第2章: 女社長のアプローチショット(続き 2/3)
彼女の胸が、たびたび森下の腕に押し付けられる。柔らかく、しかし確固たる弾力。そのたびに、森下の股間がじわりと熱を持ち、ズボンの上からでもわかるほどに反応していくのを、彼は必死で隠そうとした。
「森下さん、汗かいていますよ」
突然、彼女がタオルを手に取り、森下の額にそっと当てた。その手の動きはあまりに自然で、拒む余地がなかった。
「あ、すみません、自分で……」
「いいんですよ。だって私のせいで、ずっと立ちっぱなしですもの」
彼女の指が、タオル越しに森下のこめかみを軽くなでた。その一瞬の接触が、森下の全身に電流を走らせた。
一時間のレッスンが終わる頃には、森下の方はまるで試合を三ラウンド戦ってきたかのようにぐったりしていた。精神的に、である。
「本当にありがとうございました、森下さん。すごく勉強になりました」
栗崎は満足そうに笑い、ペットボトルの水を一口飲んだ。その時、首を仰ぐ彼女の喉元が、汗で光る肌が、森下の目を釘付けにした。
「いえ……お役に立てたなら。栗崎さん、元から動きが良いですから、すぐにコツはつかめると思いますよ」
「褒め上手ですね。でも、まだまだ全然ダメです。あ、そうだ」
彼女は時計をチラリと見て、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「せっかくですから、このまま軽く一杯いきませんか? お礼も兼ねて。この近くに、オープンテラスのあるビアガーデンができたんですって。暑いですし、冷たいビールが飲みたくなりまして」
誘いの言葉はさらりとしているが、その目は森下を逃がすまいとしっかり捉えていた。断る口実を探している森下の脳裏を、彼女は先回りするように言った。
「倉重さんたちも、たまにあそこで飲んでるって言ってましたよ。今日は日曜だし、混んでないかもしれませんね」
結局、森下はうなずくしかなかった。
***
ビアガーデンは、彼女の言う通り比較的空いており、木陰のあるテーブルを選ぶことができた。
黄昏が始まりかけている時間帯で、オレンジ色の光がテーブルの上にゆらゆらと揺れていた。栗崎はジョッキを注文し、森下にも同じものを勧めた。
「今日は本当にありがとうございました。乾杯しましょう」
「いえ、こちらこそ……乾杯」
グラスが触れ合う音は、何故か森下の耳には大きく響いた。冷たいビールの苦味が喉を通り抜け、少しだけ熱せられた体を冷やしてくれる。しかし、それと同時に、アルコールがほぐし始める緊張が、新たな種類の緊張へと変わっていくのを感じた。
会話は、ゴルフのこと、仕事のこと、ゆるやかに流れていく。栗崎は巧みに話題を導き、森下の退職前の話や、今の生活についてさりげなく聞き出した。彼女は聞き手としても卓越しており、相槌や質問のタイミングが絶妙で、森下は知らないうちにいつもより多くを語っていた。
二杯目のジョッキが半分ほど空いた頃、空気が変わった。
ほのかに陽が落ち、周囲にランタンが灯り始める。その柔らかな照明が、栗崎の顔の輪郭をより艶やかに浮かび上がらせた。彼女はテーブルに肘をつき、ほんの少しだけ前のめりになった。
「森下さんって、本当に穏やかですね。倉重さんたちも、『森下はいいやつだ』って言ってましたよ」
「はあ……それは、どうも」
彼女の視線が、森下の目から、口元へ、そして首筋へとゆっくりと下りていく。その視線の動き自体が、愛撫のように感じられた。
そして、テーブルの下で、何かが起こった。
最初は偶然の接触かと思った。栗崎の膝が、そっと森下の膝に触れただけだった。しかし、彼女はそれを離さない。むしろ、ほんのりと圧力を加えてきた。
森下は固まった。動けなかった。彼の太ももに、彼女の膝の温もりが、薄いチノパンの布地を透過して確かに伝わってくる。
「あの……栗崎さん?」
「ん?」
彼女は無邪気に、いや、あまりにも無邪気すぎる表情で首をかしげた。しかし、テーブル下での接触は続いている。
そして、その接触が、動き始めた。
彼女の膝が、ゆっくりと、森下の太ももの内側を這うようにして上へ、上へと移動していく。その動きはあまりに遅く、あまりに確信に満ちていた。森下の呼吸が乱れ始めた。股間が、レッスン中以上に激しく反応し、ズボンの中で怒張し始めている。隠しようがない。
「森下さん」
彼女の声が、一瞬低く、曇った。
「この間、鈴木さんがおっしゃってたこと……本当なんですよね?」
その言葉と同時に、彼女の手がテーブルの下から滑り込んできた。膝ではなかった。彼女の細くて整った指が、直接、森下の太ももの上に置かれたのだ。
「え……」
森下は声にならない声を漏らした。彼女の手のひらが、ゆっくりと、しかし迷いなく、彼の腿を撫で始める。上へ、上へ。その動きは、もはや何の誤解の余地もない。
「私、ずっと気になってたんです。あのゴルフボールって」
彼女の指先が、ついに、ズボンの上からでも明らかに膨らんだ森下の股間の頂点に触れた。ほんの一瞬、軽くこするように。
その瞬間、森下の全身に火花が散った。彼は思わず腰を浮かせそうになり、テーブルを揺らした。ジョッキの中のビールが揺れた。
栗崎は、それを見て、ゆっくりと微笑んだ。それは、獲物を確実に視界に収めた狩人の笑みだった。彼女の黒瞳が、ランタンの灯りを反射して、欲望そのもののように煌めいている。
「……ほんと、だ」
彼女の呟きは、吐息のように熱かった。指が、もう一度、形を確かめるように、そっと圧をかけた。布越しに、その大きさ、硬さ、脈打つような熱を、彼女は貪るように感じ取っている。
森下は、もう何も言えなかった。理性が、アルコールとこの女性の魔術的な手によって、溶解し始めていた。ただ、彼女の指の動きと、自分の中に渦巻く渇望だけが、世界のすべてのように感じられた。
栗崎は、森下の顔をじっと見つめながら、唇をわずかに湿らせた。
「森下さん……」
その声は、もう囁きに近い。
「このまま、ここにはいられないわ。私……我慢できなくなっちゃいそう」
彼女の指が、最後に一度、強く、しかし短く握りしめるような動きをした。それだけで、森下は思わず息を詰まらせた。
「近くに、いいホテルがあるの、知ってる?」
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