第2章: 「抜いてあげるよ」と、居酒屋の個室で

第2章: 「抜いてあげるよ」と、居酒屋の個室で
パチンコ店の喧騒が、ふっと後ろに遠ざかっていく。
夜の冷たい空気が、火照った頬に心地よく触れる。
「ねぇ、公夫さん。今日は大当たり続きじゃん!おごりよ、どこか行く?」
真美の陽気な声が、静まり返った夜の空気を鋭く切り裂いた。
彼女の腕が、すっと公夫の腕に絡みついてくる。
薄手のTシャツの生地を通して伝わってくる体温は、まるで小さな動物のように熱い。
年甲斐もなく、公夫は自分の心臓が肋骨を激しく叩きつけているのを感じた。
――もう「行かない」という選択肢は、頭の片隅にもなかった。
彼女の背中に流れる明るい茶髪から、甘すぎるピーチの香水の匂いがする。
その下に、かすかに彼女自身の汗の生々しい匂いが混じり、公夫の理性を少しずつ溶かしていく。
「まあ、高い店はちょっとアレだけどさ、今日くらいはいいよね!」
真美はそう言って、厚底サンダルでカツカツと軽やかな足音を立てる。
極端に短いホットパンツから覗く太ももが、街灯の光を浴びて磨かれた大理石のように白く輝いている。
公夫はその光景から目を逸らそうとするが、視線の端に焼き付いてしまう自分がいた。
妻・陽子との食事では決して味わえない、この背徳的な興奮。
それはまるで、長い間乾ききった大地に、突然降り注いだ激しい雨のようだった。
居酒屋の狭い個室に通され、木の障子が閉ざされる瞬間、外の世界の音がぷっつりと絶たれた。
テーブルの上には、間もなく生ビールのジョッキと、煙を上げる焼き鳥の皿が並んだ。
「んまっ!まずはビールで乾杯でしょ!」
真美はグラスを高く掲げ、喉をごくりと鳴らして一気に飲み干した。
その艶めかしく動く喉元を、一滴の泡が伝って鎖骨のくぼみへと消えていく。
公夫はその一滴を追うように、自分のビールを口に運んだ。
アルコールが血管を熱く駆け巡るたびに、彼女の存在はますます現実的で、そして危険なものに感じられてきた。
「公夫さんってさ、さっきのパチンコ、すげぇ上手じゃん!あたし全然儲からんのに!」
「いや、まぐれですよ。運が良かっただけで」
「運も実力のうちって言うじゃん!よし、もっと飲もっか!」
杯を重ねるうちに、真美の頬は良い具合に上気し、関西弁がさらに舌をまわらせてきた。
彼女はだらりと公夫の肩に頭を乗せ、そのまま身を預けてくる。
真美のTシャツの襟元が、彼女の体重で大きく開く。
ノーブラであることが明白な、柔らかく膨らんだ乳房が、公夫の目の前に丸見えになった。
白く、張りのある肌。
その谷間は汗で少し濡れていて、淫らな光沢を放っていた。
公夫は息をのみ、慌てて視線をそらした。
しかし、その光景が脳裏に焼き付いて離れない。
年甲斐もなく、股間がじりじりと熱を帯びてくるのを感じる。
こんな場所で、こんなことで興奮してしまう自分に、強い羞恥心が襲いかかる。
「…公夫さん」
真美の耳元で、甘く、蕩けるような声が響いた。
「こっち向いてみて」
彼女は指で公夫の顎を軽くつまみ、無理やり自分の方に向けさせた。
その黒目はカラコンのせいか不自然に大きく、闘牛士が獲物を捕らえるような光を宿していた。
「ほら…勃ってるじゃん」
真美の視線が、明確に公夫の股間を指し示している。
チノパンの上からでも隠しきれないほどの、硬い膨らみがそこにあった。
公夫の顔がカッと熱くなり、血が頭に駆け上るのがわかった。
「ち、違います…そんな…」
「えらい正直なとこあるじゃん。可愛い」
真美はくすくすと笑い、その笑みは悪戯好きの少女のようだった。
そして、彼女は次の瞬間、公夫の予想を遥かに超える行動に出た。
すっと身を屈め、まるで猫のように音もなくテーブルの下へと滑り込んでいった。
「こ、こら…真美さん、何を…」
公夫は慌てて身を乗り出したが、テーブルの天板が邪魔をして、彼女の姿は見えない。
ただ、テーブルの下の暗闇から、彼女の微かな呼吸と、衣擦れの音が聞こえるだけだった。
「じっとしてな、公夫さん」
暗闇から響く声は、いつもの乱暴さとは違う、粘つくような響きを持っていた。
「…抜いてあげるよ」
次の瞬間、公夫のズボンのチャックが、ガリッという乾いた音と共に引き下ろされた。
冷たい空気がむき出しになった股間に触れ、びくりと身体が震える。
そしてすぐに、何か温かく、柔らかいものが、彼の硬く勃起した陰茎に触れた。
それは、間違いなく、若い女の唇だった。
くちゅっ、という生々しく、淫らな音が狭い個室に響き渡る。
真美の湿った唇が、公夫の陰茎の先端を優しく、しかし確実に包み込む。
三十年以上、妻・陽子一人としか関係を持ってこなかった公夫にとって、この感覚はあまりにも異質で、あまりにも刺激的だった。
彼女の舌が、ねっとりと亀頭を舐め回し、溝をなぞる。
「んっ…!」
公夫は思わず声を漏らしてしまう。
理性という名の堤防が、一気に崩れ始める。
これはセックスではない。
ただ、純粋に、肉欲のために行われる行為。
その下品さ、卑猥さが、かえって公夫の脳を直撃した。
真美は巧みに頭を動かし、陰茎を喉の奥まで飲み込んでは、ゆっくりと引き抜く。
ずぼっ、じゅるるっ、という唾液にまみれた音が、公夫の羞恥心と快楽を同時にかき立てる。
彼女の熱い息が陰嚢に当たり、その熱だけで腰が勝手に反り返る。
テーブルの上には、まだ食べかけの焼き鳥が残っている。
その日常的な光景と、テーブルの下で繰り広げられる非日常的な行為のギャップが、公夫の意識をますます混濁させていく。
公夫は天井の薄暗い照明を見つめ、目を閉じた。
妻との淡白な夜の営み。
それはもはや慣習でしかなかった。
しかし、今、この若い女の口の中で、彼の体は、彼の魂は、生まれて初めて本当の快楽を知ろうとしていた。
真美の口は、ただの器官ではない。
それは、公夫の長年の鬱屈を、孤独を、存在意義のなさを、すべて吸い取ってしまうほどの強力な吸引力を持った、快楽の渦だった。
「あ、ああ…ッ…!」
腰が自らの意思とは無関係に、ピクピクと痙攣を始める。
真美はそれを察知したか、口の中の動きをさらに激しくした。
舌が高速で回転し、唇は強く締め付け、吸い上げる。
もう我慢の限界だった。
公夫は足のつま先が伸びるのを感じながら、すべてを解放した。
「ひっ…んんッ…!」
真美の喉の奥に、熱い濃密なものが何度も放たれる。
くちゅ、くちゅっ、と彼女はそれを飲み込む音を立てながら、最後の一滴まで搾り取るかのように、ゆっくりと頭を動かした。
すべてが終わった後、静寂が訪れた。
テーブルの下から、真美がゆっくりと顔を上げてきた。
彼女の口元は、白い濁液で少し艶めいていて、満足げな笑みを浮かべていた。
「どうだった?気持ちよかった?」
公夫は答えられなかった。
ただ、虚脱状態で椅子に沈み込み、息を切らすことしかできなかった。
羞恥、罪悪感、そして、決して忘れることのできないほどの濃厚な快楽。
それらが渾然一体となって、公夫の体中を駆け巡っていた。
真美はそんな公夫を見て、再びくすくすと笑い、自分のジョッキに残ったビールを飲んだ。
その何でもない様子が、公夫にはさらなる衝撃として心に突き刺さった。
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