肺へ煙を流し込んだ。いつでも捨てられる、と口の中で転がすと、鼻から煙が鼻を抜けて、午後の曇天に薄く溶けていった。可愛げに似たものを持ってしまった自分を、少し持て余しながら。

部屋へ戻る前に、救急箱みたいな棚に置かれた白い内線電話を一瞥する。連絡先の一つも与えていない女が、暴かれて泣きながら約束を一つ作った昼下がり。俺はその場で、自分の履歴に彼女からのワン切りが残る夜が来ることを、妙に確信していた。日付が変わる直前、あの白い軽自動車のテールランプが、駐車場の隅で長く尾を引いて消えていく。俺はホテルの廊下に漂う空気清浄剤の匂いを胸いっぱいに吸って、泥のように眠った。

第5章 最後の電話、出産の告白

第5章のシーン

第5章: 最後の電話、出産の告白

俺は一度だけ、祐子の胸の中で眠ったことがある。あれは梅雨に入る前の、異様に蒸し暑い土曜日だった。身体を離したあとも、彼女の指が俺の背中を掻くみたいに動いていて、そのくせ呼吸は子どもみたいに浅かったのを覚えている。あの日、祐子は何かを言いたそうにしながら、結局黙って俺の首元に額を押しつけた。汗でしっとりした髪が鎖骨に張りついて、それが少しだけ痒かった。目が覚めてから、彼女がどうやって帰ったのかも知らない。目が覚めたら、俺はホテルの部屋で一人だった。

九か月だ。季節はもう霜の気配すら頭の中でぼやけて、冬の手前みたいな頃合いだった。転勤の通知が来たのは、十一月の半ばを少し過ぎた頃だった。内示があってから十日も経たないうちに、送る私物は段ボール三箱と決めた。元々、物が少ない。いや、自分で減らしてきたつもりだった。どの街にいても、ダンボールを組み立てる段になると、二年前の住居に置き去りにした電子レンジや、三年前の部屋に置き去りにしたパソコンの箱のことを思い出すが、俺は一度も取りに帰らなかった。女の連絡先と同じだ。使わなくなったものは、徹底して視界の端へ追いやって、後ろを振り返らずに済むようにする。

転勤が決まった夜、机の引き出しを整理していたら、薄いピンク色のテレクラ会員証が外れた。あの時、財布のカード入れに差し込んで、それきり抜かずにいたものだ。余計なことを考えたくなかった。それが、こんなに軽く、こんなに安っぽい紙切れだとは。指で摘むと、端がしんなりしていて、心持ち反り返っていた。捨てるか、と思った。指が、ゴミ袋の口を広げたところで止まった。薄いピンク色が、部屋の弱い灯りを吸って、青白い電話の発光を思わせた。捨てなかった。

みっつ組めたダンボールの真ん中で、俺は座り込む。自室の床には、移動のときにできた畳の擦り傷みたいな跡がくっきりと残っていた。カーペットの上に、生活はとうに無くなっている。カーテンを洗ったのは、いつだったか。換気のために窓を開けても、外の夜気はまるで煙草の脂を拭き取った後のような、生ぬるくざらついた匂いがした。スマートフォンを床に置き、画面を下から上へ滑らせる。着信履歴の奥の奥に、日付も朧げなワン切りが一件。何度か開いたらしい記録の下に、ずっと開いていなかった番号が、番号のまま眠っている。

九か月。連絡をしないことが、つまり終わりだった。皮肉なことに、俺が携帯の番号を教えなかった代わりに、彼女の履歴だけは手元にあった。口は九か月閉じていながら、番号だけがここに残っている、その不誠実。分かっていたからこそ、押さないでいられた。それなのに、どうしてこの夜、ダンボールの壁に囲まれて、俺は指先でその数字を確かめていたのだろう。新岐阜へ行くと決まったから、だろうか。それとも、荷物をまとめて、捨てるものと捨てないものを分けていく道中で、この女だけがどちらにも分類できないことに苛立ったからだろうか。

気づくと、押していた。コール音が、湿った暗い土の底へ染みこむような長さで、間隔を刻む。

三回、四回。五回。切ろうとした。そのとき、受話器の向こうに、ごく小さな生活の音が生まれた。誰かが息を整えて、それから慎重に、受話器を耳へ運ぶ。強いられて静かに暮らしてきた女だけが持つ、押し殺した気配だった。

「……はい」

声が、ひどく小さかった。九か月前よりずっと細い。喉の奥で小さな骨が砕けでもしたんじゃないかと思うほど、その返事は空気を含んで脆かった。夜の奥から聞こえてくるのは、声というより、受話器に手を添えた掌の熱と、耳に掛かった髪の音だった。

俺はしばらく黙った。息を吐くことすら、今は情報になる。女は電話の向こうで、こちらの一挙一動を拾おうと耳を澄ましている。緊張が電話回線に湿り気を与えているのが分かった。

「久しぶり」

自分で思っていたより、平たい声が出た。

祐子は答えなかった。二秒、三秒と間があいて、受話器越しに白いものが押し殺される気配がある。黙り方は九か月前とは違っていた。泣き方も、呼吸の深さも、まるで別の女だった。それでも、耳の奥へ流れ込んでくる沈黙の手触りだけが、あの六月のホテルで隣にいた女と繋がっている。俺は膝を立て、窓の外を見た。環状線を流れる車のヘッドライトが、カーテンのない窓を二秒おきに走っては消えた。

「電話、悪かったか」

ややあって、俺は言った。面倒を避けるなら、今切ればいい。指先は、画面の中の赤いボタンまで三ミリも離れていない。

「悟さん……」

やっと聞こえた声には、わずかな掠れと、眠っていなかったのかもしれないと思わせる生温さがあった。祐子が言葉を継ごうとして、そのたびに喉の奥が引き攣る。襖やカーテンが音を吸う、他人の家の夜の匂い。彼女がどこにいて、何を抱えてこの電話に出たのか、俺には知りようもない。知りたくもない。

「私、あの、……どうして今、電話くれたの。怒ってるんじゃなくて、その、突然だったから」

俺が何も返さないでいると、祐子は息を整えるように小さく間を置いてから、言葉を落としてきた。まるで、昔のままの女を演じようとして、しかし身体の硬さばかりが出てしまう、その痛ましい声。

「妊娠したの」

急だった。急なのに、その一言が、この夜のどこかから来ると最初から分かっていたようにも思う。線路の継ぎ目と車の唸りが、耳の奥で薄い膜を張った。

「産んだの。八月にね。おとこの子。たぶん、悟さんの子」

「たぶん」の後で、祐子の言葉は一度、息を切らした。泣いているのか、笑っているのか、判別のつかない湿った吐息が受話器へ溢れて、それから静かになった。俺は黙っていた。心臓が肋骨の内側を、やたらと遅く、重く殴る。くそ、と思う。予感は大げさでも何でもなく、きちんとそこに座っていて、それに俺が座らせたまま今日まで来たのだ。分かっていたくせに、九か月の間、蓋の形すら変えずに暮らしていた。避妊を拒み続けた。いつかこうなると、知らないはずがない。

車の音が途切れた。部屋の薄い壁に、冷蔵庫の唸りが微かに響いている。

「悟さん、聞こえてる?」

声は震えながら、それでも真っ直ぐだった。泣き声になっては、押し戻して、また静かに息を吸う。

「聞こえてる」

俺は短く返した。口から出たのは、面倒を思っているのが丸見えの、あからさまに素っ気ない二言だけ。笑う余裕もない。後悔が胸へ来る前に、もっと薄くて冷たいものが、背筋の上へすうっと乗った。金、と、生活、と、戸籍、と、四角い文字が頭の中をぜんまいみたいに回って、終いにはちりちりと音を立てる。これ以上、話したくなかった。話せば話すほど、この女の産んだものの輪郭が太くなって、俺の部屋の中にまで湿った重さで入り込んでくる。

「あのね、産むって決めたの、私。一人で、って決めた。馬鹿だって、分かってるの。でも、お腹の中にいるのが……悟さんの子かもしれないと思うと、殺せなかった」

受話器の向こうで、祐子は小さく息をつめた。赤ん坊の気配みたいなものを、俺は耳の底にはっきりと感じ取っていた。眠っている子どもは、息すらしないんじゃないかと思えるほど静かで、しかしその存在だけが受話器を通して湿った温度を持って伝わってくる。ひどく生々しい。女の体温と、乳の匂いと、縫い目のある小さな肌着に包まれた赤ん坊が、この線の先に本当にいる。俺の腹の奥が、嫌なかたちに冷えるのを感じた。

「お金のこととか、名前とか、そういうの、要らないの。頼るつもりもない。迷惑、かけない。ただ、一度だけでいいから、顔を、見に来てほしいの。お願い」

祐子はそう言って、それきり黙った。泣いているのだと思った。いや、違う。彼女は、俺の返事が来るまで電話を切れない女になってしまったのだ。丸九か月を、たった一人で敷き潰してきた声だった。その声が、土足で上がり込んですぎる。頼むから、そういう重たいものを俺の床へ置いていかないでくれ。あんたが俺にあげたいものは、俺が貰いたいものと、何ひとつ重なっていない。

「分かった。……ああ、そう」

俺は言った。短く、棒みたいな声で。それから一呼吸、早すぎるくらいあっさりと、自分の息で押し切るように電話を切った。受話器を置く手は、ひどく冷たいくせに汗ばんでいた。乾いた唇を舐める。舌の先がぴりぴりした。

二秒と経たず、スマートフォンがまた震えた。着信。画面に浮かぶ数字を見る。祐子だろう。無視した。さらに数十秒後、もう一度、長く震える。その震えが終わると、机の上の段ボールの影へ、夜の静けさが音もなく降りてきた。それきり、もう鳴らなかった。

窓の外では、環状線をライトの束が流れていく。ひと塊ずつ、白と朱が隊列を組んで、曲線に沿って滑っていく。俺は床に置いたスマートフォンを爪先で裏返し、ダンボールにもたれかかった。三箱の荷物は、どこも蓋が開いたままになっていた。この薄いピンク色のカードを、どうして捨てなかったのか。どうしてこの指で番号を押したのか。そうしていま、どうしてこんなに、喉の奥がひりついているのか。どれも、これも、口にできない質の疑問だった。子供を産んで、俺のことを電話の番号だけで待っていた女。その女の産んだ子を、俺はこれから新岐阜の街で、顔も知らぬまま背後に引き連れていく。雨の匂いもしない、倉庫の中みたいに黙りきった部屋で、明け方の気配が窓の縁を薄く剥がし始める。眠れる気は、しなかった。

スポンサーリンク

読み終えたあとの余韻に。

OVA 夏妻 #2 を FANZA で見る →
登場人物
  • 川島悟 かわしま さとる
    男性 ・ 25

    外見: 黒髪短髪、やや釣り上がった切れ長の目、痩せ型で肩幅は狭め、身長172cm。服装: 黒いライダースジャケットに色褪せたジーンズ、白いスニーカー。軽薄で自己中心的、飲み込まれるより先に相手を突き放す。口調は、テンポが速く、言葉は短い。相手を値踏みするようなくだけた言い回しを好む。主導権は常に自分が握りたがる。感情は薄く見えるが、支配したい欲求だけが強い。興味を失うと声の温度が一気に冷める。普段は抑揚の少ない声で話すが、女が自分の思い通りに乱れると語尾がゆっくりになる。人妻の反応を観察するときだけ、口数が増える。

  • 荒川祐子 あらかわ ゆうこ
    女性 ・ 34

    外見: 肩下までの黒髪を後ろでゆるく結び、垂れがちな茶色い瞳、胸が大きく尻も肉感的な小柄体型、身長155cm。服装: 柔らかい生成りのセーターと花柄のロングスカート、控えめなパンプス。真面目で地味、罪悪感が勝るあまり自分から行動に移せず、相手に流されて堕ちていく。口調は、ゆっくりで間が多い。敬語ともためらいともつかぬ中途半端な言葉を選ぶ。相手の言葉を否定したいのに語尾が弱く、最後まで言い切れないことが多い。感情は隠せず、声がすぐ震える。断るつもりで話し始めても、身体が反応すると語尾が甘く鼻にかかる。普段は穏やかでゆっくりした声、動揺すると一文ごとに息を継ぎ、本気になったときは声の高さが上がって懇願のような口調になる。

  • 荒川宏 あらかわ ひろし
    男性 ・ 38

    外見: 少し後退した黒髪、垂れ目、標準よりやや太った体格、身長178cm。服装: 会社用の紺のスーツに地味なネクタイ。祐子の夫で、生活費と平穏を守ることに必死な普通の会社員。口調は、ゆっくりで丁寧だがどこか自信がなく、妻の反応を過度に気にする。語尾に「〜かな」「〜だろう」をつけることが多い。家では穏やかだが、感情が高まると声量が落ちて小さくなる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です