終電逃した横浜駅で泥酔女子大生を拾い自宅へ連れ込み半ば無理矢理セックスしたら彼氏がいるのに感じまくって朝まで求めてきた週末
あらすじ
深夜、終電を逃した俺は相鉄線改札近くのトイレ脇で、壁にもたれて座り込む女を見つける。白いセーターに包まれた巨乳、乱れた黒髪の間から覗く青白い頬。声をかけると呂律の回らない返事が返り、彼女は俺の手首を突然ぎゅっと握ってきた。冷たい指先が熱を求めるように食い込む。財布から出てきた新潟の免許証に目をやりながら、俺の中で小さな打算が動き出す。タクシーに乗せるが住所は曖昧で、結局自宅のアパートへ向かう決断をした。車内で彼女がもたれかかる体温と、微かに香る汗とアルコールの混ざった匂いが、俺の理性をじわじわと溶かしていった。
第1章 横浜駅トイレ前で潰れた色白の吐息

金曜の夜、部署の連中と飲みすぎて、気がつけば終電を逃していた。横浜駅の構内は人もまばらで、午前一時の冷えた空気がコンクリートの壁を伝って這い寄ってくる。俺は舌打ちをひとつ漏らし、タクシー乗り場へ向かおうと通路を曲がった。
相鉄線の改札近く、人目を避けるように設置されたトイレの脇で、白い塊が床にへたり込んでいる。
最初は誰かが置き忘れた荷物かと思った。だが近づくにつれ、それが女だってわかった。壁にもたれて、だらしなく両脚を投げ出し、長い黒髪が顔にかかっている。白いニットのセーターが、重力に任せてたわんだ胸の膨らみをくっきりと浮かび上がらせていた。膝丈のネイビーのスカートから伸びる黒タイツの脚が、冷たいタイルの上で力なく投げ出されている。解けかけたローファーが、片方だけかかとから外れて、かすかに足の甲を覗かせていた。
俺は立ち止まった。頭のどこかで、面倒ごとに首を突っ込むなと警鐘が鳴る。でも別の部分が、あのスカートから覗くふくらはぎのしなやかな曲線に、目を奪われて動けなくなっていた。
「おい、大丈夫か?」
しゃがみ込んで声をかけると、彼女はゆっくりと顔を上げた。黒目が潤んで焦点が合っていない。頬は青白いのに、唇だけがほんのり赤く熟れていて、甘ったるい酒の匂いがふわりと漂ってきた。吐息に混じる酩酊の匂いが、俺の鼻腔をくすぐる。
「……んー、だいじょぶ……じゃないかも……」
呂律が回っていない。声はかすれて、まるで壊れたテープレコーダーみたいな途切れ途切れの返事だった。喉の奥から搾り出すような、弱々しい声。
「終電、終わったぞ。家どこだ?」
「……しばた……しばたし……ちがう、よこはま……あれ?」
彼女は眉をひそめ、自分の言葉に自分で混乱しているようだった。長い睫毛が震え、手をふらふらと宙に上げる。その指先が、俺の手首に触れた。冷たい。氷みたいに冷え切った指先が、まるで熱を求めるみたいに、細い指がぎゅっと食い込んでくる。骨ばった小さな指の感触が、俺の皮膚に吸い付く。
「つめたい……あったかい……」
彼女はそう呟いて、俺の手首を離さなかった。女の指の細さと、縋るような力加減が、妙に俺の胸の奥をくすぐった。爪は短く切りそろえられていて、マニキュアの類は一切ない。その無造作な清潔感が、かえって生々しい女の体温を際立たせている気がした。
「おまえ、財布持ってるか?免許証とか」
声をかけると、彼女はぼんやりと自分のバッグをまさぐり始めた。茶色のローファーが、かすかに動くたびにコツンと鳴る。片方のローファーが、つま先だけでぶら下がるように揺れ、黒タイツに包まれた足首が露わになる。やがて取り出した財布を受け取り、中を確認すると、免許証が出てきた。
「新潟県新発田市……あかね、十九歳か」
写真の顔は、今よりずっとしっかりした表情でレンズを見つめている。色白の肌は新潟の雪国の血だろうか。免許証を戻しながら、俺の胸の中で何かが動いた。新潟県新発田市。ここから三百キロ以上離れた田舎町。この時間に帰れるはずがない。放っておいたらどうなるか、考えるまでもなかった。今の彼女は、誰にでも好き放題される、まるで拾われるのを待っているような無防備な肉塊だ。
でも同時に、もっと別の考えも浮かんでいた。こいつを家まで送り届けて、大人の対応を見せれば、もしかしたら連絡先くらい渡せるんじゃないか。清楚な顔立ちと、あのセーターの下の豊満な膨らみが、頭の隅でちらつく。濡れたように光る唇が、何かを求めるように半開きになっていた。
「立てるか?タクシー拾うから」
彼女はこくりと頷くが、立ち上がろうとしてよろめいた。俺はとっさに彼女の腰に手を回す。細い。スカート越しでもはっきりわかる華奢な骨盤と、その上にある柔らかな肉の対比に、指先が勝手に感度を上げていく。手のひらが触れた腰骨の出っ張りは、本当に華奢で、このまま強く抱いたら折れてしまいそうな脆さがあった。
「ごめ……なさ……」
「いいから、つかまってろ」
駅のタクシー乗り場まで、彼女を半ば抱えるように歩いた。身体が密着するたび、セーター越しの乳房が俺の脇腹に押し当てられる。弾力があって、それでいて柔らかい。腕を回した背中からは、うっすらと汗ばんだ下着の存在が浮き彫りになっていて、指先が勝手にその感触を探ろうとする。健康な男子には絶対に抗えないフェロモンが、汗とアルコール、それからどこか甘いシャンプーのような香りと一緒に首元から立ちのぼっていた。
タクシーに押し込むように乗せると、運転手がルームミラー越しにチラリとこちらを見た。
「お客さん、どちらまで?」
「ええと……」
俺は隣でぐったりしている彼女を振り返った。
「あかね、住所は?ほら、起きてくれ」
「……んー……わかんない……」
彼女はもう半分眠っていて、まともな返事が返ってこない。いや、顔を覗き込むと、うっすら目は開いているが、焦点が完全に溶けている。酒で曇った瞳が、俺の顔を映しているのかいないのか。口元がだらしなく半開きで、唾液で濡れた唇の内側がちらりと覗いた。ピンク色の粘膜が、車内の淡い光に照らされて艶めかしい。
「おい、あかね。新潟には帰れないぞ」
「……かえらなく……ていい……ねむい……」
彼女の頭が、カクンと揺れて俺の肩に落ちる。そのまま擦り寄るように頬を押し付けてきて、柔らかな髪が俺の首筋を撫でた。運転手が苛立ったようにハンドルを指で叩く。その音が、やけに車内に響く。
「お客さん、行き先決めてくださいよ」
俺は一瞬迷ってから、自分のアパートの住所を告げた。横浜から電車で二駅、タクシーでも二十分かからない距離だ。口にした瞬間、自分でも薄々わかっていた。俺は最初から、こうするつもりだったんじゃないかと。
車が走り出すと、彼女は完全に意識を手放したようで、俺の肩にもたれかかってきた。柔らかな髪が首筋に触れ、規則正しい寝息が鎖骨のあたりをくすぐる。時折、吐息が熱に変わり、汗ばんだ額の生ぬるさがシャツ越しに伝わってくる。窓の外を流れる街灯の光が、彼女の青白い頬を断続的に照らし出し、そのたびに長い睫毛の影が、まるで彼女の無防備さを強調するみたいに揺れた。
無意識なんだろう。彼女の指が、俺の太もものあたりを探るように動く。いや、ただ力なく垂れていただけか。その指先が、太ももの内側に触れるか触れないかの位置で止まり、俺の下半身は、みっともなく反応を始めていた。俺は自分の膝の上で固く握った拳を見つめながら、頭の中で何度も言い訳を組み立てていた。これは親切だ。放っておけなかっただけだ。でも悪魔みたいなもう一人の自分が、すぐ近くで囁く。こんなチャンス、めったにないぞ、と。
車内に充満する彼女の体温と、汗ばんだ肌から立ちのぼる微かな匂いが、俺の中の何かをじわじわと溶かしていく。窓ガラスに映る自分の顔が、どこか別人のように歪んで見えた。冷房の効いた車内なのに、全身が熱い。わき腹に触れた彼女の額は、ほんのり湯冷めしたような温度で、ああ、こいつ本当に酔ってるんだと、当たり前のことを生々しく実感した。
アパートに着く頃には、俺の理性はすでに半分くらい溶け落ちていた。残り半分は、罪悪感と興奮の狭間でぐちゃぐちゃに絡まっている。
彼女を抱えて階段を上がり、鍵を開ける。片手で彼女の腰を支え、もう片方の手でドアノブを回す動作が、無性に焦れったい。指先が鍵穴を探るたび、彼女の鼻先から漏れる熱い吐息が俺の耳に吹きかかって、背筋のあたりが粟立った。
ワンルームの部屋に彼女を横たえた瞬間、白いセーターがまくれ上がり、腰のあたりの白い肌が覗いた。月明かりに照らされたその肌は、まるで陶器みたいに滑らかで、へその横のくぼみに影が落ちている。俺の指は吸い寄せられるように、そっとその部分に触れていた。黒タイツのウエスト部分が食い込んで、薄い肉が絞まり、かすかな線を作っている。その線の上を、人差し指でなぞる。彼女は身じろぎもせず、ただ、ひときわ深い吐息を漏らした。
ネイビーのスカートから伸びる黒タイツの脚が無造作にひらき、膝が外側に向かって倒れている。タイツに包まれた太ももの内側が、月明かりを受けてうっすら光る。スカートの裾がめくれ上がりそうなぎりぎりの位置で、黒タイツ越しのパンティがはっきりと浮かんでいた。白い布地が、タイツの黒に押しつぶされるみたいに密着していて、股間のふくらみが、その薄い膜の下に隠しきれずにむっちりと輪郭を作っている。汗と女性の匂いでムワッとしてそうな、あの奥の空気まで、こちらに流れてくる気がした。見てはいけないものを、目が勝手に舐め回す。黒タイツの網目ごしに、パンティのレースがくいこんでいるのがわかって、その溝に溜まった汗まで想像してしまう。俺は自分の視界が、彼女の股のあたりに釘付けになっていることを自覚していた。
冷たい。でも、すぐに熱くなる。彼女の体温が指先から伝わってきて、俺の中で何かが決定的に音を立てて動き出す。指の腹に感じる産毛のような微細な凹凸さえ、俺には甘い刺激にしか感じられなかった。
「悪いな、あかね」
口の中で呟いて、俺はベッドの横にしゃがみ込んだ。彼女の寝顔は無防備で、長い睫毛が頬に影を落としている。閉じた瞼が、時折ぴくぴくと痙攣するのは、夢でも見ているのか。部屋には彼女の吐息と、かすかな汗の匂い、それから俺自身の高鳴る鼓動だけが満ちていた。その匂いを肺の奥まで吸い込むと、自分の中の獣が、ゆっくりと牙を剥くのを感じた。
第2章 無防備な裸体と彼氏の通知に煽られる劣情

ベッドの端に腰を下ろすと同時に、スプリングがギシリと軋み、その音がやけに鋭く部屋の静寂を裂いた。六畳ほどのワンルーム。閉め忘れたカーテンの隙間から差し込む青白い月明かりが、朱音の寝姿を細長く照らし出し、まるで薄暗い舞台の上に置き去りにされたオブジェのように浮かび上がらせている。壁一枚隔てた向こうでは給湯器が低く唸り、浴室からは湯が溜まっていく規則的な水音が途切れなく聞こえていた。その単調なリズムが、逆にこの部屋の異様な静けさを際立たせ、俺の鼓動だけが耳の奥でやけに大きく脈打っている。
朱音は仰向けのまま、深い昏睡に身を沈めていた。乱れた黒髪が枕の上で扇状に広がり、その一本一本が月明かりを反射して鈍く光っている。白いニットセーターは胸の膨らみに沿って不自然なほど持ち上がり、生地が張り詰めた部分からは、彼女の呼吸に合わせて微かな揺れが伝わってくる。彼女の吐く息は、ほんのわずかに酒の匂いを帯びていた。甘ったるいカクテルの残り香と、汗ばんだ肌の奥から立ちのぼる女の体臭。その二つが絡み合い、鼻腔の粘膜にべったりと張り付いてくる。無防備に横たわる寝顔を見下ろしながら、俺の内側では理性と欲望が最後の睨み合いを演じていたが、勝負はとっくに決まっていた。タクシーに乗せた時点で、いや、駅のトイレ脇であの潤んだ瞳に引き寄せられた瞬間から、この結末は見えていたのだ。
俺はまず、彼女のセーターの裾に指をかけた。柔らかな白いニットは見た目よりずっと軽く、指先を引っかけるだけで呆気なくまくれ上がっていく。臍のあたりまで生地を押し上げると、月光を全身に浴びた腹部が露わになった。陶器を思わせる滑らかさの下に、肋骨の繊細な稜線がうっすらと浮き上がり、息を吸うたびにその影が僅かに伸び縮みしている。指の腹でゆっくりとなぞると、表面はひんやりと冷たいのに、奥からじんわりと熱が滲み出してくる、不思議な肌触りだった。
そのまま一気に脱がせようとセーターをたくし上げ、両腕を抜きにかかった瞬間だった。朱音の身体が突然、寝返りを打とうと大きく動いた。俺の手の中で、彼女の上半身がゆっくりと捻れ、セーターが首と片腕に絡まった中途半端な状態のまま、胸元が視界いっぱいに迫り出してくる。動きの勢いで、もともとサイズの足りていないアイボリーのレースブラジャーから乳房がこぼれ落ちそうに盛り上がり、深い谷間が月明かりの下でくっきりと黒い影を刻んだ。汗ばんだ肌から立ちのぼる、健康な男なら抗うことなどできはしない、甘く重たいフェロモンの匂い。俺は息を呑み、その一瞬の光景を網膜の奥に焼き付ける。やがて彼女は再び仰向けに戻り、何も起きなかったかのように、規則正しい寝息を立て続けている。どれだけ無防備なのだと、心の中で呟きながら、俺は乱れた呼吸をゆっくりと整えた。
慎重にセーターを頭から引き抜くと、黒髪が静電気を帯びて、数本が俺の手首に絡みついてきた。現れた上半身を包むのは、淡いアイボリーのレースブラジャーだけ。こぼれんばかりの乳房を必死に支えるその生地の上からも、カップから溢れた白いふくらみが彼女の呼吸に合わせて微かに揺れている。鎖骨から胸元へと流れるラインは月光を受けて青白く発光し、男の目には神々しさと、抗いがたい官能が同じだけの重さで迫ってきた。指先に触れるレースの繊細な凹凸。その下にある乳房の密度が、生地越しにずっしりと掌へ重さを伝えてくる。
「はあ……」
思わず漏れたため息が、静かな部屋の中でやけに大きな音として響いた。ストラップが食い込んだ肩は驚くほど華奢なのに、その下で二つの膨らみは重力に逆らうような弾力を湛えている。レース越しに淡く透ける乳首の位置を目でなぞりながら、俺は手のひらを宙にかざした。触れるか触れないか、肌の産毛が掌の気配を感知するほどの距離。そこまで近づけると、彼女の体温が皮膚の表面から放射され、手のひら全体をじんわりと温めていく。空調の吐き出す乾いた冷気とは質の違う、生きた熱。それだけで、股間の奥がズキリと鋭く疼いた。
スカートへ手を伸ばした、まさにその時だった。
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
バッグの中で携帯が断続的に震えている。眉をひそめ、ベッド脇のバッグからスマートフォンを引き抜いた。画面に表示された名前に、心臓がドクリと跳ねる。
「聡くん」
通知欄には、複数のメッセージが立て続けに並んでいた。
『今どこにいるんだよ』
『電話出てくれって』
『心配してるんだからな』
『他の男と遊んでるんじゃないだろな』
最後の一文からは、嫉妬と焦りが粘り気を帯びたほど滲み出している。俺は唇の端を歪め、画面をそっと伏せた。彼氏か。しかも、かなりの束縛気質だ。ロック画面の背景には、朱音と爽やかそうな茶髪の男が並んでピースする写真が写っている。その笑顔の裏にある小さな亀裂を探すように、指で画面をなぞりながらしばし見つめた。携帯をバッグへ戻すと同時に、胸の奥底からどす黒い優越感が鎌首をもたげてくる。なあ、聡くん、お前の彼女、今どんな格好をしていると思う? そう心の中で囁くと、熱く粘ついた感情が頭蓋の中をぐるぐると渦巻き始めた。手のひらに残る朱音の体温と、画面越しに伝わる男の焦り。その二つの温度差が、背筋をゾクゾクと這い上がってくる。
スカートのホックは腰の横に付いていた。指先で探り当て、金属の小さな留め具を外す。ファスナーを下ろす金属音が、耳の奥に生々しく張り付いた。スカートを腰から慎重に引き下ろしていくと、黒タイツに包まれた脚が露わになる。太ももからふくらぎへと流れる曲線は、細すぎず太すぎず、絶妙な按配でバランスを保っていた。ナイロン越しに掌を当てると、ひんやりとした滑らかさと、その一層奥でぬくもる体温が同時に手のひらへ伝わってくる。
黒タイツのウエスト部分に指をかけ、両手で左右に広げながらゆっくりと引き下ろし始めた。ナイロンの生地が彼女の滑らかな肌から剥がれていくたび、サラサラとした微かな摩擦音が静寂を裂いていく。膝まで下ろしたところで、生地の締め付けから解放された白い太ももが、月光を反射してぼうっと浮かび上がった。黒い繊維が食い込んでいた痕が、白い肌の上にくっきりと赤みを帯びた線を刻んでいる。その生々しさに、見ているこちら側の方が息を詰めてしまう。
その時、朱音の右脚がピクッ、と小さく跳ねた。
俺は手を止め、慌てて彼女の顔を窺う。だが、目は閉じられたままだった。扇状に広がった黒髪が、寝返りの時に崩れたまま額にかかっている。長い睫毛が頬骨の上に細い影を落とし、薄く開いた唇からは、先ほどと変わらない浅い寝息が漏れ続けている。ただ、その反応は明らかに、物理的な刺激に対する無意識のものだった。眠りの中でも、彼女の身体は確かに感覚を拾い、反応を返してくる。その事実が、俺の劣情をさらに深い場所まで抉ってきた。口元に笑みが張り付くのを感じながら、脱がせかけたタイツをゆっくりと足先から抜き取り、ぐったりと重たくなったそれを床に落とした。耳の奥で心臓が、これまでにないほど大きく鳴っている。
雪国の血を引く肌は、青白さの奥に透明感を秘めている。今度は最後の一枚、アイボリーのレースショーツへ手を伸ばした。ブラジャーとお揃いのデザインで、中央の小さなリボンがあどけなさを主張している。両側に指を差し込み、膝まで一気に下ろす。腿の付け根には、細いゴムの跡がうっすらと残っていた。脚から抜き取ったショーツは驚くほど軽く、手のひらの中でくしゃくしゃに縮んでしまう。クロッチの部分には、わずかに染みのような湿り気が滲んでいた。それを親指でこすりながら、俺は自分の中の獣を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸する。鼻を近づけると、ほのかな酸っぱさと、女の身体の芯から立ちのぼる匂いがした。無造作に床へ放り、改めて一糸まとわぬ彼女の全貌を見下ろす。
額にかかる艶やかな黒髪、閉じられた長い睫毛、小さな鼻、薄く開いた唇。細い首筋から鎖骨へと下る線、こんもりと盛り上がる乳房の頂点には、予想より淡い色の乳首がちょこんと存在を主張している。ウエストのくびれ、丸みを帯びた腰骨、そして閉じられた太ももの奥に隠された秘部。月明かりに照らされたその裸体は、教会の聖画から抜け出してきたような神聖さと、それとは相反する、目眩がするほど濃厚な淫靡さを同時に放っていた。むせ返るような汗ばんだ肌の匂いと、浴室から流れてくる湯気の湿り気が、部屋の空気をじっとりと重たく満たしていく。
風呂の湯が沸いたことを知らせる電子音が、遠い世界の出来事のように耳をかすめた。俺は立ち上がり、自分も服を脱ぎ始める。シャツのボタンを手早く外し、チノパンを脱ぎ捨て、トランクスも一気に下ろした。すでに硬さを増していたペニスが、ひんやりとした空気に触れてピクリと震える。仮性包茎の先端はまだ皮を被っているが、これから起こることへの期待で、先走りがじわりと滲み始めていた。漏れ出た我慢汁の生臭い匂いが、ほんのわずかに鼻を掠める。
全裸になった俺は、ベッドの布団をめくり、朱音の隣へ滑り込んだ。シーツのひんやりとした冷たさと、彼女が放つ生命の熱が布団の中で混ざり合い、生温かい空気が二人を包み込んでいく。布団の中で、俺の足先が彼女の足首に触れた。驚くほど細く、冷たい。その冷たささえも愛おしく感じられるほど、頭の中は彼女のことでいっぱいだった。横向きになり、寝顔を間近で見つめながら、右手をそっと胸元へと伸ばす。
人差し指一本で、鎖骨の窪みをなぞる。骨の細さを確かめるように、何度も往復させた。ペースはゆっくりと、皮膚の温度と微妙な凹凸を指先に記憶させるように。次に手のひら全体を、左の膨らみの上へそっと置く。ブラジャーで押さえつけられていた乳房は、重力に従って横に広がり、掌の中でとろけるような、途方もない柔らかさを見せつけた。生暖かい餅を掴んだ時のように、指が全部沈み込んでしまうような、でも決して掴み切れない極上の弾力。その感触を逃すまいと、五本の指をゆっくりと食い込ませていく。
ゆっくりと円を描くように手を動かした。指の腹が、まだ柔らかな乳輪をかすめる。乳首はまだ完全には起き上がっていない。人差し指と中指でそっと摘み、優しく上下に転がした。冷たい指先で何度も、何度も、焦らすように優しい刺激を繰り返していく。摘むたび、指の腹に乳輪の細かな凹凸が触れて、それが逆に俺の神経を逆撫でしてくる。
やがて、乳首がむくむくと硬度を増し、小さな蕾からはっきりとした突起へと変わっていった。指先に伝わる、その確かな感触の変化が俺の興奮をさらに加速させていく。親指と人差し指でしっかりと挟み込み、コリコリと圧力を加えた。俺が胸を高鳴らせていた理由が、今、この指先の下で起きている。
「ん……っ」
朱音の閉じた唇から、微かな吐息が漏れた。まだ眠りの淵にいるはずなのに、眉がほんの少しだけ寄せられ、呼吸のリズムが崩れ始めている。その声は、甘く、鼻にかかっていて、眠りの中から絞り出されたものとは思えないほど色っぽかった。俺は指を離さず、反対の手も彼女の右胸へ伸ばす。両手で二つの膨らみを同時に揉みしだく。ふわふわとした官能的な感触を楽しみながら、時折、硬くなった乳首を摘み上げる。摘み上げるたび、彼女の太ももが小さく震え、布団の中で静かな衣擦れの音を立てた。
彼女の呼吸は次第に浅く早まり、鼻にかかった甘い声が断続的に漏れ出してくる。まだ意識は戻っていない。身体だけが、真摯に、そして正直に反応している。閉じられた瞼の裏で、眼球がかすかに動いているのが見て取れた。その動きが、彼女が何かから逃げようとしているのか、それとも何かに引き寄せられているのか、俺にはどちらとも判断がつかなかった。
彼女の耳元に唇を寄せ、熱い吐息を吹きかけるように囁いた。俺の声は、自分でも驚くほど低く、掠れている。
「気持ちいいか? 朱音」
当然、返事はない。でもその代わり、俺の指が乳首を摘むたび、彼女の身体の奥底から絞り出されるような息が漏れてくる。太ももが微かに擦れ合い、秘部に何かが起こり始めているのを敏感に感じ取った。布団の中で、彼女の体温がじわりじわりと上がっていく。その熱が俺の肌に直接伝わってきて、全身を覆っていく。右手を下腹部へと滑らせ、まだ閉じられた茂みに触れるか触れないかの瀬戸際で、一旦止める。
まだだ。まだ焦るな。
自分に言い聞かせながら、再び乳房へと手を戻した。今度は口も使う。右の乳首に唇を寄せ、そっと舌先で舐め上げた。舌の先から、自分の唾液が糸を引いて、乳首の表面を伝っていくのが見える。汗と、かすかな石鹸の残り香。それらが混ざり合った、清潔でありながら官能をそそる味が、舌の上でゆっくりと広がった。乳輪全体を口に含み、強く吸引しながら、舌の先で尖った蕾を転がす。口の中で乳首がぴんと立ち上がり、上あごに擦れる生々しい感触が、妙に鮮明に感じられた。
「はっ……あ……ん」
朱音の口から零れる音が明らかに変わった。声のトーンが半音上がり、腰が小さくうねり始める。俺は顔を離さず、今度は歯を立てた。痛くない程度に、でも確実に感じるギリギリの強さで、乳首を甘噛みしていく。噛むたびに彼女の呼吸が一瞬止まり、次の吐息が震えながら漏れてきた。それが、どこか許しを乞うような、それでいてもっととねだるような響きに聞こえる。
その瞬間、彼女の右手がぎこちなく動き、俺の後頭部にふわりと触れた。無意識の仕草だろう。でもその指は、俺の髪をかきむしるでも、遠ざけようとするでもなく、ただ所在なさげに、そこに漂っている。指の腹が微かに俺の頭皮をくすぐる。その感触が、意外なほど柔らかく、なのに切実で、背中がぞくりと震えた。
俺は口を離し、上体を起こして朱音の顔を見下ろした。まだ目は閉じている。でもさっきより明らかに呼吸は荒く、頬にはほんのりと朱が差していた。唇はわずかに開き、その隙間から白い歯が覗いている。唾液でてらてらと光る唇が、なんともいえず卑猥で、痛いほどに美しい。彼女の胸元には、俺の唾液が乾きかけて残っていて、月明かりの下で銀色に光っていた。
布団の中で、俺自身は完全に勃起しきっていた。先端から滲む我慢汁が、太ももに冷たい筋を引く。もう限界だ。腹の底から突き上げてくる衝動を、これ以上抑えることは、俺にはできなかった。
彼女の脚をゆっくりと開かせ、秘部を月明かりの下に露わにさせる。茂みの狭間から覗く粘膜は、青白い光を受けて鈍く、しかし紛れもなく淫らに濡れ光っていた。部屋のどこかから漂う埃っぽい匂いとも、汗の匂いとも違う、女の芯から立ちのぼる匂い。鼻の奥が、その匂いでいっぱいになる。
指先でそっと触れると、そこはもう、しっとりと熱く潤んでいた。その感触に、喉がゴクリと鳴る。人差し指を奥へと進めると、狭い襞がきゅうと締まり、侵入者を拒もうとするかのように複雑に絡みついてくる。指の腹に、熱い粘液がまとわりつき、動かすたびに小さな水音が、誰にも聞こえないほど密やかに響いた。指を埋めたまま耳を澄ませると、彼女の呼吸の合間から、そのぬるぬるとした音が確かに自分の指から聞こえてくる。
まだ眠り続ける彼女の身体は、でもその奥深くで、確かに俺を受け入れる準備を始めていた。指を出し入れするたび、彼女の内側がきゅうきゅうと締まって、逃がすまいと絡みついてくる。その締め付けの熱さ、滑り、そして切なげな水音。風呂の湯の沸き上がりを告げる電子音が、再び遠くで鳴ったが、今度はそれも、意識の外側でくぐもった雑音にしか感じられなかった。俺の指と彼女の秘部だけが、世界のすべてだった。
第3章 覚醒と挿入、彼氏の着信が鳴る背徳のリズム

第3章:覚醒と挿入、彼氏の着信が鳴る背徳のリズム
指先が、あかねの割れ目をなぞった瞬間だった。閉じていた瞼がぴくりと震え、薄く開いた唇の隙間から、かすれた吐息が漏れ出した。さっきまで規則正しかった寝息が、不規則な浅い呼吸に変わる。月明かりに照らされた彼女の顔が、何かに怯えるみたいに歪んでいく。濡れた産毛が指の腹に絡みつき、その下でひくつく粘膜の熱が、俺の指先をじわじわと灼いていった。
俺はもう、引き返せなかった。
人差し指の腹で、クリトリスの小さな蕾を探り当てる。茂みの奥に隠れていたそれは、汗と体温でしっとりと潤んでいて、指先に吸い付くような柔らかさを持っていた。ゆっくりと円を描くように転がすたび、あかねの腰がびくんと跳ね、シーツに擦れる太ももの内側が細かく震える。
「ん……ふぁ……」
無意識の嬌声が、静まり返ったワンルームに溶けていった。俺は自分の心臓が喉元までせり上がってくるのを感じながら、彼女の両脚をさらに開かせる。細い太ももを左右に押し広げると、茂みの奥から覗く粘膜が、月明かりを受けてぬらぬらと光っていた。もう十分に濡れている。入り口のあたりは蜜でぐっしょりと湿り、指を呑み込む準備をとっくに整えている。あかねの身体から立ちのぼる、汗と女の匂いの混ざった甘い臭いが鼻を刺し、頭の芯がじんと痺れた。
俺は上体を起こし、あかねの両脚の間に膝をついた。右手で自分のペニスを握り、先端を彼女の入り口に押し当てる。仮性包茎の皮が少しめくれて、敏感な亀頭の先端が、ぬめる粘膜に触れた瞬間、全身に電流が走ったみたいな快感が突き抜けた。
「はあっ……」
自分の口からも、抑えきれない吐息が漏れる。腰を前に進めると、狭い入り口がきゅっと締まり、侵入者を拒むみたいに抵抗した。でもその抵抗はほんの一瞬で、蜜で滑った亀頭はあっけなく彼女の体内へと沈み込んでいく。
ぬるり、と熱い粘膜が俺を包み込んだ。入り口でひだひだが亀頭にまとわりつき、その一歩奥から、ずぶずぶと吸い込むように、ペニスの先端を締めつけながら呑み込んでいく。生暖かい襞がうごめくたび、腰の奥からこみ上げる射精感を、俺は唇を噛んで耐えた。
腰を一気に押し進め、奥まで挿入する。ずぶずぶと沈んでいくペニスに、彼女の内部の襞がぎゅうぎゅうに絡みついてくる。熱い。それでいて、なまめかしくうねる粘膜の締め付けが、俺の理性を一瞬で吹き飛ばす。
その時だった。
あかねの目が、大きく見開かれた。
黒目が焦点を結ぶまでに、数秒の間があった。長い睫毛が数回しばたたき、潤んだ瞳がぼんやりと俺の顔を捉える。酔いと眠りでまだ半分ぼやけた意識の中で、彼女は自分に何が起きているのか必死に理解しようとしている。
「だれ……なんですか、あなた……」
震える声が、喉の奥から絞り出された。呂律はまだ回っていないけど、明らかに怯えと混乱が混ざっている。両手が弱々しく俺の胸を押し返そうと持ち上がり、細い指が俺の鎖骨のあたりをかきむしった。その指先は汗でしっとりと湿っていて、触れられた肌にひやりと冷たい温度が残る。
「やめて……放してください……!」
涙声だった。潤んだ瞳の端から、一筋の涙がこめかみを伝って枕に落ちる。でも俺の腰は、もう止まらなかった。引き戻そうとする腰の動きに逆らうみたいに、彼女の中の粘膜がきゅうきゅうと吸い付いてくる。
ゆっくりと腰を引くと、熱い襞がペニスに絡みついたまま引きずられる感触が伝わってきた。ぬめる蜜が溢れ出し、結合部からぐちゅりと淫らな水音が響く。そして再び奥まで突き入れると、彼女の背中がシーツの上でのけぞる。
「ひあっ……!」
あかねの口から、悲鳴とも喘ぎともつかない声が飛び出す。彼女の両手は俺の胸を押し返すのを諦め、今はシーツをぎゅっと握りしめている。細い指が白いシーツを掻きむしり、そのたびに枕元の空気が震える。
「やめ……動かないで……!」
「動かないでって言われてもなあ。お前の中、すげえ締まるし、絡みついてきてるぜ」
俺は息を荒げながら、腰の動きを止めなかった。正常位の体勢で、彼女の細い腰を両手で掴み、逃げられないように固定する。抽送のリズムはゆっくりと、でも確実に深く。奥まで突き入れるたび、彼女の小さな身体がベッドの上で揺れ、汗ばんだ肌同士が触れ合って湿った音を立てる。
「誰なんですか……なんで、こんな……」
「俺はマサトシ。終電逃したお前を、駅から連れて帰ってやったんだよ」
言葉を区切りながら、腰を打ちつける。ぐちゅ、くちゅ、という濡れた音が、俺の言葉の間に挟まった。
「覚えてねえのか?横浜駅のトイレ前でぶっ倒れてたの、お前だろ」
「わたし……覚えて、なくて……」
涙声で途切れ途切れに答えながらも、彼女の身体は明らかに反応を返していた。ペニスを包み込む内部が、俺の言葉を聞くたびにきゅうと締まる。乳首はこりこりに硬くなり、白い胸の頂点で自己主張している。その淡い色の突起に指を伸ばし、親指と人差し指でぐりっと摘み上げた。
「ひゃうっ!」
「声、出ちまってるぜ。気持ちいいんだろ?」
「ちが……ちがいます、そんなこと……」
かぶりを振るたび、長い黒髪が枕の上で乱れる。汗で額に張り付いた髪の合間から、濡れた瞳が不安げに俺を見上げる。でも違うと言いながら、腰がかすかに動いているのを、俺は見逃さなかった。無意識のうちに、少しでも深く、少しでも気持ちいい角度を探そうとしている。
俺は彼女の耳元に顔を近づけ、わざと低い声で囁いた。
「彼氏いるんだろ、さとるくんっていう。さっき携帯見ちまった」
あかねの身体が、はっきりと強張った。瞳の揺れが激しくなり、唇がわなわなと震え始める。その震えが、俺のペニスにまで伝播して、奥の襞がきゅむきゅむと不規則に痙攣した。
「携帯……見たの……?」
「おう。すげえ連絡来てたぜ。『今どこにいるんだ』『他の男と遊んでるんじゃないだろな』って。心配性な彼氏だなあ」
俺は腰をゆっくりと回しながら、言葉を続けた。内部の襞がぐにゃりとねじれ、その快感に背筋が泡立つ。あかねの耳元に口を寄せるたび、彼女の汗の匂いに混ざった、かすかに甘いシャンプーの残り香が鼻先をくすぐった。
「で、今まさに、他の男と遊んでるどころか、裸で抱き合ってるってわけだ。さとるくんと、どっちが気持ちいい?」
「やだ……言わないで……お願い、そんなこと……」
「ちゃんと答えろよ。さとるくんのより、俺のほうが太くて奥まで届いてるか?」
彼女はぎゅっと目を閉じ、首を左右に振った。でもその仕草の最中も、俺のペニスを包む粘膜は嘘をつけない。さとるくん、という単語を口にするたび、彼女の中がぎゅっと収縮し、俺を締め上げてくる。
「お前の身体は正直だなあ。彼氏の名前出しただけで、こんなにきゅうきゅう締まって」
「ちが……ちがうの……!」
涙が次々と溢れ、白い頬を伝っていく。その涙に口づけし、舐め取る。しょっぱい味と、微かに残る酒の苦味が舌先に広がった。涙で濡れた肌の上を、俺の唇がちゅっと音を立てて吸い上げる。彼女の顎が小さく仰け反り、白い首筋が月明かりに晒された。
その時だった。
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
部屋の隅に放り投げていたバッグから、携帯の着信音が響き渡った。バイブレーションの低い唸りが、静かな部屋の空気を震わせる。さっき座布団の下に押し込んだはずのスマートフォンが、こんなタイミングで鳴り出すなんて。
あかねの顔色が、一瞬で変わった。赤みが差していた頬から、さあっと血の気が引き、潤んでいた黒目が恐怖に見開かれる。下半身がはっきりと強張り、俺のペニスを締め付ける力が痛いくらいになった。急速に収縮する膣内は、まるでこの状況から逃げ出そうともがく別の生き物みたいだった。
「やだ……さとるくん……やめて、出ないで……」
震える声が、半分泣きながら懇願する。両手が俺の背中に回され、縋るみたいにしがみついてきた。さっきまで押し返そうとしていたのと、同じ手だった。細い指が背中の汗を掻き、爪の先が肌に食い込む。
俺の中で、黒い何かがむくむくと頭をもたげる。
腰の動きを止めず、ずるずると彼女の中を擦りながら、ベッドの端から身を乗り出した。床に落ちていた彼女のバッグを手繰り寄せ、中から震え続けるスマホを取り出す。画面には、はっきりと表示されていた。
『着信:さとるくん』
通話ボタンと拒否ボタンが、画面の上で並んで光っている。
「見えるか、あかね?彼氏からだぜ。出てやるか?」
俺はスマホの画面を彼女の目の前に突きつけながら、腰をぐりぐりと押し付けた。奥の一番敏感な部分を亀頭でこすり上げると、あかねの口から甲高い悲鳴が漏れる。
「ひゃうっ……やめ……!」
「今のお前の声、彼氏に聴かせてやろうか?通話ボタン、ここ押すだけで繋がるぜ」
俺の人差し指が、通話ボタンの上をなぞる。画面が反応し、ボタンが緑色に光った。
「だめ!お願い、それだけは……!」
あかねは必死に首を振り、涙でぐしゃぐしゃになった顔で懇願した。さっきまで俺の胸を押し返していた両手が、今は俺の首に絡みついている。細い指が背中に食い込み、爪が肌に薄く傷を作った。
「出ないで……何でもするから……それだけは、ほんとに、お願い……」
「何でもするって、具体的に何をだ?」
「なんでも……します……だから……」
俺はニヤリと笑い、スマホを彼女の顔のすぐ横、枕の上に置いた。画面はまだ着信を表示し続けている。バイブが枕越しに小刻みに震え、かすかな唸りが彼女の耳元で響いていた。
「なら約束しろ。これから言うこと、ちゃんと聞くってな」
俺は腰の動きを再開させ、ゆっくりと奥まで突き入れた。ぴったりと結合した部分から、ぐちゅりと蜜の音が溢れる。彼氏からの着信がまだ鳴り響く中での挿入に、背徳感が混ざった異様な昂奮が俺の全身を駆け巡る。
「わかった……わかったから……許して……」
あかねは涙声で頷き、観念したみたいに身体の力を抜いた。でもその代わり、彼女の内部は別の反応を見せ始めている。背徳と恐怖と快感が混ざり合った極限状態で、粘膜がひくひくと痙攣し、俺のペニスをかつてない強さで締め上げてきた。襞が生き物のようにうねり、侵入者の形を覚え込もうと吸い付くように絡みついてくる。
スマホの着信音が、規則的なリズムで鳴り続ける。その振動が枕を伝わり、二人の耳元で背徳のメトロノームみたいに刻まれていた。俺は腰の動きを加速させながら、通話ボタンに指をかけたまま、あかねの堕ちていく表情をじっくりと観察した。
涙と汗で濡れた頬。恐怖と混乱で揺れる黒目。でも、その奥で確実に灯り始めている、別の何か。快感に屈していく瞬間の女の顔が、月明かりの下であらわになっていく。
「今からお前に教えてやるよ。お前の彼女が、今どんな顔してるか」
俺は通話ボタンに軽く指を添えたまま、あかねの耳元でそう囁いた。実際に繋ぐつもりはなかった。でも、その可能性が消えていないという恐怖だけで、十分だった。彼女の膣がぎゅううっと音を立てそうなほど締まり、俺は思わず低く唸った。
「声出すなよ。聴かれたくなければな」
その一言で、あかねは必死に口を閉じた。両手で自分の口を塞ぎ、声が漏れるのを死に物狂いで堪えている。でも腰の動きは止められない。俺が奥を突くたび、彼女の身体が跳ね、喉の奥からくぐもった悲鳴が漏れそうになるのを、必死に飲み込んでいた。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ。
結合部から響く淫らな水音だけが、着信音と混ざり合って部屋に充満する。彼女は声を殺しながらも、内部の反応だけは止められなかった。むしろ声を抑えようとすればするほど、別の感覚が研ぎ澄まされるのか、粘膜の締め付けはどんどん強くなっていく。
俺はさらにピストンを加速させた。腰を打ちつけるたび、彼女の白い太ももが揺れ、豊満な乳房が波打つ。汗でぬめる肌と肌がぶつかり合い、ぱちゅん、ぱちゅん、と湿った打音が響いた。スマホの着信音が途切れた瞬間、束の間の静寂が訪れたけど、すぐにまた着信が始まった。切れ間なく響くバイブレーションの低い唸りが、部屋の空気を細かく震わせ続けている。
あかねの目から、大粒の涙が溢れ、耳の穴に流れ込んでいく。それでも彼女は、両手で口を塞ぎ続けた。その姿は、悲壮でありながら、どこか淫靡で、俺の支配欲をこれ以上なく満たしていった。
「すげえ締まるな……彼氏からの電話に怯えながら、こんなに感じてるのか」
俺は低く笑いながら、彼女の腰をさらに強く掴み、奥の奥までペニスを突き込んだ。
第4章 強要したフェラチオと自ら求めた口づけ

浴室へ彼女を導いたのは、あかねが最後の痙攣を終え、俺の胸の上で荒い息を吐ききってからだった。
正確には、その数秒前まで、俺はまだ彼女の中にいた。肩を掴んで引き寄せ、汗で背中に張り付いた黒髪ごと抱きしめながら、最後の追い上げを叩き込んでいた。彼女の奥が一際きつく窄まり、きゅうきゅうと何度も痙攣する。その締めつけが決定打になって、私も彼女の最奥に向けて一気に放出した。どくどくと注ぎ込まれる熱の塊を、あかねは喉を反らせて受け止め、全身をふるふると震わせた。彼氏からの着信がようやく途切れた静寂の中で、結合部からぐちゅり、と粘り気のある水音が溢れる。あかねの唇は半開きのまま、声のかわりに細い息が何度も漏れていた。その息を聞きながら、俺は彼女の髪を撫でてやった。汗でぐっしょりと濡れ、首筋や耳の裏に絡みついた黒髪を一本ずつ退かすように。手のひらで背骨をなぞると、彼女の身体がまだひくつくたび、まるで俺を中に残すことを拒めない雌の動きに見えた。
それから、ようやく身体を離した。萎えきらないペニスが彼女の入り口から抜けるとき、白いものが混ざった透明の液がとろりと溢れてきて、太ももの付け根を伝い、敷きっぱなしのタオルに染みを作った。その光景を、月明かりの下でしばらく眺めてから、俺はあかねの腕を引いて浴室へ向かった。
この夜の、もうひとつの始まりがそこで待っていた。
浴室のドアを閉めると、かすかな金属音のあと、換気扇の低い唸りだけが狭い空間を満たした。洗い場のタイルは素足の裏から骨まで冷えて、肌の芯を刺すようだった。なのに、二人分の体温がこの密室の空気をじわじわと蒸らし、鏡には白い靄が這い上がってくる。さっきまで彼女のて一番深い場所にいた余熱が、まだ腰の裏で油みたいに重く燃えていた。
「そこ、座れ」
洗い場用の白い椅子を顎で指すと、あかねはほんの一瞬、唇をへの字に曲げて傷ついた顔をした。けれど逆らうことなく、膝を抱えるようにして腰を下ろす。細い腕が脛に絡みつき、濡れた黒髪の先だけがタイルに触れて、白い肌との境目をくっきりと際立たせていた。太ももの内側には、つい今しがた自分の中から溢れ出たものが乾かずに残っていて、細く光る筋が彼女の素肌をなぞっていた。
シャワーの栓を捻る。最初は冷水が硬い音を立てて跳ねたが、やがて温かな湯が肩から背中へと流れ落ち、浴室全体を白い蒸気で満たしていく。俺は手早く全身を流し、まだ芯の硬さを残すペニスに湯が触れるたび、亀頭の裏側がかっと熱を帯びる。あかねの視線を肌に感じていた。彼女は俯いたまま、けれど洗い場に落ちる湯の流れ越しに、俺の股間を盗み見ている。その視線の先端が、わずかに揺れる。
「肩から流すぞ」
ボディソープを立てた泡は、柑橘というには少し青く、鼻の奥を刺すような香りだった。汗と湯気の匂いを包むように広がっていく。泡の乗った両手を彼女の肩に置くと、あかねの身体がびくんと跳ねる。華奢な骨格。指の腹が沈み込むほど柔らかい肌。後ろ姿の線をなぞるたび、吸い付くような湿り気が掌に絡んだ。肩甲骨の間をゆっくりと指が滑るたび、彼女の背中が小さく波打つ。石鹸の泡が胸の横を流れ、脇腹の窪みを伝い、腰のくびれへと消えていく。その白い筋を目で追いながら、俺は手のひらで彼女の肌を丹念に撫で回した。
「あの……自分で、できます」
その声は浴室の湯気に呑まれて、輪郭だけがやけに弱々しく耳へ届いた。俺はあえて答えず、手を背骨の窪みまで滑らせる。指が降りるたび、呼吸が浅くなり、肩甲骨が内側へ寄る。肌の温度が、泡の下でみるみる高くなっていくのがわかる。彼女の首筋に残っていた俺の精液の匂いが、湯気に溶けてかすかに鼻へ届いた。
「彼氏には、こういうことしてもらったことないのか」
あかねは首を横に振った。振った拍子に、髪の束が背中を滑り落ち、湯に濡れた肌が露わになる。露出した首から肩へかけてのラインが、浴室の白い熱気の中で浮き上がって、俺の視界を奪った。
「……さとるくんは、そういうのしないんだな」
名前を出した途端、彼女の背筋がふわりと強張った。強張りの質が違う。拒絶ではなく、責められることへの怖さと、身体の芯で燻り始めた熱への戸惑いが混ざった震えが、触れ合った手のひらから滲んでくる。その震えには、さっきまで体の奥で何度も達した直後の女だけが持つ、微妙な昂奮が混じっていた。怖がっているのに、指の下の筋肉がわずかにゆるみ、俺の手を拒まない。
俺は彼女の肩を軽く押して、タイルの上に正座させた。膝の皿が冷たい床に当たり、あかねが小さく息を呑む。そのたび胸が上下し、黒髪の間から覗く胸元のふくらみが揺れる。湯で流しきれなかった男の精液の白い残りが、彼女の脚の付け根から内腿にかけて、透明な筋になって這っていた。
「こっちを向け」
俯いたままの顎に指を添え、ゆっくりと上向かせた。彼女の顔の高さと、立ち上がった俺の腰の位置がちょうど重なる。目と鼻の先で、泡と湯に濡れたペニスが、彼女の呼吸に合わせるようにはっきりと脈打っていた。亀頭の先端からは、さっきの射精とは違う、透明の汁がじわりと滲み出ている。彼女の唇からわずか数センチの距離で、それは明らかに彼女を見て反応していた。
「彼氏のと、俺の、どっちが大きいか当ててみるか」
あかねの大きな黒目が揺れた。逃げ道を探すように視線を泳がせる。けれど、どこにも逃げ場がないことを悟ると、その瞳は静かに肉棒へと縫い留められた。薄く開いた唇の間から、体温ごと漏れる浅い吐息が、亀頭の先端をかすかに濡らす。彼女の吐息が触れるたび、敏感な粘膜がぴくりと震え、透明の雫がまた溢れた。
「……わかり、ません」
「なら、確かめてみるか」
身を引こうとする気配など、最初からなかった。俺は亀頭を彼女の唇へ近づける。あかねは息を止め、肩を跳ねさせ、きつく目を閉じた。閉じた睫毛は、浴室の熱とは違う理由で小刻みに震えている。湯気に濡れて、下睫毛の先がまとまって、泣く前のように光って見えた。
「さっきの約束、覚えてるだろ。何でもするって」
「……でも」
「彼氏にはしたことあんだろ。さとるくんにはしてやるのか」
あかねの睫が、開くでもなく閉じるでもなく、わずかに痙攣した。しばらくの沈黙の末、髪先から落ちた雫がタイルに当たって、かすかな音を立てる。その音が合図みたいに、彼女の唇がゆっくりと動いた。
「……したことないです。さとるくんには」
その一言が、耳の奥をじりじりと焼いた。彼氏にも許していない口を、今から自分が犯す。ただの支配欲ではなかった。彼女の中の未開の場所を、自分が誰よりも先に奪うという事実が、腰の奥をどす黒く疼かせ、先走りをじわじわと滲ませた。亀頭の先端が、湯気の中でぬらぬらと鈍い光を帯びる。
「じゃあ、初めてを俺にくれるってわけだ」
あかねは答えない。その代わり、閉じられていた唇が、ほんの少しだけ開いた。抵抗が解けたというより、張り詰めていた何かが音もなくほどけ、自然とこぼれた隙間。その隙間へ亀頭の先端が触れる。彼女の唇の内側は、想像していたよりずっと熱く、そして脆い柔らかさだった。
「……挿れるぞ」
差し込んだ亀頭の先端が彼女の温かい粘膜に包まれた瞬間、あかねの喉から微かな吐息が漏れた。それは拒絶ではなく、むしろ彼女自身でも気づかない反応だった。舌先が、まるで確かめるように亀頭の裏側へ触れる。かすかにしょっぱい先走りの味が、彼女の口の中で広がったのだろう。肩が震え、それでも唇は閉じることなく、少しずつ深くまで含んでいく。俺は腰を進め、彼女の口腔の熱さを確かめた。
「そうだ。もっと深く、咥えられるよな」
あかねは「ん……っ」と小さく頷くように、頭を前に沈めた。唇がペニスのくびれを撫で、亀頭が上顎を押し上げる。ぬめった唾液が切れ端から泡立ち、口の端からこぼれ落ちる。彼女の口内は、先ほどの精液の名残か、どこか塩辛く、それでいてあたたかく、俺の形に吸い付くように蠢いていた。
「……歯は当てるな。舌で包むんだ」
低く告げると、あかねは観念したように顔を前に出した。おそるおそる開いた口内へ、亀頭がじりじりと沈んでいく。生ぬるい粘膜が張り付いて、舌の表面を滑り、硬い口蓋へと押し上げられた。濡れた熱が、先端から根本へ向けてじんわりと染みてくるようだった。彼女の小さな顎が開ききり、呼吸のたびに鼻から漏れる息が熱い。
「ん、……ぅ」
喉の奥に潰れた吐息が引っかかり、排水溝へ落ちる湯の音と混ざって反響する。あかねは加減も舌の使い方もわからず、拙く頭を前後させるだけだ。歯が裏筋へ軽く当たるたび、申し訳なさそうに眉が歪む。苦しそうに顎を引いた拍子に、舌のざらりとした面が亀頭の鎌首を擦り上げて、腰の奥がぞくりと反応した。
その下手くそさが、たまらなくよかった。経験のない口が、見よう見まねで懸命に俺を迎え入れる。呼吸どころか唾液を飲み込むこともできず、口の端から熱い液をとめどなく溢れさせて、それでも必死に頬を窄ませている。あかねのその顔は、この夜の中で見た何よりも強く俺の腹の底を熱くした。彼女の頬の内側がぴったりと吸い付くたび、まるで稚い肉貝が自ら汁を溢れさせながら獲物をしゃぶっているようで、目の奥がちかちかと明滅する。
「舌、使え。先っぽの裏を舐めるんだよ」
あかねの舌が、びくびくと動き出す。ざらりとした舌面が、亀頭の段差をなぞり、裏筋を逆撫でる。じゅる、ぬちゅ、と唾液と先走りが混ざる粘着質な水音。それが湯音と絡み合い、鼓膜の内側でやけに生々しく膨らんだ。彼女の濡れた瞳が、時々上目遣いにこちらを窺う。その度に、舌が止まりそうになって、慌てて動きを再開する。恥じらいが、かえって口淫という行為の拙い熱を際立たせていた。
「そう、……上手いよ、あかね」
上手いはずがない。舌の動きは硬く、要領も知らない。だが、言葉にした瞬間、首筋に走っていた強張りがわずかに弛むのがわかった。あかねはさらに深く咥え込み、亀頭が喉奥へ触れる。細い喉が、吐息ごと収縮して俺を締め上げる。上目遣いに見上げてくるあかねの目のふちが、我慢しきれなかった涙で赤く染まり、それがいっそう俺の加虐めいた熱を煽った。
俺は彼女の後頭部に手を置き、濡れた黒髪を指へ絡めながら、腰をゆっくりと動かした。口内の粘膜がペニスへまとわりつき、奥へ押しやるたびに喉がひくついて、その度に咥え直す。涙の膜が張った瞳がちらりと俺を見上げる。その眼差しの奥に、恐怖や羞恥とは別の、とろりと熱を持った何かが滲み始めている。口の端から零れる唾液が、太ももまで垂れて、白い肌に透明な筋を何本も描いていた。
「出すぞ。口の中で。飲めよ」
あかねの瞳が一瞬、見開かれた。反射的に頭を退こうとする。けれど俺は両手で彼女の後頭部を抱え込み、逃がさない。喉の一番狭い奥を亀頭で押し広げ、せり上がる快感を叩きつけるように突き入れた。彼女の細い指が俺の太ももに食い込み、爪の先が皮膚を掻く。濡れた黒髪がしがみつくように頬へ張り付いて、彼女の耳の裏まで真っ赤になっていた。
「ン――……っぐ、」
どくん、どくんと脈打つたび、喉奥へ精液が叩き込まれる。あかねの眉が苦しげに寄り、白い喉が上下した。ごくん、ごくん、と嚥下する音が、換気扇の唸りの下でやけに鮮明に響く。飲みきれなかった白濁が唇の端を伝い、顎先へ糸を引いて落ちた。その一滴が、彼女の鎖骨の窪みに溜まり、薄い皮膚の上で月の光のように揺れた。
ゆっくりとペニスを抜くと、彼女はせき込みながら両手をタイルへついた。唾液と精液と涙でぐずぐずになった口元が、酸素を求めて震えている。俺を見上げる瞳は、怒りでも悲しみでもなく、処理しきれない何かをたっぷりと孕んで揺れていた。はだけた口の奥に、まだ飲み切れなかった白濁が糸を引いていて、彼女の舌の上でとろりと光る。
「残り、全部飲め」
あかねは荒い呼吸を抑えながら、二度、三度と喉を鳴らして口の中を嚥下した。彼女の口から手を離しても、しばらくの間、沈黙が浴室の中を満たしていた。排水溝へ流れる湯の音が、延々と同じくぐもった調子を繰り返している。俺の精を飲み込んだ喉の動きをぼんやりと見下ろしながら、腹の奥ではまだ次の欲望がちろちろと燻っていた。
広げたバスタオルを脱衣所に置くと、生乾きの繊維の匂いがかすかに鼻を刺した。あかねは鏡の前で俯いたまま、ガラスに映った自分の顔を見ようとしない。唇を結び、手のひらで太ももをきつく擦り合わせていた。口元をぬぐおうともしない。彼女の指の間から、自分の流した液が冷えて肌に張り付いているのが、動きのたびに粘り気のある音を立てた。
「こっち、来いよ」
肩を抱くように立たせても、彼女の足元は定まらない。湯気で湿った肌をタオルで拭いてやると、手が触れるたびに、腹の奥で息を殺すのがわかる。胸の膨らみをタオル越しに抑えるように拭くと、乳首のあたりで彼女の呼吸が一瞬止まった。内腿を拭うとき、指先まで伝っただろうか、彼女は唇の内側をぎゅっと噛んで、鼻にかかった小さな声を漏らした。
浴室を出る間際、あかねが洗濯機の縁に手をついて、一度だけ立ち止まった。
「……わたし、なんで」
声はかすれ、後ろの壁に吸い込まれて消えた。続きはなかった。ただ、タオルの輪を指先でぎちぎちと捻りながら、消えそうなほど小さく震えていた。白い背中に水滴がいくつも残っていて、彼女が立ち尽くすたび、冷たい雫が床に落ちた。
部屋へ戻ると、空気は湿度を含んで重く、ベッドにはさっきまでの情事の痕跡が、シーツの端や中央に不格好な染みとなって残っていた。俺は無言で新しいタオルを敷き、腰を下ろす。あかねは部屋の入口で、胸元のタオルを握りしめたまま立ち尽くしている。濡れた髪先から落ちる雫が、足元の床へ小さく跳ねていた。彼女の唇の端には、浴室で拭ききれなかった白い跡がうっすらと残り、それが部屋の薄暗がりの中で生々しく光って見えた。
「来い」
ためらいのあと、彼女は音を立てずにベッドへ近づき、端へ浅く腰をかけた。その肩を引き寄せ、シーツの上へ寝かせる。湯上がりの肌は、冷めたつもりでいて、触れると内側の熱がじわっと掌に蘇る。タオルの継ぎ目から、洗いたての女の肌と、まだ消えない男の匂いが混ざって立ちのぼった。
「……まだ、やだ……っ」
「やだ、じゃねえよ。身体はもう知ってるんだろ」
囁きながら、白いバスタオルを開いていく。暗い部屋の中、露わになった肢体が淡い輪郭を浮かび上がらせる。薄桃色の乳輪と、冷えた空気に反応して固く縮まった乳首。舌先で軽く転がすだけで、あかねの腰は逃げるみたいに跳ね、太ももが内側へ閉じた。彼女の中はまだ、さっきの射精の余韻を残しているようで、閉じた腿の間から透明の液がとろりと溢れて、敷いたばかりのタオルに染みを作っていた。
「……キス、してもいい?」
その声は、浴室の水音に消えたどんな声よりも甘く湿って、耳の裏にまとわりついた。さっきまで俺の精液にまみれていた唇から、そんな言葉がこぼれる。無理強いでも、命令でもなく、彼女自身の口がそう動いた。自分でもどうしてそんなことを、と戸惑いながら、目線を外せずにいるのが伝わった。
俺は返事の代わりに後頭部へ手をやり、あかねが自分から顔を寄せてくる。唇が重なり、彼女の舌がおずおずと入り込んでくる。歯列をなぞり、口蓋をくすぐる不器用な動き。息継ぎのたび鼻先が触れ、唾液が絡む湿った音が鼓膜の奥で弾けた。口の中にはまだ、わずかに俺の精液の味が残っていて、自分の匂いと味を他人の唇越しに確かめる奇妙な快感が、腰にじんと響いた。
「……んぅ、ちゅ……」
腰が、ゆっくりと揺れ始める。密着した太ももの内側が擦れるたび、彼女の中心から新しい熱が滲むのを感じた。あかねの両手が、ためらいながら俺の背中へ回る。掴むのではなく、縋るような指先だった。脇腹を探るように這う彼女の細い指が、俺の背中の、彼女がさっきまで引っかいていた場所をなぞる。
唇を離すと、互いの唾液が透明な糸を引いて、ぷつり、と音を立てて切れた。あかねの表情からは、さっきまでの強張りが消えている。泣き出しそうなのに、どこか心地よさを手放せない、そんな顔で俺を見ていた。この夜、彼女の中で折れた何かが、音もなく別の欲望へ姿を変えていく。その手応えが、俺の下腹を再び熱くさせた。
夜明けまでは、まだ距離がある。俺は沈み始めた彼女の腰を、濡れたシーツの上から引き寄せた。
第5章 土曜の夕焼けと交換した未練の連絡先

第5章: 土曜の夕焼けと交換した未練の連絡先
朝の光が瞼の裏を白く染めるより先に、俺は自分の下半身にずっしりとのしかかる熱で目を覚ました。ぼんやりと視線を落とすと、シーツの膨らみがゆっくりと上下に動いている。あかねが俺の太腿の間に顔を埋めているのだ。昨夜あれだけ泣いて、気を失うように眠ったはずの十九歳が、今は俺のふといペニスを両手で支えるように抱え込み、ねっとりと根元から亀頭の裏筋までを舌で舐め上げている。
「……お前、何してんだよ」
俺の掠れた声に、あかねはびくりと肩を震わせた。黒髪がシーツの上に広がり、潤んだ大きな瞳だけが俺を見上げてくる。口の端からは唾液と先走りが混じった糸が、朝の光を受けて銀色に光っていた。
「だって、起きたらこんなに硬くて……これ、朝のってやつなんですか? 昨日より、太い気がします……」
恥ずかしそうに、でも目だけは逸らさずにあかねが呟く。頬は上気して桃色に染まり、唇の周りはぬらぬらと濡れていた。彼女の小さな両手が、勃起したペニスの血管をなぞるように添えられている。爪の先まで熱を持った指先が、敏感に反り返る亀頭の縁を控えめに撫で上げるたびに、腰の奥が震えた。
そのまま、彼女は目を閉じて先端を唇に含んだ。ぬるりとした口腔の熱が亀頭全体を包み込み、舌が尿道口をちろちろと舐める。昨日の夜とは別人みたいに積極的で、戸惑いながらも必死な動きに、俺の息が自然と荒くなる。
「ん……んぅ……マサトシさんの、おっき……ふとい……口が、割れそう……」
あかねが顔を離さずに喋ろうとするから、声がくぐもってペニスに振動が伝わる。彼女は俺の亀頭を唇で咥えたまま、ゆっくりと顔を前後に動かし始めた。唾液が泡立って、彼女の口元からだらだらと顎を伝い、白い頬を汚していく。奥まで咥えようとすると、喉の入り口でつかえて「おえっ」と小さく咳き込んだ。それでもやめずに、指で太い根元を支えながら、しゃぶる深さを探るように首を傾げる。
「苦しいならやめろって」
「やだ……わたし、このまま……マサトシさんの、しゃぶって、みたかったの……」
昨夜はさとるくんへの罪悪感で泣きじゃくっていたくせに、朝になってこの変わりようだ。名前を呼ぶ声にも、昨日のアルコールと混乱の濁りがない。素面の彼女が、自分の意志で、俺の足の間に頭を下げている。その事実だけで、脳みその奥がじんと痺れる。
あかねは俺の太腿を枕に、ゆっくりと舌を這わせ続けた。片手は根元を握って根気よく上下にこねくり回し、もう片方は自分の左胸をぐしゃぐしゃに揉みしだいている。彼女の乳首が白い指の隙間から赤く膨らんで、つままれ切なく擦られるたびに、口元から甘いため息が漏れてくる。
「マサトシさんのが、お腹の奥、まだ、残ってるんです……昨日の、ぬるぬる……太いの挿入ってたところ、勝手に疼いて……自分じゃ、止められなくて……」
言葉に合わせて、あかねはシーツに敷いた膝をぎゅうぎゅうと擦り合わせる。卑猥すぎる口上を聞かされたせいで、俺のペニスはさらに硬く膨張した。亀頭が彼女の舌の表面でひくひくと脈打つ。このまま咥えられて射精したい衝動が腹の中を真っ黒に染めていく。
そのとき、あかねが一際深くに咥え込んだ。喉の奥が締まり、嘔吐反射に震えながらも、彼女は俺の腰骨に額を押しつけた。口の中全体がぎゅうぎゅうと収縮して、ペニス全体をしごきあげる。ふといペニスが、顎を押し拡げて、食い込んでいく。あかねの鼻息が荒く、男のアンダーヘアに吐息を吹きかけた。
「んぐ……っぅ、ぢゅる、じゅるる……マサトシさ、ふとい、ぺにす、もう、たまんない……ん、んんっ!? んぐっ、んんんんっ!」
「う、あ……口の中、出すぞ」
そう告げたのに、あかねは頭を離さなかった。逆に瞼をきつく閉じ、覚悟を決めたように唾液をげっぷと混ぜて飲み込みながら、ますます強く吸い上げてくる。頬の内側が真空になって、亀頭の先端を舌の裏で擦りあげる。たまらず、俺は彼女の後頭部を押さえつけた。長い黒髪が指に絡まり、シーツの上で端々が跳ねる。
どく、どく、と腰の奥から精液がせり上がる感覚が走った。彼女は一瞬びくんと全身を震わせて、鼻腔から切ない悲鳴を洩らした。それでも口を離さず、むしろ喉で一滴一滴を丁寧に嚥下する。ごきゅ、ごきゅ、という飲み込みの音が、部屋の中に何よりもエロティックに響き渡る。溢れた白濁が口の端から首筋へと垂れて、その白さが朝の光の中でいやに生々しく見えた。全てを飲み終えたあかねは、ようやく顔を離し、荒く肩で息をしながら、俺を見上げた。舌の上にまだ精液が糸を引いていて、彼女はそれを、小さな唇をすぼめ、味わうようにしながら飲み込んでいく。
その卑猥すぎる姿に、触れたのは精液を飲み込んだ直後だった。あかねが自分から、俺の上に馬乗りになった。太腿の内側を伝わる蜜が、俺の腹の上にまで垂れてくるほど、全身が汗ばんでいた。彼女は俺の胸の上に手をついて、何度も呟くように同じ言葉を口にしている。
「ふといペニス……まだ、挿れてないのに……わたし、もう、たまんない……」
彼女は片手を伸ばし、唾液と精液でぬかるんだ俺のペニスを掴むと、自分の秘裂の入り口にぐりぐりと先端を押し当てた。溢れた愛液が亀頭と女性器の隙間で音を立てて泡立っている。切ないほど開いた襞を亀頭でこじ開けるようにして、ゆっくりと、彼女は腰を落としてきた。
「あ……ぁぁ……ふとい、ふといペニス、挿って……くる……マサトシさんのが、わたしの奥、広げてる……あぁぁあ、すごい、太い……」
ずぶ、と一気に湿った肉壁が咥え込み、俺の亀頭は彼女の一番深い場所にまで届いた。挿入しただけで、中の精液が泡立つ。昨日の俺の精液がまだ残っているのに、また肉棒を呑み込んでいる。その矛盾した感触に、あかねは背筋を仰け反らせて快楽に震えた。長い黒髪が朝の光を乱反射しながら、彼女の腰が上下に跳ねるたびに背中で躍っている。
「あ、あっ、また、奥、あたってる……! ふといペニス、マサトシさんの、太い……さとるくんのと、ちが……ちがう、ちがうんです、さとるくんには言わないで……お願い、見ないで、わたしの、こんな……」
半べそをかきながら、彼女は淫らな腰の動きを止められない。彼氏の名前を口にした瞬間だけ、膣内がきゅっと締まって、後悔と快感が剥き出しのまま混ざり合っているのが伝わってくる。さらに、俺の胸の上で指を這わせ、自分の乳首を服の上からねじり始める。俺のTシャツは汗で透けて、彼女の豊満な胸の形を露わに浮かび上がらせていた。
しばらく抽送を繰り返しているうちに、あかねはもう支えきれなくなったのか、俺の胸に縋りつくように倒れ込んでくる。汗ばんだ頬を俺の首筋に擦りつけ、荒い息で「ふとい、ペニス、ふとい……ふとい……あかね、もう、だめかも、わたしの、奥、犯されて……マサトシさんのふといペニス、きもちいい、きもちいいの……!」と断片的に喘いだ。瞳は涙で潤み、髪は汗と唾液と涙で顔に張り付いている。
「あかね、このまま動いていいか」
「うん、いい……もっと、突いて……太いの、奥で、感じさせて……わたし、いっぱい、イく……!」
返事を聞くと同時に、俺は腰を突き上げた。朝日に照らされた彼女の裸体が跳ね、柔らかな尻肉に音を立ててぶつかる。結合部には白濁と愛液が混ざった泡が輪になって広がり、ぬぐうたびに機微に濡れていく。彼女の膣が俺のペニスを根元までくわえ込むたびに、吸盤のような襞が絡みついて絶頂へと駆け上がっていく。
「きてる、また、きてる……! あぁぁぁっ、ふといペニス、ふといペニス、もう、たまんない、マサトシさん、マサトシさんぁ……っ、いく、いく、イかせて、マサトシさんの太いので……奥、おく、好き……!」
彼女が絶頂に達した瞬間、膣内がびくんびくんと波打ち、俺のペニスを締め上げた。熱い蜜が溢れ出し、太腿の内側を伝ってシーツに染みを作る。あかねは目を白黒させ、舌を出したまま痙攣するように体を震わせた。それでも腰は止まらず、ゆっくりと円を描くようにグラインドしながら、まだ来ない快楽の続きを貪っている。
何度目かもわからない彼女のアクメが始まるたびに「ふといペニス、もうたまんない」と夢うつつに呟く。その声に後押しされるように、俺も一番奥深くで彼女を突き上げながら精を放った。腹の底から二度目の射精が抜けていく感覚。昨日の精液と混ざり合った熱が、彼女の子宮口へと流れ込み、あかねはその熱さに再び軽く身を震わせた。
全てが終わったあと、あかねは俺の胸の上に崩れ落ち、当分のこと動けなかった。うつ伏せに重なった彼女の胎内から、どろどろになった互いの体液が流れ出て、太ももの間に白く糸を引いている。互いの鼓動が生々しく響き合う生温い密室の中で、俺たちは無言のまま、長い長い朝の残滓を味わっていた。カーテンの外の陽は次第に強くなってゆく。
昼過ぎまで、俺たちは二度目の朝の交わりを終えたあとも、身体のどこかを必ず触れ合わせていた。眠るでもなく、話すでもなく、ただ指を絡め合い、互いの汗ばんだ肌に口づけを落とし合いながら、どこまでも怠惰な時間を過ごした。あかねは俺の胸の傷跡を指でなぞりながら、ぽつりぽつりと新潟の実家のことや、大学の友達のこと、最近連絡が減ってしまった高校の後輩のことを話した。広島の高校野球が好きで、新発田の夏は思ったより暑いという話を、彼女は少しだけ恥ずかしそうに語った。どうして今そんな話を、と口にしたくなるのを堪えて、俺はあいづちを打ち続けた。こんな穏やかな朝を過ごす相手じゃなかったのに、今だけはすべてがとろけるように優しかった。
ベッドからようやく這い出したのは午後一時を回ってからだ。あかねは昨晩の記憶を断片的に掘り返したらしく、洗面所から戻ってくるなり、改まった様子で俺の顔を見て、深々と頭を下げた。
「あの……ご迷惑おかけして、すみませんでした」
シーツを胸の前で抱えたままの謝罪は、朝の淫らな姿が嘘のようにしおらしかった。わずかに腫れた瞼の赤みが、昨夜の泣き腫らしを残している。体の芯には明らかな倦怠感と、奥底で疼くような快楽の余韻が残っているのが、歩くたびに太腿の内側が熱を帯びて思い知らされる。風呂でもう一度身体を洗い、俺が用意した適当なTシャツとスウェットを借りると、あかねは申し訳なさそうに袖を通した。男物の布は彼女にはぶかぶかで、肩口からは白い鎖骨が覗き、裾からは昨日の行為で鬱血した内腿の痕がちらりと見え隠れする。本人はただ楽な格好をしているだけなのに、それだけで俺の劣情をまた煽るのだから始末に負えない。
「腹減っただろ。コンビニでなんか買ってくるか、それとも駅前で軽く食うか」
「駅……行きたいです」
あかねは食い気味に答えた。そして、昨日脱ぎ散らかした自分の服を畳み始める。しわになった白いセーターを手に取り、袖についた埃をぱんぱんと払ってから慎重にバッグにしまう。ネイビーのスカートも、黒タイツも、きちんと折り目をつけて。アイボリーの下着だけは、俺の視線に気づいてか、顔を赤くしながら素早くバッグの奥へ押し込んだ。俺はただベッドに腰かけて、その一連の仕草をぼんやり眺めていた。女が男の部屋で服を畳む。たったそれだけの光景なのに、胃の底がぎゅうと音を立てる。昨日の夜から今朝にかけての行為の数々を、布の折り目ごとに仕舞い込んでいるようにも見えた。
俺もジーパンと適当なシャツに着替え、財布と鍵をポケットに突っ込む。部屋を出る前に一度振り返ると、ぐちゃぐちゃになった色の染みがついたシーツの海が目に入った。何度も交わった証拠が、至る所に地図みたいな模様を描いている。帰ってきたら真っ先に洗濯だな、と他人事みたいに思った。でもその時の空気はまだ、俺とあかねの体液の匂いで満たされていた。
外に出ると、秋の日差しが思ったより強くて、目を細める。昨日の記憶はすべて闇の中だったから、こうして昼間の光の下で隣を歩く彼女の姿が新鮮だった。風呂上がりの髪はまだ完全に乾いておらず、湿った束が肩のあたりで揺れている。俺のTシャツから覗く首筋の白さが、午後の光に透けて見えた。歩くたびに、借り物の服の布地と彼女の素肌が擦れ合う、ごくわずかな衣擦れの音が、俺の鼓膜をざらりと撫でていく。
最寄り駅までは歩いて十分程度の距離だ。途中のコンビニでおにぎりとお茶を買い、ふたりで歩きながら頬張った。あかねは鮭おにぎりを小さな口でついばみながら、新潟から上京したばかりで横浜の路線にまだ慣れていないのだと、ぽつぽつと話し始めた。
「金曜は大学の友達とみなとみらいで飲んでて……そのあと一人で帰ろうとしたんですけど、途中で気分が悪くなっちゃって」
「それで相鉄線の改札前で潰れてたわけだ」
「はい……本当に、ご迷惑を……」
「もういいって。何度も聞いた」
俺が苦笑いしながらお茶を差し出すと、あかねは素直にペットボトルを受け取り、口をつけた。昨日の名残はもうそこにはなかった。彼女は彼女で、この非日常をどう受け止めればいいのか、まだ整理がついていないんだろう。歩きながら俺の半歩後ろを追う彼女の影が、ときどき伸びてきて、俺の影と重なった。その重なり方を、無意識に目で追っている自分が、ひどく女々しい生き物に思えた。
駅に着いたのは午後三時を少し過ぎたあたりだ。小さな私鉄の駅は、休日のせいか人通りもまばらで、切符売り場の前には中年の夫婦が一組いるだけだった。改札の手前で、俺たちは自然に立ち止まった。
オレンジ色の夕焼けが、駅舎のガラス窓越しに構内を染め始めていた。夕日を受けたあかねの横顔が、昨日の月明かりとは別の輝きを放っている。白い肌がほんのりと朱に染まり、黒目の中に小さく夕陽が映り込んで揺れていた。あの無防備な寝顔とも、涙に濡れた顔とも、達する瞬間の切羽詰まった表情とも違う、ただの十九歳の女子大生の素顔がそこにあった。それがこの週末の中で、いちばん遠い存在に見えた。
「じゃあ、ここで」
俺はポケットに両手を突っ込んだまま、なんでもない風に言った。あかねはバッグの持ち手を両手で握りしめ、しばらく俯いていた。黒髪が頬の両側に落ちて、表情は見えない。改札の向こうから、乾いた秋風が彼女の髪の毛先をそっと持ち上げる。
「あの……」
彼女が顔を上げた。唇が何かを言いかけて閉じ、また開く。それを二度ほど繰り返してから、小さな声が改札前に落ちた。
「私の番号、いりますか」
その一言が、俺の胸の真ん中をかすめた。昨日の夜、タクシーの中で俺が密かに描いていたシナリオ——家まで送り届けて大人の対応を見せ、連絡先を渡して、いつか次の機会を狙う。あの打算は、とっくの昔にどこかへ消えていた。代わりに今ここにあるのは、もっとずっと始末の悪い感情だ。もう十分に手に入れたはずなのに、まだ足りないと思っている。彼女の方が、この関係の尻尾を手放せずにいる。その混乱と未練がなければ、こんな申し出は口にできないはずだ。そう思うと、彼女自身が気づかない欲の片鱗が、夕陽の中でちらりと覗いた気がした。
「おう、教えろよ」
俺はスマートフォンを取り出し、新規登録の画面を表示した。あかねは自分の番号をゆっくりと読み上げ、俺はそれを一文字ずつ打ち込んでいく。登録名を「あかね」と入力する指先が、ほんの少しだけ震えていたのは、たぶん夕陽のせいじゃない。
「発信、してみてください」
彼女の声に促されて通話ボタンを押すと、数秒後に彼女のバッグの中で携帯が震え始めた。バイブレーションの低い唸りが、昨日のあの背徳的な着信を一瞬だけ思い出させる。あかねは携帯を取り出し、画面に表示された俺の番号をじっと見つめてから、登録ボタンを押した。その指先が、バッグの口元で一瞬ためらうように止まった。
「マサトシさん、でいいですか」
「好きにしろ」
俺は携帯をポケットに戻しながら、改札の向こう側に目をやった。ちょうど電車が到着したらしく、ホームから数人の乗客が降りてくる。あかねは小さく息を吸って、スカートの裾を軽く両手で押さえるように持ち上げた。彼女の足元で、夕陽がふたり分の影を細長く引き伸ばしている。改札を挟んで、俺たちの影はもう触れ合えない距離にいた。
「じゃあ……私、行きます」
「おう」
彼女はくるりと背を向け、改札に切符を通した。ゲートが開く機械音が、やけに大きく駅舎に響く。あかねは数歩進んでから立ち止まり、振り返った。何かを言いかけて、でも結局何も言わず、小さく笑った。発信するかどうかはわからない。そんな曖昧さが全部つまったような笑い方だった。夕陽を背中いっぱいに受けて、黒髪の輪郭が金色に縁取られている。
そのまま彼女は改札の向こうに消え、ホームへと続く階段を上がっていく。白いセーターの後ろ姿が、オレンジ色の夕焼けに溶けながら、だんだんと小さくなっていった。最後に長い黒髪がふわりと揺れて、そのまま視界から消える。男物のスウェットの裾から伸びていた、あの白い太ももが、階上への影になって消えた。
俺はしばらく改札の前に突っ立っていた。ポケットの中で、彼女の番号が記録された携帯がずしりと重い。ホームに停車していた電車がドアを閉め、走り去る音がする。たぶんあの中に、彼女は乗っている。車輪の軋む音が、レールに沿って夕闇の中へと吸い込まれていった。
頭の中で、これから起こりうる展開をいくつかシミュレーションしてみる。俺から発信して、今度は普通に飯でも誘うのか。それとも彼女の方から着信が来るのを、じっと待つのか。あるいはこのまま、互いの番号だけが携帯のメモリに眠り続けるのか。どのシナリオにも確かな結末はなくて、ただ夕焼けの色だけがやけに濃くなっていく。
駅を出て、来た道をとぼとぼと歩きながら、俺は何度もポケットの携帯を触った。取り出して画面を確認し、やっぱりしまって、また取り出す。そんなことを繰り返している自分に気づいて、思わず苦笑いが漏れた。二十六にもなって何やってるんだか。
アパートに戻り、鍵を開ける。部屋に足を踏み入れた瞬間、むわりと残った彼女の匂いに包まれた。汗と、昨日の行為の名残と、それからシャンプーの甘い香り。シーツはまだぐちゃぐちゃのままで、二つの身体がのたくった跡がありありと浮かんでいる。空気自体が重たく湿っていて、換気をする気すら削がれた。
俺は靴を脱ぎ捨て、ベッドに倒れ込んだ。シーツに顔を埋めると、あかねの髪の匂いがまだ微かに残っている。洗濯はまだいいか、と思いながら目を閉じた。この匂いを消してしまうのが、なんだか惜しいような、そんな未練が鼻の奥に居座っている。
携帯をもう一度取り出し、アドレス帳を開く。「あかね」の文字。たったそれだけの文字が、俺の胸に変な風を吹かせる。画面を閉じ、天井を見上げる。窓の外では、さっきまであんなに眩しかった夕焼けが、もう紫がかった夜の色に変わり始めていた。
望んでいた展開だったはずだ。昨日の夜、駅のトイレ脇であいつを見つけた瞬間から、俺はこの結末を——連絡先を手に入れて、いつでも次の機会を狙える立場を——どこかで期待していた。
でも、いざそれを手にした今、胸の奥に広がっているのは達成感よりもずっと名状しがたい空虚さだった。目的を果たした人間の、その先にあるぽっかりと空いた空洞。それからもう一つ、彼女が最後に見せたあの小さな笑顔が、やけにまぶたの裏に焼きついて離れない。あの笑い方は、別れの形にしては柔らかすぎた。
俺は携帯を枕元に置き、シーツに包まって目を閉じた。あかねの残り香が、この週末が夢ではなかったことを肌に訴えかけている。冷めきった部屋で、まだかすかに温もりの残る布団にくるまりながら、俺はいつまでも眠れずにいた。携帯の画面は何度も確認したけど、新しい着信は一度もなく、ただ彼女の名前だけが静かに液晶の中で眠っていた。
いつ発信するか。いや、そもそも発信するのか。答えは出ないまま、土曜の夜がゆっくりと更けていく。俺はシーツに残った彼女の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、まだ見ぬ月曜日のことをぼんやりと考えていた。
登場人物
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真聡 まさとし男性 ・ 26
外見: 短く整えた黒髪、やや細めの茶色い瞳、水泳で鍛えた引き締まった体格、身長174cm。服装: オフホワイトのカジュアルシャツにダークグレーのチノパン、スニーカー。独身サラリーマンで、計算高くずる賢い面がある一方、小心者で孤独感を抱える。女に対して強気に出ようとするが、根は真面目で情に流されやすい。
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朱音 あかね女性 ・ 19
外見: 腰まである長い黒髪、潤んだ大きな黒目、抜けるような色白の肌、華奢な肩幅に対して豊満な胸、スレンダーな腰回り、身長158cm。服装: 柔らかな白いニットセーター、膝丈のネイビー色スカート、黒タイツに茶色のローファー。新潟県新発田市出身の大学一年生。真面目で礼儀正しいが、酒に弱く流されやすい性格。彼氏のさとるくん一筋で性経験は彼のみ。恥ずかしがりだが身体は敏感に反応する。
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聡 さとる男性 ・ 20
外見: 短い茶髪、一重の細い目、細身の平均的体格、身長170cm。服装: 大学生らしいパーカーにジーンズのカジュアルスタイル。あかねの彼氏。嫉妬深く束縛傾向があり、頻繁にメッセージを送り着信を入れてくる。直接は登場しないが、電話とメッセージの存在で物語に影響を与える。





