第3章: 初めての「昼食」と、羞恥に濡れる肌

第3章: 初めての「昼食」と、羞恥に濡れる肌
理性の細い糸が、ぷつり、と静かに音を立てて切れた。
その音は、恭平の頭蓋の内側にだけ響き渡る、世界の終わりを告げる鐘の音だった。
藤川御代の、無垢にして悪意のない誘いの言葉が、最後の重しとなり、彼の常識という名の砂の城を根底から崩し去った。
彼は何も言えない。ただ、御代の濡れたような黒い瞳を見つめ、かろうじて首を縦に振ることしかできなかった。
その頷きが、どれほど重く、どれほど破滅的な意味を持つものであったか、御代に理解できるはずもなかった。
「やった!」
御代の顔に、子供が大好物のお菓子を手に入れたような純粋な喜びが満ち広がる。
その無邪気な笑みが、恭平の胸をえぐるような激痛と、同時に底知れぬ解放感に変換されていく。
彼女は恭平の手を自然に掴む。
ひんやりと冷えた自分の指を、ぬくもりと湿り気を帯びた彼女の手が優しく包み込んだ。
オフィスの床に膝をつくかのように、よろめきながら立ち上がる恭平の体を、彼女は軽く支えた。
周囲の同僚たちが、ちらりとこちらに視線を向ける気がした。
だが、その視線は好奇でも、軽蔑でもなかった。
むしろ、「ああ、津田君もようやく食べるのか」といった、どこか温かい、昼食に行く同僚を送り出すような眼差しだった。
その認識が、恭平の羞恥心にさらに油を注いだ。
エレベーターに乗り込むと、密室の気圧が一変した。
御代の体から放たれる甘く、乳臭く、それでいて獣の蜜のような、濃密な匂いが、恭平の呼吸を奪っていく。
彼女は恭平の隣にぴたりと寄り添い、静かに彼の腕に自分の腕を絡ませた。
鏡に映る二人の姿。ぎこちなく立ち尽くす男と、満面の笑みで彼に寄り添う女。
まるで正反対の存在が、不自然なほどに密着している。
恭平は鏡から目をそらしたが、御代の髪から漂うシャンプーの香りと、その奥に隠れた彼女の体の奥底から滲み出るような生々しい匂いが、彼の嗅覚を容赦なく犯し続けた。
「津田さん、すごい緊張してますねぇ」
御代の声が、恭平の耳元でくすくすと笑った。
「大丈夫よ、津田さん。私、とーっても優しくしてあげる……から」
その言葉は慰めなのか、それとも脅しなのか。
恭平には判別できなかった。
エレベーターが地下に降り、ドアが開くと、そこはまるで高級ホテルのロビーのような、静謐な空間が広がっていた。
受付を通ると、そこは無数の小さな個室が並ぶ廊下だった。
御代は何食わぬ顔で、そのうちの一つのドアをカードキーで開ける。
ちりん、と小さな音を立てて解錠されたドアの向こうには、真っ白なベッドと、小さな洗面台が設置された、ミニマルな部屋があった。
これが、この世界での「食堂」なのだ。
ドアが静かに閉まり、施錠される音が恭平の鼓動に重なる。
カチャリ、という重みのある金属音が、恭平の鼓動と完璧にシンクロする。
完璧な静寂。逃げ場はない。
恭平は部屋の中央で、ただ立ち尽くすしかなかった。
全身の力が抜け、指先が震えている。
自分が今からここで、憧れの後輩である藤川御代と、ただの「空腹」を満たすために体を重ねるのだという事実が、頭の中でグルグルと巡り、思考を麻痺させる。
「ねぇ、津田さん。そこに立ってたら、固くなっちゃいますよ?」
御代はそんな恭平に優しく声をかけ、彼のタイトなニットの裾を掴むと、ゆっくりと頭の上から脱がせ始めた。
するすると生地が滑り上がり、彼女の白く、滑らかな肌が露出していく。
豊満な胸が、ブラジャーの下からゆっくりとその形を変えながら解放されていく。
その光景に、恭平は息を呑んだ。
彼女の体から、さらに濃厚な、甘酸っぱい匂いが立ち上った。
汗と愛液が混じり合った、生々しくて甘酸っぱい女の匂いが、湯気のように立ち上った。
「んっ……」
無意識に漏れる恭平の声。
御代はニヤリと笑い、脱いだニットを椅子に投げると、今度は恭平に近づいてきた。
彼女は恭平のシャツのボタンに、指をかけた。
その指先が、恭平の胸の上を滑るように触れる。
その微細な接触が、まるで静電気のように全身を走り、背筋に鳥肌を立てさせた。
「私だって、お腹空いてたんですよ……ね?」
そう囁きながら、御代は恭平のシャツを一枚ずつ、丁寧に脱がせていく。
恭平は抵抗できなかった。
まるで人形のように、彼女の手のひらの上で弄ばれている。
胸が露出し、恥ずかしさで顔が火照る。
御代はその胸に、そっと唇を寄せた。
ぬるりと、湿った感触。
恭平は、はっとして体をこわばらせる。
「ふふっ……敏感なんですね、津田さん」
御代は恭平の乳首を舌で優しくなぞった。
ぐにゅ、と快感が背筋を駆け上る。
恭平はもう、声を押さえることさえできなかった。
はぁん、と吐き出す息は、もはや羞恥ではなく、快楽の音に変わっていた。
彼女の舌は巧みで、恭平の体の隅々まで知っているかのように、彼を悦楽の渦に引きずり込んでいく。
スラックスも、彼女の手によって無造作に脱がされる。
下着姿になった恭平は、自分の股間が恥ずかしげに膨らんでいるのを感じ、目を背けた。
「もう、隠さなくてもいいんですよ」
御代は恭平の手をそっとどけ、彼の膨らんだ性器を、下着の上から優しく包み込んだ。
その温かさと柔らかさに、恭平は腰が砕けそうになった。
くちゅっ、と彼女が自分の愛液で濡れた指で、恭平の性器を撫でる音が、静かな部屋に響き渡る。
その下品で、淫靡な音が、恭平の最後の理性を完全に粉砕した。
「津田さん……私のこと、見て」
御代はそう言うと、自らのミニスカートの裾をまくり上げた。
そこには、薄い生地のパンティーが穿かれており、その中央は、すでに愛液でぐっしょりと濡れ、透けていた。
恭平は、その光景から目が離せなかった。
彼女はその濡れたパンティーの上から、自分の性器を指で優しく押さえた。
ぬるっ、という音と共に、彼女の口から甘い吐息が漏れる。
そして、彼女は恭平の顔を自分の股間に引き寄せた。
甘く、生々しい、濃密な匂いが恭平の鼻腔を突いた。
それは彼女の膣から匂い立つ、蜜のような匂いと、その少し後ろにある、きめ細かい皺が刻まれたアナルから漂う、より獣的な、少しスパイスの効いたような匂いが混ざり合った、究極の香水だった。
恭平は、その匂いに頭を蕩かせ、意識を失いそうになった。
「……嗅いで」
御代の命令に、恭平は抵抗できなかった。
彼は顔を埋め、その匂いを深く吸い込んだ。
同時に、御代は恭平の下着をずり下ろし、彼の硬く熱くなった性器を解放した。
そして、彼女の柔らかな舌が、恭平の性器の根本から、ゆっくりと這い上がっていく。
「ひゃっ!んんっ!」
今まで感じたことのない、電撃のような快感が恭平の脳を焼き尽くした。
彼女の舌は、まるで生き物のように恭平の性器を舐め上げ、絡みつき、先端で亀頭を優しく啜った。
ぐちゅっ、じゅるるっ、と淫らな音が部屋に響き渡る。
恭平はもう、何も考えられなかった。
羞恥も、常識も、元の世界への未練も、すべてが洗い流されていく。
ただ、藤川御代という女に与えられ、犯され、貪られることだけが、彼の世界の全てだった。
彼女の指が、恭平の囊を優しく揉みしだき、もう一本の指が、彼の会陰を撫で、さらに奥の、誰にも触れられたことのないような場所を探り当てる。
「あっ!そこ、だめぇ……んぐっ!」
指先が、恭平のアナルの入り口をそっと撫でる。
羞恥と快感が混ざり合った、あまりにも強烈な感覚に、恭平の体はビクンと跳ねた。
御代はその反応を楽しんでいるかのように、くすくすと笑い、その指をゆっくりと、ぬるりと、恭平の穴の中へと滑り込ませた。
「んっ……くぅっ……あああっ!」
--なんだ……これは……中に、入ってくる……!
初めての異物の侵入に、恭平の意識が遠のいていく。
しかし、それは苦痛ではなかった。
むしろ、未知の快感が、彼の体の奥底から目覚めていくのを感じていた。
御代の舌と指が、完璧な連携で恭平の快楽の神経を一つひとつ解き放っていく。
彼はもう、ただ喘ぐことしかできなかった。
自分の声が、自分のものではないような、卑わいで、甘ったるい声になっていることを認識しながらも、それを止められなかった。
快楽の波が、津波のように彼を襲い、彼の意識を白く染め上げていく。
すべてが壊れ、溶け、彼はただの快感の塊になっていくのだった。
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