町内会長・剛田に不倫写真を握られた人妻が、ガムテープで精液に蓋をされた夜から年下愛人では満たされず剛田専用の性奴隷へ堕ちるまでの二ヶ月
あらすじ
夫の無関心に乾いた人妻・芳子は若い社員との逢瀬で湿度を取り戻していたが、町内会長・剛田にその証拠を握られる。脅すでもなく、ただ年齢の重みと肉体で芳子を圧し返す男。一度咥えた剛田の熱さを、週一回の若い精液では上書きできなくなっていく背徳と退行の官能劇。
第1章 二つの汗のあいだ

第1章: 二つの汗のあいだ
腕に提げたスーパーの袋が、歩くたびに太ももへ鈍くぶつかる。中身はいつもと変わらない。六枚切りの食パンに、卵の十入りパック、特売だった小松菜、それから夫が朝に飲む低脂肪乳。私は西に傾きかけた日差しを左頬で受けながら、アスファルトの照り返しに目を細めた。九月に入っても、この辺りの夕方はまだ容赦なく蒸す。首の後ろでひとつに結んだ髪の毛先が汗で肌に張りつき、そこを小さな虫がかすめるたび、私は肩をすくめるしかなかった。
坂道の途中で、ふと足を止めた。胸元に貼りつく汗のあとが、カットソーの内側をゆっくり伝っていく。その生ぬるい感触と一緒に、腰骨のあたりで下着のゴムが食い込んでいるのに気づいた。今朝、何の気なしに手に取った濃紺のレース。夫はもう何年も、私の下着の色など見ていない。それでも、いや、だからこそ、引き出しの奥で眠らせておくには忍びないような、女の名残がまだ私の指先を迷わせる。布に覆われた胸の下を汗が一筋、へその側へ流れ落ちて、私は無意識のうちにカーディガンの前を掻き合わせた。
家まではあと七、八分。あのドアを開ければ、二階の書斎で流れる動画の音と、エアコンの唸りだけが私を迎える。夫が夕食に何を食べたいか——いや、そもそも今日、私がパートに出ていたことさえ、あの人は気に留めていないかもしれない。寝室を別にしてから、もう一年になる。最初は互いの寝息がうるさいとか、エアコンの好みが違うとか、そういう取り繕った言葉を並べていたけれど、今となっては理由を尋ねる気力もなかった。ただ、和室の鴨居を背にして使っていないベッドの匂いが、季節ごとに深く黴ていくのを鼻で感じながら、私は毎晩ひとりで布団を敷く。
胃の奥で、小さな泡が弾けるような感覚があった。ため息は唇まで昇らず、喉のどこかで潰える。明日も明後日も、スーパーの袋を提げてこの坂を上り、献立を考え、食器を洗い、夫の好みの柔らかさで炊いた米を口にする。くじけない暮らし、と言い聞かせてきたそれらは、けれど少しも私の肌を濡らさない。坂を上る足の裏に小石を踏む感触だけが、生々しく続いていた。
公民館の前を通りかかったとき、開け放たれた窓の向こうから、古い畳と男の汗が混ざった匂いが流れてきた。祭りの準備だろうか。窓辺には、先日の町内会で使ったらしい紙袋がいくつも重ねられ、赤い帳面が斜めに置かれているのが見えた。私は歩を緩めた。あの匂いは、昔、父が勤めていた役所の廊下で嗅いだものに似ている。黴の一歩手前で踏みとどまった藺草の匂いと、天日で乾かしきれなかった木綿の白布が吸った、男たちのむせ返るような体臭。小学生の頃、夏休みのラジオ体操に通った記憶まで一緒に蘇ってきて、私は鼻の奥をつまらせた。
何故だかわからないが、その場所にだけ、時間が溜まっているように感じられた。紙袋の口から覗く赤い帳面の端が、西日を吸ってどろりと光っている。私は束の間、その窓辺に自分が吸い寄せられていくような錯覚を覚えたが、すぐに目を逸らして歩き出した。家へ帰れば、エアコンの音が待っている。そう思い直して、スーパーの袋を握り直した手のひらに、汗が玉になっているのを知った。
半年前、まだ背中の肌に流行りの肌着のタグがちくちく刺さる頃。三月の週初め、閉店間際のスーパーで品出しを終えた私に、井原君が声をかけてきた。
「芳子さん、今日このあと、ちょっと付き合ってくれないっすか」
薄緑のポロシャツの襟元を指で引っ張りながら、彼は汗ばんだ前髪を横へ流した。明るい茶色の目が、薄暗いバックヤードの蛍光灯の下でやけに近く見えた。彼が歳下の社員で、仕事中もよく私に話しかけてくることは知っていた。けれど、二人きりでどこかへ行くという発想は、それまで私の頭に一度も浮かばなかった。
「奢ってもらうだけだから」
私は笑って、それだけ答えた。自分に言い訳をしているつもりはなかったが、今思えば、あの軽い言葉の裏で、ずっと眠っていた何かが片目を開けたのだ。居酒屋のカウンターに並んで腰掛け、井原君の白い歯がこぼれるたび、私は年甲斐もなくビールを早く空けた。彼の話はとりとめがなく、声だけが妙に大きくて、それなのに耳へすとんと心地よく入ってきた。パートの愚痴も、夫の話のできない私を、あの空間では誰も咎めなかった。
店を出たとき、風が背中を抜けた。井原君が羽織っていたパーカーを脱いで、それを腕に巻いた瞬間、むわりと汗の匂いが立ちのぼった。洗い立ての柔軟剤と、若い肌から滲む清涼な体臭。夫の枕に残る薄い脂の匂いとも、すれ違う男たちの整髪料とも違う、鼻の奥をくすぐるような匂いだった。私はとっさに俯いたのに、呼吸は彼の匂いを深く吸い込んでしまう。その夜、風呂で自分の腕を洗いながら、指先に彼の汗の匂いが残っているような気がして、肌がぴりりと粟だった。
それから週に一度、私は夫に「買い物」とだけ告げて、ホテルへ向かうようになった。嘘が巧くなっていく自分を、どこか遠い場所から眺めているようだった。駅前のくすんだ暖簾をくぐり、二人分のモーニングと偽りの時間を買う。部屋の鍵を受け取るとき、私の指はもう震えなかった。むしろ、あの若い体臭が鼻をかすめるたび、下腹の奥で何かが溶け始めるのを自覚した。白いバスローブの前を閉じ切れないほど胸が張って、鏡に映る自分の肌が、汗で薄く光って見える。井原君の真っ直ぐな体が私の背に乗り、若い筋肉の圧力が腰から背骨へと這い上がってくるたび、夫には決して触れられない女の場所が、情けなく濡れて彼を迎えた。妻で、主婦で、三十代後半の私の、夕方には萎んでしまう花の芯が、その時間だけは桜色に開いていく。そんな自分を後ろめたく思わない夜はなかった。けれど、それでもやめられない。月曜の朝、乾燥機から出した下着を畳むとき、あのホテルのシーツの湿り気がまだ指の間に残っている気がして、私は誰にも見えない場所で小さく膝を擦り合わせた。
家に着いた。暗い玄関の鍵を回すと、二階からかすかに話し声と動画の音がする。ただいま、と口の中で呟いて、返事のない廊下に上がる。エアコンの効いた居間は、肌の表面の汗を急に冷やして、カットソーの背中を一枚の冷たい紙のように変えた。袋から食パンと卵を取り出しながら、窓の外に目をやる。さっきまで私の足を止めた公民館の明かりが、もう薄い山際の藍色に沈みかけていた。作りかけの夕食の支度を前に、冷蔵庫の音だけがやけに頭の中へ響く。私はシンクに手を突き、水でぬるくなった自分の手首の内側を冷やした。この静けさが、私の明日も同じ顔をして待っていると思うと、胃の上に薄い氷が張っていくようだった。食卓に置いた箸置きを、親指で何度も回す。回して、戻す。それだけの夜が、やがて週末へと繋がっていく。私は濡れたままの濃紺の下着が肌に張りつく感覚を、たぶんわざと、いつまでも放さずにいた。
第2章 秋祭りの会計という名の呼び出し

第2章: 秋祭りの会計という名の呼び出し
日曜の朝、私はいつもより少しだけ丁寧に眉を描いていた。前日の雨が上がり、窓の外では湿った空気がゆっくりと晴れ間へ押し上げられていく。鏡に映る自分の顔は、どこか浮ついているようにも、逆に強張っているようにも見えた。昨夜、町内会長の剛田さんから電話があったのだ。秋祭りの会計のことで少し話があるから、公民館まで来てほしいと。電話の向こうの声は低く落ち着いていて、私が返事をする前に「では日曜の十時に」と静かに日時を決められた。夫は相変わらず二階から降りてこない。私は居間のカレンダーを眺め、祭りまでまだ三週間もあることを確認してから、薄いベージュのブラウスに袖を通した。襟元を少し開けるかどうか迷って、結局、真珠の小ぶりなボタンを喉元まで留めてしまう。それなのに、下着だけは新しい濃紺のレースを選んでいる自分がいて、鏡の前でもう一度だけ意味のないため息を吐いた。
公民館の玄関を入ると、昨日までの雨を吸い込んだコンクリートの匂いが鼻の奥に広がった。土間には誰の靴も並んでいない。薄暗い廊下を進むうち、磨き込まれた古い板張りがぎゅっと小さく軋み、その音がやけに耳の奥へ残った。突き当たりの和室、と電話で言われた通り襖の前に立つ。呼吸を整え、二度、軽くノックをした。
「どうぞ」
すぐに返った声に、私はそっと襖を引いた。中は思いのほか明るく、南向きの窓から差す光が畳の上でゆるく曲がっていた。部屋の中央に置かれた座卓の奥、剛田さんが背筋を伸ばして座っている。白髪の混じった短い髪、深く日焼けした顔。垂れ気味の目が笑うと、口元の深い皺まで柔らかくなるのに、その奥の光だけがぴくりとも動かない。私はその違和感に気づかないふりをしながら、座卓の手前に正座した。
「お忙しいところ、すみませんね」
彼は鉄瓶を傾け、湯気の立つ茶を私の前に置いた。湯呑の底で、茶柱が一本
ゆらりと揺れてすぐ倒れる。私は両手で包むように持ち上げ、一口だけ含んだ。渋みが舌に残る。けれど喉は乾いたままだった。
「先日の祭りで、芳子さんが記録を付けてくださった帳面があってね」
剛田さんは座卓の端に重ねられた紙袋と赤い帳面へ視線を送った。あの日、窓辺から覗いたのと同じもの。私は黙って頷き、帳面の存在を思い出す。婦人部の出納を手伝うようになって三年になる。毎年、この赤い表紙に数字を書くのが秋の始まりの合図だった。
「ちょっと数字が合わない部分がありまして、確認してもらいたいんです」
そう言って彼は一枚のコピー用紙を差し出した。受け取って目を落とすと、確かに備品代の欄に蛍光ペンの跡がついている。数を追ううち、背中をぴたりと何かが這い上がるのを感じた。部屋の隅で古い扇風機が首を振っている。その風が私の膝元へ届く角度のまま、しばらく戻らない。生ぬるい空気が足首から裾へ潜り込み、下着の縁に汗を集める。胸元のボタンの内側も、いつしかじっとりと湿り始めていた。
「それで、実はね、もう一つお見せしたいものがあるんですよ」
剛田さんの口調はあくまで穏やかだった。彼は身体を少し横へ傾け、紙袋の下から白い封筒を引き出す。指先がまたたく間に動いて、封を開いた。私は湯呑みを置けずに、手の中の熱さだけが指の腹へ食い込んでくるのを感じていた。
中から現れたのは、四つ折りにされた光沢紙の束だった。彼はそれを一枚ずつ、座卓の上に広げる。最初は何が写っているのか分からなかった。白いシーツ、壁際の鏡、ランプの明かり。それから、見覚えのある後ろ姿。男の背中に爪を立てて、薄く目を開けた女の横顔。細い鼻梁、半開きの唇、乱れて頬に張り付いた髪。紛れもなく、私だった。
「──っ」
声にならなかった。腹の底が一気に冷えていく。指が湯呑みを離れて、座卓の縁を掴んだ。その衝撃で茶が畳へこぼれ、自分の膝を濡らす。熱いはずの湯が、どろりと冷たい脂肪のように太腿を伝った。私は立ち上がろうとした。腰が浮いた途端、足先が痺れたように震えて、畳の上へ崩れ落ちる。
「ああ、驚かせてしまいましたね」
剛田さんは薄く笑い、写真を丁寧に重ね直した。指先で角を揃える仕草が、ひどく静かで、その静けさが耳鳴りのように響く。私は何か言わなければと思った。けれど唇は開いても、喉からは乾いた空気しか抜けない。心臓が胸の内側を叩くたび、ブラウスの下の汗が一筋、鎖骨の窪みを伝った。
「脅すつもりはないんですよ」
彼はそう言って、私の顔をじっと見た。
「芳子さんがお元気そうで、なによりだと思ってね、それだけです」
視線がゆっくりと、私の目から喉元へ、そしてブラウスの膨らみの上で止まった。私は胸の前で腕を組むようにして、その視線から身体を隠そうとした。布の下では胸の先が硬くなりかけていて、汗で張り付いたレースの模様が、自分の芯を押し返してくる。彼に見られているというただそれだけで、下腹の奥の方がぎゅっと縮む気がした。
「……返してください」
ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど細くて、泣いているように抽れた。
「会長さん、お願いです。これは……私の……違うんです」
違う? 何が違うというのだろう。写真の中で、私は確かに井原君の背に爪を立て、あのホテルの白い部屋で、女の顔をしていた。言い訳の破片が喉に張りついて、一言も形にならない。剛田さんは私の動揺を眺めるように、ゆっくりと湯呑みを手に取り、自分の茶を飲んだ。
「若いのに任せていると、女は結局、物足りなくなるものですよ」
彼の声はやわらかく、まるで世間話でもしているようだった。扇風機の風が、彼の手拭いの端を揺らし、日焼けした首筋から白い肌着の透ける胸元へ汗の匂いを運んでくる。昨日の夕方に公民館の前で嗅いだ、あの古い畳と男の汗が混じった匂いが、この部屋の空気そのものになって私の鼻をふさいだ。
「会長さんは……」
私は写真から目を離せないまま、震える唇で訊いた。
「おいくつでしたか」
自分でも唐突な問いだと思った。何故そんなことを訊くのか分からなかった。ただ、彼の言葉の奥にある、老いと若さを隔てる時間の厚みに、足元を掬われそうな不安を覚えたのだ。
「来月で満58です」
剛田さんは節ばった茶色い指で湯呑みを二度
ん、と鳴らし、喉の奥で愉快そうに息を継いだ。その笑みが、年齢という数字をただの飾りに変えるような、不思議な迫力を持っていた。所帯じみた貫禄とでも呼ぶべき何かが、この座卓の向こう側で私の身体をじりじりと圧してくる。
「芳子さんは、まだまだお若い。肌も、その辺りも、きれいだ」
彼の眼差しがもう一度、私の腕で隠しきれない胸元へ落ちた。私は唾液を飲み下した。喉が音を立てる。畳にこぼれた茶の匂いと、自分の汗の匂いが混ざって、鼻の奥にへばりつく。逃げ道を探して視線を泳がせると、窓の外では朝の雨が上がり、蒸し返す日差しが楕円形に畳を白く染めていた。
「私はね、芳子さん、ただお手伝いがしたいだけなんですよ」
剛田さんが座卓の上から身を乗り出すように、私へ厚い手を伸ばしてきた。その指先が、正座した膝の横、畳の上を一度、重く這う。私は後ずさりしたくても、腰から下が石のように動かない。廊下からは、誰かが床を磨いた後の古いポリッシュの匂いが、薬品くさい甘さを細く流し込んでくる。
彼の大きな手のひらが、やがて私の肩へ乗った。熱を持った重みが、ブラウスの布地を突き抜けて肌へ沈む。私は身を固くしたまま、彼の笑顔を間近に見上げていた。垂れ気味の目は笑っている。けれど、やはり奥は笑っていなかった。
「襖を閉めてごらん、芳子さん」
低く、咎めるでもない声が、私の耳のすぐそばへ落ちてくる。彼は振り返りもせず、背後の襖を後ろ手に押しやった。
とん、という小さな音がして、和室の空気が一つに閉ざされた。
第3章 襖の向こうで、雨上がりの空気がまだ生ぬるく揺れている。湿り気を帯びた畳の香りが鼻腔の奥にこびりついて、肌にまとわりつくような暑さが、私の首筋をじっとりと撫でていた。肩に置かれた剛田さんの手は、まるでそこに最初から在ったもののように重く、ゆっくりと二の腕へ下りてくる。ごつごつとした指先が肘の内側のやわらかな窪みをくすぐるように這った瞬間、背筋を小さな電流が走り抜けて、私は息を詰めた。

襖の向こうで、雨上がりの空気がまだ生ぬるく揺れている。湿り気を帯びた畳の香りが鼻腔の奥にこびりついて、肌にまとわりつくような暑さが、私の首筋をじっとりと撫でていた。肩に置かれた剛田さんの手は、まるでそこに最初から在ったもののように重く、ゆっくりと二の腕へ下りてくる。ごつごつとした指先が肘の内側のやわらかな窪みをくすぐるように這った瞬間、背筋を小さな電流が走り抜けて、私は息を詰めた。
「写真のことは、今は置いておきましょう」
耳元に落ちてきた声は、茶を啜る合間のような、ひどく落ち着きのある低さだった。喉の奥で転がるような、それでいて鼓膜の裏まで染み込んでくるような、不思議な響き。私は返事をしなかった。できなかった。身体の芯だけが、彼の指の通ったあとを追いかけるみたいに、ぴりぴりと痺れて疼いている。心臓が拳で内側から胸を叩くように暴れて、けれど身体は、その手のひらの温度を拒めずにいた。
「芳子さん、少しこっちへ向いてください」
彼の手が私の顎に添えられ、顔を横へ導く。節くれだった指の腹が、汗ばんだ私の顎の骨をやわらかく掴んだ。私は半ば逆らうように首を固くしたけれど、その力は驚くほど穏やかで、まるで私の意志が最初から無かったかのように、横顔を彼へ晒してしまう。窓から差し込む薄明かりが、私の浅黒い茶髪の輪郭を淡く縁取っているのが、自分でも分かった。
「若いお相手でしたね。おいくつでしたか」
「に、にじゅう……」
声が掠れて、最後までは言えなかった。喉の奥に小骨が刺さったみたいに、息の通り道が狭まっている。写真の中で私の背中を掻いていた男。大智君。二十七。本当はもっと前から、彼の歳は知っていた。何度も身体を重ねたのだから、知っていて当然だった。知っていたのに、剛田さんの前でその数字を口にすることが、何かの境界線を越えるみたいに怖かった。二十七という若さが、そのまま私の淫らさの証明になるような気がした。
「二十七でしたか」
私が言い淀んだ数字を、剛田さんは静かに引き取った。責める響きはない。ただ事実を畳の上に置くような、低くて平坦な声。指がまだ顎に触れたままで、親指だけが唇のすぐ下を横切る。皮膚の厚い、節のある指だった。私の夫の指とも、大智君の掌とも違う、木の根を思わせる乾いた感触。それが下唇の縁をかすめるたび、息を吸うことさえ憚られた。
「半年になるんですってね」
どきりとした。心臓が一つ、大きく跳ねて、喉の奥がひゅっと鳴る。写真に日付でも残っていたのだろうか。それとも、どこかで見張られていたのだろうか。半年という月日を、彼はどうやって知ったのか。大智君と会うようになってからの日々が、頭の中で急速に巻き戻っていく。私の動揺をどう受け取ったのか、剛田さんは喉の奥で小さく笑うと、ようやく顎から指を離した。離れた場所に、彼の指の形がまだ残っているような気がして、私は唇をきつく引き結んだ。
「週に一度ですか。若い男は、後腐れがなくて楽でしょう。でも、芳子さん、あなたの身体はどうですか。満たされていますか」
「やめてください……そんなこと……」
私は身を縮めて、膝の上で両手を固く握り合わせた。生乾きの爪の先が、掌に食い込んで白くなる。その言葉は私が考えていたよりずっと弱々しく、畳に吸われるように消えていく。汗で張りついたカットソーの内側で、心臓がいやに速く鳴っていた。胸の奥が、自分の声とは思えないほど頼りない響きで震えている。満たされているか。そんなことを、この人にだけは訊かれたくなかった。訊かれた瞬間に、答えがぐらりと揺らいだ自分が、何よりも恐ろしかった。
「やめるも何も、私はあなたの話を聞きたいんですよ。あの写真の中のあなたは、とても綺麗だった。男の背中に爪を立てて、声を我慢している横顔。ここの婦人会で見せる顔とは、まるで違っていた」
剛田さんの手が、今度は私の背中へ伸びた。汗の滲んだ布の上から、背骨のくぼみを確かめるように押してくる。指が一本ずつ降りるたび、私は息を吐くのを忘れそうになる。背骨の一つ一つを、彼の指が数えている。その感覚が、服の上からだというのに、まるで素肌を直接撫でられているようで、肩が小さく跳ねた。彼は私の身体を回すようにして、背後から抱え込む体勢を作る。太い腕が、私の身体を逃がさない壁になった。
「や……」
中途半端な抵抗の声が漏れた。空気の抜けた笛のような、自分でも情けなくなるほど弱い声。剛田さんの厚い胸が背中に触れ、首筋へ彼の吐息がかかる。古い畳と男の汗が混ざった匂い。それに、微かに線香か何かのような、乾いた木の匂い。私の背中は強張っていたのに、腰のあたりだけが理由もなく重く、熱を持ち始めていた。嫌なのに。嫌なのに、身体の奥の、自分でも触れたことのない場所が、彼の気配に反応してしまっている。
「若い男と会うとき、どんな下着を着ていくんです」
耳の裏へ、声が滑り込む。生温かい吐息が、耳の産毛をざわつかせて、首筋から肩へかけて一気に鳥肌が立った。私は首を振った。振りながら、今朝、鏡の前で迷った濃紺のレースのことを思い出した。あれは、大智君に会うためじゃない。剛田さんに呼び出されたから、だから、もしものことがあったら恥ずかしくないようにと、そう思って選んだ。思ってしまった。そのことが、今、自分の首を絞める。答えられなかった。唇を噛み締めると、彼の右手が私の脇腹を服の上から撫でおろす。その動きに合わせて、ブラジャーの硬い縁が肌を擦り、小さく音がした。布越しに伝わる自分の胸の重さが、やけに意識に上がってくる。
「今日のは、濃い色でしょう。ブラウスの上からでも少し分かりますよ。乳の輪郭が、あの写真のときよりはっきりしている。わざわざ、そんなのを選んで来たんですか。私に会いに」
「ちが、います……たまたまで……」
「たまたま、ね。女の下着に、たまたまはそうないものだけど」
彼の掌が私の胸の下をゆっくりと包み込んだ。指が柔らかな肉の重みを下から支える。Fカップの膨らみが、汗と体温で湿った布の下で彼の手に吸いつく。重い。重くて、熱い。自分で触れるときとはまるで違う、他人の手のひらの形に、私の乳房が従ってしまっている。私は反射的に身を捻ったが、彼の左腕が腰を固定していて、逃げ場はなかった。逃げるほどに、胸は彼の掌へ沈み込む。
「写真を見たときから思っていましたよ。男の上で、乳を揺らしていた後ろ姿。見事な形だ」
「お願い……見ないで……」
「見るなと言われても、こうして触っていますからね」
親指が布の上から乳房のふくらみをひと回しし、先の尖りを探り当てた。そこだけが硬くなっているのを、私は自分でもはっきり自覚していた。触れられる前から、多分、写真を見せられた瞬間から、私の身体は変なふうに反応していた。乳首が、ブラジャーの内側で自分の意思とは無関係に屹立して、擦れるたびに鋭い痺れが走る。それが何よりも恥ずかしかった。身体だけが、私を裏切って、彼の指を待っていたなんて。
「若い男には、ここをよく触らせましたか。口で吸わせたりもしましたか」
「やめて……そんなこと、言わないでください……」
「答えを聞くまで、手は動かしますからね」
彼の親指が、硬くなった乳首をぐりっと布越しに押し潰した。その瞬間、腰の奥が小さく跳ねて、私は咄嗟に太腿を擦り合わせた。みっともない声が漏れそうだった。唇を噛んで堪えるが、鼻から抜ける吐息が、ひゅっと熱を帯びる。下着の中が、さっきからじわじわと濡れてきているのを感じていた。太腿の内側が、自分の汗と、それ以外のものでしっとりと滑る。あってはならないこと。それなのに、身体の芯だけが熱い蜜を溜めていく。
私は知っていた。挿入前の私が、剛田さんの指に身体を委ねていくこの瞬間を。恐れているはずなのに、内腿は震え、下腹の奥は勝手に熱を孕んで、膣の入り口がひくついている。剛田さんへの恐怖が、身体の反応と乖離していく。それが何よりも恐ろしくて、そして、どうしようもなく甘い痛みのように、私の腰を重くしていた。
「半年前からです。……井原君は、その……」
自分から口を開いているのが信じられなかった。声は震えて、最後は消え入った。口を開けたのは、責めを止めたかったから。それなのに、口を開くほど、私は自分の淫らな日々をこの男の前に差し出してしまう。剛田さんは私の告白に満足したのか、乳首の上から指の腹をやわらかく転がし、耳元で「続けて」と促した。ねっとりとした、逃げ道のない促し。私は浅い呼吸の中で、記憶の底から言葉を掬い上げる。
「週に一度、夫に買い物と嘘をついて……ホテルで……」
「どんなふうに抱かれますか」
「ふつうに……です。下になって、それで……」
「下になって。擦られるのが好きなんですね。若い男の腰遣いで、奥まで届かずに、もどかしくなったことはありませんか」
私は答えなかった。答えられない代わりに、彼の指が乳首を一度きゅっと摘み上げて、そのせいで「あっ」という声が唇から零れた。答えないことを許さない、そういう力の込め方だった。大智君の痩せた腰は、確かにいつも私の奥の一歩手前で止まっていた。それでも十分だと思っていた。いや、思おうとしていた。若いから、下手で当たり前。二人で探っていけばいい。そう言い聞かせていた日々が、剛田さんの手の中にいて初めて、あれは私の身体を焦らしていただけなのかもしれないと、熱い息と一緒に胸の奥へ澱みが溜まっていく。奥に届かないもどかしさを、私はずっと、気づかないふりをしていただけなのだと。
「若い男の汗はどうですか。嗅ぐと、ふわっときますか。それとも、においで酔って、下がじゅくじゅくになる」
耳の奥を犯すみたいに、彼の声がねっとりと入り込む。私は首を横に振り続けた。振るたびに、汗で張りついた髪が頬を打つ。その動きを咎めるように、剛田さんの手が服の上から脇腹を強めに撫でおろし、腰骨の張りを確かめて、太腿の付け根のすぐ上まで下りてきた。指が皮膚の上を這う速度が、焦らすように遅い。触れそうで触れない場所を、彼の指がじわじわと侵食していく。
「ああっ……そこ、は……」
「ここが、若い男を咥える場所ですか」
指がスカートの上から、私の割れ目の上をゆったりと押さえた。押さえるでもなく、探るでもなく、布ごしにぐっと沈み込む。私は畳の上で膝を滑らせながら、彼の胸へ背を預けてしまった。逃げようとすればするほど、身体は逆に、その掌の熱を内側へ受け入れてしまう。自分の意思とは裏腹に、腰が彼の手へ押し当てられるように動いていた。
「もう、湿っていますよ。下着が張りついている。写真を見せたときから、こうでしたか」
「ちが……」
「では、いつから。私の手が胸に触れてから? それとも、襖を閉められたときから」
彼の指先がスカートの布を歯で噛むように何度か這い、その下の太腿をひたりと撫でる。じゅく、と自分の水音が耳の奥へ聞こえた気がした。違う、これは幻聴だ。そう思いたいのに、太腿の内側を伝う感覚が、生々しく現実を告げる。下着の中はとっくに熱く、ぬるい蜜が陰毛を濡らしている。彼の指はそこへ入り込もうとするのではなく、膣口の上を布ごしに、ぐにゅりぐにゅりと練るように押した。溢れた愛液が、布の目を通して彼の指先へ滲んでいくのが分かる。
「あっ、や……それ、いや……ひぅ……」
「いや、と言いながら、腰が逃げない。芳子さん、あなたは自分で思っているより、ずっと正直ですよ」
剛田さんは一旦手を離すと、畳の上に正座した私の正面へ回り込んだ。日陰になった顔を上げられずにいると、彼は帯の結び目に手をやる。私は嫌な予感に息を呑んだ。襖の外からは、遠くの境内を渡る風の音と、かすかな蝉の声。この閉じられた空間で、これから起きることを、私は止めることができない。作務衣の前がゆっくりと割られ、白い肌着の下がゆるんでいく。
「若い男と違うのは、同じ十年を何度も生きていることです。見てごらん、これが五十代の育ち方だ」
目の前に晒されたそれが、私の思考を一瞬で真っ白にした。長い。太い。大智君のものも決して細いほうではなかった。けれど、これは次元が違う。血管の浮いた幹は浅黒く、幾重にも重なった年輪のような、熟しきった男の色をしている。先端はぬらぬらと光っていて、重みで下を向いている。嗅いだことのない匂いが、熱を帯びて鼻を突いた。チーズのような、熟成された雄の匂い。喉がひりつく。心臓が早鐘を打って、二の腕の産毛が泡立った。目を逸らしたいのに、逸らせない。それが、私の身体をこれから犯すものなのだと、本能が理解してしまっている。
「冗談……みたい」
口から零れた言葉は、泣きそうな声だった。そんなものを私の中へ入れられるわけがないとでも言うように、私は這うようにして後ろへ下がろうとした。けれど、後ろには座卓。頭を低くしたまま、逃げ道を探す私の視界を、彼の足の甲が塞いでいた。畳の上を、私の汗ばんだ太腿がかすかに滑る。逃げ場はどこにもない。逃げても追いかけると、この男は最初から言っていた。
「じっと見ていなくても、身体は覚えます。ほら、あなたの下の口も、今、それを見て、きゅうっと絞まった」
彼の指がまた私の下着の上へ戻ってきた。今度は迷いなく、すでに染みている布の中心を中指でくるりと撫でる。くちゃ、という粘った音が、静かな和室に鮮明に響いて、自分で自分が嫌になった。ゆっくりと、せせらぎのように流れていたはずの恥辱が、いま堰を切った濁流のように全身を飲み込んでいく。耳の奥にこびりつく、自分の欲情の音。それを消してしまいたくて、私は拳を固く握った。
「や……お願いです、そこは……あっ」
言い終わらないうちに、人差し指と中指が下着の縁からもぐり込んで、濡れそぼった私の肉を開く。産毛に絡まる蜜の音。外の空気が、剥き出しにされた熱い粘膜へ触れて、私は声もなく仰け反った。開かれた。自分でも触れたことのない、いちばん恥ずかしい場所を、この男の指が、ついに知ってしまった。
「指、二本、はいりそうだ。若い男に覚えられた身体は、こんなに素直なのに、底だけが空いている」
くちゅり、くちゅりと、彼の指が私の膣口を浅く擦る。足りない。もっと奥を掻き回してほしい。本能がそう叫んでいるのに、頭では早く逃げなければと警報が鳴り続けている。浅いところだけを焦らすように這う指が、私の内側の空虚を、残酷なほどはっきりと自覚させた。剛田さんは私の苦しげな顔をじっと観察しながら、指の腹で入り口の肉を何度もこねる。熟れた花弁をほぐすように、じっくりと、逃がさずに。
「自分で腰を動かして、私の指を咥えようとしているのが分かりますか」
「そんな、こと……ああっ、ちがっ……」
ぐちゅ。ぬちゅ。彼の指が二本まとめて、私の肉の輪へ沈みこんだ。若い大智君のそれとは違う、骨ばっていて、節くれていて、私の内襞を余すところなく擦り上げる。指の背が、子宮の入り口よりも手前の、大智君には決して触れられなかったざらざらした場所を押し上げた。そこ。そこ。頭の中で何かが白く弾けて、腰が勝手に浮き上がる。
「あっ、あ、そこ、あああ……!」
腰が大きく跳ねた。私の膝が崩れて、スカートの裾が太腿の上へめくれ上がる。濃紺の下着が剛田さんの手の甲の上で食い込み、愛液の雫が内腿を伝って畳の上に落ちた。ぽたり。自分の蜜が落ちる音まで、鮮やかに聞こえる。指が抜かれるたび、後ろ髪を引かれるような感覚が背筋を駆けのぼる。抜かないで。違う、抜いて。真逆の二つの声が、私の身体の奥で鬩ぎ合っている。
「言葉にしてください。若い男に突かれて、イったことはありますか」
「あり、ます……いつも……ッ」
「では、これから、私のもので五回。死ぬような思いをしてごらん。若い肉では底に届かないと、身体で教えて差し上げます」
剛田さんは私の下着を乱暴に膝まで引き下ろした。露わになった陰部を一瞬だけ冷たい外気が撫で、その直後、浅黒い亀頭が私の腹に押し当てられる。熱い。鉄ではなく、もっと生に近い、皮の薄い果実のような、脈打つ硬さが、私の熟れた肌の上を割って滑ってきた。腹の上で、その熱がじくじくと伝染していく。これから、ここに、あれが入る。恐怖と、それと同量の、名前のつけられない期待が、喉の奥で渦を巻いていた。
「挿れます。逃げても追いかけますから、無理に動かないほうがいい」
私の両足を彼の太い腕が左右へ割り開く。もう、足先まで震えていた。膣口に熱い先端が触れた瞬間、入り口の肉が勝手に彼を呑もうとひくつく。くちゅ、と粘膜が迎える音を立てた。迎えている。拒むどころか、私の身体は、この男を欲している。その事実が、涙となって目の縁に滲む。
「あ……まって……おねが、い……」
「年齢…知りましたよ。来月、五十八になる年寄りが、三十七の女をどれだけ啼かせられるか。ようく、身体で覚えてごらん」
彼の腰が一気に沈み込んだ。
ずちゅううっ
鈍くて生々しい音が、私の腹の底から直接、脳へと響いた。視界が白く弾ける。あまりの圧迫感に声も出ない。大智君のものとは比べ物にならない質量が、私の膣襞を一枚一枚こじ開け、やわらかい蕾を奥へ押し広げていく。内側を、幹が通っていく。その感覚があまりにも鮮明で、私は自分の身体の内側の形を、一瞬で覚えてしまったような気がした。目から零れた涙が、生温かく頬を滑る。なのに、内腿は震え、膣の奥は彼を拒むどころか、締め付けて離すまいと蠢いている。涙を流しながらも、私の腰は、彼を受け入れる方へゆっくりと動いていた。
挿入直後の私は、涙を流しながらも、腰が動くのを感じていた。絶望と快感が、同じ速さで私の身体を駆け抜けていく。大智君に触れられたことのない深さを、この人に貫かれてしまった。なのに、奥の痺れを追いかけるように、私の身体は勝手に動いている。交感神経と副交感神経が、その熱い繋がりを歓迎してしまっている。恥ずかしくて、悔しくて、けれど、たまらなく気持ちがいい。涙と汁とで、私の太腿はぐしょぐしょに濡れて、息をするたび膣がきゅうきゅうと剛田さんを締め付けた。
「ひぐっ……あ、ああ、太い……おっき過ぎるっ… や、やっぱり出して……!」
「これで全部入っていませんよ。まだ半分、いや六割です。力、抜いてごらん」
耳元で諭すように囁きながら、彼はさらに腰を押し込んでくる。奥がずぷっと沈み、子宮の口を亀頭がこつんと突き上げた。そこまで届かれたのは初めてだった。内臓の位置が変わるような圧迫感、痛みとも快感ともつかない痺れが、腰から太腿を伝い、足先まで貫いていく。足先が、ぴんと伸びて、それから、力なく震えた。
「あぐ……ッ、うあ……そん、な、奥……ふか……」
「そう。ここだ。若い男のものが届かなかった場所。誰も触れたことのない、いちばん深い襞ですよ。芳子さん、今、あなたの子宮が私を咥えています」
「ちが……ちが、う……あっ、うごいたら、い、ああああ!」
彼は返事の代わりに、私の腰を両手で引き寄せた。引き抜かれる感覚さえ、産み出すような苦しさで、内襞が男根に絡みついて一緒に外れそうになる。内側の肉が、彼の形にめくり上がる。そして、もう一度。
ぐさっ
「あひぃっ! あ、やあ、ああぅッ!」
肉と肉のぶつかる音。ぐちゅ、ずちゅっ、ぐさっぐさっ。彼の腰の重さが、私の内側を休む間もなく往復する。そのたび畳の目が背中に食い込み、汗で滑る坐蒲に手を突いて、爪を立てた。五十八の身体と聞いたのに、腰は若く、動きは正確だった。何より、私の花芯を穿つ位置が、一度もぶれない。私のいちばん気持ちいい場所を、私が見つける前から、この男は知っていたような確かさで貫いてくる。
「ああっ、ダメ、ダメッ……! そんな、とこ、突かれたら、おかしく……ああああ、いく、いく、イッ、ああああッ!」
一回目の絶頂は、ほとんど悲鳴だった。腰がぶるぶると浮いて、足指がぎゅうっと丸まる。膣の中が剛田さんのものを締め上げ、その締め付けを彼は「いい肉だ」と笑った。笑いながら、私の痙攣が治まる前に腰を前後させる。ビクンッビクンッと跳ねる身体を押さえつけて、深く、強く、何度も奥へ打ち込んだ。浮遊する。浅瀬から深みへ、一気に落とされるような、身体の芯が熱に溶けていく感覚。まだイッたばかりなのに、次の波が、もう遠くでうねり始めている。
「まだですよ。指で確かめましたが、あなたはもっと深い悦楽を知れる。ほら、腰、浮いています。私を逃がすなと、膣が泣いていますよ」
「だって……あっ、や、これ、きもち……あああぁぁ、はああぁぁぁ、いいぃぃぃぃッ!」
二回目は、言葉にならない叫びで全身が震えた。もう抵抗も拒絶も、声の底へ沈んでいく。畳に広がる汗と愛液の匂い。鼻を満たす男の体臭。私の身体は、夫が何年もかけて乾かしていった場所に、一気に水を注がれたかのように、熱に浮かされていた。花に喩えるなら、芽吹き、つぼみが開き、花弁が滴るほどに咲き誇る、そんな感覚が腰の奥で迸る。
「ほら、今ので、ようやく根元まで入りました。私の下腹と、あなたの秘部が、ぴったりくっついている。分かりますか。奥に先の形が押し付いています」
「ひゃ、あ、あ……おく、子宮の、口……くち……あたって、る……ぅ」
「若い男のは、見ためは悪くないでしょう。でも、ここまで根元を密着させて、子宮をこうして、潰すように回せますか。……こうです」
ぐりゅ、と彼が腰を円を描くように動かす。亀頭が私のいちばん深い場所の縁を、擦る、潰す、抉る。白い火花が目の奥で散った。脳の芯まで、じんと痺れるような快感。身体が、のぼる。意識が天井の木目に吸い込まれそうになる。熱い。熱い。熱い。太腿の間に、波が次から次へと打ち寄せる。
「あひぃぃッ……ああぁぅッ! や、やだ、こわ……っ、あ、なに、これ、きちゃ、あっ、あっ、あああ、イグ、イグ、イクウウウウウウウーッ!」
三回目。喉が引き攣るほど大きく鳴いて、私は顎をあげて痙攣した。もう腕の力が入らなくて、背中がどさりと畳に沈む。天井が、ぐるぐると歪んで回っている。剛田さんは汗をしたたらせた顔で、私の腹の上を眺めていた。満足げな、獲物を観察するような、あの笑みだけが薄い光の中に浮かんでいる。その笑みが、私の奥をもっと欲しがらせた。違う、私が、もっとを欲しがっている。
「あと二回。指は二本入らぬくらいに狭かったのに、今では根元まで密着しています。少し、下着を取って楽にさせましょうね」
彼は私の太腿から、濃紺の下着を片足ずつ引き抜いた。ぐしょぐしょに濡れたそれを畳の上へ置くと、くの字に曲がった私の身体へ、上から重なってくる。重たい。けれどそれが、自分の内側を満たしているものと結びついて、途方もなく安心するような感覚があった。やっと、全部くっついた。そんな安堵が、恥ずかしいのに、胸の底から湧いてきて、私は半開きの唇から甘い息を漏らした。
四度目の抽送は、最初とは比べようもないほど深く、ゆっくりだった。彼の血管の一本一本が、私の内襞を擦り抜けていく。その形を、感触を、身体で読み取らされているみたいだった。内側の襞が、男根の凹凸を味わうように蠢く。音はぐちょ、ずりゅ、ピチャピチャ。太腿の間に溜まった愛液が泡立ち、それぞれの腹の間で粘りつく。ねっとりとした空気。身体と身体の隙間で、体液が卑猥な音を転がす。
「あっ、あ……剛田さ……ん……あ、わたし……」
自分の唇から、彼の名前が落ちた。違う。違うのに、何か別の女が私の口を使って、ああ呼んでいるみたいだった。呼ばれた剛田さんは、喉を鳴らして笑い、抽送を深くしながら私の顎を持ち上げた。指が汗ばんだ私の首筋から顎を滑り、唇の端をなぞる。その指を、舌が迎えそうになって、私は目をぎゅっと閉じた。
「やっと、私を呼びましたね。これで五回目、腹の底まで注ぎます。避妊のことは何も聞きませんよ。あなたが女なら、中で受けなさい」
返事をする間もなかった。一番深いところを、亀頭が何度も何度もこすり上げる。膣が意思を持った別の生き物のように、彼を離すまいと収縮した。剛田さんが私の両脚を肩の上へ担いで、折り曲げるようにして密着する。その角度で、子宮の口がこじ開けられるほど深く先端が割り込んで——びりびりと、のぼせた頭の芯まで痺れが走った。太腿を伝って、汗が畳に垂れる。身体が半分、畳から浮くような圧迫感。逃げられない。逃げたくない。
「ああっ、もうダメ……! イッ、イクウウウウウウウーッ!」
五度目の絶頂は、悲鳴とも嗚咽ともつかない、空気の抜けるような声だった。私の脚は彼の背中に絡みつき、爪が彼の肩へ食い込む。内壁が暴発するように痙攣して、そのうねりを打ち返すように、彼の腰が一度、二度、三度と打ちつけられた。膣の奥が、自分のものじゃない生き物のように、熱く、強く、彼の最奥を締め上げる。
どぴゅっ
柔いのに、熱くて重い液体が、私の奥で炸裂する。どくん、どくんと脈打つたび、注がれる感覚がはっきり分かって、私の身体はまた小さく跳ねた。胎のいちばん深い場所へ、五十八の精が流れ込んでくる。量が、温度が、若い大智君のそれとはまるで違う。ぬるくて、多過ぎて、子宮の奥から溢れ出して、出て行く場所に熱い膜を張るようだった。内側が彼のものでいっぱいになる。その熱い満たされ方に、意識がとろとろと溶けていく。足の先から、頭の天辺まで、私の身体は彼によって塗り替えられてしまった。
しばらく思考がなかった。天井の木目と、扇風機の回る音だけが、ゆるゆると私の上を通過していく。畳の跡を背中に刻みつけたまま、私は足を開いた状態で沈み、下腹の奥深くが、注がれたものを閉じ込めようと無意識にきゅうきゅうと痙攣していた。汗が、胸の谷を伝って流れていく。内腿が、他人の肉のように脱力して、ぴくり、ぴくりと震えるばかり。
剛田さんはまだ抜かなかった。半分溶けた私を見下ろして、その腹を掌でゆっくりと撫でる。
「覚えましたか。若い肉では、ここまで届かない。もう、あの男では、あなたの中の空洞は癒えませんよ」
彼の静かな声が、天井の方から降ってくる。私は何も言えなかった。ただの感情もなく、靴下の先をまるめるように痙攣させていた。膣の奥が、彼の浅黒い一物をまだ深く咥えたまま、もう離してはいけないもののように絞まっていた。抜いてほしい。いいえ、抜かないで。そのまま、この熱で、もっと、もっといっぱいにしてほしい。そう願っている私が、確かにこの畳の上に生まれていた。
そのとき、襖の外で、自転車のベルがひとつ、遠く鳴った。昼前の境内を風が渡る音がして、汗に濡れた私の身体の表面だけが、ひやりと冷えていく。彼はなおも奥を、ゆっくり、ぐぼっと突き、そのまま最奥で静かに呼吸を転がした。私の息も、彼の息も、混ざった精液と熱い蜜も、すべて畳の部屋の中に閉じ込められて、正午の痺れるような蝉の鳴き声だけが、間近い窓の外に満ちていた。
第4章 黒いガムテープで塞がれた夜

第4章: 黒いガムテープで塞がれた夜
射精の余韻がまだ私の下腹の奥で、どくどくと泡立っていた。剛田さんが身体を起こした気配で、畳の目がきし、と鳴る。開かれた私の腿のあいだから、彼の精液がこぼれないうちに、彼は座卓のほうへ片膝を立ててにじり寄った。背中越しに、祭りの紙袋へ手を入れる音がする。油紙の擦れる音。ビニール紐のきつく撚れた耳。私は浅い呼吸を繰り返しながら、天井の節穴を見つめていた。脚の付け根がまだ、抜かれた直後の形を象ったまま、ひくひくと小さく痙攣している。
「このままじゃ、芳子さんの若い男、妙に思うでしょう」
くぐもった、笑みを含んだ声が降ってきた。彼が手にしているものを見て、背筋の産毛がいっせいに泡立つ。黒いビニールテープの、ずんぐりとした巻きだった。マットな黒が曇天の薄明りを吸い込んで、あの紙袋の底で眠っていたとは思えないほど生々しく見える。
「な、にを……」
私の唇から乾いた空気が抜けた。返事のかわりに、彼は私の腿へ手を置いた。かるく押し開かせると、露わになっている陰のあたりへ顔を寄せる。まだ硬さの抜けない私の乳首が、汗で張りついたブラウスの下でもぞりと疼く。
「注がれたばかりの精が、ずいぶん奥に溜まっていますよ。割れ目を伝って、畳を汚す前に、きちんと蓋をしないと。芳子さんも、そう思うでしょう」
思うはずがないのに、腹の奥がびくんと応えた。彼の太い指が、乱れた私の陰毛を撫でる。汗と愛液と精液で、すっかり湿って重くなったそこを、指先で丁寧に梳くものだから、私は太腿を閉じようとしながら、閉じられない自分の身体がもどかしかった。
「拭かないで、貼るんです。私のものを閉じ込めたまま、君のところへ行くんですよ」
彼は黒いテープをしゅるりと引き出し、必要な長さだけを歯で噛み切った。ぴん、と張った粘着面が、薄暗い部屋の中で稠密な光を帯びる。その冷たい気配を、まだ一度も触れていないのに、私の肉が感じてひくついた。剛田さんは人差し指の腹で、私の濡れた陰唇を中央から左右へ開く。くちゅり、と粘液が糸を曳いた。太い指が膣口を一度だけ、内側へ押し込むようにして、あふれ出そうとする白濁の塊を奥へ返す。淡く甘い酸味臭が鼻へ届き、それが自分と彼の体液の混じったものであるという事実が、こめかみの奥を熱くした。
「あっ……や……ぁ……」
声とも吐息ともつかない音が唇から落ちた。彼は笑みを絶やさず、切り取ったガムテープを私の肉にあてがった。まず、石のように熱を持った左の大陰唇へ、たっぷりとした粘着面が跨る。次に、右。冷えた糊が痺れるように染みて、私は腰を浮かせた。ひくり、と括約筋が震えるたびに、テープの端までぶるぶると揺れ、その震えが陰核の皮を裏側から引っ張る。
「冷た、い……あ、だめ……そん、な、の、ああ……っ」
私の弱い抵抗など、彼の手の中では朝露のしずくに等しかった。剛田さんは親指でテープをまん中から押さえ、私のぬかるんだ肉の溝へ貼りつかせた。ぬるり、という粘液音とともに、黒い樹脂の膜が膣口と陰唇とを一息に塞いでいく。貼られた場所から、逃げ場を失った精液が小さく、ぐちゅ、と鳴った。大陰唇のふくらみを跨いだテープの端が、汗ばんだ内股へ張りつく。私の股を亀の甲羅みたいな黒が覆っていて、それが羞恥と同時に、妙な安心を下腹へ沁み込ませた。
「苦しくはないですか。気になるようなら、もう少し血の通うほうへ貼り直しますよ」
「だい、じょうぶ……じゃ、なくて……とって……お願い……おしりまで……っていうか、どうして……」
うまく文にならない。彼は汗ばんだ私の太ももを二度、ぱん、ぱんと叩いた。ねっとりと粘る音が響いて、膣の奥がきゅんと強く収縮する。そのたびに、胎の奥に満ちた精液の塊がテープの裏側を押し上げるのが分かった。
「井原君でしたか。今夜、あの若い社員と会うんでしょう。朝から下着を決めて、昼の予定を空けている女の顔を、私が見抜かないとでも思いましたか」
私は思考を止めた。血の気が引いたあとの耳鳴りの中で、日曜の夕方、大智君と会う約束をしていたことを、自分の浅はかさごと天地から見下ろされている思いがした。剛田さんは膝を崩し、畳の上へ放り出されていた私の濃紺のレースの下着を拾い上げると、指先に絡めて持ち上げた。中央の布地はぐっしょりと重く、光を透かすと黒い影が動くほどの濡れようだった。
「これを穿かせましょう。テープの上から。下着越しに私の精が滲むかどうか、君の身体が確かめてみればいい」
足先から下着を通され、彼の掌が私の尻を持ち上げて、濡れた布を元の位置へ戻していく。ガムテープと下着のあいだに、まだぬめりの残る肉が挟まれて、歩くでもないのに粘着が陰毛を引っ張った。私は身を起こすこともできず、背中の畳の跡が熱くかゆい。床の間の掛け軸が、にじんで見えた。
「さあ、時間です。若い男が待ちくたびれる。立てますか、芳子さん」
彼の手が私の腕をとり、上体を起こしてくれた。よろめく私の腰に手をまわし、まるで介抱でもするように着衣の乱れを直される。ブラウスの前を合わされ、カーディガンの裾を引かれる間も、私は子宮のあたりに溜まった重い熱を、一雫もこぼさないよう膝をすり合わせていた。彼は私の耳元へ口を寄せ、煙草の苦い残り香をかすかに混ぜた息でこう言った。
「塞いだまま、あの男に抱かれておいで。違いが分かれば、それでよし。分からなければ、また公民館へいらっしゃい。私が何度でも、おまえの底へ種を戻してあげますからね」
私は声を出せないまま、一度だけ頷いてしまった。頷いたあとで、自分の頤がすとんと落ちたのが、何より悔しかった。けれど脚のあいだの黒い膜は剥がすどころか、歩くたびに大陰唇と膣口をひとまとめに揺さぶって、私の奥へ彼の精液をさらに塗り込んでくる。公民館の廊下の鏡に映った自分の顔は、熱に浮かされていて、首から下が女の形を失くした別の生き物みたいだった。
外へ出ると、空はいつの間にか黒い雲の底を這っていて、夕方前だというのに街全体がセピア色のフィルムに沈んでいる。遠くで雷が、腹の底から響くように低く唸った。私は歩き出した。一歩動くごとに、下着の中でガムテープの粘着面がぴちゃ、と水分を噛む。太ももの内側を、冷たいものが一筋、膝裏へかけて這い落ちる気がするのに、指で確かめる勇気はなかった。生ぬるい風がスカートの中を膨らませると、精液と私の汁の混じった匂いが、自分の脚のあいだから立ちのぼって鼻をつく。駅へ向かう歩道を、大智君の待つ改札のほうへ、私はほとんど小走りに進んでいた。早く会いたい。けれど早く座りたい。いや、早く、この塞がった場所を誰にも知られずに、トイレの個室で息をつきたい。矛盾した渦が、歩くたびに膣をぎゅうぎゅうと収縮させた。
ビジネスホテルの部屋は、冷房が古くて、窓の外から雨の匂いが這い上がってくる。大智君は約束より十分遅れて、汗ばんだ前髪を横へ流しながら笑った。
「ごめん、芳子さん待ったっすか。なんか今日、蒸しますね」
明るい茶色の目が、薄暗い室内でやわらかに光る。彼の大きな声を聞いた途端、脚のあいだの蓋が、内側からとんとんと叩かれたような気がした。違う、叩いているのは私の鼓動だ。私はベッドへ浅く腰掛けて、スカートの裾を揃えた。大智君は私のとなりへ座り、汗の匂いごと抱きしめてくる。清涼な若い肌の体臭が鼻をくすぐって、それだけで胸が甘く縮む。かつてはこの匂いだけで、下腹がじんと滲んだのに、いまの私は黒いテープの下へ違う男の匂いを詰め込まれている。
「電気、もうちょっと暗くしときますか。そのほうが、芳子さん、すぐ可愛い声出すくせに」
「し、失礼なこと言わないの」
くすくす笑う彼の手が、私の上着の肩を引きながら、ブラウスの釦を外していく。首筋へ若い舌が触れるたび、背中がびくっと震えた。大智君は何も知らない。テープのことなど、あるはずもない。知らずに汗ばんだ掌を乳房へ這わせ、慣れたように濃紺の下着のホックを外した。布が外れ、空気に触れた胸の先がつんと立つ。私は彼の首へ手をまわし、顔をのけぞらせながら、声を堪えるのに精一杯だった。
彼が私をベッドへ押し倒し、スカートを捲りあげる。下着の中央、黒いガムテープの形が、濡れた布の上からはっきりと盛り上がっているはずなのに、大智君はいつもの笑顔のまま、その布の上へ手のひらを置いた。
「うわ、今日すごい。こんなに……もしかして、僕が来るの、めちゃくちゃ楽しみだったんですか?」
ぬり、と彼の指が布越しに溝をなぞる。テープの端が、その刺激で陰核の裏をこするように捲れそうになって、私は悲鳴に近い息を漏らした。大智君は構わず、下着の脚ぐりから指を差し込もうとする。指先がテープの粘着面へ触れる瞬間、私の心臓は破裂するかと思った。
「あっ、待って……! 今日、は……その、下着、触ったら、だめ……」
「え? なんで? つけてても、ふつうにするじゃないですか」
彼が不満そうに言った。私は何と答えていいか分からず、彼のシャツを引き寄せて、若い胸元へ頬を埋めた。心臓が早い。汗ばんだ彼の肌に、私の早い脈が伝わっている。大智君はたいして気にもとめず、私の下着の中へ手を入れる。
「あ、ちょっと、ほんとに今日は、やめ……ああっ」
指先がテープの耳へ触れ、驚いたように引っ込むのが分かった。彼は眉を寄せる。
「何か貼ってある? 湿布? 芳子さん、そこ、どうしたの」
「ごめ、あの、ちょっと肌が荒れちゃって……薬を……その、沁みちゃうから、今日は下着のうえからで……お願い、大智君……」
涙声になった自分が情けなかった。肌が荒れて薬を貼っている、何という罪深い嘘だろう。下着の中で今も、剛田さんの精液が粘着面と肌のすきまを埋めて、ぬらぬらと震えている。大智君はしばらく不満そうにしていたが、彼の欲棒のほうはすでにズボンの上から形を変えて持ち上がっていて、私の手を引いてそれを握らせた。若く真っ直ぐなあれは、手のひらに汗ばんで熱い。私は言われるまま彼の下腹部へ顔を寄せ、口でそれを受け入れた。若い肉の塩辛い汗と、混ざった男の匂い。舌で先を舐め上げるたび、膣の奥ではあの蓋が呼吸している。
大智君は私の頭を押さえ、熱心に口内へ腰を送ってくる。やがて堪りかねたように私を横向きにして、下着を完全には下ろさず、片脚だけ布をずらし、後ろの位置から挿入しようと腰をあてがってきた。下着の布は太ももの片側に食い込んでいて、ガムテープが露になるぎりぎりのところで留まっていた。彼の亀頭が、黒いテープの右端をこすった瞬間、粘着が皮膚から浮きそうになり、私は低い声で慌てた。
「うしろ、からは……今日は、ちょっと……ほんとに、やめ……ふ、あ、あ、……ぁ」
言い終わらないうちに、彼は濡れそぼった私の入り口を探り当て、ずぷりと沈めてきた。ガムテープを避けるように、膣口の側方から亀頭が割り込む。閉じ塞がれた半分の肉が、侵入者を受け止めながらも、奥へは通せまいと拒んでしまう。狭い。彼が動くたび、上側に張ったテープが子宮のあたりを圧迫し、そのたびに剛田さんの精液の粒が攪拌される。ぐちゅ、ぐちゅ、と若い男の抽送が私の液を泡立てた。
「あ、や、ちょっと……は、……あっ、ああ……ふ……あ、奥……っ」
突かれているのは大智君の若い肉なのに、その下で、いや、さらに奥の空洞で、別の男の精液がぬめぬめと熱を放ち続けている。私の膣は、若い挿入を咥えさせられながらも、何かを探して勝手に収縮した。剛田さんのしわの寄った先端。子宮の口を潰す重み。あれほど私の奥を圧し広げた質量が、いま、この黒い粘着の下に閉じ込められている。そう思うだけで、目の裏が白く瞬いた。
「芳子さん、今日、けっこう締まってる……すごい気持ちいいっす。声、我慢してるでしょ。もっと出していいのに」
大智君が後ろから私の肩を掴み、強く打ちつける。腰がぶつかる音が、エアコンの古いこもり音と混じる。私の呼吸は上がって、額に浮いた汗がシーツへ落ちた。気持ちいい。確かに若い彼は気持ちいい。けれど何かが足りない。いや、足りないのではなく、今の私は二重に貫かれていて、満たされているはずの穴の、さらに奥へ指先を這わせたいような焦燥が、下腹をじんじんと焼いていた。
「あ……ああっ、あ、い、……うご、いて……も……っと……」
自分の口が、大智君にねだる。若い汗の匂いが鼻の奥へ弾んだ。彼の腰遣いに、膣口の縁がくわ、くわ、と鳴く。ガムテープの角が大陰唇のつけ根をちくちくと刺す。入口は大智君に開かれ、奥は剛田さんで満ちたまま。二人分の肉の圧力が、私の内壁を嚙み合わない歯車みたいに揺らす。それが異常な愉楽になって、涙がにじんだ。
「あ、あ、あ……だめ、……なにか、きちゃ……ひ、……あひゅ……」
若い男の熱い先端が、Gスポットの手前を擦り、同時に奥の精液の沈殿を揺り起こす。私は痙攣に近い動作で背をのけぞらせ、シーツを握った。大智君が低く笑いながら、汗の浮いた額を私の肩甲骨のあいだへ押し当ててくる。
「イキそう? いいよ、このまま……僕も出していいっすよね。今日、タイミングばっちり」
彼の声が遠い。彼が根元まで差し入れた感覚は、自分の肉が若い男の痩せた腹に触れる位置で、剛田さんのような奥底への圧迫には遠く及ばない。それでも私の身体は勝手に高く登って、あの声を上げてしまいそうだった。唇を噛む。声を殺す。そうしていないと「剛田さん」と叫んでしまいそうで。指先がぶるぶると震え、ガムテープの粘着が陰毛を数本、引っ張って抜く。疼きは疼きのまま、快感の先端へ絡まっていく。
「あ、……く、……は、ん、……ああぁ……っ!」
視界が葡萄色に弾けて、私の全身が強い波に攫われた。膣が小刻みに締まる。奥の精液が、蓋を押し上げ、けれど大智君の肉が入口を塞いでいて、行き場を失った液がぬちゃ、ぬちゃ、と内部で砕ける。そのどろりとした音を、彼の耳は聞いていない。大智君も短い吐息を漏らし、私の奥へ若い精液を注いだ。私の内壁に、熱くて軽い、水けの多い迸りが打ちつけられる。それは剛田さんの重くねばる種とはまるで手触りが違っていて、その差異をはっきり覚えてしまった自分が、薄い闇の底でひっそりと打ちひしがれた。
彼がゆっくりと引き抜くと、私の下腹部は二人分の液でぐぷ、と不気味に鳴った。大智君は「すげー、こんなに出てる」と笑い、ティッシュを何枚も手にして私の腿を拭こうとした。私は慌てて身体を逸らし、スカートの乱れを直して咳払いをする。ガムテープの接着が少し剥がれかけていて、彼の目からもそれは見えただろう。けれど大智君は、おかしいとすら思っていないらしかった。
「今日はいやにぬるぬるだったな。気持ちよかったっすよ。また、来週も空けといてください」
満たされた顔でそう言う彼の、その無邪気さが、今夜の私にはやけに薄っぺらに見えた。若い肌にはまだ汗が光っていて、その香りは相変わらず心地いいのに、私は彼の耳のうしろを舐めたいとも思えなかった。思い浮かぶのは、公民館の畳の目と、私の肉を跨いでいた黒い膜と、剛田さんの低い命令の声ばかり。
大智君が浅い寝息を立て始めるまで、私は壁際に背を預けて、脚を伸ばしたまま動けなかった。股間は若い精液と年上の精液が混ざり、テープの粘着と下着の縁に沿って、半乾きの膜を作りつつある。太ももの内側を指先でそっと辿ると、粘液の線がすでに乾きかけていて、つまむと繊維みたいに細く割れた。私は目を閉じた。膣の襞には、二人分の液が縞になって溜まっていて、自分の肉がそれを静かに選り分けているような、妙な感覚があった。
雨の音が、窓の外で大きくなっていた。雷鳴が遠くを転がり、空調の震えと重なる。大智君の寝返りに合わせてベッドがきしむたび、黒いガムテープの糊が陰毛を引っ張り、まだあの男の精液が私の奥でひそやかに熱を保っていることを思い出させた。
第5章 週末の女、祭りのあとの飼い鳥

雨の音で目が覚めた。窓の外では、秋の雨が古いビジネスホテルの室外機を執拗に叩いていて、その一定の律動が、かえって部屋の中の澱んだ静けさを際立たせていた。大智君の腕が私の腹の上に載っていて、その重さだけが、やけに生々しく、生温かい。眠りに落ちる前の行為の熱が、まだシーツの下に閉じ込められていて、私は息を詰めるようにして天井を仰いだ。
彼は眠っている。薄く開いた唇から、若々しい寝息が零れ、額にはまだ薄い汗の膜が張っている。街灯の光がブラインドの隙間から差し込んで、彼の頬骨のあたりを白く浮かび上がらせていた。私は動けなかった。身体の奥で、二人分の精液が半乾きのまま澱んでいる。ガムテープの粘着が陰毛の根元をくい込むように引っ張って、少し身じろぐたびに、あの黒い膜の存在を、肌の芯で思い知らされた。まるで、自分の股のあいだに他人が住み着いているような、妙な感覚だった。
どれくらいそうしていただろう。大智君が小さく寝返りを打ち、私の胸元へ顔を埋めてくる。彼の髪から、汗と柔軟剤の混じった匂いがふわりと立ちのぼった。かつて私の鼻の奥をくすぐり、下腹をじんと疼かせた匂い。それが今、なぜか遠い場所から漂ってくるように感じられる。鼻は彼の匂いを拾っているのに、身体の芯は別の男の太さを探して、膣の奥がきゅっと収縮する。その落差に、私は薄い肌掛けの下で、そっと爪を立てた。
「……芳子さん、まだ起きてるんですか」
大智君が掠れた声で囁いた。彼の手が私の腰を抱き寄せる。その掌がガムテープの端へ触れないよう、私は無意識に腰をずらしていた。彼に悟られてはいけない。若い肌に触れられながら、別の男の印を身につけている妻の身体を、彼は知らなくていい。そう思う自分と、知られてしまえばいい、と思う自分が、胸の奥で熱く身を捩った。
「ええ、ちょっと目が冴えちゃって」
私の声は自分で思うよりずっと落ち着いていた。彼は私の肩口へ唇を寄せ、満足げに湿った息を吐く。吐息が肌を這う。私は目を閉じて、その若い唇の感触を、公民館の和室で味わった厚い唇の記憶へ重ねないようにと、心のどこかで必死に抗っていた。
「今日の芳子さん、なんかすげーえろかった。腰、最後まで引いてなかったし」
「……そう?」
「前はもっと力入ってた感じするから。大人になったっていうか、なんていうか」
彼は笑いながら私の耳たぶを甘く噛んだ。その無邪気な口調が、胸の内側の暗い場所をちりちりと灼く。彼の清涼な汗の香りが鼻先をかすめるたび、私は公民館の和室で嗅いだ、あの熟れた男の体臭を思い出していた。古い畳と、乾ききらない木綿と、体温で温められた精液の匂い。それを思い出す私の腰が、ぎゅうっと重くなる。身体が、若い男の前で、年上の男の匂いを欲しがっている。その不実さに、胸の奥の肉がひくついた。
大智君はやがて再び眠りへ沈んでいった。規則正しい寝息が、私の耳もとをくすぐる。私は彼の腕を外し、音を立てないようにベッドを抜け出した。カーペットの上に散らかった服を拾い、バスルームへ入る。磨り硝子の向こうで、雨の音がまだ続いている。鏡に映る自分の顔は、生気がないようでいて、唇だけが矢鱈と赤い。化粧は半ば崩れ、目の下に薄い影が落ちている。それなのに、唇だけが他人のものみたいに熟れて見えた。ブラウスを脱ぎ、下着を下ろす。黒く湿ったガムテープが、私の股のあいだにぴったりと貼りついていた。粘着力はまだ強く、陰毛を分けて肉の割れ目を覆い隠している。その黒い布が、私の恥部を塞いでいるのではなく、私をこの男のものに縛りつけている。そんな錯覚が、浴室の白い灯の下で、ぞくりと背を走った。
端から剥がす。ぬち、という粘液音が浴室に響いて、テープの裏面が白く濁った糸を引いた。陰毛が数本、粘着面に絡んで引き抜かれ、鋭い痛みが下腹の奥を刺す。それすらも、どこか快い。そこに残っているのは、大智君のものとも私のものともつかない液体。けれど指先に取れた粘液を鼻へ近づけると、確かにあの人の匂いがした。生臭くて、苦くて、喉の奥がひくつくような匂い。ヨーグルトのすっぱみに似たそれが、私の鼻腔を塞いだ。洗い流してしまわなければ、と思うのに、指先を離せない。私は白い洗面台に腰を預け、しばらく粘液の匂いを嗅いでいた。身体の奥に注がれた熱は、シャワーの湯を股間へ当てても消えない。熱い湯が陰部を打つたびに、粘膜がひくひくと震えて、私は壁に手をつき、しばらくただ熱い湯に打たれていた。
翌週、また公民館の和室へ呼ばれた。
祭りも終わり、境内の片隅に紅葉した木の葉が湿ったまま吹き溜まる、昼下がりのことだった。廊下を歩く足音が、秋祭りの片づけという嘘で家を出てきた私の胸を、早くも不規則に跳ねさせる。履き慣れないサンダルの鼻緒が指のあいだに食い込み、その痛みだけが、私をかろうじて現実に繋ぎ止めていた。襖を開けると、座卓の前に白髪の剛田さんが正座していた。薄暗い和室の空気が、古い畳と、彼の身体に染みついた日向の匂いで澱んでいる。
「祭りのあとは、いつもこの部屋も草臥れますよ。ですが、こうして手入れをしていると、秋の名残が畳に沁みていてね」
彼が湯呑みを差し出しながら笑う。白い手拭いが首に掛けられたまま、深い日焼けの腕がゆったりと動いた。私は何も言えずに座り、熱い茶を一口含んだ。番茶の苦みが舌の上に広がり、古い畳の香りと混ざって、私の肺の内側をゆっくり満たしていく。胸の奥まで、彼の匂いに浸される。それだけで、朝からずっと乾ききっていた下腹の底が、じわりと湿りを取り戻していくのが分かった。
「あれから、若い男には会いましたか」彼は湯呑みを膝の上に置き、垂れ目がちの視線を私の手元へ落としながら尋ねる。笑っていない目が、畳の一点を見つめていた。
「週末に一度」
「身体は、いかがです。若い人と交わって、満たされましたか」
私は答えられなかった。唇を噛み、膝の上へ視線を落とす。座卓の隅には、祭りで余った紙袋が相変わらず置かれていて、その下から黒いガムテープの端がのぞいていた。私の下腹が、反射のように熱を帯びる。紙袋の陰から差し出された黒い舌が、私の股のあいだを舐め上げたかのような、淫靡な予感があった。
「答えないということは、満たされなかったということですな」
彼は穏やかな声で言い、茶を啜った。白い肌着の上から、厚い胸板が動くのが見える。胸元に散った小さなほくろが、呼吸に合わせて上下する。私は唾を飲み込んだ。大智君と過ごした夜、あれほど若い肌に包まれながら、私の膣は何度も空を噛んだ。剛田さんの太い肉茎の形を思い出して、内側の壁だけが千切れそうに収縮した。今、その男が目の前に座って、私の答えを待っている。ただそれだけで、下着のまんなかがじっとりと湿り始めているのを自覚した。腿の内側を汗が伝い、スカートの布地が肌にまとわりつく。
「会長さん、私は……」
「祭りの会計の話なら、もう済みましたよ。今日は、あなたの会計を締めに来たんでしょう」
彼が座卓を横切るように私の腕を取る。力は強くない。それなのに、私の腰はすうっと浮いて、彼の膝のあいだへ導かれていく。後ろから抱え込まれると、背中が彼の腹にぴたりとついた。服越しに、彼の身体の頑健さが石のように伝わってくる。年上の、畑仕事で鍛えられた男の体。若い男の、しなやかな筋肉とは違う、重量のある硬さだった。
「週末の女は、週末の男に飢えるものです。ですが、もう分かっているはずだ。若い肉では、あなたの奥の空洞には届かない」
耳のうしろで、低い声がやさしく響く。生暖かい吐息が耳の穴をくすぐり、背筋を細かく振るわせた。彼の指が、汗ばんだカットソーの裾から腹の上を這い上がって、ブラジャー越しに乳房の重みを持ち上げる。その瞬間、私の背筋が大きく反り、畳の上に爪が食い込む。声を殺そうとして、喉が小さく鳴った。下着の奥で、また粘液が溢れる。自分が濡れていく音が、彼に聞こえている気がして、耳の奥が熱く痺れた。
「あ……会長さん、お願い……今日は、その……」
「いやかね。なら、帰してもよい。無理に抱くことだけはしたくない」
彼の指先が乳首のあたりで止まる。触れるか触れないかの、膜一枚の距離。私の胸の先は、そこへ寄っていくように尖って、じんじんと痛いくらいに熱かった。帰りたい。帰れるものなら。けれど足は動かない。私の意思よりも先に、腰が彼の腿へすがるように沈んでいく。大智君の清涼な匂いも、夫の無関心な横顔も、すべてがこの座敷から遠い。ここには、私の身体の奥を正確に知る男がいる。それだけが、今の私を繋ぎ止めていた。
「……帰りません」
私の唇から、その言葉が落ちた。情けなくて濡れた声が、畳の部屋に吸い込まれていく。剛田さんは満足そうに鼻で笑い、私の汗ばんだ顎を振り向かせて唇を重ねてきた。舌が口腔へ入ってくる。煙草の苦みと茶の渋み。夫にも大智君にもない、厚みのある粘膜が私の舌を絡め取り、音を立てて啜る。れろ、ちゅ、と舌が口蓋を撫でる音が、私の耳のすぐ内側で粘りつく。鼻から彼の匂いが流れ込み、下腹の奥がどろりと蜜を滴らせた。腰のあたりが痺れて、私の手は、いつのまにか彼の作務衣の襟を握りしめていた。
「では、私の傍へ正座しなさい。下着だけ脱いで」
命令は柔らかいのに、身体の芯まで貫く。あの夜の、ガムテープを貼りつける前に、「動くでないぞ」と囁いた声とおなじ、低い、絶対の響き。私は彼の膝から離れ、畳の上で正座した。制服のスカートの下へ手を入れ、濃紺のレースを膝下まで下ろす。脚を抜くとき、陰部から糸を引く音がして、剛田さんが喉を鳴らした。白い腿の内側に、蜜が薄く光る。私は下着をぺたりと畳へ置いた。レースのまんなかは、すでに黒っぽく濡れて、輪郭がくっきりと浮き出ている。彼がそれを一瞥し、薄い笑いを口元に刻んだ。
「あなたという女は、毎週毎週、乳も肉も熱を帯びてここへ来る。家では、もう夫に触れさせているのか」
「いいえ……触れて、もいません。もう何年も」
「夫は惜しいことをしました。こんなに熟れた果実を、床の間に飾ったまま朽ちさせおって」
彼が浴衣の前を割り、すでに屹立した肉茎を露わにする。あの日よりさらに浅黒く見えるそれは、血管をいくつも浮かせ、亀頭の先を透明な液で濡らしていた。性器の匂いが、座敷の空気に滲む。私の膣が、見ているだけで奥から痙攣し始める。いやだ、と思う。けれど舌の根が甘く疼いて、口内に唾液が溢れる。喉が鳴る。私は、剛田さんの視線を受けながら、その場でスカートの裾をたくし上げ、露になった女陰の割れ目を彼の視線へ晒した。自分の指で、蜜に濡れた肉の襞を開く。ぬち、と音がして、中の白ピンクの粘膜が空気に触れてひくついた。
「……剛田さん、して、ください」
声が震えて、目の奥が熱くなった。まだ彼に触れられてもいないのに、私は泣きそうだった。彼は笑みを深くして、私の顎を持ち上げる。その指先には、畑仕事の固い皮が分厚くこびりついていて、顎の骨まで捕まえられる気がした。
「してほしいのは、私の何だ。言ってごらんなさい」
「……剛田さんの……おちんちんが、ほしいです」
口にした途端、身体じゅうの血が音を立てて沸いた。夫の前で一度も使ったことのない言葉。大智君にすら求められて拒んだ言葉。それを五十八の男の前で、私は濡れそぼった女の声で口にした。舌がまだあの卑猥な響きを覚えていて、口のなかがじゅわりと熱くなる。剛田さんは私の髪を撫で、畳の上へ仰向けにさせると、開いた脚のあいだに腰を下ろした。彼の陰茎が、私の露わな割れ目へ熱く押し当てられる。ぬちゅ、くちゅ……と蜜音が響く。亀頭が陰唇を割り、入り口を捏ねるように往復する。手を伸ばして、私の乳首を抓りながら、たいして濡れてもいない肉体がここまで過敏に反応するのか。頭の中はずっとぐしゅぐしゅの泥濘だった。身体の中が全部、性器になっていく。
「欲しがる女の穴は、こうも正直に口を開ける。挿れてやろう。今宵は、何度でも抜かずにやってやるから、心ゆくまで啼きなさい」
彼の腰が沈み込んでくる。ずぶり、ずぶりと、私の膣が音を立てて彼を根元まで呑み込んでいく。あの圧迫感。子宮の口を潰される重い衝撃。大智君には決して作れない深さで、剛田さんの肉茎が私の空洞を満たしていく。肉襞が千切れるかと思うほど拡張され、内臓を押し上げられる満腹感が、喉の奥まで突き上がってくる。私は唇を開けたまま空気を吐き出し、天井の木目がにじんで揺れるのを、畳の上から呆けたように見上げていた。ああ、帰れない。帰る場所はもうない。そう思うのに、膣の奥から湧き上がる熱は、背骨を溶かすほど甘かった。男の腰が動くたびに、畳の目が私の背中に食い込み、痛みと快楽の境目がぼやけていく。雨の気配が、庭の木を湿らせ、古い建具の隙間から冷たい空気を滑り込ませる。それでも、私の身体だけは、性器を中心に燃えるように熱かった。
夜の境内で抱かれたのは、その翌週のことだった。
「今夜は、神様の前で、己の身体を洗ってみるか」と剛田さんは唐突に言った。まだ朱い鳥居が夕闇に沈む、閉門間際の時刻。人気の消えた境内は、落ちた銀杏の匂いが石段の隅で熟れて、乳白色の月が本殿の屋根を青白い光で濡らしていた。私は彼のあとについて、湿った敷石を踏みしめた。下草に足を取られ、土と朽葉の匂いがスカートの裾から這い上がってくる。心臓が、遠くの祭囃子のように鳴っていた。
彼は拝殿の裏手、樹齢何百年もありそうな榧の木の根元に、あの黒いガムテープを敷いた。私は彼の指に導かれ、その上へ正座し、ブラウスを引き上げる。秋の夜気が、汗ばんだ背中と胸の谷間を舐めた。乳首が、寒さとは別の理由で尖っていく。剛田さんは白い手拭いを私の目に掛け、後ろで固く結んだ。
「光じゃ、眩しかろう。目を隠せば、私の手がよく見える」
視界が塞がれる。辺りは黒く塗りつぶされ、風と落ち葉の音だけが私の傍らに残った。彼の手の感触が鋭く膨張した。太い指が私の顎を辿り、唇を割って口内へ入ってくる。私はされたまま、舌を絡め、吸った。涎が顎先を伝うのが分かる。チュバ、と音を立てて指を吸い、彼は二本に増やした。交換条件のように私の口を犯し、次に飢えた根もとから豊かな房を取り出す。強い血の香りが、冷気の上にどろりと広がる。
「ほれ、この指が、今夜はお前の性器だと思え」
そう囁くと、彼は私の下着を裂くように下ろし、露わになった女陰へ指を差し込んできた。いきなりの挿入。しかし、そこはとっくに湯だったように熱い蜜で満ちていた。ずちゅ、ぐちゅ、くちゅくちゅと、自分の内側から鳴る水音が、耳を塞がれ、目を塞がれて、余計に鮮明に頭蓋へ響く。カエルの卵みたいに粘液が泡立つ感触。彼の指は、私の膣の浅い箇所、ざらついた襞の手前を執拗に擦り上げる。視界のない闇のなかで、その動きだけが、星のように鋭く光った。
「やっ……あ、あう……」
「声を抑えるでないぞ。ここは神域だが、お前の蜜で汚れた場所だ。神も今宵ばかりは目を瞑る」
彼が私の顎をくいと持ち上げる。ガムテープの匂いが、ひんやりと冷たい夜気に混じって、私の股のあいだから立ちのぼる。彼は指を引き抜くと、私を榧の幹に押し当て、片足を自分の腰に絡めさせた。露わな陰部に、彼の陰茎が押し当てられる。ぬぶっ、ずりゅ、と音を立てて、一息に貫かれた。
「この足りない穴に、若い男の肉棒では、夜通しでは到底済むまい。お前の身体はもう覚えておる。私の種をためるために開くことを」
彼の腰が、ゆっくりと、重い足踏みのように動き始める。そのたびに、樹の葉がざわめき、木の幹に私の背中が擦れて、シャツの繊維がめくれる。やがて抽送は激しく杭のようになり、私は地面に置いたガムテープの感触を足の裏に味わいながら、何度も身体の芯まで貫かれた。羞恥よりも絶望よりも先に、子種を絞り取られていく快感がのしかかってくる──頭の芯が冷たく痺れて、最奥だけが煮え繰り返っていた。着衣のまま、彼の太い肉竿に吊るし上げられ、何も見えないことが、私の穴の感度をいっそう鋭くさせる──二人分の荒い息と、粘液音だけが境内に重なり、やがて剛田さんが最奥でどぷん、と獣みたいな吐精を放った。温かいものが腸のほうまで溢れて、青い月が木の間から私の汚れた脚を白く照らしていた。
それからの週末は、決まって公民館の和室で過ごした。夫には祭りの片づけ、婦人会の寄り合い、近所の葬祭の手伝い。嘘はいくつでも浮かんだけれど、たぶん夫は私の不在に気づいてすらいなかった。私は週末ごとに、剛田さんに中出しされ、黒いガムテープで精液の蓋をされた。時にはその足で大智君と会い、若い抽送の最中に、奥のガムテープが糊を溶かして剥がれかける感覚を楽しんだ。楽しんでいる自分に気づいて、身体の芯がまた蠢いた。
十一月の終わり、吐き気が続いた。パート先のトイレで二度続けて戻し、洗面台の鏡に縋りついた私の顔は、妙に青白くて、なのに頬のあたりだけ火照っていた。胃の奥から込み上げる酸っぱい液が、喉を灼く。口を漱ぎ、跳ねた水が胸元に散る。検査薬を試す。窓に、くっきりと濃い線。付けた日付と結果とを赤い帳面の端に書き留めたとき、自分の唇が笑っているのに気がついた。夫の子ではない。大智君の子か、剛田さんの子かは分からない。けれど、どちらであっても構わなかった。むしろ、この腹に男の種が宿っているという事実が、私の身体を内側から満たし、ようやく自分という女を取り戻した気さえした。
十二月が過ぎ、年が明けた。夫との会話は数えるほどに減り、いや、数える必要さえなくなっていた。正月の雑煮を椀に盛りながら、箸を置き、私は静かに切り出した。大根を添えて、三つ葉を摘んで、汁を注ぐ。湯気が立つ椀の向こうで、夫はテレビの箱根駅伝から目を離さなかった。
「あなた、離婚してください」
彼が顔を上げた。テレビの音が、薄い居間を満たしている。夫は箸を置かず、椀を両手で包んだまま、しばらく私の顔を見ていた。私は泣かなかった。卵焼きの味付けだけが変わらない日々を、一枚ずつ皿へ戻すように、私は別れる段取りを淡々と進めていった。
「それは……おまえ、本気か」
「本気よ。私、もう決めてるの」
驚く夫を前に、私は茶碗を下げる手を止めなかった。洗い物をしながら、お湯が指先を痺れさせる。あの家を出るのだ。夫の書斎から漏れる動画の音も、エアコンの唸りも、すべて置いていく。養育費と住まいの保証を申し出たのは、剛田さんだった。彼は渋る風もなく、むしろ嬉しそうに役場の書類を揃えてくれた。その報いとして、私は週末の身体を捧げる。そう決めたとき、ようやく呼吸が楽になった。
三月初めの雨の日だった。私は軽い腹痛を感じながら、公民館の鍵を開けた。雨の音が軒先から滴り、薄暗い廊下の板張りをしっとりと湿らせている。建物のなかには、湿った木の匂いが充満し、それが、薄いコートに隠した火照った身体を冷たく包んだ。和室の襖を引くと、白髪の剛田さんが畳の上で待っていた。座卓には温かい茶と、黒いガムテープ、祭りで余った紙袋が並べられている。彼の白いランニングの上に、古い生成りのカーディガンが、行燈の灯りを柔らかく跳ね返している。私の知らない衣服を身につけていることが、奇妙なほど私を安堵させた。
「冷えるでしょう。さあ、お入りなさい。腹を冷やしてはいけない。あれは腹の子まで響く」
「……ありがとうございます。じゃあ、お隣、失礼しますね」
私は正座して茶を飲んだ。番茶の熱が胃のあたりをゆったりと緩めていく。雨音が屋根を叩き続けていて、この部屋だけが、世界の果てに浮かんだ小舟のようだった。飲み終えた湯呑みを座卓に置く。それから、私は自分で帯を解いた。指先は震えていなかった。むしろ、彼の前で帯を解くとき、下腹の奥が期待に疼き、下着がねっとりと湿っていくのを感じていた。
「今日は、どこまで孕んでいるか確かめよう。横になっていい」
私が己で床に身体を横たえると、剛田さんが胎のあたりを大きな手で優しく撫でた。腹と胸とを往復する手つきは、慈しむようでいて、獲物を品定めするようにも見える。私は目を閉じた。雨の冷えと、彼の掌の熱さ。芽の先が衣服の内側で固くなっている。
「十七年は、私のものですよ。この子が育ってからも、その奥まで私が通う。……不安かね、芳子さん」
「……いいえ。もう、あの家へ帰るほうが不安でした」
彼が喉を鳴らす。指先が私の下着へかかり、女陰の輪郭をなぞる。私は小さく脚を開いた。安堵に似た後暗さが、部屋の隅に澱んでいく。腹の奥がきゅうと痛み、それを包むように下腹が熱く血を巡らせる。窓の外では、春の雨がいよいよ強くなって、古い畳の匂いがむせ返るほど立ちこめていた。彼の舌が私の首筋に触れ、汗ばんだ肌を辿って胸元へ降りてくる。私の呼吸がゆっくりと間延びしていくのが、自分でも分かった。壊して、開いて、満たしてほしい。もう何も拒まない。私は自ら彼の首に腕を回し、厚い胸板へ唇を寄せ、服の上から小さく勃った乳首を擦りつけていった。
「……剛田さん、私、あの黒いテープの感触が、ないと落ち着かなくなるんです」
自分の口から、そんな言葉が滑り出る。夫にも大智君にも見せたことのない、とろりと蕩けた声だった。彼は低く笑い、私の下着を膝まで下ろすと、太い指を蜜で濡れた割れ目に沿わせ、ゆっくりと上下させた。指の腹が、腫れた陰唇を左右へ押し開く。私は息を吹き、腰を浮かせた。雨の音が、荒い自分の呼吸を隠してくれる。だから、声を出すのをやめた。代わりに、彼の名を何度も、吐息だけで呼んだ。
「存じておりますよ。今日は、腹の子を確かめてから、もっときつうに貼って差し上げよう。……今度は、目にもだ」
彼の口許が笑う。祭りで余った紙袋からガムテープを取り出す手際は、まるでお茶を注ぐのと同じくらい自然だった。それは白い歯を剥いて、しゅるっ、とテープが伸びる音を立てる。私の視界が、黒い粘着面で覆われていくのを心地よく思う。何も見えなくなるのが、恐ろしい…………それ以上に、安心だった。彼に預けてしまえる。身体も、心も、この暗闇ごと。雨の部屋で、私の熱い肉が、彼の指に開かれていく。ぴちゃり、ぬち、と自分の蜜音が耳へ届いた。恥ずかしかった。それなのに、胎の奥まで満たされる時間を思うと、喉の奥から熱い吐息が零れた。私の身体も心も、もう反抗を覚えていない。覚えていないことに、たぶんそれが、いちばん深い後暗さだった。
彼の熱が、また最奥へ沈んでくる。視界を塞がれた闇のなかで、私の知覚は彼の肉茎だけに凝縮された。硬く、熱く、脈打つ肉の杭。それが、子を宿した胎の入り口を何度も突き上げ、私のなかを白く灼いていく。視界の端で、いや、視界ではない。まぶたの裏で、黒いガムテープが、祭りの紙袋のそばから私を見ていた。子を宿した胎が、男の精で何度も温められる。雨音だけが、私たちの淫蕩な沈黙を包んでいた。
登場人物
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芳子 よしこ女性 ・ 43
外見: 胸の豊かさを隠すように染めた浅黒い茶髪を一つに結っていて、黒目がちな瞳はうつむくたびに悩ましい影を落とす。柔らかく丸みを帯びた腰回りと、つやを帯びた白い肌。身長は低く、手入れの行き届いた爪だけが女としての未練を語る。服装: 派手さを避けた生成りのカットソーに紺のカーディガン、七分丈の綿パン。下着は肌に食い込まないよう選んだ濃紺のレース。剛田に飼われてからは濃い色の薄手ブラとガーターベルトを仕込まれる。
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剛田 ごうだ男性 ・ 57
外見: 白髪の混じった硬い髪を無造作に短く刈り、深く日焼けした太い首から胸板にかけて小さなほくろが散っている。垂れ目がちの目は笑っていない。身長は高く、肩幅が厚く、腹だけがゆるみなく締まっている。手は畑道具の固い皮で覆われ、爪は短い。服装: 古びた紺の作務衣か、祭りのときの薄い色の開襟シャツにねずみ色の作業ズボン。腰に大きな鍵束を下げている。夏でも肌着は白いランニングで、首には白い手拭いを掛ける。
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井原大智 いはら だいち男性 ・ 27
外見: 汗ばんだ前髪を横へ流した黒髪、明るい茶色の目、締まった長身細身。運動部の名残が腕と太ももにある。肌は日に焼けず、鼻すじにうっすらそばかす。身長は芳子より頭二つ分高い。よく笑い、声が大きく、自分の汗の匂いを気にしない。服装: パート先の薄緑のポロシャツに黒い仕事用チノパン。帰り際は私服のパーカーか、夏なら半袖Tシャツ。移動は自転車で、胸元から先が湿っていることが多い。





