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妻の母である慶子さんと僕が、亡き義父の残した家の畳の上で還暦の身体を重ね合わせ、誰にも言えない膣内射精を十年間くりかえす朝

シニア官能 / 禁断/近親ぼかし系 全5章 約63分で読了(31,146字) 2026年9月17日

あらすじ

妻と義母と暮らす家で、僕は義母・慶子さんの横顔から目を離せなくなっていた。亡き義父の気配が残る廊下、隣室から聞こえる衣擦れの音、法事の夜にすがりつく指先。還暦を越えた身体が十年ぶりの熱に震え、二人だけの時間が始まる。家庭という器の裏で、誰にも渡せない秘密の温もりを分け合う十年の物語。

第1章 隣室の衣擦れの音

第1章のシーン

第1章: 隣室の衣擦れの音

六月の夜は、湿度ばかりが高くて肌にまとわりつく。窓を開けても風は入らず、網戸越しに聞こえる虫の声だけが、かえって家の静けさを際立たせた。布団の上に仰向けになったまま、天井の木目を数えるでもなく眺めている。隣で柚香は規則正しい寝息を立てていた。片腕を枕の上に投げ出して、薄いタオルケットを腹のあたりまで押しやっている。その姿を横目で確認してから、そっと息を吐き出す。眠れない、というより、眠る気にならない。原因はわかっていた。襖一枚隔てた向こう側。慶子さんの部屋から、かすかに衣擦れの音がしているのだ。

音が聞こえたからといって、何かを期待しているわけではない。ただ、この時間になると決まって、耳がそちらを向くようになってしまっていた。着替えだろうか。それとも、畳の上で寝返りを打っただけだろうか。古い家の襖は薄くて、こちらの息を殺せば向こうの気配まで手に取るように伝わってくる。浴衣を解くときの、布が肌を離れるあの独特な摩擦音。あるいは、帯を畳の上に置くときの、僅かに空気を打つ乾いた響き。そうした音の断片を拾い集めるたび、胸の奥がじわりと熱を帯びた。

「……お義母さん、まだ起きてるのか」

声に出さないまま呟く。隣の柚香は微動だにしない。薄暗い部屋に、ただ二人分の呼気が満ちている。柚香は昔から寝つきの良い質で、一度眠ると少しくらいの物音では起きない。だから、というわけではないけれど、僕は時々こうして深夜の気配に神経を研ぎ澄ませてしまう。十年という歳月は、この家のあちこちに義父の不在を染み込ませていた。廊下の隅、畳の擦り切れ、仏間の空気。そして隣の部屋でひそやかに繰り返される衣擦れの音もまた、喪失の残響に聞こえた。

十年前、義父が亡くなったのは、ちょうど梅雨の走りのような時期だった。葬儀のあと、慶子さんは涙も見せずにてきぱきと喪主の務めをこなし、その背中があまりに小さくて、僕は声のかけ方を知らなかった。それから、実家に一人で住んでいた慶子さんを、柚香の強い勧めで我が家へ迎えた。三人での暮らしは、平穏といえば平穏だった。慶子さんは気を遣いすぎるほど気を遣って、台所にも立たせてくれない時期が続いた。そうして少しずつ、僕の帰りを玄関で待つようになり、夕餉の献立を「あの人も好きだったのよ」と口にすることが増えた。思い出話を聞くたび、わずかながら胸が軋んだのは、なぜだったのか。今ではその答えに近づきすぎている自分を知っている。

襖の向こうで、かすかなため息が漏れた気がした。僕は息を詰める。心臓が、いやに強く肋の内側を打った。その心音が、敷布団を通して畳にまで響くのではないかと思うほど大きい。慶子さんは風呂上がりなのだろう。今日の夕方、台所で洗い物をする彼女のうなじに目を奪われたことを思い出す。

薄い生成りのカーディガンの衿から覗く首筋は、五十代後半とは思えない白さで、淡い汗の光を帯びていた。纏めた髪の毛先に、白いものが数本、逆光に透けて銀色に光る。シンクに置かれた皿を洗う指の動きはゆるやかで、泡と一緒に流れていく汁の音だけが、やけにはっきりと聞こえた。夕暮れの台所に漂う残り香。白粉のような、洗い立ての肌に残る微かな粉っぽさ。あの匂いを思い出すと、何か胸の奥底を掻きむしられるような焦燥が湧いた。

「優弥さん、お風呂、先にどうぞ」

そのときの慶子さんの声がふと再生される。潤んで低い、耳に染み込むような声音だった。彼女は僕の眼差しに気づいていないはずなのに、いつも先回りして湯を沸かしておく。僕が風呂から上がる頃を見計らって、冷たい麦茶を出してくれる。そういう細やかさに、かつてはただ頭が下がるばかりだった。それが今では、触れられない距離の分だけ、何かを欲する気持ちを煽ってくる。

隣室の音が止んだ。しん、と空気が静まる。僕は息を吐く。腕時計は枕元に置いたままだが、体感では零時を回ってだいぶ経っている。瞼を閉じれば闇の裏側に慶子さんの横顔が浮かんだ。寂しげな翳りを宿した横顔。夕餉のとき、味噌汁を啜る柚香の話に相槌を打ちながらも、時折、遠くを見るような目をする。あの瞳の奥に何が映っているのか、本当は知りたくないのに、知りたくてたまらない。義父を喪ってからの十年、彼女が誰にも触れられずにきた身体のこと。そんな事実を、義理の息子である僕が意識してしまっている。それ自体が不埒な欲に違いなかった。

もう一度、衣擦れの音が再開する。今度はさっきより近い気がした。畳を擦る膝の音、あるいは襦袢の裾が踝を撫でる、ごく小さな布ずれの連なり。慶子さんは今、どんな姿でそこにいるのだろう。想像しかけたところで、強く目をつむった。暗闇のなかに、白い肌が浮かんで消える。首筋、鎖骨のくぼみ、細い手首。日常の動作のなかで偶然目にしてきた部位の数々が、断片的な記憶となって僕を責め立てる。

「お義母さん……」

呼びかけたかった。夜の静けさに負けてしまいそうで、その一言を飲み込む。隣で眠る柚香の寝息が、ほんの少しだけ深くなった。彼女の存在が、僕の内側にある熱をいっそう罪深いものへと変える。柚香は明るくて、人懐っこくて、誰に対しても分け隔てなく優しい。そんな妻を裏切りながら、その母に渇きを覚えている僕は、きっととっくに何かを踏み外している。

十日後の法事のことを考える。親族が集まり、義父の十年祭が営まれる。慶子さんは黒い喪服を着て、いつも以上に背筋を伸ばすことだろう。そして人前では涙を見せず、焼香の列が途切れた頃に、こっそりと目頭を拭くのだ。あの静かな悲しみのありようが、僕の胸を冷たく締め付ける。それなのに、頭の別の場所では、喪服の黒が彼女の肌の白さを際立たせるだろうという不謹慎な考えが首をもたげる。黒い布地に包まれた身体が、本当はどれほど温かいのか。指先で触れたら、どんなふうに震えるのか。

畳の上で寝返りを打つ。腹這いになると、己の怒張した中心が敷布団を押し付けて、鈍い痛みに似た感覚が走った。息苦しくて、もう一度仰向けに戻る。汗ばんだ胸元をタオルケットの外へ出した。天井の節穴が、月明かりの加減で青白く見える。その色が、さっき思い出した慶子さんのうなじの白さと重なって、浅い呼吸が続いた。

このままでは朝まで眠れそうにない。そう思ったとき、隣室の音が、今度は明らかに違う音を立てた。畳を擦る足音が二歩。布の落ちる音。おそらく帯か、あるいは羽織っていたものを脱いだのだ。床に落ちた衣擦れの余韻が、夜の暗がりを細かく振動させる。僕はもう、耳を塞ぐこともできなかった。

「慶子さんは、淋しいのだろうか」

その言葉だけが、喉の奥で熱い塊になって留まる。淋しいのは僕のほうなのかもしれない。義父の不在という穴は、この家のどこにいても僕の足元を不確かにさせる。ならば、あの隣室の気配も、同じ穴の縁に立つ人間の揺らぎなのだろう。互いにそれを知りながら、名前のない渇きを夜の襖一枚に隔てられている。

早く眠りたかった。眠ってしまえば、こんな浅ましい熱も朝になれば薄れると、そう信じたかった。しかし、瞼の裏側には相変わらず慶子さんの横顔が貼り付いている。法事の夜、泣き崩れるかもしれないあの人の姿を、慰めるでもなく抱き締めたいと思う自分がいる。いや、抱き締めるだけで済むはずがない。その先の泥濘へ、一歩を踏み入れようとしている獣が、この胸の内に爪を立てて眠らない。

隣の柚香が、寝返りを打って僕のほうへ背を向けた。肩にかかった栗色の髪が、汗ばんだ頬に貼り付いている。彼女の寝息は相変わらず穏やかで、この家の背徳を一瞬たりとも知らない。僕は静かに身を固くして、再び耳をそちらへ向けた。向こうの部屋では、もう何も聞こえない。物音が止んで、深い沈黙が襖を浸す。

それでも僕の五感は、確かに慶子さんの気配を捕まえていた。風呂上がりの肌に残る石けんの匂い。汗ばんだうなじを伝う一筋の湿り気。寝間着に手を伸ばす長い指先。そうしたものが全部、襖の目を透けて流れ込み、横たわる男の身体を焼いていた。

六月の深夜はまだ始まったばかりだった。

十日間という時間は、待つ身には妙に短くて、同時に長い。会社へ行けば仕事の処理に追われ、帰宅すれば柚香の明るい声と慶子さんの控えめな笑顔が出迎える。普段と何も変わらない食卓。冷やした茶碗蒸し、小骨の多い魚の煮付け、浅漬けの香り。箸を進めながら、僕は隣に座る義母の腕の白さを盗み見た。薄い皮膚の下を通る血管の色が、青いほどに透けて見える。こんなにも清潔で、それでいて艶めいた手首をしているのに、慶子さんは自分の身体を慈しむことさえ忘れているようだった。

法事の前日、僕は仕事を早めに切り上げて家に戻った。玄関を開けると、慶子さんが廊下に出てきて、少し驚いた顔をした。

「あら、優弥さん。お早いのね。柚香さんはまだですよ」

「前日ですし、準備を手伝おうと思って」

「まあ、大したことは何も。でも、助かります」

そう言って微笑む慶子さんの頬は、心なしか青白く、目元に薄い隈があった。親族を迎える気苦労だけではない、十年という区切りの重さが、この小さな人の肩に乗っている。僕にはそれがありありと感じられた。

翌日。法事はつつがなく進んだ。僧侶の読経が蝉の声と混じって室内に満ち、線香の煙が暑い空気のなかをゆっくり立ち上る。柚香は親族の相手で忙しく、僕もまた来客の応対に追われた。慶子さんは黒い喪服姿で、背筋を伸ばし、静かに焼香した。真珠の粒が小さい一連のネックレスが、首元でかすかに揺れる。その姿は清楚で、同時に、喪に沈む女の色気のようなものがあった。ごく淡くではあるが、間違いなく、男の目を引く艶だった。

宴席が終わり、親族を見送り終えたのは夜も更けてからのことだった。柚香が後片付けをしようとするのを、僕は先に休むよう促した。彼女も疲れた表情で、素直に従う。

「あとでお茶いれてあげるね」

そう言って、柚香は二階への階段を上っていった。僕が台所へ戻ると、薄暗い廊下の先で慶子さんが一人、壁に手を添えて立っていた。背中が小さく、時折、肩が細かく波打っている。

私は廊下の冷えた空気のなかを歩み寄った。裸足の足音を消すように、ゆっくりと。近づくほどに、慶子さんの荒い息づかいが聞こえてくる。もう彼女の横顔は涙でぐしゃぐしゃだった。粉おしろいが浮くほど白い頬に、透明な筋が幾条も流れ落ちている。黒い喪服の袖が、口元を押さえるようにして震えていた。

「慶子さん」

声をかけると、彼女は弾かれたように顔を上げた。潤んで赤い目が、暗がりのなかで僕を捉える。

「……ごめんなさい。こんな、情けないところを」

「大丈夫ですよ。誰も見ていませんから」

「違うの。そうじゃなくて……私、優弥さんがいなかったら、どこで気持ちの置き場を探せばいいのか、わからなくて」

言葉は途中で涙に溶けて途切れた。慶子さんの華奢な両肩が、声にならない嗚咽で小刻みに揺れる。胸の奥がぎりぎりと音を立てて締め付けられた。気がつくと僕は、その震える肩を抱いていた。黒い喪服の布は汗を吸ってしっとりと湿り、線香と白粉と、かすかに塩のような涙の匂いが混ざり合う。

慶子さんは一瞬、身を固くした。けれど拒むでもなく、縋るように僕の胸へ額を押し付けてきた。両手が、僕の背中へ回される。着ていたワイシャツの布を掴む指先が、あまりに熱かった。ここが冷えた廊下であることを忘れるほどの熱さが、指の形に沿って背中に貼り付く。互いの心臓の音が混ざり合い、どちらのものとも知れない鼓動が耳の奥に響く。

「わかってるんです。こんなの、いけないことだって。でも、今だけでいいの。今だけでいいから、こうさせてください」

慶子さんの声は濡れて震え、ほとんど吐息に近かった。その懇願が、僕の内側に眠っていた獣を呼び覚ます。腕に力をこめると、喪服の下の女体がしなやかに僕へ沈んできた。骨ばった背中、細い肩、吐息がかかる心臓。すべての輪郭が、布越しにあまりに生々しく伝わってきて、男の身体は正直だった。

「僕も、……僕こそ、今までどこにも行けなかったんです」

返す言葉は、自分でも確かめたことのない本音だった。慶子さんは顔を上げ、涙で濡れた目をぱちりと瞬かせる。僕はその眼差しをまっすぐに見つめ返した。彼女の唇が、何かを言おうとして開きかけて、途中で小さく震えた。生暖かな夜気が、二人の身体のあいだだけを逃げ場なく満たしていく。

階段の上から、柚香が呼ぶ声が聞こえた気がした。いや、それは空耳だったのかもしれない。僕たちはそれでも、すぐに離れることができなかった。背中に回った慶子さんの指先が、ゆっくりとワイシャツを撫でる。汗ばんだ掌の凹凸が、背筋をなぞるように動くのを感じた。抱擁がただの慰めで終わらないことを、僕はこの瞬間、確信した。

第2章 十年ぶりに開く襦袢の合わせ目

第2章のシーン

第2章: 十年ぶりに開く襦袢の合わせ目

七月初旬の深夜、家の中の空気は茹だるように重く澱んでいた。布団の上で何度寝返りを打っても、汗ばんだ背中と敷布団のあいだに湿った熱がこもるばかりで、眠りの気配はどこからも訪れない。枕元の小さな目覚まし時計に目をやると、短針は二の少し手前を指している。隣では柚香が深い寝息を立てていた。薄い夏掛けを腹の下まで押しやった格好のまま、時折小さく寝言を漏らしている。僕はその寝息を確かめてから、音を立てないように上体を起こした。

廊下へ出ると、昼間の熱を吸い込んだ畳が、裸足の裏にじっとりと湿った温度を返してくる。足音を殺して歩く。心臓が肋の内側を叩く音が、やけに大きく頭の芯に響いた。慶子さんの部屋の前まで来ると、襖の向こうからは何の物音も聞こえない。もう休んでいるのかもしれない、と頭の片隅で考える自分がいる一方で、指先はすでに静かに襖の縁へとかかっていた。

「……優弥さん、ですか」

襖を引くより早く、向こう側から声が落ちてきた。眠りに落ちる前の、かすかに掠れた低い声音だった。僕は一瞬息を飲み、それから蚊の鳴くような声を返した。

「眠れなくて……その、お義母さんも、まだ起きていらっしゃいますか」

「ええ。私もどうにも目が冴えてしまって」

ややあって、襖がするりと開いた。暗がりに滲むようにして慶子さんが立っている。紺地に細かい百合の柄をあしらった浴衣をまとい、胸元は片手で押さえたままだった。首筋にまとわりつく細い髪が、部屋の奥から洩れる薄明りを透かして銀色に光っている。浴衣の合わせ目から覗く鎖骨のくぼみが、淡い影を湛えて闇のなかに浮かんでいた。顔を上げた慶子さんは、僕の姿を確かめるように少しだけ細い目を開いた。

「こんな夜更けに、どうなさったの。何かありましたか」

その問いの形はあくまで義母のものだった。けれど声の裏には、あの法事の夜から続いている戸惑いと、諦めきれない何かが張り付いている。僕は答えず、半開きになった襖の隙間へ一歩足を踏み入れた。畳の冷ややかな匂いが鼻をくすぐる。昼に干した布団の陽だまりの名残と、線香よりも微かな、肌に残る白粉の香りが空気の底に沈んでいた。

「慶子さん」

名を呼ぶと、彼女の肩がかすかに強張った。けれど逃げるでもなく、押し返すでもなく、浴衣の襟元を握りしめた指先がふるりと揺れる。その手首の細さが、部屋に落ちたままの闇のなかで妙に白く見えた。僕はもう一歩だけ距離を詰めて、彼女の浴衣の袖へそっと手を伸ばした。指先が触れるか触れないかというところで、慶子さんの唇から短い息が漏れた。

「眠れないのは、私も同じなんです」

僕の言葉に、彼女は静かに瞬きをした。濡れたような茶色い瞳が、何かを問うように僕を見つめる。けれどその視線の先には、いつか見た寂しげな翳りではなく、もっと別の、熱を宿した揺らぎがあった。僕はたまらなくなって、彼女の手首を握った。触れた肌は、外気に晒されていたせいかひやりと冷たく、その下に流れる脈がとくとくと早鐘を打っているのが分かった。

「優弥さん……いけません。こんなことを、このままでは、私」

言葉の終わりは半ば吐息に変わって消えた。慶子さんは身を退こうと半歩下がる。その足首に襦袢の裾がからんで、小さくよろめいた。とっさに腕を回すと、軽い身体がすっぽりと僕の胸におさまった。浴衣越しに彼女の体温がじんわりと移り込む。首筋のすぐ下、襟元から立ち上る柔らかな髪の匂いと、肌の表面を飾る白粉の微かな香りが、互いの呼吸のたびにきつく混じり合った。

「離さないと、もう、本当に戻れなくなりそうで」

慶子さんの声は震えていた。けれど僕の背中にしがみつくように置かれた両手には、言葉とは裏腹な強さがこもっている。長い指先がシャツの背筋のあたりを縋るように掴み、ぐっと握るたび、血の熱さが布を透かして押し当てられた。心臓の鼓動が互いの胸の間でぶつかって溶けていく。僕は何も言わずに、片手を彼女の背中へ滑らせ、浴衣の上から骨の浮き方をたしかめるように撫でた。

「僕が、あなたのそばにいてはいけませんか」

声が、隣の部屋へ洩れないよう配慮した分だけ低く沈んだ。慶子さんは僕の胸に顔を伏せたまま、数秒の沈黙のあと、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

「いけないのではなくて……これ以上、優弥さんまで、私の渇きに巻き込んでしまいそうで、怖いのです」

その一言が、僕の理性の箍を外した。腕に力を宿らせ、浴衣の帯の上から彼女の細い腰を抱き寄せる。すると慶子さんの口元から「はぁ、」という短い吐息が洩れた。胸元を押さえていた手がおずおずとほどけて、代わりに僕の胸板を探るように触れる。浴衣の合わせ目が自然に開き、柔らかな曲線を描く首から下の肌が、月明かりをはらんで白く剥き出しになっていく。

「慶子さん……今夜はこのまま、あなたの部屋にいさせてください。眠れないままでいい。ただ、あなたに触れていたいんだ」

慶子さんは答えず、ただ僕の胸に凭れかかる力をほんの少しだけ強めた。夜の静寂が襖の内側まで満ちていて、二人の呼吸音だけが畳の目に吸い込まれていく。彼女のうなじが、取り乱した汗のせいでしっとりと濡れて光っていた。僕はその白いうなじへ唇を寄せた。

「あっ、……優弥さん、そんな」

首筋に唇が触れた瞬間、慶子さんの背が大きく揺れた。耳の裏から肩の線へかけて、薄く汗ばんだ肌の上をそっと舌先でなぞると、彼女は息を詰めて僕のシャツを握りしめる。白粉の香りに混ざって、ほんのわずか、女の肌から立ち上る酸いような匂いが鼻先をかすめた。

「お風呂に入った後なのに、汗をかいていて、恥ずかしい……」

慶子さんの声は恥じらいに濡れて、ひどく消え入りそうだった。けれど僕には、その言葉さえも今は愛おしく、もっと彼女の全身から鳴る声を聞いていたいと思う。逃げ腰になりかけた細い腰を引き戻して、今度は鎖骨のくぼみへ唇を押し当てた。浴衣の襟を手のひらで押し開くようにすると、露わになった胸元の皮膚が、闇のなかで息を呑むほど白く浮かぶ。

「綺麗です。十年、誰にも触れられていなかったなんて、嘘みたいだ」

僕が言うと、慶子さんはふるふると小さく首を振った。

「もう若くはありません。それに……私は、あなたのお義母さんなのですよ」

「分かっています。分かっているから、僕はこうしているんだ」

その言葉に、彼女は何かを決心したように顔を上げた。涙のにじんだ瞳が、まっすぐに僕を射抜く。唇が薄く開き、何か言いたげに震えていたが、やがて静かに閉じられる。代わりに、彼女のほうから背伸びをするようにして、僕の首へ両腕を回した。柔らかい胸の膨らみが、浴衣とシャツを隔てて、ぎゅっと僕の胸に押し潰される。

「どうか、後悔させないでください。今だけの私を、しるしのない女にしないで」

その瞬間、僕は慶子さんの肩を抱いたまま、そっと畳の上へ二人で崩れ落ちた。敷きっぱなしの布団が、湿った重みを帯びて背中を受け止める。彼女の浴衣の裾がほどけて、白い脛から膝が覗いた。僕はその膝に手を置き、焦がれるようにして彼女の唇を塞いだ。

柔らかな唇が触れ合う。最初は啄むだけの、互いの温度をたしかめるだけの口づけだった。けれど何度か角度を変えて重ねるうち、どちらからともなく唇を開いて、舌がひたりと触れ合った。慶子さんの舌は小さく、ぬるく、甘く痺れるような温度を持っていて、僕の舌と絡み合うと遠慮がちに何度も吸いついてくる。くちゅ、くちゅと、唾液の混じる湿った音が、静かな部屋のなかでやけに朗かに響いた。

「ん……ふぅ、んっ、……は、ぁむ」

彼女の鼻から抜ける息が、僕の頬を熱く濡らしていく。舌先で上顎をなぞると、慶子さんの背筋がびくんと弾んで、僕の首に回した腕へ一層強い力がこもった。浴衣の帯は半ば解けかけていて、前が大きくはだけている。そこからこぼれ出る白い胸元に指を滑り込ませると、十年の空白を守ってきた柔肌は、汗ばんでしっとりと糸を引くように指先へ吸い付いてきた。

「や、ぁ……汝、そんなふうに触ると、私……」

慶子さんが熱い吐息の合間に身をよじる。だが、身をよじるたびに浴衣の襟はさらに開いて、形のよい胸の膨らみが惜しげもなく闇へさらされた。小ぶりながら確かな重みをたたえた乳房は、重力に負けずつんと上向いていた。先端はすでに衣服の擦れに反応したのか、硬くこりんとした肉粒になって薄闇のなかにそそり立っている。僕は指先でその尖りを軽く摘まむように転がした。

「ひぅ……っ!」

慶子さんの喉が反り返って、背中がしなる。その反応に男の心臓がどくんと高く跳ねた。僕は彼女の身体を横向きから抱え寄せると、はだけた浴衣の合わせ目をさらに寛げて、乳房の先端へむしゃぶりつくように唇を付けた。舌先で肉粒を押し潰すように弾き、唾液をたっぷり含ませてから、今度は上下にこりこりと転がす。指先では感じ取れなかった乳輪の小さな凹凸まで舌に絡みつくようだ。

「あ、ああっ……あ、だめ、それ、ちょっと、強くて……っ」

慶子さんの口唇からは、もう整った言葉が溢れ出てこない。僕は片方の乳房を吸い上げながら、空いたほうの手で浴衣の裾を太腿の上までたくし上げた。浮かび上がるのは、長い衣服に隠れていた白い太腿である。汗でぺたぺたと湿った内ももの柔肉は、触れるだけで女の身体が熱を持っている事実を伝えてきた。太腿の付け根すれすれまで手を滑らせると、慶子さんが小さく首を振る。

「そこは、まだ……お願いです。心の準備が、追いつかなくて」

本当に拒んでいるというより、恥じらいが音になって溢れているだけだと、肌の震えが語っていた。僕は彼女が望むまま、しばらく触れずに、剥き出しになった乳房と鎖骨と首筋とを、唇と指先で時間をかけて愛撫していく。舌先で乳首を転がすたび、慶子さんは「んっ、くぅ……んあっ」と喉の奥で泣く。その声の揺れ具合に合わせるように、彼女の浴衣の下の身体が、少しずつ、確実に開いていくのが分かった。

「優弥さん、わたくし……あの夜からずっと、夢を見ているようでした。あなたの腕のなかにいるのを、朝になっても、覚えていて」

慶子さんの口調はもう、日常の穏やかさを手放していた。言葉の節々に甘えが混ざり、語尾がほどけるように消えていく。僕は汗で額に張り付いた彼女の黒髪を掬い上げてやりながら、その白いうなじへ唇を押し当てた。

「僕も同じです。ずっと、気持ちの置き場がなくて。今夜こうして触れ合っても、まだ夢みたいだと思うくらい、ずっとずっと渇いていました」

「そんなに長いあいだ、私を……女として見ていてくれたの」

「ええ。いつからかなんて、自分でも説明がつかないくらいです。気がついたら、慶子さんの横顔ばかり目で追っていました」

慶子さんは泣き笑いのような微笑みを浮かべて、僕の頬をするりと撫でた。指先の震え、柔らかな掌のひら、そして汗ばんだ肌から匂い立つ女の香り。それら全部が五感を貫いて、体の芯を焼いていく。僕はもう一度彼女の唇をふさいで、舌を深く、絡めるように差し入れた。慶子さんもまた、遠慮を捨てたように、自ら舌をぎこちなく蠢かせて応えてくる。

「ちゅ……んっ、れろ……はぁ、優弥さん、優弥さん……」

名を何度も呼ばれながら唾液を交換していると、じわりと腹の底から別種の熱が込み上げた。七月初旬の湿度、夜通し室内にこもった生温い空気、汗で張り付く浴衣とカットソーの感触。そうしたものが織り重なり、濃密な密室のなかで、互いの息遣いは獣のように乱れていく。

僕は慶子さんの帯を完全に解いた。するりと浴衣が畳の上に開かれる。紐の擦れる音、裾が足首を撫でる音、帯が敷布団の上へ落ちる乾いた響き、そのどれもがやけに耳に近く感じられた。半裸に近い姿で横たわる慶子さんの乳首を、今度は指の腹で押し潰し、こね回しながら、彼女の白い脇腹へ唇を這わせる。薄く浮いた骨の上は、舌でなぞるとしょっぱく汗の味がした。

「はあっ、ん……も、もう、どこに触っても、おかしくなりそう」

慶子さんの声は高く砕けかかっているのに、まだ何かが恥じらいの箍を支えていた。僕は顔を上げ、彼女の乱れきった表情を正面から眺める。半開きの唇、濡れた瞳、切れ切れに震える喉、浴衣に包まれた下腹と、その下の秘めやかな領域まで、熱が波打つようにうごめいている。その無防備な乱れ顔を目にした途端、胸の奥の奥で何年も凝っていた渇きが、音を立てて溶けていくのが分かった。

僕は彼女の名を、今度は呼び捨てで呼んだ。慶子、と。その一言に、彼女はびくりと肩を震わせた。それから少しの間、熱に浮かされたような眼差しで僕を見返して、小さく首肯した。唇が何かを紡ごうとして、言葉ではなく熱い溜息だけを漏らす。

月明かりは厚い雲に遮られて、部屋の中はいっそう昏い。なのに、皮膚と皮膚の滑り合う音、湿った唇の吸い付く音、指先が乳首を捏ねる度の弾むような嬌声だけは恐ろしいほど鮮やかだった。僕は慶子さんの浴衣の合わせ目を胸元から下腹までゆっくりと押し開き、その白い肌を目に焼き付ける。無造作に投げ出された褥の上に、彼女の四肢は長く伸びていた。まなじりがうっすら紅く色づき、口元は半ば開いたまま小さく喘いでいる。

「今夜はまだ、全部を急がない。だから、慶子さんの肌を、僕に少しずつ教えてください」

僕がそう言うと、彼女は一瞬泣きそうな顔をこちらへ向けた。ふ、と強張りの解けた息が洩れて、胸のふくらみが上下する。汗が鎖骨のくぼみに溜まり、微かな白粉の匂いと一緒に甘苦い香りを放っていた。僕は再び唇でそのくぼみを塞ぎ、額に貼り付く髪を払いながら、何度も何度も彼女の名を呼んだ。慶子さんは僕の頭を抱き、細い指を髪へ差し込む。その指先の熱が、夜の底で燃えている何からしい火種をいっそう強く煽るのだった。

畳の上では、解かれた浴衣が大きく広がり、乱れた衣紋の影が天井へ揺れていた。まだ襦袢と呼ぶには薄い、夏の夜の一枚布が、まるで互いの境界を崩すように、二人の肌のあいだでしわを寄せている。慶子さんの首筋に残る白粉の香りは、汗と混ざって少しずつ甘く変質し、僕の嗅覚を麻痺させる。孕んだ夜気のなかで、指と唇はさらに彼女の肌の質感を追いかけた。鎖骨から肩、肩から二の腕、そして手のひらを返して指の一本一本まで。すべてが柔らかく、それでいて芯のある、女の温度を保っていた。

「もっと、慶子さんに触れたい」

僕の吐息混じりの声に、彼女は少しだけ目を閉じ、それからゆっくりと瞼を持ち上げた。その仕草だけで、汗ばんだ太腿がもじるように内側へ擦り合わせられる。そんな何気ない動きさえ、僕の芯をきつく灼いていく。

「優弥さん、お願いです。どうか、焦らないで。でも……もう少し、あなたの指で、私をたしかめてください」

甘えた囁きだった。僕は浴衣の裾を太腿の半ばまで押し上げ、露わになった膝小僧の内側へ唇を這わせた。ふっくらと柔らかい内腿の肉は、触れたそばからぴくりと粟立ち、慶子さんの口から鼻にかかった吐息が絶え間なく漏れてくる。十年ぶりに他人の粘膜を受け入れる準備を、彼女の身体がすでに始めていた。まだ濡れそぼつ前の、くすんだ陰りを帯びた白い肌が、僕の視界のなかで淡く発光しているように見えた。

「綺麗だ。こんな夜中に、こんな姿の慶子さんを、僕はどうしたらいいのか分からなくなる」

「もう……いいのです。何も考えないで。あなたがこうして触れてくれる、それだけで、私は女に戻っていくみたいだから」

その一言を最後に、部屋には甘い沈黙が下りた。汗の匂いと夜の湿り気だけが、剥き出しの肌の上をゆっくり流れている。七月の午前二時を回った家のなかで、二人分の荒い呼吸が襖を震わせていた。

第3章 溢れる愛液をすする夜

第3章のシーン

第3章――溢れる愛液をすする夜

慶子の膝裏へ手のひらを差し入れた。薄く汗ばんだ肌は敷布団の熱を含んでしっとりと柔らかく、骨の細い輪郭が指の腹にまで浮き上がってくる。彼女の両脚はまだわずかに閉じようとする力を残していたけれど、太腿の内側へ触れただけで、その抵抗はほどけるように緩んでしまった。浴衣の裾はとっくに意味を失っていて、白い脚の付け根までが闇のなかに投げ出されている。僕は慶子の膝をゆっくりと持ち上げ、外側へ開かせた。汗で張り付いた肌と肌のあいだに、薄い空気の層が裂けるようにして露わになっていく。

「あ……優弥さん、そんな、あからさまに、開かないで……」

慶子の声は、言葉の形を保つことさえ難しそうに震えていた。片手で浴衣の胸元を押さえ、もう片方の手で敷布団の端を握りしめている。足首から下が畳の上へこぼれて、小さな爪先が空を掻くように反り返った。恥じらいの面影は確かに残っているのに、腰のあたりはかすかに浮き上がり、何かを待ちわびるような動きが混じっている。僕は彼女の太腿の内側を両手でそっと押し広げて、その中心へ目を凝らした。

そこには、想像していたよりもずっと濃い色があった。薄暗がりのなかでも分かるほど厚みを帯びた花びらは、熟れた果実の皮がうっすらと裂け始めたような色をしていて、閉じた合わせ目からは蜜の気配が溢れている。茂みは丁寧に整えられていたが、汗と湿気で縮れた毛が肌に貼り付き、中心部はすでにしっとりと光っていた。鼻先へ届く匂いが、さっきまでとは明らかに質を変えている。白粉の残り香や湯上がりの石けんではなく、もっと根本的な、女の粘膜から立ち上る酸甜い芳香。十年という長い時間、誰にも触れられなかった場所が、今、空気に触れただけで細かく呼吸しているように見えた。

「すごく、湿っています。ここだけ、こんなに濡れて……」

言葉にしたら、さらに生々しさが増した。慶子は片手で顔を覆おうとして、途中で指を開き、潤んだ瞳だけをこちらへ向けた。唇は半開きのまま、空気を探すように浅い呼吸を繰り返している。

「やめて……そんなふうに、じろじろと言わないでください。私、どうしていいか、分からなくなってしまうから」

その声は甘い悲鳴に近くて、拒絶の形を借りた懇願だった。僕は返事の代わりに、彼女の太腿へ唇を押し当てた。内側の柔らかな肉へ、音を立てるつもりはなかったのに、自然と吸い付いてしまう。ちゅ、と小さな音がして、慶子の身体がびくりと跳ねた。

「ひゃ、……っ」

爪先が畳を蹴るように伸び切る。僕はそのまま口づけを内腿の付け根まで滑らせ、中心部へ顔を近づけていった。濃い芳香が鼻の奥を満たしていく。若い女のような甘ったるさばかりではない、熟した果肉を潰したときの果皮の渋みに似た、鋭く複雑な匂いがした。男の額のあたりに汗が滲み、喉が鳴る。

舌を押し当てた瞬間、慶子の腰が痙攣のように跳ね上がった。しっとりと濡れた花びらは、思った以上に熱く、舌先を置いただけでふるふると震えている。うすく開いた合わせ目の中央を、上から下へゆっくりと舐め上げる。味は、汗と体液が混じり合ったしょっぱさのなかに、かすかな甘みが隠れていた。

「ひぃっ……あ、あぁっ、そ、れ、舌が……」

慶子は片手で口元を押さえ、敷布団の上で背を反らせかける。空いた手が宙を探り、やがて僕の髪をつかんだ。強くもなく、逃がしもしない、縋るための指先が頭の後ろで震えている。僕はもう一度、花びらの真ん中へ舌先を差し込んだ。ぬぷ、という粘液の音が耳のすぐ近くで響く。慶子の太腿が、勝手にぴくぴくと内側へ閉じようとはためいた。

「んっ、く……あっ、ああ……なに、これ、すごい音、してる」

「慶子さんの、ここが。そういう音をさせてるんですよ」

「ちが、違います、私、そんなつもりじゃ……ひゃんっ」

陰核の真上へ舌の腹を押し付けると、彼女の声が裏返って途切れた。脚の筋肉が強張り、腰が浮いて、押さえつけていないほうの片足が何度も宙を蹴る。花びらの奥からは、とろとろと新しい液体が湧き出してきて、僕の顎を下へ垂れていく。太腿の付け根を伝って、敷布団の上に小さな染みを作った。

僕は陰核を唇で挟むようにして吸い上げながら、舌先でこりこりと転がした。汁が鼻先にかかって、生温かい粘液の匂いがさらに濃くなる。ちゅぷ、くちゅ、れろれろ、と口の周りで響く水音が、自分の立てている音とは思えないほど猥らに耳を打った。慶子はもう声を抑えることさえできず、喉の奥から溢れるような泣き声を断続的に洩らしている。

「あ、あう……んんっ、それ、そこ、ばっかり、したら、わたし、おかしく……ふぁ、あぁっ」

言葉の終わりは、もうほとんど嬌声だった。彼女の両手が、落ち着きなく動いている。片方はまだ僕の髪をつかんだままだが、もう片方は浴衣の襟元を掻きむしるように開いて、自分の乳首へ指を這わせている。無意識の仕草なのだろう。閉じたり開いたりする指先が、白い肌の上で淫らに踊っている。その隣で、腰がゆるやかに揺れ始めていた。押し寄せる快感を逃がそうとするのか、それとももっと強い刺激をねだっているのか、僕にはどちらともつかない動きだった。

慶子の口元が、裂けた果実のように半開きになって、熱い吐息をこぼした。唾液で濡れた唇が月光を受けて光り、喉の奥で言葉にならない音が転がる。耳の裏から顎にかけて汗が一筋流れ、うっすらと浮き出た鎖骨の窪みにまで落ちていった。その肌は、熟年の女ならではの細かい皺を見せながらも、内腿や乳房の付け根には若い肉の張りも残していて、目が離せなくなる色気があった。僕の知らない男の手で、この身体がどれほど丹念に愛された時期があったのだろうと思うと、胸の奥に昏い火が灯るのが分かった。

頭の芯を、彼女の下腹部から立ち上る匂いが抜けなくなっていた。汗ばんだ太腿の間から、蒸れた下草と、湯上がりの清潔さと、内側から滲み出た体液が混ざり合う。それは鼻から吸い込むたびに、頭蓋の奥をじんと痺れさせ、唾が湧く代わりに舌先が彼女の味をもっと欲した。慶子の半開きの陰唇のあいだから、その匂いの元がとろりと溢れてくる。呼吸をするたびに、その湿った厚みが開き、中の粘膜がひくつくのが見えた。

陰唇を左右に開くと、奥の襞が唾液で濡れそぼって、暗い赤に近い色を覗かせている。その表面に舌を差し入れ、中の柔肉を掻き回すように動かした。ぐちゅ、ぬちゃ、という音が、畳に響くほど鮮明になる。慶子の膣口から溢れ出した愛液は粘度を増していて、舌を引くたびに銀色の糸を引いた。喉の奥で飲み込むと、しょっぱさに混じって乳酸菌飲料を温めたような匂いが鼻へ抜ける。それが、ほんのわずかに、心の奥を掻き乱した。

「や、あっ、は……ぁ、もう、ゆび、ゆうやさんの、お指も、ほしい、そとだけじゃなくて、なかも、からっぽで、さみしくて……」

よじれた声が、熱い吐息ごと降ってくる。僕は舌を動かしたまま、右手の中指を彼女の入り口へあてがった。ひくひくと収縮する肉の輪は、指先を吸い込むようにして待っている。軽く押し込むと、ぬるりとした熱が指を包み込み、内壁がきつく絡みついてきた。

「ああぁっ……はぃ、そこ、いい、です……もっと、ゆび、うごかして、ゆうやさんの、お指で、なか、かきまわして……」

出し抜けに、慶子の手が自分の下腹のあたりを探って、僕の腕を掴んだ。汗ばんだ細い指が、間違いなく力強い意思を持って、僕の手をさらに奥へ導こうとする。その瞬間、彼女の内股がふるっと震え、中に入れた指が思いがけないほど強く締まった。

「指だけでいいんですか。僕の顔、こんなに濡らしておいて」

「だって、……ッ、あ、ああ……きもち、よくて、しぬかと、……っ」

しぬ、というその一言が、涙で濡れた声で紡がれた。上品な慶子らしからぬ乱暴な言葉なのに、たまらなく卑しい響きがあった。僕は指を奥まで入れたまま、軽く曲げて内壁のざらついた場所を擦り上げる。ごり、という鈍い感触が伝わって、同時に彼女の上半身が跳ねた。

「ひぁんっ! それ、や、あ、あっ、なに、そんなとこ、そんなふうに、しちゃ、からだが、ふしぎにな、……っ」

「ここ、前のほうです。たぶん、慶子さんが一番感じる場所だ」

「そんな、こと、いわないで……あっ、んん、ちが、ぁ、わ、あぁ、すご、ぃ……っ」

指の腹で何度もそこを捏ね回すと、彼女の胎内はみるみる熱を増して、溢れ出る汁が指の根元まで降りてくる。にゅっぽりと濡れた音を立てながら、僕の中指が彼女のなかを往復し始めた。もう片方の手で、陰唇を開いたまま、舌先を陰核へ押し付ける。指と舌の動きをずらしながら攻めると、慶子はがばりと上半身を起こし、両手で僕の肩を押した。

慶子の指先が、僕の肩を押すというよりは、そこへ縋ってきた。爪の先が食い込むか食い込まないかの力加減で、肌の上をすべり、やがて首筋へ触れる。汗で湿った掌が、僕の体温を確かめるように動いた。彼女の太腿が、僕の側頭部を挟むたびに、内側の柔らかい肉が耳へ押し当てられ、心臓の音まで伝わってくる。鼓動は浅く速く、獣が雪の上を駆けるように乱れていた。

舐められている膜から立ち上る匂い。チーズの熟成香に似た濃厚な発酵臭と、女が発情したときにだけ濃くなる甘い芳香。その混ざり合った空気が、僕の頭の芯まで蕩けさせていく。鼻と口の半分が彼女の肉で塞がれて、息をするたびに粘膜の温度が肺まで入り込んだ。

「ひ、……っ、あっ、だめ、舌と、指と、両方は、こわい、こわいのに、きもちよくて、あたま、おかしくな、……も、ほんとうに、もうっ」

慶子は肩を押していたはずなのに、いつの間にか僕の頭をさらに押し付けている。腰が上下に揺れて、自ら陰核を押し当ててくる。そのまま、何度も小さく腰を跳ねさせて、舌の上で花びらを開いたり閉じたりと蠢かせた。ぐちゅぐちゅという粘液音が、部屋の静寂を食い破るように鳴り続ける。

「あ、ん……あっ、ふう、んんっ、ゆいや、さん、わたし、へん、になっちゃ、いま、すごく、あつくて、おなかの、おく、ぎゅって、ひきつって……」

僕の指を締め付ける彼女の内壁が、明らかに先ほどより強い頻度で痙攣していた。僕は少しだけ指の角度を変え、内壁の襞を掻き分けるようにして、ぬるく広げていく。その間も舌先は、彼女の肉芽を捏ね、吸い、押し潰し、振動させる。まるで別々の生き物のように、指と舌が彼女の奥と表面を同時に貪っていた。

慶子の内側で、僕の指に絡みつく熱い襞が、みるみる膨れて湿りを増していくのが分かった。奥のほうがきゅうきゅうと窄まって、指の先を深く呑み込もうとする。指の節が彼女の肉に食い込むたび、まるで柔らかい生き物が叫ぶように、内壁が忙しなく波打った。膣口から溢れた蜜は白く泡立ち、陰唇の縁をなぞって、窄まった肛門のほうへ細い川を作るほどだった。

そのとき、慶子の左手が、迷うように自分の腹の上を辿ってきた。指先が、たくし上げられた浴衣の上から僕の腕を伝い、肩へ触れ、首筋を撫で、やがて、下腹部あたりで止まる。彼女の指が、僕の下着の上から硬く張り詰めた中心へ触れた。握るというより確かめるように、何度か往復する。

「あ……これ、優弥さんの、すごい。熱くて、こんなに、硬くしてくれて……私の、舐めてるだけで、こんなに、してくれてるのね」

嬉しそうな響きと、泣きそうな切なさが、同じ声のなかに溶け合っていた。

(どうしてかしら。夫以外の、それも娘の夫に、こんなところを開いて、舐められて。それなのに、逃げるどころか、もっと深く、何度でも触ってほしいと、この身体が叫んでいる。こんな恥ずかしいことをされて、どうして、こんなに気持ちがいいのかしら。女の芯の、ずっと奥に眠っていた火が、今、この人に暴かれて、逆らうことができなくなっている。いけないことだと分かっているのに、分かれば分かるほど、子宮の奥が火照って、入り口がひくつくのを止められない。これは、女としての私の、隠しておくはずだった一番浅ましい場所が、この人だけに開いてしまっているということなのだと、あまりの恥ずかしさと歓びで、目の奥まで熱くなっていった。)

慶子は大きく、深く、吐息をこぼした。彼女の瞼が震えて、睫毛に溜まった涙が畳へ落ちる。眉根を寄せた角度には苦痛と見まがうほどの快感が乗っていて、薄く開いた唇の奥では、呼吸というより鳴き声に近い息が細かく弾けていた。首筋から胸元へかけて、汗が粒になって散らばり、月明かりを拾って米粒のように光っている。その光景を見ていると、彼女が感じているものの深さだけが、こちらへ直接伝わってくる気がした。

慶子はカットソーの裾から手を差し込もうとして、もどかしそうに息を吐く。僕は彼女の手を取って、自分の手のひらと重ね、下着の上から硬くなったものを強く握らせた。指は完全には回りきらなくて、女の手の小ささが、かえってもどかしく熱い。布越しに伝わる男の熱に、慶子の喉がひくりと鳴った。扱くという動きではない。震える指が、根元を確かめ、つるりとした先端の形をなぞり、袋の膨らみを包むようにして、まるで拝むように握っている。

「あ……私の、手、こんな、なぐさめることしか出来ないのに。それなのに、ここ、いっそう張り詰めてきてる」

「慰めなんかじゃない。慶子さんの手の温度が、気持ちいい」

「あ、……そ、れなら、いいの。けど、もっと、やわらかい、なかへ入れたく、なって、しまう。どうしましょう……私、あなたの、こと、……っ」

その先の言葉は、強く吸い上げられたらしい彼女が急に喉を反らせて、泣き崩れるような喘ぎへ変えた。手の力が弱まり、代わりに腰が大きく浮く。指先から伝わる彼女の軽い絶頂が、目に見えない波紋のように広がっていく。

ちゅぷ、くちゅ、れろれろ、れろー……。

「んっ、はぁ、……ッ、あ、だめ、ゆうやさん、わたし、もう、ほんとうに、くる、……っ」

慶子の内ももが、僕の頭を挟んで小刻みに痙攣する。開いた足が、閉じて、また開く。僕は舌の動きを止めずに、彼女が果てるまでのあいだ、溢れてくる蜜を音を立ててすすった。ちゅぷ、じゅる、と啜り上げると、慶子はくぐもった悲鳴を上げ、膣口からとめどなく溢れる汁で顔中を濡らされる。彼女の好い潮が、内腿から畳へと染みを広げていった。夜気のなかで、二人分の汗と愛液と唾液の匂いが、まるで底なし沼のように重なり合っていく。僕はその匂いを吸い込みながら、彼女の熱い内壁を指で優しく掻き回し続けた。まだ終わらない、終わらせない。この身体が、女としての感覚を完全に思い出すまで。

「慶子さん、今の、気持ちよさそうでしたよ。十年ぶりとは思えないくらい、正直な身体で」

「や、……そんな、意地悪、言わないでください。わたし、も、どうして、こんな、お下品な、格好で……自分の、しるとこ、ゆうやさんの、したに、なんども、ゆすって……」

慶子の言葉は、恥じらいを含みながら、しかし先ほどとは別の熱を孕んでいた。脚はもう閉じない。開かれたまま、太腿の内側を月光が這って、濡れた産毛まで白く光らせる。彼女の両手は、名残を惜しむように僕の腕や肩、あるいは自分の乳房へと、触れる場所を探して忙しなく動いていた。その手の動き自体が、まだ満たされていない渇きの告白だった。

じゅぷ、にちゃ、ぐちゅ……。

「ん……あ、ああっ、ゆいやさん……わたし、からだ、はんぶん、こわれてしまったみたい。ないたまま、おまんこ、びしょびしょで、あつくて、さみしくて……こんなの、どうしたら、いいの」

慶子は泣き濡れた瞳をこちらへ向け、僕がこの先もっと深く入ってくることを待ちわびるように、脚の付け根をわずかに動かした。女の匂いが、むせるように濃くなる。僕は彼女の顔に貼り付いた黒髪を指でそっと払って、そこへもう一度、深く唇を付けて、溢れる愛液の熱をすすった。

第4章 還暦の夜、立ち姿のまま貫く

第4章のシーン

第4章: 還暦の夜、立ち姿のまま貫く

慶子の指が、僕の手首を掴んだ。汗ばんだ細い指先が、骨の上にすがりつくように食い込んでくる。濡れた内腿を閉じないまま、上体を起こした彼女は、息を乱しながらも、はっきりと僕を見上げてきた。その瞳には、さっきまで自分を責めていた羞恥の色とは別の、もっと強い光が宿っていた。白目が薄く充血して、黒目が奥から熱を放っている。口元はまだ半開きで、唾液と愛液が混じって濡れた唇が、呼吸のたびにかすかに震えていた。敷布団の上には、彼女の太腿の下から滲んだ汁が、青白い染みを作って広がっている。畳の目に沿って、その染みがゆっくりと縁を伸ばしていくのが見えた。部屋の空気が、ほんの少し白み始めている。障子の向こうから、夜明けの気配が薄青くにじみ、押し入れの襖の桟をうっすらと浮かび上がらせていた。

「慶子さん……」

声をかけると、彼女はゆっくりと首を振った。耳の下でまとめた髪から、解けた一房がこぼれて、白いうなじに張り付いている。

「まだ、終われないの。身体が、あなたを呼んでしまってる。……私を、立たせてください」

その言葉は、懇願というにはあまりに静かで、けれど確かな意志の強さを持っていた。僕は彼女の手を取って、畳の上に膝を立てる。慶子もまた、縋るように僕の手首へ指を絡めたまま、少しふらつきながら立ち上がった。よじれた浴衣の裾が、汗で白く光った足首にからまって、離れるときにぱさりと音を立てる。はだけた胸元はもう隠そうともされず、肩から袖が落ちかけていた。片方の乳房が、乱れた襟から白い膨らみを覗かせ、乳輪の縁が朝の予感のなかで淡く影を作っている。浴衣一枚を乱しただけの、着衣のうちに半裸に近い姿。立ち上がった彼女の背筋は、女の身体のしなやかさを闇の中に浮かび上がらせていた。腰から尻へかけての丸みが、乱れた布の下でいっそう艶かしく盛り上がっている。

近づいて抱き寄せようとすると、慶子は僕の胸へ手を置いて、かすかに押し返す仕草をした。掌から伝わる熱が、むしろ彼女の切実さを物語っている。

「後ろから……あなたのお身体で、私を包んでほしいの」

僕は彼女の背中側へまわる。慶子の柔らかな黒髪からは、汗と白粉の混じり合った、甘くて苦い匂いが立ち上っていた。白粉の名残は耳の後ろにまだ濃く、その奥から熟れた肌そのものの匂いが追いかけてくる。首筋へ鼻先を近づけると、まだ湿った肌から、浴衣の下で蒸れた女の温度がゆらゆらと揺れていた。両手を彼女の脇から前に回し、乱れた服の上から胸のふくらみを包む。掌のなかで、乳房はずしりとした重たさを持って熱く、布越しに先端の小さな硬まりまでが掌へ押し返してくる。汗を吸って湿った浴衣地が、乳首の形をくっきりと浮かび上がらせていた。

「あぁ……幸せ。この手の、かたちが、服のうえからでも、からだに、染みるみたい」

慶子が顎を少し横へ向けて、息を洩らす。僕は返事の代わりに、彼女の背骨の並びを、鼻先と唇で一段ずつ確かめるように追っていった。薄い浴衣ごしに浮き出た背骨の突起が、まるで真珠の連なりのように、汗でしっとりと光っている。肩甲骨のあいだを舌先でつつとなぞると、慶子の膝が笑って、腰がこちらの下腹へ少し押し付けられた。浴衣越しでも、彼女の尻の弾力が僕の硬くなり始めた中心を押し返してくる。

「やぁ……背中、弱いの。ちくっと、電気が走ったみたいで……」

「慶子さんの背中、綺麗だ。うっすら汗をかいて、すごく、いやらしい」

「いやらしいなんて……でも、あなたにだけは、そう言われると、ほっとするの。変ね、私」

僕は言葉を飲み込み、両手の指を乳首へ掛けた。衣の上から、硬くなった先端を親指と人差し指で摘まみ、ゆっくりとこりこりと転がす。汗で湿った布の繊維が、乳首にまとわりついて摩擦を深くしていく。慶子の身体が、瞬間、海の生きもののように背中から仰け反った。

「ひぅっ……ぁ、そこ、指が、服のうえからでも、はっきり、わかる……ねちっこい、触りかた……」

わざと服の摩擦も使って、指の腹で押し潰すように捏ねる。ぐにゅ、ぐにゅ、と布が湿り気を帯びる音が、腕のなかから聞こえた。もう片方の手は下腹へ降りていき、浴衣の合わせ目の乱れから素肌に触れる。汗ばんだ下腹は柔らかく、力を抜いたまま微かに脈打っていた。産毛が湿って指の腹に吸い付き、その下の体温がやけに高く感じられる。

「ここも、熱い。さっき溢れた汁が、まだ太股まで降りてる。立ったら、膝の内側まで伝いそうだ」

僕が耳の後ろへ囁くと、慶子は息を詰めて、両脚をきゅうっと擦り合わせた。その仕草が、内腿に残ったぬめりをさらに押し広げる。むせ返るような情事の匂いが、二人のあいだに満ちて消えない。夜通し続いた交わりの残り香が、部屋の空気に澱のように沈殿していた。

「あなたのせいです。私のなか、まだ奥のほうが、熱いままで、閉じようとしないの。……優弥さん、下から、触って」

彼女が後ろへ手を伸ばして、僕の腿を撫でる。指先が自分の中心を促すように、腰を浮かせた。僕は彼女の言うまま、浴衣の前を乱して、太腿の真ん中から割れ目へ向けて指を滑り込ませた。そこは予想以上にぬかるんでいて、指の側面が触れただけで、ねとっ、と重い汁の音が立つ。

「凄まじいな。さっきまで僕の口が、ずっとここにいたのに。まだこんなに溢れてる」

「ちゅ、う……ゆうやさんの、顔を、思い出しただけで、また、いやらしいのが、でちゃって……」

慶子は僕の指を、自分の膣口へ導くように腰を揺する。ぬかった人さし指が、ひくひくしている入口をなぞるうち、第二関節まで自然に吸い込まれていった。立ったまま後ろから抱え込まれているせいで、膣の角度が先ほどと違い、指の背が天井側の襞を強く擦り上げる。いっしゅん、腹の底から突き上げるような声が上がった。

「ひあぁ……っ、だめ、そこ、さっきより、奥まで、勝手に、はいって……ぁ、んんっ」

彼女の両足が爪先立ちになり、浴衣の裾の下で太腿がぶるぶると震えている。膣内に差し入れた指へ、熱い粘膜がきつく絡みついてきた。ぐちゅ、にちゃ、という粘液の音が、立った姿勢のせいで、やけに明瞭に床へ落ちて響く。白んでいく部屋の空気のなかで、その音だけがいやに鮮明だった。壁に貼られた古い暦の紙が、かすかに揺れているように見えた。

慶子の手が、後ろ手に僕の下腹部をまさぐってくる。下着の上から、慇懃に待たされていた怒張のくびれを、逆手の指が探り当てた。彼女の掌が、熱いものを下からすくうように持ち上げ、布越しでも硬く張った肉棒の形を親指で確かめる。指のはらで、先端の濡れが布を透かす場所を、ゆっくりと何度かなぞっている。

「あぁ……やっぱり、こんな。私のために、布のなかで、いきり立って……苦しいでしょう。ねえ、私が、はだかの手で、握っていいの?」

僕は即答できず、ただ息を吐いた。返事の代わりに、彼女のなかから指を引き抜く。ぬるり、と銀の糸が割れ目から立ち上がり、やがてぷつりと切れて畳の上へ垂れた。慶子が肩越しに振り返って、僕を見る。夜明け前の薄明りが、彼女の横顔を乳白色に浮かび上がらせていた。鼻梁から唇へ落ちる影が、彫刻のように整っていて、その横顔に見入ってしまう。還暦を迎えた美人顔は、隈も見えず、そのかわり目尻に赤みがさして、ひどく艶めかしい。唇の端が、小さく吊り上がる。

「あなた、意地悪。さっきから私ばかり、はしたない声を出させて。もういいでしょう。今度は、私が、あなたのしたいことを、させてあげる」

そう言って慶子は、僕の下着に指を掛けた。下ろすのを待ちきれない、というふうにしゃがみかけ、だがすぐに思い直して、腰のゴムへ手を掛けたまま、額を僕の胸元へつける。吐息の生ぬるさが、汗ばんだ皮膚にしみていく。

「自分で、入れるから。あなたの、熱いのを、私の浅いところに当てて。そこから、私の身体が、奥へ、くわえていく。……そういうふうに、したいの」

僕は彼女に従い、下着を膝までずり下げた。剥き出しの男性を、慶子の小さな手が、根元のほうから包むように握ってくる。指は汗ばんで滑り、それだけで男の形がびくりと跳ね上がった。彼女は一瞬息を呑み、包まれている手のなかの熱をたしかめるように、指をそっと根元から先端へ滑らせる。先端の割れ目から沁み出す粘液が、彼女の掌を汚した。慶子の指が、その粘液を親指で伸ばすように亀頭の裏へ塗り込める。

「あ、……おちんちんの、さき、濡れて……この、ぬるぬる、私ので、もっと、とろとろに、しちゃう」

慶子の口元から、とろけるような音が漏れる。僕は彼女の背中ごと抱き寄せ、顎を肩へ乗せた。慶子は両脚をわずかに開いて、腰を沈めると、手に持った肉茎の先端を、自らの割れ目の中ごろへ押し当てた。熱く濡れた肉と肉が触れた瞬間、彼女の背筋にぎゅうっと力が入る。割れ目の襞が、先走りと彼女の汁でねとりと滑り、入り口へ向けて先端が浅いくぼみへ吸い込まれていった。

「ん、……っ、ふぅ、あ、まだ、さっきまで指が、いたから、ゆるくって……ぁ」

力の抜けた一言とは裏腹に、膣口は驚くほど強く僕の亀頭を咥え匂わせている。入り口だけがひくひくと窄まって、そのうち自分で中へ迎え入れようと、肉の輪を広げていく。僕は腰を前へゆっくりと押した。ぬちゅ、という濡れた音を挟んで、亀頭が彼女のなかへ沈む。

「──ああぁ……っ」

十年ぶりの圧迫感が、僕にまで伝わってくるほど深い。慶子の声が大きく背骨を震わせ、爪先が畳を離れて浮いた。立ったままでは体重を支えられないのか、彼女の膝が横へ崩れそうになる。僕はとっさに彼女の腰を後ろから掴み、自分の方へ引き寄せた。その勢いで、肉棒はさらに奥まで、ぐぷ、と熱い洞のなかへ埋まっていく。

「あ……っ、そこまで、はいる、こんな、こと、からだ、裂けそうなのに、でも、きもち、くて……」

慶子は半開きの唇から途切れ途切れの声を溢し、目の縁を鋭く吊り上げて耐えている。仰け反った首筋には薄い汗の幕が張り、乱れた浴衣のあいだから、左右のはだけ方の違う乳房が揺れていた。立ったまま繋がった結合部から、溢れた愛液が音を立てている。ぐちゅ、ずぶ、と、自分達が出す卑しい響きに、慶子の足の指が丸まった。

そのとき、慶子の唇が、ごく小さく、何かを呟くように動いた。僕には、それが「これでいいの」と聞こえた。いや、正確には違う。彼女自身に問いかけているようでもあり、どこか遠くへ向けられた言葉のようでもあった。背中越しに伝わる彼女の筋肉が、ほんの一瞬だけ、快楽とは別の緊張を走らせる。けれど次の瞬間、彼女は首を小さく振って、僕の中心をさらに深く食い込ませてきた。その吐息が熱い。問いかけの行方は、誰にも分からなかった。

「歩けない……わたし、もう、足に力が入らない。お布団まで、連れてって。このまま、歩かせたら、へんな歩き方になる……ぁ、んんっ」

挿入したままの状態で、僕は彼女の正面へ回り込むように支えた。一度動くと、中の角度が変わって、肉棒を根元まで深く抉られる。視界の端で、慶子の白い喉がしなった。頸の線が長く伸びて、鎖骨の窪みに汗が一筋流れ落ちていく。

「あっ、まって、優弥さん……それ、ぬかないで……中で、向きを変えるの、すごい……っ、お腹のした、突き破られてるみたい」

立位で向かい合うには、彼女の脚では高さが足りないのだろう。膝が折れて、摺り足で畳を進むうち、ついには二人して壁に手をついた。古い漆喰の壁がひんやりと掌を冷やし、そこだけ別の世界のように鮮烈な温度を持っている。熱に浮かされた身体には、その冷たささえ快感に転化していく。僕は慶子の片足を、浴衣の裾ごと持ち上げ、自分の腰の横へ巻きつけさせた。開いた足の付け根から、繋がった場所が白んだ空気に晒される。女の割れ目の上、淡い産毛のなかで、充血して色を増した肉の襞が、男のものをくわえ込んでいる光景。その淫らさが、薄明かりのなかで残酷にはっきりと視界に入ってきた。襞の一枚一枚までもが腫れぼったく開いて、男根の形に馴染んでいる。

「やぁ……見ないで、ください。こんな、足を開いた、姿……だって、あなた、すごく、いやらしい目を、してる」

慶子は赤い唇を噛みしめ、潤んだ目でこっちを睨むように見つめてくる。けれど腰は、浅く引いて、また深く座るという、直立のままの動きを自ら始めていた。彼女の手が、首に回され、片足を軸にしたはまぐりのような体勢のまま、互いの恥骨がとんとんと音を立てて触れ合う。その律動が少しずつ速まり、彼女の呼吸がそれに合わせて乱れていく。

「ね、揺れて、私のなかで……亀の子みたいに、硬い、おちんちんが、襞を、押し広げて……あぁ、奥、きもち……っ、あ、こんな立ったまま、私、なにをしてるの、あなたと、あなたの、お義母さんが……」

その呼称を口にしたとたん、慶子の胎内が一際きゅうと窄まった。背徳の名が、二人の欲を熱くする。僕は腰を小刻みに突き上げ、彼女の最奥へ肉棒を擦り付けた。子宮口の窪みを亀頭でなぞるたびに、慶子の内部が生き物のように蠕動してくる。

「慶子さんの中、凄く締まる。立った姿勢だと、奥まで、ぜんぶ届いてるのが、はっきりわかる。気持ちいいんです。僕の形を、あなたのそこが覚えようとしている」

「あ、あん、……っ、や、あなたの、こえ、耳の、すぐそばで、しないで……んんっ、のぼせる、あたまが、とろんと、」

畳を踏みしめる足の指が白く反り、浴衣が背中から滑り落ちそうになっている。必死に片手で前を掻き合わせるが、片胸ははだけたまま、突き上げるたびに白い塊が魚のように跳ねた。汗で光る肩甲骨が、朝を前にした乳色の空気を吸い込んで、しっとりと真珠のような光沢を帯びている。もう若くはない、と彼女自身の言葉があった。けれど、いま目の前で揺れている肢体のどこに、十年の空白を責める資格があるのかと反問したくなるほど、熟れた果肉の、割る直前の張りがあった。柔らかさのなかに、芯の通った肉の力強さが満ちている。

はげしい音が部屋を満たす。ずちゅ、ぐちゅ、ぷちゃ、と打ち合うたびに、慶子の足の付け根から飛沫が散った。ぬめった汁が、突き上げる僕の下腹をべったりと濡らし、交じり合った性の匂いが立ちこめる。二人とも、いつの間にか言葉を失っていた。ただ、獣じみた息と、鼻腔を鳴らす音、肉と肉が重なって切れる水音なしには、この部屋はもはや成立しないようだった。部屋の隅に置かれた古い座卓も、壁にかかった義父の写真も、すべてが熱い霧の向こうに沈んでいる。

慶子が僕の肩へしがみついた。爪が食い込むほどの力で、彼女の全身が僕を求めてくる。

「あぁ……ゆ、優弥さん……わたし、どうしたら、ほんとに、あたまのてっぺん、濡れてるのに、くらくらして、立っていられないの。ゆるして……今度こそ、膝が、おりちゃ、」

「謝らないで。畳の上に、一緒に崩れましょう。そうすれば、もっと深いところまで、繋がれる」

壁に手をついた慶子が、次の突き上げで大きくよろめいた。僕は彼女の背中を抱えながら、畳へ倒れ込む。重なったまま仰向けに、自分が下になる格好で、彼女の背中を胸の上に受け止めた。落ちるその勢いで、体重のすべてが結合部にのめり込み、肉棒を根元まで呑み込んでいく。陰嚢が彼女の会陰に押し潰されるほど深く、互いの骨盤が溶け合うように密着した。

「──っ、~~ッ!」

慶子の喉が、絞り出すような、息の混じらない悲鳴を上げた。大きく見開いた目から涙の粒が落ちる。腰の上で彼女の身体が、ちいさく、けれど強く跳ねて、中の肉襞が男の形を絶え間なく搾ってくる。膣壁が波打つように収縮して、まるで肉棒を胃の中まで引きずり込もうとしているかのようだ。

「すごい、最奥まで、はいってる。慶子さん、おなかの一番熱いとこ、僕ので、ずくずくになってる」

「あぁ……イヤらし、……でも、声、が、でちゃう……まだ、よその家には、届かないとしても、夜明けの、お家には、すけべな音、響いてる……ね、聞こえる? じゅぶじゅぶ、って。わたしの、おまんこが、あなたの、おちんちんに、まとわりついて……っ」

着衣の背中が、僕の胸に汗で張り付いた。慶子は上体をのけぞらせるように起こす。その格好が、深く坐った男根をいっそう奥へ導き、下腹から打ち上がる快感が、彼女の背中を海鳴りのように波打たせた。繋がったまま、尻が小さく旋回すると、肉壺のなかで陰茎が半回転する。全身のすみずみまで、その動きだけが伝わる。彼女が動くたびに、中の肉襞が男根を擦り上げ、先端の裏が天井側のざらついた襞を押し潰した。

「あんっ、あ、ああ、なに、これ、……子宮の、くち、こすられて……っ、ふかい、たかいに、あなたの、からだ、って、そこ、あたってるの」

意味を織りなさない音が、彼女の唇からあふれ出て、自分の耳にも届いた。僕は慶子の尻を両手で開き、深く沈んだ箇所を指で確かめる。汗ばんだ臀裂が、手の中に吸い付いた。繋がりを保ったまま腰を下から突き上げると、ぬぢゅん、にちょり、という生々しい音が、二人の間から淀みなく溢れてくる。彼女の肛門の窄まりが、僕の指の近くでひくひくと引き攣れている。

「あ、あぅ、あんっ、んん……ゆ、さっきから、そんな、奥ばかり、きゅうに、されて、わたし、視界が、白い……朝と、ぜんぶ、まざって、前が、見えない」

障子の向こうは、もう青い光で満ちていた。それまで黒々としていた部屋の輪郭が、畳の目まで淡く見分けられる。その乳色の明かりが、慶子のたくし上げられた浴衣の乱れ、汗に濡れた後れ毛、こちらへ向いた横顔の輪郭をむき出しにしていく。僕は彼女の肩を抱き寄せ、唇を、耳のうしろの、まだ白粉の香りが残る凹凸のある皮膚へ落とした。舌先で汗を舐め取ると、苦くて塩辛い味が広がり、その奥に彼女の体温が花のように咲いている。

「このまま、腰の動き、とめない。慶子さんが、自分でも、こうしたいって、身体で言ってる。僕は、それをもっと聞かせてほしい」

「………ん、っ、あぁ、わかってるの…私、いま、あなたに、突かれるたび、声が、自分じゃないみたい……あっ、だめ、また、おく、く、……んんっ! あ、あぁ、そこ、それ、いい、……優弥さん、あなた、知ってるのね、わたしの、いちばん、浅い、奥……っ」

慶子は腰を震わせながら、淫らに熟れた挿入の底で、甘えるような、泣くような声を上げる。その揺れが、夜明けの白い空気に吸い込まれて、このまま朝に変わろうとする家のなかを、こっそりと浸していく。ぐちゅ、ずぶ、と、濡れた結合部が開き、閉じ、男と女の、どうにも戻れない輪郭が、畳の上にのびている。彼女の背中を伝う汗が、僕の胸の上で温かな池のように広がった。

夜が終わるまで、あと少し。僕は下から、彼女の畝る背中を眺めながら、貫く速さを緩めなかった。

第5章 子宮へ注ぐ熱、十年目の朝

第5章のシーン

第5章: 子宮へ注ぐ熱、十年目の朝

慶子の腰が、下から突き上げる僕の律動に合わせて、まるで水底で揺れる一輪の花のように波打っていた。畳の上に散らばった浴衣の裾は、汗と愛液と夜の湿気を吸い込んで、暗く重たく沈んでいる。彼女の背骨は弓なりに反り返り、首筋からうなじへかけて浮き上がった細い腱が、明け方の薄明かりのなかで白く透きとおるように光る。抽送をくり返すたび、結合部から粘り気のある卑猥な水音が溢れ出て、静まり返った部屋の空気を無遠慮に叩き割っていった。慶子の内壁が、陰茎の根元をずるりと締め上げ、亀頭が最奥のしこりのような窪みへ吸い付くたび、彼女の喉から獣じみた悲鳴が絞り出される。

「ゆ、優弥さん……お願い、私の、いちばん奥に……あなたの熱いの、ください」

慶子の声は涙に濡れ、ところどころで言葉が熔けて甘い喘ぎへと崩れていく。上半身を僕の胸に預けたまま、汗ばんだ横顔を必死にこちらへ向けて、半ば見開かれた瞳で僕を捕えた。白み始めた障子の光が、その瞳の表面を舐めるように走り、零れた涙の粒が真珠の雫のように光っている。僕は彼女の腰を両手で掴み、引き出す、突き入れる、という動作をさらに速度を増して繰り返した。腰を打ち付けるたび、彼女の白い尻肉が大きく波打ち、汗の飛沫が朝の光を浴びて銀粉のように散る。

「中で、出していいんですね。慶子さん」

「いいの……私の、子宮にいっぱい、優弥さんの種、ほしいの。おまんこの奥、あなたので、どろどろにしてほし……っ」

懇願の語尾は、鋭い抽送によって途切れ、彼女の背中がびんと突っ張った。内腿が小刻みに痙攣し、膣口から溢れ出た白濁を混じえた汁が、ぴちゃぴちゃという水音を立てて畳へ跳ねる。十年ぶりに男を受け入れたという生々しい抵抗感はすでに消え失せ、いまはただ、肉と肉が粘膜ごと絡み合い、親和反応のようにとろけ合っていた。慶子の身体は、還暦を目前にした女とは思えないほどしなやかで、芯の通った淫らさを全身から放っている。

僕は慶子の太腿をもっと開かせ、彼女の額が畳に擦れるほど深く、揺さぶるように突いた。下腹にこみ上げる熱は、さっきから際どい場所で脈打っている。彼女の内壁が、何かをねだるように数秒おきに収縮し、陰茎の形を確かめるように何度も締まった。子宮口の、ちいさな窪みのような場所へ亀頭が埋まるたび、慶子は喉奥でくぐもった声を上げる。夜明けの家のなかで、二人分の荒い呼吸と肉の咥え込む音、汗ばんだ肌が畳にこすれる音ばかりが響いていた。

「あ、ぁ、……ああっ、来て、私の、奥の奥で、あなたの、爆発するの、私、全部、受け止めるから……だから、ねえ、おちんちん、子宮に、なかに、びゅーって、してください」

慶子の口からとろけだす隠語の数々が、戒めを失った女の泣き声に変わる。僕は彼女の片脚を抱え上げ、入り口を大きく割り開かせたまま、全身で打ちつけるように穿った。ぬぷぷ、ぐちゅ、と粘液の粒が飛び散り、互いの恥骨がぶつかるたび、彼女の白い尻肉が波打つ。太腿の付け根から伝う愛液が、汗と混じり合いながら畳に吸い込まれていく。

「あ、あっ、んん……もう、もう、もって、……っ、わたしの方も、壊れちゃう。いっしょに、いっしょに、してください。腰、もっと、かたくして、……奥で、吐き出してっ」

荒い吐息の合間に紡がれるその求めに、僕は短く返事をする。喉の奥に沸き上がる獣性を、もう抑えるつもりはなかった。彼女の胎内はぬるぬると熱く、男を奥へ奥へと招く官能的な圧力で満ちている。僕は一度だけ深い、最奥をえぐる突きを入れると、そのまま動きを止めた。慶子の肉が、強烈に窄まり、脈打つ陰茎を休みなく搾り上げる。

「──出す」

低いその声は、自分でも驚くほど掠れていた。どく、と下腹の底から何かが競り上がり、尿道を熱が走る。先端が子宮口へ噛みついたまま、奥へ向けて何度も何度も、精を吐き出した。どく、どく、どぷ、と途切れがちに噴き出す生温かい奔流が、彼女の子宮という器を白く汚していくのが、陰茎を通して痛いほどはっきりと感じられる。慶子の身体が、背骨の下から折れるように小さく仰け反り、彼女の内壁がぎゅうぎゅうと絶え間なく蠕動して、最後の一滴まで絞りとろうとしてきた。

「ん……っ、あああ……熱……うそ、あ、そんな、いっぱい……子宮が、鳴ってる……んぅ、……っ」

肩で息をする慶子の声は、すでに涙声で、言葉のところどころが崩れて泣いている。射精が終わった後も、彼女の膣はまだ僕を咥えこんで離さない。こんこんと注いだ熱の余韻が、二人の下腹を波のように往復している。畳の上に投げ出された僕の右手が、汗で濡れた彼女の指を探り、柔らかく絡めた。夜明けの青い光が、汗ばんだ二人の背を横切っていく。

しばらくして、僕はゆっくりと腰を引いた。ぬぽ、という粘着質な音がして、熱く膨れた陰茎が彼女のなかから抜け出る。すると慶子の割れ目から、注がれたばかりのその白濁が、ゆるり、と熟れた肉の隙間へ持ち上がって、臍下へこぼれ落ちていった。その濁った液体は、汗と愛液でしっとりした白い肌を伝い、畳の上にも青白い染みを作る。慶子は力の抜けた脚をだらりと開いたまま、数秒のあいだ、ただ浅い呼吸を繰り返した。その顔には、泣き笑いのような表情が浮かんでいて、唇の端がかすかに震えている。

「……綺麗です、慶子さん。今、あなたの中から、僕の全部が溢れ出ている」

僕が囁くと、慶子は薄く瞼を持ち上げて、空気に触れた下腹を見下ろした。真珠のような精の筋が、陰毛の茂みを濡らして銀に光っている。

「すごい、量……こんなに、注がれてしまった。私、今、とても満たされてる。からだの奥まで、あなたで、いっぱいです」

慶子の口から洩れた声は、甘く掠れていて、羞恥というより安堵の色を濃く含んでいた。彼女はそっと右手を持ち上げ、汗で濡れた自分の下腹を指先でなぞる。するとわずかに残っていた液が出てきて、太腿の内側へ伝う。その感触に、彼女の足の趾がよわりと丸まった。

「あ……まだ、でてくるの。わたしのなか、あなたの熱で、なれちゃってる」

子宮の奥まで満たされた余韻に身体を震わせながら、慶子はうっとりとした眼差しで僕を見返してきた。そこには、十年前、この家に来たばかりの頃の翳りを帯びた面影は消え失せ、内から照らし出されたような、冴えた艶があった。倦怠と満足が、彼女の全身を白くゆったりと浸している。僕は片肘をつき、彼女の乱れた黒髪をそっと掻き上げて、額の汗を手のひらで拭ってやる。すると慶子はされるがままに目を細めて、僕の手首に頬を寄せた。

「戻れません。僕は、この先もずっと、あなたとこうしていたいと本気で思っている」

「ええ、知ってました。わたしも、同じ気持ちです。こんな、誰にも言えない夜が、十年先の私まで、つながっていくのかもしれない」

彼女の声は静かで、それでいて、心の一番深いところから絞り出されたように澄んでいた。朝の障子を透かす乳白色の光が、畳の上まで差し込んで、解け合ったように横たわる二人の肌を淡く包んでいく。僕たちは、まだ精の満ちた慶子の下腹にそっとタオルを当て、そのまま互いの腕のなかで、朝になろうとする家の気配を聞いていた。二階では柚香が、まだ眠っている。その寝息までは聞こえないけれど、家中の時間がぬるい膜に包まれたように静かだった。

瞼を閉じる。すると、さっきまでの激しさや、世間への恐れといった不純物は、どこか遠くへ退いていく。残るのは、この白い朝の光と、隣で呼吸を整える女の温もりだけだった。僕は彼女の肩を抱き寄せ、その額に唇を寄せると、慶子は何か嬉しそうに、鼻先で微かな笑みを作る。夜明けの空気が、汗と精と女の匂いを薄く溶かしながら、部屋中を浄めていくようだった。

やがて、長い長い夜の緊張が解けた二人は、畳の上で浅い眠りへ落ちていった。互いの指を絡めたまま、まるでこの朝の光を閉じ込めるように。肌に触れた麻の畳の硬さは、もうただの床ではなく、秘密を埋める棺のようにも思えて、僕は少しだけ胸の奥が切なくなる。この関係が、もしかすると義父の死から始まった喪失という穴を、ふとした瞬間に思い出させるのだった。

それから十年が過ぎた七月の朝、真鍋家は今日も、どこか温度の低い平穏に包まれている。障子を通った乳白色の朝光が、茶の間の畳を明るく染め、台所からは湯の湧くかすかな音が聞こえていた。遠い線香の匂いが、廊下の空気に沈んでいる。41歳になった僕は、食卓の向かいで朝の茶を啜る慶子の横顔を見つめていた。あの頃より白いものが増えた髪は、耳の後ろで丸く結われている。それでも肌の張りは、61歳という年齢を疑わせるほど滑らかで、薄いカーディガンの襟元から覗く鎖骨の線が、淡い朝の逆光のなかで艶めいていた。

あの夜から、ちょうど十年。毎夜のように重ねた肌の温もりは、数えることさえ馬鹿馬鹿しくなるような回数へ積み上がっている。十年で三千六百発もの射精を重ねた計算になる、などと、数日前の深夜、布団のなかで慶子と小声で笑い合った。もしもこの家の柱や畳が、夜ごとの痕跡を記憶しているなら、とっくに染みと匂いで身動きがとれないだろう。そんな下世話な想像に、僕と慶子は、声を殺して身を寄せ合った。今朝のこの肌艶も、そんな秘密の積み重ねによって保たれているのかもしれない。

「お義母さん。今夜もまた、そちらに伺います。……遅くなってからでいいですか」

食卓に湯飲みを置き、少し声を落として僕が言うと、慶子は優雅に首を傾げて、茶の水面へ目をやった。

「ええ……柚香さんが寝静まってからにしてください。私は、あなたが来るのを、待っているから」

言葉は慎ましいけれど、その唇の端には、娘が知るはずのないおののきが浮いている。脚を少しだけ引き寄せて、揃えた膝を内側へずらす仕草が、彼女の返答をいっそう艶めかしく伝えてくる。襖の向こうから、朝の連続ドラマの音が聞こえ、その下で柚香の鼻歌がかすかに混じっていた。彼女は相変わらず何も知らない顔で、台所に立ったり、洗面所へ歩いたりしている。そんな日常生活の凹凸が、僕と慶子の密やかな夜を、ますます黒く深いものにしていた。

「ねえ、優弥さん。この十年、あなたは後悔したことはないの。私と、こんなふうに続けてきたことを」

不意に慶子が、湯飲みを両手で包み込むように持ちながら、視線を食卓の木目に落としたまま尋ねた。声は静かだが、指先だけがわずかに白くなるほど力を込めている。僕は一瞬、茶の間を満たす朝の光を見つめ、それから彼女の目を真っ直ぐ見て、ゆっくりとかぶりを振った。

「一度もないとは言えません。けれど、そう思うのはいつも、あなたの隣から離れた昼間だけです。夜、襖の向こうであなたの衣擦れの音を聞くと、後悔なんて言葉は溶けて消えます」

慶子は淡く微笑み、手にした湯飲みに一口だけ唇をつけた。その唇の端に、茶の温度とはちがう、熱いものが滲んでいるように見えた。

「私は、後悔という言葉を持たないことに決めたの。あの朝、あなたに全部を注がれた日から、私の時間はそこで一度、生まれ直したのよ」

彼女のまっすぐ過ぎる告白に、僕は何も返せず、ただ相槌のように短く息を吐いた。答えの代わりに、湯飲みを置く音だけが、茶の間の静けさを割る。台所の奥から朝の連続ドラマの主題歌が流れ出し、柚香の笑い声が再び聞こえた。僕たちの秘密は、その賑やかさのすぐ下で、変わらず深い音を立てて脈打っている。十年という月日が、この関係を決して鈍らせず、むしろ薄い膜の下に閉じ込めた果実のように熟させていることを、この朝の静けさがはっきりと教えていた。

やがて朝食が終わり、慶子が台所へ戻ると、その後ろ姿をしばらく眺めた。カーディガンを脱いだ彼女の白い二の腕が、袖の折り目からこぼれて、若い女のような滑らかさを持っている。あの腕を、僕は今も毎夜のように抱いている。けれど昼間のこの距離では、指の一本さえ彼女に触れることをしない。触れたくないわけではない。触れてしまえば、娘のいる部屋に、夜の濃厚な匂いを持ち込んでしまう気がして、無意識に押しとどめるのだ。

夕方になり、柚香が「お母さん、買い物ある? ついでに行くよ」と声を掛け、二人で家を出て行った。静かになった居間で、僕は十年という年月を、畳の縁に縫い込まれたような埃のゆらめきとともに思う。あの夜明けに、確かに僕は慶子の子宮へ熱を注ぎ、その瞬間に自分の何かが音を立てて変わった。それは罪悪感というより、この女の命の奥にまで自分を埋めたのだという、抗いようのない実感だった。以来、僕たちは肉体を重ねるたび、あの朝の白い恍惚を、もう一度だけ、もう一度だけと引き寄せ合ってきた。

障子を透過した乳白色の光が、茶の間いっぱいに満ちている。陽が傾くまで、あと少し。夜になれば、あの隣室から衣擦れの音がまた聞こえてくる。それは、昔のように義父の不在を思わせる音ではなく、慶子という女が、布団のなかで僕を待つ、確かな存在の気配だった。音を聞くたびに、あの肌の温もり、汗の匂い、子宮へ注ぐ熱の感覚が、背骨の奥から蘇ってくる。

今夜も僕は、襖を音もなく開けて、彼女の褥へ入るだろう。そこには白い裸身と、ほのかに汗ばんだ女の匂いが待っている。十年目、朝の静寂が、すべてを知りながら、今日も二人を隠してくれているのだった。

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読み終えたあとの余韻に。

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登場人物
  • 真鍋優弥 まなべ ゆうや
    男性 ・ 32

    外見: 短く整えた黒髪、黒に近い茶色の瞳、中背で引き締まった体、178cm。服装: 落ち着いた色合いのビジネスシャツにチノパン、休日は薄手のカットソー。真面目で思慮深く、感情を表に出さないが内に強い熱を持つ。義母への抑えきれない渇きと家庭人としての規範のあいだで長く揺れる。口調・話し方: テンポはゆっくりで間をとり、言葉選びは丁寧だが妙に具体的。会話の主導権は相手に渡しがちだが、身体の距離だけは自分から詰める。感情は表情より指先と沈黙に出る。普段は敬語、動揺すると語尾が消え、本気のときは名前を呼び捨てにする。一人称は「僕」、義母を「慶子さん」から「慶子」へ、妻を「柚香」と呼ぶ。語尾は「〜です」「〜かな」が混ざる。セリフ見本: 平常時「慶子さん、冷えますから、これ羽織ってください」 動揺時「ちが、そうじゃなくて……今のは」 陥落時「中に、出しても……いいんだな。慶子」

  • 慶子 けいこ
    女性 ・ 56

    外見: 耳下でまとめた黒髪に白いものが交じる、深い茶色の瞳、小柄で丸みを帯びた華奢な体、152cm。服装: 家庭では生成りのカーディガンに紺のロングスカート、法事では黒の喪服に真珠の粒が小さい一連のネックレス。慎ましく家庭的だが、ふとした首の傾げ方や指先に色香が滲む。夫を喪ってからの十年、身体を誰にも触れさせていない。口調・話し方: テンポはゆったりしているのに、感情が高まると早口で言葉が転がる。言葉選びは古風でやわらかいが、心がほどけると少女のような甘えが混じる。会話では譲りがちだが、夜の時間だけは自分から縋り、主導権を手放す。普段は微笑みながら小声、動揺すると息継ぎが浅くなり、本気のときは泣き声に近い小声で繰り返す。一人称は「私」、優弥を「優弥さん」、高まったときは「あなた」、妻からは「お母さん」。語尾は「〜ね」「〜の」が自然に出る。セリフ見本: 平常時「あら、いつの間に。おかえりなさい、柚香さん、玄関で待ってたのよ」 動揺時「やめて……そんなに、見ないでください、優弥さん」 陥落時「中に、出してぇ……あなたの、熱いの、私の奥にください」

  • 柚香 ゆずか
    女性 ・ 28

    外見: 肩にかかる明るい栗色の髪、黒い瞳、母より高く骨ばった華奢さ、160cm。服装: 淡い色のブラウスにフレアスカート、パート先では紺のエプロン。明るく社交的だが、夫の微妙な沈黙や母の目のふちの赤みには気づかない。家庭を守ることが正しさだと信じ、日々をそつなく回している。口調・話し方: テンポは軽快で相手の言葉を先取りし、言葉選びは平明で馴れ馴れしくない。会話の主導権を自然に握り、感情は声の高さで表す。普段は夫にも母にも同じ距離で明るく、動揺すると早口でまくしたて、本気のときだけ静かに低くなる。一人称は「私」、夫を「あなた」、母を「お母さん」。語尾は「〜だよ」「〜じゃん」が混ざる。セリフ見本: 平常時「あ、それ今日のお弁当に入れたやつだよ。おいしかった? だよね」 動揺時「ちょっと待って、なんで先に言ってくれないの、そういうの」 陥落時「……うん。わかった。私、いいよ」

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