定年後ひとり老いていた男が隣の35歳若母のふくらはぎを揉みほぐし、20センチの巨根で熟れた膣を貫くまでの隣人蜜月
あらすじ
隣に越してきた35歳のシングルマザーと六歳の娘。庭先での挨拶だけの距離が、ふくらはぎを揉んだ夏の日からしずかにほどけていく。ひとり老いていくだけだった男の日常に、若い母子の体温と甘い汗の匂いが流れ込み、夜の肌はとめられない渇きを知る。生涯孤独だった体に、誰かの笑い声と女の熱い呼吸がよみがえる。
第1章 濡れた太ももを覗かせて足のつった若い隣人を、枯れた男の指がしずかに揉みほぐす午後
第1章: 濡れた太ももを覗かせて足のつった若い隣人を、枯れた男の指がしずかに揉みほぐす午後
蝉の声が、庭いっぱいに降り注いでいた。七月下旬の日曜、午後の日差しは容赦なく、板野士郎の首筋を汗で光らせている。膝をつき、草を引くたびに、土の匂いと青い葉の匂いが鼻の奥をくすぐった。庭の片隅に生えた雑草は、一週間見ないうちにずいぶんと図々しくなっている。指先に絡む根を引き抜きながら、士郎はふと顔を上げた。隣の借家との境にある生け垣の向こうから、水の跳ねる音と、幼い笑い声が聞こえる。
「きゃはは、ママ、かけてー!」
「もう、真綾ったら、そんなに動いたらお水がこぼれちゃうでしょ」
谷上由佳の声だ。少し弾んでいて、母親の声というより、年の若い女の声そのものに聞こえる。士郎は軍手を外し、額の汗を手の甲で拭った。垣根の向こうは、生い茂った葉の隙間から、青いビニールプールの縁と、ちらちらと動く肌の色が見える。先月、引っ越してきたばかりの若い母子が、庭先で水遊びをしている風景は、この古い住宅街ではひどく鮮やかだった。士郎は目を細め、また草取りに戻る。こうして他人の楽しげな声を聞きながら土をいじるのも、悪いものではない。ただ、少しだけ、自分の手の甲の皺が、目に入った。
しばらくして、悲鳴が聞こえた。水しぶきの音が不自然に途切れ、それから由佳の押し殺したような声が、生け垣を越えて士郎の耳に届く。
「いった……っ、足、足が……」
草を握ったまま、士郎は立ち上がった。心臓が、二度ほど強く鳴る。
「ママ? ママ、どうしたの? 大丈夫?」
真綾の声が、泣き出しそうに揺れている。士郎は迷わなかった。垣根の切れ目まで回り込み、隣家の庭へ足を踏み入れる。濡れた土の感触が、草履の裏にやわらかく食い込んだ。
ビニールプールのすぐ外で、由佳が尻もちをついていた。水着は黒に近い紫色のビキニで、濡れた肌にぴったりと貼りついている。片足を抱え、痛みに顔を歪めている。傍らには、幼い真綾が小さな両手を胸の前で握りしめ、今にも泣き出しそうな顔で母親を見下ろしている。真綾は水玉模様の水着を着ていて、濡れた肩が日差しに光っていた。
「由佳さん、どうされましたか」
士郎は声をかけてから、由佳のそばに片膝をつく。由佳が、はっと顔を上げた。痛みのせいか、目が潤んでいる。頬に張りついた黒い髪が、汗と水で濡れて首筋に絡んでいた。
「板野さん……すみません、足が、ふくらはぎがつっちゃって……」
声は震え、呼吸が浅い。士郎は由佳の顔から、抱えている片足へと視線を移した。左足のふくらはぎが、不自然に硬直しているのが見て取れる。ビニールプールの水で冷え、その後に急に動いたせいだろう。こむら返りというやつだ。
「失礼します。山登りで、仲間もようやります。つった時は、つま先を手前に戻すのが一番です」
士郎はそう言って、由佳の左足を両手で支えた。片手でかかとを包み、もう片方の手のひらで足の裏を押す。由佳の足は水に濡れてひやりと冷たく、それなのに、くるぶしのあたりの肌は驚くほどなめらかだった。そのささやかなふくらみが、士郎の手の中で細かく痙攣している。ゆっくりと、つま先を由佳の膝のほうへ倒していく。
「痛いのは、私の手の力を抜いて楽にして。息を吐くと、少し和らぎます」
「はい……っ、あ……それでも……いたたた……」
由佳は士郎の手にしがみつくように、肩を丸めた。吐く息が、士郎の腕にかかる。水と汗と、わずかに甘い女の匂い。士郎は目を伏せ、足の裏を押し続けた。手のひらに感じる骨の細さと、ふくらはぎの硬い筋。女の足というものを、こんなふうに長く触れたのは、ずいぶん久しぶりだった。いや、初めてに近いかもしれない。
「真綾ちゃん、ママは大丈夫だから。お水、冷たくない?」
士郎は真綾のほうを見ないまま声をかけた。真綾が、小さく頷く気配がする。
「うん……おじちゃん、ママ、いたいのいたいの、とんでけ?」
「ええ、今まさに、飛んでいくところです」
由佳が、こらえきれずに小さく笑った。息が、また士郎の腕をくすぐる。ふくらはぎの硬直が、わずかに和らいできた。士郎は手のひらを、痙攣の中心へ当てる。親指の腹で、硬い筋をゆっくりと押し流すように揉みほぐした。由佳の足首からふくらはぎへ、水の膜がきらめいている。日差しに照らされて、太もものあたりまで、濡れた肌が陶器のように光っていた。
──いけない。
士郎は目線を泳がせた。が、泳がせた先で、さらに危うい情景が視界へ滑り込んでくる。ビキニの上端が、ほんのわずかにずり上がっていた。小ぶりながら形の良さげな乳房の、下の丸みが日に当たって白い。肌の継ぎ目だけが、妙に艶めかしい。視界の端でそれを捉えながら、士郎は慌てて由佳の足元へ目を戻した。だめだ。見てはいけない。そう心で唱えても、唾液がじわりと湧くのを感じた。
「板野さん、ごめんなさい。はしたない格好で……」
由佳が、小さく身じろぎした。視線の先で、彼女が自分の胸元に手を当てる。ビキニの布を直そうとしたのか、逆に、隠すために腕を胸の前で交差させた。胸の谷間のあたりに、汗が一筋流れて光る。
「いえ、お気になさらず。動かないでください。もう少しです」
士郎は言葉を落ち着かせて、揉みほぐしを続けた。由佳のふくらはぎのこわばりは、驚くほど早く解けていく。士郎の指が筋に沿って押すたび、痙攣の波が薄れていくのが分かった。山登りで培った手つきは、我ながら正確だった。その指先が彼女の肌に触れるたび、由佳の呼吸が少しずつ深くなる。肩の力が、抜けていった。
「どうです、少し楽になりましたか」
「……は、はい。さっきより、ぜんぜん……でも、板野さんの手、すごくあったかいです」
由佳が、うつむいたまま言った。声に、痛み以外の色がわずかに混じる。士郎は曖昧に首を振った。
「手のひらは年寄りでも、まあ、温かいもんでして」
そこで初めて、士郎は顔を上げて笑った。由佳と目が合う。由佳の瞳が、また揺れた。視線が胸元と足の間を行き来して、それから、ふいっと真綾のほうへ逃げる。
「ママ、もうだいじょぶー?」
「うん。おじちゃんのおかげで、痛いの飛んでったわ」
「おじちゃん、ありがとう!」
真綾が、ぴょんと跳ねるように士郎の背中へ抱きついた。濡れた水着が、士郎のシャツを濡らす。あたたかい、小さな体温。士郎は少し仰け反り、それから、くしゃくしゃになった黒髪をそっと撫でた。柔らかな髪が、指の間にまとわりつく。父親というものを知らない子なのかもしれない。それでも、人に抱きつく体温を、こうして惜しみなくくれる。
「こちらこそ、元気をもらいました。長く生きてると、こういう日もあるもんですね」
士郎が言うと、由佳がまだ痛みの残る足をそっと伸ばした。太ももの内側まで、水に濡れた肌が照りつけられている。ビキニの布の浅い食い込みが、腿の付け根に濃い影を落としていた。そこには、見まいとすればするほど視線が絡みつく、なだらかな曲線がある。士郎は、ゆっくりと立ち上がり、自分の膝の土を払った。指先がまだ、由佳の肌のぬくもりを憶えている。痙攣の名残を伝えていた、あの硬い筋の感覚が、親指の腹に焼きついて離れない。
「大丈夫そうで良かったです。まだ無理しないで、今日はプール、おしまいにしたほうがいいでしょう」
「……そうします。すみません、ほんとに。あの、板野さん。今度何かお礼をさせてください。夕飯とか、お茶でも……簡単なものしか作れませんけど」
由佳が、あどけない顔を赤らめて言った。首のあたりまで、うっすら紅味が差している。士郎は少し困ったように笑い、後頭部を掻いた。
「気になさらんでください。隣同士、困った時はお互いさまですから。それに、私も──」
言葉が、一瞬、詰まった。由佳の胸元から目を外し、生け垣の上の青い空を見る。夏の雲が、ゆっくりと形を変えながら流れていた。
「私も、ちょっと若返りました」
その一言は、自分でも意外なくらい、穏やかに出てきた。由佳が、小さく目を丸くする。それから意味を悟ったのか、胸を両腕で隠して、ますます顔を赤らめた。
「も、もう、板野さんってば……」
「こらこら、そういう意味じゃないです。ほんとに、懐かしい気持ちになっただけですから」
士郎は、軽く手を振って、自分の家の庭へ戻る足を向けた。背中で、真綾が「おじちゃん、ばいばーい!」と大きく手を振っている。由佳も、小声で「ありがとうございました」と呟くのが聞こえた。
自宅に戻り、勝手口から土間へ上がると、家の中はむっとするほど暑かった。冷蔵庫から麦茶のポットを出して、台所の椅子に腰を下ろす。指先が、まだしっとりとしている。由佳の足の汗と、ビニールプールの水と、日なたの匂い。コップに注いだ麦茶を一口飲むと、冷たさだけが喉を落ちていった。静かな家の中で、蝉の声ばかりが壁を震わせている。さっきまでの明るい水しぶきの音が、遠い昔の出来事のように思えた。
士郎はコップを置き、二本の指で、自分の左の手のひらを確かめた。人を揉みほぐした手だ。人に触れた手だ。痙攣という小さな不調を介して、しばらく忘れていた人の肌の温度を知った。あの滑らかな足首、硬いふくらはぎ、張りのある太もも。触れた感触が、記憶の中で、何度もゆっくりと再生される。薄暗い台所で、士郎は一人、麦茶の汗を拭った。ぞくりと、腹の奥の古い何かが動くのが分かった。たぶん、それは生きている証拠だ。性欲とまでは言わない。ただ、あんなにも若い肌とふれ合って、何も感じない方がおかしい。士郎は小さくため息をつき、額を手で覆った。年甲斐もない、と胸の内で唱えてみる。しかし、心のどこかで、その「年甲斐もない」感覚こそが、この暮らしに久しく欠けていたものだと気づいていた。
午後がゆっくり傾いていく。士郎は居間へ移り、夕方まで窓辺で過ごした。西日が畳へ橙色の帯を落とし、壁の柱時計がかちかちと時を刻む。庭の緑が、夕方の湿度でいっそう濃く匂った。やがて、隣家のほうから、真綾の声が小さく聞こえた。由佳が呼んでいるらしい。窓の外、生け垣の向こうに、家の明かりがぽつりと灯る。青白い蛍光灯の光が、早い夕闇に溶けていた。士郎は腰を上げ、縁側へ出て、垣根越しにその明かりを見た。
ほんの数時間前、自分はあそこへ行き、若い女の素足を握り、あたたかな礼を受けた。それが、もう遠いことに思えて、けれど手にはまだ、柔らかい熱の余韻が染みていた。風が吹く。生け垣の葉が、かさりと鳴った。士郎は腕を組み、隣家の灯りをじっと見つめていた。この先、あの親子とどういう付き合いになるのか、確かなことは何も分からない。ただ、垣根の向こうに確かに人の気配があり、その向こうで誰かが自分を「おじちゃん」と呼ぶ。それだけで、この家の空気が、ほんの少し薄まったような気がした。
夜になる前の、いちばん濃い青の空が、まだ熱を孕んでいた。士郎は、草履の爪先をゆっくりと揃え、家の中へ戻っていった。もう一度だけ、ふくらはぎの感触を思い出す。指先に宿った女の体温が、薄暗い廊下で、ほんのりと熱い。
第2章 夕食に招かれた夜、六歳の指が開いた無毛の割れ目と、凍りつく老いた裸

第2章: 夕食に招かれた夜、六歳の指が開いた無毛の割れ目と、凍りつく老いた裸
雨樋の金具を打ち直した翌週の金曜日、仕事を終えて自宅の玄関先で靴紐を解いていると、生垣の向こうから真綾が駆けてきた。保育園のスモックのまま、両手に小さな紙袋を提げている。夕方の空気には昼の熱がまだ底の方に澱んでいて、土と刈りたての芝の匂いが混じっていた。
「シロウおじいちゃん、これ、ママから!」
小さな胸の前で紙袋を揺らす真綾の髪には、黄色いゴムの飾りがひとつ。汗で額に張りついた前髪の奥で、黒い瞳が夕日を受けて飴色に光っていた。
「おや、なんだろうね」
士郎が腰を屈めると、真綾は袋から丁寧に折り畳んだ紙切れを取り出した。そこには青いボールペンで「せんじつは ありがとうございました。あしたの ばん、お夕飯をごいっしょにいかがですか。へんじは まあやに」と、丸みのある文字が並んでいる。最後に小さな花の絵が添えられていた。
「ママがね、おいしいのつくるって。おじいちゃん、きてくれる?」
真綾が首を傾げて士郎の顔を覗き込む。その瞳には断られるという選択肢が最初から存在しないらしい。士郎は紙片をもう一度眺め、苦笑いを噛み殺しながら頷いた。
「明日の夜だね。ありがたく、ご馳走になろうかな」
「やった! ママに言ってくる!」
言うが早いか、真綾は紙袋を士郎に押しつけて、生垣の間の狭い隙間をすり抜けて行く。細い腕が茂みの枝を払う音が、夕暮れの庭にぱちぱちと響いて消えた。士郎は手に残った紙袋の感触を確かめるように持ち直し、それから自宅の鍵を開けた。真綾の汗の匂いが、ほんの僅かに、自分の指先へ移っている気がした。
翌日の夕刻、士郎は手土産に和菓子屋の水羊羹を携え、五時の約束より十分ほど早く隣家の引き戸をくぐった。古い借家の玄関は昼間でも薄暗く、磨き込まれた板張りに足の裏がすうっと吸いつく。呼び鈴を鳴らすと、台所から由佳の声が跳んできた。
「はーい、いま開けますね」
扉が開くと、まず湯気と醤油の焦げる匂いが押し寄せる。由佳は胸元の開いた薄い葡萄色のTシャツに、膝上二十センチほどの白いホットパンツ姿だった。首には汗を拭くための手拭いを掛け、手の甲で額をぬぐいながら微笑む。Tシャツの布は小ぶりながら形の良い双丘を柔らかく包み、汗の滲みが鎖骨の窪みに薄い光を溜めている。太ももは日焼けした肌に触れる空気ごと湿っているようで、白い布地の端が食い込む付け根へ、士郎は慌てて視線を逸らした。
「こんばんは。今日はありがとうございます。これ、口に合うか分かりませんが」
「まあ、水羊羹だ。嬉しいです、あとで切って一緒に食べましょう。さあ、上がって。真綾も待ってたんですよ」
由佳が身体を半歩引き、士郎を通す。すれ違う瞬間、汗と台所の油と、その下に潜む微かな甘い肌の匂いが一緒に流れ込む。奥の居間からは真綾が転がるように駆けてきた。
「きた! ママ、おじいちゃんきた!」
水玉のワンピースをひらひらさせ、士郎の腿に抱きつく。体重は軽いのに、腕だけは驚くほど強い。士郎は真綾の髪を軽く撫で、その頭のてっぺんに手のひらを置いた。幼い頭蓋は汗ばんで、触れた指先へ弾むような熱を伝えてくる。
「お邪魔します。真綾ちゃん、ちょっとそこ、熱いよ」
「えへへ、まあや、お手伝いしたの!」
由佳が台所から顔だけ出して笑う。夕餉の支度が整うまで、士郎は隅の座布団に座らされ、煙草盆代わりの卓上に置かれた冷たい麦茶を一口含んだ。畳の傷みも、柱の古い木目も、夕方の西日を受けて懐かしく横たわっている。時折、由佳の背中越しに揺れるTシャツの裾から、汗ばんだ腰の白さが覗く。士郎はなるべく窓の外、生垣の向こうの自宅を見た。
夕食は湯気の立つ味噌汁、鯖の塩焼き、冷奴に胡瓜の酢の物、蕗の煮物が彩りを連ねていた。三人でちゃぶ台を囲む。士郎が正面へ座ると、真綾は当たり前のように士郎の左隣を占めた。由佳が右側から茶碗を配り、箸を揃えていく。箸袋の折り目を正す指先は、家事に馴染んだ細く節張った指だった。
「真綾、お行儀よくできる?」
「できるよー! せんせいにも、まあやはおりこうさんねっていわれたの」
「それは心強い。おじいちゃん、見せてもらおうかな」
士郎が答えると、真綾は胸を張って、少し大きめの箸を握り直した。由佳がビールをどうかと勧める。士郎は少し迷い、では一杯だけと頷いた。由佳の白い指が缶を傾け、金色の液体が士郎のグラスへ細い音を立てて注がれる。泡の弾ける微かな音。湯気とビールの苦い香りが、畳の部屋にゆるく広がる。久しぶりの、他人の家の食卓だった。
真綾は鯖の小骨を士郎に取ってもらいながら、えらく満足そうに箸を動かした。咀嚼のたび、ふくらんだ頬の内側が蝸牛のように動く。士郎は真綾の口元に米粒を見つけ、その一粒を眺めるうち、不意に胸の奥がつんと痛むようになって、慌ててビールを含んだ。喉を滑り落ちる冷たさが、張りのない年寄りの身体には少々染みる。
食後、真綾は風呂の支度を手伝うと言い張り、由佳が台所を片付けている間に士郎と二人、浴槽を洗い始めた。真綾は泡のついたスポンジを両手で握り、ぎこちない動きでタイルを擦る。裸足の足が濡れた床でつるりと滑るたび、士郎の袖を掴んで笑い声を上げた。
「まあや、お風呂入るの、おじいちゃんと入りたい!」
突然の言葉に、士郎は湯桶を落としそうになった。真綾は何でもないことのように続ける。
「このまえ、ほんとに助けてくれたでしょ? だから、きょうは、まあやがおじいちゃんの背中を洗うの」
「それは……あの、由佳さんに聞かないと」
士郎が台所へ向かおうとすると、ちょうど由佳がバスタオルを抱えて脱衣所へ入ってきた。
「話は聞こえてましたよ。お願いできますか。真綾、前から楽しみにしてたんです。父親がいないぶん、こういうの、憧れがあったみたいで」
由佳は困ったような笑みを浮かべ、こめかみに張りついた髪を指で払った。士郎はまともには視線を返せず、浴槽の縁に手を添える。
「私でよければ……」
「ありがとうございます。先に真綾を入れてしまってください。着替えはそこに」
脱衣所には、小さな水玉のパジャマが畳んで置かれていた。由佳が再び台所へ下がると、真綾はためらいなくワンピースを脱ぎ捨て、パンツを足首まで下ろした。幼い裸身が古い電球の黄ばんだ光の下で、滑らかな輪郭を浮かべる。胸はまだ膨らみというものを知らず、脇の下から肋骨にかけての薄い肉が呼吸のたび静かに動く。臍の下はすべらかに平たく、脚の付け根にはまだ色素の淡い窪みが影を落とすばかりだった。
「おじいちゃんも、はやく脱いで」
士郎はしばし逡巡した。しかしこの期に及んで断れば、六歳の期待がしぼむ。それもまた大人の身勝手に思えた。士郎は開襟シャツのボタンを外し、ズボンを脱いだ。まだ湯には入っていない。鼓動が耳の奥でやけに鈍く鳴る。
若い頃から、自分の一物は人と比べて大きすぎた。それは男としての誇りにはならず、相手の痛みと困惑ばかりを呼んで、しまいには自分の身体へ対する後ろめたさに変わった。長く他人の目から隠してきたそれが、下着を脱いだ途端、重力に従って薄暗い脱衣所の空気のなかへ半端に垂れ下がる。いまはまだ勃起していない。それでも亀頭は拳ほどもあって、皮を被った全体は大人の掌を優に超える長さで、太い根元は縮れた黒い毛の茂みを引き連れていた。
真綾が、じっと見る。息を詰め、首だけを前方へ倒した不格好な姿勢のまま、ぱちくりと瞬きを一回。そして、その場に跳ねるように小さく叫んだ。
「おちんちんだぁ」
既視感のある純粋な声だった。士郎は思わず身体を後ろへ引き、両手で前を隠した。
「真綾ちゃん、あんまりじろじろ見ないで。おじいちゃん、恥ずかしいから」
けれど真綾の目は、隠しきれない亀頭の先端に吸い寄せられていた。士郎の指の隙間から覗く淡いくすんだ肌の太さは、幼い少女の腕ほどもある。真綾は無邪気そのものの表情で首を傾げ、自分の股間へ手を伸ばした。
「まあやは、へいきだよ。まあやにはおちんちん、ついてないの」
そう言って、幼い指が左右から小さな陰唇をつまむように押し開く。左右の襞は閉じたまま薄紅色の線を引いていたのに、真綾の指は何のためらいもなく、その線を左右へ割り開いた。露わになった肉の内側は、濡れてもいないのに微かな光を弾き、皺のない牡蠣のむき身を思わせる淡い茜色をしていた。うつすらと窪んだ入り口の上、小さな肉の粒までがぷくりと頭を出している。
士郎は視界の端でそれを捉え、すぐに顔ごと逸らした。心臓が肋骨の裏を、重い拳で何度も叩く。鳩尾のあたりから、湯の熱さとも違う乱暴な衝動が這い上がってくる。指先が震え、手で隠していた一物が、意志に反して僅かに重量を増す。
「真綾ちゃん、だめだよ。女の子が、そんな……」
やっとのことで絞り出した声は、自分でも想像以上に掠れていた。真綾は言われた意味が分からないらしく、小首を傾げたまま、開いた襞の間から覗く窄まりをなおも指先でつついている。
「どうして? まあやは、おじいちゃんに見せてもらってるから、まあやも見せるの」
士郎は腰を落として真綾の手首を、壊れ物に触れるようにそっと掴んだ。汗ばむ幼い手首。脈が、指の腹へ浅く跳ねている。
「真綾ちゃんは、まだ小さな女の子でしょう。そういう、大事なところは、人に見せるもんじゃないの。お風呂では、ちゃんと前を隠す。いいね」
真綾は士郎の目を、ほんの数秒、不思議そうに睨んでから、やがて素直に頷いた。
「はあい。じゃあ、はいらない?おじいちゃん、背中、流してくれる?」
「ああ。浴槽、もうお湯が張れたかな」
やや間を置き、士郎は手桶に湯を汲んで真綾の背へかけた。肩甲骨の間を伝う筋が、幼い肌に幾筋もの道を作る。石鹸を泡立て、背中を洗ってやる。脇の下、腕、指の股へと手を這わせるたび、真綾はくすぐったそうに肩を竦め、喉の奥で笑った。泡の白さと、少女の肌の白さが光の下で判然としない。ふと真綾が、自分の腹を洗っていた手を止めて言った。
「おじいちゃんの、まあやの手より、ずっと大きいね」
背中の泡を流しながら、士郎は面映ゆくて応えられず、ただ小さく「そうかなあ」と呟いた。
浴室のタイルは冷たく、窓の外ではわずかな風が山茶花の葉を鳴らしていた。真綾の髪を洗えば、濡れた黒髪が掌の上で重たく絡みつく。首筋へ湯をかけてやると、細い肩が海底の砂のように静かに沈んでいく。そんな光景が、士郎の胸を細い針で縫うように痛ませた。何かを慈しむ、という感覚は、こうも息苦しいものだったか。
湯船の縁に手を掛け、真綾が振り返る。
「あのね、おじいちゃんのは、おおきいの。せんせいのほんにも、でてないくらい」
士郎は失笑しそうになりながら、真綾の頭を軽く拭いた。記憶にある児童書の裸の絵より大きい、と言いたいのだろうか。だが同時に、幼子の口から己の一物を評されることの滑稽と居心地の悪さが、腹の底へじんと広がる。
「そういうの、人に言ったらおじいちゃん、穴があったら入りたいよ」
そう言うと、真綾はけらけらと声を上げ、白い歯を見せて笑った。石鹸の泡が、湿った空気のなかへ細かく散った。
真綾を湯船に入れ、士郎は浴槽の外からその頭を支えていた。肌はとっぷりと桃色に火照り、目元から上気した赤みが耳朶まで伝う。由佳がバスタオルを持って脱衣所へ戻ってきたのは、ちょうど真綾が「のぼせそう」と言い始めた頃合いだった。
「真綾、おみやげの水羊羹、切っといたから。早く上がって」
「ママ、あのね、おじいちゃんのおちんちん、すっっごく大きかったんだよ」
由佳が一瞬、動きを止めた。タオルを持つ指に力が入る。濡れた唇が、三日月ほどに開いて、けれど言葉にはならない空気だけが喉を渇かせる。由佳は蛍光灯の下で見る見る頬を染め、視線を壁の染みへ逃がした。耳の縁まで赤く透けて、首筋の汗が一粒、鎖骨の窪みを滑り落ちるのが、士郎にも見えた。
「真綾、だめよ。ひとの身体をじろじろ見た話を、ぺらぺらしちゃ。士郎さん、すみません……」
由佳の声はひどく上擦っていた。士郎は泡を流しながら、顔の半面を手で覆うようにして俯く。自分の一物は、まだ湯の湿気を含んだ空気に晒されたままで、先端が浴槽の縁へあたるたび、むずかるような熱を返してきた。
「いや……こちらこそ、すみません。お見苦しいものを」
「何言ってるんですか。謝るのはこっちです。真綾、早く身体を拭くわよ」
由佳が真綾をタオルで拭いている間、士郎は背を向け、蛇口から細く落ちる雫の音を数えていた。耳の奥で、つい先ほどの真綾の声が何度も反芻される。おちんちんだぁ。まあやには、ついてないの。
浴室の窓から、宵闇が厚く垂れ込める。湯気と石鹸の匂いに混じって、由佳の首筋から香った汗の匂いが、しばらく士郎の鼻の奥に残った。
三人がちゃぶ台を囲み直したのは、それから三十分ほど後だった。真綾は水玉のパジャマに着替え、水羊羹をひと切れ食べると、由佳に寄りかかったまま、みるみる瞼を閉じた。由佳が真綾の頭を膝の上に乗せ、その髪をゆっくり梳いてやる。士郎は残った麦茶を啜り、窓ガラスに映る三人の影を、薄ぼんやりと見つめていた。食卓の上には、三つの茶碗と三つの箸。橙色の豆電球が、三人ぶんの影を畳に重ねて、夜の縁を柔らかく孕ませていく。
「今日は、本当にありがとうございました」
由佳が、眠る真綾の頬を撫でながら、声をひそめて言った。
「こちらこそ、ご馳走になりました」
士郎は立ち上がり、真綾の髪をひと房だけ、指先で右耳の後ろへ掛けてやった。隣家までの距離は、帰ろうと思えば一分もかからない。けれど今日という一日の熱が、足裏に深く染みて、身体を動かすことを躊躇わせた。
士郎は一度だけ振り返り、由佳に軽く頭を下げた。由佳は真綾を腕に抱いたまま、僅かに微笑んで、唇だけで「おやすみなさい」と形作った。その口元の柔らかさに、士郎の胸の奥が、古い傷を開くように軋む。
夜道の生垣には、昼間の熱を吐く土の匂いが篭っていた。士郎は自宅の鍵を開け、暗い台所で一人、ポットの湯を茶碗に注いだ。指先にはまだ真綾の髪の湿りが触れたような、覚束ない匂いが残っている。おちんちんだぁ。
暗い部屋で、士郎はそっと膝を抱えた。長く生きて、あんな声を向けられたのは初めてだった。幼い無垢の視線は、隠し続けた恥部を、恐ろしいほど呆気なく剥き出しにしてしまう。
なのに、なぜだろう。その声が耳の奥で揺れるたび、孤独な老人の腹の底で、死に絶えたと思っていた熱が、ひとつだけ、息を吹き返すようだった。
第3章 胸元の汗を拭きながら缶ビールを注ぐ女と、娘の寝息のあとに聞こえた全裸の悲鳴 [sho→ten]

昼下がりの低山を抜けた木陰の名残りが、士郎の首筋に乾いた疲れとして薄く張りついていた。帰り際に立ち寄ったファミレスで六歳の真綾が眠たげに瞼をこすり始め、由佳がそっとその髪を撫で、士郎が何気なく荷物の位置を整える。そんな他愛ない一日の断片が、今も由佳の家の廊下の空気にゆるく溶け残っている。
真綾を寝かせてきた由佳が台所へ戻ると、蛍光灯の白い光が一層はっきりと室内を照らし出した。彼女の首筋から胸元にかけては、昼間の汗が乾ききらぬ淡い膜となって呼吸のたびにゆらめき、薄いTシャツの布を肌へ吸いつかせている。士郎は目を逸らす代わりに、缶ビールの冷たさを指先で確かめていた。結露した水滴が指の腹を濡らし、そのひんやりとした感触だけが、妙に暴れそうになる視線を繋ぎ止めている。
「やっぱり、お子さんがいると一日があっという間でしょうね」
「そうですね。真綾が楽しそうだと、私まで調子に乗っちゃって……子どもの体力って、ほんとに底なしです」
由佳は笑いながら卵焼きの乗った小皿を士郎の前に置いた。箸を取る彼女の仕草のたび、汗ばんだ二の腕の内側がしっとりと陰影を帯び、肌の白さがやわらかく光を跳ね返す。士郎は卵焼きを一口含み、ほんのり甘い出汁の味を噛みしめた。甘さの奥に、だし巻き特有のふわりとした旨みが舌先へ広がる。
「おいしいです」
「よかった。士郎さん、こういう甘いの大丈夫かなって思ってたんです」
「ええ。昔、母がよく似た味を作ってくれました。今でも、卵焼きだけは甘いほうが落ち着きます」
「そうなんですね。真綾も甘い卵焼きが好きで、朝ごはんのたびに最後の一個を巡って喧嘩になります」
由佳はそう言って自分のグラスにビールを注ぎ、麦色の液体が泡を押し上げる音を二人の間に響かせた。窓の外では、昼間の山道で耳を埋め尽くしていた蝉の声が遠くへ退き、代わりに冷蔵庫の低い唸りだけが台所を満たしている。士郎は缶の縁をなぞりながら、どうしても視界の端で彼女の胸元を追ってしまう自分を老いの所為にした。柔らかな布地の下で、汗に滲んだ乳房のふくらみが呼吸に合わせて小さく上下している。その動きから目を離せない自分の浅ましさを、缶の冷たさで黙らせることしかできなかった。
「夜勤が減ったって、この前おっしゃってましたよね。身体は少し楽になりましたか」
「楽にはなりました。ただ、夜の時間が長いと、逆に何をしていいか分からなくなる日があって……真綾が寝ると、急に部屋が広くなるんです」
由佳の声が、ほんの少しだけ素直に沈んだ。彼女はTシャツの襟元をつまみ、ぱたぱたと風を送る。その下で小ぶりな乳房の弧が汗に滲む布越しに瞼の裏へ焼きつき、士郎は慌ててビールを含んだ。喉を流れ落ちる苦い冷たさが、逆に胸の奥の熱をくっきりと際立たせる。
「私は……ひとりが長かったので、淋しさには慣れているつもりなんですが」
「士郎さんは、強いですね」
「強くはないですよ。ただ、人と深く関わらないのが癖になって……由佳さんには笑われるかもしれませんが、こうして缶ビールを並べるだけで、多分この十年で一番賑やかな夜です」
士郎の声は静かだったが、耳の奥で自分の言葉が妙に生々しく響いた。由佳は少しだけ目を大きくし、それから手元のグラスを両手で包み込む。硝子の表面に浮いた無数の水滴が、彼女の指の温もりで細く流れ落ちていく。
「あの、私、士郎さんと話してると、看護師の顔を忘れられるというか。ただの由佳に戻れるんです」
「そう言ってもらえると、年甲斐もなく嬉しいです」
士郎は軽く笑おうとしたが、笑みはすぐに唇の端でほどけた。由佳の汗の匂いが、空気の流れに乗って微かに届く。汗と呼ぶには生々しく、甘酸っぱい発酵の名残りを含んだ女の匂い。シャンプーでも制汗剤でもない、一日の終わりの肌が発する生の香りが、士郎の鼻腔をそっとくすぐった。士郎は息を深く吸いすぎたことを後悔しながら、空になった缶を置いた。
「すみません、エアコンつけてるのに、汗かいちゃって。ハイキングの疲れがまだ残ってるみたい」
「私こそ、馳走になりっぱなしで。由佳さん、先にお風呂に入られたらどうです」
「そうします。士郎さん、つまみ、まだありますから。飲んでてくださいね」
由佳は立ち上がり、洗い物を軽くまとめてから脱衣所の方へ消えた。彼女の背中を薄いTシャツが貼りつくように追い、腰の丸みから尻のふくらみへとかけて汗で透けた布が陰影を描いている。廊下の奥で、バスチェアを引く音がかすかに聞こえる。士郎は一つ息を吐き、卵焼きの最後の一切れを箸で割った。真綾の寝息はここまで届かない。それきりの静けさが、リビングの蛍光灯の下で白く濁っているように思えた。
痩せた夏の夜。瓶ビールの泡が消える音。士郎の頭の中では、由佳が汗ばんでいた胸元と、昼間の山道で見せた太ももの力強さがとぐろを巻いていた。どれほど目を閉じても、彼女の肌に浮いた湯気めいた汗の光は瞼の裏に薄く残り、老いた身体の奥をちりちりと刺す。
突然、脱衣所の方から短い悲鳴が上がった。
空気を裂くような、それでいて切羽詰まった女の声。士郎は椅子を蹴るように立ち上がり、廊下を駆けた。脱衣所の前まで来ると、中から「いった……っ」と息を引きつらせる声が漏れ、ドアの向こうで何かが倒れるような物音が続く。士郎は一瞬ためらったが、「由佳さん、大丈夫ですか」と声をかけ、返事が痛みに途切れるのを聞いてから扉を開けた。
狭い脱衣所に、脱ぎかけのTシャツとホットパンツが落ちていた。洗濯かごの横で、由佳が裸のまま前のめりにうずくまり、左足を両手で抱えている。尻を脱衣所の入口へ向けた格好で、片手が脚の付け根を支え、肘が小刻みに震えていた。蛍光灯の光が白い女体の曲線を舐め、浮き上がった汗の粒を粒ごとに照らし出す。
お風呂に入る前の裸の肌には、昼間の汗の残りがまだらに息づき、背中から太ももの裏まで淡い紅潮が浮いている。そして、士郎の目は由佳の窄まった双臀の間へ否応なく吸い寄せられた。四つん這いになり突き出したお尻は、左右の肉が花ひらくように割れ、その奥の秘密を隠しきれずにいた。薄い陰毛が汗で頬の内側へ張りつくように乱れ、その上では大陰唇の左右の肉がわずかに離れて盛り上がり、ひくつく小陰唇の先が熱っぽく隙間を覗かせている。赤みを帯びた襞の合間からは、入浴前の女の匂いがかすかに立ちのぼり、士郎の理性をじわりと濡らした。さらに上、丸い肉の頂点の奥に、浅い翳りのような肛門が汗でヌラヌラと光っていた。窄まりは呼吸するたびにひくり、ひくりと縮み、その動きが女の羞恥そのものを無言のうちに語っている。
「だめっ、士郎さん、見ないでください……っ」
由佳が泣き声に近い声で叫び、片方の手を後ろへ回した。だが、足をつった痛みが邪魔をして、身体を起き上がらせることができない。彼女のふくらはぎが、かすかな波を打つように強張り、土曜の夜の静けさを断ち切った。後ろ手の指先が空を掻き、隠そうとした掌の位置からずれた場所で、熟れた肉の輪郭が更にはっきりと露になる。隠しきれないそこからのぞく襞の赤みが、嫌でも士郎の瞳に灼きついた。
「すみません、勝手に開けました。動かないでください。同じように、足がつったんですね」
士郎は洗面器を跨ぎ、手近にあったバスタオルを広げて由佳の腰へふわりと掛けた。白い布が女の背中から丸い臀へ落ち、露わになっていた窄まりを半分ほど隠す。それでも布が足元でずり上がり、赤く熟れた襞の一部が陰影の中から覗いた。タオルの毛羽が湿った肌に張りつく感触が、かえって隠された部分の存在を士郎の指先へ生々しく伝えてくる。
「ごめんなさい……また士郎さんに、こんな……」
「謝らないでください。つる時は、年齢も性別もないですから」
士郎は床に片膝をつき、由佳の左足を慎重に引き寄せた。むっちりと張った太ももが汗で湿り、指先が少し滑る。彼女の足先は内側へ曲がり、ふくらはぎの筋肉が板のように固まっていた。柔らかな肌の下で痙攣した筋が細かく脈打ち、その痛みが手のひらを震わせる。
「失礼します。つま先を手前に戻します。痛いでしょうが、息を吐いてください」
「は、い……あ、あう……っ」
士郎の手が由佳の土踏まずを支え、ゆっくりと足首を起こす。足の指を真っ直ぐに伸ばし、固まった筋を探るように親指で押すと、女の身体がびくりと震え、バスタオルの端がまた持ち上がった。荒い息と一緒に、汗と微かな石鹸の残り香が士郎の鼻孔に入り、頭の芯が一瞬遅れて痺れる。
視線を落とさぬよう、士郎は浴槽の白い縁だけを見つめて揉み続けた。指腹に伝わるのは、山の仲間や自分の老いた足では味わえぬ、若い女特有のしっとりとした弾力だ。押すたびに由佳の爪先が丸まり、甘い痛みを含んだ吐息が浴室の壁に吸い込まれていく。
「……ちょっと、和らぎましたか」
「まだ、少しだけ……っ、お願いします」
由佳は両肘を床へつき、腰が浮くのを堪えながら短く答えた。士郎は指の腹でふくらはぎの裏をしごき、痙攣がほどけるまで根気よく揉み続けた。触れるたび、バスタオルで隠された双臀が細やかに揺れる。太ももの付け根に浮かぶ汗の筋が、脱衣所の光を拾って濡れ、士郎の視界の端で桃の皮のように照った。その奥、双臀の割れ目の上では、先ほど目にした小陰唇が痛みの余波でひくりと蠢く。桃色の襞が吐息に合わせて開きかけては閉じ、そのたび中からとろりとしたものが溢れてくるのを、士郎は見ないふりをして自分の喉を鳴らした。
「山登りの後は、水分と一緒に塩分も失ってる。つりやすい日ですね」
「そうですね……私、下りで足を庇いすぎたのかも。運動不足がばれて恥ずかしい」
ようやく笑い交じりの声が返ってきた。士郎は少しだけ力を抜き、ゆっくりと足首を揺らしてやる。由佳はその拍子に深く息を吐き、まだ痛む左足をそっと曲げた。バスタオルが肩から落ちかけ、背中の中央から腰の窪みにかけて露わになった。背骨を辿る汗の光が、薄い産毛を銀色に縁取っている。
「もう、だいぶ」
由佳が言いかけて、自分の姿勢に気づき、たちまち頬を染めてタオルを巻き直す。士郎は手を離し、立ち上がって後ろへ下がった。指先にはまだ、由佳の肌の温度と汗のぬめりがこびりついている。
「立てますか」
「……はい。ありがとうございます。ほんとに、情けないとこばかり」
由佳は膝をついたまま、ぎゅっと胸の前でタオルを握った。散らばった服と、汗ばんだ素足と、ほんの少し開いたままの脱衣所の扉。士郎の肩もまた、ひどく窮屈に強張っていた。
「私の方こそ、不用意に開けてしまって。申し訳ありませんでした」
「いえ……士郎さんが来てくれなかったら、もう少し泣いてたと思います」
由佳が俯いたまま言った言葉は、小さく湿っていた。士郎は何と返せばいいのか分からないまま、壁に掛かったもう一枚のタオルを取って彼女の手前に置いた。
二人の間に、夜の湿気と風呂場独特の匂いが立ちこめる。真綾の寝息が、遠い部屋の奥から時折聞こえるだけだ。士郎は目を逸らせない痴態の残像を、瞼の裏に貼りつけたまま、脱衣所の冷えた洗面台の縁を握りしめていた。さっきまで掌にあった女の肌の弾力が、指の骨にまで染みているようで、このまま夜の静けさごと抱き潰してしまいたい衝動を、洗面台の冷たさだけが必死に押しとどめていた。
第4章 おじいちゃんの身体じゃない――脱いだ由佳の息が、握った一物の重みに変わる夜
第4章: おじいちゃんの身体じゃない――脱いだ由佳の息が、握った一物の重みに変わる夜
脱衣所の洗面台の縁を握る士郎の指先は、冷たい陶器の温度を吸ってじんと痺れたままでいた。由佳はまだ床に膝をついたまま、胸の前でバスタオルを握りしめ、時折大きく息を継いでいる。剥き出しの肩が小さく上下するたび、汗ばんだ肌に張りついた空気が揺れるようだった。
「すみません……何か、着るものを持ってきましょうか」
士郎は壁に手を伸ばし、目だけを洗面台の鏡の縁へ向けた。鏡の隅に、由佳の白い背中がほんの少し映っている。映すまいとしても、曇りのない鏡面は女の裸身の輪郭を意地悪く拾ってしまう。
「士郎さん、少し……このまま、待ってもらえますか」
由佳の声は掠れていたが、その語尾には士郎を引き止める細い力が混じっていた。彼女は片手を床についてゆっくり膝を立て、脱衣所の奥にかけてあった薄い浴衣を引き寄せる。袖を通す衣擦れの音が、風呂場の壁に反響して妙に濡れている。
「痛みは、もう引きましたか」
「はい。士郎さんが揉んでくれたおかげで、残ってないです。ただ、ふくらはぎの裏が……熱いままで」
由佳は浴衣の襟を軽く合わせ、前をきちんと押さえながら立ち上がった。薄い藍色の布越しに、まだ汗を吸っていない女の肌がうっすら透けそうな気配があって、士郎はそこで初めて彼女の全身を正面から意識してしまう。肩から胸へ流れる線。帯も結ばず、ただ前を重ねただけの浴衣は、深く合わせてもなお褪せた夏の花のような柔らかさで彼女の輪郭を包んでいた。
しかし、由佳の目だけは、いま脱衣所を満たす夜の湿気よりもなお濃く士郎を見据えていた。羞恥と、それを覆い隠そうとする真剣さとが、黒目の奥で細かく揺れている。
「士郎さん」
「はい」
士郎は半歩だけ後ろへ下がりかけて、背中を脱衣所の壁にぶつけた。
「私、二回も……同じ日に、助けられて、恥ずかしいところも見られて、それで、すごく思ったんです」
由佳は片方の手で浴衣の胸元を押さえたまま、もう片方の手を自分の額のあたりへ伸ばしかけ、途中で下ろした。絞り出すような、それでいてどこか吹っ切れた声だった。
「不公平だなって」
「不公平……ですか」
「士郎さんには、今日だけで何もかも見られてるのに、私だけが……何も知らないままだから」
士郎は思わず彼女の顔をまじまじと見返した。由佳の唇がわずかに湿り、薄く開いている。浴衣の襟元には、先ほどタオルで隠していた乳房のふくらみが、合わさった布の内側に暗がりを作っていた。
「由佳さん、私は別に、隠しているつもりはありません。ただ、あなたのお身体は見てしまいましたが、あれは事故で、私の本意ではなくてですね」
「そんなの、分かってます。士郎さんが変な人じゃないことくらい、もう十分すぎるほど知ってます」
由佳は唇の端で小さく笑った。いつもの夕食のときよりも声が低く、甘い芯が通っている。湯上がりの蒸気と、脱いだ服から立ちのぼる汗の匂い、そして石鹸の名残りが混じった女の肌の匂い。士郎の鼻腔は、もはやどこへ逃げても彼女の匂いを捕まえてしまった。
「でも、士郎さん。真綾は言ってましたよ。おじいちゃんの身体は、すごく……立派だって」
「真綾ちゃんの言うことですから。六歳の物差しなんて、あてになりませんよ」
「士郎さんも、私のことを……この歳で、女の足がつったくらいで、なんですけど」
由佳はそこで一旦言葉を切り、かかとを後ろの洗濯機へこつりと当てた。帯のない浴衣が歩みの拍子に胸元から開きそうになり、彼女は指先で前を摘む。その動作さえ、士郎には彼女の羞恥を溶かしたまばゆい媚態に映った。
「私、士郎さんに、裸を見せてほしいんです。お風呂に入る前から、そう思ってました。真綾がお風呂で騒いだ日から、ずっと」
「由佳さん……」
「士郎さんは、お身体を人に見せるのがお嫌みたいだから、無理には……でも、私ばかり、あんな姿を覚えられてるのは、いつまでも眠れそうにないんです。最初から、見てもらおうとしたみたいで」
士郎のこめかみの奥で、血液がゆっくりと熱を持ち始めた。これまで若い女と二人きりで過ごした時間の穏やかさが、いま急に薄い氷の上を歩くような切迫に変わっている。老いを言い訳にして逃げ出したい半身と、この清潔な脱衣所の空気ごと由佳の吐息を浴びていたい半身が、腹の中で互いに背を向けていた。
「こんな老いぼれの身体、由佳さんの目に触れるようなものじゃありません。私は山で無理をしているせいか、絆創膏のあとも多いですし、日に焼けて浅黒いばかりで」
「だから見たいんです。士郎さんの、生活してきた身体を。真綾みたいに上手くは言えないけど……私、あなたのことを、もっと近くで知りたい」
由佳が一歩、士郎へ歩み寄った。彼女の素足が湿った床を小さく踏む音が、士郎の耳の底をくすぐる。浴衣の合わせから、乳房の内側のやわらかな影がまともに覗き、士郎は目を逸らす先を失った。
「本当に、私の身体なんか見る必要はないと思うんですが」
「見せるのも、見るのも、いまからなら二人の問題でしょ」
由佳の指が、士郎の作業用チノパンの腰紐のあたりをかすめた。老いた男のくすんだシャツ越しに、女の爪の丸みが五本、野良猫の体温のようにくっきりと伝わる。
「お願いです。着ているもの、全部脱いでください。私が自分から脱いだら、士郎さん、ぜったい目を閉じてしまうから」
「由佳さんが脱いだら、じゃない。私は目を閉じるどころか、さっきの景色を思い出してしまいます」
「忘れなくていいです。忘れられたら、困る」
由佳の声が、笑みと泣きそうな色を半々に含んで震えた。士郎はか細いため息を吐き、それからゆっくりとシャツの一番上の釦へ手をやった。指先が妙に覚束なく、釦は二度三度と指の腹から逃げる。
「分かりました。では、これは由佳さんに免じて……本当に、美しい年頃の方が見るものじゃないんですが」
士郎はシャツを脱ぎ、下に着ていたくたびれた肌着を身を屈めて脱ぎ捨てた。山登りで戸外に慣れた肩や胸は、自分で思っていたより濃い影を落とす。六十二歳の男の肌は若い汗をかきにくいぶん、脱衣所の蒸し暑さを表面に集めて鈍く照っていた。
由佳は黙ったまま、士郎の腹から胸へかけてゆっくりと視線を流した。恥じらいよりも、目の前の男の身体を読み取ろうとする真剣な光が先に立っている。士郎はベルトに手をかけ、チノパンを足元へ押し下げた。下穿きの布が、もう彼の一物を隠しきれないほど押し上がっている。
「情けない。年甲斐もなく」
士郎は呻くように言い、下着に残る一物の膨らみを片手で押さえようとした。その手を、由佳の指がそっと遮る。
「駄目。手で隠さないでください。士郎さん、私と同じだけ……見せてください」
由佳はもう浴衣の前を押さえていなかった。薄い藍の布が肩から滑り落ち、彼女の小ぶりな乳房が汗の薄明かりの中で丸く浮かぶ。乳暈は淡い刷毛で描いたようにくっきりと、乳頭だけが女の熱を溜めて尖っていた。浴衣はさらに腰から崩れ、先ほどまで士郎の掌が触れていた脚の上へ、ためらいなく落ちる。
士郎の下着に食い込む肉の形が、見る間に苦しげな角度を取った。由佳は膝を折ってしゃがみ込み、士郎の下穿きのゴムへ両手を伸ばす。彼女の手は震えていない。むしろ、その指先は長い夜の宵の口へ触れるように静かだった。
「由佳さん、もうやめたほうが──」
「静かに見ててください。私、いま、すごく女の顔になってるから」
由佳が下着を引き下ろすと、半ば勃ち上がった士郎の肉茎が重たげに揺れて、脱衣所の湿った照明の下へ躍り出た。男の息と女の息が、同時に狭い空間を打った。
彼女の手の中とは違う、生のままの質量が由佳の視界で膨張していくのを、士郎は他人事のように眺めていた。全長二十センチ。大きく首をもたげた亀頭は、老人の身体には不似合いなほど赤黒く充血し、すでに鈴口から透明な雫が一筋、ゆっくりと腹側を這い下りている。見られる感覚だけで、この身体は何年ぶりかに女の呼吸を飲み込んで育っていた。
「まさか……本当に、真綾が言ったとおりだ」
由佳の唇から言葉が漏れ、瞳がほどけていく。羞恥が消えた場所に、腹の底から押し上げてきた純粋な驚きと、その奥に燻っていた女の疼きが混ざって、黒目を湿らせた。
「士郎さん、これは……私、病院で男の人の身体は嫌なほど見てきたけど……」
「汚らわしいでしょう。私みたいな男が、由佳さんみたいな人を前に、こんなどうしようもなく」
「違います。きれいだなって、思うんです。士郎さんの、こんなに熱くて、重そうで」
由佳の右手が伸び、膨らんだ陰嚢の皺ごと、肉茎の根元をゆっくりと包んだ。やわらかく汗ばんだ掌が、そこで止まる。握られた一物は、彼女の指の長さをはるかに余らせていて、先端の亀頭が彼女の顔の前にぐっと迫り出した。女の手の熱が血管の一本一本へ沁み込んで、士郎の腰が逆さに震えた。
「私の手の中でも、まだ硬くなってる。士郎さんは、私のことを感じてくれてるんですね」
「当たり前だ。こんな……何年も、人に触れられたことのない身体です。由佳さんの手が触ったら、嫌でも」
士郎は壁に頭を押しつけて天井を見たが、目の奥に張りつく快楽は色を濃くするばかりだった。由佳の指が力を抜き、男の幹を根元から先端へゆっくりしごき上げる。亀頭の傘の裏を指の腹が確かめるたび、鈴口から溢れる滑液が彼女の手のひらに絡み、くちゅり、と日常にはない音が脱衣所に立ち上がる。
「っ……は、ぁ……士郎さん、立ててください。そのまま、私に見せつけるみたいに」
由佳は片膝を床に落とし、正座に近い姿勢で士郎の一物を見上げた。白い浴衣が脚の間に潰れ、汗ばんだ太ももの内側が互いに押し合い、その奥に薄い陰毛の黒がのぞいている。士郎は両足を肩幅ほどに開き、震える息を吐きながら、硬く反り立った肉茎を二人の目が届く場所に晒した。
「……すごい。これが、士郎さんの」
由佳の両手が重なり、まだ握り足りない幹を二本巻きに支える。彼女の指は看護の仕事に馴染んだ落ち着いた所作で、しかし触れた瞬間から男の熱に火を移されてかすかに汗ばんでいた。由佳が顔を近づけ、大きく開いた唇から湿った息が亀頭を湿らせると、士郎の視界に彼女の背中と乱れた髪、そして風呂場の白い光がぐるりと回った。
「由佳さん、マッサージだって触るだけじゃ……それ以上は、私、止まれないかもしれない」
「止まらなくていいです。いま、私が勝手にしました。士郎さんを欲しいのは、私のほうだから」
由佳は舌を真っ赤に覗かせ、膨らんだ亀頭のてっぺんへ静かに這わせた。ぬるりと起き上がる舌の表面が、張り詰めた皮膚を一筋なぞり、唾液と先走りが混ざって小さく泡立つ。れろ、と舐め上げる音。彼女の顎が縦に開き、指で支えた肉棒の先端を唇の内側へ吸い込んだ。くちゅ、ちゅるる、と粘液を啜る音が士郎の耳の奥へ、温かい針のように刺さり続ける。
「あ、あ……由佳さん……っ」
彼女の唇は亀頭を包んだまま、舌先で膨らみの腹をぬめらせ、汗ばむ掌は受け止めきれない根元を二本の手で扱いていた。時折顔をわずかに離し、ひどく長いものの先端へ唇を吸いつかせるたび、唾液が明るく糸を引き、濁った水音が脱衣所の四隅にこだました。士郎は壁に片手をつき、膝を震わせる。六十二年分の熱が、女の口内へ逆流していくようだった。
「まさか、こんなことが……由佳さん、そこに、歯が……いや、いい。凄くいい……」
「は、ん……ん……士郎さんの、苦いとこ、溢れてる。ずっと、こうしたかった」
由佳は息を継ぎながら、柔らかな舌の裏で亀頭の先を押しつぶすように舐め、同時に掌をゆっくりと回した。射精へ向かう予感が髪の生え際からふくらはぎの裏まで駆け抜け、士郎の腹が波打つ。彼女の黒目がじっと士郎を見上げている。咥えながらの目線は、もう処女のように戸惑う若い女のそれではなかった。
「由佳さん、私、そろそろ」
士郎の声は割れて、空気を低く震わせた。由佳は唇を締める力を強め、肉茎の先端を口いっぱいにくわえ込んだまま、士郎の腿へ指を食い込ませる。差し出した顔をわずかに傾け、口の中で舌先を裏筋へあてがう。くっぷ、ぬちゅ、という卑近な水音が、蛍光灯の下でどろりと明滅する。
「もう、出しても……出させてください、このまま」
由佳は返事をしなかった。彼女は一物を深く咥え直し、喉の奥を開くように首を前へ押しつけてくる。その瞬間、亀頭が狭くて熱い襞の奥に吸われ、士郎の腹の底から熱い塊がせり上がった。止まれなかった。放尿とも悲鳴ともつかない震えが背骨を駆け上がる。
「う、ぁ……出る……っ」
どくっ、どろりと、張り詰めたものが解放された。由佳の唇と舌に白濁が溢れ、彼女の頬へ飛び散る。どぴゅっ、という若い頃の自慰では決して響かなかった音が脱衣所に生々しく弾けた。士郎は目を開けたまま、その穢れを汚れとして感じられず、ただ胸の奥が焼け焦げるように快楽だけが広がっていく。肉茎の先はなおも脈打ち、由佳の口角から混じり気のない白い糸が顎へ垂れた。
由佳はゆっくりと口を離す。唇の端と右の頬骨、汗ばんだ前髪の数本にまで、粘りのある精液が絡んでいた。彼女は士郎を見上げたまま、舌を出して唇の縁をなめ取り、濁った糸を少しだけ喉へ流し込む。白い液体の匂いが、二人の間に夜の花のように濃く満ちた。
「それで、士郎さん」
由佳は浴衣の端で口元を軽く拭いながら、ゆらりと立ち上がった。胸も脚も露わなまま、右手を士郎の前に差し伸べる。風呂場の青い常夜灯が、彼女の汗ばんだ乳房と股間の黒をなぞり、浅い呼吸を続ける裸身に薄闇を貼りつかせていた。
「このあと、汗を流したいんです。よかったら……お風呂、いっしょに入り直しましょう」
士郎は壁のタオルへ手を伸ばしかけ、途中でやめて、差し出された由佳の手を見つめた。彼女の指先には、自分の精液と唾液とがまだ淡く光っている。浴室の青い灯が脱衣所まで浸み出し、握りしめられていた一物の余韻と、老人の身体には過ぎた白い汚れを、等しく照らしていた。士郎はその手を、逃げることもできず、しかし拒む理由などとうに失くして、おそるおそる握り返した。
第5章 湯の中で硬さを取り戻した二十センチを、女盛りの膣が根元まで咥えこむ

第5章: 湯の中で硬さを取り戻した二十センチを、女盛りの膣が根元まで咥えこむ
浴室の青い常夜灯が、立ち上る湯気の一粒一粒を眠たげに光らせていた。由佳の手を引かれるまま敷居を越えた士郎は、肌にまとわりつく湿り気の深さに、肺の奥まで女の匂いで満たされる心地がした。彼女が先に浴槽の縁へ手をかけ、振り返って士郎の目をまっすぐに見る。その黒目は脱衣所で男の精を受けた女の色を残したまま、どこか静かで、湯加減を確かめるように細められた。
「先に入ってください。肩まで、ゆっくり浸かりましょう」
由佳の声は浴室の壁に吸われ、しっとりと士郎のこめかみを撫でた。士郎は小さく頷き、老いた素足を湯へ沈める。張ったばかりの湯は朱を含んだ透明で、足首から膝、腿へと熱が這い上がるたび、腹の奥で先ほどの射精の余韻が鈍く溶けていった。続いて由佳が入り、狭い浴槽の湯が二人分の重さを受け止めてざわりと揺れた。彼女の太ももが士郎の腿に触れる。湯の中で触れ合う素肌は、骨の硬さを互いに遠くへ押しやり、ただ温かい脂肪と筋肉のかたまりとして寄り添った。
二人はしばらく言葉を失っていた。蛇口から落ちる名残の水滴が、一定の間隔で湯面を打ち、輪を描いては消える。士郎の背中には浴槽の冷たい曲面が当たり、胸から腹にかけては湯の重みが呼吸をゆっくりと深くした。由佳も士郎と同じように浴槽の縁へ項を預け、半ば閉じた目で天井の湯気を追っている。肩がわずかに触れる距離は、性急な行為の続きではなく、たったいま互いの裸を知った男女が体温を混ぜるための、柔らかな空白だった。
「士郎さんが、山へ登る人だって、この肩を見てると分かる気がします」
由佳がぽつりと言い、湯の中から白い手を上げて、士郎の肩口の古い日焼けの上へ指先で触れた。濡れた指の腹が、山で岩肌を掴んだ痕の窪みをたどる。士郎は肩を強張らせまいと息を詰めた。
「私は、山で着いている傷を、褒められたことがほとんどなくてね。若い頃は、女の人に引かれるばかりでした」
「引いたりしません。こういう硬さは、仕事着の下じゃ見えない。見せてもらえて、よかった」
由佳の指が肩から首筋へ滑り、かるく耳の裏のくぼみをかすめて湯へ沈む。士郎の背筋に、指が通った道すじだけ別の温度が残った。視界の端で、由佳の小ぶりな乳房が湯の表面すれすれに浮いている。淡い影をまとった乳首は、濡れた湯気の中で花の蕾が開く前のように窄まっていた。
士郎は息を深く吸い、湯の温度とは別の火種が腹の底でちりりと燻り始めるのを覚えた。さっき口と掌で男の欲を絞られた身体が、まだ女の肌を欲しがっている。年甲斐もなく、情けない、と胸で呟いた。だが、動かぬはずの老いた心が、隣で呼吸する由佳の裸をたしかに求めている。士郎の視界は、彼女の肩の滴へ吸いつき、胸のくぼみへ落ちていく滴へ奪われた。
「私、こうして士郎さんと湯に浸かってると、足がつったのも悪くないって思えてしまいます」
由佳は少し笑いながら、浴槽の中で士郎のほうへ身体を向けた。湯の抵抗を割って、彼女の片手が士郎の腿の上に置かれる。看護師の手は指先がしっとりと濡れ、掌だけが男の皮膚よりなお熱い。士郎の腿の内側がひくりと震え、由佳はそれに気づいて指を軽く動かした。
「冷たいですか」
「いえ、冷たくなんてありません。私のほうが、こんな手に触ってもらうのが何年ぶりか分からなくて、こう、どうしたらいいか」
士郎は苦笑いを浮かべかけて、由佳の指が腿から腰骨のあたりへゆっくり移動するのを感じ、言葉を失った。彼女の親指が、湯の中で男の脇腹をかるく押すように触れる。年輪のように硬くなった腹回りを、値踏みするのではなく、たしかめるように。士郎のへその下から、生温かいものが湧き上がって再び性器へ集まっていくのを止められなかった。
「由佳さん……もう、私のは、今しがた注ぎ出したもので、この歳ですから、若い人のように早々に力を取り戻すもんじゃないんです」
「だけど、これ」
由佳の左手が湯を掴むように動き、沈みかけていた士郎の一物へ静かに触れた。びくん、と士郎の腰が跳ね、湯面が二人の胸のあいだで割れた。彼女の指は半ば勃ち上がりかけた肉茎の重さを水中でたしかめ、包むように握る。湯の浮力に助けられてもなお、その幹は彼女の細い指を押し開こうとしている。亀頭は先ほどよりも赤みを増し、鈴口からまた薄い滑りを吐いて湯を濁らせた。
「すごく熱い。さっき口に含んだときよりも、硬い……先のところ、手のひらで湿ってるのが分かります」
「そんな、由佳さんに握られたら、年寄りの身体だって勝手に」
「勝手にさせてください。士郎さんのこれが、私に触ってほしがってる」
由佳は囁くように言い、掌を肉茎の幹へ沿わせて上下に動かした。じゃぷり、と湯を巻き込んだ水音が浴室に立ち、士郎は顎を引いて小さく声を漏らす。彼女の指の腹が、張り出した亀頭の裏をくじる。そのたびに男の腰が湯の中で浮き沈みし、古い浴槽の縁に肩甲骨を擦りつけた。少女のような見た目とは裏腹に、由佳の手つきは迷いなく、女の熱を握った男へ惜しみなく与えていた。
「由佳さん、手でされると、また、いや、これ以上は」
「出してもいいですよ。でも、できれば私のなかで硬くしてほしい」
由佳の指が止まる。湯の中で屹立した陰茎が、彼女の拳をじんと押し上げ、水面ぎりぎりに赤黒い輪郭を浮かせた。士郎は息を荒くし、汗と湯気にまみれた顔で由佳を見る。彼女の唇が薄く開き、黒い瞳が男の中心をまっすぐに射抜いた。
「私のほうこそ、士郎さんのおかげで、自分がこんな身体になってるのが分かります。下のほう、湯のなかでも分かるくらい熱くて、きっと……もう、笑われても仕方ないくらい、濡れてます」
由佳は士郎の手を取ると、自分の胸元へ導いた。濡れた肌と湯のあいだで、士郎の指先が女の乳房のふくらみへ沈む。ふわりと柔らかい脂肪の下に、爪の先ほどに硬い乳首がぷつんと触れた。士郎の掌は戸惑いながらも由佳の乳房を包み、古い指の節でその丸みをゆっくりと探った。石鹸の匂いと、女の汗と、湯に流れきらない雄の精の匂いが、二人の鼻先で混ざり合う。
由佳が身を起こし、浴槽の湯を割って士郎の腰へ跨ろうとする。狭い浴槽の中、彼女は片膝を士郎の尻の脇へつき、もう片方の足を湯底へ伸ばして、男の腿の上へ自重を預けてきた。湯は二人の隙間から溢れ、タイルの床を浅く洗う。密着した下腹に、士郎の硬い肉茎が由佳の茂みを押し上げ、彼女はふっと息を唇から逃がした。
「士郎さんは、壁のほうに、もう少し寄りかかってて。私が、きちんとおさめたいんです」
由佳は士郎の胸へ手をつき、壁を背にした男の肩をゆっくり押した。士郎の背中が浴槽の縁と浴室の壁とに支えられ、半ば座った体勢が安定する。青い灯は由佳の乱れた黒髪を濡らし、束になった毛先から滴が彼女の顎へ落ちた。士郎の目には、湯を滴らせる女の乳、細く絞られた腰、その下で男の性器をそっと掴む茂みの暗さが、順に焼きついていく。
由佳の手が、士郎の肉茎を根元から支えて角度を整えた。膨らんだ亀頭が、湯の中で女の割れ目へ触れる。ぬり、と濡れた音が混じり、二人の息が同時に止まった。先端が、柔らかな肉のくぼみを滑り、入り口の熱を探り当てる。由佳が自分の人差し指を亀頭のすぐ下へ添え、くっ、と体重を落とした。窄まりの浅いところへ亀頭の先端が食い込み、女の肉が男の傘を咥えかけてきゅうっと窄む。
「んん……っ、先が、太くて……っ」
由佳の腰がぶるぶると震え、湯が再び輪を広げた。士郎は呻き、彼女の腰へ両手を添えた。若い女の腰は汗と湯でぬめり、力の入った筋肉の芯を包む柔らかさが掌に吸いつく。士郎は指を滑らせながら、それでも腰を突き上げるような真似はせず、由佳が自分の窄まりを男の形へ慣らしていくのを待った。
「息を、吐いてごらんなさい。あのとき、足を揉んだように、ゆっくり……私まで、一緒に力んでしまって」
「ん、は……っ、私、こんなに、きゅうきゅうしてしまって。全部、入るのかなって、怖くて、でも……」
由佳はへその下あたりに力を込め、腰をそろりと落とし始めた。亀頭が狭い肉の襞をずるりと押し広げ、内側のひだを濡れた音とともに割っていく。ずぶ、ずぶ、と湯の音とは違う、女体の奥から響く粘りつくような水音。士郎の肉茎が、根元へ向かって由佳という女の中へ少しずつ沈んでいく。六十二歳の男の腰に、若い膣の内部の熱が巻きついて、襞の一枚一枚が先端を啜るように蠢いた。
「あ、あ……士郎さん、はいってくる……私の、なか、いっぱいになっちゃう」
由佳は背を反らし気味にし、士郎の首筋へ指を這わせた。はぁ、と細い息が士郎の耳元へかかり、同時に太い肉茎が女の熱の奥へずぶずぶと呑み込まれていく。まだ根元の数センチを残したあたりで、亀頭の先が何か柔らかな壁をこつりと突いた。由佳の膣壁がぎゅううと収縮し、士郎は目の前が青く散るような感覚に襲われた。若い女の胎の奥が、老人の逸物の先端を舐めしゃぶるように吸い、物足りなさを埋めるためにさらに締め上げてくる。
「奥、あたってる……士郎さん、私のおなかのなかで、先が……子宮のすぐそばにぃ」
「ああ、由佳さん……こんなに熱い。私は、女の人の、こ、こんな……」
士郎は痺れる背筋を壁へ押しつけ、由佳の腰を抱き寄せた。湯の浮力と油断が重なり、彼女の体重がさらに落ちる。くちゅ、ぬぷぷ、と繋がった粘膜が空気と湯を巻きこみ、肉茎の根元までを由佳の身体が呑み下した。睾丸の上まで女の汗と湯が流れ落ち、二人の境界は水面下でどろりと溶け合う。
由佳が士郎の肩へ額をこすりつけ、息を浅く乱しながら腰だけを揺らす。揺れるたび、内部の襞が男の幹を擦り上げ、亀頭の括れをきゅうきゅうと締めた。士郎は彼女の背中を抱き、汗ばんだ肌へ指を食い込ませた。浴室の壁には、湯気に濡れた二人の影が青白く揺れ、交わった影は一つの獣のように熱を吐いている。
「士郎さん……動かさなくても、なか、わなわなしてて……あ、あ、だめ、自分で揺れたら、奥、ぐりぐりされちゃう」
由佳の内ももが士郎の腰を締めつけ、爪先が湯底を探るように丸まる。士郎は夢中で彼女の尻を支えながら、自分の肉茎が若い膣の奥を押し上げる感覚を全身に浴びていた。女の内部は、士郎の知らない言葉で賛美を繰り返すように蠕動し、まさしく息子のような年齢の男を咥える器官が、六十二歳の劣情を受け入れて熟れていた。士郎の耳には、自分の腹を打つ由佳の腰の音と、濡れた唇の端から漏れる声と、排水口を流れる湯の音とが、爛れた輪唱のようにまとわりつく。
「ねえ士郎さん、もっと奥……士郎さんのカタチ、私のなかに、ぜんぶ焼きつけたいの」
由佳は泣き声を隠さず、士郎の下唇へ舌先を這わせた。士郎は彼女の舌を迎えるように唇を開き、二人は湯気の中で深く口を吸い合わせる。ちゅる、と唾液が軽く絡む音。由佳の一度目の腰の揺れは緩やかだったが、口づけをほどいた瞬間、性急に何かが堰を切ったように彼女の内側が士郎を締め上げ、士郎もまた腰を突き上げずにいられなくなった。
並の体位では届かぬ老いの核心へ、女が自ら腰を落とす。士郎は由佳の乳房の先を掌で転がし、その窄まりが男の肉茎を根元まで咥えこむたびに、腹の底から若い頃のようなくぐもった声が漏れるのを抑えられなかった。由佳の腰が震え、湯がばしゃりと浴槽の外へ弾けて床に落ちる。彼女の黒髪の滴が士郎の顔へ降りかかり、甘い石鹸の名残が両者の唇を湿らせた。
ずぶり、ぐちゅ、ぬちゃり。女の肉が男を受け入れ、男の瘤が女の奥を小突く。由佳の喉がのけぞり、ちいさな悲鳴が浴室の天井へ吸われていく。彼女が腰を回すたび、水音はいっそう高くなり、繋がりから溢れた泡が白く濁って湯面を漂った。士郎はもう、年齢を恥じる言葉すら組み立てられず、ただ由佳の熱い穴の中へ自分の熱が吸い取られていくのに必死だった。
「士郎さん、士郎さん……あっ、あ、それ、おく、おくに……っ」
「由佳さん……私は、どうやら、とんでもないことを……いいえ、私のほうこそ、由佳さんがいなければ、この身体がまだ男だったことも思い出せなかった」
士郎は泡立つ湯の中で由佳を抱きしめ、その背中をいとおしむように撫でた。すると、女の膣が応えるように収縮し、彼の肉茎を深く深く絞ってくる。老人の躯を貫く甘美な痺れは、脊髄を駆け抜け、ふくらはぎの裏まで惹きつれる。士郎は由佳の腰を支えたまま、静かに、しかし確かな抽送を始めた。浴槽の湯が二人の動きに合わせて波うち、壁へ跳ねた飛沫が青い常夜灯に何度も吸われた。
「あっ、こ、こんなに、奥まで……んん、んはぁ、士郎さんと繋がってる……熱いのが、私のおなかの中で、どくどくしてる」
由佳は士郎の耳元で、濡れた舌が触れるほどの近さで喘いだ。その声は湯気を震わせ、士郎の男根をさらに強くさせた。女盛りの身体が、老いた男の一物を根元から咥えこんで離さない。浴室は一面、二人の肌から立ちのぼる湯気と、女の甘い汗の匂いと、雄の精の残り香とで篭っていた。士郎の視界はもう彼女の乱れた黒髪と、白く泡立つ自分の腹と、狭く古い天井とを、等しく官能の熱で滲ませるばかりだった。
由佳が腰を揺するたび、交わりから突き上がる水音が浴室に反響する。男も女も、もう名前を呼ぶことしかできなかった。由佳は士郎の巨根を奥で噛みしめながら、か細い金切りのような声で幾度も「あ、あ、あ」と刻む。士郎は彼女が内側からほどけていく感覚を、自分の中へ落ちてくる熱い蜜として味わった。波立つ湯が二人の太ももを打ち、繋がったまま男の腰と女の腰が底知れぬ渦に揉まれているようだった。
由佳の爪が士郎の背中へ食い込み、水と汗で膨潤した皮膚の上へ赤い筋を残す。痛みさえいまは膣の痙攣の延長のように甘く、士郎は彼女の首筋へ顔を埋めた。石鹸と女の皮脂と、ほんの少し涙の塩が混じった匂いが、彼の老いた官能を容赦なく蒸らす。由佳の呼吸はますます短く早まり、土砂降りの雨だれが水面を打つように、濡れた音だけが浴室を覆った。
「士郎さん……だめ、私、揺れたら、もう、ほんとに、うえ、そこ、いやっ、あ、あ、奥……あたっ、あ、あっ、ぁ……」
由佳は士郎の首へ縋りつき、尻を小刻みに跳ね上げる。結合部から泡立った粘液が溢れ、二人の恥毛をくしゃくしゃに濡らした。士郎は由佳の熱い膣襞が自分の肉茎を握り潰さんばかりに蠕動するのを感じた。女の子宮が近い。亀頭の先に、ぬめる収斂が吸いついて、もう意志の力では保てない。士郎は喉の奥から唸りを漏らし、彼女の柔らかな肉を抱きしめ返した。
「由佳……私も、もう、あやうい。いいか、このまま……おなかのなかで」
「きて、士郎さん……このまま、私のいちばん奥で……はぁ、あ、あっ、ああ……っ」
由佳の全身が弓なりに反り返り、浴槽の湯がわりんと波立った。士郎は低く呻き、由佳の胎内の最奥をめがけて腰を突き上げた。どく、どく、と熱く迸るものが、女の熟れた花芯を白く満たしていく感覚。由佳の悲鳴が、浴室の中で一際高くこだまし、さらにいくつもの水音が壁に跳ねた。老人の股ぐらから湧き上がる精が、若い子宮の口を焦がし、二人の繋がりからは濁った泡がとめどなく溢れ出した。
由佳はそのまま士郎の胸へ崩れ落ち、肩を細かく震わせながら深い息を繰り返した。士郎は女の重みを抱きとめ、朦朧とした頭で湯の温みを感じていた。結合はまだ離れず、彼の肉茎は脈を打つたび女の中で小さく噴き上がるようだった。交わった場所から流れ落ちた白い糸が、湯面をすうっと漂って消えていくのを、士郎はただぼんやりと見つめていた。
青い常夜灯の下、二人の荒い呼吸だけが、浴室の湯気と水音の余韻の中にしばらく浮かんでいた。士郎の胸には女の汗と髪が貼りつき、彼女の脈が腹越しに伝わってくる。女の胎内が時折きゅう、と彼を愛撫するように縮むたび、士郎の背筋を甘い疲れが貫いた。年老いた身体がなお、こうして若い女の内側で満ち足りている。士郎は由佳の湿った黒髪へそっと顎をのせ、古い浴室の天井を仰いだまま、何度も瞬きをした。
由佳が顔を上げ、涙の膜を張った瞳で士郎を見た。唇が、笑うでも泣くでもない、ひどく深い色を浮かべている。
「士郎さん……私、足がつるたび、あなたに助けてもらえるなら、何度つっても惜しくないって、いま思いました」
士郎は何と答えようもなく、汗ばんだ指で彼女の目尻をそっと拭った。浴室の湯はすっかり濁り、排水口は小声で泣き続けていた。外では夜が、しんと薄闇を厚くしている。二人は繋がりを解かぬまま、再び額を寄せ合い、こめかみに残る快楽の余熱と、湯の冷めゆく温度とを、どちらともなく静かに抱きしめていた。
第6章 娘の笑い声まで眠る隣家で、一度得た若い肌を夜ごと求め合う男と女
第6章: 娘の笑い声まで眠る隣家で、一度得た若い肌を夜ごと求め合う男と女
湯から上がる前、由佳の肩がゆっくりと士郎の胸へ倒れ込み、濡れた額を鎖骨のくぼみに押し当てた。士郎はまだ結合の余韻で痺れる腰を浴槽の底に沈めたまま、女の髪から伝わる滴が腹の上を辿っていくのを感じていた。青い常夜灯の下、立ち昇る湯気が壁のタイルを舐めて、排水口からは二人の吐き出した熱を流す水音だけが切れぎれに聞こえた。
「……ずるいですね。士郎さんの胸、こうしてると、波の音がするみたいで、眠ってしまいそう」
由佳の声は額を押し当てたまま、湿った振動になって士郎の胸骨をくすぐった。士郎は返事の代わりに、彼女の背中へ右手を回して、汗と湯でしっとりした肩甲骨の膨らみをゆっくり撫でた。ひどく華奢な女の背中が、骨の形を確かめるように指の腹へ吸いつき、湯の膜越しに小さく震えた。
「眠いなら、布団で休んでください。風呂で眠れば、また足を攣りますよ」
「士郎さんと汗を流したくて入ったのに、疲れが先に来ちゃいました。ここ、お湯がぬるくなってきたから」
由佳はそう言って身を起こし、浴槽の縁へ手をかけた。ずるり、と湯が引き、二人の繋がっていた部分から白く濁った筋が水面を漂って消えた。身体が離れた瞬間の、内側を夜風にさらされるような空虚さに、士郎の腹の奥がまた淡く疼いた。この年になって、女の内へ放ったものが自分の形を残して流れ出していくのを、これほど惜しいと思うとは思わなかった。
脱衣所へ先に上がった由佳が、バスタオルを二枚手に取って振り返る。裸のまま、右の二の腕を自分の乳房の下へ通すようにしてタオルを差し出した。濡れそぼった黒髪が肩から胸へ貼りつき、小ぶりな乳の輪郭を隠すでもなく縁取っている。士郎はその手を受け取らず、由佳の腕を引き寄せて、乳首の先を唇のすぐ前でかじりつくような位置まで自分の方へ抱き寄せた。
「若い人のように何度もは無理ですが、この身体は、まだ由佳さんの熱を憶えていますから……今、少し眠るのは惜しい」
由佳の目が見開かれ、それから細められ、唇の端が緩む。彼女はタオルを洗濯機の上へ放り出し、逆に士郎の首へ腕を回して、ぬるい肌と肌をぴたりと重ねた。勃ち上がりかかった陰茎が女の臍の下を熱く押し上げ、彼女が笑い混じりの息を漏らす。
「私も、眠るのは惜しいです。でも、このままじゃ、また浴槽でお湯を張り直すことになっちゃう」
「浴室から出たら、どこで休むんです。真綾ちゃんの隣の部屋で……」
「真綾は二階で寝てます。今日は山でたくさん歩いて、帰ってからお風呂入って、コテンって。しばらく起きません。リビングに、昼間の続きで……飲みかけの缶がありますから」
由佳はそう囁いて、士郎の耳たぶを唇で挟んだ。唾液と湯の滑りが鼓膜のすぐ外で微かな水音を立てる。士郎の一物は完全に硬さを戻し、女の腹の窪みへぐいと食い込みそうになった。年齢も理性も、この裸の女の前では何の言い訳にもならなかった。
二人は体を離し、脱衣所の床に落ちた衣服を避けながら、濡れた足で廊下へ出た。エアコンのない木造家屋の空気は蒸し暑く、二人の素肌を生温かい湿りで包む。士郎は壁に手をつき、由佳の腰を抱き寄せると、汗ばんだ項へ舌を這わせた。女の肌から、体臭と混ざり合った情事の匂いが立ち昇る。由佳が鼻から抜けるような声をもらし、士郎の腕の中で腰をそらした。
「ねえ……まだ、してない人みたいな顔で、士郎さんたら。私のこと、もう一回、別の場所でめちゃくちゃにしたい?」
由佳は笑いながら、しかしその指が士郎の胸の古い傷のあとを遊び、彼を振り向かせるために首を傾げた。士郎は由佳の問いに口で答えず、彼女の口をふさぐように唇を重ねた。互いの間に張った湯の薄皮が破れ、舌が深く絡む。若い女の唇から、夫では味わえなかったのだろう、鼻音を伴った甘い声が男の口内へ流れ込んだ。二人は下唇を吸い合いながらリビングへ入り、閉めた襖にぴたりと寄りかかる。由佳の太ももが士郎の逸物を挟み、そっと前後へ動くと、付け根の陰毛が絡んでくちくちと湿った。
「士郎さんの、すごく熱い。ずっと私のなかに入れてたみたいに、まだ先が濡れたまま」
「さっきの湯が中にありますからな。それに、由佳さんがそんなに体を寄せてくれれば、どうしたって……」
士郎は彼女の腰を離し、ちゃぶ台の前に敷かれた座布団の上へ、二人分の裸を崩れるように落とした。由佳の乳房が男の胸に押し潰され、白い肌が古畳の匂いを絡めながら沈む。掛け時計の秒針が、昼間の団欒の残り香の中を細かく刺して時を刻んでいた。士郎は由佳の両脚を開かせ、しゃがんだ姿勢から見える女の中心へ視線を落とした。薄い陰毛は、まだ男の精と女の蜜とを分かち持ってちぎり折れたように濡れ、開いた肉びらは赤黒く膨らんで息づいている。そこから溢れた熱い汁が、畳の上ではなく、あてがわれた座布団のガラの上へ滲む一歩手前で光っていた。士郎は指を伸ばし、女の肉の口を左右へゆっくり割った。中の襞が呼吸するようにふるえ、親指でなぞると蠕動が指を引き寄せようと吸った。由佳の喉が急を告げるように反らされる。
「あ、ぁ……そこ、士郎さんが指で……んん、私のなか、また士郎さんのことで熱くなってしまう……」
士郎は女の反応に応え、中指を第一関節まで差し込んだ。侵入と同時に肉襞が縮み、指を奥へと絞るようにすら動いた。内部の熱さは浴槽の中よりもずっと生々しく、子宮へ通じる道を指先にのみ感じた。抜き挿しを始めると、くちゅ、ぬち、と粘りが泡立つ音が狭い座敷へ流れた。由佳は首を振り、両脚を開いたまま腰を浮かせ、士郎の指をより深くへ導こうとする。膣内はすでに洪水を孕み、挿っていた指が強く扱くたび、ぬめる音が座敷の静けさを裂く。
「これ、…私の、いやになっちゃうくらい、音が。ねえ、士郎さん、指、んんっ、指じゃ、なくて、お願い……」
由佳が切れぎれにねだる。士郎は指を尽きまで挿れ、先端で膣の上のほうにあるざらついた肉を幾度か擦ってから、ゆっくりと抜いた。液で濡れそぼった指が銀の糸を引く。士郎は無言のまま由佳の体を仰向けから横へ返し、彼女の片脚を自分の肩へ導いた。正面から見下ろすよりなお深く繋がれる体勢。由佳の背中が畳の上へうつ伏せ気味にねじれ、肌を流れる汗が腋の下を伝って黒髪を貼りつかせた。
「そんな恰好……恥ずかしい……士郎さんに、夜の中、全部見られてる。下だけじゃなくて、おしりも……ああ、ぁ、そこ、脚、あけられる……」
士郎は彼女のための返事をせず、片手で女の尻の丸みを支え、もう一方で自分の肉茎を導いた。尿道口から溢れる先走りが女の窄まりと混ざり、ぬるぬるとした鈴口が入り口の肉を滑る。膨れた亀頭がようやく女の奥のくぼみへ収まり、士郎は一気にではなく、腰を押し当てるようにして埋めた。ずちゅ、と空気の逃げる音が二人の下腹の境から上がり、続いて苛立たしいほど熱い蜜が陰茎の幹を縁取って流れた。
由佳の膣が士郎の形を思い出すように締まり、奥へ彼を呼び込む。士郎は老いた腰をかがめ、若い女の内壁を割る感覚に顔をしかめ、低く唸った。結合が進むたび、女の内股の肉が男の付け根をやわく打ち、むっちりした腿の汗ばみが太く光る。由佳は両手で畳を掻き、何度も「あ、あ、あ」と子を逃がすように声を吐いた。タイルでも湯の中でもなく、木の香りのする和室で二人の情が燃える。掛け時計は依然として時を刻み、真綾の寝息はこの部屋まで届かず、隣家と自宅の境もまた濃い夜に沈んでいた。
「いうこと……聞かなくて、ごめんなさい……でも、っ、あ、また……士郎さんの中で、とけてしまいそう……っ、奥、もっと、押して、いっしょに……」
「私も、由佳さんの中で、年甲斐もなくまた……女体の奥を、どろどろに満たしたいと思ってしまってる。いいんですか、この私を、何度も」
「士郎さんであれば、何度だって……あ、それ、おくの、かりかりって、あ、ひ、ぁ、ああ……」
士郎は彼女の膣のいちばん深いところを、自分の亀頭で押し潰すように腰を回した。若い子宮の口がぬめったキスで男の先端を吸い、女の奥は士郎を引きとめるようにさらに狭くなる。先ほど湯船で放ったばかりの精が、また腹の底で熱い塊を膨らます。それは老人の性欲というより、若い由佳の体がくべた薪が、老いた男の内にある牡の火種へ火を移したような感覚だった。士郎は由佳の足首を抱え直して、いっそう深く腰を打ちつけた。古い家の静けさを破るのは、男女の肌のぶつかる音と、女が喉を絞める切ない喘ぎと、二人の間から溢れでるぬかるんだ水音ばかりだった。
由佳の全身に細かい痙攣が走り、膣が男の陰茎を根元から搾り上げる。士郎の背中にも汗が吹き、畳の上に落ちた由佳の黒髪だけが濡れた艶で影のように揺れた。由佳が上体をのけぞらせたまま、「あ……士郎さん、私、私、なにか、しろいの、くるとき、目の奥が……」と泣くように言った。士郎は彼女の腰をがむしゃらに抱き、最奥へ先端を突き立てた瞬間、精を絞り出すように腰を打った。どく、どく、と女の奥へ突き上げる初老の精。由佳の悲鳴が座敷に響き、男の腹を若い女の腿が締めつけた。士郎の体から、叫びとは似つかわしくない静かな吐息が漏れ、彼は女の上へ覆いかぶさるように倒れ込んだ。
その後しばらく、二人は繋がりを保ったまま呼吸を整えた。士郎の肩に由佳がしなだれ、二人の間に甘い疲労が流れていく。こうして夜ごと、肌を求めるようになるのだという予感が、士郎の中から恐怖を抜いていた。孤独な家に帰る気配だけが、壁一枚ぶん、まだ胸の隅に残ってはいたが、それも彼女の指が士郎の胸へ触れるたびに薄らいでいくのだった。
翌朝になると、由佳の家の空気は、前の日までとは明らかに変わっていた。士郎が自宅の洗面所で顔を洗うと、庭越しに「シロウおじいちゃん、あさごはん、いっしょにたべよう」という真綾の声が垣根を越えて飛び込んできた。タオルで顎を拭きながら門を回って由佳家へ入ると、台所は湯気に満ち、由佳が振り向いて言った。
「おはようございます。……今日も、来てくれてありがとう」
彼女の声は底冷えの朝に温められたように柔らかく、昨夜までの女の熱をほんのり残している。士郎は胸の奥が詰まるのを感じながら、上がり框に腰を下ろした。真綾が箸を配り、彼女の小さな手が士郎の茶碗の横に緑の菜箸を置く。そぼろご飯と味噌汁の香りが、木造の台所を甘くけむらせていた。
数日が過ぎ、由佳との朝食が当たり前になった頃には、士郎が隣の我が家へ戻るのは着替えと郵便受けを覗く間だけになった。夕方、由佳が仕事から帰って真綾を迎えに行く前、彼女は必ず士郎の家の前に立ち寄って「留守の間、植木に水を頼めますか」などと入り口の格子越しに声をかけた。土曜日の昼には、由佳が麦茶を冷やしながら「今日こそ、昼から家にいてください」と、その言葉のあとを目で追うようになった。甘い余裕のある声の底に、夜を待ちきれない女の素顔が、熟れた果実の割れ目のようにひそんでいる。士郎は照れ笑いをこらえ、真綾と庭の水遊びをしながら、由佳の作る昼餉の香りを待った。
ある夜、真綾を寝かしつけた由佳が、洗いものを終えてリビングへ戻ってきた。士郎はちゃぶ台に片肘をつき、窓の外で鳴く虫の音を聞いていた。女の足音が近づき、首すじの産毛がふるえる。由佳は男の後ろへ静かに回り、薄い半袖の襟元を背中から手でなぞってきた。
「真綾、今日はぎゅうぎゅう抱きしめて眠っちゃいました。しっかり鍵もかけたから、しばらく来ませんよ」
由佳の指先が士郎の襟元から胸へ滑り、ズボンの布越しに膝を当ててきた。彼女は男の正面へ回り、火照りを頬に淡く浮かべて見下ろす。蛍光灯を背にした由佳の乳房が、薄いカットソーの内で重たげに揺れた。
「士郎さん、今日も、私と……明日休みですし」
「仕事明けでしょう。疲れは残ってませんか」
「体の疲れと、ここの熱さは別なんです。それに、真綾が寝るのを待ってる間、ずっと、この指をこうして……」
由佳は士郎の手を取って、自分の股間の上へ導いた。薄い綿の部屋着の下は、指で押したそばから湿りを滲ませ、女の茂みの形が布越しにくっきり浮いている。士郎は鼻で深く空気を吸い、洗いたての夜店のシャボンのような匂いの中に混ざる、女の身体の匂いで口の中が熱くなるのを自覚した。彼は思わず彼女を自分の膝の上へ座らせ、背中に腕を回した。その拍子に由佳が帯びていた細い汗の膜が二人の触れた場所に滲み、女の柔らかい太ももが、男の老いた脚の上でむっちりと形を変えた。
「由佳さん、まるで私を試しておられますね。夜が待てない老人に、こんな……あなたをいったい、どうして欲しいんです」
「夜を待たなくていいって言ってるんです。士郎さんの、その、太くて固い形を、隣のお家で思い浮かべてると、こうして触って確かめたくなって」
由佳の両手が士郎の顎をつかみ、彼女のほうから唇を吸ってくる。男の口内へ薄荷の香りが滑り込み、唾液がぬめる音を立てる。彼女の指は士郎の胸の古い傷あとをたどり、かすかに力を入れた。座敷の真ん中で、互いの服の布が熱を帯びていく。士郎の陰茎は膝上の女の重みで、痛いほどに張り詰めて、布越しに亀頭の形を浮き上がらせた。
真綾の寝息は遠く、小さな茶の間の空気は、二人の押し殺した熱でしっとりと汗ばんでいた。冷蔵庫の音が途切れるたび、由佳の唇から漏れる息と、名を呼ぶ低い声だけが、夜の中へゆっくりと沈んでいった。士郎は女の背を抱き寄せ、汗の匂いに目を閉じた。自分から誰かを求める夜が、老いの終わりに、こうして永遠の暗がりのように重なっていく。その深さを、もはや恐ろしいとは思えなかった。
由佳が顔を寄せ、士郎の胸に耳を当てる。彼女の髪が男の鳩尾の上に散り、心臓の音が若い女の耳へ流れ込んだ。彼女はしばらくそうしてから、小さく笑って言った。
「また、みんなで遠出しましょう。真綾が海を見たいって、昨日からずっと言ってるんです。士郎さんの運転で、三人で行けたら」
士郎はその声に応えようとして、喉が湿った。老いた男の瞼の裏に、昼の海の光と、夜だけ唇を重ねる女の肌とが、波のように交互に浮かぶ。由佳の指が、士郎のズボンの形の上を、確かめるようにゆっくりと這った。薄い布の上からでも分かる太く長い形を、彼女の指が夢中で撫で、掌が根元で熱を量る。もう、戻る扉はどこにもない。士郎はそう心でつぶやき、由佳の腰を抱く腕を強くして、隣家の夜の匂いに身を沈めていった。
第7章 三人で入るまだ浅い湯船と、隣家に通い始めた男の温かい朝

第7章: 三人で入るまだ浅い湯船と、隣家に通い始めた男の温かい朝
由佳の指が、ズボンの布越しに描いた形を離れ、士郎の鎖骨のあたりへゆっくりと登ってきた。彼女の手のひらは、さっきまで自分の股間を確かめていた湿り気を薄くまとったまま、男の汗ばんだ首筋をたどる。浴室の残り香と座敷に沁みた古畳の匂いが、昼間の暑さを夜の底で蒸し返していた。
「海の話、真綾はきっと夜まで眠れなくなりますよ。あの子、楽しみなことがあると、すぐ布団の上で足をばたばたさせるから」
「そういう真綾を隣で見てるのも、私の楽しみになってきました。……あの子の足の裏が、だんだん硬くなってるんです。いつの間にか、走る距離が長くなってて」
士郎は由佳の薄いカットソーの裾へ手を置いた。骨盤の張りを親指でなぞるようにしごくと、若い女の腰がびくんと跳ね、鼻にかかった吐息が男の耳の下へかかる。由佳は士郎の肩を押し、彼の背中が畳の上へゆっくり沈むよう促した。ちゃぶ台の脚がわずかに鳴る。外では、窓の桟にぶつかった夏の羽虫が、影絵のように蛍光灯へ向かって旋回を続けている。
「布団、敷かなくてもいいの。このまま、ここでしよう。真綾の気配が一番よく届く場所で、士郎さんに抱かれたかったから」
由佳が士郎の上へ跨がり、彼の胸の古い日焼けの上に両手を広げて体重をかけた。小ぶりな乳房が薄い部屋着の内側で揺れ、乳首の硬さが布越しにわずかな突起として士郎の胸へ押し当てられる。士郎の手のひらが彼女の太ももを撫で上げ、ホットパンツの裾のくい込みへ指を差し込んだ。しっとりと熱い肌。汗が指のあいだでとろけ、女の産毛が逆立って掌に吸いつく。由佳は唇を半開きにし、男の指をより深い場所へ招こうと腰をわずかにずらした。
「由佳さん、ここでいいんですか。窓も開いてる」
「網戸にしてあるから、虫の声しか入ってきません。それに、真綾はあのまま朝まで起きないわ。私の身体ばかり、そんなに心配しなくていいのに」
彼女の指が士郎のベルトの金具を外し、ジッパーを下ろす。歯が噛み合う金属の音が、昼間の団欒を記憶している静かな茶の間の空気を割いた。士郎は軽く腰を上げ、由佳の手つきに逆らわないまま下穿きごと尻の途中まで下ろされる。縛めから解放された陰茎が、暗い股のあいだから仰向けの腹へ倒れかかり、蛍光灯の光を受けて陰影をひと筋、膨らんだ亀頭の括れに刻んだ。すでに先走りがちゅるりと溢れている。由佳は、前のめりになってその先端へ唇を寄せる寸前、士郎の胸の動悸が耳に届くほど高鳴るのを聞いていた。
「ねえ、士郎さん。真綾が生まれる前から、こんな夜があるなんて思わなかった。私は母になるために男の人を切ったのに、士郎さんに触れると、体が先に思い出して、こんなに濡れてしまう。……おかしいですか」
「おかしくなんてありません。私だって、初めて女の人の足を揉んだ日から、指に残った熱が離れなくて……あのまま、終わるはずがない夜だったんです」
「それも、わたしの身体が勝手に、士郎さんの指を覚えてしまっただけです。あのとき、垣根の向こうから草履の音がして、ほっとしたの。本当はもっと前から、あなたに触ってほしかった」
由佳の声は、昼間の強い太陽を知らない、宵の花のような湿りを帯びてほどけていた。彼女はホットパンツのホックに指をかけ、膝で立ち上がるようにして脱ぎ去る。下着の中心は縦の割れ目に沿って深く食い込み、布のそこだけが夜の汗と女の汁で濃い色に変わっている。士郎の手が、その湿った布の上から由佳の窄まりをゆっくりなぞった。くちゅり、と繊維に吸われた液が指の腹をすべる。女の腰が小刻みに揺れた。
由佳も士郎の下穿きを足首から抜き、二人は畳の上で裸になった。由佳の肌は、乳房の頂きから臍の下へかけて熱の帯を浮かべ、太腿の内側は汗水でぬめって白い蛍光灯を照り返す。由佳は士郎の肉茎を、根元から先端まで両手で包み、そっと上下へ扱き始めた。老いた男の一物が、若い手の中で張り詰め、亀頭が手のひらの窪みを擦るたび、ぐちゅぐちゅと泡立ち始めた音が座敷の隅へ沈んでいく。
「士郎さんの、手の中でもすごい。先から丸いところまで、ぜんぶ熱い。私の指、看護師の手だから冷たいかもしれないのに、もう男の火傷みたいになってる」
「由佳さんの手が冷たいなんて、一度も思ったことはない。それどころか、触られた場所から順に、この老いぼれの血が若返っていくようで、立っていられなくなるんです」
士郎は由佳の耳たぶを唇で挟みながら、彼女の下着を横へずらした。露わになった割れ目は赤く膨らみ、こぼれた愛液が陰唇のひだを伝って窄まりの下へ垂れ、薄い陰毛の先をくしゃくしゃに濡らしている。女の体臭に、汗の塩気と情欲の乳清めいた発酵臭が混じり、士郎の鼻腔の奥を甘く刺激した。由佳はもう一度だけ「きて」と短くねだり、自分から男の亀頭を濡れた入り口へ押し当てた。
「あ、あ……っ、いい、もう、先っぽだけで……」
由佳の体重が、ゆっくりと士郎の上へ落ちる。太い亀頭が女の入り口の狭窄を乗り越え、奥の襞へぬぶぬぶと潜り込んでいく感覚が、士郎の腰から背骨を駆け上がった。若い膣は士郎の形を思い出したかのように、最初から深く吸い上げる。熱くて、やわらかくて、内側のひだが百の指になって男の幹をしごいている。士郎は由佳の尻を両手で割り開くように抱え、自分の腹の上で女が腰を沈めきるのを待った。最奥まで来ると、士郎の膨らんだ亀頭の先が彼女のいちばん深いところをぐり、と押し上げ、由佳が喉をのけぞらせて悲鳴を飲んだ。
「は、ぁ、奥まで、もう入ってる……士郎さんの先が、私の子宮の入口で、柔らかく押してるぅ」
「私の夢みたいな話に、若いあなたが付き合うことはないのに……ああ、膣のなかが生き物みたいに、私を引っ張り込んでくる。もう、浅い場所には戻れない」
士郎の腰が、畳の硬さを足の裏で踏みしめ、下から突き上げた。ぬるり、と白い泡が結合部からあふれ、二人の腹を濡らす。由佳の下腹に士郎の形が浮かぶような深さ。彼女は士郎の胸へ縋り、鼻先を擦り合わせながら、呼吸ごとに熱い吐息を男の口内へ注ぎ込んできた。士郎の口蓋を彼女の舌がすり抜け、唾液の熱と女の跳ねる心臓が重なる。
「由佳さんの、中が、ぬかるんで、私を咥えたまま離さない。この歳になって、女のひだの一枚一枚が意思を持って、私の皮を剥いてるみたいだ」
「それは、士郎さんのこれが太いから……。私の奥も、ずっと痙攣してる。ねえ、たぶん……もう、すぐ、私、変な声出ちゃう……おく、つつかないで、優しく、ちから抜いて……」
由佳の爪が士郎の肩へ食い込んだ。士郎は突き上げをやめ、女の一番深い場所に自分を埋めたまま、互いの心臓の音を一つに混ぜるように腹を擦りつけた。由佳の膣内が、男の亀頭の形を確かめるように、きゅうきゅうと内側から絞まってくる。それは拒んでいるのではなく、強く覚えようとする汁気の多い収縮だった。士郎の左手が由佳の乳房を下から包み、親指の腹で乳首を円く押し潰した。由佳の口から、ふわふわと頼りない嬌声が漏れた。
「んん……そ、ちくびも、だめなのに、おくで擦れて、下から持ち上げられて……んは、う、おく、だめ、いや、また……」
いや、という声は、もう苦痛の切れ端ではなく、悦びの先触れを孕んでいた。士郎は女の腰を揺らし、膣壁のうねりに沿うように自分の角度を探り当てる。由佳の太腿がぎゅうと彼の胴を締め、まんこの奥を男のもので叩かれるたび、抜けかけた唾液が二人の顎を伝った。くちゅ、くちゅ、と襞を分ける音。しっとりと熱い夜気が、手足を畳に縫いつけるような官能に変わっていく。
士郎は由佳の背を抱き、その狭いゆりかごの中で自分を吐き出したくなった。六十路の射精の予感は、若いころよりもずっとゆっくりと、だが深く、腹の底の泥を掬い上げてくる。由佳も、それに呼応するように締めを強くした。二人はしばらく、座敷の闇に放り出された男女の影のように、言葉を失くして腰を絡め続けた。
真綾の気配は、二階の静かな暗がりに沈んだままだった。古い木造家屋の壁が、二人の睦み合う息をそっと吸い込み、虫の声の合間から溢れる女の泣き寝入りのような吐息だけが、夜の真珠になって畳の上で弾けた。
翌日は、朝のうちに少し曇った。士郎は由佳の家から一度自宅へ戻り、着替えを済ませて庭の草花へ水をやった。垣根の葉は、夕立を待つ前の湿度でひどく重たげに垂れていた。立葵の花が、首を傾けて土の上に短い影を落としている。
「おじいちゃん、朝ごはんできたよ」
向こうの庭から真綾の声が飛んできた。士郎が顔を上げると、夏の朝の半透明な光を受けた幼い女の子が、片手に小さな菜箸を握って、もう片方の手を口の横に添えている。声の高さが、昨日の疲れをきれいに洗い流した子どもらしい柔らかさで、士郎の胸をまっすぐ射抜いた。
「今、行きます」
士郎は手に着いた土を洗い、作業着の裾を払ってから由佳家の勝手口へ向かった。台所では、湯気の立つ鍋の横に立った由佳が、しゃもじを手に肩越しで彼を迎える。昨夜の深い交わりを、赤味をおびた皮膚の下に隠しているのか、その頬は朝の光でむしろ清潔に透き通って見えた。味噌汁の匂い、炭火で焼いた魚の油の匂い、小さな台所に満ちた朝の匂い。それらが、士郎の老いた胸にしみ入る。
「おはようございます。今日は少し冷えたから、お味噌を濃いめにしました。真綾が、士郎さんのお茶碗も並べるって、朝から大張り切りです」
「おはよう。おじいちゃん、今日ね、まあやがさんびきの金魚をじょうずにすくえたよ」
真綾が口をとがらせ、箸置きを三つ、士郎の前へきちんと並べ直した。その指は小さく、爪の先まで昨日の日差しで薄い桜貝色に染まっている。食卓の向かいには、士郎の茶碗、真綾の小さな箸、由佳の白い味噌汁椀が、まるで何年も前からこの茶の間に並んでいたかのように、自然な一体感を持って置かれていた。
士郎は由佳の胸元を一瞬だけ見つめ、昨晩の乳房の柔らかさを掌の記憶として思い起こしながら、湯気の立つ味噌汁をひと口含んだ。油揚げと野菜の甘い汁が、舌から喉へ流れ落ち、腹の奥でほわりと熱を広げる。真綾が笑い、由佳が笑い、外では雲間を出た光が庭の土を明るく照らし始めていた。老いて、ひとりで、静かに死んでいくと思っていた自分が、こうして湯気のむこうの家族の輪の中に座っている。士郎は箸を握り直し、由佳のつくった卵焼きへ遠慮がちに手を伸ばした。からりと揚げた端を噛むと、甘い出汁の香りが鼻へ抜けて、彼の目尻をほんの少し潤ませた。
「あれ、おじいちゃん、なみだ出てる? からかった?」
真綾が首を傾げ、士郎の顔を下から覗き込んだ。士郎は笑いながら、目をこする真似をして言った。
「ああ、湯気が目に沁みただけですよ。真綾ちゃんの金魚すくい、今度見せてくださいね」
真綾が大きく頷き、由佳が柔らかな視線で彼女の髪を撫でる。薄い湯気と、幼い笑い声と、隣家の朝の匂い。士郎の胸は、若い情事の熱とは違う、もっと深くて静かな水底の光で満たされていた。終わりは、どこにも影を落としていなかった。
登場人物
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板野士郎 いたの しろう男性 ・ 62
外見: 短く撫でつけた白交じりの黒髪、落ち着いた茶色の瞳、山登りで引き締まった痩せ型の体躯、身長は170センチほど。服装: 休日はよれにくい綿の開襟シャツに作業用チノパン、庭仕事では腕抜きと草履。真面目で生真面目だが自己卑下しがちな性分。
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谷上由佳 やがみ ゆか女性 ・ 35
外見: 首まわりにかかる黒髪のゆるい一つ結び、濡れると艶めく黒目、小ぶりだが張りのある乳房、ホットパンツからむっちり伸びる太もも、身長は158センチほど。服装: 家では薄いTシャツに短いホットパンツ、勤務では淡い色の看護師ユニフォーム。気丈でいて夜は湿った寂しさを抱える性分。
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真綾 まあや女性 ・ 6
外見: 肩先でふんわり跳ねる黒髪、大きな黒い瞳、まだ幼い平板な肢体、つるりとした肌、身長は110センチほど。服装: 保育園のスモックや半袖のワンピース、家では水玉模様のパジャマや水着。父親を知らず、感情をまっすぐぶつける性分。





