単身赴任の父が留守の一軒家で覆面強盗に襲われた三十九歳の母が息子の前で腰をくねらせ始めるまで
あらすじ
夏の金曜日、学校が早く終わった十四歳の文也が帰宅すると、見知らぬ覆面の男たちに羽交い締めにされた。リビングの奥では、黄色いエプロン姿の母が縛られている。男たちはスマホを構え、文也の目の前で優しいだけだった母を嬲り始める。逃げ場のない一軒家で、母の隠された身体が暴かれていく四時間。息子の見ている前で、母の口元は次第にほどけていく。
第1章 黄色いエプロンの染み

第1章: 黄色いエプロンの染み
玄関の鍵が開いていた。いつもの僕なら、それだけで嫌な予感がしたはずだった。でも、八月上旬の金曜日、正午を回ったばかりの日差しは、思考を焼ききってしまうほど強くて、僕の頭の中は早く冷たい麦茶が飲みたいという欲求だけでいっぱいだった。中学校の期末テスト前の短縮授業で、いつもよりも二時間も早く解放された体は、薄い白いポロシャツの下でじっとりと汗をかいていた。首筋に張りつく髪の感触が気持ち悪い。住宅街を歩く人影は少なく、セミの声だけがアスファルトの上に降り積もっていた。
玄関のたたきの上で、お母さんのパンプスが横向きに倒れていた。私物管理の几帳面なお母さんが、脱いだ靴をそんな風に放っておくのは、一年と少し東京に単身赴任しているお父さんに何度も注意していた身なりと重ねて見ると、余計に異様なことに感じられた。知らない男物のスニーカーが二足、無造作に重なるように落ちている。鼻を突くのは、家の中から流れ出る締め切った空気の中に混じった、かすかな油の匂い。昼食の準備でもしていたのだろうが、それよりも、人の汗の匂いが誰のものとも知れない気配としてそこにあった。心臓が一気に早まるのを感じながら、靴を脱ぐことも忘れてリビングへ続く短い廊下に足を踏み入れた。
「お母さん……?」
廊下の突き当たりのドアの向こうから、低い笑い声が聞こえた気がした。その瞬間、背後で床が軋む音がしたかと思うと、首の後ろに太い腕が回り、息が詰まった。後ろから羽交い締めにされた腕は鉄の棒みたいに硬くて、脇のあたりから汗とたばこが混ざったような大人の男の匂いがのしかかってくる。
「動くなって言ってんだろ、ガキが」
顎のすぐ上で聞こえた声は、若い男のものにしては妙に掠れていた。鼓動が耳の奥でガンガン鳴る。抵抗しようにも肩を極められ、足が床につかない。そのまま廊下を引きずられるようにして、見慣れた我が家のリビングへ放り込まれ、畳の匂いと一緒に顔から床に倒される。頬に触れたフローリングは驚くほど冷たくて、その冷たさだけが現実のものに思えた。
「ボウズ、来たぜ」
「おう、やっぱり早帰りだったな。A、ちゃんと足やっとけ」
若い男たちの声が頭の上で交わされる。彼らは互いをA、B、Cと呼び合っている。床に倒されたまま、目だけを動かして気配を追うと、台所のほうで何か銀色の物体が揺れた。包丁かもしれない。その光が視界の隅でちかちかと反射し、僕は喉の奥が締まるような思いだった。
視界の中で一番大きな影が近づいてきて、無造作に片膝で腰を押さえつけた。体重が背中にのしかかり、肋骨が床に擦れる。両手首を後ろに集められ、冷たく滑る粘着面が肌に触れてから、一気にきつく巻かれた。ビニールテープと違う、ざらりとした厚みのある粘着面。黄ばんで半透明のガムテープが、僕の手首の骨の上を遠慮なく締め上げていく。腿の後ろから小駁のような汗が伝い落ちた。
「ひっ……」
情けない声が出た。その声に反応するように、部屋の奥で何かが身じろぎする。恐る恐る視線を上げた先に、黄色が揺れていた。
お母さんだった。
白いカットソーに青いフレアスカート、その上からいつもの黄色いエプロンをかけた姿のまま、お母さんはリビングの奥の床に横座りの姿勢で縛られていた。ほっそりとした白い手首が後ろに回され、足首にも何重にもガムテープが巻かれている。口には白いタオルを押し込まれ、頬から顎にかけて汗が筋になって流れていた。セミロングの黒髪が乱れて顔の輪郭にはりつき、明るい茶色の瞳が大きく見開かれてこちらを見下ろしている。
その瞳が、泣き出しそうに揺れながら僕を映した。助けて、でも、それより逃げて、と、声にならない二つの叫びが同時に伝わってくるようだった。口元のタオルが、お母さんの呼吸に合わせて少しずつ湿っていくのが、この距離からでも分かる。首筋には玉のような汗が浮いていて、白いカットソーの襟ぐりはすでに湿って肌に透けていた。胸元の黄色いエプロンには、台所で何かを扱っていたときに跳ねたのだろう、乾いていない染みが縦にいくつも並んでいる。油と醤油の、まだ新しい匂いがかすかに届いた。僕はその染みを、倒れた視界のまま、真正面から見つめてしまった。あの黄色いエプロンを着たお母さんは、二時間前までいつも通りの、優しい笑顔で朝ごはんを片づけていたはずだった。
「お母さん……っ」
「うー……っ、ううーっ」
お母さんが首を振る。青いフレアスカートの裾が、床の上で花のように広がり、乱れた布の影から白いふくらはぎと薄い裏地がのぞいた。僕は無理やり目をそらそうとしたが、首が動かない。男の一人が靴底で後頭部を軽く押さえつけているのが分かった。
「親子仲良くご対面ってわけだ。あーあ、かわいそうにな、せっかく早く帰ってきたのによ」
顔の横で、長い足が床を蹴るように動く。しゃがみ込んだ気配がして、生乾きの制汗シートみたいな甘ったるい匂いが近づいた。
「おい、ボウズ、よく見えるか? お前のママだぞ。エプロンして、ああやって縛られてよぉ」
顔の脇に置かれた片手が、僕の額にかかった前髪をなぶるように払った。触れられた部分がぞわりと粟立つ。もっとよく見せてやるから、楽しみにしてな、と、声が笑った。男は覆面をしていた。黒いニットの覆面で、目のまわりだけが丸く落ちくぼんでいる。鼻の形も口元も分からない。声だけが若く、二十代半ばくらいに聞こえた。他の二人も似たような黒い長袖シャツに作業ズボンをはいていて、どちらも覆面越しに笑っているのが息づかいで分かった。
「A、こいつの足もやっちまえ。暴れられると面倒だ」
「へいへい。ったく、汗くせぇガキだな。部活帰りかぁ」
呼びかけられた大男が、無感動な調子で僕の両足首をそろえる。黄ばんだガムテープが何重にも巻かれ、足首同士が汗で滑りながら密着する。粘着面が肌の産毛を引っ張る痛み。腿が内側でこすれるたび、汗ばんだ皮膚とガムテープの固い縁が食い込んだ。三人は、僕を乱暴に壁際へ転がしたあと、まるで引っ越しの下見みたいな気配で家の中を物色し始めた。
「おい、二階は俺一人で見るから、Cは台所の小物を頼む。酒とか現金とか、置いてあっからよ」
「わ、分かってるよ。そっちは、ここ見張っててくれよな」
「任せとけって。なぁ、奥さん、旦那さんは今ごろ単身赴任中なんだろ? 通帳の暗証番号、あとでじっくり教えてもらうから、覚悟しといてくれよなぁ」
リビングの床から立ち上るのは、古い畳が吸い込んだ湿気と、食器棚の奥の乾燥剤の埃っぽさ。そして、お母さんのエプロンの染みから漂う油の匂い。台所で、何かが引き出しを開ける音、包丁立てが揺れる乾いた音が、やけに大きく響く。天窓から差し込む午後の光が、床に落ちた僕の影と、横座りのお母さんの横顔を照らしていた。光の筋の中で、小さな埃がお母さんの青いスカートの裾に触れては消える。
僕は壁際に転がされたまま、荒い呼吸を繰り返すことしかできなかった。額に張りつく前髪の下から、ぽたぽたと汗が畳に落ちる。視界の端で、お母さんの黄色いエプロンの胸元の染みが、息をするたびに僅かに膨らんだり縮んだりしている。その染みから、かすかに湯気のような匂いが立ちのぼる錯覚を起こすほど、部屋は締め切った暑さに満ちていた。母の腿のあたりに広がる青いフレアスカートの裏地は、表地よりも一段暗く、湿った空気を抱き込んでいるように見える。
二人が戻ってくる足音がした。リビングの椅子を引く音、卓上に重たい物が置かれる音が続く。顔を上げることさえできず、ただ視界を正面に向けたまま、ピンポン玉のように転がっている埃を目で追っていた。
「上がりはこんなもんか。こんだけありゃ、しばらく遊べるんじゃねえか」
「ぜんぜん足んねえよ。でもまあ、こいつと奥さんがいるから、楽しみはたっぷりあるわけだ」
乾いた笑い声が重なった。僕の背中に、三人分の視線が突き刺さる。冷たい床の上に長く俯せになったせいで、ポロシャツの前が床に張りつき、心臓の位置だけがひどく熱い。胸の下で、自分の鼓動が床を叩く音を聞きながら、僕は声を絞り出すことだけを考えていた。何か言わなくちゃ、助けを呼ばなくちゃ。でも、唇は金縛りにでもあったみたいに動かない。
テーブルのそばに立った影が、札束の端を指で弾く音がする。
「時間はたっぷりある。なぁ、奥さん。息子ちゃんと二人で、俺たちに付き合ってもらおうぜぇ」
その声を合図に、お母さんが絞り出すような声を漏らした。タオルに遮られた悲鳴は、部屋の空気を細く震わせるだけだった。覆面の男の一人が、エプロンのポケットから何かを抜き取るのが見えた。ハンカチか、それとも薄いレシートの束。布が引っ張られ、お母さんの身体が横に揺れる。黄色いエプロンの首にかかる紐が、白い首筋をぎゅっと食んだ。そこから先は、ずるり、と、何かが少し動く。目を離せなかった。目を離してはいけないと思う傍らで、見てはいけないという正体の分からない叫びが、喉の奥で震えている。天窓の光の中で、青いフレアスカートの裏地が汗で湿った床の上へ、ゆっくりと広がっていくように見えた。
第2章 スマホの撮影レンズ

視界の端で、Aがテーブルの上に置いた通帳を指先で二度、三度と弾く。まるでリズムを取るように。その乾いた紙の音に合わせて、僕の心臓も変な刻み方をしている。汗がこめかみを伝って、耳の裏へ落ちていくのがわかった。縛られた手首の後ろで、指先がじんわりと冷えていく。手足は相変わらずガムテープでがんじがらめにされたままで、足首に巻かれたテープの内側は、じっとりとした暑さで蒸れて、皮膚がふやけているような気持ち悪さがあった。部屋の空気はさっきよりもずっと重い。閉め切ったリビングに、台所から流れてきた揚げ油の匂いと、母の汗の匂いと、それから全然知らない男たちの体臭が、ゆっくりと混ざり合って、鼻の奥にへばりつく。
「B、ちゃんと撮れよ。最初の顔が一番いいんだ。女がまだ“母親”の顔してるうちに、がっつり記録しとくんだよ」
Aが顎をしゃくって、Bを促す。Bはもう黒いカバーのスマホを手にしている。端末が僕の目の前でゆっくり持ち上がり、横倒しに構え直される。通話のときとは明らかに違う、録画のための構え。見知らぬ男がうちの母親に向けるにはあまりにも自然な、手慣れた仕草だった。それだけで背筋がひやりとする。
Bの指が画面を二度タップした。赤い丸が、画面の中央で脈打つように光る。撮影が始まった。小さなランプが、僕にはあのガムテープの黄ばんだ色に似て見える。嫌なもの同士が、頭の中で次々にくっついていく。
Cが母の横にしゃがみこむ。華奢な体つきの男で、灰色のパーカーの袖をまくって、伸ばしかけの黒髪をてのひらで何度も押さえている。指先の動きが妙に落ち着いていて、それが逆に不気味だった。
「じ、じゃあ、お、俺は、こっちから……ママさんの、この白い肌に、さ、触らせてもらう、ね」
Cの声は湿っていた。どもりが強くて、語尾が唾液に絡まる。母の肩越しに手を伸ばし、口に押し込まれていたタオルを、指先でつまむようにして、するすると引き抜いた。白いタオルが母の唇から離れるとき、細い唾液の糸が一瞬伸びて、それからぷつりと切れる。母は顔をそむけて、咳き込んだ。何度も、苦しそうに、唾液を飲みこむ音が聞こえた。喉の奥がからからに渇いているのが見て取れた。肩が小刻みに揺れ、呼吸のたびに背中がぎこちなく上下している。解放された唇のまわりは赤く湿って、空気に触れた唾液が冷えてゆくのか、母は何度も唇をすぼめては震わせた。
「お母さん……」
声を出そうとして、僕は失敗した。喉の内側が貼りつくみたいで、空気がうまく通り抜けてくれない。母は僕の掠れた呼びかけを聞いて、ゆっくりと顔をこちらに向けた。汗で額に黒い前髪が張りついている。化粧っ気のない顔は、元は色白なのに、いまは耳のふちまで赤味が差していた。唇の両端が、ふるふると小刻みに震えている。泣き出しそうなのを、必死でこらえている顔だった。胸元の白いカットソーには、汗が細かく染みて、鎖骨のあたりから小さく波紋のように広がっていた。布が肌に貼りつくたび、母の呼吸に合わせて生地が持ち上がり、また沈む。汗の染みは、見ているあいだにもゆっくりと輪郭を広げていく。
「文也……、見ないで。お願い、こっち見ないで」
母の声は酷くしゃがれている。いつもの、あの柔らかくて少し甘い母の声じゃない。紙やすりで擦られたみたいにかすれて、耳の奥にまとわりつく。僕は首を縦にも横にも振れなかった。ただ、呼吸だけが速くなる。縛られた手首の後ろで、指先が凍えていくのがわかった。
Aが、母の後ろへ回った。大柄な影が、母の身体をすっぽりと覆う。太い腕を伸ばして、黄色いエプロンの背中側の結び目を指で探る。カッターを持ち上げた手が、紐のところで一度止まる。金属の刃先が、蛍光灯の光を反射して、ひときわ白く細く光った。
「奥さんよ、素直にしとけよ。ヘタに動くと、切っちまうかもしれねぇ」
Aの低い声が母の耳元に落ちると、母の肩がみるみる硬直していくのが見えた。首筋の汗が、ぶわり、と一度に浮き上がり、蛍光灯の下で小さく光った。Aはカッターの刃を少しだけ押し出す。シュッというよりカチッという、小さな金属音がやけに大きく鼓膜に届く。母は肩をすくめて、ぎゅっと目を閉じた。睫毛が濡れて、震えている。涙はまだこぼれていないけれど、目の縁に張りついた水滴が、光の加減でとろり、と揺れて見えた。首筋から胸元にかけて、皮膚の上を汗が一筋、つう、と流れていくのが、蛍光灯の下ではっきりと見える。母の胸が激しく上下して、白いカットソーの襟元が、はだけはしないまでも、呼吸のたびに大きく持ち上がった。鎖骨のくぼみに汗が溜まって、そこだけが陶器のように白く光っていた。次の瞬間、プチン、と繊維が断ち切られる音がして、エプロンの右側の紐が切れた。それから左側。黄色い布が、母の身体から力なく剥がれていく。首の後ろの紐がまだ繋がっているから、エプロンは胸元で斜めに垂れ下がった。あの黄ばんだ染みは、垂れた布のあいだに隠れて、もう見えない。
Aは切れたエプロンの紐を、指に二、三回絡めて、床のほうへぽいと投げた。それから、何も言わずに母の正面へまわると、片膝をつく。そして、手のひらを、そのまま母の白いカットソーの胸へ押し当てた。五本の指が、生地の上からゆっくりと沈みこむ。布越しでもはっきりわかる、乳房の厚み。柔らかそうというより、重たげな、弾力を帯びた量感。僕の知っている母の身体じゃない。母の胸は、あんなふうに男の手に押し潰されるためにあるんじゃないはずなのに。
「やっ……やめて……っ」
母は首を振った。後ろ手のまま、肩をよじって逃げようとしている。けれど、身体全体が拒んでいるようには見えなかった。腰のあたりが、わずかに床から浮いて、それからまた沈む。逃げるというより、逃げ場所を探しているみたいな動き。カットソーの胸元には、うっすらと汗の染みが広がり始めていた。布が肌に貼りついて、その下で母の呼吸が早くなるたび、胸の輪郭がむくむくと膨らんで揺れる。汗の粒が、耳のうしろから首の横を伝い、カットソーの襟の内側へ消えていく。母の全身が、皮膚のすぐ下で、小刻みに震えているのが、縛られていない僕の目にははっきりと映った。
Bが近づいて、スマホを母の顔のすぐそばへ持っていく。黒いレンズが、母の目をのぞきこむ。母は顔を背けようとした。逃げようとするたび、Cが横から首筋に顔を寄せる。
「お、奥さんの、こ、ここ、汗、すごい……ぼ、僕、こういう、じっとりした肌の匂い、たまんないんだよね……」
Cの舌が、母の首のつけ根を這った。カタツムリが這うような、時間を無視した、ぬるい動き。だらりと長い舌が、耳のうしろから鎖骨の上をなぞっていく。母の肩がびくんと跳ねた。喉の奥で、押し殺した声が潰れる。
「ひ、っ……」
白いカットソーの襟元から、汗の匂いが立ちのぼる。甘いような、塩辛いような、夏の肌の匂い。Cは目を閉じるようにしながら、鼻先を母の腋へ埋めた。脇の下に浮かぶ汗の粒を、舌先でちろちろとすくい取る。じゅる、という水っぽい音が、やけに近くで聞こえた。ぬちゅ、と唾液が肌に絡む、濡れた音。僕の太ももの裏が、勝手に強張る。
「ん、ぅ……やめ……っ、そこ、やめてください……っ」
母の懇願は、Cの耳には届いていないようだった。むしろ、声を出されるたびに、舐める角度を変えている。反応を確かめているのだと、その舌の執拗さで僕にもわかった。母は唇を結んで、声を殺そうとする。それでも、腋から腹のわきへ舌が下りていくと、眉根をぎゅっと寄せたまま、はぁ、と息が鼻から抜けていった。首のまわりから胸元にかけて、透明な汗の膜が広がって、蛍光灯の白い光をぬらぬらと反射させている。汗が腋の下から脇腹へ流れ、カットソーの脇の縫い目をすべって、腰のくびれに消える。しっとりと布に吸いこまれた場所は、肌色を透かして、薄闇の中でかすかに光っていた。
Aの右手が、カットソーの上で動いている。胸の下のほうから持ち上げるように、指先でゆっくりと円を描く。親指が、布の上から尖りを見つけて、そこでくるくると回す。母の身体が揺れる。乳首が、白い布を内側から押し上げているのが分かった。まるで、滑らかな表面に突然できた異物みたいに、こすれて盛り上がっている。想像のなかで、母の胸の先端が熱を持っているのが伝わる。僕は唾を飲みこんだ。飲みこんだけど、口の中がかえって乾いていく。
「やめて……っ、お願い、やめて……っ」
母は何度も首を振りながら、涙の混じった声で繰り返した。そのたびに前髪が乱れて、汗の玉が畳の上に飛び散る。母の太ももが、青いスカートの中できつくすり合わされている。スカートの裾がわずかにめくれあがり、内側の白い太ももに、てらてらと光る汗の筋が見えた。声はもう、悲鳴というより、息のつづきから絞り出すような、細い音だった。それなのに、胸のふくらみは、Aの指先の動きに吸い寄せられるように、汗で湿った布ごと、彼の手のひらの下でゆっくりと形を変えていく。
Aはしばらく無言のままだったが、やがて短く笑った。
「ママの身体、ずいぶん反応してるな。声を出さなくても、汗が、ぜんぶ教えてくれてるぜ」
母は、違う、誰も触ってない、何も感じてない、と、何度も首を横に振る。振るたびに、耳の横の髪が汗で張りついて、ゆらゆら揺れた。首を振る動きに合わせて、汗のしずくが飛んで、畳に小さな染みを落とす。
「やめて……、もう、やめて……っ」
声が痙攣している。だけど、身体はさっきから小さく跳ね続けていた。Aが胸から手を外すと、白いカットソーには指の形のしわがくっきり残っている。乳房の感触を確かめた手を離された途端、母がほっと息を漏らした。あからさまな安堵の吐息。その吐息さえ、Bのレンズは逃さなかった。母の呼吸は浅く乱れて、背中が上下に揺れるたび、汗に濡れた布が背骨の中心で細かく波打っていた。肌に張りついたカットソーが、肩甲骨の動きを隠しもせず、汗を含んで重たく身にまとわりついている。
Bが、スマホを両手で持ち直しながら、レンズ越しに母の脚をじっくりと狙いはじめる。青いフレアスカートの広がり、汗で額に張りついた前髪、必死に閉じられた太ももの内側の白さを、なめるようにフレームへ収めていく。カメラを回す男の指先は、妙にゆっくりとしていて、その粘りつくような視線がそのままレンズの動きになっているようだった。Bはしばらく無言で、ときおり舌先で下唇を湿らせながら、母の肌に浮かぶ汗のてかりを追った。
「息子ちゃんも、よーく見とけよ。あとでママの身体に、俺たちがたっぷり種付けするところ、最高の画角で撮ってやるからな」
Cがそう言って、母の腋の下に鼻を押しつけたまま、ひっそりと笑い声を漏らした。
「やめて……、や、あっ……くすぐったい、んぅ……! やだ……やめてよぉ……っ」
母の上半身がまた跳ねた。声が泣いている。笑っているようにも聞こえる。喉の奥から絞り出す声は、拒絶の形をしているのに、その輪郭は汗と涙で溶けて、もはや懇願なのか喘ぎなのか分からなくなりかけていた。膝は必死で閉じている。青いフレアスカートの裾が、床の上に広がっていた。青い布は汗と湿気を含んで、濃い色に沈んでいる。内側の裏地が、母が身じろぎするたびにちら、と見えた。白い太ももまで、あと少し。僕は、見てはいけないと思いながら、その青い布のあいだの暗がりから、目を離すことができなくなっていた。
Aが、母の後ろにまわって、素肌の腕を後ろ手のまま持ち上げた。母の背中がのけぞる形になる。汗に濡れた白いカットソーが、背骨の線に沿ってぴたりと張りつき、腰のくびれ、その下の丸みをやわらかく縁取っている。薄い布地が、浅黒く透けていた。母の背中は、こんなふうに汗で光るものだとは、知らなかった。布地が湿りを吸いすぎて、ところどころ肌のいろが浮きあがり、動くたびに汗の匂いが濃く立ちのぼる。生活のにおい、汗と体温と、淡い柔軟剤の残り香。その全部が、見知らぬ男たちの指と舌によって剥がされ、暴かれ、カメラに吸い取られていく。背中に浮いた汗は、蛍光灯の光を浴びて、まるで細かな鱗のようにまたたいていた。母の呼吸が深く沈むと、背骨の両側の筋肉が持ち上がり、汗が脇へ流れて、カットソーの裾から一滴、床へ落ちるのが見えた。
「やだ……、やめて、それ触らないで……っ」
「触っちゃいねぇよ。見られてるだけで、もう汗が止まらねぇんじゃねぇか」
Aの声は、さっきまでの威圧とは違う、馬鹿にしたような軽さで返った。母の腰が、そのたびに、逃れるように少しだけ浮く。浮いて、力なく落ちる。青いスカートの裾が、持ち上がりそうになって、また閉じる。その反復が、いやに扇情的だった。腿を閉じたまま、腰だけを浮かせるたび、太ももの内側の汗がスカートの影のなかで、てらてらと光るのが見えた。母は大して触られてもいないのに、呼吸と発汗と、それから声だけが、どんどん制御を失っていくようだ。Bのスマホの赤いランプが、呼吸するように点滅している。黒いレンズが、もう一度、母の真正面に回って、その涙のにじんだ目をのぞきこんだ。
録画が止まらない。僕は指一本動かせない。母の「やめて」は五度、六度、七度と、形と調子を変えながら、その小さな穴のなかに吸いこまれていく。それでも、その声がほんとうに拒みきれていないことを、汗に濡れた喉の震えが、痙攣する膝が、閉じきれない太ももの内側が、何よりも雄弁に語っていた。部屋の中に、女の肌を舐める音と、乱れた呼吸と、涙混じりの懇願だけが、重く、執拗に積み重なっていく。
第3章 破られた青いスカート

第3章 破られた青いスカート
汗で張りついた白いカットソーの襟元から、母の鎖骨が浮き上がる。Aの太い指が、その布地の真ん中をいきなり下へ引っ張った。乾いた繊維の裂ける音が、リビングの締め切った空気を鋭く切り裂く。ビリ、ビリリ、とカットソーの胸元がV字に破れ、こぼれ出た白い肌の上を、汗の粒が光りながら転がった。白いレースの下着が露わになる。思っていたよりずっと薄くて、布というよりも、肌の表面に張りついた影のようにさえ見えた。
「やっ……やめて、お願い、やめて……っ」
母は首を激しく振った。後ろ手に縛られた両腕を床にこすりつけ、少しでも後退しようとする。だが、Aの片手が母の肩を押さえていて、彼女の背中は床から数センチ浮いただけで、また沈んでいく。破れた布のあいだから、白い下着に包まれた乳房がはっきりと形を見せていた。鎖骨の下に溜まった汗が、細い流れになって谷間へ吸い込まれていくのを、僕は三メートルも離れていない場所から見ていた。
「ほら、B、そのスカート、たくし上げろ。青いのは裾をまくるのが似合うんだよ」
Aの声に、Bが鼻で笑う。Bはしゃがみこむと、青いフレアスカートの裾を両手の指先でつまみ、ゆっくりと、持ち上げた。布がすれる音が、サラサラと耳のすぐ近くで聞こえたかと思うと、次の瞬間には、母の太ももが、太いところの半ばまでさらけ出されている。白くて、むっちりとして、汗の膜に覆われて、蛍光灯の光をぬらぬらと照り返していた。
「やめて……、スカート、戻して……、お願いだから……っ」
母の声は水の中で喘いでいるみたいに途切れる。Tシャツの破れた胸元だけじゃない。スカートの裾をまくられ、下着がほとんど見えている。母は両足を必死で閉じようとするけれど、Aが片膝を割り込ませているから、太ももをきちんと閉じることができない。開かれた脚のあいだで、白い下着が汗で湿って、うっすらと肉色に透けている。その中心には、どことなく黒ずんだ縦の線が浮いているように見えた。見ているだけで、こちらの喉の奥が痙攣する。
Cが後ろから手を伸ばし、Aの破いたカットソーを肩から引き剥がす。衣擦れの音と、乱れる黒髪。母の右の乳房が、白い下着の脇から半分ほどはみ出し、柔らかく揺れて、布の上から乳輪の淡い茶色が垣間見えた。Cの細長い指が、その乳首を探し当て、下着の薄いレース越しにかりかりと爪を立てる。母の背中が痙攣した。
「う、あっ……や、そこ、やめ……っ」
Cは無言のまま、指先だけで乳首を摘み、ゆっくりとこねる。親指と人差し指のあいだで転がすたび、布越しの肉粒が硬くなっていくのが、はっきりと分かった。母の呼吸が鼻にかかる。は、は、は、と喉の奥から空気が漏れる。カットソーはもう完全に背中から剥がれて、片袖だけが縛られた腕に引っかかり、白い下着のままの上半身が露わになった。背中には髪の毛が汗でへばりつき、腰のくびれには、下着のゴムの跡が、くっきりと赤い線になって残っている。
「きれいな肌してるなあ、奥さん。三十九に見えねぇわ」
Aは腰をかがめ、まるで品定めをするように、母の腹や胸をじろじろと眺めた。口元には笑みがある。僕にはその表情が、昼前に台所で、買ってきた魚の鮮度を見るお母さんの横顔と、一瞬重なって見えた。手が、白い下着のゴムの下にするりと差し込まれる。母の腰が、びくんと浮いた。
「いやっ……! そこ、やめて……、指、入れないで……っ」
「うるせぇな。身体は素直に、おめこの中、とろとろにしてんじゃねえか」
Aの指は、下着をずらして、その下の、黒い毛の茂みのなかへ沈んでいく。何度か、くちゅ、と小さな水音がした。腕の動きに合わせて、母の腰が揺れる。顔をそらし、唇を噛みしめ、眉をひそめているのに、太ももは、かすかにAの腕を甘噛みするように震えていた。視界の中で、母の腹が波打つ。その様子を、Bのスマホが斜め下から舐めるように撮っていた。レンズの先が、母の下着の中に入っていくAの指、吐き出される白い肌、閉じかけた膝のあいだの影を、ひとつずつ、順番に捕まえていく。
「あっ……、ん、や、やめ……っ」
母の声が、どんどん小さくなる。声量じゃなくて、輪郭が崩れていく。子音が溶けて、母音だけが涎みたいに糸を引く。Aは指を増やしたらしい。くちゃ、くちゅ、と粘っこい水音が、汗と悲鳴で満ちた部屋の空気のなかを、妙に涼しい顔で突き抜けていく。下着の中に、Aの太い指が二本、いや三本近くまで、白い手袋をしていないむき出しの手で押し入っている。内側から鳴らされている音だ。あれは、母の身体の音だ。
「き、きもちいいんだね、ママさん……すっごい、溢れてる……、お、俺、こういう、白くて柔らかくて、いやらしい人、大好き」
Cが、ねっとりした声で耳元に囁く。母の首筋を、また舐めた。べろり、と長い舌が下からあごまで這う。舌の表面のざらつきが、湿った肌の上をすべる。母は涙をいっぱいにためた目で、それでも、何でもない方を見ようとして、視線を天井へ泳がせた。そこには、いつもの、夕飯時の明かりを照らす、何の変哲もない照明があるだけだ。
Bが、母の下着にかかった指を、ゆっくりと外させた。代わりに、スカートの腰ゴムに手をかける。
「下着、脱がすぞ。B、脚、持ってろ。C、ガキの顔、こっち向けさせとけ」
Aの指示に、Cが僕のあごを後ろから掴んだ。汗ばんだ手のひらの熱が、輪郭にそって伝わってくる。顔をそらそうとしても、Cの指先が僕の耳の後ろに食い込み、額の汗がその指を滑らせた。視界の中心に、母の下着が、膝のあたりまで、ずり下ろされていく。腿の内側に、濡れた布がすべった筋が、細く白く光った。
そのときだった。僕の目が、母の女の部分を、まともに捉えてしまったのは。
頭のどこかで、見てはいけない、と叫ぶ声がした。これは、見ていいものじゃない。お母さんの、あんなところを、こんなふうに、あいつらの手で暴かれた姿を、僕が見ているべきじゃない。眼球を動かすな、まぶたを閉じろ、視界を床へ逃がせ。耳の後ろでCの指が笑っているような気がした。僕に、ちゃんと見せてやろうとしている。逃がすまいとしている。顔をそらそうとした。けれど、首はCの指に固定され、それ以上に、僕の眼球は、お母さんの股間から、微塵も動くことができなかった。目をそらしたいのにそらせない。悪いことだと分かっているのに、全身の血が、目の奥に集まっていくのが分かった。心臓が、喉の真後ろで、早鐘みたいに鳴っていた。
母の下生えは黒く、湯上がりのように縮れていて、奥の方は乱れて腿の付け根にまで、うっすらと広がっていた。汗と粘液を含んだ陰毛が、蛍光灯の下でぬらぬらと濡れ光り、一房ごとに、ねっとりと肌へ張りついている。恥丘は汗と愛液でてらてらと濡れ光り、大陰唇のあいだからは、透明に近い液体が、糸を引いて太ももの内側へと垂れはじめている。その下で、びらびらと伸びた小陰唇が、大陰唇のあいだから舌のように覗いていた。黒ずんで、しわの寄った、牡蠣のヒダのような肉が、空気に触れてひくひくと動いている。母の、女のところ。産まれたときから僕が知っている、いや、知っているつもりだったお母さんの身体の、僕が一度も見たことのない部分。それが今、僕の目の前で、知らない男の指がかき混ぜたせいで、とろりと蜜を垂らしながら、濡れた花弁を開いている。
僕の下腹が、熱くなった。制服のズボンのなかで、ペニスが反り返って、先端を布にこすりつけていた。痛いくらいに硬い。それなのに、目が離せない。離しちゃいけない、離したら、もっとひどいことになる、と僕のなかの変な部分が言い聞かせている。母の、あの、びらびらした肉が、濡れた陰毛が、頭にこびりついて焼きついて、まぶたの裏にまで張りついている。お母さんの、女のにおいがする。生暖かくて、塩辛くて、海の底みたいな匂いが、鼻から肺の奥を満たしていく。ペニスが、ズボンの前を押し上げて、じんじんと痛い。見てはいけないという気持ちが、勃起をいっそう強くしていた。こんな自分が、吐きそうなくらい嫌なのに、痛いくらいに気持ち悪いほど、僕のペニスは、母の濡れた割れ目を見て熱くなっている。
「あ、や、見ないで……、文也、見ちゃだめ……っ」
母が、喉を潰したような声を出した。僕の目玉ごと、この光景を押し込むように、Cは指を緩めない。むしろ、あごを上向きに直して見やすくする。足首のガムテープで縛られたままの僕は、ソファの脚にもたれかかるようにして、うつ伏せに転がっている。床にこすれた頬が痛い。だけど、それ以上に、目の前の母の陰部から、どうしても視線を外せなかった。
「奥さん、すげぇ濡れてるじゃねえか。ほら、B、ズームだ、ズーム。おまんこがよだれ垂らしてるとこ、ちゃんと撮れ」
「へへ、言われなくても撮ってるって。アップにすると、ほら、中がひくひく動いてらぁ」
Bの声は、楽しそうに上ずっていた。レンズが、母の脚のあいだに近づく。匂いまで吸い取られそうな距離。僕は、母の股間から立ちのぼる、初めて嗅ぐ匂いを感じていた。塩気のある、発酵した果実のような、血と汗と水が混じった、強くて、深い、生物の匂い。それが空気に溶けて、僕の鼻の穴の奥をなぞる。甘ったるいような、生臭いような、でも、なぜか、目を背けられない魅力のある匂いだった。
Aは、長袖シャツを脱ぎ捨て、黒い作業ズボンの前を寛げた。下着を押しのけて、露わにした。自分の陰茎をしごきながら、白い腹を揺らして、母の脚のあいだに位置を取る。存分に熟した肉塊のような、太くて、赤黒いそれが、母の陰部に近づく。先端から透明な汁が垂れ、恥丘の毛を濡らした。Aの腰が、ゆっくりと、しかし、ためらわずに、前へ進んだ。
「や、やめて……、挿れないで……、せめて、せめて文也の前で……、それだけは……っ」
母の声が、今までで一番鋭く響いた。抵抗の言葉が、涙でふやけて輪郭を失っている。両足を閉じようとするけれど、Aの膝とBの手に、太ももを左右へ広げられていて、力が入らない。むしろ、開かれた脚の中心が、Aの腰を招くように、小刻みに痙攣していた。赤黒い肉棒の先端が、大陰唇のぬめりに触れた。その瞬間、母の腰が、自分から、上へ、ほんの少し、浮いた。
「奥さん、嘘つき。身体はここまで準備してるくせに、何がやめて、だよ。口の周りだけ抵抗しても、おまんこは、もう俺のを咥えたくてひくひくいってるぜ」
Aは、母の耳元に低く言葉を落とすと、自分の唾液を手のひらに受けて陰茎に塗り込み、あてがった亀頭を、上下に、数度、こすりつける。ぬちゃぬちゃ、ぬぷ、と、肉と肉が唾液で滑り、濁った音を立てた。そのたびに、母の全身が波打つ。声にならない声が、唇のあいだから漏れる。Bのカメラが、その結合部を、ひたすら映している。
そして、Aの腰が、一気に、沈み込んだ。
ぐにょり、と、中身の詰まった肉の管を押し広げるような、いやらしい重さの音がして、赤黒い肉棒が、母の膣へ、ずぶずぶと潜っていく。僕は、あれが母の中に入っていく瞬間を、まばたきもできずにいた。あれほど太いものが、母の下腹の奥に、どんどん飲み込まれていく。母は、口を開けて、声を、一瞬、失った。それから、喉の奥を灼かれたみたいに、かすれた息だけが、ひゅう、と洩れた。膝が震えている。Aは、根元まで、遠慮なく、一息に挿入する。ねばっこい肉壁が、赤黒い陰茎を絡みつくように、ぬぷぬぷと音を立てながら食い締めている。
「は、あ、ああ……っ、あ、ん、う、そ……、なに、これ……っ」
母の口から、もう、拒絶の言葉は出なかった。形だけの「やめて」も、自分の耳に届くうちに、喘ぎへと翻訳されていく。Aが腰を退き始めると、ぬかるんだ水音が、リビングにこだまし、ふたたび突き入れられると、母の背中が床に押しつけられ、破れたカットソーの下で、汗にまみれた背中がのけぞる。太ももの肉が、Bの手の中で揺れる。青いフレアスカートは、腰の上で乱れた蔦のように丸まったまま、擦れて、ずる、と横に滑っていった。もう、布の青さは、母の太ももに食い込む残骸でしかない。
「ぎゅうぎゅう締め付けて、奥さん、すっげぇ、おめこの中、とろとろに溶けてるじゃねぇか。さっきまで、普通のよその奥さんみたいな面して、よくこれだけ準備できるよなぁ」
Aは、腰を打ちつけながら笑った。肉のぶつかる音が、ぱん、ぱん、と乾いて、それから内側の肉がしゃぶりつく水音が、ねちゃ、ねちゃ、と追う。母の乳房が、破られたカットソーのあいだから、白く重そうに揺れる。Cが、その乳首を、指でつまみ、ひねり、引っ張る。乳輪のしわが寄って、先端が固く膨らむのが見えた。乳首はもう、下着の上からでもわかるほど、つんと尖っている。
「あ、あっ、ん……、あ……、や、これ、やだ……、きもち……っ」
母の声が、涙声のまま、熱を持った。首を振る。額に張りついた前髪が、汗で重たげに垂れ、顔の動きに合わせて大きく振れる。首を振っているのに、腰は、Aの抽送に合わせて、かすかに、浮いては、揺られていた。床にこすれた背中がくの字になる。白い指は後ろ手に縛られたまま、虚空で何かを掴むように、開いたり閉じたりしている。入り口の肉が、肉棒の出入りに合わせて、めくれ、追いすがり、よじれて容赦なく引きずり出されるように靡いている。母のあそこは、もう、涙と汗と、自分の中から溢れ出た粘液で、扱いのいい性器そのものだった。
「文也、見ちゃだめ……、見ないで……お願い……っ、見ないで……、ん、あ、ああ……っ」
母は、それでも、僕の名前を呼んだ。涙で光った目が、一瞬だけ、確かに僕を見た。そして、次にAが奥へ突き込んだとき、母の口から、泣きじゃくるような、それでいてどこか甘い、長い声が上がった。全身がふるえて、腰が、自分から、少しだけ、Aの肉棒を咥え込むように沈んでいった。
僕のペニスは、ズボンのなかで、母のその声を聞くたびに、びくん、びくんと脈を打っていた。先端から、ぬるりとしたものが滲んで、下着を湿らせていくのが分かる。最悪だ。母が犯されているのに、お母さんが、あいつに、奥の奥まで貫かれているのに、泣いている顔を見ているのに、僕は、自分の股間が、痛いくらいに張りつめているのを止められない。あの、びらびらした陰唇が、赤黒い肉棒を呑み込むたびに、巻き込まれて、吸いついて、ひくひく震えている。濡れた陰毛が、汗で黒々と光って、母の白い腹に貼りついている。目をそらしたいのに、そらせなかった。そらすたびに、もっと見たくなった。悪いと分かっているほど、僕の視線は、母とAのつながった場所に、釘づけになった。
母の膣口が、濡れた花みたいに開いて、しわしわの唇を、太い肉棒に吸いつかせている。その姿は、どこまでも現実で、生々しくて、なのに、まるで、深い沼の底から差し込む光みたいに、僕の目の前から離れなかった。汗と精液の混じる匂いが、濃く、部屋を満たしはじめていた。
第4章 母の「ごめんね」

Aの腰が、母の中でゆっくりと円を描いた。角度を探るように、深く、意図的に。それは単なる抽送ではなく、内側の柔らかな襞を抉じ開けて、まだ誰にも触れられていない場所の形を確かめるような、ねっとりとした動きだった。青いフレアスカートも下着もとうにはぎ取られ、床に敷かれた黄ばんだエプロンの上で、母は白い肢体をあらわにしている。あれからもう、どれくらい経ったのか。僕の時間の感覚は、すでに壊れかけていた。壁掛け時計の針の音だけが、耳の奥で、チク、チク、と針金みたいに痺れている。Aが突き入れるたび、母の太腿の内側がびくりと揺れ、薄い汗の膜で光った。結合部は唾液とは違う粘度で溢れ、ぱちゃ、ぱちゃ、と、生温かい音が床の近くで弾けている。Bのスマホの赤い録画ランプが、その音に合わせて呼吸するように脈打っていた。
「んぅ……っ、や、やめ……あ……っ」
母の声は、もうさっきまでの悲鳴ではなかった。喉の奥に熱いものが詰まっているような、細く、子犬が喉を鳴らすのに似た、悲痛なのに甘い音。Aが覆面の向こうで、浅く荒い息を吐く。骨盤が母の尻に当たるたび、横に広がった青いスカートの残骸や白いカットソーの破片と一緒に、フローリングの上で汗が飛び散った。午後三時前の家の中は、西日が差し込む前の、白く鈍い熱気で満たされている。
「おら、どうしたママ。痛いだけか?」
Aが母の片足の太腿を抱え込み、覆面の下から低い声を落とした。足首にはまだガムテープが巻かれたままだ。黄ばんだ粘着面が、汗と床の埃と、飛び散った汁を吸って、だらしなく剥がれかかっている。母は首を振った。ちがう、そうじゃない、と、振り乱した黒髪が濡れた頬に張りついた。
「っ、ひ……あ、あなた……文也を……文也に、見せないで……」
「見せないで、じゃねえよ。息子ちゃんに見守ってもらってるから、ママはこんなに濡れるんだろうが。ほら、まだ吸い付いてくる」
Aが腰を引いて、勢いよく突き入れた。にちゃにちゃにちゃ、という粘っこい水音が、リビングの中心でやけに大きく鳴る。母の声が一瞬、空気になって消えた。口を大きく開けたまま、腹部が弓なりに反り返り、白い喉が天井を向く。そのあいだ、Aは容赦なく子宮の奥を叩いた。僕には見えなかったけれど、母の胎の一番深い場所を擦り上げているのが分かった。母の脚が、力なくAの腰のあたりにすがりついて、それから、はた、と床に落ちる。足首のガムテープが、床を擦って粘着音を立てた。
Aの責め方は、他の二人とは明らかに違っていた。彼は体そのものよりも、言葉で母を追い詰めていく。覆面の奥から注がれる視線と、耳のすぐ傍で囁かれる低い声が、母の皮膚の上をざらりと這い回るようだった。
「チンポ、奥に当たってるぞ。奥さん、顔に書いてあるぜ。痛いってより、きてるんだろ。なあ、息子ちゃんの前で、どうされちまったか、ちゃんと言ってみろよ。お前のその口、なんのために付いてるんだ。喋るために決まってるだろ」
母は、だらしなく開いた唇から唾液の筋を垂らしながら、ふるふると首を振る。その頬を、Aの大きな掌が覆う。指先が、こめかみから顎の骨をなぞり、逃がさない、とばかりに固定した。
「ほら、言えって。息子ちゃんに聞かせてやれよ。お母さんのオマンコ、今、知らない男のチンポで、こんなにぐちょぐちょにされてて、気持ちいいですって。な?」
「や……いや……そんな、こと……」
「隠すなよ。ここ、見てみろ。お前の奥、もう俺の形に馴染んでるぜ。子宮の入口がべっこり開いて、吸い付いてきてる。旦那のチンポじゃ届かなかった場所だろ。違うか?」
Aの声は、押しつけるように低く、ゆっくりだった。一語一語が、母の皮膚の上に落ちて、じわじわと染み込んでいく。耳という穴から侵入して、身体の内側で卵みたいに腐っていく言葉。母の睫毛がいっぱいに開かれ、瞳の奥で何かが揺れる。その度に、膣の入口がきゅうっと窄まって、男根の根元に白い泡が咲く。恥ずかしさが、身体の中では快感に変換されている。僕は、母の肛門から伝わる細かい痙攣が、Aの言葉の強さに比例して激しくなっていくのを、はっきりとこの目で見た。
「や……うご……っ、動い……ああ……!」
自分から強請りかけて、恥ずかしさに耐えかねたように、母は途中で言葉を噛んだ。あごが震え、乱れた黒髪から覗く耳の淵が赤く熟れている。Aは「いいぜ」と短く笑って、腰の回転を速めた。部屋の空気が、男の汗と女の粘膜が混ざった生っ白い匂いで濁る。皮膚と粘膜の触れるところから、ちぢ、ちゅぷ、と細かい泡の潰れる音がした。蛍光灯の光が、母の股間で銀色の糸を反射させている。あれが母の愛液だと思うと、悪寒に近いものが背筋を駆け上がった。だがそれとは逆に、自分の股間のあたりが夕立の前のようにむず痒く熱を持つのを、僕は認めないわけにはいかなかった。
Aが突然、母の右脚を高く持ち上げた。真横に、無理矢理に。関節のきしむような角度まで押し開いた、その向こうに、赤暗く腫れた割れ目が僕の目の前に晒された。内側の肉が、しっとりと表へめくれている。濡れに濡れた陰毛が、ひくひくと脈打つ粘膜とともに、強い匂いを発していた。甘いような、生ぐさいような、海の浅瀬を掬ったみたいな匂い。鼻の奥をねっとりと舐められるようで、息を止めても匂いは消えない。彼は腰を深く留めて、わざと中で膨張している場所をこすり回した。
「ん、く……ぅん……ふゃああっ……!!」
母の首がのけぞる。がくがくと全身が痙攣し、腹の皮が細かく波打った。腰が浮き上がり、空中で数回、白い腿が痙攣する。膣の入り口が物欲しそうに男の根を咥え込み、奥の奥まで飲み込もうとしているのが見えた。Aはしばらく突き込んだまま、痙攣する母の全身を味わうように、ゆっくりと腰を回した。捻るように、子宮の縁を擦るように。
「イったな。かーわいい声出して、イったんだってよ。息子ちゃん、今の見えたか? これがてめえの母親の本当の姿だぞ。お前を産んだところが、他人のチンポねじ込まれて、泡吹いて笑ってる。よく見とけよ」
Bがぼそりと言って、画面を母の顔へ近づけた。うっとりと弛緩した顔の真ん中に、黒いレンズが沈んでいく。その頃にはもう、母の口元から力が抜け、半開きの唇のあいだから白い息が、とろりと漏れ続けていた。汗で髪が頬に重く貼りつき、白いカットソーの破片は片方の肩からずり落ちて、汗の玉が胸元の谷へ滑り落ちる。喜びとも諦めともつかない表情。あれは僕の知っているお母さんの顔とは、目の枠組みだけ同じ、別の女の顔だった。
Aが、ふいに、腰の動きを止めた。まだ繋がったまま、母の肩に手を置いて、自分の額の汗を手の甲で拭っている。肩で息をしながら、Bのほうへ顔を向けた。
「ちょっと休憩すっか。このまま続けたら、お前の番、回す前にバテちまう」
「だな。水分でも取らねぇと。喉カラカラだわ」
Bがスマホの位置を直し、録画は回したまま、近くに落ちていたペットボトルの水を拾い上げた。口元の覆面をずり上げ、半分むき出しになった口へ、冷えた水を流し込む。Aも同じようにして、長い腕を伸ばして、テーブルの上にあったスポーツ飲料のボトルを取った。Cはというと、台所のほうから、食器棚の音をごそごそさせ、母が朝に使ったらしい茶色いマグカップを持ってくる。中で氷がからん、と軽い音を立てていた。
「あ、あ、厚さで喉やられると、昼からが、き、きついからな。塩分、と、とったほうがいいんだよ。お、お前ら、汗かいたら、ただの水じゃ、逆に、つ、疲れるぞ」
Cが、吃りながら、妙に理屈っぽく言う。Aが短く笑った。
「おまえ、そういう知識だけは一人前だよな。高校で習ったのか?」
「バ、バカにすんなよ。生き延びるための、き、基礎知識だって。サバイバル。わ、分かるか? 会話の流れで、こ、呼吸を整えるだろ。一回、ま、ったりするのが、長丁場のコツなんだよ」
Bが、おかしそうに息を漏らした。
「休憩に理屈はいらねえだろ。でも、Cの言うとおり、五時までに仕上げようと思ったら、最後まで足腰もたせねえとな」
三人は、母の裸体を囲んだまま、おのおの飲み物の蓋を捻り、しばし汗を拭いていた。Aが、母の背中を軽く蹴りみたいに押して、仰向けから横向きへ転がす。母はなされるがまま、腕を投げ出し、顔の横で濡れた黒髪が一束、ゆるく広がった。その胸の膨らみ、引き締まったはずの腹回り、太腿から流れ落ちたものが床に小さな水たまりを作っている。
「逃げようなんて思うなよ。どうせ、手足まだ縛ってんだ。ついでに言っとくが、表の戸は全部、内側からつっかえ棒までしてあるからな」
Aが、汗で湿ったタオルを首に当てながら言った。母は返事をしなかった。ただ、荒い息を整えながら、目だけを窓のほうへやる。閉め切られたカーテンの端から、外の明るさが細く漏れていた。
僕はそのとき、ふいに、自分の呼吸が母の呼吸と揃っていることに気づいた。浅く、速く、肺の奥まで酸素が行かない。腕のしびれを確かめるふりをして、畳からはみ出たフローリングの感触を、手のひらで押す。汗でぬるついた木の表面から、じんわり熱だけが返ってくる。頭の芯はどこか冷えているのに、身体だけがまるで夏の陽に当てられたみたいに熱い。Bが水を飲む喉仏の動きを見る。丸い水滴が首筋を伝い、Tシャツの襟へ吸い込まれていった。
そうしているあいだ、Cがスマホの画面を何度も再生して、録れているか確認していた。小さなスピーカーから、母のさっきの声が流れ出す。くぐもった「やめ……あ……っ」が、室内に逆再生され、空気をぞわりと逆撫でする。
「お、音もばっちり。泣き声のところ、震えてて、い、いい感じだよ。も、もう一回、正面からアップで、い、行けるな。ま、まだ容量あるし」
Cは満足そうに頷いたが、その横で、Bが急に真面目な声を出した。
「なあ、この奥さん、さっきから俺が触ると、びくってなるくせに、自分から腰浮かせてくるよな。体、絶対、もう出来上がってる。男の気配に素直な女だわ」
「そうだな。つっても、普段、こういうことされてねぇって顔してるのが、また、そそる。綺麗に畳んである洗濯物、ちゃんと三つ揃えだし。真面目に暮らしてる感じが、逆にな」
Aが、自分の腹まわりの黒いシャツをまくり上げ、汗を拭きながら言う。空調を止められた室内で、三人分の男の体臭と、女が流した汁と、床の油の匂いが、ゆっくりと、おそろしく濃密に混ざっていく。
「にしても、だ。三人がいっぺんにやるのは、さすがに初めてだわ、俺。準備しといて正解だったな。潤滑も、あれだけありゃ安心だ」
Bが、片手で空のペットボトルを器用に弄びながら、母の尻のあたりを見下ろした。ワセリンとサラダ油の入り混じった光沢が、閉じた窪みと、濡れた陰毛の奥で、ぬらぬらと輪郭をなぞる。母は、男たちの視線に晒されているだけでも、足の先をまげて、太腿を内側にこすり合わせた。息を殺しているつもりなのだろうが、唇の隙間から、熱い吐息がこぼれる。
「おばさんの耳、真っ赤だな。聞こえてんのに、寝たふりすんなよ。起きて返事しろって」
Bが、母の耳たぶを指先で摘み、かるく引っぱった。鼻先が、蒸れた髪の匂いのなかへ埋まる。母はびく、と顎をくっと挙げて、それから初めて、はっきりした声を出した。
「……お願い……文也を、別の部屋へ……せめて……見えない場所に……」
その声は思いのほかしっかりしていた。痛みと泣き声で擦り切れたはずの喉から、芯のある母の声が出た。Aは、軽く鼻で笑った。
「何言ってんだ。こいつが友達ん家にでも駆け込んだら、俺らが困るから、ここにいさせてんだ。保護者の見てる前で、お前がイッてるとこ、スマホに撮られてるほうが、あとあと役に立つんだよ」
「それに、奥さんが、さっき、あれだけ可愛い声で鳴けるの、息子の視線があったからだろ。俺、見てたぜ。お前、ガキのほう向いて、声噛み殺したとき、余計、腰が動いてたからな」
Cが、細い指でリモコンみたいにスマホを握りながら、吃りを低く押し殺して言った。そのとたん、母の睫が、濡れた束ごと伏せられた。唇が、何か言おうとして、結局、開いただけで閉じられない。髪のあいだから覗く首筋に、じわりと汗が滲む。部屋の空気は、ぜんまいが巻かれていくように、ゆっくり張り詰めていく。
僕は、頭の中をかきまわされるような眩暈のなかで、母の「ごめんね」を考えていた。
その言葉を、最初に聞いたのは、たしか小学校五年のときだ。男たちに襲われてからではない。ずっと昔。父親がまだ、家に帰ってくる生活をしていたころ。たしか晩秋で、台所の窓の外、柿の木の枝が風に揺れていた。僕は習い事のピアノの発表会を、熱で休んだ代わりに、母の姿をずっと部屋から見ていた。母は炬燵にあたって、買い物袋の中のハンカチを一枚ずつ畳んだあと、洗い物をして、台所の明かりを消しかけて、振り返ったのだ。僕のいる二階へ向かって、何か言おうとして、やめた。あのとき、口の形だけが「ごめんね」だった。それが誰への、何の謝罪なのか、小さな僕には見当もつかなかった。次の朝、炊きたてのご飯の湯気の奥で、母はいつもの優しい顔をしていた。だから、その言葉は、空気に溶けた。
中学へ上がってからも、似た場面があった。夏。部屋の冷房が壊れた夜、廊下を通りかかると、母が居間の電気を消したまま、窓を開けて座っていた。虫の声がやたら大きくて、ガラスの向こうでは、月明かりに植え込みが青白く浮かんでいた。母の膝の上で、スマホがひとつ、ずっと光っていた。父からの着信を知らせる白い小さな文字が、暗がりに浮かんで、母はそれを、指先でなぞるだけで、通話ボタンを押さなかった。何に謝るでもなく、小さく「ごめんね」とだけこぼした。あの声は、聞こえない留守番電話の音を確かめるみたいに、部屋の模様替えをしていた。僕は、そのまま声に遭遇してしまった気分になって、寝室へ戻った。
だから僕はずっと、「ごめんね」は、母のなかで、誰かに謝るための言葉じゃないのだと思っていた。誰も聞いていない、暗い台所や、朝の食卓や、ひとりの夜に、こぼれるためだけにある、母の息みたいなものなのだと。なのに、いま、母は何十回となく、その言葉を僕の顔の前へ落とす。涙で光る唇が、そのたびに、別の形へ曲がっていく。謝る相手が、ちゃんといる。僕という、すぐそこにいる息子に向かって、声をからして謝っている。言葉は、もう言葉としての意味を、どこかへ置き忘れてきてしまったみたいで、ただの音の粒になって、リビングの暑い空気へ散る。そして、次の瞬間には、母の膝、腰、背中、うなじ、指先が、その音とは反対の方向へ動いていく。謝るたびに、身体は男たちの手を求める。「ごめんね」と口にしたあとの、息を継ぐたびに、母の中の暗い場所が、水を含んだ地面のように、じゅくじゅくと音を立てて開いていく気配がした。
「……ごめんね、文也……ごめんね……お母さん、ほんとは……お父さんと、ちゃんとしてるの……今だけ、今だけ、おかしくなってるの……」
うわ言のようだった。そう言いながら、母は無意識に、後ろへ腰をゆるく押し当てていた。ぐちゅり、と奥が鳴る。スペードのように青いスカートが、母の締まった腰の下で砕けた花弁みたいに散らばっている。黄色いエプロンは別の場所で、白いレースのブラと一緒に、精液と汗の海に浮いていた。黄ばんだ染みが蛍光灯を跳ね返して、やけに明るい。季節の匂いが、腐った果実のように部屋の底で渦を巻いていた。
休憩は、けっきょく、短かった。三人は、飲み干したボトルを無造作に部屋のかたへ転がし、Bが母の尻をまさぐるように位置へつく。Cが、母の腰の下へ、濡れたタオルを敷き、脂肪のなめらかな曲線が沈む場所を探ってから、新しい油のキャップを回す。母は、もう声を出す力を、取り戻していた。
Bの番が来ると、部屋の空気が、また別の質に変わった。Aが言葉の刃で母の内面を抉るなら、Bは、指先の確かさで、母の身体の奥に眠っている感覚そのものを掘り起こそうとしている。その違いが、こんな状況でも、はっきりと分かる。Bは、母の尻肉を両手でゆっくりと左右へ押し開き、濡れ光る肛門の窪みへ、オイルを垂らしていた。指の腹で、周りを円を描くようにほぐし、浅い場所を何度もなぞってから、ようやく第一関節を沈める。
「この肛門、さっきから、ひくひくして、俺の指にしゃぶりついてくんだよ。こっちも、ガキに開かれんの、待ってたみたいだぜ」
Bが、息を漏らすように言った。しなやかな腕の筋肉がぴくりと動き、垂れ目の奥の瞳孔が、母の窄まりだけを見つめて揺れている。他の二人と比べて、Bの責め方はどこまでも肉感的で、肛門という一点に集中していた。指が二本、三本と増やされていくにつれ、母の腰が、まるで彼の指の形を覚えこむみたいに、ゆっくりと波打つ。背中に浮かぶ汗の粒が、蛍光灯の下できらきらと砕けた。母の口元からは、先ほどまでとは違う、押し殺したような、それでいて、もっと深い場所から引っ張り出されてくるみたいな、息混じりの声が漏れはじめていた。
Bの指が、奥の一点に触れた瞬間、母の声が、急に裏返った。くぐもった悲鳴と、そのあとに来た、自分でも驚いているような無音の間。太腿のつけ根が、がくがくと子どものように震える。彼は、その震えを片手で押さえ込み、もう片方の手の指を、ぎりぎりまで深く曲げた。
「ここか? そうだよな、ここが気持ちいいんだろ。奥さん、腹ん中から、女の汁垂らしてるぜ。エロい声、我慢すんなよ。ケツの穴、きゅーって締めてくるから、指が折れそうだ」
ぷちゅ、ぷちゅ、と、ゴム手袋をした指が空気ごと引き抜かれるたびに、粘ついた音がしつこく返ってくる。Bは、母の反応を確認しながら、ほとんど残酷なほどゆっくりと、その場所ばかりを押しつぶしていった。母の身体が、先ほどのAのときより、もっと深いところで痙攣する。羞恥と快楽のあいだで、顔も上げられずに、床へ向かって開かれた口から唾液が糸を引く。Bの責め方に、僕は、おそろしいほど肉感的な職人性のようなものを感じた。指は肛門の締めつけを、言葉ではなく皮膚で読んでいる。抗う力が強ければ強いほど、その先でもっと繊細に、この男は、母の内壁を擦っていく。母の意思とは関係のないところで、身体だけが、どんどんBの指を咥え込んでいく。その様子が、たとえようもなく淫らで、目を離せなかった。
「ほら、今度はこの指、三本の形を、ちゃんと憶えてやがるぜ。ケツん中、いやに素直だわ」
Bは、片手で汗ばんだ前髪を払った。腕の筋肉が、リビングの薄明かりの中で浅黒く浮きあがる。母は、背を向け、四つん這いの姿勢から、乱れたシーツのような息を漏らしていた。振り向きかけた顔を、Bの手が、無造作に畳へ押さえつけた。母は、涙まみれの両眼で、僕を見る。
「……文也……」
唇の形だけ、そう言う。僕は、その声を受け取った瞬間、腰のあたりがすうっと冷たくなった。ごめん、お母さん。心の中で、僕も呟いていた。何に対して謝るのかは分からない。でも、二人とも、どうしようもなく互いに謝りあっている。この部屋の悪い空気に撲たれて、二人とも、べつべつの罪を感じている。扉の向こうで、外の午後の陽射しが、誰のせいでもない顔で道を灼いている。救急車の音、風の音、何ひとつ入ってこない家の中で、大腿から垂れていく汁の一雫一雫の、粘りついて長い艶だけが、時間を数えていた。
そして、Cだった。Bが母の後孔から指を引き抜いたあと、Cが、いつの間にか僕のすぐ後ろに移動していた。近くで見る彼の指は、三人の中でいちばん細く、爪の形まで几帳面に整えられている。彼は慌てるでもなく、まず、乱れた母の髪を、そっと耳の後ろへ流した。その仕草が、母の肩を、びくん、と跳ねさせた。
「……お、俺は、もっと、や、柔らかいところを、じっくりやらせてもらうからな。こ、こっちのほうが、マ、ママさん、きっと、すぐ蕩けるよ」
Cは、カメラを回したまま、母の足首を持ち上げ、泥まみれのガムテープが貼りついた指先に、そっと唇を寄せた。母が、驚いたように足を引こうとする。その手首を、Cの指が、おっとりと押さえる。彼の責め方は、Aの言葉責めとも、Bの肛門責めとも、まったく温度が違った。皮膚の上を、薄い氷に映る月明かりか何かが滑っていくように、冷たく、柔らかく、どこまでも細い刺激ばかりを重ねていく。首筋に目張りする鎖骨の窪みに、舌先で、ちゅ、と一回。耳の後ろから乳の側面へ、指の甲を、息を吹きかけるような速度で下ろす。脇の下に溜まった汗を、舌ですくう。へその周りを、中指の先で、のろのろと渦巻き状になぞる。母は、突然の優しさに、叫ぶことも荒れることもできず、喉をのけぞらせて、ただ声にならない息を吐いた。
「ひゃ……あ、なに……これ、いや、やめて……っ、そんなの、や……あぁ……っ」
「やめて、じゃないだろ。お、奥さん、乳首、触ってないのに、こ、こんなに乳首、立ってる。痛いのと気持ちいの、どっちが弱い? ん? こ、答えなくていいよ。体に、き、聞くぜ」
Cは、白い鎖骨から胸元の谷へ、舌を押し当てた。唾液でてらてらと光る筋が、母の白い肌に崩れた銀河のように散らかっていく。彼の細い指先は、相変わらず、乳輪のすぐ外側を、ゆるい渦を描きながら移動しつづけた。触りそうで触らない、いや、触れている場所をこれから触る、という予感だけで、母の乳首は、芯が入ったように自己主張している。Cの丸い目が、その反応を舐め回すように覗き込む。僕は、彼のこの感じが、一番たちが悪いと思った。母は、悲鳴で緊張を逃がすことができず、快感の蓄積だけを、内側に溜めさせられていく。
その場に満ちる空気は、もはや、さっきまでのものとは別のものになっていた。Aが少し離れた場所で、ごきゅ、ごきゅ、と喉を鳴らす音が聞こえる。Bが、汗で湿ったTシャツの袖を捲り上げて、Cの指先の動きを、値踏みでもするみたいに眺めている。窓が一枚、西日を透かしてオレンジ色に光っていた。母の全身には、三人の男たちがそれぞれのやり方で、言葉と、肛門と、愛撫とで刻みつけた快楽の火種が、じわじわと燃え広がっていた。床に敷かれた黄ばんだエプロンの上で、白い肌も、青いスカートの残骸も、男の精液も、みんな同じ夏の午後の光に焦がされている。
三人は、まるで決めた順番をなぞるみたいに、母の口、膣、肛門を順々に使った。誰かがカメラを代わり、前から撮り、後ろから撮り、上からのぞき込んだ。各所方から注がれる精液が、白く濁って、母の顔にも、黒髪にも、へその窪みにもかかった。二度三度と強要されるうち、母の口はもう、はっきりと、ローションが溢れるみたいに、男のものを受け入れていた。挿入をねだる「んっ、んっ」という甘い短い声。拡がった鼻の穴が、浅ましく空気を吸う。陰部は何度も弄られ、彼女の中身は、自分の意思から流れ出した汁と、男どもの汚液とで、どろどろに混ざった。まるで洪水。太腿の内側いっぱいに、白濁がとろとろと幾筋も流れ下っていた。
Aが、再びスマホを手にとって母に言った。
「奥さんよ、旦那のチンポは、お前にとって小さくて、すぐイクだろ。自分の指でいくのが癖になってんだ。な、言ってみろ。隠しても分かってんだ。もう、お前の体が全部喋ってる」
母は男と男のあいだで、首を横へ掠めるだけだった。けれど、Aが陰核をつまむと、悲鳴の代わりに舌を突き出し、涎を垂らして、身体を反らしていった。
「あ、あう……ちが……主人は、あの、すぐ終わっちゃうから、私、夜中に……ふみやが、寝てから……んぁ、一人で……」
「一人で、何してたんだ?」
「ん、ぁ、指……指いれて、してました……ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣きながら白状する母。プライドの芯が、音を立てて折れていくのが、その横顔にありありと見える。スマホが近づく。レンズの黒い穴が、すべての羞恥を吸い取って、ちいさなデータに変換していた。母は謝罪を繰り返すたび、なぜか息づかいが深くなっていく。睾丸の匂いを鼻先に擦りつけられ、口を開けさせられ、出された精液を嚥下する喉が、こくん、と淫らに上下した。ごめんね、ごめんね、と、言いながら飲み干していく。その滑稽さが、痛ましさが、薄い氷を踏みつけるみたいに、僕の精神を刺した。
やがて、母の口数が減っていった。代わりに動きが増えた。男の体にすり寄り、おそるおそる舌を這わす。肩で息をしているくせに、次の、次の、と瞳が追う。自ら脚を持ち上げて、開く。Cは、射精後だというのに、もう一杯いけると、真新しい膨張を母の膣に押し込んだ。何度目の行為か、母は相手が誰であろうとも、奥へ奥へと嗤うように呟いていた。
「すご……く、んぁ、奥、きてる……もっと激しく、突いてぇ……」
恥知らずなまでの正直な懇願に、Cのほうが面食らうほどだった。息を弾ませた男が、母の尻肉をつかんで、思い切り突き上げる。「あひっ、ああっ、これいい、いい、ふかく……きてるぅ……」快楽にゆるみきった声は、もう僕の識る母の声ではなかった。それでも、その裸体からは、あの家の匂いが漂っていた。黄色いエプロンをまとった、やさしい日常の残骸がたしかにあった。僕は、鼻の奥に残った白いカットソーの汗と、油で揚げた衣の香りを、身体のどこかでまだ探していた。目の前でよがる裸の女の体と、その記憶の母の姿が、どうしてもつながらない。つながってはいけないのに、視界の中では、黄ばんだエプロンの染みと、汗に濡れた母の皮膚とが、一つの淫らな輪郭に溶けてゆくようだった。
四時間にも及ぶという残りの時間。その終盤で、美しい黒髪の下から覗いた母の顔には、涙の筋を幾本も引きながら、痙攣のような、笑みのような、眼球の奥ごと酔い潰れた表情が浮かんでいた。赤い唇が、血のように腫れぼったく、戦慄くたびに唾液が細く光る。全身をべとべとに濡らした汁が、窓から差しはじめた午後の光を受けて、陶器の肌を存分に発色させていた。
母は、乱れた黒髪のあいだから、僕をじっと見た。口元が引きつる。しかし、その目はなぜか、責め苦のなかで陶然と曇り、恥辱の奥に今まで見たことのない、うっとり、とした色を宿していた。何も言っていないのに、声にならない舌音が、唇の内側に沈んでいく。それが「ごめんね」なのか、「気持ちいい」のか、僕には、どちらにも聞こえた。いや、その二つはもう母の中で、とっくに同じ意味になってしまっているのかもしれない。そう思うと、思考がかっと熱くなり、目の奥がぼやけた。裸にされた母の体の、秘部も肛門も、口も脚も、すべてを男たちに使われ尽くした、その屹立に、欲情と恐怖の入り混じった自分の気配を認めはじめた自分が、僕には一番恐ろしかった。なにより、汗でぬめる母の声を、もっと聞いていたい、と、浅ましくも思ってしまったから。
第5章 幼女みたいなマンコ

第5章: 幼女みたいなマンコ
Aの腕が、僕の後ろ手の縛り目をそのまま持ち上げた。肩がぎしりと軋んで、床から腰が浮く。
「場所を変えるぞ。ボウズ、お前も来い」
低い声が頭の上に落ちて、首の後ろへ生温かい男の手が這った。引きずられるようにして、廊下へ出る。板張りの床が、汗のしみた背中にひやりと貼りついた。母は前を歩くBの肩に担がれていた。ぐったりと垂れた両脚の付け根から、白い液が腿の内側を筋になって伝い、裸の踵を汚している。その絶え間なく滴る軌跡を、僕の目は追ってしまっていた。廊下の夕暮れめいた薄暗さの中で、母の背中が妙に白く浮かび上がって見える。肩甲骨の浮き沈みが、浅い呼吸のたびにはっきりと窪んだ。
風呂場の折り戸が、Cの手で金属音とともに開かれた。湯気の残り香とカビの匂いが混じった空気が、廊下へもわっと流れ出す。クーラーのない家の奥は、夏の熱が床下から立ち昇るようにこもっていて、浴室のタイルは昨日の入浴の名残かしっとりと湿っていた。
「奥さんを浴槽のふちに座らせろ。足、広げさせるから、A、押さえてて」
Bが顎で床を指す。薄暗い流し台の前、銀色の蛇口の先から、最後の一滴が落ちて、タイルに小さな染みを作った。その生温かい空気を胸いっぱい吸い込むたび、喉の奥に磯くさい牡の匂いと、母の排泄物に似た酸っぱい体臭がまとわりつく。鼻の穴がひくひくして、息を浅く繰り返した。
母は浴槽の白い縁に座らされ、背中を壁の冷たいタイルへ押しつけられた。脚はAとBに片方ずつ掴まれ、膝裏から折り曲げるようにして無理やり左右へ開かされる。青白い蛍光灯の光が、汗と精液で汚れた母の全身を照らしていた。足の爪先が床から離れ、太腿の内側が水平に割れる。股の中心には、さっきまでBのものを咥えていた赤い窄まりと、愛液に濡れて腫れ上がった肉の花が、それぞれ呼吸するようにひくついていた。
「文也……こっち、来ちゃ……だめ……」
母の唇から、かすれた声がこぼれた。顔は涙でくしゃくしゃに濡れそぼっていたのに、豊かな腰は浴室の湿度を吸ったみたいに、てらてらと光っていた。黒い茂みが、開かれた股の奥で、湯気のようにしっとりしている。あの陰毛が、夜、母の身体を隠していた最後の場所だったのに。
Cが、流し台の引き出しをごそごそと探って、折りたたみ式のカミソリと、使いかけのシェービング剤の缶を取り出した。うちの母さんが、自分の脚の手入れに使ってるやつだ。蓋を開けたCは、真っ白な泡を手のひらにたっぷりと出して、母の下腹へ塗りたくっていく。泡の冷たさに、母の腰が震えて浮いた。
「ひや……っ」
「動かないで、切れたら危ないからね。じっとしてて」
Cの声は、するするとした、煮え切らない調子だった。長い指が、母の膨らみの上を覆う剛毛を掻き分けながら、生え際に泡を揉み込んでいく。ぬるぬると泡の立つ音が、浴室にしつこく反響した。泡の下で、黒い毛が一房ずつ白く埋まっていく。Cはときどき、付着した泡をカミソリの先に移してから、ごくゆっくりと、毛の流れに逆らわない角度で刃を滑らせた。
かすかに、子どものころから知っているシェービング剤の薬品めいた匂いが、むっと鼻へ届いた。いつもの母の湯上がりの香りとはまるで違う、よそよそしい空気。
「痛く……ない? 力、抜ける? もっと開いて」
Cの片手が母の茂みを軽く押さえたまま、剃刀が走るたび、ぶぶっ、と小さな抵抗の音がした。毛が根元から刈られる音だ。泡と一緒に、黒い抜け毛が白いタイルの床へ落ちていく。最初はさらりと、だんだんと量を増して、湿った床に張りついていった。母の目は天井の隅へ釘づけられたままで、下唇を噛む力が強すぎて、赤く色を失った。
Aが、側でスマホを構えて撮り始める。撮影レンズは、母の脚の付け根、未来に晒されていく肌の一部始終を舐めとるように近づいたり離れたりしながら、動かない。カメラへ収まるのは、女の体毛が剃刀に制服されていく、白い泡と黒い糸くず、それから荒い息づかい。
「なあ、奥さん、自分でも何度か剃ったことあるんじゃないの? ここの手入れ、妙に丁寧だもんな」
Bが笑いを含んだ声で言い、母の閉じた唇が引き結ばれる。
「か、返事は……無理にしなくていいから、じっとしてて。僕が、つるつるにしてあげるから。それで、幼女みたいなの、み、見よう」
Cの呼吸が、耳もとで濡れて聞こえた。その熱を避けるように、母の顔が横へ逃げ、首筋に浮いた汗が一しずく引かれて、鎖骨の窪みへ落ちた。僕はその汗の道を目で追い、それから目蓋の裏を刺す映像を思わず凝視した。母の割れ目を覆いつくしていた陰毛は、みるみる量を減らしていく。生えていた痕跡だけが青い影になって、腫れぼったい唇のあいだから、粘膜の桃色が露わになる。
「やだ……み、見ないで……剃らないで、そこ、見えちゃう……」
「見えるよ、ちゃんと、つるつるにしたら、全部見える」
Cの指が、段々と滑らかになっていく鼠蹊部を何度も往復した。泡をぬぐうたび、肌が叫ぶほど白くむき出しになる。剛毛の奥に隠れていた薄皮の窪みや、汗で蒸れた生え際の質感が、次々に無防備へ変えられていった。
刃の背が、敏感な襞の端へ触れた瞬間、母の膝ががくんと跳ねる。
「ひん……っ」
「大丈夫……あとちょっと。中心の両側、ここが終われば、つるつるになるから」
Cは言葉を切って、小さな笑いを漏らした。根気のいい指先が、泡にまみれた恥丘を平らに撫でまわしてから、残った細い毛を剃り取り、仕上げに温かいタオルを押し当てる。それからCは、わざわざ床に落ちた毛を指先でつまみ上げ、母の顔の横へ持っていった。
「ママさんの、この黒いもじゃもじゃの毛、全部とれた。かわいくなった」
母は唇を噛み、目を閉じた。閉じた瞼の裏で、自分が何を見ているのか、それを追うように睫毛が震える。泡まみれだった股ぐらの白い肌は、今は血行がにじんで薄ぼんやりと赤く、毛という遮蔽物の失せた中心だけが、ぽっかりと無垢な隆起になっていた。大人の女とは思えない、産毛ひとつない饅頭のような膨らみ。その下の縦筋は、さっきまで私の目を遮っていた黒い森の奥に、もともとこうして隠されていたのだ。
Cがスマホを構え、サービスのように腰を落として真横から撮影する。
「奥さん、幼女みたいなマンコになったよ。ヒヒヒ」
その笑い声が、排水溝に流れ落ちる水のように、浴室の隅へ吸い込まれた。部屋中のタイルに、べったい匂いが混ざる。剃ったばかりの肌が、湯気の名残に痺れて、ひりつく感触を想像した。僕は、自分の身体の一部のように失われた黒い毛の束を、白い床の中にだけ見た。かつて母の湯上がりに、浴室の排水溝でときどき見かけた、あの短い黒い毛。あれが、いままさにあの輪郭を作っていたという事実が、ぐずぐずにかき混ぜられた頭に、染みのように広がった。
Cがカメラを構えたまま、立ち上がる。
「次は、奥さん。おしっこだ、小便して見せてくれ」
声は、ねだるような、引っ張るような色を帯びていた。はじめは冗談に聞こえた。こんな場所で、ありえない、と思った。
「……え」
母の瞼があいた。なにかを言い間違えた耳を疑うように。
「今、おしっこ、ここでしてよ。撮るから。なあ、A、できるよな。さんざん飲み物、口に含ませたんだから」
Aの手が、母の髪をかきあげる。指に絡んだ数本の髪を抜くようにしながら、耳たぶへ口を寄せた。
「言う通りにしたら、あとでタオルで拭かせてやるから。ほら、息子ちゃんも見てるし、きれいなところ見てもらおうよ」
母の手首が、後ろで擦れた。抵抗のつもりなのか、ただ縄目を探っているだけなのか、白い首をねじって天井を探す。
「どうしても?」
その言葉が、返事になっていると分かったのは、Aが満足そうに舌打ちしたからだ。
「素直だ、ママさん。最初からそうしてりゃあ、痛い思いしなくて済んだのによ。B、足をさらに開かせて、腰を前に出させる。C、カメラ、正面からいけ」
Bが母の両膝を持って、折りたたむように胸へ押しつけた。裸の臀部が白い浴槽の縁から前にずり出て、濡れたタイルへ虫のように腰が突き出される。剃りたての割れ目が、すっかり透明な異物感を帯びて、浴室の光を反射した。
「さあ、出して。俺たちも、お前の息子も、このままずっとこうして待っててやるよ。何が出てくるか楽しみだからな」
「し、しみる……タイル、冷たい……それよりも、恥ずかしい、私……」
「大丈夫。みんな見たいだけだからよ」
Bの指が、母の菊座の残りかすをぬぐう。まだ熱い肉をまさぐられ、母の太腿が揺れた。
「あ……っ、やめて、触ったら……出ちゃう、から……」
「出せ。そのまま、流していい」
Aの言葉が、命令というより、ふざけた笑みを帯びていた。Cが、肛門のすぐ上にできた汗溜まりへ、スマホのレンズをぎりぎりまで寄せる。
「ん……っ、う、ぅ……ま、まって、文也、こっち見ないで。違う、見えないようにしてよぉ……」
母の声が、語尾を湿らせて裏返る。僕の足首に巻かれたガムテープの黄ばんだ粘着面が、汗でまた少しずつ剥がれそうになっていた。その無力な粘着音が、自分の耳に入る。身体が熱い。自分の体と、風呂場の空気と、母の体温と、全部が一緒になって熱い。三角巾のように折り畳まれた鼠蹊部の肉が、剃毛の刺激でどれだけ充血しているか、居並ぶ全員から丸見えだった。
シン……と、水滴が、蛇口から落ちる。ちゃぷ、と一音。浴室の暗がりに、まだ熱の抜けきらない排水溝の匂いが渦を巻いた。
そのとき、母の下腹が、内側から押し上げられるみたいに震えた。太腿の内側がぴくり、ぴくり、と痙攣し、尿道がこわばる。薄くひらいた唇の奥で、何かが決壊するのを、僕は確かに見た。
「あ、ぁ……出、る……なんで、こんな……やだ、見て、文也、だからぁ……!」
切羽詰まった母の叫びと同時に、山吹色の液が、小さな蕾のようになった尿道口から、ほそく弧を描いて噴き出た。始まりは、ちょろ、と頼りない。やがて、泡を擦り潰した透明な音をたて、しだおらな、じょぼぼ……という、あの重みを持つ音とともに、白いタイルの床へ向けて放物線を引いていく。液は床に当たって跳ね、湯気に似た生温かい飛沫になって、母の太腿の内側や浴槽の側面へ散った。すさまじい量の開放感に、母のつけ根の肉が弓なりに反り返る。
「い……ぁ、出てる、おしっこ、出てる……止まらない、すご……っ」
自分の言葉に驚いたように、母が呟く。尿はなおも勢いを増し、タイルの目地を伝って、排水溝へゆっくりと流れ込んだ。むわ、と、鮮明なアンモニアの混じった牡の匂いが、たちまち浴室の空気を占領する。甘ったるい汗の匂いや精液の生臭さと結びついて、胸の底まで届くような濃密な臭い。嗅いだ瞬間、あ、と奥歯のあたりが痺れた。
「わ、すごい……奥さん、幼女みたいなマンコから、すごい……音、撮れてる……は、はは……」
Cの吃りが歓喜に潰れて上ずる。スマホは、母の失禁に歪む顔と、尿を吐き出す毛のない性器を途切れなく追っていた。床に溜まった黄色い水たまりへ、白い吐息が映る。蛇口から落ちる水道の水は冷たくて澄んでいるのに、母のそれには、内臓で温められた体温と、感情の濁りが混じっている。流れ出した液体が、染み入るように白いタイルの奥まで沁みていく。それが、台所で毎日見ていた水とは別の生き物に思えた。僕の頭の片隅が、おかしなことを考えている。尿が長く伸びるたび、母の性器がひくひくと波打ち、尿道の周りの白い肉が、幼子のそれみたいに無防備だった。
「も、ら……で、よ……ん、っ、とまらない、とまって……」
母の声がついに泣き声に変わり、それが排尿の止まらない快感と一緒くたになって、腰の奥を重く疼かせた。ぶるぶると太腿が震え、浴槽の側面を素足が引っかく。やがて勢いが弱まり、最後の一滴が尿道口から垂れた。それは、母のすっかり滑らかになった割れ目の先にくっついて、銀色の糸を引く。Cが慌ててカメラを横からねじ込んだ。
「いい絵……ママさん、ツルツルまんこから、し、小便……最高の、絵……」
荒い息が、浴室中に響いた。いつのまにか、全員が黙って、母の少し開いた股座へ視線を落としている。白い床には、黄色く泡立った水たまりが形を儲けていて、その真ん中で、何本か陰毛が捨てられたまま浮いていた。毛を失った性器は、すっかり充血して、水に濡れた桜色のひだを内側から覗かせていた。さながら、皮を剥いた果肉のように。
母が、尿の臭いにむせた。こほ、と咳き込み、剃りたての肌を覆うようにして腿を閉じようとするが、Bの手がそれを許さない。
「奥さん、たっぷり出したな。もう、お前の立った床、匂いがすげえことになってるけど。自分の前で、息子も見てたぜ」
その言葉で、母は初めて、僕を正面から見た。尿と涙で汚れた顔。唇は、恥ずかしさのせいか、笑っているように半ば開き、喉はまだ嚥下できない空気を詰まらせていた。何かを言おうとした、その瞬間、Aが、母の乱れた後れ毛をつかんで、無造作に立ち上がらせた。
「さ、リビング戻るぞ。次は、息子ちゃんの出番だからな。立て。立てるだろ、まだ足に力入れるぐらいはよ」
母は首をかしげ、一瞬、焦点の合わない視線を彷徨わせる。白い裸足が、ふらついて床を踏んだ。小便の水たまりが、足の裏にぐちゅりと音を立てた。太腿を伝う残尿が、腿の内側を滑ってすねへ滴り落ちる。地面へ沈むように崩れかかったが、Aに髪を掴まれて、上半身だけが無理に持ち上げられた。悲鳴は、もう、声にならなかった。
僕の横を連れて行かれながら、母の体がすれ違う。湯冷めした肌のむこうで、彼女の失禁の匂いがまとわりつく。腋の下から流れた汗も、垢じみた蒸れ臭も、小便のそれも、全部ひっくるめて、同じ一人の女のにおいだった。青いフレアスカートは、とっくにリビングで脱げ落ちたままだ。黄色いエプロンも、裂けた白いカットソーも、遠い。今この廊下にいるのは、ついさっきまで普通の母親だった、裸の女だけだ。母の陰毛のない股間が、歩くたびにひくついて、濡れた肉灯りを灯す。その姿を、Cのスマホのレンズが、後ろから余さず撮り続けていた。冷たい黒い目が、フィルムに、母の失われた体毛のことを焼き付けている。
第6章 息子のペニスでイカセてもらっているます

第6章: 息子のペニスでイカセてもらっているます
リビングへ戻ると、Aが僕の腕を掴んだままソファの背もたれに押しつけた。縛られた足首がカーペットの上で滑る。母は床に膝をついた姿勢で、荒い息の間から小さく咳き込んでいた。首から下がった黄色いエプロンの切れ端が、裸の胸の上で汗に貼りついている。青いフレアスカートはもうどこにもない。あるのは、剃りたての性器から垂れた尿の名残を太腿に光らせた、むき出しの母の体だけだった。
「ボウズの出番だぞ」
Aの声が、僕の左耳のすぐ横から落ちた。生温かい手のひらが、僕の半袖ポロシャツの肩口を掴み、そのまま前ボタンをむしりとるようにして引き裂く。プラスチックのボタンが床に跳ねた。次に、紺のハーフパンツのゴムへ手がかかり、下着ごと一気に膝まで下ろされる。身体の中心が急に外気に晒されて、太腿の内側がひやりと縮んだ。Cがまわりこんで、スマホを僕の下半身へ向ける。黒い撮影レンズが、剥き出しになった僕をじっと覗き込んでいた。
「うわっ、これ、もう半勃ちになってるぜ。母ちゃんの裸、見て興奮したんだな。年相応じゃん」
Bが笑い声の混じった声で言った。太い指が僕の性器をつまむみたいにして持ち上げる。ぞわ、と背筋を走る感覚。お母さんに見られている。そう思うだけで、ペニスが指の中でひくんと重みを増した。母はそんな僕の姿を、赤く泣き腫らした目で見ている。視線が、熱い。恥ずかしさのあまり縮こまりそうになるのに、逆に血液は下腹へ集まっていく。
「ママ、こっち向いて。ショーは君の口が主役だ」
Aが母の腕を引き、僕の正面まで引き寄せた。床に尻をつけた母は、息を整える間もなく、視線を僕の足の間へ固定してしまう。髪が乱れ、汗が前髪をゆるく束ねていて、睫毛にはまだ涙が絡まっている。顎が小刻みに痙攣していて、何かを呑み込むみたいに、喉が上下した。そして、掠れかけの声が、やっとのことで形になる。
「文也……お母さん……これを、咥えるの……?」
何て言えばいいか分からなくて、僕は首を横にも縦にも振らなかった。代わりにCがサンダルの先で床を擦り、場を急かすように笑う。母は一瞬だけ目を閉じ、開くと、僕の膝の内側に指をかけた。汗ばんだ手のひら。熱くて、震えている。ゆっくりと顔が近づく。鼻先が近づいて、母の髪の匂いが、むわ、と膨らんで届いた。尿と精液の匂いに埋もれながらも、耳の裏からは、かすかに柔軟剤の香りを残している。その匂いの狭間で、生温かい息が、敏感になった先端へ吹きかかった。
「ごめんね」
母が、ほとんど空気のようにつぶやいた。それから、唇が、ぴたりと押し当てられる。薄く開いた唇の中央が、亀頭の先に触れて、そのまま、母乳の温かさみたいに柔らかく呑み込んでいく。
「ん……っ」
母の口腔の熱さに、腰が浮きそうになった。生理の時の使い捨てカイロよりずっとぬるい。その温度は自分の体の内側を反転させたみたいな、変に落ち着く熱さなのに、触れた瞬間から心臓が喉を叩く。舌がおそるおそる、先っぽの裏筋をなぞる。ぬめ、とした粘膜の細かな凹凸が、固くなっていく肉茎に絡みついて、先の窪みに溜まった粘液を舐め取っていく。
「んむ、は……ぁ」
母が少しだけ喉を鳴らした。震える指は僕の付け根を包んでいて、根本から上へ向けて、搾るというより支えるように扱く。初めてのフェラチオ。相手は母さん。頭のどこかで、駄目だと理解している声がしているのに、僕のペニスは情けないぐらい勝手に脈打った。舌が先端から裏側、それからまた、くちゅ、と音を立てて戻ってくる。唾液の種類が、父さんの書斎にあった油の匂いとも、僕が朝食べている味噌汁の味とも違う、濃いぬめりになって亀頭と唇の境目に糸を引いた。
「ねえ、奥さん。息子ちゃんのキンタマも、袋ごと舐めてやれよ」
Bの声が、上から落ちた。母は一瞬だけ動きを止め、それから口をずるんと引き抜く。唾液の糸が白い首筋の高さで切れて、太腿へぱたりと散った。母の頬に、僕の硬くなりかけの性器が触れてる。生温かい体温が、輪を描くように広がって、太腿の付け根がびくりと強張る。
「早くしろよ」
Aが急かした。母は僕の太腿へ顔を沈める。産毛の生えた袋へ、まず鼻先を押し当て、それから舌を這わせた。ざら、とした舌の表面が、薄い皮の下の睾丸を押し上げるように動く。ぞわぞわと鳥肌が太腿から腹へ広がって、性器はもう、腹に付きそうなほど反り返っていた。母の唇が、丸くもごもご動く。袋の下の窄まった部分を、わざと湿った息で甘く吹き、次の瞬間には、舌先が軽く会陰へ流れた。
「うっ……あ、」
自分の声がいやに高くて、恥ずかしかった。母の顔を見下ろすと、唾液に光る顎の先から、汗が一筋流れて、鎖骨のくぼみに溜まった。口いっぱいにしている時とは違って、横からそうやって舐められると、ぬめった音がとても大きく聞こえる。空気の薄いリビングの隅々に、ちゅるん、れろれろ、という頼りない音が反響した。Cが、しゃがみ込んで、スマホのレンズを母の舌が這う位置すれすれまで持ってくる。レンズの角度によって、黒い画面の中央に、薄暗いリビングの天井が映りこむ。その中に、天井を向いて口を半開きにしている僕がいた。
「ママから、吸ってくれるってよ。ほら、先っぽまた咥えろ。今度は、口ん中でしゃぶり倒してやれ」
Aの命令に、母は弱く頷いた。舌が、先端の割れ目へ、ちろ、と入ってくる。小さな肉の花が、すぼまった穴を探るように押し広げる。予想していなかった刺激に、思わず下腹が揺れた。すると、母は迷いなく先端を口へ引いた。唇が強く締まって、頬の内側の肉が、亀頭のまわりを搾るみたいに吸い付く。
「んぶ……っ」
口が、密封された。吸いあげる力がだんだん強くなっていく。ぼご、と中のお湯が揺れるような音が、自分の耳の奥で聞こえる。背骨がのけぞって、ソファの座面へ肩を押しつけた。歯を当てないように、母の舌が茎の腹を支えている。ぬめった舌の平が、まっすぐな肉筋に沿って動くたび、足の先まで血が送られる。視界がにじんで、天井の蛍光灯がぐにゃりと形を変えた。
「お、息子ちゃん、顔えっろ。なんか、情けない犬みたいになってんぞ、はは」
Aの言葉が、遠い。母の口の中だけが熱い。舌の先が、もう一度、尿道の窪みをこじあけて、かき回す。その瞬間、身体の奥底で、痛みにも似た痺れが爆発した。
「あ、ああ……出す、出ちゃ……」
言い終わるより先に、どくん、と下腹が跳ねた。母は唇をさらに締め、舌で先端を包み込む。咥えたまま、小さく首を縦に振って、吐き出される三度分の熱を、喉の奥で飲み込んでいく。ごくり、と嚥下する音。同時に、喉の粘膜が亀頭をしごく。もう、頭の中が白くて、何が起こっているのか分からないのに、母が僕の精液を飲んだことだけは、はっきりと分かった。太腿が痙攣して、母の肩ごと、体がひとつの痙攣みたいになった。母はなおも口を離さず、残りの一滴を搾りとるように、ゆっくりと扱いたくなった。唇の端から、唾液と混ざった薄い白が一筋、顎を伝い落ちる。
口がようやく離れたとき、Cが再生ボタンを押した。スマホのスピーカーから、母のくぐもった息遣いと、僕の短い悲鳴が流れてくる。音は小さいのに、リビングの空気全部がその音に汚されていく気がした。
「これ、見事に撮れてるよ。ママのむっちりした口が、息子の若いのを咥えて、しゃぶり倒して、全部飲み込むところまで、ばっちり。なあ、ネットに流されたくなかったら、今度は本番、やってもらおうか」
Bが音を止めて、そう言った。Aがソファの背に片膝を乗り、近づいてくる。
「言っとくけど、今のだけでも充分、女子共の性処理動画としては回るぜ。母さんが息子の童貞チンポを食い尽くすってタイトルで、百万回はいくんじゃねえの。そっちが嫌なら、本当に犯されろ。君たち、一回、親子で腰振るんだよ。全部録るからな。いやがらせにもならねえぐらい淫らに、っていうか、お前のオマンコ、もうそういう気分じゃん」
覆面の上からでも分かる、笑み。Aはすでに、母の目を覗き込んでいる。母は、自分が飲み干した親子の罪の味にむせたように、咳き込みながら床へ手をついた。頬に、僕の精液がまだ光っている。口元が痺れたみたいに、ゆるんでいる。涙で濡れた目が、瞬きのたびに蛍光灯を吸い込んで、ちかちかと薄明るく揺れた。
「……分かった……やる……から、動画、消して……お願い……」
声は湿っていた。Bが鼻で笑い、縛っていた母の後ろ手をほどく。解放された手首は、ガムテープの形に赤く擦り切れていた。母は、しばらく床に伏せたまま肩で呼吸していたが、Aに肩を掴まれて、ふらりと立ち上がる。立ち上がった拍子に、陰毛のない股座がぴた、と開いた。ぼんやりと充血した肉の真ん中。Cが、そこへスマホを寄せる。恥ずかしさのためか、太腿がすり合わさって、内ももに浮いた汗の膜が、しわしわと音を立てそうなくらい寄り添う。
「こっち来い。で、お前は寝てろ。挿れやすくしてやるから」
Aの腕が、僕の胸を押し、ソファの座面へあお向けに寝かせる。背中に布のざらつきが当たって、ひんやりした。ハーフパンツが引き抜かれた下半身は、もう丸見えだ。母は僕の太腿に触れ、そのまま、ひざをソファの淵へ乗せた。片足をまたいで、僕の腰の上に来る。沈み込む座面が、二人分の重みを受け止めた。
「ママ、全部自分でやれよ。息子の若いのを、お前の入り口にこすりつけて、自分で腰を落とせ」
母は、僕の目をまっすぐ見下ろした。逆光で顔は影になっていた。だけど、影の中で、唇が何かつぶやいている。なんていったか、聞き取れない。それから、汗でぬめた指が、僕のペニスを掴む。半ば萎えかけていたそれは、母の指が触れるとすぐに、ゆっくりと硬さを取り戻していく。尿道の先から、さっき飲みきれなかったものが、透明な雫になって、ぬるりと筋を引いた。
「あ、これ、文也の……さっきまで、ここに、お母さんの口、入ってたのよね……あんなに熱くて、苦しかったのに……体、覚えてる」
僕には意味が分からない言葉だった。母の瞳が、涙と熱の境い目で揺れて、視線が、自分から僕の胸へ、腹へ、それから結合しようとしている部分へ、ゆるゆると落ちる。母が、僕のペニスの先端を、剃り上げられた割れ目に沿って、前後に滑らせた。ぬち、ぬち、と、愛液と残尿と精液の混じった、生温かい音がしている。入口の肉が、亀頭が通るたびに、薄く開き、閉じる。
「……入れるね」
短い吐息が、泣いているのに笑っているみたいに歪んで、母の腰が沈んだ。ず、ぶ、ぶ、と、指で押さえられたペニスが、狭い腔内へ呑まれていく。あつい。めちゃくちゃに熱い。内側の肉がうねって、先端から根本まで、飲み物の温度を確かめるみたいにしめつけてくる。僕の性器は、もう母の中にずぶずぶ埋まって、根元まで入ったとき、お腹の奥でぷちゅ、と音がした。二人の下で、ソファの布が濡れた音を吸い込み、空気の粒がごく小さい音を立てて割れた。
「あぁっ……入っちゃった……文也の、これ、ああ、おっきい……」
母が、のけぞった。首が反って、汗に光る喉が、窓からの薄明かりを受けてぬらぬらと白い。指を開き、乳を支えるようにして、自分の胸元をさすりはじめた。膣の中で、僕という塊を、熱い肉襞がゆっくりと探っている。食道まで響くような圧迫感。脚の内側から、腰が浮いてしまう。
「そう、それ、もっと、自然に腰を回せよ。ほら、息子ちゃん、お前も動けよ」
Bがスマホを構え、Cが正面からもう一台構える。二つの黒い撮影レンズが、親と子の接合部を、違う角度から嘗め回している。母はうつむき、濡れた前髪を揺らしながら、恥骨を擦り合わせるように、ゆるく円を描き始めた。中のヒダが、ぐにゅ、と下品な水音をさせて、僕の亀頭をかき混ぜる。
「それじゃあ、声、頂こうか。ほら、さっき練習したやつ。何て言うんだった?」
Aが、母の耳元へ顔を近づけて促す。ピンクに染まった耳へ、低い声が入っていく。母は、唇を半開きにしたまま、数回、浅い呼吸を繰り返した。それから、自分の腰を止めて、僕の両肩へ手をつく。汗の筋が、母の首から流れて、乳房の膨らみを越え、ぽたぽたと僕の胸に落ちてきた。多分、すごく熱い。それが母の体温であると分かるだけで、胸の皮膚が、そこだけ強く脈打った。
「……息子のペニスで、イカセてもらっているます……」
滑舌は崩れ、最後の「ます」が、語尾に引っかかって、赤ん坊みたいに舌足らずだった。僕たちがふだん朝のニュースを見ている、あの落ち着いた母の声では、到底なかった。母は、一度口にすると、もう後戻りできないものの縁へ来たように、喘ぎのひとつを飲み込み、腰をゆっくり上下させた。
「ん……ぅ、ああ、ま、た、それ……おく、あたってる、だめ、ひど……」
「まともな文でもう一回。カメラ、真正面で止まってるから、言い直しは無しだぞ」
Cが吃り交じりで追い込む。
「息子の、おちんぽで……イカセて、もらって、ます……」
今度はもっと単純な単語に崩した。幼稚な響きの、その言葉を聞いた瞬間、足の先から頭のてっぺんまで、ぞわぞわと甘い震えが突き抜けた。自分が母の言った単語そのものになって、彼女の熱い管内に閉じ込められている気がした。肉と肉が潰れるような摩擦の音が、ぐちゅ、じゅぷり、と、母のゆっくりした体重移動のたびに、余韻を残す。母が沈み込むと、俺の下腹部が、白くなった母の割れ目の入り口へ吸い込まれていく。
「すごい画だ。ちょっと、腰、止めて。お前、自分の中を、あの細い指で慰めながら、はっきり言ってみろ」
Aの指示に、母の左手が、前へ回された。震える中指が、唾液の乾いていく陰唇の上をたどり、頭巾をめくられて剥き出しになった小さな肉芽に、そっと触れる。途端に、内壁がきゅーっ、と僕を締めあげた。バインバインと太腿が震える。尻が浮き、深く座り直す。僕の陰毛と、母の毛のないふくらみが、ぬるぬると濡れて擦れ合う。
「や……だって、ああ、ほら、あたし、ぢゅーってなる……。息子の、ペニス……で、イカセて……もらって……ます……ぅん」
語尾がほどけて、声が抜けた。そのとたん、母の腔が、うわっと波打ち始める。もう、音が、言葉の形を保てない。Aが何か叫び、Cがスマホを持つ手の位置を変えた。レンズの角度が、母の直腸まで見てしまいそうなほど近づく。
「文也……! あ、いや、……動いて、下から、突いて……?」
母が、泣きそうな目で、僕を見た。求められている、その事実が、自分でも信じられない。だけど、言われた通り、下から突いてみたい。僕は初めて、自分から腰を揺すった。ぐっ、と、奥へ埋まる。いつもと違って、真実の肉が、生き物みたいに僕を食べている。自分の腿の裏に、母の太腿が乗って、しっとりと、溶けそうな温度で吸いついている。
「あっ、文也、文也っ! もっと、んんっ! だったら、もっと、お母さんの……あ、んっ、お父さんに、ないしょの、とこ……」
息をするのと話すのとで、声が切れ切れに途切れる。母の体は、もう意味まで滅茶苦茶に揺れていて、髪が顔に張りつき、瞼の半分が下りている。半開きの口から、涎が光の糸を引いて、白い胸の谷間へ垂れていく。ソファのスプリングが、ぎしぎし鳴る。ガムテープのひとつが床の上でべり、と剥がれる音がして、その自由な脚が無意識に僕の腰を強く挟んだ。
「きて、……ぁ、私の、中で、お願い、いっしょに……あ、おく、おく、こねないで、溶けちゃう……」
腰の奥がどんどん重くなっていく。射精感。でも、その先に、もっと深い粘液の空間があって、突くたびに俺の知らない肉襞が表現を隠す。母の内部は、もう黙っているだけの穴ではなくて、こちらの先端をしゃぶる十本の指みたいに、絡み、搾り、締め上げてくる。高く鋭い声が、母の喉の奥から抜けた。それは、浴室で聞いたどの嬌声より、深く、長く、柔らかい芯を持っていた。
「は、い、いく、あ、きて、ほら、わたし、今、奥で……文也の先、飲み込んでる……ぅあああっ!」
母の全身が突っ張った。骨盤の中が、温度を失うみたいに痙攣して、内側から僕のペニスを食い絞る。一瞬、視界が白く弾けた。いや、白いのは母の腹の上に浮かぶ汗の照りかもしれない。彼女の体のてっぺんが、弓なりになって、何度も、何度も、小さな火花を散らすように震えている。
「ごめんね……ああ、きもちいい……」
僕の体は次の瞬間、生まれて初めての深い場所で、燃えるような隋喜に包まれていた。射精している。母の一番奥へ、どく、どく、と熱い塊をぶつけている。自分の意志とは別の地面から、何かが背骨を通って吹き上がってくる。母は、そのいちいちを、目を見開いて受けとめた。唇の色が、内側の熱で薄く透明になっている。太腿も、腹も、胸も、全部がオーガズムの小死へ沈み込み、ヒクヒクと蠢くのを、つながった肌から感じた。指先まで、しびれる。しびれている。糸が切れたように重なったまま、母の体が倒れてくる。汗と涙と精液と、母の軽い重み。僕は、身動きもできず、彼女が耳元で何かをまた「ごめんね」というのを、微かに聞いた。肩口を濡らす吐息だけが、いつまでも、いつまでも、生温かくて。
第7章 第7章 月に一度の父の革靴

第7章 月に一度の父の革靴
あの日から三日が過ぎても、僕たちは互いの体に触れることができなかった。
いや、正確に言えば、触れようとして、指先が空気の膜に阻まれるような、そんな距離がずっと続いていた。朝になれば、母はいつもより早く起きて、洗濯機を回し、台所に立った。僕は僕で、自分の部屋のベッドに寝転がって、天井の木目を数えながら、階下から聞こえてくる包丁の音を聞いていた。とん、とん、とん、と、小気味よいはずのその音が、あの日のBの腰が僕の奥を叩いていたリズムと、どうしても重なってしまう。
「文也、朝ごはんよ」
母の声が階段の下から届く。その声は、あの日と同じなのに、まるで違う場所から聞こえてくるようだった。僕はのろのろと体を起こして、痛む尻を気にしながら階段を下りた。いや、尻の痛みはもうほとんど引いていた。それでも座るとき、便座に座るとき、そして夜、仰向けに寝返りを打つたびに、あの太く硬いものがまだ奥に残っているような、重たい違和感が腹の底に居座っていた。
ダイニングテーブルには、白いご飯と味噌汁、卵焼き、それから冷奴。あの日も、こんな朝食だっただろうか。母は僕の向いに座って、薄く笑った。化粧っ気のない顔は、目の下にうっすらと青い隈を浮かべていて、頬が少しだけこけている。それでも、白いカットソーの襟元から覗く首筋は、相変わらず白くて、あの日、強盗たちが吸い立てた痕が、うっすら青紫になって残っていた。いや、あれは痕だろうか。僕はそれを見ないようにして、味噌汁をすする。出汁の匂いが、鼻の奥でいつもより強く感じられた。
(つらいのは、お母さんの方なのに)
そう思うたび、箸を持つ手が止まった。母は僕を守ろうとして、強盗たちの要求をすべて飲み込んだ。その結果、僕は母の体と交わり、僕の精液を母の胎に注ぎ込み、母は僕の精を飲み干した。そして、その記憶が、この三日間、少しも薄れていない。むしろ、目を閉じるたびに、あのときの母の陶然とした表情が、記憶の裏側でぎらぎらと光っている。あれは、強盗に乱暴されていたから、あんな顔をしていたのだろうか。それとも――。
「文也」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げる。母は湯飲みを両手で包むように持ちながら、僕の顔をじっと見ていた。茶色い瞳が、朝の日差しの中で、ひどく透明に見えた。
「ご飯、おいしい?」
「うん。おいしいよ」
そのとき、初めてまともに目が合った。すぐに、母の視線が下りる。湯飲みの中の味噌汁の表面が、彼女の手の震えで、かすかに波打っていた。僕は自分の指先が震えているのを、机の下で隠す。空気が、のどを見えない手で絞めてくる。胃のあたりがきゅっと縮こまって、胸の奥が、痛いのか、息苦しいのか、自分でもわからなくなってくる。沈黙が、数秒、数十秒と続いた。
「……お母さん」
気づくと、声が出ていた。僕の声ではなかったみたいに、乾いていて、妙に低くて、くぐもっていた。母がまた顔を上げる。その瞳の下の青い隈が、大学ノートに滲んだインクみたいに、彼女の肌を侵食していた。
「……触っても、いいかな」
何を言っているんだろう。でも、喉が勝手に動いて、声が滑り出た。母の瞳が、大きく見開かれる。それから、ゆっくりと頷いた。いや、頷いたように見えた。彼女の右手が、そっと湯飲みを置く。かたん、と音がした。その音に背中を押されるように、僕は椅子から立ち上がっていた。
母の隣に回り込んで、そっとその手に自分の指を絡める。細いのに、ごつごつしていて、温かい。あの日、僕のペニスを握ったのと同じ手。他人の精液を掬い取ったのと同じ指。それでも、その温かさは、昔から知っているもののままだった。すると、胸の奥からどろどろした熱いものが迫り上がってきて、喉の奥で詰まる。視界がぼやけて、母の指先が何重にも揺れた。
「ごめんね、文也」
母が先に泣き出した。声を押し殺すように、下唇を噛み、眉を寄せて。涙が、白い頬を伝って、カットソーの胸元に染みを作る。僕は首を横に振ることしかできなくて、そのまま母の頭を両手で抱えると、自分の胸に押しつけた。髪から、石けんの匂いがする。その下から、微かに汗の匂い。女の人の、生きた肌の匂い。心臓の裏側を、ざらついた舌で舐められるみたいに、官能的なまでの安堵が走る。
「謝んなくても、いいんだよ」
やっとの思いで言うと、母は何度も首を振って、僕の腰に腕を回してきた。ぎゅ、と、骨の形がわかるほど強く。背中に回された手のひらが、Tシャツ越しに湿っていて、その熱が皮膚の奥へじわりと染み込んでくる。僕は母の頭頂の、黒くて柔らかい髪に鼻先を埋めた。泣き崩れる母を、抱きしめ返す。抱きしめ返しながら、腹の底の情けない熱が、眠ったはずなのに、また頭をもたげてくるのを感じていた。母の裸体を知っている。母の性器の匂いを知っている。母の喘ぎ声を知っている。知ってしまった。その事実が、悲しみを通り越して、どす黒い飢えのように、僕の腿の間に疼き始める。
翌日から、二人の距離は、逆の意味でおかしくなっていった。
食器を運ぶ母の背中に、体が触れそうになる。洗濯物を畳む母の横顔から、目が離せない。夕方、風呂あがりの母の首筋に、水滴がひとつ伝うのを見ただけで、胸がざわざわと鳴る。僕は自分の変化を、隠しきれなくなっていた。母も、夜中に何度も廊下を歩く音がしていた。
事件から五日目の夜。僕は夢を見た。母が、全裸で、暗い部屋の中、こちらを向いて立っている。恥毛は剃り落とされていて、白い肌の中心が、ぱっくりと暗く口を開けている。僕は彼女の太腿のぬくもりに顔を埋めて、生臭い淫肉の匂いを吸い込み、ねとつく花弁の汁を舌で掬う。夢の中の母は、頭の後ろに生えた百合の花みたいに、静かに笑っていた。
夢のクライマックスで、思いきり精液が弾けた。自分の腹の上に、温かい飛沫が散ったのを感じて、はっと目が覚める。時計の針は午前二時。部屋の空気は汗と青年じみた濃い匂いで満ちていた。パジャマのズボンの中が、ねばねばと冷たい。母の夢で射精していた。
自嘲が、口の中で苦い味になった。暗闇の中で、自分を慰めた左手を、シーツで拭く。耳の中では、まだ母の喘ぎ声が渦巻いていた。
そのとき、扉の向こうで、小さく軋む音がした。
息を詰める。足音が、我が家の廊下を、ゆっくりと近づいてくる。そして、僕の部屋のドアの前で止まった。しばらくの沈黙。心臓が、肋骨を内側から蹴っている。葉が風に揺れるより軽やかに、控えめなノックの音が、二度、した。
「……文也、起きてる?」
母の声だった。かすれている。泣きそうなのに、泣きたくない、という声。僕は迷わずドアを開けた。冷たい廊下の空気が、汗ばんだ僕の肌に触れる。外からは、月明かりの薄い光が、細い窓を通って差し込んでいた。母は、白いネグリジェ一枚だった。薄手の布が、月の光を浴びて、体の線を透けさせている。胸のふくらみの先が、こすれるように浮かび上がっていた。
「……眠れないの」
母は小さく言った。その声が、僕の耳に甘く沈み込んでくる。
「……お母さん」
返事の代わりに、僕は母の手首を握っていた。細い手首。骨が、彼女の輪郭を支えるように、かすかに尖っている。自分でも驚くほど、声が落ち着いていた。
「入りなよ」
「……いいの」
「いいよ。入って」
母が、すり寄るように一歩、足を踏み入れる。部屋の匂いに混ざって、彼女の髪と、長く使った石けんの清潔なにおいが、ゆっくりと広がってきた。母は僕のベッドの端に腰掛けた。その拍子に、ネグリジェの裾が割れて、膝から上の白い太腿が、月光の中に浮かぶ。寝汗でうっすら光っている。滑らかで、しかし、触れたら吸い込まれそうな、白魚の罠のような膚。僕はその隣に座るほかなく、薄いシーツを肩にかけたまま、二人並んで、月明かりの中にいた。
「どれくらい、経ったっけ」
母が言う。
「明日で一週間……か」
「そう。あっという間だったね」
「あの日から、毎日、同じ朝が来るのに、夜だけが、すごく長い」
沈黙が流れる。古い家の、きしむ音が遠くで聞こえた。僕たちは、何を待ちくたびれて、ここにいるのだろう。母は目を伏せて、自分の両手をもみしぼるようにしていた。指と指を、絡めては、解いて、また絡めて。まるで祈っているみたいだと思った。それから、絡めた指を、自分の胸元へ持っていく。母の白い手と、月の光と、僕の影。
「文也は、寂しかった?」
「……わかんない。でも、お母さんのことばかり、考えてた」
「私も……文也のことばかり、考えてた」
僕の顔に、母の吐息がかかる。温かい風の粒。薄荷と、甘いものと、疲れが匂いに溶けていた。母が一瞬、視線を上げる。その目は濡れていて、昼の光の中で見たときよりも、ずっと底の方まで透けて見えた。
「……あの時のこと、思い出さない日が、ないの」
「うん。僕も、毎日……目を閉じると、あの時の」
「夢に出てくる」
そう言った瞬間、はっと口を噤んで、顔を曇らせた。でも、僕は聞いてしまった。母も、夢に出てくるのだ。あのBの指が僕の肛門を開いた感覚、Aが母を後ろから貫いていた光景、Cのスマホのカメラ。それらが、夜ごと、記憶のまぶたの裏で濃密にうごめく。母も僕も、同じものを反芻している。
「お母さんが、選んだんじゃないんだ。合意なんて、何もない。……それでも、考えるでしょ」
「考えるよ」
「私は、あのとき──」
声が裏返りそうになって、母は指先を自分の唇に押し当てた。
「私は、あのときのことを思い出して、自分の体が熱くなるの」
一音ずつ、紙を破るように、告白がこぼれる。空気が揺れた。ちがう。部屋の、月の光ごと、指が触れたわけでもないのに、母という存在の輪郭が、それまでのものと違うものになった。
「お母さんのこと、嫌いにならないで」
「ならないよ」
即答すると、母は、へなへなと笑った。涙が、月の光を反射して、一筋、光の道を引く。透明な筋を追うでもなく、僕は半ば無意識に、母の白い頬へ手を這わせた。泣き笑いの横顔。しっとりと温度を持つ。手のひらに、母の涙が触れる。生ぬるい。塩辛い。舐めたらどんな味がするのだろう。
「文也が、私を……怖くないの」
「怖いって、何が」
「わかんない。全部」
「お母さんのことを、嫌いになれるわけない」
「……文也」
「お母さんこそ、僕が気持ちわるくないの。あの後、何回も、女の人みたいに、お母さんの夢みてる」
声に出してから、ぞっとするほど恥ずかしかった。ベッドの上に、シーツの波だけが静かにある。
「じゃあ、同じね」
母が、くすり、と泣いたような、笑ったような、はっきりとしない声を漏らす。
「私たち、同じなのよ。あなたは、私と同じで、この家の中に、消えない匂いを感じてる。……どうにもならないのね」
「うん。どうにもならない」
ほんとうは、ちがう。こうやって言葉にするほど、僕たちの悪い欲は、寄り添って膨らんでいく。寄り添うのをやめられない。
「文也」
母が、体を倒してきた。僕の肩にもたれかかって、頭を首もとに寄せてくる。髪を濡らす熱い息が、Tシャツの上から鎖骨に触れる。控え目な、しかし迷いのない動作だった。僕は、わきの下に腕を回して、彼女の背中を抱く。ネグリジェの布一枚越しに、痩せた背骨の序列がくっきりと浮かび上がっていた。汗ばんで、生きた女体の熱。あの日、母を貫いた男は、背中をもっと乱暴に掴んでいた。母の肉に指を食い込ませていた。それを思うと、腹の底が、怒りなのか嫉妬なのか、とにかくぐらつく。
「昨日も、しようとしたの。あなたの部屋、行こうって。でも、怖くて行けなかった。お母さん、本当にどうしちゃったのかしら」
「じゃあ、今も、しようとしてるの」
「……ええ」
夜の静けさ。電気を消したままの部屋に、空調の風の音だけが流れている。母は、あの日と同じように、僕の首に腕を回した。泣き腫らした唇が、ためらいながら、僕の首すじに触れる。冷たくも、熱い含みを持つ口唇。母の唇の形を、初めて首筋で知った。
「文也……私、あなたのものになりたいくらいよ」
囁かれた瞬間、腿のつけ根がずきりと熱を噴き、ペニスが硬くそそり立つのを自分で感じた。もはや、止められなかった。
「お母さん」
呼んで、僕は彼女のネグリジェの裾に手をかけた。
その夜、僕たちは、強盗がいない部屋で、生まれて初めて、自分の意思で抱き合った。流れるように、あるいは堰を切ったように、互いの肌をまさぐり、互いの恥部を開き、互いの口と性器と、あと一つの浅い穴を、指で、舌で、肌で埋め合った。シングルベッドの上に仰向けになった母は、月の光を背に透かして、肉感的な裸体をくねらせた。あの日、愛液を滴らせていた腰が、今度は自分の手で息子の腰に巻きつき、剃り落とされてから伸びかけの恥毛が、昼の蛍光灯より淡い光の中で、産毛のように波打つ。
僕の口は、無我夢中で母の太腿の内側を這いずり回っていた。太腿はたるみがなく、外の世界から隠されて白く、鼻先を這わせると汗と、泡立ったねばつきが、粘膜みたいに纏わりついた。指を立てれば、濡れた柔肉がゆっくりと形を変える。匂いを嗅ぐと、潮と、若い肉の中からむせ返るように立ちのぼる、生煮えの百合の芯。それが、母の性器の匂いなのだ。美しいとか汚いとか以前に、僕の頭の中を茹で上げる淫臭だった。
母は、僕が太腿に顔を埋めているあいだ、僕の後ろを丸出しにし、うつ伏せの背中を震わせていた。前夜に自分を慰めて汚したシーツの上へ、母の髪が黒く広がり、絶えず「あっぁ、そこ、ん、ふ、文也ぁ」と、息も声も切れ切れに、空気と唾を溶かし合わせていた。やがて僕の顔は、彼女の肉裂にまで沈み込み、ちゅぷちゅぷと卑猥に舌を動かし、とぷりと溢れた熱い淫水を、唾液ごと啜り上げた。鼻先が、嵩張った肉の襞を押し分ける。息を吐くたびに、母の膣口はひくひくと戦慄き、その汁が僕の唇をてらてらと火照らせた。同級生の男の子が、まさか自分の母親の股間に舌を潜らせて、音を立てて膣を吸う夜を、夢見ても分からない。胸が焼け、ちぎれるように疼いた。その奥から、お母さんへの執着ではない、男の飢えた塊が、腹の肉を割って出てくる。
母の舌はというと、こちらが横向きになり、互いに脚を絡めるやいなや、ぬめる小さな生き物のように、僕の先端へへばりついていた。れろ、ねろ、にちゅ、ぢゅ、と、薄い唇の内側で鈴口をくすぐり、あの夜、強盗の亀頭にそうさせられたように、根元から先へ、何度も唾液を塗り広げる。ちゅぷ、じゅぷっ、と卑猥な音をわざと響かせ、飲み切れない唾液が、蛸の吸盤のように張りついて、白い泡を作って腹の上に垂れた。
「文也ぁ……お母さんので、擦って……入れて……体の中……かき回して」
僕は、あの日、強盗に繋がれた位置とは前後を変えて、母の両太腿を大きく抱え上げた。彼女の膣は、夜の空気の中で開ききらず、薄白い花芯を隠すようにひくついていた。伸びかけの陰毛が、月明かりに青く浮かぶ。あの日、剃られて無毛だった場所が、遠慮がちなやわらかい産毛に変わり、その中心の充血した肉芽が、ぬらぬらと粘液を溢れさせている。僕は母を、淫夢で見た何倍もあえかな目で見つめ、その狭い穴へ、自らのものを導いた。くちゅ……ぬる……と、熱い襞が吸いついてくる。
「あ──文也ぁ、すご……ぉ、熱……若い……あなたの、固くて、ぬける……」
「んん……お母さん、あ、それ、すごい、締まる、締まって……動けない、あ」
あの日、父の帰らない昼に初めて母の中へ入れたとき、ただ与えられるばかりだった粘膜が、今は、僕の怒張をみずから絡め取り、根元ごと杭を食いしゃぶる。奥の肉が溶けた洞穴みたいな熱を持って、入り口だけは固く、ひくひくと締める。それはAたちに蹂躙された傷の名残ではなく、夫の帰らない家で育まれた、女の飢えの形そのもののように僕には思えた。
抱き合う場所を反転させると、次は僕が下になった。母が上に跨がって、茶色い長髪を背中へ垂らし、輪郭ごと昇りつめようと腰を沈めてくる。窓の外の月に透ける頬には涙が光り、唇からは甘くこわれた吐息と一緒に「文也ぁ、あ、あ、あなたを、感じる……私の中……いちばん奥まで、きてる」と、らしくない単語が濡れて飛び散った。膣のしわが、入れたばかりの肉茎の形を追って何度も縮こまり、ぬちゃぬちゃと泡立つ音が、真夜中の部屋に満ちる。母の腰を打ち下ろすたび、ぱちゅ、ぱちゅ、と二人の濡れた接合部分が開閉し、淫水と汗が混ざった飛沫が、閉じ切った夜に白片となって散った。
「奥を、突いて、文也、もっと、あなたでいっぱいにして……あ、お母さんの、奥、そこ、子宮に、当たっる、あ、や、こわれ、こわれちゅ……」
急にしゃくり上げる悲鳴が、僕の耳を灼く。それが、強盗に開かされたものではなく、母の本当に蕩け切った声であることが、こみ上げる欲を抑えさせない。腰を思いきり突き上げると、くしゃりと仰け反った彼女の乳房が、月明かりの中を涼やかに泳いだ。白すぎる夜色の膨よかな稜線。頂に紅くしこった乳首が、空の一点を見つめ、その輪郭から汗が粒になって零れる。乳輪まで産毛に覆われた官能の領地。触れただけで、中がぎゅうと締まった。縦に揺さぶるたび、母は泣き、喘ぎ、絶頂を超えた奥へ何度も達して、その白い腹と太腿をびくつかせた。
「い、いく……お母さんも、もう、くる、きちゃう、文也ぁ……っ」
腰をわななかせ、秘唇で僕の雄を吸い上げる母の背中を、汗ばんだ掌で鷲掴みにする。柔らかいようで、背骨の真ん中に一本、しなやかな芯が通っている。その芯の上を、強盗たちも父も、あるいは僕だけが知らない男たちが撫でてきた。でも今、この背中を抱いているのは自分だ。下肢からせり上がる溶解が、骨の髄を白く塗りつぶしていく。
「出して、奥に、文也の、いつもの……お母さん、ほしい、ほしかったの……」
蕩ける囁きが、耳の化膿した場所へ包帯みたいに沁みる。僕は夢中で母の名を呼び、腰を突き上げた。射精音などという上品なものではない。性急な律動が奥底で泡立ち、迸る。どく、どく、と自分の肉茎がたぎるのが分かった。その熱に、母の中が泣くように強く仕上がり、満ちた精の重さのまま、長い大きな絶叫を一糸残らず呑み込んだ。
びゅる、びゅる、と吐き出したものが、母の熟れた襞に染みる。膣の奥に、若い胎の匂いが立ちこめ、どろりとした白濁液は、栓ごと腰が下がるたびに、溢れて閉じた割れ目の片端から月明かりへ筋を作った。
そうして、僕たちは、土日の昼も夜も、強盗の気配が消えた家で、二人とも全裸になり、お互いの背骨を、体液で濡らした。窓の外では、じじじじ、と耳鳴りのような蝉しぐれが、熱の溜まった大気をさらに沸かせていた。
父がいない週末の家を、二人の体臭と性の痕跡が支配していく。母は、居間を掃除しなくなった。いや、掃除機くらいはかけていたけれど、家具や床のシミを拭くことは、あの日以来やめてしまった。その代わりに、真昼の明るところで、白い腹を剥き出しにして、僕の舌と肉の楔を受け止めた。あのエプロンの胸元の染みだけが、もはや暗く乾いて、二人の交わりを見下ろしていた。
昼下がり。洗濯機の上に置かれた黄ばんだエプロンを、全裸の母が手に取り、それを目の高さに持ち上げた。横腹から、まだ温かい外光が入り込み、薄いカットソーだった場所の黄ばみが、ぼうっと不気味な地図を浮かび上がらせる。母は、まるで聖骸布に顔を寄せるように、長い黒髪を流して、胸元の染みへ頬を擦りつけた。それから、濡れた茶色の瞳で振り返る。
「ねえ文也。……洗わなくていいわよね」
そう言って、ふにゃりと笑った。その背後を、先ほどまで交わっていた午後の熱がとろとろと流れる。床に散った青いフレアスカートも、破れた淡いカットソーも、踏みつぶされたままだ。開け放した窓からは、栗の花の腐った匂いと蝉の断末魔が、むせるように流れ込んできていた。
「お父さんが返ってくる日だけ、普通のお母さんに戻すの。……そうするから、ね?」
母の指が、僕の胸をなぞる。産まれる前から知っている手。けれど今は、その一本一本が、僕の汗と精液の匂いをまとって、臍の下へ降りてくる。布越しではなく、真正面の白昼に、何の衣もなく互いを見せて。男の体はすぐに反応した。母はくすくすと笑い、膝を畳の床に落として、まるで許しでも請うように、硬く反った僕の肉へ、口を開く。射精の後も拭き取る間もなかった腺の一滴を、ちゅ、と啜り、それから、白い喉の奥までゆっくりと沈めていった。
「ん、ゔ、ふ……文也の味……もう、お母さんの一部……」
彼女の目尻に、さっきの愉悦の涙がまだこびりついている。色香というより、狂気に近い敬虔さで、母は僕の体温を舐め上げた。じゅぶじゅぶと水音を立て、舌のぬめりで裏筋から陰嚢まで包み込む。睾丸を口に含まれ、わきの下から汗が噴き出す。学校では、あの母が。玄関先で近所の人に笑いかける、あの母が。僕の竿に吸いつきながら、舌先で膨れた雁をねぶり続けている。
「ぢゅる、ちゅ、んん……ハァ……おいしい」
音を誇張しながら、うっとりと頬を膨らませる表情が、サディスティックな幼子のようで、金輪際、抗えなかった。
夕食は互いに半裸のまま、テーブル挟んで取ることもあれば、ひとつの箸で、からめた素麺を吸い合うこともあった。麺の切れ端から、つゆの飛沫が、母の乳首や胸元に飛ぶ。僕の指がそれを拭い、その意味を隠さず尖らせた。食後は食器も片付けないまま、青と蜜色と白の、体温だけが輪郭を繋ぐように、廊下で影を重ねた。父の革靴が玄関に並んでいた痕跡だけが、あの場所の空気を冷たく守っている。けれど、僕たちは、その場所から一番遠いリビングで、夜を迎える前から、侵略が止まらない体を舐め合った。
夜、眠りにつくとき。母は僕の腕を枕に、裸の背中を丸めて寝息を立てる。肩甲骨の下で、骨の流れが呼吸とともに波打つ。触れていようが、眠っていようが、消えない熱がある。僕は暗闇のなかで、彼女の安い寝乱れの匂いを嗅ぎながら、昼間搾り取ったばかりの肉棒が、もう次の輪郭を探していることに、怖れより先に、くらくらするような依頼心を感じる。
彼女が夜中に甘えて、股を開く日もあった。
涎と寝汗で化粧の溶けた、薄い白粉の匂い。月の光が弱い夜は、お互いの輪郭を指と舌で確かめ合い、性器の位置を手探りで重ねた。俺の女でもない。夫に守られるべき母。たしかに俺の母で、それ以上に、決して名を口にできない関係。それが土日ごとに、粘膜の血と涙と、薄く剥がれる礼節の全部を巻き込みながら、厚みを増していく。平日は、そんな夜のことなどなかったように、僕はランドセルを背負って、母は化粧を薄くして、駅のスーパーへ買い物に行く。でも、金曜の夜、母は玄関の鍵を閉めた瞬間に、白い素肌をあらわして、香り立つ脇の下を柔らかく蒸れさせながら、両脚の奥を見せて立つのだ。
このリズムこそが、あの夏の終わりから秋の訪れまで、僕と母の、血の通った完全な密室だった。
一週間後の土曜日。あの日と変わらず、外は照りつけるような暑さで、アブラゼミの声が家の周りを渦巻いていた。洗濯機の上に、黄ばんだエプロンが一枚、洗われることもなく置いてある。胸元の染みは、あの日よりもくっきりと乾いて、布の繊維に染みついて黒ずんでいた。母はあの日から、エプロンを洗わなかった。いや、あの日から、あのエプロンが洗濯機の上から動いたのを、僕は一度も見ていない。
「文也、今日、何食べたい?」
台所から聞こえてくる声に、振り向く。そこには裸の母がいた。朝から、いや、昼になる前から、母はもう素足で、パンツすらつけずに立っている。肩甲骨の下まで流れる黒髪だけが、彼女の白い背中を隠すか隠さないか揺れていた。冷蔵庫を開けて、中を覗き込む。冷たい光が、裸の太腿と、薄い産毛の残る陰部を浮かび上がらせた。
「……何でも、いいよ」
僕の声は、あの夏の日に比べたら、わりと普通に出ている。脈打つ心臓も、うまく隠せている。
「じゃあ、冷やし中華にしよっか。暑いし、さっぱりしたのが良いわよね」
母が笑いながら言った。振り向いた拍子に、形のいい乳房が、重力に引かれてゆっくりと揺れる。風呂場で、他の男に剃り落とされたはずの恥毛は、まだらに生え始めていて、かえってその成長過程が痛々しくて、なまめかしい。僕はすぐには返事ができなくて、生温い生乾きの匂いの染みついたソファを見ていた。
あのソファを、母は結局、拭かなかった。濡れていた部分はとうに乾き、表面は黄ばんで、てかてかと光っている。近づくと、汗と精液が混ざった、あの日の残り香のようなものが、鼻の奥をかすめる気がした。母は休みのたびに窓を全開にして笑った。風が通れば、匂いなんて消えるでしょうとでも言いたげに。
昼下がり。裸の母は、冷やし中華を器に盛りながら、やけに楽しそうに鼻歌を歌っていた。僕が近づくと、手を止めて、濡れた指先をそのまま僕の口元へ持ってくる。酢醤油の匂いがした。
「味見、する?」
言いながら、指で僕の唇に触れる。僕は、その甘酸っぱい味の混じった指を、口に含んだ。母の指先は、かすかに震えていた。目が合う。茶色い瞳が、昼間の光の中でぬれて、僕の顔を下から覗き見る。
「……どう?」
「ん、おいしい」
そう答えると、母はほっとしたように笑った。けれど、その笑みの奥で、あの日、強盗たちに弄ばれていたときと同じ、溶けた眼差しが一瞬、ひらめくのを、僕はもう見逃さなかった。
そのまま、どちらからともなく、抱き合った。母の裸の肌は、しっとりと汗ばんで、食べ物の匂いと、女の体の匂いとが混ざっていた。テーブルの上には昼食の用意が置き去りにされ、蛍光灯の光が、裸の二人の影を、あの日と同じリビングの床に伸ばしていた。
その翌週の土曜日も、また。週末ごとに、僕と母は、昼間から裸で体を重ねた。窓の外で、蝉の鳴き声が少しずつ弱くなり、夕暮れになると、つくつくぼうしが鳴いた。特別な言葉はなかった。いや、母はときどき「ごめんね」と口にした。それ以外にも、「お母さん、変よね」とか、「文也の、好き」とか。けれど、どれも、体が離れたあとの湿った沈黙の方が、ずっと雄弁だった。
八月があと少しで終わる土曜日。昼過ぎから汗ばむような日差しが照りつけていた。玄関の外に、革靴の音が響いた。磨き上げられた固いヒールが、アスファルトを規則正しく叩く、リズミカルな足音。僕はその音を、洗濯機の上の黄ばんだエプロンの染みを見ながら聞いていた。あの染みは、もう、洗っても落ちないほど乾ききっているように見える。しみ込んだ油と、あの日の記憶とが、布の奥深くで、もう分かちがたく結びついているようだった。父の革靴は、いつも月に一度、この家の敷居を跨ぐ。外の世界の硬い音を連れてきて、埃ひとつない玄関に、磨き上げられた黒い足型を並べる。けれど、洗濯機の上で黒ずんだエプロンの染みは、ここに男たちの体液を浴びた日が確かにあったことを、無言のまま物語っていた。音と染み。その二つだけが、父のいない日常と、父の知らない夜とを、同じ家の空気の中で隣り合わせにしていた。
革靴の音が、玄関で止まった。鍵が回る。重たいドアの開く気配がして、空気が動く。
「ただいま。暑いな、しかし」
父だった。母が、ぱたぱたと小走りに廊下を駆けて行く。黄ばんだエプロンに糊の香りを漂わせ、明るい声を上げている。エプロンの下は、あの白いカットソーだった。青いフレアスカートが、歩くたびにふわりと揺れた。
「文也も、元気か」
「うん。元気だよ」
そう答える僕の声は、自分でも軽い。足の下には、フローリングの床。あの日、母が叫び、尿を漏らし、自分の奥に精液を注がれたのと、同じ場所。洗濯機の上で、黄ばんだエプロンが、ひっそりと、父に背を向けるように置かれている。
「お父さん、荷物、先に置いてきてね。夕飯はね、今日は奮発してお刺身買ってあるのよ」
母の声が、台所から弾んで聞こえる。僕は、青いフレアスカートの裾の揺れる後ろ姿を見ながら、その内側に広がる暗がりを、確かに覚えていると思った。あの割れ目の奥の熱さも、父には決して見せなかった顔も。全部、この家の中に、まだ、息づいている。月に一度、父の革靴が玄関に並ぶ日だけ、僕と母は、夜まで、他人として笑う。
それから、また。父が月曜の早朝に東京へ戻ると、その翌週の土曜、僕と母は、昼から、裸で。それが夏の終わりから秋が始まるころまでの、我が家の、当たり前の、輪郭になっていった。
父を玄関に送り出したあとの、母の裸の背中を思い返す。あのエプロンの染みを、彼女は洗わない。いや、洗えないのかもしれない。僕は、あの染みを眺める母の横顔を何度か見た。あのとき母は、父の革靴の音が遠ざかっていくのを聞きながら、一体、何を思っていたのだろう。多分、誰にも言えないことを、あの染みにだけ預けるようにして、ひっそりと、息をひそめている。あのエプロンの染みが消えない限り、そして、月に一度、父の革靴が玄関に置かれる日が来る限り、僕たちは、この輪郭の中で、静かに、どこまでも、続いていく。
登場人物
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川崎文也 かわさき ふみや男性 ・ 14
外見: 汗で額に張りつく黒髪の短めの髪、濃い茶色の瞳、まだ細い手足と伸びきらない骨格、身長162センチ。服装: 半袖の白いポロシャツ、紺のハーフパンツ、白のスニーカー。中学二年生。母を普通の優しい母親だと思っていた。恐怖と好奇心の間で揺れる。口調は年相応で、たどたどしく、感情が先走る。
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川崎瑠美 かわさき るみ女性 ・ 39
外見: 肩甲骨の下まで流れるセミロングの黒髪、濡れたように明るい茶色の瞳、豊満すぎず肉づきの良い四肢、身長159センチ。服装: 白いカットソー、青いフレアスカート、黄色いエプロン。普段は化粧っ気の薄い、優しい微笑みの主婦。夫の単身赴任中、息子と二人暮らし。身体の奥に誰にも言えない渇きを隠している。
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強盗A27
外見: 短く角刈りにした黒髪、目つきの鋭い細い目、厚い胸板と長い腕、身長180センチ。黒い長袖シャツに黒い作業ズボン。三人の仕切り役。説明的で人を小馬鹿にした言い方をする。
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強盗B24
外見: 金髪に近い茶髪の短い髪、垂れ目、しなやかな筋肉、身長174センチ。黒いTシャツに迷彩柄のハーフパンツ。肛門への執着が強い。言葉が直接的で、息を漏らすように喋る。
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強盗C22
外見: 伸ばしかけの黒髪、丸い目、華奢な体つき、身長168センチ。灰色のパーカーに黒いチノパン。吃りが強く、オタク的で陰気な口調。細部へのこだわりが異常に強い。
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川崎孝之 かわさき たかゆき男性 ・ 43
外見: 白髪の混じった短髪、眼鏡、痩せ気味の身体、身長171センチ。服装: 紺のスーツ、黒い革靴。東京へ単身赴任中の会社員。性器が小さく、妻を満足させられない。語りの中にほぼ出ないが、家の空気を支配している。





