地元の私と、旅先で汚される淫らな私も…どっちもわたし

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第1章: 日常という仮面と、旅路の初め

第1章のシーン

第1章: 日常という仮面と、旅路の初め

蛍光灯の無機光が、天井まで届かぬままに事務室の空気を淀ませている。古い書類の乾いた匂いと、誰かが欠伸した時にこぼれる微かなコーヒーの香りが混じり合い、木元叶には自分の存在がこの空気の一部に過ぎないかのように感じられた。彼女はぺったんこの靴で床を踏みしめ、グレーのスカートの裾が膝頭をかろうじて覆うのを意識しながら、画面に並ぶ数字と文字をただひたすらなぞっていた。黒い縁の眼鏡の向こうの世界は、いつだって決まって輪郭のぼんやりしたモノクロームの風景だ。

「ねえ、叶ちゃん、この前のドラマ見た? あの俳優、本当にイケメンじゃない!」

隣のデスクから、山口美咲の元気な声が飛び込んできた。彼女の明るいチャーミングな笑みは、この殺風景な役場の中では唯一の原色のように輝いて見える。叶はゆっくりと顔を上げ、控えめに微笑み返す。その所作さえも、昨日から何度も練習した「大人しい公務員、木元叶」の演技の一部なのだと、心の片隅で呟いた。

「ああ、見ましたよ。確かに、かっこよかったですね。」

「でしょ、でしょ! あんな彼氏が欲しいなーなんてって、毎日夢見てるんだけど。叶ちゃんはどう? 最近、誰かいるの?」

美咲が身を乗り出して尋ねるその瞳は、純粋な好奇心に満ちている。叶は首を横に振り、軽く肩をすくめた。彼女の恋バナの種になるような男など、この地元には存在しない。存在させたくない、とさえ思っている。自分の本当の欲望を知っているのは、この眼鏡の奥に隠された、もう一人の自分だけなのだから。

「いいえ、そんなわけありませんよ。」

「そっかー。叶ちゃんは可愛いから、もっとモテてもいいのにね。」

美咲にそう言われても、叶はただ苦笑いするしかない。彼女が知っている「可愛い」は、化粧もせず、地味な服に身を包み、おとなしく微笑むだけの、無個性な優しさのことだ。本当の自分、肌を露出させ、男を欲し、獣のように交わることを渇望する女の姿を、彼女が想像できるはずもない。壁に掛けられた時計の秒針が、チクタクと音を立てて、週末へのカウントダウンを刻んでいく。その音だけが、叶の鼓動と共鳴しているようだった。

やがて金曜日の終わりを告げるベルが鳴り、同僚たちが解放されたかのように笑い声を上げて事務室を後にしていく。叶も一人、鞄を手に静かに席を立つ。誰とも口を利かず、誰とも視線を合わせず、ただ灰色のビルの影に吸い込まれるようにして役所の敷地を出た。アスファルトの匂い、車の排気ガス、遠くで響く商店街の喧騒。日常の音と匂いが、彼女の肌にまとわりつく。しかし、その心は既に遠く、週末の旅路へと飛び立っていた。

自宅のドアに鍵をかけ、重い音が響いた瞬間、木元叶という仮面は剥がれ落ちた。まず、黒い縁の眼鏡を外す。世界の輪郭が一瞬ぼやけ、そして再び、より鋭く、より生々しく蘇る。次に、バスルームの鏡の前に立ち、地味なスーツを一枚、また一枚と脱ぎ捨てていく。ジャケット、ブラウス、スカート、そして下着まで。全ての「日常」の鎧を床に投げ出すと、そこにいるのは青白い、スレンダーな裸体だけだった。長い黒髪を解き放ち、櫛でとかす。そのしなやかな動きは、まるで蛇が脱皮をするかのようだ。

彼女は化粧台に座り、今日のために買っておいた高価な化粧品を手に取る。いつもの薄化粧とは正反対の、攻撃的なメイク。ファンデーションで肌の色を均一に整え、アイシャドウとアイライナーで瞼を深く、くっきりと描き込む。その目は、もはや役場の受付嬢のものではない。男の心を射抜く、飢えた獣の瞳だ。最後に、艶やかな赤いリップを唇に厚く塗り重ねる。その湿った光沢は、まるで誰かを誘うための蜜のようだった。

変身の最後の仕上げは、服だ。クローゼットから取り出したのは、真っ白なキャミソールと、黒いホットパンツ。普段は決して着ることのない、肌の線を隠すところのない服だ。キャミソールの生地は、貧乳である彼女の胸の形をあからさまに浮かび上がらせ、ホットパンツは、細い腿と、その間に深く刻まれた谷間を強調する。全身を鏡に映す。そこに立っているのは、眼鏡も地味な服もない、見目麗しい、そして明らかに「男を待つ女」の顔をした誰かだった。叶は鏡に映る自分の指で、乳首をそっと撫でた。小さな突起が、薄い生地の上からすぐに反応して硬くなるのを感じる。アソコは、まだ触ってもいないのに、じっとりと濡れ始めていた。これは発情のしるしだ。誰かの熱い精液でこの空洞を満たしてほしいと、身体全体が叫んでいるのだ。

夜行バスの窓から流れる街の灯りは、まるで遠い記憥の断片のようだった。隣の席には誰もおらず、叶は膝を抱え、自分の変わり果てた姿を窓ガラスに映して眺めている。車内の薄暗い光の中、派手なメイクと露出の多い服装は、より妖艶に輝いて見える。日常から切り離された解放感と、これから起こることへの背徳的な期待が、胸の奥で疼き、熱くなる。温泉街で、知らない男に声をかけられる。そして、何の前触れもなく、ホテルの部屋に連れ込まれる。遠慮のない男の欲望に、この身体は好き勝手に弄ばれるだろう。膣に、アナルに、たっぷりと濃い液を注ぎ込まれる。その汚らわしく、甘美な想像をするたびに、アソコの奥がきゅうっと締まり、熱くうねるのを感じた。バスは、静かに、そして確実に、彼女を獣たちの待つ闇へと運んでいくのだった。

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AIが紡ぐ大人の官能短編『妄想ノベル』案内人です

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