弟の肉茎と彼氏の指先、どちらも知った夏休み、夕方五時のチャイムが鳴るたび膣と肛門が疼き出す女子高生の背徳
あらすじ
七月下旬、夏休み目前の放課後。チアリーディング部の練習を終えた環菜は、サッカー部主将の彼氏・斗真に連れられ、学校近くのマックに寄る。斗真はいつもより少し緊張した面持ちで、「今度の土曜、家に遊びに来ないか」と環菜を誘う。両親が不在の自宅へ、恋人を招くことの意味。まだキスまでしか経験していない環菜の胸に、期待と不安が同時に湧き上がる。斗真の清潔な笑顔を見つめながら、あたしは彼と、とうとう、と思う。しかし、斗真のシェイクのストローに残る唇の痕と、自分がかじったポテトの欠片を見比べながら、心の奥底では別の熱が燻っていた。家に帰れば、両親はまだ帰っておらず、小学六年生の弟・悠路が待っている。夏休みに入れば、毎日のように続く秘密の時間。リビングのソファで宿題をする悠路の前に座ると、彼は何も言わずに環菜のスカートに手を伸ばす。姉の身体を知り尽くした弟の指先は、斗真のそれよりもずっと直接的で、容赦がない。「姉ちゃん、今日すごく濡れてる」と耳元で囁く声に、環菜は斗真の誘いへのときめきを一瞬で塗り替えられていく。夕方五時のチャイムが鳴り響く頃、環菜は悠路の細くも執拗な指を受け入れながら、斗真の家での未来に思いを馳せ、二つの関係の狭間で震える。夜、家族そろっての食卓では、いつもの明るい姉を演じる環菜の箸が、微かに震えていた。
第1章 ストローに滲むふたつの色、彼氏の誘いと弟の指先
第1章: ストローに滲むふたつの色、彼氏の誘いと弟の指先
七月も終わりに近づいた放課後、校庭にはまだ熱を孕んだ陽射しがアスファルトをじりじりと炙っていて、環菜はチアリーディング部の練習を終えたばかりの身体にまとわりつく汗をタオルで拭いながら、昇降口の前に立っていた。ポロシャツの胸元は小さく盛り上がった膨らみのあたりまで汗で色を変えていて、紺のショートパンツから伸びるふくらはぎには、夏の陽射しに焼けた健康的な小麦色の肌が、まだほんのりと赤みを帯びていた。
「環菜」
聞き慣れた、けれどいつもより少し硬い声が後ろからかかって、振り向くと、斗真がサッカー部のウインドブレーカー姿で立っていた。短く整えられた黒髪の先からは汗の雫がひとつ、こめかみを伝って落ちていく。彼は少しだけ照れたように目を細めて、言った。
「今から、ちょっとマック寄らないか」
「いいよ。あたしも喉かわいてたとこ」
環菜はにっこりと笑って、タオルをバッグに押し込んだ。斗真の隣に並ぶと、洗濯洗剤の爽やかな匂いがふわりと鼻先をかすめて、それだけで胸の奥がむずむずと落ち着かなくなる。二人は校門を抜け、駅前のマックへ向かった。歩きながら、環菜は斗真の横顔を盗み見た。彼はあまり喋らない。でも、沈黙が苦にならないのが斗真のいいところだった。
マックの自動ドアが開くと、冷房の冷たい空気が環菜の汗ばんだ首筋を撫でていった。店内は部活帰りの高校生や塾に向かう中学生で混み合っていて、二人は窓際の小さなテーブルに向かい合って座る。斗真がトレーに載せてきたのは、バニラシェイクとコーラ、それにポテトのLサイズがひとつ。環菜は自分の前に置かれたシェイクの蓋を開けて、白いストローを差し込んだ。冷たい甘さが喉を滑り落ちていくたびに、さっきまで校庭で跳んでいた時の熱が、身体の芯からゆっくりと引いていくようだった。
「また日焼けしたな」
斗真がポテトを一本つまみながら、環菜の二の腕を見て言った。環菜は自分の腕をちょっとつまんでみせて、
「チア部の練習、ずっと外だからね。もう真っ黒でしょ」
「健康的でいいと思う。似合ってる」
そう言って、斗真は少しだけ視線を逸らした。彼の耳の縁がうっすらと赤くなっているのを、環菜は見逃さなかった。斗真はいつもこうだ。本心で褒めているのに、それを面と向かって言うのが恥ずかしいみたいに、すぐ目を逸らす。
環菜はストローを唇で挟んだまま、斗真のシェイクのストローを見た。透明なプラスチックの先端に、彼の唇の痕がうっすらと白く曇っている。それは斗真の体温と湿り気を吸い込んだ跡で、環菜はそんな痕にまで胸の奥が熱くなるのを感じた。あたしは彼のことが好きなんだ、と改めて思う。斗真の穏やかな目元も、少し不器用な手つきも、サッカー部の主将なのに女の子の前だと声が小さくなるところも、全部が愛おしかった。
「あのさ」
斗真がコーラのストローを指でつまみながら、声をひそめた。
「今度の土曜、もし暇だったら……うちに遊びに来ないか」
環菜はストローを吸うのを止めて、顔を上げた。斗真の指先が、微かに震えている。彼は環菜の目をまっすぐに見られないようで、テーブルの上のポテトの紙箱に視線を落としていた。
「うち、その日は親が親戚の法事で朝から出かけるんだ。だから……誰もいない」
誰もいない。その言葉が、ざらりとした手触りで環菜の胸の内側を撫でていった。誰もいない斗真の家に、あたし一人で行く。それは、これまでキスだけだった二人の関係が、確実に一歩先へ進むことを意味していた。環菜は心臓がとくとくと早鐘を打ち始めるのを感じながら、それでも明るい声を作って言った。
「いいよ。何時くらいに行けばいい?」
「え、ええと……十時とか、どうかな。午前中から……ゆっくりできればって」
「オッケー。楽しみにしてる」
環菜がにっこりと笑うと、斗真の肩から力が抜けたのがわかった。彼はほっとしたようにシェイクを一口吸って、それから照れくさそうにかきあげた前髪の先を指で弄った。その仕草があまりに初々しくて、環菜の胸はきゅうと締め付けられる。斗真はきっと、あたしを大事にしようとしてくれている。無理に触ろうともしないし、嫌がることは絶対にしない。そんな彼の誠実さが、環菜には眩しくもあり、そして少しだけ、痛かった。
なぜなら、環菜の身体はもう、とっくに「大切にされる」だけでは足りない場所を知ってしまっているからだった。
──その日の夕方、環菜が玄関の鍵を開けると、家の中はしんと静まり返っていた。両親はまだ仕事で帰っていない。リビングのエアコンはついておらず、むわりとした熱気が閉じ込められていて、環菜は窓を開けてからソファにカバンを置いた。部屋着に着替えようと自分の部屋に向かう途中、隣のドアが開いた。
「おかえり、姉ちゃん」
悠路が、部屋の入り口に立っていた。白いTシャツに膝上のハーフパンツというラフな格好で、まだあどけない顔立ちに柔らかい短い髪がかかっている。小学六年生の弟は、けれども目つきだけは妙に落ち着いていて、環菜の少し湿ったポロシャツの胸元をちらりと見てから、ゆっくりと微笑んだ。
「ただいま。宿題、ちゃんとやってる?」
「やってたけど、飽きちゃった」
環菜はなんだか、その笑顔に捕まってしまったような気分になった。悠路の視線はいつも、姉の表面上の言葉なんて最初から聞いていないみたいに、身体の奥の反応を探るように注がれる。環菜が自分の部屋に入ろうとすると、悠路が後ろからついてきて、ドアを閉める。かちり、と小さな音がして、環菜の背筋に緊張が走った。
「ねえ、姉ちゃん。今日、斗真ってやつと何話してたの」
「……別に。次の土曜に遊びに行く約束しただけ」
「ふうん。家に?」
悠路の声は平坦だった。でも、環菜にはわかっていた。この弟は、いつも環菜の中にある秘密を、匂いで嗅ぎ分けるように察知する。彼はゆっくりと環菜の後ろに近づいて、小さな手のひらを環菜の腰に当てた。Tシャツ越しに伝わる体温が、じんわりと肌に浸透していく。
「姉ちゃん、また日焼けしたね。ここ、ちょっと白くなってる」
悠路の指先が、環菜のショートパンツのウエスト部分をそっとなぞる。ゴムの跡がくっきりと白く残った腰骨のあたりを、彼の指はまるで宝物に触れるみたいにゆっくりと撫で上げた。環菜は小さく息を呑んだ。斗真に「日焼けしたな」と言われた時とは、まったく違う。弟の指先は、姉の肌の上で何かを探り、何かを確かめるような動き方をする。環菜が微かに腰を引くと、悠路はくすりと笑った。
「姉ちゃん、斗真のこと好きなくせに、僕が触ると、すごい顔するんだね」
悠路のもう一方の手が、環菜のショートパンツの前ボタンにかかる。環菜は咄嗟にその手を掴もうとした。でも、悠路の指は環菜の手をするりとかわして、ボタンを外してしまう。ジッパーが下ろされる小さな金属音が、静かな部屋にやけに大きく響いた。
「だめだよ、悠路。まだお父さんもお母さんも……」
「帰ってくるまで、まだ二時間もあるよ」
悠路の声は甘えるような響きなのに、その言葉はまるで逃げ道を塞ぐみたいに確信に満ちていた。環菜は膝の力が抜けていくのを感じながら、ベッドに手をついた。悠路はそんな姉の前に膝をついて、下着ごとショートパンツを太腿の半ばまで引き下ろす。汗で湿った綿の下着が露わになって、環菜は恥ずかしさで目を閉じた。
「姉ちゃん、もう濡れてる」
悠路の細い指が、下着の上から割れ目をなぞる。布越しにもはっきりとわかるほど湿り気を帯びたそこを、彼はゆっくりと、まるで字を書くみたいに指先でなぞった。そのたびに、環菜の腰が小さく震える。
「やめて、悠路。今日は……」
「やめない」
彼の声はいつもの「甘える弟」のものではなかった。それは環菜をよく知る、年齢よりもずっと大人びたオスの声だった。悠路は環菜の下着のクロッチ部分を横にずらして、露わになった陰裂に指を這わせる。ぬるりとした感触が指先を包み、くちゅ、と小さく濡れた音が立った。環菜はベッドのシーツをぎゅうと握りしめて、声を殺す。
「斗真とデートした日の姉ちゃんって、いつも濡れるの早いよね。斗真に触られて、ドキドキしてきたんだ?」
耳元で囁かれる声に、環菜は首を振る。斗真に触られたわけじゃない。触られたいと思っただけで、それだけで、あたしの身体はこんなふうになってしまう。こんなふうに、準備を始めてしまう。それをわかっているくせに、悠路はわざと斗真の名前を出す。環菜が恥ずかしさで身をよじるたびに、弟の指はさらに深く、陰唇の狭間を押し広げていく。
「ちが、ぅ……」
「違わないよ。ここ、もうこんなにぬるぬるしてる。斗真に見せたらびっくりするかもね。姉ちゃんのここ、すごいよだれ垂らしてるって」
「いわない、で……」
環菜の声は涙混じりの震え声に変わっていた。悠路の指が、陰核の包皮をそっと押し上げて、敏感な蕾を剥き出しにする。くちゅっ、ぬちゃ、と粘液の絡まる音が、環菜自身の耳にまで届いて、羞恥心がさらに膣の奥を収縮させた。斗真の優しい眼差しを思い出す。彼がくれたシェイクの甘さと、ストローに残った唇の痕。それらが、今、弟の指で掻き回されている自分の淫らな音と、頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。
「あ、あぁ……っ」
悠路の中指が、ぬるりと膣口に押し込まれた。細いけれど関節のはっきりした指が、環菜の熱い内壁をゆっくりと広げながら侵入してくる。彼の指は姉の膣内の、少しざらついた気持ちいい場所を知り尽くしていて、入り口から二センチほどの前壁を、くい、と押し上げるように曲げた。
「ここ、好きだよね、姉ちゃん」
「ちが、やめ……んんっ」
環菜は腰を引こうとしたが、悠路のもう一方の手がしっかりと腰骨を掴んで離さない。彼の指は執拗にGスポットを擦り上げ、ぐちゅぐちゅと下品な水音を立てながら抽送を繰り返す。そのたびに環菜の膣は歓喜の収縮を起こして、もっともっとと指を締め付けた。斗真があんなに真剣に「遊びに来ないか」と誘ってくれた、その声が、今は遠くの雑音のようにしか聞こえない。たった一本の弟の指が、環菜の思考を全部、どろどろに溶かしていく。
ふと、窓の外から、夕方五時のチャイムの旋律が流れ込んできた。『故郷の空』の電子音が、夏の淀んだ空気を震わせながら、遠くの小学校の方角から聞こえてくる。あのチャイムはいつも、終わりを告げる音だった。遊びの時間の終わり、秘密の時間の終わり。両親が帰ってくるまであと少し、という境界の音。環菜はその音を聞きながら、悠路の指を受け入れていた。
「チャイム鳴ったね」
悠路がささやくように言った。彼の指は止まらない。環菜の膣の中でくちゅくちゅと動き続けている。
「土曜、斗真の家で、何されるんだろうね。姉ちゃんのここ、斗真のちんぽ、咥えられるのかな」
「やめて……そんなこと」
「僕のより小さいんでしょ、斗真の。言ってたよね膨らみから普通サイズだろうって? 姉ちゃん、それで満足できるの」
環菜の脳裏に、斗真の不安そうな顔が浮かんだ。彼はきっと、あたしを傷つけないように、怖がらせないように、ゆっくりと触れてくれるだろう。でも環菜の身体は、もっと太くて長いもので、奥の奥まで一気に抉られるような快楽を覚えてしまっている。斗真の誠実さが、斗真の優しさが、逆に環菜の心をざらざらと擦りむいていく。
「あ、あぁん……っ」
環菜は小さく声を上げて、膣の奥をきゅうきゅうと痙攣させた。悠路の指が抜き差しされるたびに、ぬちゃぬちゃと愛液が溢れて、太腿の内側を伝い落ちていく。彼はその濡れた音を楽しむみたいに、耳元で「すごい音」と囁いた。環菜は顔を真っ赤にして、枕に顔を押し付ける。斗真の家で、斗真と初めて結ばれるかもしれない土曜日。その未来を想像しながら、環菜は今、弟の指で絶頂に追い上げられようとしていた。
「あ、イく、イっちゃ……!」
「いいよ、イって。斗真のこと考えながら、イきなよ」
悠路の声が、甘く耳の奥に染み込んでいく。環菜は斗真の笑顔を思い浮かべようとした。でも、瞼の裏に浮かぶのは、土曜の斗真の部屋で、自分がどんな顔をして彼を受け入れるのか、その想像ばかりだった。その瞬間、環菜の身体が大きく跳ねて、膣内の壁が悠路の指をぎゅううと締め付ける。洪水のように溢れ出した愛液が、悠路の手のひらを濡らし、ベッドのシーツに染みを作った。
環菜はしばらく荒い息を繰り返して、ぐったりとベッドに突っ伏した。太腿はまだ小刻みに震えていて、ショートパンツはずり落ちたままだ。悠路はそんな姉の髪をそっと撫でてから、ティッシュで指を拭きながら部屋を出ていった。
「お風呂、先に入るね。姉ちゃんも、そのままじゃお父さんたち帰ってきちゃうよ」
弟の声は、もう普段の無邪気な子供のものに戻っていた。
──夜、七時を過ぎて、家族四人が食卓を囲んだ。父の雅功が「今日は暑かったなあ」と笑いながらビールを注ぎ、母の美沙子が冷や奴と茄子の味噌汁を運んでくる。食卓には焼き鮭とほうれん草のお浸し、それに冷たいそうめんが並んでいた。環菜はいつも通り、部活の話や明那の話をして、両親を笑わせた。
「環菜はほんとに元気だなあ。毎日よくそんなに動けるもんだ」
と雅功が感心したように言う。環菜は「チア部は楽しいからね」と笑って見せた。美沙子が「でも、あんまり無理しちゃだめよ」と付け加える。悠路は隣でそうめんをすすりながら、「姉ちゃん、すごいよ、いつも」と、何の含みもない顔で言った。
環菜は味噌汁を一口すすって、箸を置いた。箸先が、かたかたと小さく震えて、器に当たって微かな音を立てる。環菜は咄嗟に箸を握り直して、何事もなかったかのようにお浸しを口に運んだ。家族の誰も気づかない。斗真の優しい誘いと、悠路の容赦ない指先。その二つの熱が、環菜の胸の内で渦を巻いていることを、この食卓の誰も知らなかった。
夕方のチャイムの余韻はもう消えていた。けれども環菜の耳の奥には、まだあの旋律がこびりついていて、土曜日までのカウントダウンを静かに刻み始めていた。
第2章 親友のカーディガン越しの膨らみと、秘密を舐める舌の音
第2章: 親友のカーディガン越しの膨らみと、秘密を舐める舌の音
土曜日を目前に控えた金曜日の朝、環菜はいつもより三十分も早く目を覚ました。枕元のスマホを手に取り、斗真からのラインを何度も読み返す。《十時に駅前のマックで待ち合わせでいいかな。そこからうちまで歩いて五分だから》——その文字列を目で追うたびに、胸の奥がきゅうっと縮まるような感覚があって、環菜は薄い掛け布団の下で膝を抱え込んだ。まだ誰も起きていない二階の廊下は静まり返っていて、窓の外では七月終わりの蝉が一匹、試し鳴きのような弱々しい声を上げている。あした、斗真の家に行く。両親がいない、二人きりの部屋で、自分はどうなるんだろう、という靄のかかった予感が、頭の芯をぼうっと熱くさせた。環菜はそろそろと右手を下腹部に這わせ、パジャマのゴムの上から軽く押さえてみる。昨夜、悠路に触れられた場所がまだうっすらと疼いていて、それはまるで小さな鈴が身体の奥で転がっているような、鈍くて甘い残響だった。
七時半になって階下から母の美沙子が「環菜、悠路、朝ごはん食べちゃいなさーい」と呼ぶ声が聞こえると、環菜は慌ててベッドから飛び降り、パジャマの皺を手で叩いて整えた。食卓には父親の雅功がすでに新聞を広げて座っていて、トーストの香ばしい匂いとインスタントコーヒーの湯気が朝の光に混ざっている。悠路は眠そうな顔で椅子に座り、環菜が隣の席に着くと、ちらりとだけ横目を向けて、それから何も言わずに牛乳を飲み始めた。環菜はトーストにマーガリンを塗りながら、悠路の膝小僧がテーブルの下で自分の太ももにごく自然に触れていることに気づく。誰にもわからない、厚さ数ミリの布越しの接触。美沙子が「今日も暑くなるわよ、ちゃんと水分とるのよ」と言う明るい声の向こうで、環菜は悠路のつま先がほんの少しだけ動いたのを感じ、心臓を鷲掴みにされたような息苦しさを覚えた。
学校へ向かう電車のなかで、環菜はドアの脇に立ち、流れる景色をぼんやりと眺めていた。車窓に映る自分の顔は、いつもより少し頬が赤くて、瞳が濡れているように見える。昨夜、悠路の指を受け入れたあの瞬間を思い出すたびに、耳の奧でちりちりと血が騒ぐようで、環菜は何度も髪をかきあげて耳を隠した。斗真はもうサッカー部の朝練に行っている時間だ。彼の真面目な横顔、ほんの少し緊張してどもる話し方、マックのストローに残った口紅の跡をちらちら見ていた不器用な視線。それらを思い浮かべれば思い浮かべるほど、自分の身体の奥に棲みついているもうひとりの生き物のような欲望が、ずるりと頭をもたげてくるのを環菜は止められなかった。
学校に着くと、昇降口で靴を履き替える環菜の肩を、後ろからぽんと叩く手があった。振り返ると、明那がメガネを押し上げながら立っている。
「なに、朝から上の空じゃない。電車、降りる駅まちがえなかった?」
環菜はローファーの踵を軽く鳴らしながら、わざと大げさに笑ってみせた。
「だってあたし、もともとぼーっとするタイプじゃないもん」
「ふうん」
明那はそれだけ言って、環菜の顔をじっと見つめた。黒いフレームの奥の切れ長の瞳が、環菜の目尻の赤みや、少し浮ついた唇の端を、まるで標本を観察するようにゆっくりとなぞる。沈黙が三秒ほど続いて、環菜は思わず目を逸らした。
「……なによ」
「なんでもない。行くよ」
明那は長い黒髪を背中で揺らしながら先に歩き出す。カーディガンの肩のあたりに、ほんの少しだけコロンの金色の毛がついていることに環菜は気づいたが、それを指摘するより前に、明那は階段を上がって廊下の角を曲がっていた。
昼休みのチャイムが鳴ると、環菜は購買で買った焼きそばパンと牛乳パックを手に、明那と並んで中庭のベンチに座った。真夏の陽射しがじりじりと肌を焼き、アスファルトからの照り返しが制服のスカートの中まで熱を運んでくる。明那は紙パックのストローをくわえながら、環菜の耳元でぽつりと言った。
「土曜、神埼んち行くんだって?」
環菜が驚いて顔を上げると、明那は牛乳パックを膝の上に置き、ストローを指先でくるくると回した。
「昨日、廊下で河村が神埼に『土曜は環菜ちゃん来るんだろ? ちゃんと掃除しとけよ』って言ってたの聞こえたから。声でかいんだよね、あのヤリチン」
「ちょっと、明那……」
「べつにからかってるわけじゃない」
明那の声はいつもどおりフラットで低い。しかし、メガネの奥の瞳だけが、環菜の表情の変化を一瞬たりとも逃すまいとしているように細められた。
「彼氏と、やるんでしょ」
環菜は手に持った焼きそばパンを、食べるでもなく口元に運び、それからかじりもせずに膝の上に戻した。否定しようとした言葉は喉の奥で絡まってしまって、代わりに小さく息を吐くだけになる。自分のなかの罪悪感と期待がぐちゃぐちゃに混ざった感情を、明那はどこまで見抜いているのかと思うと、心臓が冷たく縮むようだった。
「わかんないよ、まだ。何があるとか、そういうのじゃなくて……ただ遊びに行くだけで」
「そう」
明那はそれだけ言うと、ストローをくわえ直し、残りの牛乳をじゅるじゅると音を立てて吸い上げた。その音が妙に耳に残って、環菜は自分のストローに残る口紅の跡をぼんやりと見つめる。斗真とマックで話したあの放課後、彼がストローに残った自分の唇の色を気にしていた姿。そんな純粋な彼に、自分は何もかも秘密にしたまま会いに行くのかと思うと、胸がぎしぎしと軋むようだった。
放課後、チアリーディング部の練習は顧問の都合で休みになり、環菜は明那に誘われるまま、彼女の自宅へ向かった。明那の家は学校からバスで十五分ほどの静かな住宅街にあり、二階建ての白い壁の一軒家だ。玄関を開けると、むわっとした冷房の効いていない空気が押し寄せ、そのすぐあとに、もふもふとした大きな生き物が廊下を滑るように駆けてきた。
「コロン、待てったら」
明那がしゃがみ込むと、ゴールデンレトリバーのコロンは太い尻尾をぶんぶん振り回しながら、明那の顔をぺろぺろと舐め始める。艶のある金色の毛並みに、黒く濡れた鼻先。コロンはもう老犬で、動きは穏やかだが、人懐こい目つきで環菜にもすり寄ってきた。環菜は制服のスカートの裾を舐められながら、くすぐったさに声を上げて笑った。
「お利口だね、コロン。あたしのこと覚えてる?」
明那の部屋は二階の突き当たりにあり、ドアを開けると、壁一面を埋める本棚と、机の上に積まれた参考書がまず目に飛び込んできた。窓のカーテンは薄い水色で、午後三時の陽射しを柔らかく部屋のなかへ拡散させている。フローリングの床にはコロンが使っているらしい大きなクッションが置かれ、その傍らにぬいぐるみの骨が転がっていた。
「まあ座ってよ。麦茶でいい?」
「うん、ありがと」
環菜はクッションのない床に体育座りの姿勢で腰を下ろし、部屋の隅から隅までをあらためて見渡した。医学部志望の明那らしく、生物の資料集や解剖図鑑が本棚の一段を占めている。ふと、その隣の文庫本の背表紙に、見慣れない官能小説のタイトルがいくつか並んでいるのを見つけて、環菜は視線を慌てて別の場所へ移した。
明那がコップに入れた麦茶を持ってきて、環菜の前に置く。氷のぶつかる涼やかな音が、静かな部屋にぽちゃんと響いた。明那は自分も麦茶を一口飲み、それからベッドの端に腰掛ける。彼女の黒髪が肩から滑り落ち、カーディガン越しの胸の膨らみが、横からの光でくっきりと浮かび上がっている。薄手の白いカーディガンのボタンは留められておらず、中のグレーのカットソーがふくよかな双丘を柔らかく包み込んでいた。
「で、さっきの話の続きだけど」
明那はコップを机の端に置くと、両手を膝の上で組んだ。
「環菜は神埼の家で、自分がどうしたいと思ってるわけ」
環菜は麦茶のコップを握りしめ、表面に浮かんだ結露の水滴が指のあいだを伝って床に落ちるのを目で追った。どうしたいのか、それを言葉にしたことなど一度もなかった。斗真に触れられたいという純粋な期待。それとまったく同じ重さで、斗真にすべてを知られてしまうかもしれないという恐怖。そして、もっと単純で、もっと正直なからだの疼き。
「あたし……斗真のことは本当に好きなんだよ。でも、まだよくわかんなくて。その、先に進んでもいいのかどうかも。なんていうか、あたし、思ってるよりずっと、汚いから……」
「汚い」
明那がその言葉をくり返す。低く、噛みしめるような響きだった。環菜は顔を上げるのをためらいながら、それでも勇気を振り絞って明那の目を見る。明那の頬はわずかに上気していて、唇は何かを言いかけたまま小さく開いている。
「私も、変だから」
環菜が息を詰めてその言葉を待つと、明那は一拍おいてからゆっくりと話し始めた。
「私は、誰かに優しくされたいとか、愛し合いたいとか、そういうことで興奮したことがない。むしろ、逆。誰かに命令されたり、虐められたり、辱められたりすることを想像しないと、どうにもならなくなる」
明那は言葉を選びながら、少しずつ自分の内側を環菜に差し出しているようだった。その声はいつもの毒舌とはまるで違って、静かで、少しだけ震えている。
「そういうのでしか、自分を慰められないんだ。だから、お医者さんになりたいのは、半分は純粋に医学に興味があるからで、もう半分は……人の身体を自分の思い通りにできないことへの裏返しかもしれないけど」
「あきな……」
「まだ話の途中」
明那はそう遮ってから、ベッドから立ち上がった。それから、部屋の隅で寝そべっているコロンの名を呼ぶ。
「コロン。コロン、おいで」
コロンがのっそりと立ち上がり、明那の足元にすり寄る。明那はコロンの頭をひと撫でしてから、くるりと環菜のほうへ体ごと向き直った。つかつかと歩いてくる彼女のスカートの裾が、歩くたびにふわりと揺れ、白い太ももをちらりとのぞかせる。環菜は何が起ころうとしているのかもわからないまま、床に座った姿勢で硬直していた。
明那は環菜のすぐ目の前まで近づくと、両手でスカートの裾をたくし上げた。晒された鼠径部は色白で、青い静脈がうっすら透けて見えるほど皮膚が薄い。ショーツはシンプルな白い綿で、太ももの付け根のあたりにコロンのものらしい金色の細い毛が数本、絡みついていた。
「これから見せることは、誰にも言わないで」
明那の声はかすれていたが、目はしっかりと環菜を捉えている。環菜はただ、頷くことしかできなかった。
「コロン、こっち」
明那は隣のクッションにコロンを誘導し、自分は床に膝をついて仰向けに寝転がる。そして、もう一度スカートをたくし上げ、両脚を開きながらコロンの頭をそっと股のあいだに引き寄せた。
「いい子ね、舐めてごらん」
コロンの舌が、ぺろり、と明那の太ももの内側を舐めた。それから何かを察したように、濡れた鼻先でショーツの表面をくんくんと嗅ぎまわる。明那は唇を噛みしめ、眉をひそめて恥ずかしそうに顔を歪めているが、目は潤み、頬にはうっすらと紅がさしていた。カーディガンの隙間からのぞくカットソーが、呼吸に合わせて上下に波打ち、大きな胸が重力に従って少しだけ脇のほうへ流れている。環菜はその光景から目を離せなかった。鼓動が自分の耳の中でこだましている。
コロンの舌が布越しに陰部をなぞった瞬間、明那は喉の奥から「んっ……」という引きつった声を漏らした。犬の唾液がショーツに染み込み、白い綿地を薄く透けさせて、下の肉の色をおぼろげに浮かび上がらせる。ぺちゃ、ちゅる、くちゃ——コロンが熱心に舐めるたびに、粘液の絡まる音と、明那の抑えた吐息が交互に室内を満たしていく。環菜は両手を膝の上で固く結び、喉の渇きを覚えながらも、麦茶のコップに手を伸ばすことさえ忘れていた。
「環菜、私ね……こんなふうにしか、なれないの。もし環菜が気持ち悪いって思ったら、今すぐ帰ってもいい。でも、私、言いたかったから」
明那は泣きそうな笑みを浮かべて、そう言った。コロンはまだ夢中で舐め続けていて、明那のショーツは唾液でぐっしょりと濡れ、鼠径部の匂いがむわりと立ち昇っている。犬の体温が高いせいで、明那の白い肌はじっとりと汗ばみ、カーディガンの襟元も汗で首筋に張りついていた。
「気持ち悪くなんか、ないよ」
環菜は絞り出すようにそう言って、明那のすぐ横に膝を滑らせて座り直した。
「あたしも、あたしも変だから。言えないけど、すごく変で、どうしていいかわかんなくて……だから、明那がそうやって話してくれて、すごく、ほっとした」
明那はしばらく環菜の顔を見つめていたが、不意に手を伸ばして環菜の手首を握った。その手は汗でしっとりと湿っていて、指先は細かく震えていた。
「環菜」
「うん」
「ありがと」
明那はそれだけ言って、コロンの首輪を軽く引いた。コロンが舐めるのをやめ、名残惜しそうに鼻を鳴らしながら明那の膝のうえに顎を乗せる。明那はもう片方の手で、涙の滲んだ目尻を乱暴に拭った。そのとき、環菜は明那のショーツの中心が、唾液だけでなく、明那自身の愛液でほんの少しだけ色濃く変色しているのに気がついた。けれど、それを口に出すことはしなかった。
秘密は、秘密のまま、心の奥に重なる襞のように折り畳まれるほうが美しい。環菜はそう思いながら、そっと明那の肩に自分の肩を寄せた。窓の外では西日が強くなり始めていて、部屋の床に落ちる影がゆっくりと形を変えていく。コロンの荒い息遣いと、麦茶の氷が溶けきったコップの水滴の匂いが、夏の夕方の空気に混じり合っていた。
帰宅すると、父の雅功が珍しく早く仕事から戻っており、リビングへ続くドアを開けた環菜の鼻を、カレーのスパイスの香りがくすぐった。母の美沙子が台所でフライパンを振るっていて、「おかえり、環菜。手を洗ってきなさい」と振り返らずに言う。雅功はソファに座り、ネクタイを緩めた格好でテレビのニュースを眺めている。悠路は自分の部屋にいるらしく、リビングにはまだ姿がなかった。
環菜は洗面所へ行き、石鹸で手を洗いながら鏡を見た。鏡のなかの自分の目は、昼間の明那の秘密を映したせいで、どこか落ち着きを失っていて、瞳孔が大きくなっている。明那は犬の舌で自分を慰める。自分は弟を受け入れている。まったく違うのに、深いところで繋がっているような感覚が、環菜の胸の内で渦を巻いていた。
夕食の席で、雅功が「今日は一段と暑かったなあ」と言いながらビールを注ぎ、美沙子が「環菜も悠路も、ちゃんと水分とってる?」と箸を動かしながら尋ねる。環菜は「とってるよ、もちろん」と明るく答え、悠路は「今日ずっと外で遊んでたから、汗でびしょびしょになった」と子供らしい声で言った。カレー皿の横に置かれた福神漬の小鉢、スプーンから立ち上がる湯気、父親のくつろいだ笑顔。家族そろっての食卓のあたたかさに包まれながら、環菜はそのあたたかさの真下で、まったく違う熱が燻り続けていることを誰にも悟られまいと、笑顔を貼りつかせていた。
食事が終わり、環菜が自分の部屋に戻ってしばらくすると、ドアがノックもなくそっと開いた。悠路が立っている。部屋着の半ズボンに薄手のTシャツ。日焼けした腕と脚が、室内の蛍光灯の下でくすんだ黄金色に輝いている。
「姉ちゃん、宿題教えて」
悠路はそう言いながら、もう環菜の背後に回り込んでいた。環菜は机の椅子に座ったまま、後ろから伸びてきた悠路の両腕が自分の肩に置かれるのを感じ、背筋を硬くする。
「宿題? どこがわかんないの」
「……算数。でも、それはあとでいい」
悠路の指が環菜の首筋をかすめ、鎖骨のあたりをなぞる。日焼けした汗の匂い——微かに塩を含んだ、日光と少年の肌が混ざった匂い——が環菜の鼻腔を満たし、それだけで脳の奥がじんわりと痺れるような感覚があった。
「きょう、斗真の家へ行くことで、なにか変わった?」
「べつに。まだ明日のことだし」
「ふうん」
悠路の手が環菜の制服のボタンをあたかも算数の問題を解くような無造作さで、ひとつ、またひとつと外していく。白いブラウスがはだけて、下に着た薄手のキャミソールが露わになった。環菜の胸は小さいけれど、つんと上を向いた先端はすでに硬くなっていて、キャミソールの布地を内側からほんの少し持ち上げている。
「姉ちゃん、どうしてこんなになってるの。斗真の家に行く想像でもしてた?」
「ちが、そうじゃ……」
環菜が首を横に振ろうとするのを、悠路の親指が乳首の上をくるりと円を描くように動いたことで遮られた。触れられるか触れられないかの瀬戸際で、布越しのざらつきと指の腹の熱が混ざり合い、環菜の膝が無意識にぎゅっと閉じられる。
「あした、彼氏んちでなにされるか、姉ちゃんは全部わかってるんだよね。キスの続き、してほしいんでしょ」
「悠路……もう、だめ……」
「だめじゃない。だってこれ、こんなにぴくぴくしてる」
悠路のもう一方の手がスカートの上から環菜の股を押さえる。押されるたびに、秘部がじんわりと熱を広げ、粘液の分泌が始まるのを環菜は自覚していた。くちゅ、と小さな水音がスカート越しにかすかに聞こえて、環菜は恥ずかしさに目を閉じる。乾いたと思っていたのに、もうこんなに濡れていることが、自分でも信じられなかった。
「姉ちゃんのここ、斗真にはまだ見せてないんだよね。見せたらびっくりするよ。きれいなのに、こんなにすぐにぐちゃぐちゃになるんだもん」
悠路の声は落ち着いていて、子供のあどけなさを装いながらも、ひとつひとつの言葉が環菜の羞恥心を正確に剥がしていく。環菜は椅子の背に手をかけ、ぐっと体重を預けた。目を閉じた暗闇のなかで、昼間の明那の濡れた声と、コロンの舌がショーツをぬらす音がフラッシュバックする。自分も、あれと同じだ。誰かに見られ、暴かれ、恥を舐めとられることに、震えるほど感じてしまう。
悠路がスカートのホックを外し、下着のうえから細長い指で陰唇をなぞる。ぬるついた感触が綿の布をすべり、くちゅくちゅと粘液音が一定のリズムで環菜の鼓膜を叩いた。クロッチの部分はもうぐっしょりと濡れて透明な液が縫い目から滲み出し、指が動くたびにひやっとした空気が性器に触れて環菜は小さく身をよじる。
「今日は、ここだけね」
悠路はそれ以上は深く追わずに、環菜の耳たぶにそっと口づけてから、すうっと身を離した。
「あした、斗真の家、楽しみだね。姉ちゃん」
環菜は振り返ることができなかった。悠路が部屋から出ていったあとも、しばらくのあいだ、荒い息を整えることができずに、机の上の参考書の文字がぼやけて滲むのをただ見つめていた。部屋には悠路の汗の匂いがまだ残っていて、それが彼のものだとわかるからこそ、環菜の内腿はいつまでも湿って冷たかった。斗真の家へ行くのは明日だ。斗真の優しい指が、自分に触れる。その想像だけで胸は弾むのに、今この瞬間、自分のからだを支配しているのは、弟の記憶と熱だけだった。環菜はベッドに倒れ込むようにして横になり、枕に顔を押しつけながら、小さく声を殺して泣いた。罪悪感も期待もすべてがないまぜになった夜が、ゆっくりと更けていく。カーテンの隙間から差し込む街灯の青白い光のなかで、環菜は悠路の汗の匂いと、斗真の洗剤の清潔な匂いを交互に思い出しながら、なかなか眠りにつくことができなかった。
第3章 サッカー部主将の震える指と、ヤリチンの低い助言
第3章: サッカー部主将の震える指と、ヤリチンの低い助言
土曜の朝、目覚まし時計が鳴り響くよりもずっと深い時間に、環菜は薄闇に沈んだ天井をじっと見つめていた。瞼の裏にはまだ昨晩の残像がこびりついていて、明那のあの濡れ切った嬌声と、悠路の細く白い指が自分の窄まりをくちゅくちゅと掻き回す感触が、まるで二重写しの幻燈のように交互に点滅する。シーツの下で横向きになったまま、自分の心臓が普段よりもずっと性急な刻みを打っているのを感じ、環菜はそっと太腿をすり合わせた。布団の中で自分の身体がじんわりと熱を帯びているのがわかる。昨晩はほとんど眠れなかった。目を閉じるたびに、悠路のあの大人びた指先が自分の一番敏感な襞をくちゅりと押し広げる感覚が蘇り、慌てて瞼を開ければ今度は斗真の真っ直ぐな瞳が脳裏に浮かぶ。その繰り返しに、シーツを握りしめる指先に汗が滲んでいた。それでも若い身体は正直で、夜明け前にほんの短い浅い眠りへと落ちていたらしい。カーテンの隙間から差し込む光はまだ青白く、湿度を含んだ夏の朝独特の匂い――夜露に濡れた土と、生い茂る草いきれの青臭さが混ざり合った空気が、部屋の中にゆったりと澱んでいる。
環菜は静かに上体を起こすと、クローゼットの前でしばらく立ち尽くした。今日は斗真の家に行く日。ただその事実を頭の中で反芻するだけで、みぞおちの辺りがきゅうっと音を立てて縮み上がり、胃の裏側からせり上がってくるような緊張が細い喉を締めつける。どんな服を着て行こう。あまり気合いを入れすぎても変に思われるだろうか、されど普段着すぎるのもどこか失礼な気がして、環菜は何枚かのトップスをハンガーから外しては胸の前でそっとあてがい、小さく唸った。鏡の中の自分はどこか浮き足立っていて、頬にはほんのりと朱が差している。結局、淡いレモンイエローのカットソーと、膝上までの白いフレアスカートを選んだ。鏡の前でくるりと回ってみると、裾がふわりと膨らみ、日焼けした膝小僧がちらりとのぞく。その健康な肌の色が、これから斗真の家で起きるかもしれないことへの期待と不安を、自分自身に突きつけているようだった。髪はいつものように軽くブラシで整え、前髪を指でそっととかす。ほんの少しだけ塗ったリップクリームのせいで、薄く開いた唇がてらてらと濡れたように光り、それが自分の顔を妙に大人びて見せている気がした。
リビングへ下りると、母親の美沙子がトースターの前でせわしなく動いていて、こんがりと焼けたパンの香ばしい香りが部屋中に満ちている。父親の雅功は新聞を広げながらテレビのニュースを流し見しており、時折コーヒーカップを口元へ運ぶ仕草がゆったりとしていた。悠路だけはまだパジャマ姿のまま、食卓に突っ伏してひどく眠そうに目をこすっている。その細い指が瞼をこするたび、環菜の心臓は昨夜の記憶を呼び覚まされてとくりと波打った。
「おはよう、環菜。今日は早いのね」
美沙子が振り返り、少し驚いたような声をあげる。その声色には、休日に娘がこんなに早く起きてくることへの純粋な疑問が滲んでいた。
「うん、ちょっと友達と約束があって」
環菜はなるべく何でもない風を装いながら答え、トースターから飛び出した食パンを皿に取った。マーガリンを塗る手つきが、心なしかぎこちなくなる。心の中ではもう、斗真の照れくさそうな笑顔が鮮明に思い描かれていて、それだけで胸の奥がむず痒いような甘さで熱くなった。約束の十時まではまだ二時間近くもあるのに、こんなに落ち着かないなんて、自分はよほど浮かれているのだろうか。
悠路がむくりと顔を上げ、寝ぼけた目で環菜をじっと見つめてくる。その瞳はまだ半分夢の中にいるような朧げさを帯びているのに、その奥には紛れもなく昨夜の肉の記憶が暗い燐光のように宿っていて、環菜の呼吸を一瞬だけ止めさせた。環菜は思わず目をそらし、焼きたての食パンを無理やり口に押し込む。ぱさりとした食感が舌の上で広がり、飲み込むのに少し苦労した。悠路は何も言わなかった。ただ、パジャマの袖から伸びた白く細い指が、テーブルの上でとん、とん、と規則的なリズムを刻んでいる。その音が、まるで昨夜の行為をなぞるかのようにゆっくりと反復されていて、環菜は耳の奥がじんと熱くなるのを感じた。あの指が、自分の膣の中でくちゅくちゅと音を立てていたのだと思うと、朝の食卓という日常の風景が急に淫靡なものに歪んでいく。
朝食が終わり、環菜が洗面所で歯を磨いていると、背後にひっそりと人の気配が忍び寄った。鏡越しに見ると、悠路がいつのまにかすぐ後ろに立っていて、無表情に近い顔で環菜のうなじをじっと見つめている。その視線の熱に、環菜は歯ブラシをくわえたまま、口の中の白い泡をごくりと飲み込んでしまった。
「姉ちゃん、今日はどこに行くの」
幼さをまだたっぷりと残した声なのに、その口調だけは妙に落ち着き払っていて、問い詰めるような響きがある。
「友達んち。だから、ちゃんとお留守番しててよ」
泡を吐き出しながら、環菜はなんとか平静を装って答えた。自分の声が少し裏返っていたかもしれない。
「ふうん。斗真ってやつの家でしょ」
悠路の舌が、斗真という名前をゆっくりと転がす。その響きにはあからさまな嫉妬とか蔑みとか、そういったはっきりした感情はなくて、ただただ事実を確認するような平坦さがあった。けれどそれがかえって環菜の心臓をぎゅうっと鷲掴みにする。悠路はそれ以上追求せず、くるりと背を向けると、何の感情も見せずにリビングへ戻っていった。環菜はしばらく鏡の中の自分の顔を見つめていた。頬がまだほんの少し紅潮している。これは夏の朝の蒸し暑さのせいだろうか、それとも弟に見透かされているという居心地の悪さのせいだろうか。それとも、これから始まるかもしれない斗真との新しい関係への期待のせいだろうか。答えは出ないまま、環菜は冷たい水で何度か口をすすいだ。
九時半を過ぎた頃、環菜は玄関でサンダルに足を通した。外はもうじりじりと照りつける陽射しがアスファルトを焼いていて、立ち昇る陽炎が景色をゆらゆらと揺らめかせている。肌にまとわりつくような熱気が、一歩踏み出すだけで全身を包み込んだ。自転車に跨がると、サドルは思った以上に熱くなっていて、太腿の裏側がひやりと反応する。ペダルを漕ぎ出すと、勢いよく走り抜ける風がスカートの裾をふくらませ、熱くなった膝小僧を撫でていく。それはまるで目に見えない誰かの手のひらに触れられているようで、環菜はハンドルを握る手に少しだけ力を込めた。
斗真の家は学校からもそう遠くない、静かな住宅街の中にある。環菜は事前に教えてもらった住所をスマホで確認しながら、何度か細い路地を曲がった。生垣の緑が濃く茂る小道を抜けると、表札に「神埼」と書かれた、クリーム色の壁の二階建て一軒家が目に入る。玄関先には小さな植木鉢がいくつか並んでいて、暑さに負けず紫のペチュニアが可憐な花を咲かせていた。その花びらの色がやけに鮮やかで、環菜はほんの一瞬、自分の蕾を包む肉襞の色を連想してしまい、かぶりを振る。
インターホンを押す指が、ほんの少し震えていた。ピンポンという軽やかな電子音が鳴り響き、その余韻がまだ消えないうちに、内側からドアが開く。
「環菜、いらっしゃい。暑かっただろう」
斗真はグレーのポロシャツに黒のハーフパンツというラフな格好で、いつも学校で見るよりも少しだけ髪が乱れている。多分、鏡の前で何度も手櫛を入れ直したりしていたのだろう。その前髪のほんの小さな跳ね方に、斗真の朝の緊張を想像して、環菜は胸の奥がほんのり温かくなるのを感じた。斗真のポロシャツからは柔軟剤の清潔な香りと、その下からほんのり滲む男の子の肌の匂いが混ざり合って、環菜の鼻腔をくすぐる。
「お邪魔します。斗真の家、思ったより近かったよ」
「そうか。駅からはちょっと歩くから、迎えに行こうかとも思ったんだけど」
「いいよいいよ、自転車だし。風が気持ちよかった」
環菜は笑いながら靴を脱ぎ、かかとをきちんと揃えて玄関の隅に置いた。斗真の家の中はしんと静まり返っていて、空調のきいた冷たい空気が汗ばんだ肌に心地よい。廊下には家族写真が何枚か飾られていて、斗真が小学生の頃のサッカーのユニフォーム姿もあった。無邪気な笑顔でトロフィーを掲げる小さな斗真に、環菜は思わず口元をほころばせた。今ここにいる彼も、あの頃からずっと真っ直ぐなのだろうと感じて、それが少しだけ眩しかった。
「こっち、俺の部屋」
二階へ上がる階段はぎしぎしと小さく鳴り、斗真が先に立って案内してくれる。部屋のドアを開けると、ふわりと洗濯洗剤の清潔な香りが環菜の鼻をくすぐった。フローリングの床はきちんと掃除されていて、磨かれた木材が鈍い光を反射している。ベッドのシーツもピンと張られていて、枕元にはしわひとつない。壁にはヨーロッパの有名クラブのサッカーポスターが一枚貼られ、机の上には参考書がきちんと積み上げられている。窓辺には小さな観葉植物が置かれ、その緑の葉が冷房の風にほんの少しだけ震えていた。すべてが整然としていて、斗真の誠実な人柄がそのまま部屋に表れているようだった。
「適当に座って。ジュース、何がいい? 麦茶とオレンジジュースがあるけど」
「うん、ありがと。じゃあ麦茶で。なんか、斗真の部屋って感じだね。すごくきれいにしてる」
「昨日、河村に『掃除しとけよ』ってうるさく言われたからな」
斗真が少し照れくさそうに頭をかく仕草が、普段グラウンドで見せる凛々しい主将の顔とはまるで違っていて、環菜はそのギャップに心臓がとくんと跳ねるのを感じた。環菜はベッドの端に腰を下ろし、スカートの裾をそっと直した。マットレスがふかふかしていて、体重をかけるとスプリングが小さく軋む。その音が、これからこのベッドで何が起こるのかを暗示しているようで、環菜は太腿の内側をぎゅっと引き締めた。斗真が部屋を出て階段を下りていく足音を聞きながら、環菜はもう一度部屋の中を見回す。本棚には小学生の頃に読んだであろう図鑑が、背表紙をきちんと揃えて並んでいて、その隣に一つだけサッカーのトロフィーが飾られていた。男の子の部屋だ、と環菜は改めて思う。悠路の部屋にもゲーム機や漫画が散らかっているけれど、斗真の部屋にはもっと几帳面な空気が漂っていて、それが斗真という人間の輪郭をくっきりと浮かび上がらせている。
斗真がトレイに麦茶の入ったグラスを二つ載せて戻ってくる。ガラス越しに冷えた麦茶の琥珀色が透けて見え、氷がからんと涼しげな音を立てた。環菜は一つを受け取り、冷たいそれを一口含む。喉を流れ落ちるひんやりとした感触が、妙に熱くなっていた身体の芯を一時的に鎮めてくれた。
「ありがと。斗真も座りなよ」
「あ、ああ」
斗真は環菜の隣に、拳一つ分ほどの距離を置いて腰掛けた。ベッドが再びぎしりと軋み、二人の身体がほんの少しだけ沈み込む。その微かな振動さえもが妙に気恥ずかしくて、環菜は麦茶のグラスを膝の上で持ちながら、指先で結露をそっとなぞった。窓の外からはセミの鳴き声がじわじわと鼓膜を圧迫するように響き渡り、遠くで誰かが草刈り機を使っている低いエンジン音も混じっている。夏の休日の、あの独特などこか怠惰で、それでいて命が溢れかえるような騒がしさが、静かな部屋の中に流れ込んでくる。
「今日は、ほんとに暑いね」
「そうだな。部活がなくて本当によかった。こんな日に練習したら、倒れるやつが絶対に出る」
「あたしもチアの練習、休みでラッキーだった。この暑さでアウトドアの練習はさすがにきついよ」
他愛のない会話を交わしながら、環菜は自分の心臓がどんどん早鐘を打ち始めているのをありありと感じていた。隣に座る斗真の体温が、空気越しにじんわりと伝わってくる。彼のポロシャツから漂う柔軟剤の清楚な香りと、その下から立ち昇るほんの少し汗ばんだ肌の匂い――それは決して不快なものではなく、むしろ環菜の奥底にある雌の本能をくすぐるような、生々しい男の匂いだった。斗真の指が、膝の上で所在なさげに何度も開いたり閉じたりを繰り返し、やがて意を決したようにぎゅっと拳を握る。その骨ばった大きな拳を見ているだけで、環菜は自分の下腹部の奥がきゅんと疼くのを感じた。
「環菜」
斗真が突然、声のトーンをひとつ落として呼びかける。環菜が顔を向けると、斗真は真剣そのものの目で環菜を見つめていた。その黒い瞳は少し潤んでいて、長いまつげが緊張のせいで微かに震えている。唇は真一文字に結ばれ、喉仏がごくりと上下した。
「好きだ」
低く、掠れ気味の声で、斗真はそう言った。それは学校の廊下ですれ違いざまに交わすような軽い響きでも、マックで友達と一緒にいるときに聞くような遠慮がちなものでもなく、もっとずっと重みのある、魂の奥底から絞り出したような音だった。環菜は何か答えようとしたが、言葉がぽっかりと喉の奥でつかえて出てこない。ただ、斗真のまっすぐな視線を受け止めながら、自分の胸がぎゅうっと締め付けられ、その圧迫感が逆に甘い痺れとなって全身に広がっていくのを感じた。斗真の顔がゆっくりと近づいてくる。環菜は自然に目を閉じ、唇に触れる柔らかな感触を、まるで祝福のように受け入れた。
最初は触れるだけの、ほんの一瞬の軽いキス。斗真の唇は少し乾いていて、表面に麦茶の冷たさがまだかすかに残っていた。鼻先が触れ合うか触れ合わないかの距離で、斗真の吐息が環菜の頬にかかり、くすぐったさと共にむず痒いような幸福感が込み上げる。二度目はもう少しだけ深く、斗真の手が環菜の肩にそっと置かれた。その手は小さく震えていて、環菜の素肌に直接触れているわけではないのに、カットソーの薄い布地を通して斗真の緊張と熱意がありありと伝わってくる。まるで、彼の心臓の鼓動そのものが指先に宿っているようだった。
唇が離れると、斗真はたまらなく照れくさそうに目を伏せ、長い睫毛が頬に影を落とした。
「……緊張するな、やっぱり」
「あたしも。すごく、ドキドキしてる」
環菜がそう正直に返すと、斗真の口元がほっと緩み、表情が一気に少年らしい柔らかさを取り戻す。その笑顔が純粋に嬉しくて、環菜は自分から斗真のこわばった手にそっと自分の指を絡めた。斗真の指はサッカーで鍛え上げられた硬いマメがいくつもあって、骨ばっているのに芯から温かい。この手は、何百回となくボールを蹴り、キャプテンとしてたくさんの部員の肩を励ましてきた手なのだと思うと、そのごつごつした感触さえもが愛おしかった。悠路のまだあどけなさを残す細くしなやかな指とは全く違う。男の人の手だと、環菜は改めて実感する。
その時だった。廊下の向こうから、階段を一段一段踏みしめるように上がってくる重い足音と、聞き覚えのある野太い声が響いてきたのは。
「斗真―、いるんだろ。開けるぞ」
河村大尊の声だった。環菜は思わず斗真と顔を見合わせ、慌てて絡めていた指をほどく。斗真は弾かれたように立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「河村、お前どうしてここに」
「どうしてって、お前来週の試合用のプリント、部室に忘れてったろ。顧問が朝からぶちギレててよ、俺が届けに来てやったんだよ、感謝しろ」
廊下に立つ河村は、白地に派手なロゴの入ったラフなTシャツと色落ちしたジーンズ姿で、手には茶色い封筒を持っている。がっしりとした逆三角形の体格は相変わらずで、笑うと白い歯がこぼれ、浅黒い肌が健康的な輝きを放っている。その大きな身体が廊下を占領していて、その向こうから夏の強い日差しが差し込んでいた。
「悪い、助かる。ちょっとこっちで話そう」
斗真が廊下に出て、ドアを半分だけ閉める。環菜はベッドに座ったまま、自然と息を潜めた。完全には閉まりきらなかったドアの隙間から、二人の押し殺したような声が筒抜けで聞こえてくる。
「環菜ちゃん、もう来てるんだろ。掃除はちゃんとしたか」
「したよ。お前にあれだけ言われたからな」
「ならいいけどよ。斗真、お前さ、今日こそは優しくしすぎんなよ」
河村の声のトーンが、ふと真面目なものに変わる。環菜は自分の心臓がとくんと大きく跳ね、耳の奥で血液がどくどくと音を立て始めるのを感じた。
「優しくしすぎるなって、どういう……」
「そのまんまだよ。女の子を怖がらせるなってことと、でもちゃんと大事にしろってことだ。お前、気にしすぎるとその場でフリーズして何もできなくなるタイプだろ。先に進むときは、ちゃんと相手の様子をじっくり見ながら、でもここぞって時は思い切っていけ。優しさと、ただの遠慮は全然違うんだぞ」
河村の言葉はあまりにも率直で、隠し立てが一切なかった。環菜はベッドの上で膝をぎゅっと抱え込み、顔が一気に沸騰したように熱くなるのを感じた。耳の先端まで赤くなり、心臓がうるさいほどにばくばくと鳴っている。河村はああいうことを、あんなに平然と、まるで戦術を語るみたいに言うのか。
「わかってるよ。環菜には、ちゃんと気持ちいいと思ってもらいたいし。絶対に、嫌がることはしない」
斗真の声は真剣そのもので、少し掠れている。環菜はその声を聞いて、胸が切なく締め付けられ、目の奥がじわりと熱くなった。彼はこんなにも自分のことを考えていてくれている。
「ならいい。あと、コンドームはちゃんとつけろよ。それは絶対だ。男としての最低限の責任だからな」
「も、もちろん。それは、ちゃんと買ってある」
「よし。それだけ言いにわざわざ来た。んじゃ、俺は帰る。プリント、ちゃんと読んどけよ。作戦に穴があったら承知しねえからな」
階段を下りていく河村の重い足音と、玄関のドアが閉まる乾いた音が聞こえる。斗真が部屋に戻ってきたとき、その顔はさっきよりもずっと赤く染まっていて、環菜もまた同じくらいかそれ以上に顔中を火照らせていることに気づいた。
「あ、あの……今の、聞こえてたか」
「ちょっとだけ……うん」
環菜が真っ赤な顔でうつむきながら答えると、斗真は「あいつ、声がバカでかいんだ。まったく」とぼやくように呟いた。二人の間にまた深い沈黙が降りるが、それはさっきまでのぎこちない緊張に満ちた静けさとは少しだけ種類が違っていた。河村のあまりにも率直な助言が、逆に二人が互いに張り巡らせていた見えない遠慮の壁を、少しだけ溶かしてくれたのかもしれない。コンドーム。その単語が、これからここで起きることを紛れもない現実として環菜の前に突きつける。
斗真は再び環菜の隣に腰を下ろした。今度はさっきよりもずっと近い距離で、マットレスが大きく沈み込む。環菜の膝と斗真の膝が、ほんの少し触れ合い、互いの体温をじかに交換し始める。
「環菜、さっきの続きを……してもいいか」
環菜は顔を上げ、斗真の瞳をまっすぐに見つめてから、小さく、しかしはっきりとうなずいた。斗真の大きな手が、今度は環菜の頬にそっと触れる。その手はまだ微かに震えているけれど、さっきよりもはるかにためらいが少なかった。まるで河村の言葉が、彼の背中をそっと押したように。斗真が再び顔を近づけてきて、環菜はゆっくりと目を閉じる。今度のキスは、さっきよりも長く、そして少しだけ濡れていた。斗真の熱い舌先が環菜の薄く開いた唇をそっとなぞり、遠慮がちに侵入してくる。環菜は小さく「ん…」と鼻にかかった息を漏らしながら、それを受け入れた。口の中に斗真の麦茶の苦味と、彼自身の味がほんの少し混ざり合って広がり、ぬるりとした熱い舌の感触が環菜の敏感な上顎をくすぐる。その感触に、環菜の身体の奥の、ずっと深い場所がじんわりと熱を帯び始めるのを感じた。
キスを続けながら、斗真の手が環菜の肩から腕へと恐る恐る滑り落ち、やがてカットソーの裾にそっと触れる。環菜の身体がぴくりと小さく反応したが、それは拒否ではなく、期待と緊張が複雑に混ざり合った震えだった。斗真は一度キスをやめ、潤んだ瞳で環菜の目を覗き込む。その視線には、切実な確認の色が浮かんでいた。
「このまま、横になってもいいか」
環菜は再びうなずき、斗真に促されるまま、ゆっくりとベッドに背中を預けた。さらりとしたシーツが背中と素足に触れ、ひんやりとした感触が気持ちいい。天井の白い照明が視界に入り、その光が妙に現実離れして見えた。斗真は環菜の上に覆いかぶさることはせず、横向きに寝転がって環菜の顔を真上から覗き込む。その体勢が、彼の優しさを如実に物語っていた。
「環菜、すごくきれいだ」
斗真が熱っぽい息でそう呟く。環菜はそのストレートな言葉に、恥ずかしさで思わず顔をそらしたくなったが、斗真の真剣でまっすぐな視線がそれを許さない。こんなにも真正面から「きれいだ」と心の底から言われたことは、今まであっただろうか。
「そんなこと、急に言われても……」
「ずっと、前から言いたかったんだ。今日は……ちゃんと言えて、本当によかった」
斗真の節くれだった指が、環菜のカットソーの一番上の小さなボタンに触れる。たったそれだけの動作なのに、斗真は二度も指を滑らせてしまい、環菜はその初々しい不器用さに、胸の奥がきゅうっと切なく締めつけられるのを感じた。この人は今、本当に必死で自分と向き合おうとしてくれている。そう思うと、緊張で強張っていた肩の力がすっと抜けていく。二つ目のボタン、三つ目と、斗真のぎこちない指が少しずつ環菜の身体を解放していった。
カットソーの下からは、白い繊細なレースのブラジャーがのぞく。環菜はこの日のために新しい下着を買いに行こうかと何度も迷ったけれど、結局はいつも身に着けているお気に入りのものを選んでいた。今、斗真の熱い視線が自分の慎ましやかな胸元にじっと注がれているのを感じて、環菜は自分の胸の小ささが急に恥ずかしくなる。
斗真の震える指が、環菜の鎖骨のくぼみをそっとなぞった。その指の腹は、サッカーボールを何千回となく扱ってきたせいで少し硬くざらついていて、その感触が男の子の手なのだと環菜の身体に刻み込んでいく。環菜の日焼けした肌と、普段は制服のシャツに隠れている青白い部分のくっきりとした境目をなぞるように、斗真の指がゆっくりと、祈るような手つきで下りていく。
「くすぐったい……」
環菜が思わず身をよじりながら声をあげると、斗真は慌てて指を止め、照れくさそうに頬を緩めた。
「ごめん、力加減が、全然わからなくて」
「だいじょうぶ。全然、嫌じゃないから」
環菜は斗真の手に自分の手を重ね、その温もりをそっと包み込む。斗真の手は環菜の手よりずっと大きくて、指の一本一本が太く、ごつごつとしている。悠路のまだ細くてしなやかな指とはまるで違う、骨太の男の人の手。環菜はその手を、自分の震える胸元へと導いた。ブラジャーの柔らかなレースの上から、斗真の広い掌が環菜の小さな乳房を、壊れ物のようにそうっと包み込む。
斗真の手は驚くほど熱く、緊張のせいでじっとりと汗ばんでいた。環菜の胸はその大きな掌の中で、自分の存在を優しく確かめられるように、じんわりと芯から温かくなっていく。斗真はまるで美術品に触れるみたいに、そっと、本当にそっと指を動かした。ブラジャーのレース越しに、斗真の硬い指の腹が敏感になっている乳首のあたりを不意にかすめる。環菜はその微かな刺激に小さく息を呑み、自分の身体の奥底で、子宮がきゅうっと痙攣するのを感じた。
斗真の指がブラジャーのホックを探って背中に回る。しかし、何度か不器用に指をもたつかせても、小さな金属の留め具はなかなか外れず、斗真は焦ったように眉をひそめて指を動かす。
「これ、どうやって……」
「後ろの、真ん中のとこ、ぎゅって押してみて」
環菜が小さく吹き出すように笑いながら教えると、斗真は難しい顔で再挑戦する。その初々しい様子を見ながら、環菜の脳裏には、片手でいとも簡単に器用にホックを外す悠路の慣れた手つきが一瞬よぎった。悠路はもうずっと前から環菜の下着の外し方を熟知していて、環菜が戸惑う間もなくブラを外してしまう。あの少し冷たい指が背中を這う感触が、まるで幻のように蘇り、環菜は自分の心臓がぎゅっと罪悪感で締めつけられるのを感じた。
でも、斗真のこのどうしようもないぎこちなさが、今の環菜にはたまらなく愛おしかった。斗真は本気で環菜のことを考えて、どうすれば彼女を傷つけずに、気持ちよくさせられるかと必死になっている。その不器用なまでの誠実さが、環菜の胸の奥をじんわりと甘く熱し、目の奥がかすかに潤んだ。
「あ、外れた……」
斗真がほっと深く息を漏らし、ブラの細いストラップが環菜の白い肩から滑り落ちる。露わになった環菜の胸は、健康的に日焼けした肌の中でそこだけが驚くほど白く、小さなふくらみの先端は空気と緊張に触れてきゅっと硬くしこっていた。斗真はしばらくその光景を食い入るようにじっと見つめ、それからまるで神聖なものに口づけるみたいに、そっと唇を近づけてくる。
斗真の熱い唇が環菜の硬くなった乳首に触れた瞬間、環菜は思わず喉の奥から小さな声を漏らした。
「ん……っ」
それは演技でも誇張でもなく、斗真の柔らかく温かい唇の感触に、身体が素直に反応しただけだった。斗真の舌が、恐る恐る、本当におそるおそる乳首の先端をぬるりとなぞる。環菜の背筋にびりっとした鋭い快感が走り抜け、太腿の内側がひくんと小さく痙攣した。
環菜は斗真のさらさらした髪にそっと指を差し入れ、その感触を確かめた。指の間を滑り抜ける彼の髪からは、昨日のシャンプーのほのかな残り香がして、その清潔な香りが悠路の少し汗ばんだ体臭と違うことに、環菜はほっと胸を撫で下ろすと同時に、心のどこかがちくりと痛んだ。あの匂いを、自分は今もどこかで求めているのだろうか。
斗真はまるで壊れやすい宝物に触れるような手つきで、環菜のもう片方の乳房にも恭しく唇を寄せた。慎重に、丁寧に、乳輪の周りを舌の先で円を描くように舐め、ふっくらと膨らんだ蕾をそっと吸い上げ、硬くなった先端を舌の上で優しく転がす。それは斗真なりの、精一杯の愛撫だった。経験の少なさゆえの拙さはあるけれど、その一つ一つの動きに「環菜を大事にしたい」という想いが溢れていて、環菜の身体はその初心な刺激にじんわりと応えていた。膣の奥がきゅうっと熱く締まり、分泌された蜜で下着の中心がじっとりと湿り始める。環菜は自分の身体が斗真の愛撫に確かに反応していることを自覚しながらも、その湿り気を斗真には気づかれないように、静かに息を殺した。
斗真が顔を上げ、潤んだ瞳で環菜の目を見つめる。その額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「痛くないか。俺、加減がわからなくて」
「ううん。すごく、気持ちいいよ」
環菜がそう正直に答えると、斗真は心の底から安心したように、少年のような笑顔を見せた。その無垢な笑顔を見つめ返しながら、環菜は胸がぎゅうっと千切れるほど締めつけられる思いだった。斗真は何も知らない。環菜のこの身体が、どれほど深く、どれほど淫らに、誰かの指と舌と肉茎によって開発され尽くしているかを。そして環菜は、その汚れた真実を斗真に隠したまま、今ここで彼の純粋な優しさを一身に受け取っている。その罪悪感が、鼓動の裏側でとくとくと脈打つ。
窓の外では、セミの鳴き声がいっそう激しさを増し、ギラギラとした夏の陽射しがレースのカーテンを通して部屋の中に白く差し込んでいた。冷房の穏やかな風がカーテンの裾をふわりと揺らし、机の上の観葉植物の小さな葉がそれに合わせて微かに震えている。斗真の熱い指が環菜のくびれた腰のあたりを遠慮がちになぞり、スカートのウエスト部分にそっと触れたが、それ以上先へはまだ進もうとしなかった。その逡巡が、彼の誠実さの証だった。環菜もまた、斗真のたくましい肩に手を置きながら、この先へ進むことの意味を必死に考えていた。身体は斗真の優しい愛撫に確かに応えて、もっと触れてほしいと疼いている。でも心の奥底では、もっと強くて深い刺激を知っているもう一人の自分がいて、その淫らな自分が今にも顔をのぞかせようとしている。環菜はそのどうしようもない矛盾をぎゅっと胸の内に抱え込み、斗真の首にそっと腕を回して、自分からもう一度キスをねだった。救いを求めるように。斗真の柔らかな唇が再び重なり、熱い舌が遠慮がちに絡み合う。そのただただ優しい感触に全身を委ねながら、環菜はきつく目を閉じた。
少なくとも今この瞬間だけは、斗真の真っ直ぐな優しさだけを、何もかも忘れて感じていたい。その切実な願いだけが、波打つ心の海で、一筋の細い光のように揺れていた。
第4章 小さな蕾を包む舌の優しさと、彼の知らない私の奥

# 第4章 小さな蕾を包む舌の優しさと、彼の知らない私の奥
斗真の唇が、環菜の乳首からゆっくりと離れていった。唾液に濡れた蕾の先端が空気に触れた瞬間、ひりつくような感覚が走り、環菜は思わず息を詰める。斗真の舌でしっとりと温められていたそこは、冷房の効いた部屋の空気に晒されて、きゅうっと硬くしこりを増していた。濡れた乳輪のまわりがてらてらと光っていて、斗真はそれからしばらく目を離せずにいた。男に舐められた女の胸が、こんなにもいやらしく、それでいて神聖なものに見えるなんて、斗真は想像したこともなかった。
斗真の指が環菜の腰のあたりに触れ、カットソーの裾をさらにたくし上げていく。彼の指先はまだかすかに震えていて、その微かな震えが環菜の肌に直接伝わってきた。へそのあたりまで露わになった腹は、チアリーディングで鍛えられた引き締まったもので、うっすらと浮き出た肋骨のラインが、環菜の痩せぎすな肢体をなおさら頼りなく見せている。冷房の風が汗ばんだ肌をなでるたび、環菜の腹の表面がさあっと粟立った。その粟立ちを、斗真は食い入るように見つめていた。女の肌がこんなにも繊細に反応するものだということを、彼は今、初めて知ったのだ。
「全部、脱がせてもいいか」
斗真の声はさっきよりもいくぶん落ち着いていた。けれどその奥には、やはり初めてのことに戸惑う少年の緊張が、かすかな声の震えとなって潜んでいる。環菜は小さくうなずき、自分から上半身を少し起こした。斗真の手がカットソーの袖を抜き、続いて肩から腕へと布が滑り落ちていく。露わになった肩の骨の細さ、鎖骨のくぼみに落ちる影の濃さ。斗真はその一葉ずつを目に焼き付けるように、環菜の上半身を凝視していた。ブラはもう外れていて、細いストラップだけが肩に引っかかっている。環菜が自分でそれを外し、胸の前から下着を取り去った瞬間、斗真は息を呑んだ。音にならない呼吸が、彼の喉の奥でかすかに鳴った。
環菜は目を閉じた。斗真の視線が自分の裸の上半身に注がれているのを、まぶたの裏で感じる。見られているという感覚だけで、肌がじりじりと灼けるようだった。小ぶりな胸のふくらみは、まだ幼さを残したその形のまま、斗真の視線の熱を吸い込んでいく。日焼けした鎖骨のあたりと、ブラのラインだけが白く残った胸元との境界が、斗真にはひどくいやらしいものに見えた。引き締まった腹筋のライン、脂肪の少ない脇腹から腰へとかけてのくびれ。チアリーディングで鍛えた身体は無駄な肉が一切なく、肋骨のあたりがうっすらと浮き出ていて、それがかえって環菜の肢体に、まだ成熟しきっていない少女の危うさを与えていた。斗真の目は、環菜の胸の先端で硬くしこった乳首に釘付けになっていた。淡い桜色をしたそれが、さっきまで自分の唇と舌でしゃぶっていたせいで、てらてらと唾液に濡れ光っている。その濡れ具合と、先端だけがきゅうっと窄まっている様子が、斗真の目には淫らでたまらなかった。
「きれいだ、環菜。すごく……きれいだ」
斗真の声は掠れていて、まるで宝物を目の前にしたみたいな響きがあった。環菜は斗真のそんな声を聞くたびに、胸の奥がぎゅうっと締め付けられるような思いがした。斗真は本当に、あたしのことを大切に思ってくれている。そのことだけは疑いようがなかった。けれどその純粋な眼差しが、今の環菜にはかえって鋭い刃のように突き刺さる。斗真に見つめられれば見つめられるほど、環菜は自分の身体が斗真の知らない場所でどれほど穢れ、開発され尽くしているかを思い知らされるのだった。
斗真の指が環菜の腰骨のあたりをそっとなぞり、スカートのウエスト部分にかかる。ホックを外し、ファスナーを下ろす手つきはやはり少しもたついていて、環菜は自分から腰を浮かせてそれを手伝った。スカートが太腿から膝へと滑り落ち、斗真がそれを足首まで引き抜く。露わになった太腿の内側は、普段日光に晒されることのない場所だけあって、他の肌よりもずっと白く、その白さが斗真の目にはひどく扇情的に映った。環菜の脚はチアリーディングで鍛えられたしなやかな筋肉を持ちながらも、膝のあたりから太腿の付け根へとかけては驚くほど柔らかそうな曲線を描いている。斗真はその白い太腿の内側にうっすらと浮き出た青い血管の筋を目で追いながら、自分の指がそこに触れたらどんな感触がするだろうかと考えていた。今、環菜の身体に残っているのは、白いレースのショーツだけだった。
「こっちも、いいか」
斗真がショーツのゴムの部分に指をかける。環菜は目を閉じたまま、もう一度うなずいた。斗真の指がゆっくりと布を引き下ろしていく。ショーツの内側には、すでに環菜の愛液が滲んでいて、布地をほんのりと湿らせていた。その湿り気が斗真の指先に伝わった瞬間、彼の手が一瞬止まる。女がこんなにも濡れるものなのかという驚きと、それが自分のせいでそうなったのだという男としての本能的な悦びが、斗真の中でせめぎ合っていた。彼はそっとショーツを観察した。クロッチの部分が、透明に近い液でしっとりと濡れていて、布地を透かしてその下の肌の色が透けて見える。その濡れ具合と、ほんのりと立ち昇る女の匂いに、斗真の息がまた荒くなった。
太腿の内側をくすぐるような感触が走り、ショーツが膝を通り過ぎ、足首から抜かれた時、環菜は自分が完全に裸になったことを自覚した。斗真はしばらく黙って環菜の身体を見つめていた。その視線が、顔から首へ、胸から腹へ、そして腰から脚へとゆっくりと移動していくのが、環菜には手に取るようにわかった。見られているだけで、肌がじんわりと熱を帯び、胸の先端がさらに硬くしこっていくのが自分でもわかる。斗真の視線が環菜の太腿の付け根、閉じられた脚のあいだに隠された秘部に注がれているのを感じて、環菜は無意識のうちにもじもじと腿をこすり合わせそうになった。けれど斗真の真剣な眼差しが、それを許さない。
斗真は環菜の性器をまじまじと見つめていた。閉じられた太腿のあいだから、ほんのわずかに覗く割れ目の部分。そこにはまだ幼さを残した薄い陰毛が、逆三角形の形にうっすらと生え揃っていて、その一本一本が環菜の白い肌の上で墨を刷いたように浮き上がって見えた。陰毛はまだそれほど濃くはなく、どちらかと言えば柔らかそうな産毛に近い質感で、斗真はその毛の一本一本がどういう感触なのか、指で触れてみたい衝動に駆られた。割れ目の入り口は、まだ脚を閉じているせいでしっかりとは見えないが、そのかすかに覗く薄紅色の粘膜が、斗真の目には熟れた果実の裂け目のようにも見えた。
「あんまり、じろじろ見ないでほしいんだけど」
環菜が恥ずかしさに耐えかねてそう言うと、斗真はあわてたように視線をそらした。けれどその目はすぐにまた環菜の秘部へと引き戻されていく。見てはいけないと思えば思うほど、彼の視線は吸い寄せられるようにそこへ戻ってしまうのだった。
「ごめん、でも、ほんとにきれいで。どう言ったらいいか」
斗真は言葉を探すように口ごもり、それからゆっくりと環菜の上に覆いかぶさるように身をかがめた。唇が再び環菜の鎖骨に触れ、そこからゆっくりと下りていく。鎖骨のくぼみに溜まった汗のしょっぱさを舌先で味わいながら、斗真は環菜の身体を隅々まで確かめるように唇を這わせていった。胸の谷間を舌先がなぞり、汗でしっとりと湿った肌の表面をゆっくりと舐め上げる。肋骨の一本一本を確かめるみたいに唇が這い、その凹凸を舌の先でなぞっていく。へそのくぼみにたどり着いた時、斗真はその小さなくぼみに舌先を差し入れ、くるくると回すように舐めた。環菜の身体がくすぐったさにびくんと跳ねる。斗真は少しだけ顔を上げ、環菜の腹のあたりに熱い吐息を吹きかけた。
環菜の腹のあたりに、斗真の吐息がかかる。それがくすぐったくて、環菜は思わず身をよじった。斗真は環菜の腰骨のすぐ上のあたりに口づけ、その骨ばった感触を唇で確かめる。そこからさらに下へと唇を進めようとするが、ほんの少しだけためらう気配があった。環菜の下腹部、陰毛の生え際のあたりで、斗真の唇が止まる。彼の吐息が環菜の薄い陰毛をふるふると震わせていて、その感覚が環菜にはもどかしく、そしてたまらなく恥ずかしかった。斗真は環菜の陰毛の生え際にそっと唇を押し当て、その柔らかな産毛の感触を唇で味わった。チクチクとしたくすぐったさと、その奥から立ち昇る女の匂いに、斗真の頭はくらくらとした。
環菜は斗真の髪にそっと指を差し入れた。その感触を確かめるみたいに、ゆっくりと撫でる。斗真の髪はサラサラしていて、ほんの少しだけ汗ばんでいる。部屋の冷房は効いているけれど、緊張のせいで二人ともじんわりと汗をかいていた。環菜の指が斗真の頭をそっと自分の下腹部の方へと導く。それは無意識の仕草だったけれど、斗真にはそれが何よりも明確な許しの合図に感じられた。
「気にしなくて、いいから」
環菜がそう言うと、斗真は小さくうなずき、環菜の太腿の内側に唇を寄せた。その感触に環菜の身体がぴくりと跳ねる。斗真の唇が、太腿の内側の柔らかな肌を食むように吸い、そこにうっすらと赤い痕を残した。斗真はその痕を舌先でそっとなぞりながら、さらに腿の付け根の方へと唇を進めていく。斗真の手が環菜の膝のあたりをそっと押さえ、ゆっくりと脚を開かせる。環菜は恥ずかしさで目をぎゅっと閉じた。自分の一番秘密の場所が、今斗真の目の前に晒されている。
斗真の前に、環菜の性器が完全に露わになった。閉じられていた大陰唇が脚を開かれることでほんの少しだけ開き、その内側から桜貝の内側のような薄紅色の小陰唇がひょっこりと顔を覗かせている。小陰唇はまだ完全には開ききっておらず、まるで恥ずかしがるようにひだを寄せ合っていて、その中央に小さな尿道口と、その下にぽっかりと開いたわけではないけれど、すでに濡れた粘膜がてらてらと光っている膣口が見えた。斗真は息を呑んだ。女の性器がこれほどまでに複雑で、繊細で、それでいてはしたないものだとは想像もしていなかった。ひだの一枚一枚、襞の一つ一つが、どれも違う色と形と質感を持っていて、全体がまるで小さな花のような、あるいは海の生き物のような、不思議な造形を形作っている。そして何より、そこから立ち昇る匂い。汗と尿と、それから何かもっと原始的な、女の身体の奥から滲み出てくるような麝香じみた匂いが、斗真の鼻腔をくすぐった。
斗真の息が環菜の中心にかかる。熱い吐息が、既に湿り気を帯び始めていたそこをくすぐり、環菜の小陰唇がひくひくと微かに蠢いた。斗真はしばらく動きを止め、環菜の性器をじっと見つめているようだった。彼の視線は、陰核を包む包皮の小さなひだ、小陰唇のひらひらとした襞、そしてすでにとろりとした愛液が滲み出している膣口へと、順番に注がれていった。その愛液は薄く白濁がかった透明の粘液で、環菜の膣口から細い糸を引くように垂れ、会陰を伝って肛門の方へと流れ落ちようとしている。斗真はその一筋の蜜の道筋を、呆然としたように見つめていた。
「ここが、環菜の」
斗真の呟きは、独り言みたいに小さく、でも確かに環菜の耳に届いた。その声には驚きと、畏敬の念のようなものが込められていて、環菜は胸が締め付けられる思いだった。斗真は本当に初めて、女性の身体というものを見ているのだ。自分が今、斗真にすべてをさらけ出しているという事実が、環菜の羞恥心をこれまでにないほど激しく刺激した。同時に、斗真の純粋な驚きと感動が、環菜の胸をぎゅうぎゅうと締め付ける。
斗真の吐息が近づき、環菜は無意識にシーツを握りしめた。最初に触れたのは、舌先だった。恐る恐る、本当にそっと。斗真の舌はまず、環菜の大陰唇の外側をぺろりと舐めた。その感触はあまりにも優しく、おそるおそるで、逆に環菜の感覚を研ぎ澄ませていった。斗真の舌は環菜の性器の全体像を探るように、大陰唇の膨らみをなぞり、それからゆっくりと内側へと進んでいく。小陰唇のひだに舌先が触れた瞬間、環菜の身体がびくっと大きく跳ねた。斗真はその反応に少し驚いたようで、一瞬舌を引っ込めたが、すぐに意を決したように再びそこへ舌を這わせた。
「ん……っ」
思わず漏れた声は、環菜自身が驚くほど甘やかだった。斗真の舌はまだぎこちなく、唾液の量も加減もわからないようで、時におびただしい量の唾液が環菜の性器全体をぐっしょりと濡らした。ざらりとした舌の表面が直接敏感な襞に当たるたび、環菜の腰が小さく跳ねる。斗真は環菜の性器の匂いと味を、舌の先で確かめるように舐め続けた。汗のしょっぱさと、尿の残り香のようなほのかなアンモニア臭、そして何より、環菜の愛液の独特の酸味とほのかな甘みが、斗真の舌の上で混ざり合っていく。彼はその複雑な味わいに戸惑いながらも、もっと深く知りたいという欲求に突き動かされるように、さらに舌を奥へと進めていった。
斗真は環菜の陰核を探り当てると、そこを中心にゆっくりと舌を動かし始めた。舌の先で陰核の包皮をそっとめくり、その下に隠れた敏感な蕾を露出させる。斗真の唾液で濡れた陰核は、ぷっくりと充血して赤みを増し、その先端が舌のざらつきに擦れるたびに、環菜の口からは「はぁ……んっ」という熱い吐息が漏れた。斗真はまるで字を書くみたいに、あるいは絵を描くみたいに、丁寧に、一筆一筆確かめながら舐めていく。舌先で陰核の根元から先端へと何度もなぞり、時には舌全体を平たくして陰核ごと周囲の襞をぐいっと押しつぶすように舐め上げた。歯を当てないように気をつけているのが、その慎重な動きから伝わってくる。けれどその慎重さがかえって環菜にはもどかしく、もっと強く、もっと直接的に触れてほしいという欲求が、彼女の腹の奥でじわじわと熱を帯び始めていた。
環菜は斗真の髪を撫でながら、自分の身体の中に広がっていく波のような感覚を受け止めていた。それは悠路の与える快楽とはまったく違う種類のものだった。悠路はいつも、環菜の感じる場所を的確に攻め、容赦なく追い詰めていく。その刺激は鋭く、深く、環菜の思考を根こそぎ奪っていくような激しさがあった。弟の太く筋張った指が環菜の膣をぐちゅぐちゅと掻き回し、同時にアナルにもう一本の指をずぶりと突き入れてくるあの圧倒的な質量の快感に比べれば、斗真の舌はあまりにも優しく、あまりにも頼りなかった。でも今は、この優しさが環菜の胸を締め付け、同時に彼女の身体の奥にある飢えを、かえって残酷なまでに炙り出していくのだった。
斗真の舌が陰核の根元から先端へと這い上がり、さらに割れ目の内側までなぞっていく。唾液のぬめりと環菜自身の愛液が混ざり合い、くちゅ……ぐちゅっ……という小さな粘液音が聞こえ始めた。その音は斗真の耳にもはっきりと届いていて、彼は自分の舌が環菜の身体からこんなにも淫らな音を引き出していることに、興奮と同時に不思議な誇りのようなものを感じていた。環菜もまた、自分の身体が立てる湿った音に顔を赤らめながら、その音が斗真の舌の動きに合わせてどんどん大きくなっていくのを、どうすることもできずにいた。
斗真の舌が、環菜の膣口のあたりをかすめた時、環菜の身体がひときわ大きく跳ねた。そこはもうすっかり濡れていて、斗真の舌先をぬるりと迎え入れる準備ができていた。斗真は意を決して、舌の先を環菜の膣口にそっと差し入れた。ぬちゃっ……という音とともに、斗真の舌先が環菜の膣の入り口を浅く貫く。環菜の膣壁は斗真の舌を異物として拒むようにきゅっと窄まったが、同時にその奥からは新たな愛液がじゅわりと滲み出してきて、斗真の舌をさらにぬめるような感触で包み込んだ。斗真はその感触と味に、頭がくらくらした。生温かくて、ぬるぬるとしていて、舌の上でとろけるようなその粘液は、斗真が今までに味わったことのない、女の身体の奥の味だった。彼はその味をもっと知りたくて、舌をさらに奥へと差し入れようとしたが、環菜の膣壁がきゅうきゅうと締まってそれ以上入っていかない。
斗真は環菜の反応を確かめるように、時々顔を上げては環菜の表情を見た。そのたびに環菜は恥ずかしさで顔をそむけたくなるが、斗真の真剣な眼差しがそれを許さない。斗真の口のまわりは環菜の愛液と自分の唾液でぐっしょりと濡れていて、部屋の明かりを受けててらてらと光っている。その光景が環菜にはひどく淫らで、同時に斗真のひたむきさを表しているようでもあった。
「痛くないか」
斗真が顔を上げて尋ねる。その声は少し掠れていて、環菜の愛液の味がまだ舌の上に残っているのが、彼の口调から伝わってきた。
「だいじょうぶ。すごく、やさしいから」
環菜の言葉を聞いて、斗真はほっとしたように微笑み、再び環菜の中心に顔を埋めた。今度はさっきよりも少しだけ大胆に、舌全体を使って広く舐め上げる。ぬるりとした感触が環菜の敏感な襞をくすぐり、背筋にびりびりとした電気が走った。斗真の舌が陰核と小陰唇と膣口を、順番に、そして時には同時に舐め回す。その動きはまだ拙く、時々舌が滑って肛門のあたりをかすめたりもしたが、その予測不能な刺激がかえって環菜の感覚を鋭く研ぎ澄ませていった。
斗真の舌が今度は思い切って、環菜の膣口に深く差し込まれた。ずぶり……という感触とともに、斗真の舌が環菜の膣の内側の襞をなぞる。舌の表面のざらざらとした感触が、膣壁の敏感な粘膜を擦り上げ、環菜の腰が浮き上がった。斗真はその反応を見逃さず、舌全体を使って環菜の膣の内側をぐるりと舐め回す。ぬちゃっ……ぐちゅっ……という粘液音が、静かな部屋の中にやけに大きく響いた。環菜は自分の膣の中で斗真の舌が動くたびに、腹の奥からせり上がってくるような快感に身を捩った。斗真の舌は悠路の指やペニスとは比べ物にならないほど細くて短く、膣の奥の奥まで届くことはなかったけれど、入り口付近の敏感な襞を丁寧に舐められるその感覚は、環菜にとって新鮮なものだった。
斗真は環菜の反応に励まされるように、舌の動きを次第に速めていった。陰核を舌先でちろちろと弾き、すぐにまた膣口に舌を差し入れ、溢れ出る愛液を啜るように吸い上げる。じゅるる……ちゅぱっ……という下品な水音が断続的に響き、環菜はその音を聞くたびに羞恥で顔が燃えるように熱くなった。斗真が環菜の愛液を飲み込むたびに、彼の喉がこくりと鳴る。その音さえもが環菜の耳にはひどく淫らに響いて、彼女はシーツを握りしめる指にぎゅっと力を込めた。
環菜は斗真の頭をそっと押さえながら、自分の内側から込み上げてくる感覚に身を委ねた。斗真の舌が陰核の根元をぐりぐりと押しつぶすたびに、環菜の視界の端で光が弾ける。舌全体で割れ目を広げるように舐め上げられると、背筋から腰へと快感の波が走り抜けていった。何度も小さな波が押し寄せ、そのたびに環菜の身体は震えた。絶頂と呼ぶにはあまりに静かで、でも確かに環菜の身体は斗真の舌で達していた。ふわりと意識が浮き上がり、手足の先がじんわりと痺れるような感覚が何度も訪れる。膣の奥がきゅうきゅうと痙攣し、新たな愛液がどろりと溢れ出て、斗真の舌をさらに濡らした。
「斗真……」
環菜がその名前を呼ぶと、斗真は顔を上げた。口のまわりが環菜の愛液でてらてらと光っていて、鼻の頭にも透明な粘液がついている。彼の唇は赤く充血し、唾液と愛液が混ざり合ったものが顎を伝って滴り落ちそうになっていた。環菜はそれを見た瞬間に顔が熱くなり、思わず目を逸らした。
「気持ちよかったか」
斗真のその問いに、環菜は素直にうなずいた。斗真は安心したような、でもどこか誇らしげな顔をして、環菜の隣に横たわった。シーツが二人の汗でしっとりと湿っている。斗真のポロシャツも汗で背中のあたりがぐっしょりと濡れていて、その下の肌が透けて見えそうだった。
斗真の指が環菜の腹をそっと撫で、それからゆっくりと下腹部の方へと移動していく。汗でしっとりと湿った環菜の肌の上を、斗真の指先が這うように進む。環菜の太腿の内側をなぞりながら、指先が再び濡れた場所に近づく。斗真の人差し指が、環菜の膣口の入り口にそっと触れた。愛液でぬめるそこは、斗真の指先を温かく迎え入れようと、入り口がひくひくと微かに蠢いている。
その瞬間、環菜の身体が無意識に強張った。斗真の指は悠路のそれよりもずっと細く、爪も短くて清潔で、何の害も与えないことはわかっている。それなのに、環菜の膣は侵入を拒むようにきゅっと窄まった。斗真の指先が膣口に少しだけめり込んだ瞬間、環菜の頭の中に、悠路の太い指と、彼の矯めつ眇めつするような視線と、ぐちゅぐちゅという下品な水音が同時に蘇った。悠路の指はもっと太く、節くれ立っていて、環菜の中を乱暴に拡げることに何の躊躇もなかった。それに慣れ切った環菜の膣は、斗真の優しい指先さえも異物として感じてしまったのだ。環菜は自分の中にあるこの違和感に、胸がぎゅっと痛くなった。斗真の指が、あたしの中に入ってくる。あんなに優しくて真っ直ぐな斗真の指が、弟に開発され尽くしたこの淫らな穴に。そう思うと、環菜は自分がひどく穢れたもののように感じられて、耐えられなくなった。
「ちょっと、まって」
環菜は思わずそう言い、斗真の手首をぎゅっと掴んだ。斗真は驚いたように手を引っ込め、心配そうな顔で環菜を見つめた。彼の指先には、環菜の愛液が糸を引いて光っている。斗真はその指をどうしていいかわからず、所在なげにシーツの上に置いた。
「どうした、やっぱり怖いか」
環菜はうまく答えられず、ただ斗真の腕を掴んだまま小さくうなずいた。本当は怖いわけではない。怖がらなければいけないのは、むしろ斗真の方だった。もし斗真が、環菜の膣と肛門が何年にもわたって弟の大きなペニスと玩具で拡げられ、開発され尽くしていることを知ったら、どう思うだろうか。指を入れた瞬間にわかってしまうかもしれない。普通の十七歳の女の子の膣は、こんなにも簡単に異物を受け入れたりしないはずだ。こんなにも簡単に濡れて、ひくついたりしないはずだ。環菜の膣はもう、悠路の形を覚えてしまっている。その事実が、今、斗真の優しい指先によって暴かれようとしている気がして、環菜は怖かったのだ。
「ごめん、急ぎすぎたな。今日はここまでにしよう」
斗真のその言葉に、環菜はさらに胸が痛くなった。彼は何も知らない。環菜の身体が、どれほど深く誰かに穿たれてきたかを。斗真はただ、環菜のことを大切に思い、傷つけたくない一心で接しているだけだ。その純粋な優しさが、今の環菜には鋭利な刃物のように突き刺さった。斗真のためにも、この身体の真実は隠し続けなければならない。もし知られたら、斗真はきっと傷つく。自分が大切に思っていた女が、実は弟に毎晩のように犯され、アナルまで開発され尽くした淫乱な身体だったなんて、知ったらきっと耐えられないだろう。
環菜はゆっくりと斗真の腕を引き寄せ、その胸に顔を埋めた。斗真のポロシャツ越しに、サッカーで鍛えられた胸板の硬さが伝わってくる。洗濯洗剤の爽やかな匂いと、少しだけ汗ばんだ肌の匂いが混ざり合って、環菜の鼻をくすぐった。斗真の心臓の鼓動が、環菜の耳に直接伝わってくる。その鼓動はまだ少し早くて、環菜への想いと、初めての行為の昂りがそのまま心臓のリズムになっているようだった。
「斗真がいてくれて、よかった」
環菜がそう呟くと、斗真は何も言わずに環菜の背中を優しく抱きしめた。その腕の力加減がやはり壊れ物を扱うみたいで、環菜は斗真の腕の中でそっと目を閉じた。斗真の腕の中は温かくて、安心できて、でも環菜の腹の奥では、まだ満たされない欲望がちりちりと燻り続けていた。
窓の外では、セミの声がまだ続いている。遠くでチャイムが鳴るのが聞こえた。まだ正午を少し過ぎたあたりで、今日という日はまだ長く続く。斗真の部屋の天井を見つめながら、環菜は自分の身体の奥底でまだ満たされずにひくついている場所のことを考えていた。
斗真の舌は確かに環菜に快感を与えた。でも、それは環菜の身体が本当に求めているものとは違っていた。斗真の舌は優しすぎた。あまりにも丁寧で、あまりにも遠慮がちで、環菜の身体の奥深くに巣食う獣のような欲望を満たすには、まったく足りなかったのだ。悠路が与えるあの質量を持った圧倒的な快楽、膣とアナルを同時に貫かれ、思考が溶けるまで追い詰められるあの感覚に比べれば、斗真の愛撫はあまりに優しく、あまりに物足りなかった。環菜の膣は今、斗真の指ではなく、悠路の太いペニスを欲しがっている。その事実を自覚するたびに、環菜の胸はぎしぎしと音を立てるようだった。
斗真は隣で穏やかな寝息を立て始めていた。緊張から解放された安堵と、行為の後の心地よい疲労が、彼を深い眠りへと誘ったのだろう。環菜はそっと身体を起こし、散らばった服を拾い集めた。カットソーを着て、スカートを履く。ブラはそのままバッグの中にしまい込んだ。下着をつけない身体はなんだか心許なかったが、今はこのままがいいと思った。ショーツのないスカートの中は、風が直接肌に触れて、まだ湿り気を帯びた性器のあたりがひやりと冷える。その感覚が、さっきまでの行為の余韻を生々しく環菜に思い出させた。
鏡の前で髪を整えながら、環菜は自分の顔を見つめた。頬はまだほんのりと赤く、唇は腫れぼったい。目の下にはうっすらと隈が浮かんでいて、それは昨夜の悠路との行為の名残でもあった。誰が見ても、さっきまで何をしていたかわかるような顔だった。そしてその顔には、満たされない欲望の影が、かすかに滲んでいる。
「斗真のこと、本当に好きなのに」
環菜は鏡の中の自分にそう呟いた。好きだからこそ、申し訳なくて、苦しい。斗真が知らない環菜の身体は、もうすっかり弟の形に慣らされてしまっている。膣も、肛門も、唇も、指先も、すべてが悠路という一人の少年によって開発され尽くし、彼の欲望の形に成型されてしまったのだ。斗真の優しい愛撫を受けながら、環菜はそれでも悠路の荒々しい交尾を思い出していた。その事実を噛みしめるたびに、環菜の胸はぎしぎしと音を立てるようだった。
斗真はまだ眠っている。その寝顔は無防備で、あまりにもまっすぐだった。環菜は斗真の前髪をそっと撫で、それから静かに部屋を出た。彼の前髪は汗で少し湿っていて、指先にその温かな湿り気が残った。
階段を下りながら、環菜は今日の出来事を頭の中で反芻していた。斗真の震える指、真剣な眼差し、ぎこちない舌の動き。すべてが愛おしくて、それでいて、環菜はもう斗真の知らない場所に立っている。あたしの身体はもう、斗真が思っているような純粋で無垢なものじゃない。弟のペニスを咥え込み、アナルに玩具を突っ込まれ、獣のように喘ぎながら絶頂を繰り返す、そんな淫らな身体になってしまっている。その事実が、環菜の胸をずっしりと重くした。
家に帰れば、悠路が待っている。今日は土曜で、両親も買い物に出かけているから、留守のはずだった。環菜は玄関のドアを開ける自分の手が、ほんの少し震えているのに気づいた。斗真の洗濯洗剤の香りがまだ指先に残っていて、それを確かめるように、環菜はそっと自分の指を鼻に近づけた。指先からは斗真の匂いと、それからまだかすかに、自分の身体の奥の匂いが混ざり合って立ち昇っている。その匂いを嗅いだ瞬間、環菜の腹の奥がきゅんと疼いた。斗真の優しさに包まれた午後の記憶と、これから待っているであろう悠路の荒々しい欲望の予感が、環菜の中でせめぎ合い、彼女の歩みを一瞬だけ鈍らせたのだった。
第5章 十四センチの純情と、思い出せないほどの十八センチの背徳

# 第5章: 十四センチの純情と、思い出せないほどの十八センチの背徳
斗真の部屋を出てからというもの、環菜の身体はまるで自分のものではなくなってしまったみたいに、自転車のペダルを踏む足から力が抜け落ちていった。太腿の内側がサドルに擦れるたび、ついさっきまで斗真の舌が這い回っていた場所が、思い出したようにじんわりと熱を孕む。バッグに押し込んだブラジャーの存在が、背中越しに環菜の罪悪感を揺さぶり、カットソーの柔らかな布地が剥き出しの乳首を掠めるたび、胸の先端がひくりひくりと小さく痙攣を繰り返した。夏の午後、容赦なく降り注ぐ陽射しはアスファルトを焼き尽くし、立ち昇る陽炎の向こうに自宅の屋根が揺らめいて見える。その景色が、環菜にはひどく遠いものに感じられた。まるで斗真の部屋とこの家が、別々の世界に存在しているかのような、奇妙な断絶感が胸の奥で渦を巻いている。
玄関の扉を開けた瞬間、むわりと澱んだ熱気が環菜の全身を包み込んだ。冷房の切られた廊下には、午前中からの暑さがそのまま閉じ込められていて、肌にまとわりつくような湿度が汗ばんだ首筋に絡みつく。環菜は後ろ手に鍵をかけ、スニーカーを脱ぎながら、自分の身体から立ち昇る匂いに気づいて息を呑んだ。斗真の唾液と自分の汗と、それからもっと深い場所から滲み出た秘めやかな匂いが、渾然一体となって環菜を包んでいる。リビングの方からはテレビの音がかすかに漏れ聞こえていて、誰かが家の中にいることを無言のうちに知らせていた。
「……ただいま」
声をかけると、ソファに寝転がっていた悠路が顔だけをこちらへ向けた。リモコンを手にしたまま、環菜の姿をじっと見つめるその視線には、十二歳の少年とは思えぬ奇妙な落ち着きが宿っている。悠路の瞳は環菜のバッグの中でひっそりと丸まっているブラジャーを、まるで透かし見るかのように、ゆっくりと環菜の全身を舐め回した。環菜は思わず胸の前で腕を組んだが、その仕草がかえって悠路の好奇心を煽ることを、彼女は誰よりもよく知っていた。
「おかえり、姉ちゃん。早かったね」
悠路の声はあくまで平坦で、そこには幼い弟の無邪気さと、環菜の秘密を隅々まで知り尽くした雄の落ち着きが、幾重もの層を成して混ざり合っている。環菜はリビングに足を踏み入れず、そのまま階段へ向かおうとしたが、悠路がソファから身を起こす気配が背後で静かに空気を震わせた。
「斗真ってやつの家、どうだった」
環菜は階段の一段目に足をかけたまま、ぴたりと動きを止めた。振り返ることはできなかった。壁の節穴をじっと見つめながら、喉の奥で言葉を探す。心臓が早鐘を打ち、太腿の内側がまたじんわりと熱を持ち始めるのを感じる。
「別に。普通だったよ」
「ふうん。普通、か」
悠路の裸足がフローリングをぺたぺたと鳴らしながら近づいてくる。環菜の背中に、弟の視線が突き刺さるのを感じた。日焼けした細い腕が伸びてきて、環菜の手首をそっと掴む。その指先はひんやりと冷たいのに、有無を言わせぬ強さで環菜の動きを封じ込めた。
「姉ちゃん、すごい汗。シャワー浴びたら」
環菜はそこでようやく振り返り、悠路の顔を見た。まだあどけなさの残る丸い輪郭の中心で、黒い瞳だけが異様なほど落ち着き払って、環菜をじっと見上げている。その目は環菜の身体の変化を一瞬で見抜いていた。カットソーの下にブラジャーがないこと、スカートのプリーツが心なしか乱れていること、そして何よりも、環菜の全身から立ち昇るほのかに甘ったるい匂い。それは斗真の舌で何度も何度も達したあとの、女の身体が放つ紛れもない匂いだった。
「……そうする」
環菜は悠路の手をそっと振りほどき、階段を上がった。一段、また一段と足を進めるたび、膣の奥がきゅうっと疼く。途中で一度だけ振り返ると、悠路はまだ階段の下に立っていて、口元に薄っすらと笑みを浮かべていた。それは、環菜が斗真と何をしてきたかをすべて見抜いたような、そして自分の番がもうすぐ回ってくることを確信しているような、そんな笑みだった。
浴室のドアを閉め、環菜は服を一枚ずつ剥ぎ取っていった。カットソーを頭から抜き去り、スカートのファスナーを下ろす。ショーツを膝から足首へと滑り落とす途中で、クロッチの部分がしっとりと湿っているのに気づき、環菜は自分の身体がまだ斗真の舌の感触をはっきりと覚えていることを、改めて思い知らされた。洗面台の鏡に映る裸の身体は、胸の先端がつんと硬く尖り、下腹部の奥がきゅうきゅうと音を立てそうなほど疼いているのが、自分でもはっきりとわかる。斗真の舌が這った場所はまだひくひくと小さく震えていて、そこから滲み出た愛液が太腿の内側を伝って、ほのかに光る筋を作っていた。
シャワーの栓をひねると、温水が環菜の頭から降り注ぎ、髪を伝って背中へと流れ落ちていく。環菜は湯の粒が肌を叩く感覚に身を委ねながら、斗真の部屋での出来事を頭の中で何度も反芻した。斗真の震える指先が環菜の肌を恐る恐るなぞった感触、真剣な眼差しで環菜の反応を確かめながら動かした舌のぎこちなさ。そのすべてが愛おしくて、胸の奥がぎゅうっと締め付けられるほどだった。けれど、環菜の身体の奥深くには、斗真の優しさでは決して手の届かない場所がぽっかりと口を開けている。湯気の中で目を閉じると、悠路の指の感触がまぶたの裏にありありと蘇った。斗真よりもずっと太く、節くれ立っていて、環菜の中を容赦なく押し拡げるあの指。あの指が、今すぐここに欲しい。環菜は自分の右手をそっと下腹部へと滑らせたが、指先が陰毛の茂みに触れた瞬間、はっとして動きを止めた。こんなことをするためにシャワーを浴びているわけじゃない。斗真のことを考えながら、弟の指を欲しがるなんて、最低だ。環菜は唇を噛みしめ、シャワーの温度を一気に冷水へと切り替えた。冷たい水が肌を叩き、熱を持った身体が悲鳴を上げるように縮こまる。それでも子宮の奥の疼きだけは、ちっとも収まってはくれなかった。
浴室を出ると、環菜はバスタオルで髪を拭きながら自分の部屋へと向かった。濡れた足裏が廊下にぺたぺたと張りつく感触が、やけに生々しく感じられる。ドアを開けた瞬間、環菜の動きが止まった。悠路がベッドの端に腰掛けていたのだ。いつの間に着替えたのか、部屋着の白いタンクトップに紺のハーフパンツという姿で、環菜が入ってくるのを待っていたかのように顔を上げる。
「……勝手に入らないでって、いつも言ってるでしょ」
環菜はバスタオルを胸の前でぎゅっと握りしめながら、できるだけ低い声を出した。悠路は悪びれる様子もなく、環菜の身体をじっと見つめている。バスタオル一枚の姉の身体を、濡れた髪の先から、爪先まで、ゆっくりと時間をかけて舐め回すように。その視線には、まだ幼いはずの少年のものとは思えない、ねばつくような執着が込められていた。
「姉ちゃん、斗真と何してきたの」
悠路の声はまだ子供のものなのに、その口調には奇妙な重さがあって、環菜はベッドから少し離れた場所に立ったまま、答える言葉を探した。部屋の中の空気が、じわりじわりと熱を帯びていく。窓の外では夕暮れが近づき、西日がカーテンをオレンジ色に染め上げていた。
「何も。ただ話してただけだよ」
「うそ。姉ちゃん、すごい顔してる。してきたんだ」
環菜は何も言えず、ただ唇を引き結んだ。悠路はゆっくりと立ち上がり、環菜のすぐ前まで歩いてくる。まだ身長は環菜の肩のあたりまでしかないのに、その存在感は部屋全体を満たし、環菜の呼吸を浅くした。
「キスだけじゃないよね。もっと、されてきたんだよね」
悠路の手が伸びて、環菜の腰のあたりにそっと触れた。バスタオル越しに、弟の指の形がありありと伝わってくる。その感触に、環菜の太腿の内側がぴくりと震えた。環菜は身体を強張らせたが、悠路の指はもう慣れきった動きでタオルの端を探り当て、するりとその下へ潜り込んでくる。
「やめなよ、悠路」
「やめない。姉ちゃんが悪いんだよ。僕を置いて、他のやつのとこ行くなんて」
悠路の指が環菜の太腿の内側をなぞり、まだしっとりと湿った肌の上をゆっくりと上へ上へと這い上がっていく。環菜の身体は、斗真に触れられた時とはまったく別の反応を露わにした。膣の入り口がひくひくと痙攣を始め、とろりとした愛液が狭い肉襞の間から滲み出てくる。悠路の指がまだそこに触れてもいないのに、環菜の身体はすでに律動的な収縮を始めていた。
「見て、もうこんなになってる」
悠路の指先が環菜の割れ目をそっとなぞり、熱くてぬるりとした液体を絡め取る。環菜はバスタオルを床に落とし、悠路の肩にすがりつくようにして身体を支えた。剥き出しの乳房が弟の目の前で揺れ、硬く尖った乳首が空気を切り裂くように震えている。
「斗真じゃ、こんなふうにならなかったでしょ」
悠路の囁きが環菜の耳元で響く。環菜は首を振りたかった。違う、斗真の時だって感じていた、斗真の舌は確かに気持ちよかった、そう言いたかった。けれど身体はあまりにも正直だった。斗真の愛撫では確かに感じた。何度も小さく達した。でも、この身体の奥の奥、子宮のさらに奥にある何かがきゅうきゅうと疼くのは、斗真に触れられた瞬間ではなく、今こうして悠路の指が触れた、まさにこの瞬間だったのだ。
「姉ちゃんのここ、斗真はまだ知らないんだよね」
悠路の指が環菜の膣口をぐっと押し拡げ、ぬめりを帯びた内壁を割って中へと侵入してくる。環菜の膝ががくがくと震え、ベッドの端に両手をついてようやく身体を支えた。悠路の指は斗真のものよりずっと太く、節くれ立っていて、環菜の窄まった肉襞を容赦なくこじ開けていく。その感覚は快楽というよりも、自分の身体が弟の指の形に作り変えられていくような、抗いがたい変形の感覚に近かった。
「や……ぁ……」
「やじゃないよ。だって姉ちゃん、こんなに締め付けてくる。斗真のときはこんなふうにならなかったくせに」
悠路の指が二本に増え、環菜の膣の中でゆっくりと回転する。ぐちゅ、くちゅ、ぬちゃっ……という粘液の音が静かな部屋の中に妙に大きく響き渡り、環菜は自分の身体から立ち昇る淫らな水音に、顔を真っ赤に染めた。斗真の前では決して聞かせられなかったような、あからさまな濡れ音だった。もっと静かに、もっと上品に、斗真をがっかりさせないようにと必死に押し殺していた声や音が、悠路の前では嘘のように溢れ出してしまう。
「斗真の指、細かったでしょ。姉ちゃんには全然足りないよね」
悠路の言葉はあまりにも的確で、環菜は何も言い返すことができなかった。斗真の指は確かに細くて、優しくて、環菜を傷つけることを何よりも怖がっているみたいに、恐る恐る動いていた。でも悠路の指は違う。環菜の一番感じる場所を知り尽くしていて、そこを狙い撃つように、まるで狩りをするみたいに容赦なく攻め立てる。環菜が何年もかけて悠路に教えてしまった、自分だけの性感帯を、弟はもう完璧に把握していた。
環菜はベッドの上にうつ伏せに倒れ込み、枕に顔を埋めた。腰だけが勝手に持ち上がり、悠路の指を奥へ奥へと誘い込もうと蠢いている。背中に悠路の吐息がかかり、それからぬるりとした舌の感触が肩甲骨のあたりをゆっくりと這い始めた。汗の味と、浴室から出たばかりの肌に残る石鹸の匂いとが、悠路の舌の上で混ざり合う。
「姉ちゃん、斗真のことで頭いっぱいのくせに、身体はこうやって僕を欲しがってる」
悠路の指が環菜の膣から抜かれ、代わりに別の場所へと移動していく。窄まりに触れた瞬間、環菜の身体がびくりと跳ねた。悠路は自分の口の中にたっぷりと溜めた唾で指先を濡らし、環菜のアナルをそっとなぞり、それからゆっくりと押し込んでいく。
「ここも、斗真はまだ知らないんでしょ」
「あ……っ、んん……」
肛門の括約筋が悠路の指を呑み込み、ずぶり、という鈍い感触とともに第一関節が環菜の内側へと沈み込んでいく。環菜は枕をぎゅうっと抱きしめ、喉の奥で声を押し殺した。斗真はここを知らない。環菜が弟と何年もかけて少しずつ少しずつ開発してきた、もう一つの性器のことを、斗真は夢にも思っていないだろう。斗真に膣を舐められている間も、環菜のアナルはひくひくと震えて、悠路のペニスを待ち侘びていたのだ。
「姉ちゃんのここ、すごく熱いよ。斗真が入るところより、ずっとずっと熱い」
悠路の指が直腸の中でゆっくりと曲がり、環菜の内側を押し拡げるように動く。膣とはまったく別種の、鈍くて重い快感が下腹部の奥底からじわじわと込み上げてきて、環菜は腰をくねらせた。悠路はそんな環菜の反応を味わうかのように、指の動きを速めたり遅くしたり、時にはぐるりと回転させたりしながら、じっくりと肛門を解していく。その間も、環菜の膣からはとめどなく愛液が溢れ出し、太腿を伝ってシーツに染みを作っていた。
「今日、斗真とどこまでしたの」
「言いたくな……んっ……い」
「言わないなら、僕もやめようかな」
悠路の指がアナルから抜けかける。環菜の身体はほとんど勝手に腰をうしろへ突き出し、自分から指をくわえ込もうとしている。その動きが自分の意思とは無関係に起きたことに気づいた瞬間、環菜の顔は一気に耳まで熱くなった。悠路はその反応を見逃さず、口元を歪ませる。
「キスと……舐められただけ」
「舐められたって、どこを」
「…………下」
「下って、ここでしょ」
悠路のもう一方の手が環菜の股間に回され、とろとろに濡れた膣口をくちゅりと撫で上げる。環菜は枕に顔を埋めたまま、小さく、本当に小さくうなずいた。悠路は満足げに息を漏らし、アナルに入れた指をさらに奥までじわじわと進めながら、もう一方の指を環菜の膣の中へと潜り込ませた。二つの穴が同時に弟の指で満たされ、環菜の身体は前後からぎゅうぎゅうと締め付けられるような快楽に震え始める。
「斗真が舐めてるとき、姉ちゃん、僕のこと思い出してたでしょ」
図星だった。環菜は答えられず、ただシーツを握りしめる指に力を込めた。斗真の舌は確かに気持ちよかった。斗真の優しさは確かに環菜の心を満たしてくれた。でも、もっと深く、もっと乱暴に、もっと圧倒的な質量を持って環菜を貫くものを、身体は無意識のうちに求めていた。斗真の十四センチのペニスでは決して届かない場所が、環菜の膣の奥には確かに存在していて、そこは悠路の十八センチでしか満たされないように、もう作り変えられてしまっていたのだ。
「姉ちゃんの身体は、もう僕の形にしかならなくなってるんだよ」
悠路の声はどこか哀しげで、それでいて絶対的な確信に満ちていた。環菜は自分の膣が、斗真の細い指ではなく、今まさに自分の中にある悠路の太い指を、そしてこれから入ってくるであろう悠路のペニスを思い浮かべて、ひくひくと痙攣しているのを感じた。斗真の十四センチでは決して届かない、子宮のさらに奥の奥が、悠路の十八センチを求めて疼いている。その疼きはまるで、環菜の身体が勝手に歌っているみたいに、止めようがなかった。
「斗真のより、僕のおっきいほうが絶対いいでしょ」
「そんなこと……」
「じゃあ、試してみる」
悠路は両方の穴からゆっくりと指を抜き、環菜の身体を仰向けにひっくり返した。そして自分のハーフパンツと下着を一気に膝までずり下げ、完全に勃起したペニスを環菜の目の前に突き出す。布地を押し上げていたものの正体が今、剥き出しになって環菜の眼前に晒された。その圧倒的な質量に、環菜は無意識のうちにごくりと唾を呑み込んでいた。まだ幼い顔立ちの十二歳の弟とは到底思えないほど立派で、どす黒い赤色に充血した幹の部分には血管が幾筋も浮き出し、先端はぬらぬらと光る露で濡れそぼっている。それは環菜がこの数ヶ月で何度も何度も味わってきた、見慣れたはずの弟のペニスだった。けれど、斗真のものを見た直後の今、その大きさは環菜の目にまったく違った意味を持って映った。
「斗真のって、これくらいでしょ」
悠路が自分のペニスの先端を指でちょっと隠し、根本から半分ほどの位置で区切って見せる。その仕草が指し示す長さが、環菜の記憶の中にある斗真のペニスの長さとあまりにも正確に一致していて、環菜は息を呑んだ。十四センチ。斗真のペニスは確かに十四センチだった。細くて、優しくて、環菜を怖がらせないようにそっと膣口に宛がわれた斗真のペニス。そして、今環菜の目の前でどくどくと脈打っている悠路のペニスは、斗真のそれよりも遥かに長く、遥かに太く、先端から根元までが環菜を貫くためだけに存在しているような、圧倒的な質量を誇っていた。
「違う……斗真のは、もっと……」
「もっと小さいんでしょ。姉ちゃん、今、斗真のと比べてた」
環菜は何も言えなくなった。悠路のペニスをじっと見つめながら、自分の膣がぎゅうぎゅうと締まり、愛液が太腿を伝ってシーツにどんどん染みを作っていくのを、まるで他人事のように感じていた。斗真への罪悪感と、弟の巨大なペニスへの抗いがたい欲望とが、環菜の胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、涙となって滲み出てくる。それは斗真を裏切っている自分への嫌悪の涙であり、同時に、自分の身体が本当に欲していたものを目の前にして感じる、どうしようもない安堵の涙でもあった。
「入れてほしい、姉ちゃん。斗真のより、僕のでいっぱいにしてほしいんでしょ」
悠路が環菜の両脚を左右に大きく押し開き、その中心にペニスの先端を宛がう。ぬるぬるとした亀頭が環菜の膣口に触れた瞬間、環菜の身体はほとんど反射的に腰を浮かせ、その先端をくわえ込もうと蠢いた。膣の入り口がひくひくと震えながら悠路の亀頭に吸い付き、愛液とカウパー腺液が混ざり合って、ぐちゅり、という濡れた音を立てる。
「待って、悠路。まだ心の準備が……」
「もうできてるよ。だって姉ちゃん、斗真にされてるときから、ずっとこうなるの待ってたんでしょ」
悠路の言葉に環菜は何も言い返せなかった。それは真実だった。斗真に触れられている間も、斗真の舌が環菜の膣を優しく舐め上げている間も、環菜の身体の奥底では、弟のペニスを待ちわびていた。斗真の優しい愛撫では決して届かない、身体の芯の芯にある渇きを、悠路の乱暴なまでの質量だけが満たしてくれることを、環菜はとっくの昔に知ってしまっていたのだ。
「斗真のこと、考えながら僕のを受け入れてよ。それで姉ちゃんがイッちゃったら、もう斗真のとこには戻れなくなる」
悠路が腰をゆっくりと前に進め、亀頭が環菜の膣口をぐっと押し拡げる。環菜の膣の入り口は悠路の亀頭を呑み込もうと、ひくひくと震えながら少しずつ少しずつ拡がっていく。環菜は斗真の顔を思い浮かべながら、ゆっくりと目を閉じた。斗真の真剣な眼差し、震える指先、ぎこちなくてでも懸命に環菜を気持ちよくしようとしてくれた舌の感触。そのすべてが愛おしいのに、今、環菜の膣は斗真のものではないペニスをくわえ込もうとしている。
ごめん、斗真。あたしの身体は、もう斗真の知らない場所へ行ってる。
その瞬間、枕元に置いてあった環菜の携帯電話がぶるぶると震え始めた。画面に表示された名前は「斗真」。さっき別れたばかりの斗真からの着信に、環菜の心臓が大きく跳ね上がる。環菜が慌てて携帯に手を伸ばそうとすると、悠路が素早くその手首を掴んで動きを封じた。
「出ないで」
「でも……」
「斗真なんかより、今は僕を見てよ」
悠路はそう言うと、環菜の膣口に宛がっていた亀頭を、ためらいもなく一気に根元まで押し込んだ。ずぶぶぶっ……という重くて濡れた水音とともに、環菜の膣は弟の巨大なペニスを根元までくわえ込む。環菜の内壁は悠路の形に合わせて無理やり押し拡げられ、その圧倒的な質量が腹の奥まで一気に満ちていく感覚に、環菜は声もなく口を開けた。携帯電話はまだ枕元で震え続けていて、着信音が環菜の耳の奥で遠く響いている。
斗真の十四センチでは決して届かなかった、環菜の膣の一番奥の奥が、今、悠路の十八センチでいっぱいに満たされている。子宮の入り口を亀頭がぐっと押し上げ、腹の内側から圧迫されるような圧倒的な質量感。環菜の膣はまるで悠路のペニスに吸い付くようにきゅうきゅうと収縮し、肉襞の一枚一枚が弟の形を確かめるみたいに絡みついていく。その感覚は、斗真のペニスでは決して味わうことのできない、圧倒的な充足感だった。
「ほら、姉ちゃんのここ、斗真のときよりずっと締まってる。僕のが入って、こんなに喜んでる」
悠路が環菜の中でペニスをぐっと動かすたびに、ぐちゅっ、ずちゅっ、という粘液の音が部屋の中に響き渡る。斗真からの着信はまだ切れず、携帯電話は環菜のすぐ隣で震え続けていた。その震えが、環菜の罪悪感をさらに深く抉っていく。斗真が電話をかけてきている。さっきまで環菜の身体を優しく舐めてくれていた斗真が、今、環菜のことを想って電話をかけてきている。なのに環菜は、弟のペニスを膣の奥深くまでくわえ込み、腰をくねらせてその快楽に溺れようとしている。
「斗真に聞かせてあげようか。姉ちゃんが今、どんな声で感じてるか」
悠路が環菜の携帯に手を伸ばす。環菜は必死で首を横に振ったが、身体は悠路のペニスから逃れようとしない。むしろ、斗真に聞かれるかもしれないという背徳感が、環菜の快感をさらに何倍にも膨れ上がらせていた。膣が悠路のペニスに絡みつき、愛液が二人の結合部から溢れ出して、シーツにどんどん染みを作っていく。
「やめて……それだけは……」
「じゃあ姉ちゃん、自分で言って。斗真より僕のほうが気持ちいいって」
「んあっ……!」
悠路が腰を強く突き上げ、環菜の子宮の入り口を亀頭でぐりぐりと抉る。環菜の視界が一瞬白く染まり、背筋を走る快感に全身が痙攣した。斗真への想いと、弟のペニスが与える圧倒的な快楽との間で、環菜の心はぐちゃぐちゃに引き裂かれていく。それでも身体は正直で、膣は悠路のペニスを離そうとせず、むしろもっと奥へ奥へと欲しがって、ぎゅうぎゅうと締め付けている。
「言わないと、もっと激しくするよ」
「ひ、ぁ……斗真……ごめん……」
「斗真じゃなくて、僕を見て」
悠路の抽送が激しさを増し、環菜の膣の中をずぶずぶと音を立てて出入りするペニスが、環菜の中でまだ誰にも触れられたことのない場所までを暴いていく。斗真はこんなふうに環菜を貫いたことはない。斗真の優しいペニスは、環菜の膣の入り口をそっとノックするだけで、中まで入ってくることは怖がっているみたいだった。でも悠路は違う。環菜の膣の奥の奥、子宮のさらに奥にある何かを、容赦なく突き破ろうとするかのように、どんどん深く侵入してくる。
枕元の携帯電話がようやく震えを止め、着信が切れた。部屋の中には環菜の押し殺した嬌声と、二人の身体がぶつかり合う濡れた音だけが響いている。斗真が電話を切ったという安堵と、斗真がきっと心配しているだろうという罪悪感とが、環菜の胸の中で渦を巻いた。それでも環菜の腰は悠路の動きに合わせて淫らに揺れ、膣は弟のペニスを離そうとしない。
「姉ちゃん、斗真が電話してきたとき、すごく締まったよ。斗真にバレるかもしれないのに、感じてたんだ」
「ちが……あ、ああっ……」
「違わない。姉ちゃんのここが、僕にそう教えてくれてる」
悠路の腰の動きがさらに加速し、環菜の膣をペニスが激しく出入りする。ぐちゅぐちゅ、ずぶずぶ、という粘着質な水音が部屋の中に響き渡り、環菜は枕をぎゅっと抱きしめて声を押し殺した。斗真の十四センチでは決して味わうことのできなかった、圧倒的な質量感。腹の奥までずっしりと満たされ、子宮の入り口を亀頭でぐりぐりと抉られる感覚。環菜の身体はそのすべてを求めて、悠路のペニスにきゅうきゅうと吸い付いていく。
あたしの膣は、もう斗真の十四センチじゃ満足できなくなってる。斗真の優しい指も、斗真の震える舌も、斗真の初々しいペニスも、全部愛おしいのに。でも、この奥の奥を満たしてくれるのは、斗真じゃない。同じ血の流れる弟の、この圧倒的な質量だけなんだ。
環菜の目尻から涙がこぼれ落ちた。それは斗真への罪悪感の涙であり、同時に、自分の身体が本当に欲していたものを今こうして得られていることへの、どうしようもない安堵の涙でもあった。膣は悠路の十八センチをきゅうきゅうと締め付け、子宮の奥が切ないほどに疼いている。斗真を想う心と、弟のペニスを求める身体との矛盾が、環菜をどこまでも深い背徳の淵へと突き落としていく。
「一緒にイこう、姉ちゃん。斗真のことを考えながら、僕のでイくんだ」
悠路のペニスが環菜の膣の一番奥をぐっと押し上げ、亀頭が子宮口に吸い付くように密着する。その感覚に、環菜の身体がびくんと大きく跳ねた。斗真のペニスでは決して届かなかった場所が、今、弟のペニスで完全に満たされている。環菜の中で、何かが音を立てて崩れ落ちていく。斗真への純粋な恋心と、弟との淫らな関係との境界線が、どろどろに溶けて混ざり合っていく。
「あ、ああ……斗真……ごめ……っ、イく、イっちゃう……」
「いいよ、イって。斗真の名前を呼びながら、僕のでイく姉ちゃんが、僕は大好きだよ」
悠路のペニスが環菜の膣の中でさらに膨張し、どくどくと脈打ち始める。環菜は斗真の顔を思い浮かべながら、そして今自分を貫いているのが弟のペニスだという事実に身を震わせながら、ゆっくりと絶頂への階段を駆け上がっていった。
斗真の十四センチと、悠路の十八センチ。その四センチの差が、環菜の心と身体を永遠に引き裂いていく。斗真の優しさを愛おしいと思いながら、環菜の膣は今日も、弟の巨大なペニスをぎゅうぎゅうと締め付けている。
第6章 両親不在のリビングで、膣にバイブ、肛門に弟の肉を咥え込む終わりの夏

# 第6章 両親不在のリビングで、膣にバイブ、肛門に弟の肉を咥え込む終わりの夏
八月も残り三日というその日、朝から空気は煮詰めた砂糖湯のようにねっとりと肌へ纏わりつき、扇風機の羽根が掻き回す生ぬるい風だけではどうにもできない熱が、家じゅうの隅々にまで澱んでいた。環菜は自室のクローゼットを開け、いちばん奥に畳んで仕舞い込んであった淡い水色の布袋を取り出す。手のひらに載せたその小さな膨らみは、布越しにもはっきりとわかる硬質で滑らかなシリコンの重みを持っていて、ずっしりとした質量が環菜の手首に微かな緊張を走らせた。
環菜は布袋の口を解き、中からバイブを引き抜いて、しばらくじっと見つめた。淡い桜色のそれは、一年前にこっそりとネットで注文したものだ。悠路の勃起したペニスよりは心持ち細く、でも斗真のそれよりはずっと太く、表面には血管を模した浅い溝が螺旋状に刻まれている。環菜は自分の身体が、この冷たい異物と弟の熱い肉棒に同時に貫かれる瞬間を想像するだけで、下着のクロッチ部分がじわりと湿り、太腿のつけ根あたりまで粘つく感触が広がっていくのを感じた。
リビングへ下りていくと、悠路はもうソファの背凭れにだらりと脚を投げ出し、テレビのアニメをぼんやりと眺めていた。環菜が部屋着のショートパンツと薄手のタンクトップ姿のまま近づくと、悠路はリモコンをサイドテーブルに置き、身体を起こして脚を組み替える。その仕種には、まだあどけなさの残る十二歳の素顔と、この一ヶ月ですっかり女の身体を知り尽くした雄の落ち着きとが、奇妙な混ざり方をして滲んでいた。
「姉ちゃん、今日はどこも行かないの」
環菜は悠路の隣に腰を下ろし、手に持ったバイブをそっとローテーブルの上に置いた。ガラス天板に触れたシリコンが、こつん、と小さく乾いた音を立てる。悠路の黒目がちな瞳がそれをじっと見つめ、それからゆっくりと細められた。
「これ、久しぶりに出してきたんだね。今日はこれを使いたい気分なんだ」
環菜の声は自分でも驚くほど落ち着いていて、けれどその奥には微かな震えが隠れていた。斗真の部屋へ行ってから一週間、環菜は悠路を避けるどころか、むしろ自分から弟を求めることが増えていた。斗真への罪悪感を埋め合わせるためなのか、それとも斗真の優しい愛撫では決して満たされない、自分の身体の奥底に巣食う飢えを自覚してしまったからなのか、環菜自身にもはっきりとはわからない。ただ、こうやって悠路の前に座り、淫らな道具をためらいなく差し出す自分を、もう一人の環菜が遠くから見つめているような感覚だけは、いつも確かにあった。
悠路はテーブルの上のバイブを手に取り、スイッチを入れたり切ったりしながら、口元にうっすらと笑みを浮かべた。ぶうん、ぶうん、と振動が空気を震わせ、その微かな音が環菜の下腹部に直接響くような錯覚を呼び起こす。
「姉ちゃん、もうこれ自分で入れてきたの」
「まだ。でも、これからするから」
環菜は立ち上がり、リビングの床に敷きっぱなしになっている布団の上へ移動した。共働きの両親が夏休み中ずっと留守にしているこの時間、環菜と悠路はこのリビングの布団で何度も身体を重ねてきた。フローリングのひんやりとした冷たさが、薄い布団越しにじんわりと背中へ伝わってきて、それがかえって環菜の肌の表面に浮いた汗の熱さを際立たせ、乳房の先端を硬く尖らせていた。
環菜はショートパンツとショーツを一気に膝まで下ろし、そのまま布団の上に仰向けになった。悠路の視線が肌に刺さるのを感じながら、環菜は人差し指の腹で自分の割れ目をそっとなぞる。もうそこは充分に濡れていて、指の腹がぬるりと滑り、触れた部分から糸を引くように透明な愛液が伸びた。陰唇の内側は熱を持ってひくひくと小さく蠢き、空気に触れたクリトリスがぷっくりと充血して顔を覗かせている。
「姉ちゃん、今日はすごく自分からするんだね」
悠路の声は相変わらず舌足らずな子供っぽさを残しているのに、そこに込められた熱は明らかに大人の男のものだった。環菜は答えずに、左手の指で陰唇をゆっくりと押し広げた。薄桃色の粘膜が露わになり、膣口がきゅうっと窄まっては緩むのを繰り返している。右手に持ったバイブの先端を、環菜は自分の膣口にそっと宛がった。冷たいシリコンの感触に、身体がびくりと震え、背筋を電気が走る。
環菜はゆっくりと腰を浮かせ、体重をかけるようにしてバイブを自分の膣の中へと沈めていった。ずぶり……ぬぷっ……という粘液の音と共に、桜色の異物が環菜の内壁を押し広げていく。斗真のペニスより太いそれは、環菜の膣をぎちぎちに満たし、粘膜の襞ひとつひとつをシリコンの溝が擦り上げながら、腹の奥の方までずっしりとした質量で届いた。自分の内臓が、異物によって少しずつ押し上げられていくような、圧倒的な充満感。
「はぁ……んんっ……ふぅ……」
環菜が小さく声を漏らすと、悠路は自分のハーフパンツをずらし、既に勃起したペニスを露わにした。十八センチのそれは、まだ幼い顔立ちの弟の細い身体から生えているとは思えないほど立派で、皮膚の薄い先端は赤黒く充血し、鈴口からは透明な我慢汁がとろりと滲み出て、ゆっくりと裏筋を伝い落ちている。肉茎の表面には太い血管が浮き出ていて、どくんどくんと脈打つたびに、それがうごめいているのが環菜の目にもはっきりと見えた。
「姉ちゃんは、そっちを自分で入れたんだから、こっちは僕が入れるよ」
悠路は環菜の腰の下にクッションを差し込み、環菜の身体を横向きに寝かせた。そしてその後ろから、環菜の背中にぴったりと張り付くようにして横たわる。環菜の臀部は、自分の意思とは無関係に持ち上がり、窄まりが悠路の眼前に晒されていた。ひくひくと小さく蠢くその皺は、これから自分が貫かれることを知っていて、期待と恐怖で汗ばんでいる。
悠路の指が環菜の窄まりにそっと触れた。冷たいローションの感触が広がり、弟の細くて節のある指が、恐る恐る環菜のアナルを解していく。第一関節が沈み込み、環菜の内壁がきゅっ、と異物を締め付ける。それから第二関節まで、ゆっくりと時間をかけて。悠路の指は環菜の直腸の中でゆっくりと回転し、内壁を慣らすように動き、時折指を曲げては腸壁を優しく押し広げた。ぬちゅ……くちゅ……という粘液の音が、環菜自身の耳にやけに大きく響く。
「姉ちゃんのおしり、もうほぐれてるよ。今日は早くほしそうだね」
悠路の指が引き抜かれ、代わりにもっと熱くて硬いものが肛門に押し当てられる。亀頭のぬめりとした感触が窄まりに触れた瞬間、環菜の身体は条件反射のようにびくんと跳ねた。環菜はゆっくりと息を吐きながら、意識して窄まりの力を抜く。悠路の腰がぐっと前に進み、亀頭が環菜の肛門を押し広げる。最初は鈍い痛みにも似た圧迫感。けれどそれが腸壁を通過するにつれて、痛みは次第に痺れるような快感へと変わっていった。
「ゆっくり……して……」
「うん、でも姉ちゃんがきつく締めるから」
悠路はそう言いながらも、環菜の言葉に従って慎重に腰を進めた。ぬぷ……ぬぷ……ぬぷっ……という湿った音を立てながら、弟のペニスが環菜の直腸を少しずつ埋めていく。膣の中のバイブと、肛門から侵入してくる悠路の肉棒。二つの異物が環菜の腹の奥で徐々に近づいていき、薄い直腸膣中隔を隔てて、互いの存在を主張し合う。
やがて悠路のペニスが根元まで収まると、環菜の身体の中で二つの質量がぴったりと寄り添った。膣壁越しにバイブのシリコンと悠路の肉茎が互いを押し合い、その圧迫感が環菜の子宮と前立腺を同時に刺激する。環菜は声にならない声で口を開け、シーツをぎゅっと握りしめた。指の関節が白くなり、爪が掌に食い込む。
「全部入ったよ。姉ちゃんの中、すごく狭くてぬるぬるしてる」
悠路が環菜の耳元で囁く。吐息が耳朶をくすぐり、その声は幼いのに甘やかな響きを帯びていた。環菜は答えられず、ただはあはあと荒い息を繰り返した。膣と肛門が同時に満たされるこの感覚は、何度経験しても慣れることがない。身体の中心が二方向から押し広げられ、内臓そのものが別の生き物に支配されたような、圧倒的な異物感と快感。まるで自分の身体が、二本の肉の杭に串刺しにされているかのようだった。
悠路は環菜の腰を後ろから抱え込むようにして、ゆっくりと抽送を始めた。引き抜かれる時、腸壁がペニスの形に沿って擦り上げられ、環菜の背筋にぞくぞくとした痺れが走る。再び奥まで押し込まれる時の圧迫感が、膣内のバイブをさらに深く押し込み、子宮口をぐっと突き上げた。その繰り返しが、環菜の思考を少しずつ溶かしていく。ぐちゅ……ぬちゃ……ぐぽっ……という粘液と空気の混じった音が、静かなリビングに規則的に響き、テレビのアニメの賑やかな音声と奇妙に重なり合った。
「姉ちゃんのここ、今日は特にすごく締め付けてくる。斗真ってやつが相手だと、こんなに熱くならないんでしょ」
悠路の言葉に、環菜の脳裏に斗真の優しい笑顔がふわりと浮かんだ。斗真の部屋で感じた、あの不器用で誠実な愛撫の感触。斗真は環菜を傷つけないように、まるで壊れ物を扱うみたいに触れてくれた。その優しさは今でも環菜の胸を締め付け、ちくりと小さな棘を刺す。斗真の指は、環菜の内側の熱を確かめるように、そっとゆっくりと動いた。その誠実さが、今はかえって環菜を苦しめる。
でも、斗真はこんなふうに環菜を貫かない。膣と肛門を同時に満たし、腹の奥まで届くような深い快感で環菜の思考を奪うことなんて、斗真にはできないのだ。そして環菜の身体は、もうそれを知ってしまっている。
悠路が角度を変え、環菜の腰を少し持ち上げるようにして奥を突き上げた。その瞬間、環菜の前立腺を悠路の亀頭がぐっと押し上げ、膣内のバイブが子宮口を同時に刺激する。環菜の視界に白い火花が散り、身体中に電気が走ったみたいに痙攣した。意識の底から何かが弾け飛ぶような、鋭くて甘い衝撃。
「ひ、ぁああっ……! そこ、そこだめ……っ」
環菜の口から飛び出した叫び声は、自分でも驚くほど高くて甘やかで、喉の奥がひりつくほどだった。悠路は環菜の反応を見逃さず、同じ角度で何度も腰を突き入れる。環菜の身体はもう自分の意志では動かず、悠路の抽送に合わせて勝手に跳ね、腰が浮き、シーツを掴む指が痙攣した。
「姉ちゃん、そこ好きだもんね。ずっとその場所をぐりぐりしてあげる」
悠路の声はどこか誇らしげで、それでいて環菜の身体を隅々まで知り尽くした雄の余裕が滲んでいた。環菜はもう何も考えられず、ただ波のように押し寄せる快感に身を任せる。斗真のことも、罪悪感も、これからのことも、全部ぐちゃぐちゃに溶けて、どろどろの熱い蜜になって流れていく。今ここにあるのは、弟に貫かれ、内側から掻き回され、自分のものではなくなった身体だけだった。
「もっと……もっと奥を突いて……お願い……」
環菜は自分から腰を打ち付け、悠路のペニスをさらに深くまでくわえ込もうとした。自分の声がこんなに切なく、こんなに切実に響くとは思わなかった。悠路はそれに応えるように抽送の速度を速め、ぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃ、という粘液の音が途切れることなく続く。環菜の膣からは愛液が溢れ出し、バイブの根本から太腿の内側を伝って、布団に染みを作っていた。その染みは少しずつ広がり、湿った感触が肌に貼りつく。
悠路の手が環菜のタンクトップの下に潜り込み、汗ばんだ肌を這い上がって、小さな胸の先端を指で摘み上げる。乳首が硬く尖り、悠路の指の腹で転がされるたびに、環菜はひときわ大きな声をあげた。くりくりと捏ねられ、軽く爪を立てられるたびに、胸の先端から直接、子宮までを繋ぐ細い糸がぎゅっと引っ張られるような快感が走る。膣とアナルと乳首、三つの場所から同時に与えられる刺激に、環菜の身体はもう限界だった。内側から、じわじわと何かがせり上がってくる。
「僕、もう出そう。姉ちゃんの中にいっぱい出すから、そのまま受け止めてね」
悠路が環菜の耳元でそう囁き、最後の数回を深く、強く突き入れた。どくんっ、どくんっ、どくんっ、という熱い脈動が環菜の直腸の奥で感じられ、悠路のペニスがさらに一回り膨らんで、熱い精液を吐き出す。その熱を腸壁で感じた瞬間、環菜は自分も同時に絶頂へと押し上げられた。
環菜の膣がぎゅうぎゅうと痙攣し、バイブをきつく締め付ける。子宮が絞り上げられ、全身の筋肉が硬直し、それから一気に弛緩する。環菜は声も出せず、ただ口をパクパクと開け閉めしながら、手足の先からじんわりと痺れが広がっていくのを感じた。頭のてっぺんからつま先まで、全部が溶けてしまったみたいに、何も考えられない。ただ内側で、悠路の精液の熱と、バイブの冷たい質量と、自分の愛液のぬめりとが、ぐちゃぐちゃに混ざり合っている。
悠路がゆっくりとペニスを抜くと、栓がなくなった肛門からはとろりと白い精液が溢れ出て、環菜の太腿を伝って布団に染みを作った。環菜は横向きに倒れたまま、荒い息を整えようとしたが、まだ身体の震えが止まらない。下腹部が時折ひくん、ひくん、と小さく跳ね、子宮が余韻に震えている。
悠路はそんな環菜の隣に寝転び、そっと環菜の汗で濡れた髪を撫でた。その手つきはさっきまでの雄々しい動きとは打って変わって、まるで壊れ物に触れるみたいに優しくて、指の腹がこめかみをそっと辿る。
「姉ちゃん、今日はすごく気持ちよかったよ。姉ちゃんが自分からバイブ入れてるのを見ただけで、もう僕、すごく興奮しちゃった。あんな姉ちゃん、初めて見た」
環菜は悠路のその言葉に、微かに口元を緩めた。悠路は普段はあんなに子供っぽくて、ゲームに夢中になっては大声をあげ、環菜にまとわりついては甘えてくる。そういう時だけ、やけに優しくて、まるで環菜のほうが守られるべき存在であるかのように振る舞う。そのギャップが、環菜の胸を複雑にさせた。環菜はまだ膣に入ったままのバイブに手を伸ばし、ゆっくりと引き抜いた。ぬるり……と抜け落ちたそれには、環菜の白く濁った愛液が糸を引いていて、テーブルの上に置くとガラス天板の上で小さく光った。
「あたしたち……こんなことしてていいのかな」
環菜が天井を見つめながら呟くと、悠路は環菜の肩に顔を寄せ、子どもの頃と同じように額を擦りつけてきた。
「いいんだよ。だって姉ちゃんは、僕がいないとだめなんだから。ずっと昔から、そうだったでしょ」
悠路の声はあまりにも無邪気で、環菜は胸の奥がちくりと痛むのを感じた。悠路は環菜が斗真に抱いている罪悪感も、二つの関係の狭間で引き裂かれそうになる環菜の心も、きっと本当にはわかってはいない。悠路にとって環菜は、小さい頃からずっと自分のものだと思ってきた姉であり、これからもずっと自分のものであるべき存在なのだ。その純粋な独占欲が、今は環菜を縛る鎖にも、環菜を癒す温もりにもなっていた。
環菜は悠路の細い肩を抱き寄せ、しばらくその体温を感じていた。汗と精液と愛液の混じった匂いが、ふたりの周りに立ち込めている。夏休みももうすぐ終わる。学校が始まれば、斗真との関係も元に戻っていくだろう。マックで待ち合わせて、他愛のない会話をして、時々キスをするような、あの清い交際へ。
でも、身体の奥底では、もう斗真の優しさだけでは満足できない自分がいる。環菜はこの夏で、自分の身体が斗真ではなく悠路を欲していることを、骨の髄まで思い知らされた。斗真への気持ちは嘘じゃない。斗真の笑顔を見ると今でも胸が温かくなるし、斗真の指に触れられると安心する。でも、それと同じくらい確かに、自分の膣と肛門は弟の形に慣らされてしまっている。二本の異物に同時に貫かれるあの圧倒的な充満感を、身体が覚えてしまっているのだ。
遠くで夕方五時のチャイムが鳴り響いた。プール帰りの子供たちを呼び戻すその音は、夏の終わりを告げるように、少しだけ寂しげに、しんしんと空気を震わせて響く。チャイムは長く尾を引き、やがて余韻だけを残して消えていった。環菜は悠路の腕からそっと身体を離し、汗と精液と愛液で汚れた布団を丸めた。シーツに染み込んだ生温かい湿り気が、手のひらに伝わる。
「もう、片付けないと。そろそろお父さんたちも帰ってくるし」
環菜が立ち上がろうとすると、悠路が環菜の手首を掴んで引き止めた。その指は細いのに、環菜を離すまいとする力がこもっている。
「姉ちゃん、明日もまたしようね。夏休み、あと三日あるから。三日とも、全部しよう」
環菜は何も答えず、ただ悠路の頭をぽんぽんと軽く叩いた。汗で湿った弟の髪が、手のひらに柔らかく触れる。この関係をどうすればいいのか、環菜にはまだわからない。斗真のことも、悠路のことも、両方を手放すことなんてできない。そのままリビングの窓を開けて空気を入れ替えながら、環菜は残り少ない夏休みの日々に思いを馳せた。
窓の外には、オレンジ色に染まり始めた空がどこまでも広がっていて、その中を一羽のトンボがすいっと斜めに飛んでいく。八月の終わりの蒸し暑い風が、汗で額に張り付いた環菜の前髪をふわりと持ち上げ、首筋の汗を冷やしていった。環菜は窓枠に手を置き、その風をしばらく浴びていた。遠くで、また別のチャイムが、今度はもっと遠くで鳴っている。夏が終わる——その予感だけが、環菜の胸の中に、淡い痛みのように広がっていった。
第7章 食卓の下で重なる膝小僧と、チャイムと共に蘇る腸の疼き
第7章: 食卓の下で重なる膝小僧と、チャイムと共に蘇る腸の疼き
九月の陽射しはまだ夏の名残をとどめていたが、朝晩に吹く風だけはどこかひんやりとしていて、環菜はその空気の変化に、過ぎ去った季節のことを思った。夏休みの最後の三日間は、あっという間に過ぎていった。あの日、リビングの布団の上で悠路と重なり合い、身体の奥まで弟の形に満たされたあと、環菜は現実に戻るように片付けをし、換気をし、何事もなかったかのように夕食の準備を手伝った。両親が帰宅した時にはもう、リビングにはいつもの家族の空気だけが漂っていて、環菜はいつもの明るい娘の顔をしていた。
新学期が始まって一週間が過ぎ、学校はもう通常の時間割に戻っている。放課後のチアリーディング部の練習も再開され、環菜は久しぶりにユニフォームに袖を通した。体育館に響く仲間たちの掛け声、床を蹴るスニーカーの音、汗ばんだ肌に貼りつくシャツの感触。そのすべてが、環菜にとっては日常への回帰を意味していた。
でも、心の奥底と身体の中心だけは、もう夏の前には戻れない場所へ行ってしまっている。
環菜は部活のあと、更衣室で着替えながら、スマホに届いた斗真からのラインを確認した。画面には短い文が並んでいる。
『今日、マック寄らないか。久しぶりに話したいし』
環菜は少しだけ指を止め、それからスタンプを一つ返した。 ok のウサギがぴょんと跳ねる。斗真はすぐに既読をつけて、『じゃあいつものとこで』と返してきた。環菜はスマホをロッカーにしまい、ブラウスのボタンを留めながら、自分の顔が少し強張っているのを鏡越しに感じた。
斗真とはあの日以来、何度か顔を合わせている。でも斗真は以前よりもずっと慎重で、環菜の身体に触れることをためらっているのがわかった。手をつなぐことさえ、どこか申し訳なさそうに、そっと。斗真のその優しさが、今の環菜には鋭い棘のように刺さる。
約束のマックに行くと、斗真はもう窓際の席で待っていた。トレイには二人分のシェイクが置かれていて、ストローがまだ封を切られずに立ててある。斗真は環菜に気づくと、少しだけ表情を和らげて手を挙げた。
「おまたせ。練習長引いちゃって」
環菜が向かいの席に座ると、斗真はストローの包みを外しながら、環菜の顔をじっと見た。その目は真剣で、でも何かを言いあぐねているような、そんな色をたたえている。
「環菜、この前のこと、ちゃんと話せてなかったから」
斗真の声は落ち着いていたが、ストローを弄る指先だけが所在なさげに動いている。
「あの日、俺、もっとちゃんとしなきゃって思ってたのに、河村にも言われたけど、やっぱりうまくできなくて。環菜を困らせたんじゃないかって、ずっと気になってた」
環菜はシェイクを一口すすり、冷たい甘さが喉を通り過ぎるのを感じながら、斗真の言葉の重みを受け止めていた。斗真はあの日のことを、自分の不器用さのせいだと思っている。環菜が斗真の愛撫では満たされなかったことなど、想像もしていないのだ。
「斗真は、すごく優しかったよ。あたし、あれでよかったと思ってる。斗真が、ちゃんとあたしのことを考えてくれてるのが伝わってきたから」
環菜がそう言うと、斗真は少しだけ安心したように口元を緩めた。でも、環菜の胸の奥では別の感情が渦巻いている。斗真の優しさは本物で、その優しさに包まれていると、環菜は自分がとても汚れた存在に思えてきた。斗真が知らないところで、環菜の身体は弟の熱を受け入れ、膣と肛門を同時に貫かれる快楽に溺れている。そのことを思うたびに、環菜は斗真の顔をまともに見られなくなる。
「俺、環菜のことをもっと大事にしたいんだ。だから、これからは焦らずに、環菜のペースでいいから」
斗真のまっすぐな言葉に、環菜は微笑みながらうなずいた。でも、斗真の言う「環菜のペース」というのは、斗真の知らない環菜の身体のことをまったく考慮していない。環菜の身体はもう、斗真の優しい愛撫だけではどうにもならない場所まで進んでしまっているのに。
マックを出て、夕暮れの道を斗真と並んで歩く。斗真が時々環菜の手を取ろうとして、でもためらうように指を引っ込める。環菜はそんな斗真の横顔を見ながら、自分からそっと手を差し出した。
「手、つなごう」
斗真は少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに環菜の手を握った。その手はやはり大きくて、硬いマメの感触が環菜の指に触れる。
帰り道、二人は他愛のない話をしながら駅へ向かった。部活のこと、次の試合のこと、受験勉強の進み具合。そんな日常の会話を交わしながらも、環菜の身体のどこか奥深くでは、別の熱がくすぶり続けていた。あのチャイムが鳴るたびに思い出す、夕方のリビングに満ちていた匂いと感触。弟の細い指が環菜の身体を探り当てる時の、あの心臓が跳ね上がるような緊張。
環菜は斗真に手を振り、自宅への道を一人で歩いた。空にはまだ赤みが残っていて、電線にツバメが数羽止まっている。九月の夕暮れは静かで、遠くの公園から聞こえるチャイムの旋律だけが、あの夏の日々と変わらずに響いていた。
家に帰ると、玄関には父親の革靴と母親のパンプスが揃えてあり、今日は四人が揃って夕食をとるらしいとわかった。リビングからはテレビのニュースと、母親が台所で鍋をかき混ぜる音が聞こえる。
「おかえりなさい、環菜。今日は早かったのね」
美沙子が振り返って声をかける。環菜はてきぱきと手を洗い、食卓に箸を並べるのを手伝った。こういう何気ない家事の動作が、環菜を「普通の娘」に戻してくれる。少なくとも表面上は。
「お姉ちゃん、今日のテスト、百点だったんだよ」
悠路がランドセルからプリントを取り出し、誇らしげに環菜に見せる。その顔はあどけなくて、どこにでもいる小学六年生の弟そのものだった。環菜は「すごいじゃん」と頭を撫でながら、この子が数時間前までとはまったく違う顔を見せることを知っている自分を、少しだけ不思議に思った。
雅功がスーツから部屋着に着替えてリビングに下りてきて、家族四人が食卓を囲む。メニューは肉じゃがと味噌汁とほうれん草のおひたしで、あたたかな湯気が食卓に立ちこめていた。
「環菜、受験の方もそろそろ本腰入れないとな。チアもいいけど、ちゃんと勉強しろよ」
雅功が肉じゃがを箸でつまみながら、穏やかな口調で言う。環菜は味噌汁をすすりながら、軽く肩をすくめた。
「わかってるよ。ちゃんとやってるって」
「環菜は真面目だから大丈夫よ。悠路も、お姉ちゃんを見習って勉強しなさいね」
美沙子が悠路の茶碗にほうれん草をよそいながら言う。悠路は少しだけ口をとがらせて、
「おれ、ちゃんとやってるもん」
と言い返した。その言い方があまりに子供らしくて、環菜は思わず笑ってしまう。この子は本当に、家族の前ではこうやって幼い弟を完璧に演じているのだ。
食卓の会話が弾み、雅功が今日あった仕事の話をし、美沙子がそれに相槌を打つ。環菜も学校の話題を振り、悠路が友達と遊んだ話をする。何の変哲もない、幸せな家族の団欒。でも環菜は、この平和な光景の裏側に、誰にも言えない秘密の層が重なっていることを痛いほど自覚していた。
突然、環菜の膝に、ほんの少しだけ熱い感触が触れた。
環菜は箸を持ったまま、身体を硬直させた。食卓の下で、悠路の膝が環菜の膝にそっと押し当てられている。その接触は誰にも気づかれない、ほんのささやかなものだった。悠路は涼しい顔で味噌汁を啜っていて、両親は相変わらず他愛のない会話を続けている。
環菜は心臓が早鐘を打つのを感じながら、表情だけは必死に平静を保った。膝越しに伝わってくる弟の体温が、環菜の身体の奥底に眠っていた熱を呼び覚ます。朝、学校に行く前に交わしたキスの感触、昨日の夜中にこっそりと部屋に忍び込んできた悠路の指の感触。そんな記憶が一度に押し寄せてきて、環菜は箸を置きそうになるのを必死にこらえた。
悠路の膝はそれ以上動かず、ただじっと環菜の膝に寄り添っている。その静かな接触が、かえって環菜の感覚を鋭く研ぎ澄ませた。食卓の上の団欒とは別のところで、環菜と悠路だけが共有する秘密の会話が、膝越しに交わされているような気がした。
「環菜、どうしたの。顔が赤いけど、熱でもあるんじゃないの」
美沙子が心配そうに環菜の顔を覗き込む。環菜はあわてて首を振り、無理に笑顔を作った。
「だいじょうぶ、ちょっと部活で疲れただけ。暑かったから」
環菜がそう言うと、美沙子は「あまり無理しちゃだめよ」と言って、環菜の茶碗に肉じゃがをよそい足した。環菜はその優しさに胸が痛みながらも、なんとか食事を続けた。
その時、窓の外から夕方五時のチャイムが聞こえてきた。あの夏の日々、チャイムが鳴るまで続いていた背徳の時間。両親が帰宅するまでの限られた時間の中で、環菜と悠路が何度も身体を重ねてきた、あの旋律。
チャイムの音が環菜の耳に届いた瞬間、環菜の身体の奥がきゅんと疼いた。膣の奥がひくひくと小さく痙攣し、肛門の括約筋が無意識にきゅっと締まる。つい昨夜も入っていた弟の熱の形を、腸壁の粘膜がまるで記憶しているかのように蠢いた。環菜は自分の身体のあまりに正直な反応に、太腿をぎゅっと閉じ合わせた。
悠路の膝が、環菜の膝からそっと離れた。環菜が横目で悠路を見ると、弟は相変わらず味噌汁を啜っていて、その横顔は何の感情も読み取れない。でも環菜にはわかっていた。悠路もまた、同じチャイムを聞いて、同じことを思い出しているのだ。
夕食が終わり、環菜は自分の部屋に戻った。ベッドに腰掛けてスマホを手に取ると、斗真にラインを打つ。さっき別れたばかりなのに、また明日もマックに行こうと打った文字が、画面の上でぼんやりと光っていた。
斗真はすぐに『いいよ』と返してきて、それから『今日は話せてよかった。環菜といると、落ち着く』と続けた。環菜はその言葉を見つめながら、胸の奥がじわじわと熱くなるのを感じた。
斗真のことは、間違いなく好きだった。手をつなぐだけでドキドキするような、あの初々しい気持ちは本物だ。でも、斗真の優しさだけでは満たされない自分がいることも、環菜はもう否定できなかった。斗真がくれるのは、柔らかくてあたたかな愛おしさ。悠路がくれるのは、もっと暗くて深い、身体の奥の奥まで貫かれるような快楽。
環菜はスマホをベッドに放り投げ、天井を見つめながら横たわった。窓の外ではもう日が沈みかけていて、カーテンの隙間から差し込む光が部屋の中をオレンジ色に染めている。あのチャイムが今も耳の奥に残っていて、環菜の身体はまだその余韻に震えていた。
両親がリビングでテレビを観ている気配がする。母親の笑い声、父親がそれに答える低い声。普通の家族の、普通の夜。でも環菜は、この家の中で自分だけが抱えている秘密の重みを、誰にも打ち明けられないまま、新しい季節を迎えようとしていた。
斗真に明日も会う約束をした。そして、明日の夕方、両親がまだ帰っていない時間に、悠路がまた環菜の部屋に来ることもわかっていた。環菜はそのどちらも手放せず、どちらかを選ぶこともできず、ただ二つの関係の間で揺れ続けるだけだった。
どちらが本当の自分なのか。斗真に手を引かれて歩く環菜と、弟に貫かれて悦ぶ環菜。その二つはあまりにもかけ離れていて、環菜は自分が分裂してしまいそうな感覚に襲われることがあった。でも、そのどちらも確かに自分であり、どちらも捨てられない。
環菜は目を閉じて、深く息を吐いた。まだ夏の熱を帯びた夜の空気が、カーテンをふわりと揺らす。遠くでまたチャイムが鳴るのが聞こえた。今度は別の場所の、少しだけ高く澄んだ旋律だった。それはもう夕方ではなく、夜の訪れを告げるチャイムだったが、環菜の身体はやはり反応してしまう。
弟の熱を思い出すたびに、環菜の身体の奥がきゅうっと締まる。腸の粘膜がざわつき、膣の襞がひくつく。それはもう条件反射のように染みついてしまった感覚で、環菜にはどうすることもできなかった。
環菜は今日、斗真と話したことを思い出していた。斗真は環菜のペースでいいと言った。でも環菜のペースは、斗真の思っているようなものとはまったく違う。環菜の身体のペースは、もう弟のリズムに合わせて動くようにできているのだ。
でも、それでも斗真のことが好きだった。斗真の優しさが、斗真の真っ直ぐな眼差しが、環菜の心を救ってくれる瞬間があった。斗真といると、環菜は普通の女子高生でいられる。弟との秘密に塗れていない、純粋な恋人同士の時間を過ごせる。それが環菜にとって、どれほど大切なものか。
環菜はもう一度スマホを手に取り、斗真に『明日、楽しみにしてる』とだけ打った。それからベッドの上で膝を抱え、静かに目を閉じた。明日が来れば、また斗真に会い、学校で明那と話し、夜には悠路が部屋に来るだろう。その繰り返しの中で、環菜は今日も決断を先延ばしにしている。
でも、それでいいのかもしれない。答えを出すことだけが正しいとは限らない。今はただ、この二つの熱を抱えたまま、秋の空気の中で生きていくしかなかった。
窓の外では、さっきまで聞こえていたチャイムの余韻が、夜の闇の中にゆっくりと溶けていった。
登場人物
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朝餉環菜 あさげ かんな女性 ・ 17
外見: 短めの黒髪ショートヘア、はっきりとした茶色の瞳、チアリーディングで鍛えた引き締まった小さめの胸とスレンダーな体型、健康的に日焼けした肌、笑うとくしゃっと崩れる明るい顔立ち。服装: 高校の制服(セーラー服とプリーツスカート)、休日はカットソーにショートパンツやフレアスカート、チアの練習着。性格・特徴: 元気で闊達、クラスのムードメーカーだが、内面には弟との近親相姦による背徳感と、恋人への罪悪感が常に渦巻いている。身体の反応に正直で、快楽に抗えない自分を自覚している。恋愛には初心で、斗真には初々しい彼女でありたいと願う一方、悠路の前では自ら腰を動かしてしまう淫蕩な面を持つ。好奇心が強く、未知の快楽への興味が背徳の行動を後押ししてしまう。一人称は「あたし」。斗真を「斗真」、悠路を「悠路」、明那を「明那」、河村を「河村くん」と呼ぶ。口調は明るく砕けた女子高生言葉だが、斗真の前では少し声が上ずり、悠路と二人の時は低く濡れた声に変わる。斗真からは「環菜」、悠路からは「姉ちゃん」、明那からは「環菜」、河村からは「環菜ちゃん」と呼ばれる。
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神埼斗真 かんざき とうま男性 ・ 17
外見: 短く整えられた黒髪、穏やかな黒い瞳、サッカーで適度に鍛えられた引き締まった体格、身長は平均的だが姿勢が良く清潔感がある。制服姿も部屋着のスウェットも同じくらい板についている。服装: 高校の学ラン、休日はシンプルなTシャツにチノパンやジーンズ、部屋ではスウェット。性格・特徴: 真面目で思いやり深く、誰に対しても誠実に接する。恋愛経験が少なく、環菜との関係を大切にしたいという気持ちが強すぎて、なかなか一歩を踏み出せない。自分の性欲を恥ずかしいものと思っており、環菜に触れたい気持ちと、大切にしたい気持ちの間で揺れている。童貞で、環菜が初めての恋人。一人称は「俺」。環菜を「環菜」、河村を「河村」、チームメイトは名字で呼ぶ。口調は穏やかで丁寧な標準語だが、性的な話題になるとどもったり、言葉を選びすぎて不自然に黙り込む。環菜からは「斗真」、河村からは「斗真」、チームメイトからは「主将」と呼ばれる。
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朝餉悠路 あさげ ゆうじ男性 ・ 12
外見: 柔らかいくせ毛の混じった短い黒髪、大きな黒目がちの瞳、同学年より手足がすらりと長く、身長もやや高め。日に焼けた健康的な肌、あどけない顔立ちの幼さと、時に見せる大人びた目つきのギャップがある。勃起時の陰茎は18cmに達する。服装: 小学校の制服(ポロシャツと半ズボン)、自宅ではTシャツとハーフパンツやジャージ。性格・特徴: 幼い頃から姉と性的関係を続けてきたため、年齢にそぐわない性的知識と技術を持つ。普段は甘えん坊で、両親の前では幼い弟を演じているが、環菜と二人きりになった瞬間、支配的なオスの顔を見せる。姉への独占欲が非常に強く、環菜が斗真と会うことに対して嫉妬と焦燥を感じているが、直接的な拒否はせず、身体で繋ぎ止めようとする。環菜の感じるポイントを熟知しており、言葉よりも先に手が動く。一人称は「僕」。環菜を「姉ちゃん」、両親を「お父さん」「お母さん」と呼ぶ。口調は家族の前では子供らしい無邪気さを保つが、二人きりの時はねっとりと囁くように姉の羞恥心を煽る言葉を選ぶ。環菜からは「悠路」、両親からは「悠路」、明那からは「悠路くん」と呼ばれる。
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永瀬明那 ながせ あきな女性 ・ 17
外見: 腰まで届くストレートの黒髪ロング、切れ長の理知的な黒い瞳、メガネをかけている。色白で肌がきれい。環菜とは対照的に胸は豊満で、制服越しにもその膨らみが強調される。腰回りは細く、全体的に女性的な曲線を描く体格。服装: 高校の制服、休日はシンプルなカーディガンにロングスカート、またはシャツブラウス。性格・特徴: 医学部志望の才女で、成績は常にトップクラス。人間観察に長け、相手の隠し事や心理を鋭く見抜く。ぶっきらぼうで毒舌だが、それは親しみの裏返しであり、心を許した相手には深い忠誠心を見せる。一見、強い性格で支配的に見えるが、性的には完全なマゾヒストで、誰かに辱められたり甚振られたりする妄想でしか興奮できない。自分の中の被虐願望を歪んでいると思い悩んでいるが、環菜にその秘密を共有したことで少し心が軽くなる。環菜の最大の理解者であり、共犯者。一人称は「私」。環菜を「環菜」、斗真を「神埼」、河村を「河村」と呼ぶ。口調はストレートで、遠慮がない。環菜からは「明那」、斗真からは「永瀬」、河村からは「明那」と呼ばれる。
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河村大尊 かわむら たいそん男性 ・ 17
外見: 軽くウェーブのかかった明るい茶色の短髪、人懐こい垂れ目の茶色い瞳、がっしりとした大柄な体格で、サッカーで鍛え上げられた厚い胸板と太い腕が目立つ。笑うと白い歯が見え、年齢より少し大人びて見えることもある。服装: 高校の学ラン、休日は派手すぎないブランドのカジュアルウェア、アクセサリーはシルバーのネックレス程度。性格・特徴: いわゆるヤリチンで、女性経験が豊富。しかし、それをひけらかす嫌味はなく、友人思いで面倒見のいい兄貴分。奥手な斗真をからかいながらも、心から応援しており、環菜との関係も好意的に見守っている。恋愛とセックスをある程度割り切っており、斗真の純粋さを眩しく思う一方、もどかしくも感じている。環菜に対しても失礼のないよう、明るく接するが、時折、核心を突くような真剣な眼差しで助言する。一人称は「俺」。斗真を「斗真」「お前」、環菜を「環菜ちゃん」、明那を「明那」と呼ぶ。斗真からは「河村」、環菜からは「河村くん」、明那からは「河村」と呼ばれる。
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朝餉雅功 あさげ まさとし男性 ・ 47
外見: 短く刈り込んだ黒髪に白髪が少し交じり、優しげな茶色の瞳、目尻の皺が年齢を感じさせる。標準的な身長と体格で、背筋は伸びている。休日はラフなジャージ姿で過ごすことが多い。服装: 会社のスーツ、ネクタイ、休日はポロシャツにスラックス、またはジャージ。性格・特徴: 家族をこよなく愛する平凡なサラリーマン。仕事人間だが、家族サービスも忘れない。子供たちに過干渉はせず、自主性を重んじるが、ここぞという時は父親としての顔を見せる。何より、家族全員で食卓を囲むことを大切にしており、休日の団欒を生きがいにしている。一人称は「俺」または「パパ」。環菜を「環菜」、悠路を「悠路」、美沙子を「美沙子」または「ママ」と呼ぶ。
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朝餉美沙子 あさげ みさこ女性 ・ 45
外見: ショートカットの黒髪を耳にかけ、きりりとした黒い瞳、年齢の割に肌はきれいで、いつもテキパキと動いている。パンツスーツが似合うキャリアウーマン体型。身長は平均的で、家ではエプロン姿が定番。服装: 会社のパンツスーツ、ブラウス、休日はカットソーにエプロン。性格・特徴: 仕事と家事を完璧にこなそうとするバイタリティあふれる母親。子供たちに手がかからなくなったことへの一抹の寂しさと、それでもやはり甘やかしてしまう愛情が共存している。「今日は特別よ」が口癖。一人称は「私」。環菜を「環菜」、悠路を「悠路」、雅功を「あなた」または「パパ」と呼ぶ。





