第5章: 僕の彼女は先生のもの

第5章: 僕の彼女は先生のもの
路地裏のネオンが、海斗悠真の網膜から焼き付かれることなく消え、数週間という名の、まるで粘土のように重くて流動的な時間が過ぎていった。彼は学校で幽霊のように過ごしていた。教室の窓際の席から、廊下を騒がしく通り過ぎていく生徒たちの声が、まるで水中で聞こえるように歪んで聞こえる。その喧騒の中に、板橋みつはの姿は常にあった。しかし、それはもう彼のものではなかった。
彼女の周りには、常に桜井宗介の気配がまとわりついていた。休み時間、彼女は国語準備室の前で桜井と二人きりで話している。その姿は、もはや隠すことも憚らない、公然たるものだった。悠真が遠くから見ていると、みつはは桜井に何かを囁かれ、はっと顔を赤らめては、甘えるように彼の腕にそっと触れる。その表情は、悠真が知っていた引っ込み思案な少女のものではない。支配されていることへの安堵と、その歪んだ関係に陶酔する、妖艶な女の顔だった。
ある日、廊下ですれ違った。悠真が無意識に目を合わせようとすると、みつはの視線は、彼を完全に貫通して、その先にいる桜井に吸い寄せられていった。彼女の瞳には悠真の姿が映っていなかった。ただ、年上の男を求める渇いた瞳だけが輝いていた。彼女が通り過ぎた後、古い書斎の黴と、甘ったるい香水が混ざり合ったような、あの独特の匂いが残った。それは、もはや彼女の体の一部となり、彼女を所有する男の刻印だった。悠真の胸に、もう痛みさえ感じなかった。ただ、ぽっかりと空いた穴に、冷たい風が吹き抜けていくだけだった。
そんな放課後、教室で一人、鞄をまとめていると、ポケットの中のスマートフォンが静かに振動した。誰からのメッセージでも、もう彼の心を動かすことはできないと思っていた。だが、画面に表示された差出人の名前を見た瞬間、彼の呼吸が浅くなった。『桜井宗介』。それは、悪魔からの招待状だった。彼の指は、恐怖と諦めが混じり合った、奇妙な冷静さで、画面をタップした。
動画ファイルだった。再生ボタンを押す指が、震えを抑えきれずにわずかにぶれる。画面が暗闇からゆっくりと明るくなっていく。見覚えのある、ラブホテルの寝室だ。薄汚れた壁紙、ぐしゃぐしゃに乱れたシーツ。そして、その中央に、信じられない光景が映し出されていた。全裸で四つん這いになっている、板橋みつは。彼女の長い黒髪が、汗で濡れて背中に張り付き、思春期の丸みを帯びた尻が、正面に向けて高く突き出されている。カメラの前で、彼女はゆっくりと顔を上げ、画面のこちら、つまり桜井の目を見つめている。その瞳は、羞恥と快楽で完全に蕩けきり、うつろなほどに潤っている。
「先生のアナルだけが、私の全てです」
その声は、甘く、蕩け、そして絶対的な服従を誓う祈りのようだった。そう言い終わると、みつはは再び顔をうつむけ、桜井の老いた体の、最も奥深く、最も穢れた場所へと、自らの唇を近づけていく。画面は、その部分をアップで捉えていた。皺の刻まれた、茶色く引き締まった肛門。みつはの、小さくてピンク色の舌が、恐る恐る、しかし確信を持って、その中心に触れる。
くちゅっ、という、生々しくて恥ずかしい音がスピーカーから流れ出る。悠真は、その音に耳を塞ぐこともできず、ただ見つめていた。みつはの舌が、まるで最上級の宝石を舐めるように、ゆっくりと肛門の周りをなぞり始める。ねっとりとした唾液が、穴の縁に伝い、白くて濁った糸を引く。彼女はその匂いを深く吸い込むように、鼻を鳴らし、さらに舌を突き出す。舌の先が、皺の一本一本を丁寧になぞり、時にはぐりぐりと穴の中へと押し入れようとする。
「んっ…はぁん…あぁ…先生の…くちゅっ…匂いが…んぐっ…」
彼女は、まるで聖餐を受ける信者のように、桜井の肛門を愛で、崇拝していた。その顔はもはや、悠真が知っていた板橋みつはの顔ではなかった。快楽に歪み、屈服に陶酔した、見るもおぞましい淫乱の仮面だった。じゅるじゅる、じゅぽじゅぽ、と、唾液と愛液が混ざり合った、下品で濃密な音が部屋に響き渡る。彼女の股間からは、愛液が太い筋となって垂れ、シーツを濡らしていく。彼女の全てが、あの老いた男の、ただ一つの穴のために存在しているのだ。
悠真のスマートフォンから、光だけが漏れ、彼の顔を蒼白く照らしていた。彼の目からは、とっくに涙が枯れ果てていた。もう何も感じられない。怒りも、悲しみも、嫉妬も、全てがあの路地裏で粉々に打ち砕かれ、今はただ、真っ白な虚無だけが残っていた。彼は、愛する彼女が、自分の知らない男に、最も卑しく、最も屈辱的な方法で、全てを捧げている姿を、感情を殺して、ただ眺めていた。画面の中、みつはが肛門を舐める舌の動きが、さらに激しく、執拗なものになっていく。その光景が、悠真の世界の最後の断片となって、静かに、そして永遠に、彼の意識に焼き付けられた。
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