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マグロ妻の私が夫の依頼で同世代の男に開発され、騎乗位で腰を振りながらアナル処女まで捧げてしまうまでの三ヶ月

人妻/主婦 / 寝取られ(NTR) 全6章 約76分で読了(37,940字) 新着 2026年10月22日

あらすじ

夜、背を向けて眠る妻の黒髪が、いつの間にか別の男の匂いを孕んでいた。感じないことに悩む夫が酒の勢いで交わした約束。動画が届くたび、清楚だった妻の肌に熱が灯り、騎乗位の腰つきが激しさを増していく。戻ってくるはずの妻は、本当に戻ってくるのか。

第1章 冷たい肌の夜と居酒屋の約束

第1章のシーン

第1章: 冷たい肌の夜と居酒屋の約束

リビングの間接照明だけが、静かに部屋を照らしていた。青白い光が、背を向けて眠る礼奈の黒髪を縁取っている。僕はベッドの端に腰かけたまま、その髪が白いシーツの上に散らばる角度をぼんやりと見つめていた。昨夜の行為の名残を、まだそこに探している自分がいる。指先に残っているのは、礼奈の肌のひやりとした感触だった。肩に触れた瞬間、胸に触れた瞬間、そして腰に手を置いたとき、彼女の肌はいつも同じ温度で僕を受け止める。拒むでもなく、応えるでもなく、ただそこにあるだけの冷たさ。その冷たさが、僕の指の乾いた肌にまとわりついて離れない。

礼奈の背中は、薄い生成りのネグリジェ越しに肩甲骨の線がうっすらと浮かんでいた。骨ばっているわけではない。むしろなめらかで、美しいと思える曲線だった。それでも、昨夜あの背中に触れたとき、僕の手のひらは彼女の温もりを探しあぐねていた。終わったあと、礼奈は暗闇の中で小さく呟いたのだ。

「ごめんなさい、私、感じるのが下手で」

その声がまだ耳の奥にこびりついている。泣いているわけでも、途方に暮れているわけでもない、ただ事実を申し訳なさそうに告げる声。僕は何も返せなかった。大丈夫だよ、と言ってやることもできたのに、言葉は喉のあたりで固まったまま、礼奈の背中に向かって沈黙を返すことしかできなかった。謝らせているのは僕のほうなのに、彼女のほうから謝らせてしまった。それが何よりも辛くて、けれどどうすることもできなかった。

ふと、礼奈の寝息が深くなる。規則正しい呼吸が、カーテンの隙間から差し込む街灯の光と混ざり合って、部屋に沈んでいく。僕はベッドに仰向けになり、天井を見つめた。こうして夜が更けていくたびに、僕たちの間に横たわるものの正体が少しずつ形を帯びていく気がした。それは不満ではない。悲しみでも、怒りでもない。もっと素直な、言葉にするのが怖い欲望だった。僕は礼奈に、感じてほしい。あの冷たい肌が、僕の指の下で熱を持って、汗ばみ、呼吸を乱し、爪を立てられるそんな姿を見たい。夫として、それが間違った望みだとは思わない。でも、僕が触れるたびに礼奈が申し訳なさそうに目を伏せる現実は、その望みがひどく傲慢で、身勝手なもののように思わせた。

その夜、僕はほとんど眠れないまま朝を迎えた。カーテンの向こうが白み始めたころ、ようやく浅い眠りに落ちて、目が覚めたときには礼奈はもう台所に立っていた。エプロンの紐を結ぶ後ろ姿を見ながら、僕は「おはよう」と声をかけた。

「おはようございます。今日も寒いですね」

礼奈は振り返って、控えめに微笑んだ。黒い瞳が朝の光を受けて、静かに光っていた。その笑顔が綺麗であればあるほど、昨夜の呟きが僕の中で反響する。ここにいる妻は、いつもこうだった。慎み深く、丁寧で、美しい。何ひとつ不足のない妻。なのに、夜になると僕たちの間にだけ、ひやりとしたものが横たわる。

数日後の金曜日、僕は残業を早めに切り上げて、地元の居酒屋「まるよし」の暖簾をくぐった。仕事の疲れと、ここ数日の寝不足が重なって、体が妙に重たかった。カウンターの端に座って、まずは生ビールを一杯。ぐいっと喉に流し込みながら、独りで飲む酒の味気なさを噛みしめていると、隣の席に男が座った。僕と同世代だろうか、がっしりした体格で、黒いTシャツの上からワークジャケットを羽織っている。無造作に撫でつけた焦げ茶の髪と、琥珀色の瞳がいやに印象的だった。

「わりぃな、相席になっちまって」

男は片手を上げて、人懐っこい笑みを浮かべた。それが妙にこなれていて、初対面なのに堅苦しさを感じさせない。僕は軽く首を振って、どうぞと手のひらを示した。

「いいですよ。僕もさっき来たばかりなので」

そこから会話が始まった。男は岸川勇次と名乗った。仕事については「まあ、ふわふわやってるよ」と笑うだけで、詳しいことは言わない。その代わり、酒の話や地元の店の話を楽しそうに語るものだから、こちらも気がつけば何杯か追加で飲んでいた。ビールから熱燗に切り替えたあたりで、当たり前のように家族の話になった。

「旦那は結婚してるんだろ? 指輪見えてっから、奥さんいるんだろうなとは思ってたけど」

岸川は琥珀色の瞳を細めて、僕の左手を指さして笑った。僕は少し気恥ずかしくなって、結婚指輪を指でくるくると回した。その沈黙を、岸川は逃さなかった。

「なんだ、奥さんと何かあんのか。大方、うまくいってないって顔してるぜ」

軽い口調だった。けれど、その言葉は妙に深く、僕の胸の疲れた部分に滑り込んできた。酒のせいかもしれない。いや、そう思いたいだけなのかもしれない。僕は、自分から口を開いていた。礼奈がどんなに美しいか、どんなに控えめで優しいか。そして夜に触れても、彼女の肌がいつも冷たいこと。感じてくれているのか、僕には分からないこと。昨夜も、行為のあとに小さく謝らせてしまったこと。気がつけば、濁った感情が酒と一緒に溢れ出していた。

岸川は黙って聞いていた。時折「ふうん」と相槌を打ちながら、笑うでもなく、なじるでもなく、ただ僕の話に耳を傾ける。その沈黙が、今の僕にはあまりに居心地が良すぎた。酔いが回った脳の奥で、本来なら話してはいけないことまで、つるりと舌から落ちていく。すべてを話し終えたとき、岸川は熱燗をちびりと舐めて、唇の端を持ち上げた。

「いい女にしてあげようか」

その声は、いつもの砕けた調子のままだ。冗談にも本気にも聞こえる、曖昧な温度。僕は反射的に、強がるような笑みを浮かべていた。

「いうなぁ、できるものなら、してみろよ」

挑発だった。酔った勢いでなければ、到底吐ける言葉じゃない。自分でも馬鹿げていると分かっているのに、口先だけが滑っていく。岸川はぱちくりと瞬きをして、声を出して笑った。腹の底から楽しそうな、豪快な笑い声。その笑い声に、僕は自分の言ったことの輪郭を急に自覚して、背中がひやりとした。

「ほんとに言う? 逃げ道はあるうちに探しとけよ、旦那」

笑いを含んだ声で、岸川がじっとこちらを見ている。僕の視界はわずかに揺れていた。止めなければいけない。ここで冗談だと言って、笑って、終わりにしなければ。頭では分かっている。分かっているのに、口が動かなかった。代わりに、喉の奥から押し出された言葉は、僕自身の意志を裏切るように静かだった。

「できるものなら、してみろよ」

繰り返した。今度は、笑っていなかった。

岸川は手に持っていた杯をとんとんとカウンターに置いた。からり、氷が揺れる音。男の雰囲気が、さっきまでより少しだけ、輪郭を帯びる。琥珀色の目が、光を含んでいた。

「で、奥さんはどんな人なんだ」

その言葉に、僕は再び礼奈の冷たい肌を思い出していた。十月の夜の、シーツの上に散らばった黒髪の角度を。指先が、空気に触れているだけで少し冷える。僕は自分の手を見た。乾いた指先に、まだ妻の温度が残っているような気がして、ゆっくりと拳を握った。

「俺はなお、別に頼まれなくても口説いたかもしれないけどな。でも、旦那がそこまで言うなら、断る理由もない。条件は後でしっかり聞くから、先に奥さんのこと、教えてくれよ」

岸川は笑ったまま、溶けかけた氷を指先で弄んでいる。その動作が、妙に生々しくて、僕の語りを促した。礼奈のことを、話してしまった。三十一歳で、専業主婦で、腰まで届く黒髪が綺麗で、色白で、控えめで、体は細くて、でも芯はあって。話しながら、自分が妻の何を切り売りしているのか、理解していた。理解しているのに、舌は止まらない。それが酒のせいなのか、それとも、僕の中の別の誰かが話させているのか、区別はつかなかった。

岸川は時折「へえ」と口を挟みながら、手元のスマホをくるりと回した。それから、顔を近づけて、声を少しだけ落とした。

「動画、撮るから」

その一言が、僕の胸を貫いた。想像よりもずっと現実味のある響きだった。撮る。妻を、あの清楚な礼奈を、男がカメラに収める。その映像が存在すること。そのことが、ぞくり、と背中を撫でた。酒の熱とは違う、もっと深い夜の熱。理性は叫んでいるのに、体のどこかが勝手に火を灯す。僕は、その火のぬくもりを感じながら、最初の条件を口にした。

「絶対に、礼奈が僕のところに戻ること」

噛みしめるように言った。これだけは、何があっても譲れない。手放す気はない。

「やったことは、全部報告すること」

続けて、低い声で言った。岸川はうんうんと頷き、妙に真面目な顔をした。さっきまでの笑みが消え、琥珀色の目が静かにこちらを貫く。その変化が、逆に怖かった。

「分かった。戻す。報告も怠らねえ。ただ、ひとつ言っとくけど、俺が女を仕込むと、なかなか元には戻らねえぜ。そこは覚悟しといてくれ」

そう言って、岸川は僕の目を真っ直ぐに見つめた。嘘も冗談もない、まぎれもない合意の瞬間だった。僕は頷いた。頷くしかなかった。いや、頷いたのではなく、頭が自然と前に倒れただけなのかもしれない。視界がぼやけていた。手元の杯を見ると、わずかに酒が揺れていた。

店を出たのは、深夜零時をまわってからだった。暖簾をくぐると、路地にひんやりとした夜気が流れ込んで、首筋を冷やした。岸川は先に路地の向こうへ歩いていく。その背中を見送りながら、僕はスマホに彼の連絡先を登録していた。画面に「岸川勇次」の文字が並ぶ。その下に、礼奈の名前がある。二つの名前が並んだだけの画面なのに、まるで薄いガラスの板を隔てて、別の世界が静かに口を開いているように見えた。

アパートへ戻る道すがら、歩みが重いことに気づいた。何も起きていない。まだ、この瞬間は、何も。でも、路地の風が運んでくる十月の冷たさが、まるで礼奈の肌の代わりのように、僕の指先をじんわりと冷やしていった。僕は何度も拳を開閉しながら、自宅の明かりの方へ、ゆっくり、ゆっくりと近づいていった。

第2章 画面の向こうの妻と、変わりはじめた夜

第2章のシーン

十一月下旬の金曜日、雨は午後からずっと降り続いていた。窓を打つ雫の音が、リビングの薄暗がりに妙に規則正しく響き、網戸の外からは雨に濡れた土のにおいが、ほんの微かに冷たい空気とともに流れ込んでくる。仕事を終えて帰宅した僕は、礼奈の用意してくれた味噌汁を啜りながら、スマホの通知に気づかないふりをしていた。味噌の香りよりも先に、鼻の奥を焦げつかせるような緊張が広がって、舌の上で出汁の味が薄れていく。本当は、スーツの内ポケットで震えた瞬間に、それが岸川からのものだと分かっていた。あの居酒屋の夜から二週間、僕はずっとこの通知を待っていたのだ。待ち望んでいたくせに、指は震えて、箸を置く音だけがやけに大きく食卓に落ちた。

「お風呂、先に入ってくださいね。片付けは私がやっておきますから」

礼奈の声はいつも通り柔らかく、黒い瞳は何の疑いもなく僕を見つめていた。食器を重ねる白い指先にも、裾をひるがえす生成りのリネンワンピースにも、夕餉の後の穏やかな営みが滲んでいる。結婚して四年、変わらない透明な視線が、今日に限って鋭く胸に突き刺さる。何も知らない妻。何も疑っていない白い首筋。僕は「ああ」と短く返して席を立ち、脱衣所に向かう足音を雨の音に紛れさせた。

浴室の鍵を閉めてから、僕はやっとスマホを取り出した。脱衣籠の清潔なタオルの匂いと、かすかに残る礼奈の髪の香りが、むっと籠る湿気に沈んでいる。水滴のついた指先で画面をスライドすると、岸川勇次という名前と共に、一件の動画ファイルが送られている。サムネイルは暗い部屋のソファらしき場所で、白いものがぼんやり浮かんでいる。心臓が喉の奥で脈打つ。吐き気にも似た興奮が、胃の底からせり上がってくるのを感じた。

再生ボタンに触れる。画面が明滅し、ノイズが走った後、聞き覚えのない男の部屋が映し出された。壁に掛かった薄いカーテン、床に積まれた雑誌、安物のフロアランプの橙色。その薄ぼんやりとした光の粒が、小さく空気を揺らめかせて、部屋の埃まで金色に浮かび上がらせていた。そして、その光の輪の中に、妻が座っていた。

僕の手が滑り、スマホを落としそうになる。画面の中の礼奈は、あの淡い花柄のブラウスに手をかけ、ゆっくりとボタンを外しているところだった。細い指が一つ、また一つとボタンを外していく。陶器のように白い指先が、小さな貝ボタンをなぞるたび、微かに震えている。その動きはどこか夢の中のように緩慢で、現実感がない。岸川の声が、画面の外から低く響いた。

「そう、ゆっくりでいいから。焦んなくていいぜ、奥さん」

礼奈は目を伏せたまま、ブラウスを肩から滑り落とした。露わになった鎖骨のラインが、橙色の光を受けて浮かび上がる。汗ばむ前の、まだ乾いた清潔な肌が、カメラ越しにもひんやりとこちらへ伝わってくるようだった。白い綿の下着が胸元を覆っていて、世の中のどこにでもある質素なデザインのそれが、かえって凄惨なほどに生々しかった。僕は喉の奥が干上がるのを感じた。指先が冷たくなっていく。それなのに、舌の付け根には粘つく唾液が溜まり、嚥下するたびに耳の奥で水音がした。

「下着は自分で脱ぐ? それとも、俺が脱がせようか」

「……岸川さんが、してくれるんですか」

妻の声が、小さく震えながらスピーカーから漏れる。あの、夜の寝室で「ごめんなさい、私、感じるのが下手で」と囁いた声と同じなのに、今は少しだけ掠れて、甘い唾液が絡んでいるような響きが混ざっている。岸川の大きな手が、画面の端から妻の背中に伸びた。節の太い指が、白い下着のホックに触れる。かりかりと布を引っかくような指先の気配に、妻の背中がふるり、と波打つ。背中にまわされた手の骨ばった関節、その一瞬の手際よさに、妻が一度だけ「ひっ……」と息を詰める音がはっきりと録れていた。

ホックが外され、ストラップが両肩から滑り落ちる。胸元が露わになった瞬間、妻は咄嗟に腕を交差させて乳房を隠そうとした。痩せた二の腕の内側が、蛍光灯ではなくフロアランプの光に照らされて、青白い血管の筋まで浮かんでいる。岸川の手が、その腕をゆっくりと外していく。指先が妻の手首を絡め取り、上に持ち上げて、ソファの背もたれに縫い付けるように押さえつけた。

「隠さなくていいって。可愛いよ、奥さんの胸。色が白くて、乳首まで綺麗だ」

小ぶりな乳房が、岸川の片手にすっぽりと包まれた。無骨な指の隙間から、白い肉がむにゅりと溢れる。柔らかな膨らみを握り返す手の厚みまでが、画面のこちら側にぬくもりとして伝わってくるようだった。その様子を見た瞬間、僕の陰茎は痛いくらいに勃ち上がり、スラックスの前が張り裂けそうな圧迫感を訴えていた。浴室の鏡に映る自分の顔は、まるで知らない男の顔だった。ほんの二週間前まで、妻が感じてくれないと悩んでいた自分が、妻の下着姿の動画を見ながら喉を鳴らしている。滑稽で、醜くて、どうしようもなく興奮していた。

岸川の指が、妻の乳首を捉える。親指と人差し指の腹で挟まれ、転がされるたびに、妻の身体がソファの上で小さく跳ねた。色白の肌に鳥肌が立ち、乳輪がじわりと膨らんで色を濃くしていく。元は淡い桜色だったはずの乳首が、画面越しにも分かるほど硬く芯を持ち、胭脂色に熟れていく。つんと尖った先端が、男の指に押し潰されて、それでもなお赤黒く充血していくのが、薄明かりの下でいやに艶めかしかった。妻の方もだんだんと抵抗をやめ、両手をだらりと下ろしたまま、ただ肩で息をするようになっていった。

「んっ……」

妻の唇が半開きになって、小さな吐息が漏れる。画面越しに聞こえるその声は、僕がセックスで一度も引き出せなかった音だった。赤い唇の内側に、湿った舌先がちらりと見える。胸への愛撫を受けながら、太ももをもじもじと擦り合わせている。未通女でもない三十一歳の女が、まるで初めて男を知る少女のように戸惑い、身をよじっている。

「奥さん、ここ触られて、どんな感じがする? ちゃんと教えてくれよ」

「……不思議な感じです。熱くて、痺れて、変な感じがします……」

「どこが一番、いま、気持ちいい?」

「胸の先っぽが……指で触られるたびに、体の中がきゅってなって」

「電気みたいに走ってるんだろ。それ、いいんだよ。奥さんの体が、正直に反応してる証拠だ」

岸川の言葉に、妻は泣き出しそうに眉をひそめ、何度も首を振った。乱れた黒髪がしっとりと頬に貼りついて、白い肌との境目を濃く、なまめかしく分けている。画面の外に、ぎし、とソファの軋む音。古いスプリングのささくれた悲鳴が、耳の奥をくすぐるように何度も続いた。男の身体が近づいて、妻の顔に影が落ちる。

「ん、やっ、あ……」

湿った接吻の音が、スマホのスピーカーから直接、僕の鼓膜に流れ込んでくる。舌と舌が絡まる音、唾液が混ざっていく粘度のある水音。ちゅる、ちゅ、くちゅ、という小さな水音が、浴室の壁に反響して、僕の股間をじくじくと疼かせた。妻の顎が持ち上げられ、白い喉が反りかえる。下着を剥ぎ取られた胸の上を、男の手が這い回っていく。画面が近づきすぎて、光量で白飛びした画像の端に、岸川の肩と、妻の乱れた黒髪が一瞬ちらついた。

そこで動画は終わった。

再生時間は、十四分三十六秒。僕は動画インターフェースを開き、もう一度初めから再生した。二度目は音声を消して、妻の表情だけを追った。三度目は止めながら、岸川の手が妻に触れる角度を、執拗に目で確かめた。四度目を再生しようとして、スマホの外側が結露したように汗で濡れていることに気づき、やめた。それでも指先には、動画の景色だけがべったりと張りついたままで、しばらく立ち上がることすらできなかった。

それから数週間、僕は日常を偽りながら過ごした。朝は同じ時間に起き、礼奈の淹れてくれたコーヒーを飲み、ネクタイを締めて出社する。誰も僕が夜な夜な、妻が他の男に胸を揉まれる動画を眺めているとは思わない。それを思うたび、背中の奥を熱い針で刺されるような感覚に襲われた。悪いのは、妻を男に差し出した自分だ。あの居酒屋での出来事をなかったことにできない以上、この動画は僕が受け取るべき代償なのだ。そう、懸命に納得させようとするほど、体は正直に昂ぶった。

変化は、唐突に現れた。

十二月初旬の夜、礼奈は夕食の後片付けを終えると、珍しく自分の方から僕の隣に座ってきた。ローズマリーの柔らかい香りが、妻の黒髪から漂ってくる。俯きがちに、白い指を膝の上で組み、きゅっと爪先を丸めて、それから意を決したように顔を上げた。

「あの、今夜、私……その、あなたに触れてもいいですか」

声は途切れ途切れで、耳の先が熟れたように赤い。蝋燭の火を思わせるような、熱の籠もった赤みが、白い肌の輪郭をふるふると揺らしていた。僕は一瞬、自分の聞き間違いかと思った。これまで、礼奈から誘ってきたことなど一度もない。いつも僕が手を伸ばし、妻はされるがままに横たわり、終われば背を向けて眠る。その妻が今、触れたいと言っている。動画に映っていたあの、男の指に身を震わせていた妻が、今僕の目の前で、もじもじと腿を擦り合わせている。

「礼奈、どうしたんだ。急に」

「急じゃないんです。前から、その、あなたに気持ちよくなってほしくて」

囁くように言ったあと、妻はぽつりぽつりと、まるで自分に言い聞かせるように続けた。

「私、このままだとあなたに申し訳なくて。だから、いろいろ勉強したというか、がんばってみたいの」

その言葉の裏に、岸川の部屋で学んだことを、僕に注ごうとしている意図が透けて見えた。気づかないはずがない。香りはローズマリー、石鹸の清潔さの下から、ふと、微かに立ち昇る匂いに鼻が反応する。換気扇では消しきれない、アルコールと煙草の匂い。汗ばんだ肌に染みついた、僕のものではない男の匂い。それは覚えのない香りだった。動画を何度も見返した僕の脳裏に、あの部屋の空気が再現されていく。妻はきっと、今日も岸川の手に触れられ、舐られ、指を咥えさせられて、夕方遅くに帰ってきたのだ。

その夜、礼奈は僕のベルトを外すと、慣れない手つきでスラックス越しに僕の陰茎を指でなぞった。手のひらを添えて上下に擦り、熱を確認するように包み込む。コンドームのぬめりもない素手の感触。指先のぬくもりが布を通してじわりと滲み、くすぐったさと切なさの境界をゆっくり溶かしていく。妻の指先が、僕の下生えに触れ、尿道のくびれを親指の腹で追っていく。不器用なはずなのに、時折、あきらかに何かを覚えてきたと分かる角度で指を曲げた。布の上からではなく、直に。生の手で。舌を這わせる仕草も、以前までのように遠慮がちに先端だけをペロリと舐めるものではなく、根元から亀頭にかけて唾液の筋をひかせるように舐め上げていく。

「ん……はあっ、あなたの大きくなってる」

妻は頬を真っ赤に染めながら、上目遣いに僕の顔を盗み見て、そんな恥ずかしいことを言った。僕の知っている礼奈は、自分から性器を口に含んだ事実にすら、必ず目を逸らす女だった。今、妻は僕の陰茎を握り、先端に唇を吸いつけて、ぬち、ぬち、と音を立てている。口の中の熱が亀頭を包むたび、背中が粟立ち、腰が浮いた。

「礼奈、どこで……どこでそんな」

動揺がそのまま喉から滑り落ちて、語尾が掠れる。礼奈は口を離すと、僕の顔をまっすぐ見ないまま、火照った頬をますます赤く染めて、唇の端で唾液の糸を拭った。

「ほ、本やネットで…… それ以上聞かないで、恥ずかしいから……」

妻はそう言って、まるでこの場から隠れてしまうみたいに、僕の太ももの付け根へ額を押しつけた。聞きたいのは、そんな生易しい答えじゃない。本やネットで覚えた、という誤魔化しの言葉が、湿った吐息と一緒に足のつけねへ沁みこんでいく。なのに、僕はそれ以上問い詰められなかった。妻の身体に残る男の匂いを暴けば、自分の差し出した罪まで暴かれる気がして、喉の奥で言葉が死んでいった。

「やめて、見ないでください。お願い、言わないで……」

礼奈は顔を背け、僕の太ももの付け根にもう一度舌を這わせた。睾丸の皮の皺を舐め伸ばし、先端から滴る我慢汁を唇で拭う。もう下品な音を隠そうともしなかった。ちゅる、ちゅぷ、ぬちゅ、と粘りつく音が、静かな寝室の空気をねっとりと濡らしていく。

そうして更に、礼奈は僕を仰向けに押し倒すようにして、尻の肉を両手で割り開き、おずおずと顔を埋めた。肛門の周りに、生暖かい舌が這う。ひだを丁寧に舐め広げ、尖らせた舌先を小さく差し入れてくる。あんなことをされるのは初めてだった。妻の唾液で、そこだけがみるみる潤んでいく。快感と不相応な外敵感。それ以上に、やってのける妻の大胆さに心臓が暴れて、脳裏を何度も過るのは、夕方に嗅いだあの残り香だった。これは、あの男に教えられた妻だ。僕の指の届かなかった場所から、別の男が連れ帰ってきた礼奈だ。悔しさと惨めさ、嫉妬と欲情が溶けて、すべてが腹の底で煮えていた。

だが、組み敷いた妻を抱きしめて、冷たく白い肌に唇を吸いつけた瞬間、その匂いが僕の鼻腔いっぱいに広がる。

煙草と酒に混じる、若い雄の汗の酸っぱさ。洗い落としきれなかった、岸川の精液の残り香か。それは汗ばんだ妻の首筋や乳房の谷間から、熱を帯びるほど強くにおい立つ。動画の中の妻と、今この腕の中で息を乱す妻が、匂いを介して結びついてしまう。境界線が溶けていく。僕は気づかないふりをして、その匂いの染みついた鎖骨に舌を差し入れた。妻の肌は熱く、しっとりと汗ばんで、吸いつくとしょっぱい塩の味がした。

「あなた、あなた……」

礼奈が僕の背中に指を立て、声にならない声で鳴く。組み敷かれた格好のまま白い腿を開いて、僕の腰を脚で引き寄せた。もっと奥まで、もっと深く、と無言の圧がかかる。内ももは薄く汗ばんで、指が触れただけで吸いつくほどの熱を帯びていた。妻の中は、信じられないほど柔らかく解けていて、僕を受け入れる準備が出来ていた。挿入した瞬間の、肉襞がうねって吸い上げるような蠕動に、女の体はたった一つの男の形に馴染むのだと、嫌というほど思い知らされた。

性交のあと、礼奈は僕の胸に頬を押しつけて、小さく息を弾ませていた。いつもなら背を向ける妻が、僕の髪を指で撫で、耳の後ろに唇を寄せてくる。

「気持ちよかったです。あなたのおかげで、私、やっと女になれた気がします」

その言葉が、あまりにも図々しかった。君は僕のおかげで女になったんじゃない。岸川という男の手で、指で、あの部屋のソファの上で、開発されたんじゃないか。そう詰りたい衝動を、喉の奥にぐっと押し留める。言えるわけがない。それを暴けば、自分の犯した行為も、すべて白日の下にさらされる。妻の肌から、まだ男の残り香が微かに香っていた。僕は天井を見上げたまま、右手だけで妻の汗ばんだ肩を抱きしめた。

翌朝、礼奈は朝食の支度をしながら、鼻歌を歌っていた。窓の外には、昨夜の雨がやんで、十二月の薄い日差しが部屋の隅まで射し込んでいる。乾いた光が床に長い影を落とし、妻のふくらはぎの白さを冷たく照らす。妻の首筋に残る紅い吸痕が、ネックレスで隠されて見え隠れする。あれは僕がつけたものか、岸川がつけたものか。もはや区別がつかなかった。

僕はコーヒーカップを持ち上げるふりをして、唇の裏側に残る妻のぬるい淫らな味を、深く吸い込んだ。これからも、動画は届く。報告は続く。妻は、僕の知らない夜の記憶を、その肌に染み込ませて帰ってくる。満たされない夜は終わりつつあった。けれど、心の奥底に、ぽっかりと穴があく音を、僕は確かに聞いたのだ。

第3章 薄い闇を透かすような寒さが、寝室の空気をすみずみまで尖らせていた。暖房はもうとっくに切れていて、窓の外では乾いた北風がときおりビルの肌を爪で引っ掻くように鳴いている。仰向けになったまま、僕は天井のぼんやりした白さへ目を据えていた。数時間前に飲み下した白湯の熱は、身体のいちばん深いところからすっかり剥がれ落ちて、骨の奥までがひやりと澄みきっている。隣で眠っているはずの礼奈から、寝息は聞こえてこない。かわりに、衣ずれの音がごく短く鳴って、妻の額がこちらの肩口へと寄せられた。

第3章のシーン

薄い闇を透かすような寒さが、寝室の空気をすみずみまで尖らせていた。暖房はもうとっくに切れていて、窓の外では乾いた北風がときおりビルの肌を爪で引っ掻くように鳴いている。仰向けになったまま、僕は天井のぼんやりした白さへ目を据えていた。数時間前に飲み下した白湯の熱は、身体のいちばん深いところからすっかり剥がれ落ちて、骨の奥までがひやりと澄みきっている。隣で眠っているはずの礼奈から、寝息は聞こえてこない。かわりに、衣ずれの音がごく短く鳴って、妻の額がこちらの肩口へと寄せられた。

「寒いの」

夜のいちばん底へ、そっと石を落とすような声だった。僕が返事を見つけるより早く、礼奈の白い指が胸元を這いのぼり、パジャマの前合わせをたしかめるみたいに握ってくる。爪のふちが、布越しにうっすら肉を押す。こんな触り方は、いままでなかった。欲望をあからさまに差し出すのではなく、暗がりごとこちらを手繰り寄せている。呼び寄せられている、と僕は思った。隣でとくり、と熱のふくらむ気配がする。

「……夜更けに、どうした」

問いを吐き出すので精一杯だった。咽喉の奥に絡まった声をほどくたび、身体がわずかに身構えてしまう。それが自分でみっともなかった。礼奈は答えない。そのかわりに、するりと夜具が持ち上がって、凍えた空気が剥き出しの首筋を舐めていく。つづいて、腰のあたりへ生温かい重みがのし掛かってきた。妻が、僕の腹を跨いでいる。

「待って」

とっさに出た制止も、礼奈の耳には届いていない。しっとりと濡れた重い部分が、スウェット越しに押しつけられる。下着を脱ぎ去った秘所のあたりが、布ごしに熱をじくじくと分け与えてくる。上体を起こした妻が、ゆっくりと僕のズボンと下着を一緒に引き下ろした。布が太腿の内がわを擦っていく。剥き出しになった性器に夜気が当たり、すぐに、濡れた女の手のひらがやわく巻きついてくる。

「……こんなこと、誰に教わった」

掠れた声しか出ない。淡い闇のなかで、妻の顔だけがぼんやりと浮き上がっていた。伏せられた睫毛の影が頬へ長く落ちている。礼奈はなにも言わずに、すでに芯を持ちはじめている僕の陰茎を、両手でゆるやかに擦りあげた。手のひらの温度と、ぬるりと舌のように滑る粘液。零れ出たものが、乾きかけていた先端を音もなくしめらせていく。

「んっ……」

耐えるような吐息が、白い喉の奥から落ちてきた。首が仰け反って、寝乱れた黒髪が背へばらばらとこぼれる。自分の行為に昂っている。いや、すでに昂ぶっていたのだ。妻の腰が、もどかしさを隠しきれない動きで前後へ揺れている。陰核のあたりを下腹へ押しつけ、擦りつける。粘ついた蜜が細い筋になって、互いの肌をぬらしていく。シーツを握る僕の手に力をこめさせるほど、礼奈の太腿のうちがわは細かく戦いていた。

十二月のあの夜から、礼奈は幾度も僕を受けいれてきた。そのたびに、妻の知らない一面を膣襞ごと突きつけられる心地がして、僕は自分の妻の胎内を、他人が教え込んだ形のまま、他人が通した道筋で、遠回りに味わわされている。快楽を覚えるほど、胸のまんなかに錆びた釘を打ち込まれているようだった。

「あなた」

静かな呼び声が降って、腰を浮かせた礼奈の指先が、ぬかるんだ亀頭を割れ目へ宛てがう。熱い。入り口の肉が、ゆでた花弁みたいにぱっくりと開き、先端を食い締めた。息が白く匂う。夜のなかで、その白さが、情事の熱をよけいに際立たせた。

「んんっ……」

腰が沈んでくる。眩暈のする熱さ、狭さ。ぬぷ、ぷちゅ、と粘液の混ざる水音が、二人の肉のあいだに泡立つ。根元までずるりと呑み込んだ礼奈は、肩を小さく震わせ、数秒だけ息をひそめた。奥の柔い襞がうねり、僕のかたちを覚えさせられているような吸いあげ方をしてくる。僕は目を開けたまま、暗い天井を見た。これは性交じゃない。腹を割って、熱を流し込まれている。呑まれている。

奥まで銜えた礼奈の腰が、ゆっくりと持ちあがる。引き抜かれる感覚。亀頭の裏をざらついた襞が擦り、括れのぬめりが抜けきるぎりぎりで、また一息に沈み込んでくる。ぬちゃあ、という下品な音が、冷えた部屋のなかを這う。シーツを掴んでいた手の甲へ、いつの間にか妻の爪が食い込んでいた。

「あっ……! ふか、い……っ、ああっ……!」

普段の声ではない。下から男に貫かれているときの、酸っぱさの混じった泣き声。礼奈の腰はもう、縦の抜き差しだけではなく、前後の揺らぎへとかたちを変えている。ぐり、ぐり、と恥骨を押しつけあい、殻をかぶったままの淫核の芽を、僕の下腹にぐちゅぐちゅと潰す。背筋を弓のように反らし、汗で張りついた頬へ黒髪を巻きつけ、肉づきの薄い臀を打ちおろしてくる。牝の動きだった。性交というより、器官と器官の、ひどく雄弁な応答。

「礼奈」

「やっ、呼ばないで……今、声……おかしくなる……」

淫らに腰をくねらせ、礼奈は泣き笑いのように首を振る。膣口が腹の上へぬめり込み、結合部から泡立った愛液が溢れて、僕の下腹をぬるぬると濡らしていた。パジャマのなかで乳房がふるふると跳ねる。汗ばんだ布が肌へ貼りつき、乳首のかたちをくっきりと浮き上がらせていた。暗闇のなかでも、色白の肌が桜色の火照りに染まっていく。

「僕の上で、今、自分が何をしているか分かってるのか」

意地の悪い問いだった。妻の動きが、ほんの一瞬とまる。脈打つ膣が、ぎゅうぎゅうと僕を絞めあげる。ぐちゅ、ぬぷぷ、と音だけが浅ましく繋がった。

「……分かってます」

「言えるのか」

「……っ、言えません。言えるわけ……ありません、あっ、あ、中、擦れて、ひっ……」

答えにならない声を絞りだし、礼奈は前のめりになった。両の掌を僕の胸へつき、腰だけを突きだす。はげしくならない程度の浅い抜き差しが小刻みになって、肉の打ち合う音が断続的に弾けた。

「ああァァ、うわァァ!……はあン」

背筋をぞっと撫であげるような嬌声。首ががくんと仰け反り、腰が跳ねる。浅い部分を亀頭の括れで引っかくたび、妻の女陰がひくひくと泣いた。僕は妻の腿を両手で掴み、下から突きあげる。初めてだった。妻のなかで自分がうねる感触。襲いかかるように腰が動いた。ぱん、ぱん、と小気味よい肉の音。結合部のぬめりが白く泡立ち、傘が襞を押しひらくたび、礼奈は咽喉を鳴らして息を呑む。

そのとき、嗅いだ。汗ばんだ鎖骨。のけぞった妻の、白桃のように湿った窪みから立ちのぼるもの。煙草の脂、酒の残り、安物の柔軟剤のむこうから這い出してくる……牡の情動。岸川の、汗だ。酸く、塩辛く、どこか甘ったるい雄のにおいが、礼奈の肌の熱とまじって、視界の隅まで黄色く染めていくようだった。洗っても洗っても剥がれない、男と会った夜の名残。妻の熟れた汗のなかに、もう一人の男の体臭がはっきりと混ざっていた。

「あっ、あっ、い、いけません、あっ……」

自分で腰を振りながら、快楽に責任を持ちきれない声。ぐちゅ、ぬちゃ、ぬぷっ。結合部の水音が、妻の性器が岸川の巨根を受け入れた夜を、手触りを、肉の拡がりを、生々しく砕いて流し込んでくる。忌まわしい。唾液が湧くほどに、なのに、どうして熱が滾る。心臓が震える。

「それ……お前に教えたのは、僕じゃないんだな」

呟きが、唇を割って落ちた。同時に、妻の腰が大きく波打つ。ぐりり、と膨らんだ亀頭が、ざらついた天井の一点を抉った。

「イィィィ! イク! イキますッ! イッちゃゥ!」

腰を弓なりに反らし、礼奈はその場で雌犬のようにガクガクと尻を痙攣させた。中の肉が一段と熱くなり、数え切れない襞が吸盤のように吸いつき、僕を奥へ奥へと引きずり込んでいく。容赦のない膣の蠕動。射精を促すのではなく、魂まで搾り取るための律動。

「だめ、抜かないで……あなた、お願い、そのまま、そのまま……」

ああ、僕は妻の膣という器官に飼い馴らされつつある。岸川に開発されたその粘膜の熱のなかで、射精という間借りを許されているだけだ。悔しさが熱に溶け、快楽が悔しさを食い破る。見あげた天井を、青白い罅が走る。指先の感覚が、あの十月の夜の、礼奈の冷たい肌の質感へ遡る。ひやりとした背中の線。いま、この瞬間、はち切れるほどに熱い胎内。同じ女の肌が、男の手を経て、僕を別の男の味わった穴へとまるごと引き込んでいく。

「あ、れ、んな……」

背中が浮いた。膀胱の奥が灼ける。腰髄を逆流する蜜の波動に追いたてられ、喉の奥から唸りが溢れた。びゅる、っと欲望の塊が絞り出されていく。妻の膣はひときわ深く喰らいつき、射精の脈動を一掬い残らず啜りあげた。自分の体液を放出しながら、これは妻の膣を借りた自慰だ、と思う。彼女の果てに、僕の精が、岸川の教えた淫肉へと献上されている。

ぴちゃぴちゃと結合部から精液が押し出され、腰と腰のあいだが生臭く湿る。女が、自分の腹のなかで男の熱を受け止めたあとの、あの深い収縮。

「……ぁ……」

礼奈はしばらく身を起こしたまま、天井を見あげていた。艶を失った喘ぎの残骸を、胸の奥で反芻している。二人分の汗が冷えはじめた部屋のなかで、妻の吐息だけが白い。しだいに落ちていく呼吸。ゆっくりと腰が浮く。僕のなかから引き抜かれていく半立ちの陰茎が、外気に触れてぴくりと震えた。

ちゅぽ、と粘ついた音がして、半勃ちのそれが抜けきる。びゅるりのこった精液の膜が糸を引き、割れ目から、どろりとした白濁が一滴、僕の腹の上に落ちた。はしたないものを見た。たしかに見たはずなのに、その直後、礼奈の肩がするりと沈んで、艶めいた黒髪が僕の腹へさらさらと散る。

「ちょ、っと……礼奈……?」

妻は答えなかった。代わりに、熱い吐息が、濡れた鼠蹊へと吹きかけられる。汗ばんだ片手で根元をそっと支え、半立ちのそれを、しなやかな指先が口元まで傾けた。

ちゅる、ぬるっ、ぷ……。

やわらかい唇が、ぬめった亀頭を包み込む。礼奈は息を荒げながら、僕の腹に零れた白濁へ舌先を這わせた。ざらりとした味をたしかめるように、舐め散らすのではなく、吸いあげる。ぬちゃあ……。口蓋と舌が、まだ痺れている陰茎の表面を扱いていく。目を見開いたまま、僕は動けなかった。逸らすことも、突き放すこともできず、鼻先にまで届く妻の黒髪を見下ろしている。

「ん、ふ……ちゅ、じゅる……ふぅ……」

唇を窄めて、礼奈が先端の窪みからぬめりを啜った。じゅぽ、じょぼ、じゅる、という下品な水音が、暗い寝室に粘っこく弾ける。呼吸があらい。半立ちのものを斜めに咥え、頬の内側でしごくようにしながら、舌の腹を使って裏筋を舐めあげてくる。まだ残っている射精の苦みと、自分の愛液の味が交ざったもの。それを、口を窄めて啜り、ときおり上目遣いに、濡れた黒い瞳だけをこちらへ向けた。

「……んんっ、はぁ……んむ……じゅるる……っ」

礼奈の唾液が、口の端から顎へと伝い、くぐもった吸いつきの音と混ざって絶えず鼓膜を刺す。自分の精液と、妻の愛液とにまみれた一物を、奴は熱心にしゃぶり清めていた。薄く開いた唇が、亀頭の括れをゆっくりとなぞり、舌先で尿道の窪みをほじくるように押しひらく。ちゅるっ……じょぼぼ……。泡立った唾液を垂らし、半勃ちのそれが、柔い口のなかでぬかるようにふくらんでいく。

「お前……何を……」

声がひっくり返る。面白みのない掠れ声だった。なのに、口のなかでくちゅくちゅと水音を立てながら、礼奈はごく小さく首を振り、肉の傘のふちを薄い唇で食みしめる。

「ん、ちゅ……じゅぼ……っ、はぁ……ふ、あむ……」

息があらくなるほど、頬が落ちくぼみ、舌の動きが滑らかになる。土気色の薄明かりのなかで、白い肌の指が、ねっとりと濡れ光る陰茎を差しあげるように支えていた。じょぼじょぼと水音をたてるたび、妻の口元で白い泡がゆるく盛りあがり、唾液と精液と愛液とが、互いの境を失くしながら顎へこぼれていく。

礼奈は、何かを食べるときのように喉を鳴らすと、そのまま亀頭を奥へ銜えこんだ。ゆっくりと頭を沈め、柱全体を口腔のぬめりのなかへ誘う。舌の奥でしごき、咽喉の入り口を何度もすぼませて、射精の残滓を吸いだそうとしている。ぞわり、と背筋が粟立った。老婆心のように、いや、生理的な反射として、腹の奥がまた重く灼ける。

「……ぷはっ、……ちゅ、んっ……あ……」

一度、音をたてて唇を離す。唾液が何本も銀の糸を引き、妻の下唇と亀頭の先とを繋いだ。礼奈は荒い息のまま、べろり、と舌をひらべったく伸ばし、垂れ下がった精液の糸を根元から丹念にすくいとっていく。ぐちゅる、という粘着質な音。舌が肉を押し潰す音。色白の頬が火照り、瞳は涙でぬれて、黒い虹彩がゆらゆらと揺れていた。

「おい、礼奈……っ」

「……きれいに、しないと……あなたの、もったいないから……っ」

妻の言葉は、確かめるというより、自分の行為に理由をつけるための呟きだった。口調は崩れていない。あどけない敬語のまま、ちゅぷ、じょぼ、と音をたてて再び亀頭を咥えこむ。根元まで一気に呑み、鼻先を腹へ押しつけ、唾液を溢れさせながら咽喉の奥でくびくびと蠢かせる。僕の太腿が跳ねた。情けない声が出る。

「う、っ……」

「んふ……ふぅ……じゅるる……じゅる……っ」

頭が前後へゆっくり揺れるたび、半立ちの陰茎が、妻の唇と舌と頬の肉とでぬかるように撫であげられていく。自分の愛液と僕の精液が、唾液とまざりあい、口のなかから零れては、根元を伝って睾丸を濡らした。ちゅぷ、じゅぼ、じょぼぼ。水音が、静寂のなかでいやに明瞭に、部屋の空気そのものを淫らへ塗り替えていく。

さっきまで僕を呑み込んでいた肉の膜と、いま僕を咥えている肉の襞とが、どこかで同じ女の器官なのだと、頭の芯で理解してしまう。膣と口。妻の汚れをそのまま舐めとろうとする舌。じゅるる、と音が深くなるたび、我知らず腰が浮く。もはや射精ではなく、痛みに似た快楽だけが、尿道の奥を逆流していた。

礼奈は唇をすぼめ、陰茎の根元から傘のふちへ向かって、滲んだ泡を音をたてて吸い清める。舌を絡め、歯を立てないよう唇だけを被せて、ぬめりを薄く剥がすような舐めかた。じょぼ……っ、ちゅうう。引きちぎるように吸いつき、離れぎわ、亀頭の裏を舌先でこりこりと押した。

「んく……ねぇ、あなた……」

涙のためた瞳のまま、耳まで熱く染めた顔をあげ、礼奈は僕の一物を片手でそっと支えた。空気に冷やされたはずの陰茎が、ぬらぬらと光っている。唾液と体液の膜が、夜の薄明かりを生ぬるく跳ね返す。

「こうすると、おちつくの。わたし……っ、これ、の…あじがすき……っ……」

僕は言葉を失っていた。この口は、岸川の性器も同じように舐め清めた。この舌は、男の精が何度も入ってきて、その温度と匂いを覚えているにちがいない。いや、いま目の前で起きているこの動きこそ、おそらくは、岸川が礼奈の口のあいだに染みこませてきた作法そのものだ。フェラチオ。お掃除。射精のあとの、半勃ちの肉を唇で拭う猿ぐつわのようなねっとりした時間。

「……岸川にも、同じことをしてるのか」

問うた自分の声は、思っていたより低く、しかしはっきりと情けなく震えていた。礼奈の舌が、ぬめった亀頭に触れたまま、答えを迷うようにぴたりと止まる。じゅるる、と唾液をすする音が、沈黙を裂いた。

「……っ」

唇を閉じ、俯いた。返事はない。けれど、その沈黙こそが答えだった。すう、と息を吸う。鼻の奥に、妻の口から持ちあがる自分の精のにおいと、愛液の甘さが満ちた。じょぼ、と音をたてて、礼奈がもう一度だけ陰茎の先を軽く吸う。

ぬめる舌先で、尿道の窪みをそっと掬う。僕の太腿の内がわへ、唾液が糸を引いて落ちた。

「……眠らないの」

やがて吐き出したのは、まるで台所の隅ででも掛けてくれるような、優しい温度の声だった。ちゅ、と吸いついてから、唇を拭うように口元を下着のそれではない、手の甲でぬぐう。僕の腹へ、べったりと熱いものが零れている。情事の残り。焦げた釘を胸へ打たれつづけているような痛みのなかで、僕は天井の罅を睨んだ。

ゆっくりと身を起こした礼奈が、体を倒して腕のなかへ戻ってくる。呼吸を整えながら、汗ばんだ額を胸へ擦りつけ、沈黙のなかで何度もまばたきをした。黒髪がシーツの上で濡れ縄のように散らばっている。膝が、ときおり、ぴく、と余韻に跳ねていた。

「あなた、気持ちよかった?」

性交の前と変わらぬ、砂糖を溶かしたようなあどけない敬語。けれど、そんな声を出す口の奥を、僕は見た。唾液と精液と愛液とを混ぜあわせ、半勃ちの僕を掃除と称してしゃぶり清める、雌の口腔を、想像のさらに底まで覗いてしまった。

「ああ」

それだけが限界だった。妻の肩を抱いた手の甲を、冷えた汗が一筋流れる。指先の温度が、急に嘘みたいに冷たくなった。

礼奈は安心したように身体の力を抜き、腕のなかへ顔を埋める。濡れた前髪が首筋に触れ、乾きかけの唾液の匂いが薄く鼻先をかすめた。いや、唾液だけじゃない。精液と愛液の饐えた甘さが、妻の唇から、ふっと立ち昇っている。自分の精の残り。それに混ざる礼奈の粘膜の香り。そして、もうひとつ、どんなに薄められても消えない男の残り香。数分のあいだ、妻の胸の鼓動だけが聞こえていた。それから、すう、と長い呼気。礼奈は眠っていた。

僕は動けなかった。右腕に汗ばんだ女の首を預けて、この部屋の天井を、何度も目で測る。

確かに、今、越えた。越えてしまった。夫婦という器の内側で、妻の淫肉が他人の形に鋳直されていると知りながら、僕自身がそのなかで果てた。しかも、射精のあとの半勃ちの性器まで、妻に舐め清めさせた。いいや、させられたのではない。僕はあの水音を、舌のぬめりを、咽喉で吸いあげる浅ましい動きを受け入れていた。境界線は、彼女の体のなかだけではない。僕の口を割って溢れた嫉妬のなかにも、熱い愉悦のなかにも、それは粘ついていた。

どんな言い訳を重ねても、この射精の熱は、岸川の名を呼んでいたように思えてならない。妻の唇が僕をしゃぶるたび、じょぼじょぼという音が、もう一人の男の骨を吸っているようだった。岸川の嗅がせた臭い。岸川の通わせた舌。それを妻の口腔でなぞられただけなのに、僕までが、その男の一部になったみたいだ。

だめだ、と思う。そう思うほど、腹の奥がずくん、と重く、生温かく痺れる。

微かな電子音が、闇を刺した。枕元のスマホ。着信のバイブレーション。短く二度、震えて静かになる。心臓が跳ねた。腕が軋んだ。起こさないように、目だけを動かす。画面は伏せられている。だが、蛍のような青白い光を、ほんの一瞬だけ、指の隙間から零した。次の動画が届いた。意図せず、見てしまう。そこに、何が映っているかは、まだ。

通知を消さなかった。消せない。消す勇気がなかった。

天井のうっすら白い斑を睨んだまま、僕は、腕のなかの女の肌を、冷えていく指先で抱きしめ直す。眠る呼吸に交じって、ほんの少しだけ、煙草と酒の残り香が夜を揺らしていた。そして、自分の下腹に冷えていく唾と精の痕を、やわらかい被布の重みの下で、いつまでも感じていた。

第4章 アナル処女の告白と、動画の中の妻

第4章のシーン

第4章: アナル処女の告白と、動画の中の妻

二月の日曜日、午後の光は薄曇りの窓を通して、リビングの床に白い膜のような明るさを作っていた。あの深い深夜から十日あまりが過ぎていた。僕と礼奈は、夫婦という形をかろうじて保ちながら、互いに口を開くきっかけを探しあぐねている。テレビの音が流れていた。見たくもない旅番組。誰かの笑い声が、他人事のように部屋の中をふわりと漂っていく。礼奈はソファの右端に座り、白いカーディガンの袖口を指先で何度も折り返していた。黒い瞳は伏し目がちに、カーペットの縁をじっと見ている。

油断した、と思った。こういう瞬間が来ることは、あの通知の光を見たときから分かっていたはずだ。逃げ場はなかった。礼奈は喉を何度か詰めるようにして、ようやく顔を上げた。頬に血が上っている。唇は薄く開いたまま、声になる前の息だけが三度ばかり繰り返された。

「あなたに、言わなきゃいけないことがあります」

妻の声は細かったが、震えていながらも芯を持っていた。僕はリモコンを置くこともできず、テレビの中の湯気を湯呑みに当てる芸人の横顔を見つめていた。分かっていた。嫌になるほど分かっていた。それなのに、気づかないふりをしてしまう。僕は画面から視線を外さないまま、掠れた声で応じる。

「なんだよ、改まって」

「私、岸川さんと、これからも続けたいの」

心臓が一際大きく鳴って、耳の奥で血が渦を巻く。続けたい、と妻が言った。あの奇怪な約束の中で、復唱すらもしていなかった言葉が、今、白昼のリビングにべったりと輪郭を持って落ちている。聞こえなかったふりをするには、その声はあまりに静かで、強かった。

「……全部報告するって約束だ」

震えを殺して、僕はそれだけを言った。返ってきたのは自分の声の冷たさへの驚きだ。怒っているわけでも、責めているわけでもない。もっと得体の知れない氷が、腹の中から滑り出した。礼奈は首を振る。黒髪の先が肩の上で小さく弾け、白い首筋を隠したり露わにしたりする。窓からの光で、妻の横顔はやけに青白かった。

「報告だけじゃ、足りないんです。私、ずるいけど、あなたに全部見てほしいの」

そう言って、礼奈はカーディガンのポケットからスマートフォンを取り出した。白い指が、何度も画面を滑らせる。僕の鼓動だけが時計を刻み、テレビの他人の笑いと混ざりあって、奇妙な和音になっていく。カップ麺の湯切りを失敗して慌てている画面の中の男。僕たちのいる場所だけが、別の空気に隔離されている。

「何を、見せるんだ」

「岸川さんが、送ってくれたの。私が、その、岸川さんにしてもらったことを、全部」

彼女の指が、再生ボタンに触れた。スマートフォンのスピーカーから、最初に流れてきたのは衣擦れの音。それから、低い男の声。聞き慣れないはずの、あの岸川の声。だが、すでに何度もあの動画で耳にした粘り気を帯びた響きだった。

「始めるぞ。奥さん、自分で下、脱げるか」

画面の中の礼奈が映った。見覚えのある男の部屋。薄いカーテンに、安物のフロアランプ。昼間なのか夜なのかも分からない、蜜色に濁った光。礼奈は淡いサーモン色のニットを脱いで、下着姿でソファに座っていた。白いブラジャーが胸を支え、下生えを覆いきれない細い布が、腰のくびれに食い込んでいる。現実の妻が、僕の隣でこれから何を見せようとしているのか、身体が先に理解して、指先が氷のように冷えていく。

画面の中で、妻は下着の腰紐をゆっくりと下ろしていく。太腿の付け根が露わになり、茂った陰影が暗く浮き上がる。彼女は自分の脚の間を隠すでもなく、男の手が伸びてくるのを待っていた。岸川の大きな手が、その割れ目を割り開いていく。指が隠れた場所をこじ開けると、ぴちゃりと濡れた音が、スマートフォンの小さな穴から溢れてきた。

「やあ……あっ、指、まだ……ああッ」

妻の声が、僕の鼓膜のすぐ内側で喘いでいる。隣にいる礼奈は、両手でスマートフォンを握りしめ、唇を真一文字に結びながら、自分の淫らな映像を僕と一緒に見つめていた。動画は続く。岸川の指が、もう一度、深く差し込まれる。ぐちゅ、ぐちゅと粘つく水音。内腿を伝う愛液が、ランプの光をまばゆく撥ねる。

「指じゃ足りないんだろ。もっと欲しいなら、言ってみな」

「欲しい、です……奥まで、欲しくて仕方ないんです」

画面の妻が、自分から脚を開く。あの慎み深い礼奈が、尻を持ち上げて、性器を岸川の顔の前に差し出している。男の舌が割れ目を下から上に舐め上げる。粘膜の擦れる音がぐちゅぐちゅと膨らんで、妻の腰がびくびくと跳ねた。それから、画面の礼奈は、岸川のベルトを外し、すでに硬く反り返った男根を取り出した。大きさに一瞬怯えている。それでも彼女は、両手でそれを包み、唇の先から唾液をしとどに垂らし、ぬめる舌で裏筋を辿っていった。時折こちらを向く見開かれた瞳が、淫蕩に濡れていた。あの目は、かつて「感じるのが下手で」と謝った女の目ではなかった。

現実の礼奈が、かすかに身体を寄せてきた。白いカーディガンの肩が、僕の上腕に触れる。体温が布越しに滲んでくるのに、指先だけは氷のように冷えて感覚を失くしていく。動画はさらに先へ進んでいた。

「岸川さん、そこ、舐めても、いいですか」

画面の中の妻が言った。男の身体を仰向けにさせ、彼の太腿の間に顔を埋めている。だが、彼女の唇が近づいたのは、男根ではなかった。岸川の尻だった。白い指で二つの肉塊を押し広げ、舌先を差し込んでいく。淫らな水音が部屋に響いた。ちゅ、ちゅぷ、ぬるる。妻が、他人の男の肛門を舐めている。僕の前で、その画面を、今、現実の妻と見ている。

僕の脇腹に、刃をゆっくりと押し込まれるような痛みが走る。舐められている岸川の肛門も、舐めている礼奈の舌も、どちらも見たことがない。見たことがない場所と器官を使った、彼女の快楽の形が、そこにはあった。唾液が男の窄まりを濡らし、妻の顎を伝って零れていく。彼女は夢中だった。まるで与えられる恥辱こそが悦びだと、そう体に刻み込まれた者の顔をしていた。

「うますぎるよ、奥さん。そんなにされたら、俺、止まんなくなるぜ」

画面の外で、岸川の獣じみた低い声が笑っている。

「もっと、してください。私、あなたに全部、教えてほしいの」

その声は、あの深夜に僕の腰の上で「あなた」と呼び、精を搾り取った声と限りなく同じ響きを持っていた。奥歯が軋む。いいや、これは嫉妬だ。自分でも分かる。この男の手で開発された女の体も、この男にだけ見せる従順な瞳も、全部、僕の手から滑り落ちた果実だ。妻の中に入っていく異物を、こんなにも生々しく突きつけられて、それでもなお、映像から目を離せない自分がどこかにいる。

場面が切り替わった。妻は四つん這いになっていた。尻を高く突き出し、濡れた性器を晒しながら、ソファの座面に頬を擦りつけている。岸川の体が後ろから覆いかぶさるようにして、彼の硬い腰が妻の尻に押し当てられた。彼の先端が、まず膣口を割り開く。ぬぷぷ、と呑み込まれていく音。礼奈がひゃふ、と咽喉を鳴らす。深く、深く、彼女の奥までが串刺しにされた。

「き、岸川さん、すごい、お腹の奥まで、熱が……んぅッ」

「ああ、今日は全部使うぞ。お前はいい女だ。ここも仕舞いには、俺の形になるんだからな」

腰を打ちつけながら、岸川の指が、妻の浅く窄まった場所に伸びていく。尻の割れ目の奥、誰も触れたはずのない窄まり。僕も、触れたことがない。そこを、男の親指が回しながら、唾液と溢れた愛液を塗り込めていた。

「ここ、まだ旦那にも使われてねえんだろ」

画面の外からの問いに、妻は顔を真っ赤にして首を振った。振り乱れる黒髪。汗で肌に張りついた前髪の下で、とろりと溶ける瞳が、男を振り返っている。彼女の窄まった小さな蕾が、岸川の親指を浅く咥え込み、収縮した。

「言わなくても分かってるよ。ここを俺に、先に渡すって、奥さんの体がもう返事してるぜ」

「や……そこは、初めてで……お願い、ゆっくり……」

「分かってる。力抜いてろ。もっと奥、解してやる」

ぬちゅ、という音が何度も続いた。岸川は結合したまま、妻の後孔に指を沈め入れ、中で曲げて、肉の壁を解している。妻の背中がのけぞり、爪先がソファを掻いた。四つん這いの腰が、がくがくと揺れる。肛門が、男の節くれだった指をくわえ込んで、浅ましく拡がっていく様が、画面の奥でくっきりと灼きついている。

「ああッ、あ、あ、あ、あ、う、指、指……なか、動いてる……っ」

「いい子だ。もう入るよ。最初は声、出してもいいから。全部、旦那に送ってやる映像だ」

岸川の腰が一旦引かれ、ぬめる陰茎が膣から抜け出る。彼の先端が、唾液と愛液で光る妻の後孔にあてがわれた。白い肌の谷間に、男の劫火が押し当てられる。礼奈の肛門は逃げるように窄まり、また強く男の亀頭を食い締めようとした。

「あ、あ、や……そこ、裂け……あああっ!」

銜え込んだ。僕は、目を塞げなかった。妻の菊座が、ゆっくりと盛り上がり、拡がって、岸川の巨根を呑み込んでいく。肉が食い破られまいと善戦しながら、しかし一つずつ襞を押し広げられ、赤く充血した粘膜が外気に触れていく。声にならない声。礼奈の爪がシーツを裂きそうに握りしめる。肛門から呑み込まれた男根の輪郭が、白い尻の内側に浮かび上がっている。浅ましく、凄惨に、しかし何よりも官能的に。彼女の最も隠された場所で、男が疼いている。

「ひ、あ、あ、あ、だめええ……変になる……おかしくなるぅ……」

「まだ半分だ。焦るな。奥さんの中、とろとろで、すげえ締まる。ほら、自分で腰、動かしてみ」

言われた通りに、妻が腰を引いた。肛門を掘り開く陰茎の傘に、腸の襞が縋りすがる。押し戻すように、また尻の中へと深く呑み込む。ぬぷッぬちゃッ、と下品な水音が、映像の外から、現実のリビングへと溢れた。画面の中と外、二つの空間が、この音だけを境目にして融け合っていく。

「あ゛あ゛ッ、なか……岸川さんの、形、ついていく……ひゃあッ……」

「お前のここは、もう俺専用だ。誰よりも先に、俺が貰った。二度と、他の男になんか渡せねえようにしてやるからな」

泣き声にも似た絶叫が、スマートフォンの小さな筐体を震わせた。ソファが軋み、肌と肌の打ち合う音、尻肉の波立つ音、肛門の締めつけにねじ込まれる潤滑液の泡立ち。妻は何度もイき、涎を垂らし、それでも男の腰を止められなかった。画面がぶれ、白い裸体が幾重にも重なって、最後に岸川の低い雄叫びが響く。彼が尻の奥に射精する瞬間が、はっきりと映っていた。抜き去った後の窄まりが、ふやけたように開いたまま、白濁をとろとろと逆流させている。そこは、僕の知らない場所だった。

映像が終わった。

リビングに、テレビの笑い声だけが空虚に満ちていた。隣の妻は、どれだけのあいだ泣いていたのか、両頬を雫で光らせている。彼女はスマートフォンをローテーブルに置き、両手を膝の上で硬く組んだ。うつむいた額から、黒髪が数筋こぼれて、白いカーディガンの上に淡い影を作る。

「アナル、岸川さんに最初に捧げてしまって。あなたには言えなくて」

声がぶつ切れに震え、鼻の奥が詰まったようにくぐもる。

「本当は、あなたと一緒に見るつもりじゃなかったの。私、あなたの知らないやり方を、岸川さんに褒めてもらうのが嬉しくて、それで……」

彼女は一度ため息のように呼吸をして、続けた。

「ごめんなさい、でも気持ちよかったの」

その言葉は、泣き濡れた唇から零れたわりに、微かな春のぬるみを帯びて、消え入りそうなほど真っ直ぐだった。彼女は謝っている。心から詫びている。だが、取り返しがつかないほど、あの場所で悦んでいた。肛門を巨根で抉られ、腸の襞まで男に蹂躙され、声を上げてイかされていた。あれは、演技でも強要でもない。あの体は、幸福だった。

「……だって」

ぽつりと彼女が続ける。

「あそこ、快感がずっと続いてて、泣いちゃうくらい深いんです。あなたが入ってきてくれた前とは、ぜんぜん違うの。体の芯から、全部別のものになっていくみたいで、私、止めてもらいたくて、それでも……」

礼奈の白い指が、カーディガンの袖口をきゅっと握りしめる。爪の先まで緊張していた。視線が、泣き腫らした目の端から僕の指を見ている。僕の指は、ローテーブルに置いたスマートフォンの画面を、まだ消せずに握っていた。あの楔のように突き立てられた映像の熱が、手のひらにべったりと残っていた。

「今も、思い出すだけで、ここ、熱くなるの。あなたに見られたのに、こんな、私……」

彼女はスカートの上から下腹を抑える。ショーツの奥、濡れそぼった場所を、布の上から何度もさすった。その仕草が、画面の彼女と完全に重なる。恥じらいを脱ぎ捨て、目の前の男に媚びを晒す牝。僕の隣で、妻は同じ体を燃え上がらせている。

「見せてくれ」

自分でも思いがけない声が出た。礼奈が顔を上げる。涙に濡れた黒目が、揺れている。

「僕の前で、どうやって悦ぶのか」

抵抗の言葉を探して、しかし彼女の口は、一度開いて、閉じた。唇がふるふると震え、桜色の舌先が覗く。やがて、は、と熱い息が零れた。

「あなた、私のこと、軽蔑してもいいんです」

それだけ言い残して、彼女は立ち上がった。白いカーディガンを脱ぎ捨て、下の薄手のワンピースを肩から滑らせる。日曜の午後、薄曇りのリビングに、真珠色の肌が浮き上がった。白いレースの下着が、熟れた肢体を包んでいる。彼女は僕の前に立ち、ためらいながら、レースのショーツに手をかけた。中心部はすでに、ぐっしょりと濡れて、肌にくっついている。下着を下ろすと、透明な糸が二筋、内腿に引いた。

「……あなたの見てる前で、私、どうなっちゃうんだろう」

泣き笑いのように笑って、彼女はソファに深く沈み込み、脚を大きく開いた。潤む割れ目が、午後の光に曝される。光を受けて、濡れた襞が真珠色に瞬いていた。吐き出した息が、白く部屋の空気を震わせる。

匂いがした。情欲の海に、微かに残る煙草と酒と、男の獣じみた汗の残り香。僕は画面の中の彼女と、今目の前で脚を開く彼女の、どちらが本物なのか分からなくなっていた。彼女は自らの指で花弁を開き、芯の立った陰核を、僕に見せつけるようにゆっくりと擦りはじめる。ぐちゅぐちゅと零れる蜜の音が、空虚な部屋を満たしていく。嫉妬と背徳感が、ない交ぜになって腹の奥で泡立つ。僕の指先は、いつの間にか十月のあの夜と同じ、氷のように冷たくなっていた。それでも、僕の身体の芯は、焼けるように熱を持ち始めていた。

第5章 秘密の継続と、消えない残り香

第5章のシーン

第5章: 秘密の継続と、消えない残り香

三月下旬の夜は、まだ冬の芯を抱えていた。窓ガラスの向こうで、冷えきった都会の風が薄い悲鳴のように鳴いている。リビングの照明もテレビも落としたまま、僕はソファに腰を下ろしていた。胸の上に置いたスマートフォンの重さだけが、やけに生々しく指先へ食い込む。画面は真っ黒なまま、あの二月の日曜日に見た映像の残熱を、筐体の奥に閉じ込めているようだった。

あれから一ヶ月半が過ぎていた。礼奈は毎週、岸川に会って帰ってくる。そのたびに肌の匂いが違っていた。シャワーを浴びて、髪を洗って、服を着替えてから帰るのに、首筋のうぶ毛の一本一本にまで男の気配がこびりついている。煙草と酒と、安物の石鹸では消せない牡の脂の匂い。僕はその匂いを「岸川の残り香」と呼ぶことにしていた。名前をつければ、正体の分からない熱も、少しは飼いならせるような気がしたのだ。

眠れない夜が続いている。布団に入っても、二時間ごとに目が覚める。浅い眠りの底で、妻が他の男に開かれていく夢を幾度も見た。目を覚ますたび、隣で眠る黒髪が、白いシーツの上に散らばる角度が違っていた。あれほど冷たかった肌が、今は眠っていても汗ばんで、かすかな情欲の熱を放っている。僕は何日も、礼奈を失う恐怖と、この関係を終わらせてはならない欲望の間で、ちぎれそうな心を抱えて夜をやり過ごしてきた。

「あなた、お茶を淹れましょうか」

寝室の入り口から声がして、僕は顔を上げた。礼奈が薄いガウンの前を合わせるようにして立っている。黒髪は片方の肩へ流れ、寝起きの白い頬に淡い朱が差していた。部屋の暗がりが、彼女の輪郭を瑠璃色に縁取る。

「いや、いい。こっちへ来ないか」

声が掠れた。礼奈は少し迷うように俯き、それから素足のままで近づいてきた。ガウンの裾が、歩くたびに細いふくらはぎを覗かせる。隣に腰を下ろしたとき、むっとするほど甘い、熟れた女の匂いがふわりと立ち昇った。汗と、柔軟剤の花の香りと、その下から這い出してくる何か。嗅ぐたびに、腹の奥の熱が浅ましく頭をもたげる。

「今日も、行ってきたんだな」

僕は前を向いたまま、静かな声を作って言った。礼奈の指が、ガウンの膝のあたりで小さく跳ねる。白い手が、きゅ、と布を握る音がした。

「はい。夕方まで。岸川さんのお部屋で、その、たくさん、抱いてもらいました」

彼女の返事は、あの二月の日曜日に「続けたいの」と言った声より、ずっと自然になっていた。恥じらいはある。なのに、隠そうという力はどこにもない。報告することそのものが、礼奈にとっての儀式に変わりはじめている。

「どんなことをされた」

「今日は、後ろからばかりでした。四つん這いにされて、お尻を高くさせられて、ずっと」

「ずっと、何だ」

「奥を、使われてました。先週よりも時間をかけて解されて、岸川さんの、全部、入るまで」

礼奈が言い終えると、リビングの沈黙が一段と濃くなった。ソファの向こう、カーテンの裾から差し込む街灯の白い筋が、床の上でかすかに震えている。僕は妻の言葉を頭の中で繰り返し、自分の知らない肉の感触を想像した。彼女の窄まりが男の形に広がり、腸の熱に灼かれながら、何度も達したのだろう。悔しさと、それを上回る薄暗い欲情が、胸の下でどろどろと煮えていた。

「辛くはないのか」

「辛い、時もあります。でも、帰りの電車に乗っている間も、体が覚えてしまって、脚を閉じるたびに、岸川さんの熱がまだ中にいるみたいで」

彼女はそこで言葉を切り、うっとりと荒い息を吐いた。ガウンの合わせ目が、胸元でわずかに開き、青白い谷間が闇に浮かぶ。僕は天井を仰いだ。社会的な安全という言葉が、ぐるぐると頭の内側を回る。会社での信用、実家への顔、平凡な夫婦の形。それらを守るなら、この関係は今夜、終わらせるべきだ。分かっている。分かっているのに、口が動かなかった。動くのは、ただ、、指の乾いた皮膚が震えるだけだった。

「岸川との続きを望むのか。今なら、まだ取り消せるぞ」

試すように言った。卑怯だ。答えなど、匂いで分かっているくせに。

「私は、続けたいです。あなたの許しがもらえるなら、岸川さんに会うのも、体を重ねるのも、全部、私の日常にしたい」

声に迷いはなかった。彼女は足元を見たまま、けれど一語一語を確かめるように言った。黒い瞳が、濡れて光っている。不安と期待が混じった目を、僕に向けられないまま、白い喉が、こくり、と鳴った。

「お前は、それで幸せか」

「幸せです。だから、苦しいんです。ごめんなさい」

彼女はようやく顔を上げた。その表情に、もう昔の礼奈はいなかった。慎み深く俯いてばかりいた妻は、性の悦びを知り、夫に隠れて悦ぶことへの罪悪感すら、快楽の隠し味に変えてしまった。この女を手放せば、僕の夜は再び冷たい肌と背中だけの世界に戻る。それはもう、耐えられない。戻りたくない。守りたかったのは、冷たい肌の妻か、熱を孕んだ妻か。考えれば考えるほど、答えは最初から一つだけだった。

「分かった。続けることを、認める。条件は同じだ。必ず帰ってくることと、全部を報告することだ」

僕の声は、驚くほど平坦に落ちた。腹の底では、悪魔が小さく手を叩いている。妻を失う恐怖と、妻の淫らな熱を独占したい欲望が、この瞬間から同じ船に乗った。礼奈がソファを軋ませて、僕の体にすがりついてくる。首に回された腕の熱。頬に押しあてられた唇の柔らかさ。

「ありがとう、あなた」

涙に弾んだ声が耳のすぐ下で溶け、何度も頬へキスが降ってくる。ちゅ、ちゅ、と濡れた唇の音。礼奈は僕の頬骨を舌先でなぞり、耳朶を甘く噛み、首筋へ吸いついてきた。彼女の指が、僕の膝の上で迷い子のように震え、それからスラックスの前へ伸びて、ベルトの金具を外しはじめる。

「今夜、私、あなたに全部捧げたいの。岸川さんにしてもらったことを、一からあなたで確かめてほしくて」

獄に繋がれたような熱い吐息だった。ガウンがするりと肩から落ち、色白の肩が暗闇に浮く。彼女はブラジャーのホックに手を回し、前屈みになって外すと、小ぶりな乳房を僕の目の前に晒した。先端はすでに硬く色づいていて、冬の冷たい空気に細かく震えている。甘く酸っぱい、沸き立つような女のにおいが濃く漂った。

「見事なもんだな。岸川は、お前のここまで躾けたのか」

言いながら、白い乳房を下から掬い上げる。手のひらに乗る重さ。つんと尖った乳首を親指で転がすと、妻の腰がびくりと跳ねて、ガウンの裾から太腿の内側が露になった。しっとり汗ばんだ肌が、廊下からの薄明かりを受けて白く光る。彼女は脱いだ下着の跡さえ、うっすら赤く浮かせて、そこに男の指の痕が混ざっていることを喜ぶようにもじる。

「ん……あなたの手、冷たくて、きもちいい」

「冷たいか?」

聞き返しながら、僕の指先は十月の夜、背を向けて眠る妻の肩に触れたときの冷たさを、まざまざと思い出していた。あの頃は、触れても応えない氷の肌だった。今、同じ指先が、他人の男の熱を孕んだ女の乳房をこねている。指の腹で乳輪を圧すたび、妻の口から鼻に抜ける甘い吐息が漏れた。すっかり、快楽に躾けられた体だ。そう思う胸が、それでも浅ましく高鳴ってしまう。

「横になるか」

「うん。でも、最初は私が上でします。あの夜みたいに、あなたの中で確かめたいの」

彼女は僕の手を引いて、寝室へと歩いた。月の入らない部屋は、薄い藍色の闇が満ちている。二人分の足音が、やけに大きく脳に響いた。ベッドへ上がると、礼奈が僕を仰向けに押し、するりと腰を跨いてくる。汗ばんだ太腿が、僕の腰骨を挟んで熱を伝えた。結合を望むように、淫らな蜜を溢れさせている。生暖かな雫が、直接、腹の上にしたたり落ちた。

「礼奈、お前の中はもう、あの男の形に馴染んでしまっているのか」

「ん、知りたいの?」

いたずらに笑う気配がして、彼女は自分の指を口に含み、唾液をねっとり絡めてから、秘裂から溢れ出た蜜と混ぜ合わせて、僕の陰茎を下から包みこんだ。ぬるぬると滑る掌。亀頭の括れを二本の指で挟み、裏筋を、とろりとなぞられて、思わず背中が浮く。

「あなたを呑み込んだら、全部、正直に話す。ねえ、挿れてもいい?」

その声は、夫を誘うというより、夫の前で自分の淫らさを披露することを悦ぶ、女のそれだった。僕が頷くより先に、妻は腰を沈めてくる。ひくつく入口が亀頭を捉え、ぬぷ、と低い音を立てた。熱い。内側の襞が、うねりながら僕を招き入れる。

「あっ、あなたのが、奥へ、あたってる……」

ゆっくり、深く、根元まで。結合した箇所から、愛液が泡のように溢れてくる。彼女は両手を僕の胸に置き、丸い腰をゆらゆらと前後に泳がせた。ぐちゅ、ちゅぷ、と粘膜が混ざる音が、静かな寝室に粘り気をもって満ちていく。彼女の黒髪が、汗ばんだ背中に張りつき、白い肌を幾筋もの黒蛇が伝うように乱れた。僕はその腰に手を添え、下から突き上げたい衝動を、唇の裏で何とか飲みこむ。

「ああッ、あ、あ、あ、この、深いの、駄目、声、出ちゃ……」

「出せ。どうせ、お前の外で鳴く雌の声など、隣には誰もいない」

意地の悪い言葉を囁くと、妻の膣がきゅうと締まった。あえぎの合間に、腰の動きがだんだん大胆になる。ただ上下するのではない。男の先端を咥えこんで、奥の一点を擦り上げる動き。時折、前後にぐっと押しつけて、敏感な肉芽を僕の恥骨へ擦りつける。彼女は完全に、この交合の主導者だった。

「んは、あなた、すき、きもちいい、奥のほう、岸川さんが届くところとおんなじ……」

汗の匂いがむっと昇る。彼女が身を乗り出すたび、垂れた乳房が揺れ、乳首が僕の胸を掠めて、くすぐったいより先に快感が背筋を這った。妻の腰で燻る肉の粘液が、二人の下生えをぐしょぐしょに濡らして、ぐちゅぐちゅと、あるいは、ぬちぬちと、それこそ獣じみた水音を響かせる。僕は彼女の鼠蹊部に指を這わせ、濡れそぼつ肉唇を摘むようにして、立ち上がった女の芽へ唾液をすり込んだ。

「ひゃうッ! あ、それ、自分でも、いつも、して……、く、んぅッ!」

「いつも、誰に教わった」

「や、それは、あなたの、知らないほうがいいこと」

ぐらりと腰が揺れて、内側から食いちぎられるような締めつけがくる。彼女はのけぞり、天井を見上げて、閉じた瞼の裏の快楽に没頭した。白い喉を反らせたまま、唇だけが薄く開いて、息を吐くたび、あ、ん、と赤ん坊のような声が落ちる。奥へ押しこまれた肉の先端がコツコツと、臓器の入り口を押す。女の器は、たった数ヶ月の間に、こんなにも熟れ果てていた。

「礼奈」

呼ぶと、妻が泣きそうな顔で僕を見おろした。髪の毛の一房が、汗に濡れて額へ貼りついている。涙の気配の混じった瞳が、しかし強い欲を湛えて、もっと、もっと、と腰を回す。

「あなた、私が岸川さんと寝ても、しあわせ?」

「黙れ」

「黙らない。知りたいの。あなたに嫌われるか、それとも、もっともっと私で遊んでもらえるか」

彼女は僕の胸の上で、狂おしいほど妖しく腰をくねらせた。淫らな水音が、部屋の暗がりを割く。男の残り香が、彼女の汗で溶け、結合部から立ち昇る淫臭と混ざって、鼻の奥をくらくらと灼く。妻の肌から漂うのは、確かに岸川のそれだ。煙草の脂と、焼酎の甘い匂いと、若い雄の汗腺からにじむ浅黒い芳香。なのに今、それが僕の快楽の導火線になっている。

「お前の匂いが、する」

「え、なに?」

「あの男の匂いだ。いつも、お前の首と、腋の下と、太腿のつけねから香ってる。帰ってくるたび、もっと強くなる」

礼奈は一瞬息を呑み、それから恥ずかしそうに笑った。艶のある、けれどどこか哀れな笑みだった。彼女は自分の左の腋に顔を寄せ、匂いを嗅ぐようにして、ゆっくりとまばたきする。

「……あなたが、そうして嗅いであげるから、帰りにシャワーを止めてるの。私の体、あなたに知ってほしくて」

なんという女になったのか。彼女は岸川に抱かれるたび、男の残り香を、こうして夫に見せつけるために持ち帰っている。最低で、最高だった。僕の胸を占めるのは、もう社会的な体面ではない。この匂いが消えない限り、妻は僕のものではない。それなのに、妻の体が僕を締めつけるたび、手放せないと思ってしまう。

「なら、もっと染み込ませてこい。僕の知らない男の匂いを、お前の肌にいっぱい染み込ませて、帰ってくるんだ」

言葉にすると、隠していた自分が音を立てて崩れた。礼奈の瞳がとろりと溶け、引き金を引かれたように、彼女は絶頂へ向けて腰を叩きつけてくる。ぱん、ぱん、ぱちゅっ、と尻肉の波打つ音。結合部のぬめった肉が、白く泡立ち、彼女の内ももを何度も滴った蜜が伝う。僕は妻の腰を下から突き上げ、胎の奥のひだを亀頭でかき渡した。喉の奥で獣が唸る。

「くる、くる、だめ、あなた、あなたで、イっちゃう、う゚、あ、イく、イくよぉッ!!」

大きく仰け反って、妻の体が、絹を裂くような悲鳴を放つ。熱い。あまりに熱くて、蕩けた胎内が、びくん、びくん、と収縮しながら僕をしゃぶり尽くす。息も絶え絶えの女が泣き、よだれを零し、それでもなお腰を止められない。これが、今の礼奈だ。岸川が仕立て上げた、僕だけが知る優等生の下半身。この淫穴は、誰の所有物でもなく、夜の闇だけが本当の主だ。

僕は上体を起こし、彼女の汗ばんだ胸に舌を這わせた。乳首を吸い、噛み、乳輪を舐める。塩辛い汗と、男の匂いが舌に乗る。腋の下から胸の谷間にかけて、煙草の匂いがとりわけ濃い。犯したときの岸川が、ここに抱きついて、汗を何度もこすりつけたのだろう。怒りが熱になり、熱が快楽に替わって、僕は妻の体を骨ごと食らい尽くすような勢いで抱き返した。

「あっ、あ、はげし……、あなた、すごい、あ、そこ、ずるい、だめ、こわい、こわいのに、いい!」

礼奈が背中をビクビクと波打たせる。僕の陰茎は、熟れた女性器の襞に縋られながら、射精という名の返済を、この淫らな夜へ差し出そうとしている。彼女の内ももに手をやって開かせ、尻の窄まりにも指を触れた。男に使われ、まだ柔らかく解けた後孔が、指先をちゅう、と吸ってくる。岸川の精液が、まだ奥に残っているのか、ぬるぬると温い粘膜が、無言のまま指を絡めた。ああ、ここだ。僕の知らない、妻の最深部。こうして触れているのに、触れたことのない禁断の洞穴。

「あ、そこも、や……おねがい、そこだけは」

「なぜだ」

「だって、あなたに初めてをあげられなかった、おしりだから……」

泣き声の告白。心が千切れるほど悔しいのに、性器は歓喜で泡吹いた。僕は妻の窄まりに指の腹を押しあてたまま、彼女を突き上げ、その耳元で言った。

「かまわない。僕の知らない場所ごと、全部、抱いていると思え。それでも、僕が最後に、お前をこうして抱く男でいる限りは」

妻が声にならない叫びを上げた。女体の奥から、熱い迸りが込み上げて、僕の陰茎を締めつける。ぐち、ぬぷ、ぷしゃ、と結合部から蜜が吹き出し、シーツを汚した。腰の奥から、どろどろに熔かされた快楽が、一息にせり上がってくる。射精した。果てる、と思う間もなく、妻の中へ白濁を吐き出し、その暴発を、彼女の子宮が、旨そうに啜る。

「んは、あつ……ああ、あなたの、奥で、どくどくしてる……」

精を放ち終えた後も、妻は僕を離さず、へたりと胸に倒れかかってきた。互いの呼吸が乱れ、汗と精液の匂いが、部屋の空気をねばつかせている。指先がしびれている。あの男の形に広げられた場所から、僕はまだ指を抜けない。抜いてしまえば、すべてが幻になってしまうような、遣る瀬無い予感が、腹の底に澱んでいた。

数分後、礼奈は僕の隣で、しどけなく脚を投げ出していた。胸をゆっくり上下させながら、満ち足りた目で天井を見ている。汗ばんだ肌が、街灯の漏れる光を浴びて、白桃のように鈍く光る。彼女はふと体を預け、僕の肩へ頬を寄せた。

「あなた、本当に、後悔してない?」

掠れた声だ。確かめるように、爪の先だけで胸の辺りを掻いた。

「してない、と言えば嘘になる。だが、終わらせる方が、もっと嘘くさい」

「私、もう、あなたのいない夜は考えられない。あなたと、それから岸川さんの匂いがする私を、今夜みたいに確かめてもらえないと、息がつまるの」

彼女はされるがままだった。妻が夫に甘えているのか、娼婦が客に縋っているのか、境目の見えない声だった。僕は何も言わず、薄い掛け布を引き上げ、汗ばんだ彼女の肩を抱いた。右手が彼女の黒髪を、濡れ縄のように一房だけ持ち上げる。月のない部屋で、それは艶やかな夜の川のようだった。僕は指先に、妻の冷たい肌の記憶を探す。あの十月の夜、背を向けて横たわっていた女の、ひやりと冷えた肩。今、この腕の中の女は、まったく違う温度で、他人の男の残り香をまとって、とろけるように眠りへ落ちていく。

「ありがとう、あなた」

もう一度、そう囁いて、礼奈は深い眠りに入っていった。静かな吐息が、僕の鎖骨をくすぐる。僕は枕元のスマートフォンを引き寄せた。画面をつける。動画フォルダには、岸川から届いた幾つもの記録が、無機質な光を保って並んでいる。一番新しい日付のものをタップした。再び、あの暗い部屋。あのソファ。四つん這いの妻。背後から猛る岸川。肛門を暴かれ、声を高く上げる彼女。音を消した映像の中で、妻の表情だけが、快楽へ向かう雌の様を語っている。

この映像を、僕は、この先も何度も再生するのだろう。秘密が続く限り。この夜が続く限り。

礼奈の黒髪に顔を埋めると、煙草の残り香が、まだわずかに匂った。息を吸い込む。深く、深く。満たされない夜は終わった。だが、幸福の底には、ぽかりと開いた冷たい空洞が、これからもずっと横たわっている。秘密の継続。それは、妻を愛するためではなく、妻の淫らを愛するあまり、夫であることを夜ごと砂に沈めていく選択だった。

目を閉じる。瞼の裏には、動画の中の妻と、今夜、僕の上で腰を振った妻が、ゆっくりと重なっていた。

第6章 (番外編)本当の妻

第6章のシーン

第6章: (番外編)本当の妻

瞼を開けると、天井の白い斑がゆっくりと輪郭を取り戻していく。眠っていたのか、それとも目を閉じたまま夜の底を漂っていただけなのか、自分でも定かではなかった。腕の中の熱が、微かに身じろぎをする。礼奈の背中が、薄いガウンの下で浅い呼吸に合わせて上下していた。腰のあたりに感じる女の曲線。三月の冷えきった空気の中で、その部分だけが、火照った湯たんぽのように熱を帯びている。

指先が動いた。妻の汗ばんだ首筋から、細い髪の毛を一本ずつ拾い上げるように、ゆっくりと撫でさすっていく。黒髪はしっとりと夜露を吸ったように重く、指の間をすり抜けるたび、煙草の匂いがふっと濃くなる。僕は無意識のうちに、その匂いの層を剥がすように、鼻先を妻の髪の根元へ埋めていた。

「……寝てないの」

礼奈の声が、胸のあたりからくぐもって響いた。半分眠ったままの、舌足らずな声。僕は返事の代わりに、彼女の頭を抱き寄せる。白い額が、僕の鎖骨の窪みにぴたりと収まった。桜の花びらを煮出したような、微かな女の熟れた香りが立ち昇る。その下に、酸いアルコールの残滓。僕はこの匂いの組成を知っていた。妻が岸川の部屋で汗をかき、男の体液と唾液と精液を浴び、シャワーも浴びずに電車に揺られ、帰宅してから僕に抱かれる。いつもの順序だ。今夜もそうだった。

「眠れないなら、私、おしゃべりしましょうか」

「まだ寝てろ。朝まで時間がある」

「あなたの声が聞きたくなったの、私」

礼奈は僕の胸の上で顔を起こそうとした。手のひらが、僕の肋を探るように這い、腹のくびれを確かめる。細い指が、臍の下のうぶ毛をゆっくりと撫で上げる。その動きは、もう完全に男を知った女のそれだった。加減を知っていて、獣の反応を待って、息を詰める。僕の身体は正直に反応して、布団の中で陰茎が痛みを伴って起き上がる。

「なあ、礼奈」

声が掠れた。喉の奥に、昼間の悔しさが錆のように張りついている。今夜の選択が正しかったのか、答えはもう出ているのに、言葉にするたび、口の中が苦くなる。

「お前、岸川に会う前と、何が変わったと思う」

礼奈はゆっくりと瞬きをした。長い睫毛が、街灯の漏れる薄明の中で影を落とす。彼女はしばらく黙って、僕の胸の上に頬を置いた。心臓の音が、耳のすぐ下で聞こえていたはずだ。彼女の唇が、少しだけ笑った。

「全部です。髪の先から、足の指の先まで」

彼女は言い切って、少しだけ身を引いた。ガウンの襟元が割れて、左の肩が滑り出る。汗で冷えた肌が、暗がりでも分かるほど白く光った。彼女は視線を落とし、自分の右の乳房を下から掬い上げるようにして、先端を僕の唇の近くへ寄せる。

「ここも、前はあなたに触られても、ただ痛いだけでした。いやらしいことをされてる、って、体が縮こまってたの」

「今は違うのか」

「触ってほしくて、熱くなります。あなたの目が、私の体を見てるってだけで」

彼女はそう囁くと、僕の右手を握り、胸の上へ導いた。掌に吸いつくような肉の柔らかさ。汗ばんだ肌には、うっすらと塩が浮いていて、手のひらがぺたぺたと張りつく。彼女の乳首は乾いた珊瑚のように堅く、手のひらの真ん中で脈打っていた。親指と人差し指で挟んで転がすと、礼奈は短く息を飲み、布団を蹴って足の指を丸める。

「ん……それ、好き。岸川さんより優しいから、逆に、ゾクゾクするの」

「比べるな。僕の中で岸川の話をしながら、感じるのか」

「あなたが話を聞きたがるから」

彼女は拗ねたように言って、細い脚を絡めてきた。太腿の内側が、僕の腿に粘りつく。彼女の秘部はまだ、二時間前の情事の残り汁で、しっとりと湿っている。ぬめる花弁が、僕の腿の上に温度の低い貝の身を貼りつけるようにこすれた。

「あの人の匂い、残ってるでしょう。首とか、耳の後ろとか」

彼女は囁きながら、自分の左耳を僕の鼻先へこすりつけた。黒髪の生え際の、耳の後ろのくぼみ。汗と、皮脂と、煙草の脂が混ざった、ねっとりした匂いが鼻の粘膜を刺す。岸川の腕が巻きついた場所だ。男が、妻の髪を掴んで後ろから突きながら、顔をここへ埋めて臭いを擦りつけた。そんな映像が、勝手に頭の裏で展開する。愚かな妄想だ。なのに、陰茎は痛いくらいに膨れて、先端から先走りが滲んだ。

「匂い、変わったな。前は、石鹸の香りしかしなかった」

「ごめんね。もう、何を使っても、この匂い、取れないの。体の中から滲んでるみたい」

「だからいいと言ったんだ」

僕は彼女の下腹に手のひらを滑らせた。臍の下の、男を誘う位置にある、産毛の生えた窪み。その下で、妻の陰核がうずいている。指を立てず、手のひら全体でゆっくりと圧す。礼奈が喉をのけぞらせて、犬みたいな短い息を吐く。

「あっ……それ、いい……内側まで、じんってする……」

「岸川は、ここをどうする」

「や……あなたの、知らないほうが……」

彼女は腰を揺らして逃げようとした。が、逃さない。薬指と中指を、濡れた茂みの中へ滑り込ませる。秘裂は思ったよりずっと腫れていて、肉の入口はふやけて、男の精を薄めた白い蜜をとろとろ溢れさせていた。指を第二関節まで差し入れると、妻の中はまだ、誰かの剛直を覚えているかのように、うねうねと入口の襞を蠢かせる。ぐちゅ、と小さな音。夜の静けさには、大きすぎる粘液の音。

「あぁ……っ、指、太い……あなたの指、中で曲げないでぇ……」

「岸川は? ここを、どうするか聞いてるんだ」

意地の悪さが、声に滲んだ。彼女の耳たぶへ舌を這わせながら、中指を腹側に直角に曲げる。ざらりとした襞の天井を、爪を立てないようになぞっていく。礼奈の膣が、恐怖と期待でぎゅうと締まり、僕の指を産み落とすまいと根元まで啜った。熱い。腸まで指が届きそうなほど、深く、濡れている。

「……んぅっ、あ、岸川さんは、もっと、乱暴です」

彼女が泣いた。声を殺しながら、けれど真実を口にする。僕は指を動かし続けながら、彼女の目を覗き込んだ。涙の膜が張った黒目が、天井の薄光を乱反射させて、獣のようで、少女のようだった。

「どんなふうに」

「いきなり、いちばん硬くして……わたしの、いちばん、恥ずかしいとこ、舐めて、吸って……奥まで舌を入れて、かき回すんです。私が泣いても、やめてくれない。『俺の味が染みるまで、お前の口で洗うぞ』って……」

彼女の声は細かったが、その口元はうっとりと弛んでいた。丈夫なオスの蒟蒻みたいに、蓴羹の匂いがする自分が、彼女の中に住み始めている。僕の指は、彼女の膣の中で、妻自身の告白に応えて、ますます深く、柔く動いた。少しでも強く撫でれば、妻の肉は嬉しそうに震えて、指に熱い腸液を絡めてくる。

「お前の口で、岸川の指を咥えたのか」

「うん……一本ずつ、丁寧に、誰の味がするか覚えさせられたの……」

礼奈は頬を染めながら、自分の右手の中指を、そうっと口元へ持っていった。薄く開いた唇の間に、細い指が消えていく。舌が絡む音が、ぬちゃ、とわずかに立つ。白い喉が上下して、唾液を嚥下する。彼女は目を閉じて、何かの味を思い出しているらしかった。卑猥で、甘ったるい、それでいて、ひどく哀れな妻の横顔。

「今夜、岸川さんは、私のここを、ずっと締めつけたまま、眠るって、言ってました」

「ここ?」

僕は彼女の尻に手を回し、窄まりの上へ中指を這わした。まだ解れた跡が残っている。岸川の巨根を受け入れた穴は、閉じきらずに、くぱくぱと誘うように脈打っている。その穴に触れる、というだけで、妻の肛門が、指先にすがりつくように収縮した。

「……私の、お尻の穴で、岸川さんの陰茎を、一晩中、咥えたままにされるところでした」

「させなかったのか」

「させません。だって、帰って、あなたに会いたかったから」

礼奈が、僕の首に腕を回した。しがみつく子供のように、胸の上へ体重をかけて、脚を大きく開く。ぬかるんだ秘部が、僕の腹筋の上にのめり、割れ目をいやらしく押し広げた。

「でも、あなたに会ったら、あの人にされたこと、また思い出して、濡れてる。私、どうしようもなく、いやらしくなりました」

彼女が腰を前後に擦りつけてきた。陰核が、僕の腹の上ですり潰される角度。ぐりぐりと、獣の発情した仕草で、白い太腿の内側を蠱惑的に輝かせながら、妻は夫の腹に牝の汁を塗り広げる。寝室の空気は、二人の汗と、妻の愛液と、岸川の残り香で、まとわりつくように濃密になった。

「乗りたいです。あなたの上に」

声が熱く弾んだ。礼奈は上半身を起こし、僕の腰を跨ぐ。手を後ろへ伸ばして、硬く反り返った僕の陰茎を、ぐちゅぐちゅに濡れた自分の入口へ当てがった。彼女の指が、先端の縁を二本で挟み、準備に数度こすりつけてから、一息に飲み始める。あの肉筒が、ぬめりを伴って、僕を呑み込んでいく。

「んんっ……ぁ、あなたので、いっぱいになる……あつくて、硬くて、お腹の、おく……」

深く腰を落として、根元までくわえた彼女は、少し呼吸を整え、僕の胸に手のひらをついた。汗で額に貼りついた前髪、薄く開いた唇、しどけなく覗く歯列。その表情に、もう初めての夜の硬さはない。熟れきった果実を思わせる、ふしだらで、傷つきやすい女の顔。

彼女は腰をゆっくり持ち上げ、そして一気に落とした。ぬちん、と結合部から淫らな水音。続けざまに二度、三度。礼奈の腰が波を打ち、汗が胸の間を伝って、乳房へ流れる。僕と妻の下腹がぶつかるたび、陰毛に絡まった白い泡が、細い糸を引いて切れた。小ぶりな乳房が、縦に、横に、大きく揺れる。妻は自分の指で乳首を摘み上げ、僕に見せびらかしながら、背中を後ろへ反らせた。

「あ、あ、うそこ……、中で、ひろがってるぅ……」

「動いてるの、どっちだ。僕か、お前か」

「んっ、私です、ぁっ、私が、あなたを、食いしめて、離さないのッ……」

彼女は泣きじゃくりながら、円を描くように腰を回す。僕の上で、自分が、すっかり不貞の女になった姿を晒すことに、特別な熱を見出しているらしかった。見下ろす僕の眼差しが、彼女の羞恥を煽り、羞恥が、そのまま快感に転嫁されていく。妻の膣襞が、指のように無数に蠢いて、亀頭の先を引っかき、裏筋を舐め撫でていた。

「……お前と岸川は、普段、どんな話をしてるんだ」

礼奈が、一瞬、腰の動きを止める。膣が、女自身の動揺を映して、きゅうっと絞まった。

「今、それ、聞きますか?」

「聞きたいから聞いてる」

「……岸川さんは、あなたの話ばかりします。お前の夫は、どんな抱き方をする、俺にはどうしてほしい、お前の家の布団の位置は、どっちを向いて寝る、って」

妻がまた動き出す。今度は、縦に、深く。ひときわ大きく腰を落とし、男の根元の茂みに陰核を押しつけたまま、ぐりっと回した。

「私、答えるうちに、あなたのことを教えるのが、こんなに濡れることだって知りました。あなたに黙って、あなたの夜の話を、別の男に聞かせるの。それだけで、脚が、じんって、しびれて」

浅ましい告白。脈動する妻の体内から、もう一人の女の笑い声がするようだった。僕は妻の尻を両手で掴み、まだ閉じきらない肛門の縁を、親指の腹で押した。妻が「ひっ」と咽喉を鳴らし、太腿の筋肉が強張る。

「あっ、また、そこ……さわっちゃ、ぁっ、おかしく、なる……ッ」

「お前のここが、一番、卑しい証拠だ。もう元には戻れないぞ」

「いいの。あなたが望んでくれたなら。私の、この穴も、この奥も、みんな、あなたの玩具で、岸川さんの形を覚えてる、いやらしい肉のまま……ああ、また、イッてる、ぅ、あ、んンッ!」

妻が、僕の腹の上でひときわ大きく跳ねた。中の肉が、ヒステリックに収縮を始めるのを、根元から亀頭まで、丸ごと感じる。女は、絶頂しながら、善がりながら、それでも腰の動きを止められない。自分の深い場所にある、岸川の熱の記憶と、夫の現在が、二重写しで快楽を焙り出す。僕も限界だった。が、射精して終わりではない。終わらない。この夜は、これから先もずっと、岸川の匂いの数だけ続いていく。

妻が私の腰の上で、二度目の波に攫われそうになっていた。口からは意味をなさない喘ぎが泡のように溢れ、涎が顎を伝う。彼女の膣の天井を、亀頭でえぐるたび、汁がびちゃびちゃと跳び散った。窓の外では、冷たい三月の風が止み、二人の獣じみた営みの音だけが、密閉された夜にこだまする。

「中に、出していいか」

礼奈が、涙でぐしゃぐしゃの顔で笑った。

「あなた、私のお腹の中を、あなたのものにしたいの? いいよ、……私の奥まで、あなたの熱、ください……そしたら今夜、岸川さんの夢を見ながら、また、あなたの子宮で、欲しくなる……」

自分でも薄汚いと思う。けれど、止まらない。それこそが、この女の本当の味だった。僕は彼女の腰を抱きしめ、下から二度、三度と突き上げる。鶯の鳴き声のような悲鳴。痙攣する子宮口が、亀頭の先を、唇で吸うように波打つ。彼女の一番奥で、僕の精液と、岸川が植えた快楽の記憶が混ざり合う。性器の噛み合う音、汗ばんだ肌と肌の粘り、喉を這う空気の甘さ、すべてが極まって、ねじくれるように白濁を吐き出した。

びゅるっ、びゅっ、と腹の底から搾り取られる快感に、僕の視界は白く滲んだ。礼奈が啼く。甲高いのではなく、子猫のような弱々しい声で、身を捩らせて、膣の中で僕を受け止めた。射精のあと、彼女はしばらく動けずに、僕の胸の上に折り重なって、肩で息をしている。結合部から、妻の蜜と男の精が、とめどなく溢れて、二人の腿をぬるぬると濡らした。

僕が天井を見上げる。礼奈の額から、汗が一粒、僕の瞼の上へ落ちた。生ぬるくて、塩辛い。この女を抱きしめるたび、十月の夜の、冷たい肌の感触が、遠い昔の出来事のように遠ざかっていく。もう、あの頃の妻には、戻れない。いや、戻る必要はない。冷たい肌の妻を、僕は岸川という男に預け、代わりに熱を孕んだ雌を、毎夜、こうして抱いている。

「……あなた、私が岸川さんと居るとき、どんな気持ちになるか、知りたい?」

妻が、うっとりと余韻に浸りながら、耳元へ囁いた。汗で鎖骨が光っている。彼女の黒髪が、白いシーツの上に散る角度が、あの十月の夜よりもずっと乱れて、深い川の流れのように見える。僕は答えない。ただ、彼女の髪を一房、持ち上げて、煙草の匂いを吸った。夜が、いっそう深くなっていく。

「知ってるさ。だから、次は、俺がお前のスマホで、岸川の部屋を写してやる」

妻が、ぴくりと身を固くした。濡れた黒目が、驚きに見開かれて、すぐに、恍惚へと沈んでいく。

「……本当に? あなたは、私が、岸川さんと交わるところを、見てくれるの」

「お前が俺に見せたがってるんだろう」

彼女は答えなかった。かわりに、ふにゃ、と泣き笑いのような息を漏らし、僕の首へ顔を埋めて、何度も目を潤ませる。黙って、呼吸を整えながら、おずおずと、さっきまで自分を土足で蹂躙した男の名を、声に出さずに唇のかたちで呼んでいた。あるいは、私の名を。たぶん、どちらでもよかった。彼女の本当の夫は、夜の暗がりだった。

三月最後の土曜日が、窓の向こうで、ひっそりと終わろうとしている。僕は妻を抱きしめ直し、二度目の夜明けまで、こうして彼女の汗と、男の残り香と、動画の中で喘ぐ女の姿を心の隅に並べ続けるのだろう。

満たされない夜は終わった。満たされすぎる夜も、また、緩慢な苦痛に変わる。

目を閉じれば、瞼の裏で、動画の中の妻と、昨夜の妻が、どろりと解けて、一人の見知らぬ女になる。本当の妻。僕は、この女を、愛しているのか、愛するふりをしているのか。もう、わからなかった。

それでも、左の胸の下で、妻の心臓が、僕の心臓とずれた拍を刻んでいる。その不協和音こそが、今の夫婦の和音だった。

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読み終えたあとの余韻に。

OVA 夏妻 #2 を FANZA で見る →
登場人物
  • 小林俊二 こばやし しゅんじ
    男性 ・ 35

    外見: 短い黒髪の刈り上げ、焦げ茶の瞳、中肉中背で肩幅は狭め。服装: 地味なグレーのスーツ、よれたネクタイ、安物の革靴。優柔不断だが責任感は強く、妻を愛するがゆえに悩み、酒の勢いで踏み越えてしまう弱さを持つ。背徳感に興奮する一面を自覚していない。

  • 小林礼奈 こばやし れな
    女性 ・ 31

    外見: 腰まで届く艶やかな黒髪のストレート、黒曜石のように澄んだ黒い瞳、色白で触れるとひやりとする肌、華奢だが芯のある体格。服装: 生成りのリネンワンピースや淡い色のブラウス、控えめな花柄のエプロン。慎み深く従順だが、内心では性の悦びに目覚めていく。夫への罪悪感と快感の間で揺れる「でもでもだって」系。

  • 岸川勇次 きしかわ ゆうじ
    男性 ・ 37

    外見: 無造作に撫でつけた焦げ茶の短髪、琥珀色の瞳、がっしりした筋肉質の体格で胸板が厚い。服装: 黒のTシャツにデニム、羽織るワークジャケット。飄々として悪意はないが欲望に忠実、動画を撮るなど計算高い面も持つ。酒好きで快活、女の羞恥を煽る話術に長ける。

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