第2章: 浴室の隙間、覗く罪悪感

第2章: 浴室の隙間、覗く罪悪感
夜の帳が降り、一日の喧騒が微かな寝息に変わる時間だった。
母、恵子が台所で食器を洗う軽やかな音が、リビングの薄暗がりに響いている。
カラン、コロン、と水が跳ねる音。
剛はソファに膝を抱え、テレビのつけっぱなしの画面が放つ無意味な光をぼんやりと眺めていた。
昼間の美羽との戯れ、汗ばんだ肌からふわりと立ち上った甘いシャンプーの香り、そして無邪気な笑い声。
それらが剛の頭の中で何度も再生され、胸の奥でじわじわと疼くような違和感となっていた。
それはもはや戸惑いや劣等感だけでは収まらない、粘つくような欲望の予感だった。
「美羽、お風呂よ。入ったらすぐ寝なさいよね。明日も早いんだから」
恵子の優しい声が廊下を伝わってくる。
その声を合図に、剛の心臓が不意に強く跳ねた。
お風呂。
あの子が、今、裸になる。
その考えが頭に浮かんだ瞬間、剛は自分でも驚くほどの熱が顔にこみ上げてくるのを感じた。
--ダメだ、そんなこと考えてたらどうしようもない。
剛は必死にテレビの画面に視線を向けようとしたが、耳は勝手に浴室の方向を探してしまった。
ガチャり、と扉が閉まる音。
続いて、シャワーを開くシャーという水音。
その音は、剛の理性を少しずつ削り取る刃物のように鋭かった。
どうしよう、どうしよう、と頭の中で叫ぶ。
でも、体はもう動き始めていた。
ソファからそっと立ち上がり、裸足で畳の上を歩く。
冷たい感触が足裏を伝ってくる。
リビングと廊下の境目で、剛は息を殺した。
母の気配は台所から離れていない。
大丈夫だ、まだ大丈夫。
そのように自分に言い聞かせながら、彼は猫のように、音を立てずに浴室へと近づいていく。
廊下の突き当たり、浴室の隣にあるトイレのドアが目に入る。
そのドアの鍵は、壊れていていつからか開けっぱなしになっている。
剛の心臓は喉までせり上がってきた。
浴室のドアは、完全には閉まっていなかった。
上と下に、わずかな隙間ができている。
湯気が、その隙間から白くもくもくと漏れ出していた。
甘い石鹸の匂いと、美羽の体から発せられるであろうミルクのような匂いが混ざり合い、剛の鼻腔を刺激する。
彼はゆっくりと、その隙間に目を近づけた。
最初は何も見えない。
ただ、湯気のカーテンだけが揺れている。
でも、諦められない。
彼はさらに膝を折り、床に匍匐するようにして、下の隙間から中を覗き込んだ。
そこに、天国か地獄か分からない光景が広がっていた。
湯気に霞みながら、小さな裸体が浮かび上がっている。
美羽だった。
彼女は長い髪を手ぐしでとかしながら、湯船に浸かっている。
艶やかな黒髪が水滴を濡らして、まだ幼い背中の曲線を伝い、すべり落ちていく軌跡が光っている。
その背中は、思春期を迎えたばかりの剛には信じられないほど滑らかで、無防備そのものだった。
視線は、彼女の横向きになった体をなぞる。
まだ膨らみかけに過ぎない、小さな胸の丘。
その先端は、淡いピンク色で、湯気に温められて少し硬くなっているように見えた。
そして、視線がさらに下へ行ったとき、剛の呼吸は完全に止まった。
湯船から出た、ぷっくりとしたお尻。
その形は、完璧なリンゴのようだった。
そして、彼女が足を組むように体を動かした瞬間、その間から、剛が最も見てはいけないものが、無防備に姿を現した。
幼さを残したままの、閉じられた秘部。
少し膨らんだ陰唇は、ぷっくりとしていて、中央の割れ目はほんの少しだけ開き、内側の淡い色が覗いていた。
その光景は、一瞬で剛の脳に焼き付いた。
忘れられない、消せない画像として。
罪悪感と背徳的な興奮が、頭の中で激しく衝突し、火花を散らせた。
「ん〜…お湯、気持ちいいぃ…」
中から、美羽の満足げなつぶやきが漏れてきた。
その声を聞いた瞬間、剛はびくっと体を震わせた。
バレた、と思った。
でも、美羽は誰もいないと信じきっているのだろう。
その無垢な態度が、剛の興奮にさらに油を注した。
彼はもう我慢できなかった。
この場所にいられない。
剛はそっと後ずさり、震える足でトイレに駆け込んだ。
カチャリ、と鍵をかける音が、彼の逃走の合図だった。
トイレの狭い空間に閉じ込められると、剛は壁に背をもたれて、荒い息を繰り返した。
頭の中には、先ほどの光景がループ再生されている。
美羽の小さな胸、ぷっくりとしたお尻、そして、あの無防備なあそこ。
あのぬくもり、あの匂い、あの色を、もっと近くで、もっとよく知りたい。
その渇望が、剛の体中を駆け巡った。
彼はもう、理性で自分を律することなどできなかった。
ぐっと、息を呑み、剛は自分のショートパンツのゴムに手をかけた。
硬く熱くなっている自分の性器に指が触れた瞬間、びりびりと快感が電流のように走る。
彼はパンツとズボンを一気に膝まで下ろし、勃起したものをむき出しにした。
そして、覗き見た光景を思い浮かべながら、ゆっくりと手で握りしめた。
あの柔らかそうな肌、あの温かそうな湯気。
剛の想像は暴走し、彼は美羽の体を舐め回している自分を思い描いた。
あの小さな胸を、あのぷっくりとしたお尻を、そして、あの秘部を。
「んっ…くぅ…」
押し殺した声が、狭いトイレに響く。
手の動きが速くなる。
ずぶずぶと、ねっとりとした熱に指先が沈んでいくような感覚。
くちゅっ、と淫らな音が立ち、それは剛の耳には、美羽の秘部を弄る音のように聞こえた。
頭の中が真っ白になり始める。
美羽の顔、美羽の笑顔、そして、あの無垢な裸体。
すべてが混ざり合い、一つの塊となって剛の意識を飲み込んでいく。
はぁん、っと、もう我慢できない。
剛は、もう一度、浴室のドアの隙間に目をやった。
もう湯気は薄れていて、美羽が体を洗う音が聞こえる。
その想像だけで、剛の限界は来ていた。
彼は目を閉じ、美羽の名前を心の中で叫んだ。
そして、熱い濁流が手のひらに飛び散った。
ぴちゃっ、という生々しい音と共に、粘つく液体が彼の手と床を汚していく。
何度も何度も、痙攣するように快感が襲いかかる。
その頂点で、剛は完全に力を抜き、壁にずり落ちた。
トイレの中は、射精したものの生臭い匂いで満たされていた。
罪悪感が、ゆっくりと意識に戻ってくる。
でも、それはもはや後悔ではなかった。
ただ、あの光景をもう一度見たい、あの身体をもう一度触りたい、という純粋で、汚れた渇望だけが残っていた。
剛は、汚れた手で汚れた自分を見つめていた。
夏の夜は、まだ始まったばかりだった。
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