第4章: 裸エプロンの待つ帰宅(続き 2/2)
次に彼女の手が、洋のネクタイに伸びた。ぎゅっと引っ張られ、結び目がほどける。ブラウスのボタンは一つ、また一つと外され、胸板が冷気に触れた。
「叶……」
洋の声は詰まった。
叶はそのまましゃがみ込む。エプロンの裾が大きく開き、腿の内側の滑らかな肌が、奥の方までくっきりと見える。彼女の指先が、洋のベルトのバックルに掛かった。
カチン。
金属の音が、静まり返った玄関に鋭く響く。
ベルトが外され、スラックスのファスナーが下ろされる。彼女の息が、薄いシャツの布越しに、洋の下腹部にかかる。温かい。
「あら……冷たい」
叶は、ずり下ろされたスラックスとボクサーパンツの下から現れた、まだ完全には勃起していない洋の陰茎を見て、小声で笑った。
「外の空気に当たってたんですね。私で、温めてあげます」
そう言うと、彼女は顔を近づけた。
まずは頬を、柔らかな男根にすり寄せる。ゆっくりと、愛情を込めるように。そして、小さく開けた唇が、先端を包み込んだ。
「ふぁ……っ」
口の中の湿りと温もりが、冷えていた敏感な皮膚を一瞬で染め上げる。
叶は舌先でそっと亀頭の縁をなぞり、唾液をたっぷりと絡ませていく。柔らかい唇の感触が、少しずつ形を変え、大きくなっていく肉柱を愛撫する。
洋は玄関の壁に背中を預け、深く息を吸い込んだ。
視界の端には、しゃがみ込んだ叶の背中が見える。エプロンの紐が背中で結ばれ、その下にはくびれた腰のラインが滑らかに続き、丸みを帯びた臀部が無防備にさらされている。その股間の奥が、じっとりと湿気を帯びているのを、彼は知っている。
「ん……ちゅ……じゅるっ……」
叶は、徐々に硬さを増してきた陰茎を、口の奥まで深く含み始めた。
片手で陰嚢を包み、優しく揉み上げながら、もう片方の手は自分の腿の間に潜り込ませていた。エプロンの裾を押し上げ、指が直接、蠢く肉襞に触れる。
「あ……んっ……!」
自分の指で自分の陰核を擦る感触に、叶は背筋を震わせた。
その震えが、口に含んだ陰茎へと伝わり、洋の腰が自然に前へ押し出される。
「叶……叶……そんなんじゃ……家に上がれない……」
洋の声は、すでに理性の端から崩れ落ちかけていた。
玄関先で、脱ぎかけのコートのまま、パンティ一枚の女に口淫されている。こんな淫靡な光景が、現実に起きている。
「いい……え……」
叶は一度口を離し、糸を引く唾液と彼の先走りで光る唇を開いた。
目は潤み、欲望に濁っている。
「ここで……私、洋さんのを、全部受け止めますから……戻ってきて、すぐに感じたかったの……洋さんが、私を待たせてた分、濃くなってるって……」
そして、再び彼女の口が襲いかかった。
今度は激しく、貪るように。頭を前後に動かし、喉の奥まで深く吞み込み、そして引き抜く。下品な水音が、玄関の狭い空間に響き渡る。
「ぐちゅ……んっ……! ちゅぱ、ちゅぱ……じゅるるっ……!」
叶は夢中で腰をくねらせていた。
腿の間に差し込んだ指が、早いリズムで陰唇を掻き回し、ぬめりと熱を帯びた愛液が音を立てている。エプロンの布地が、腿の付け根を擦るたびに、彼女の喘ぎが高くなる。
洋はもう、堪えられなかった。
背中を壁に押し付け、腰をぐいと突き出す。熱く収縮する叶の口内が、彼を最後まで締め上げる。
「出す……叶……!」
警告の声は、ほとんど呻きに変わっていた。
叶は目を見開き、うなずいた。そして、ドクンドクンと脈打つ根源を、喉の奥で受け止めた。
「んぐっ……! ごくっ……んん……っ……!」
白濁した液体が、勢いよく噴き出した。
叶は目を閉じ、顔をしっかりと押し当てて、全てを飲み干そうとする。溢れ出た分が彼女の顎を伝い、エプロンの胸元に白い糸を引いた。
やがて射精が収まり、叶はゆっくりと顔を引き離した。
唇の端から一滴、精液が垂れた。彼女はそれを指で拭い取り、その指をじっとっと、と丁寧に舐め取った。
「はぁ……はぁ……洋さんの……温かかった……」
恍惚とした表情で、叶は上目遣いに洋を見上げた。
顔中に男の証が塗られ、エプロン一枚の姿は、もはや清楚とは程遠い、淫靡そのものだった。
洋は崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込み、叶の顔を抱き寄せた。
エプロンの布越しに、彼女の柔らかな乳房の感触が伝わる。二人の唇が、精液と唾液の混じった味を共有しながら重なった。
鍵も掛けず、コートは床に散らばったまま。
玄関のわずかな空間で、六十歳の男と四十五歳の女は、まるで飢えた若者のように互いを貪り合った。
そしてその日から、毎日がそうやって始まるのだった。
洋が帰宅する時間には、叶は必ず何かしらの“お迎え”を用意している。時には玄関で、時にはリビングで。エプロン姿のときもあれば、下着だけのとき、まったく無防備なときもある。
「ただいま」
「おかえりなさい」
その挨拶の裏には、もう介護者と患者の関係はなく、男と女としての、渇望と充足だけが息づいていた。
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