第4章: 愛の巣という名の飼育(続き 2/3)
ゴルフコンペの後、仲間たちがまだクラブハウスで飲み騒いでいるさなか、彼女は森下をシャワー室に誘い込んだ。流れるお湯の音を遮断に、彼女は彼を壁に押し付け、跪いて口で彼をしごいた。他の仲間の笑い声が遠くで聞こえるのが、かえって興奮を煽った。
「んちゅ……ちゅぱ……ねえ、鈴木さんたちが、今こんなことしてるって知ったら……どう思うかな?」
彼女は上目遣いで彼を見ながら、舌先で亀頭の割れ目をしつこく舐めた。森下は唇を噛みしめ、必死に声を押し殺した。
毎回、彼女は違う場所で、違う姿勢で、彼の巨根を味わった。そして毎回、彼女は確信を深めていった。
──このペニスは、ただの性器ではない。
彼女のビジネスが、信じられないほど好調になった。難しいと思われていた取引が次々とまとまり、新しい案件が舞い込んできた。彼女はかつて、身体を使って男たちを翻弄し、利益を引き出してきた。しかし、森下の場合は違った。彼と関係を持った後、彼女自身の「運」そのものが上向いているように感じられた。
ある夜、彼女は一人でワインを飲みながら考えた。
これまで、彼女は多くの男と関係を持ってきた。便利な男、金を持つ男、権力のある男。彼らは彼女にとって「道具」だった。しかし森下は……違う。
彼の巨根が、彼女を変えている。
彼女は、他の男たちとの関係をすべて整理し始めた。面倒な割にメリットの少ない男たちから、順に縁を切っていった。電話は出ない、メールは返さない。かつての彼女なら、リスクを分散させるためにも複数の男を繋ぎ留めただろう。だが今は、そうする気になれなかった。
──森下だけで、十分だ。
その思いが、ある決断へと彼女を導いた。
彼女は高級住宅街の新築マンションを購入した。最上階の角部屋、夜景が一望できる物件だ。内装は彼女好みのモダンなデザインにこだわった。だが、本当の目的はそこではなかった。
ある晩、森下をそのマンションに招いた。
「どう? 気に入ってくれるかな」
広々としたリビングで、彼女はくるりと回って見せた。森下はきょろきょろと周りを見渡し、感嘆の息をついた。
「すごい部屋ですね……栗崎さん、ここにお引っ越しされるんですか?」
「ううん」
彼女はいたずらっぽく笑い、鍵を一本、彼の前に差し出した。
「ここは、森下さんのための部屋なの」
森下は一瞬、理解できずに彼女の顔を見つめた。
「え……? どういうことですか?」
「あなた、ずっと実家に住んでるんでしょ? あそこ、駅から遠いし、何より暗いじゃない。ここなら、私の会社にも近いし、何より……」
彼女は彼に近づき、胸を彼の腕に押し付けた。
「私が会いたいときに、すぐに会いに来られるでしょ」
彼女の目は、もう完全に所有欲に輝いていた。
「ここが、私たちの“愛の巣”。あなたは、ここに住んでくれればいいの。もちろん、家賃も光熱費も全部私が持つよ。あなたはただ……ここにいて、私が欲しいときに、私を満たしてくれればいい」
森下は言葉を失った。彼の脳裏を、複雑な感情が駆け巡った。退職後の侘しい実家での生活。妻に去られた喪失感。そこに現れた、この妖しいまでの女性との関係。そして今、彼女から差し出される、豪華な「鳥籠」。
それは、明らかな飼育の提案だった。
「でも……そんな……」
「だめ?」
彼女は彼の胸に手を置き、上目遣いで見上げた。その瞳は、一瞬で曇った。
「私、森下さんに会えないと……落ち着かなくて。仕事も手につかなくなるの。あなたのあれが、頭から離れなくて……」
彼女の手が、彼の股間をそっと包んだ。彼はもう、そこで反応せずにはいられなかった。
「ほら……あなたも、私を欲しがってる」
彼女はゆっくりと跪き、彼のズボンの前で顔を上げた。
「お願い。ここにいて。私だけのものでいて」
その言葉に、森下の抵抗は崩れ去った。
彼はうつむき、小さくうなずいた。
「……わかりました」
その返事が、彼女の笑顔を咲かせた。
翌週、森下は実家から最小限の荷物だけを持ち込み、そのマンションに移り住んだ。鍵は彼女が管理し、彼には彼女が渡した一枚だけが手元にある。彼女は頻繁に訪れ、時には泊まり、時には短い時間だけ身体を重ねて去っていった。
森下の生活は一変した。
朝、彼女が仕事に出た後、彼は広いリビングで新聞を読む。かつてのサラリーマン時代のような焦りはない。午後は買い物に出かけ、彼女の好みのワインや食材を揃える。夕方、彼女が「今から行く」というメッセージが来れば、彼は食事の準備を始める。
そして夜──彼女が帰ってくれば、必ず性交があった。
ソファーで、キッチンカウンターで、広いバスタブで、もちろんベッドで。彼女は彼の巨根を、毎日のように貪り、味わい、自分の中に満たすことを求めた。
「ああ……今日も、いっぱい感じる……森下さんの中、すごく熱い……んっ!」
彼女が彼の上で狂ったように腰を振る。彼は彼女の柔らかな肉体を受け止め、時折、彼女の膨らんだ乳房に唇を寄せる。彼女の喘ぎ声が、高級マンションの防音設備をもってしても、隣に漏れやしないかと心配になるほどだった。
ある日、彼女は彼のペニスを両手で抱えながら、恍惚とした表情で呟いた。
「私、これに飼われてるんだよね……森下さんじゃなくて、この子に」
彼女は、亀頭に頬を擦り付けた。
「この子がいないと、もう生きていけないみたい……」
森下は彼女の言葉を聞きながら、複雑な感慨に囚われた。
退職後、彼は必要とされることから遠ざかっていた。妻からも、社会からも。だが今、この美女から、しかもこのような形で──必要とされている。彼の巨大な性器という、ただ一点だけで。
それは屈辱だったろうか? それとも、歪んだ肯定だったろうか?
彼にはもう、区別がつかなかった。
彼の世界は、このマンションのドアの内側で完結しつつあった。外では相変わらず、かつての仲間たちが月に一度のゴルフコンペを楽しみ、倉重や鈴木が彼の近況を気にかけているかもしれない。しかし彼の中では、もうあの生活は遠い過去のものになっていた。
今、彼の存在意義は、栗崎亜美という女を、この巨根で満たし続けることだけだ。
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