第3章: 見てしまった「大きいもの」と、晒された小さな胸

第3章: 見てしまった「大きいもの」と、晒された小さな胸
隣のロッカーで、金属が擦れるガチャリという乾いた音が響き、小さな男の子、悠くんの父親に話しかける声が跳ね返ってきた。
慈は、息を殺して固まっていた。
指先がロッカーの冷たい鉄板にひやりと触れている感覚だけが、これが現実だと教えてくれる。
男の体臭、汗と消毒液、そして湿った石鹸の匂いが粘つくように混ざり合い、この空間特有の、どぶ臭さと清潔さが入り混じった匂いが慈の鼻孔を刺激し、頭をふわふわとさせた。
お父さん、鈴木さんがゆっくりと上着のTシャツを脱ぎ始める。
見ないで、見ちゃダメ、そう心の中で叫んでも、慈の視線は磁石に吸い寄せられるように、その男の肉体にくっついて離れなかった。
年季の入った、でもまだ若々しい弾力を保つ筋肉の隆起。
胸元に薄く、しかし濃く広がる黒い毛。
慈は無意識に、自分の胸を押さえた。
そこには、まだ何もない。
ただの、平らで無防備な肌だけ。
それなのに、鈴木さんの身体は、慈の知らない世界、大人の男の象徴そのものだった。
次に、彼はベルトのバックルに手をかけた。
カチン、と鋭い音がして、ジーンズのボタンが外れる。
慈の心臓が喉までせり上がってくるのがわかった。
息が詰まる。
ズボンが下ろされる瞬間、慈の目は見開かれたまま、ぎゅっと固く閉じてしまった。
そこにあったのは、慈の幼い想像を遥かに凌駕する、あまりに巨大で、生々しい、異物だった。
うっすらと黒い毛に覆われた太い根元から、長く、脈動するようにしてそびえ立つ、完全に勃起したペニス。
先端は真っ赤に充血し、濡れた光を放っているかのように、艶めかしく光っていた。
それは、幼い頃、近所のお兄ちゃんに無理やり握らされた、あの小さく硬いものとは、全くの別物だった。
これは、獣だ。
慈の口から、思わず、息も混じったかすかな声が漏れた。
「……大っきい……」
その声は、慈自身にも驚くほど、無防備で、純粋な驚きに満ちていた。
隣で動きを止めていた鈴木さんが、ゆっくりと、こちらに顔を向けた。
慈は全身の血が一気にひき、顔面から真っ白になるのを感じた。
バレた。
女の子だってバレた。
変態の子だってバレた。
逃げなきゃ。
でも、足は鉛のように重く、地面に根付いて動かない。
その時、鈴木さんの口元が、ふわりと、優しく緩んだ。
怒りの表情でも、困った顔でもなく、なんと、温かい、笑みだった。
「あはは、そうだよ。お前も大きくなったら、こうなるからな」
にっこり、と彼は笑った。
その声は、慈が女の子だと全く気づいていない、完全に「男の子の同類」として話しかけていることを示していた。
安堵の熱が、慈の全身を駆け巡った。
でも、同時に、もっと深く、底知れない羞恥がこみ上げてくる。
自分の一番恥ずかしい秘密を、自分の一番恥ずかしい部分を見てしまった男に、全く気づかれずに、男として扱われている。
この状況の、あまりに歪んだ、甘やかな残酷さに、慈の秘部がじゅわりと濡れた熱を帯びた。
小さなアソコが、じゅくじゅくと音を立てて疼き始めるのがわかった。
鈴木さんは何気なく、息子の悠くんに水着を渡し始めている。
慈は、自分のTシャツの裾をぎゅっと握りしめた。
もう、ここで引き下がることはできない。
男の子として、この空間に最後まで居続ける。
そのためには、このTシャツを脱ぐしかない。
男の子は、プールでは上半身に何も着けない。
もし、このままTシャツを着ていたら、かえって不自然だ。
目立つ。
バレる。
そう思った瞬間、恐怖がスリル満ちた快感に変わっていくのがわかった。
慈は、ぐっと唇を噛みしめ、決心した。
ゆっくりと、彼女はTシャツの裾を掴み、頭からかぶり上げる動作に入った。
綿の生地が背中と胸の敏感な肌をなぞり、髪がごそごそとこすれる感触。
そして、頭から布が抜けた瞬間、脱衣所のじっとりと湿った空気が、慈の裸の上半身に直接ぶつかった。
今まで、家族以外に、誰にも見せたことのない、まだ膨らみのない、平らな胸。
その中央に、恐怖と興奮でカチカチに固くなってしまった、二つの小さな乳首が、男たちの濃密な空気に晒された。
乳首は、小さなぶどうのように硬く立ち、冷たい空気に触れるたびに、びくん、と震える。
慈は、自分の胸が、まるで誰かに熱く見られているかのように、火照っていくのを感じた。
隣の鈴木さんは、悠くんの水着の調整をしていて、こっちを見ていない。
他の男たちも、誰も慈の小さな胸など気にしていない。
それなのに、慈には、この空間にいる全ての男の視線が、自分の固くなった乳首に針のように突き刺さっているように感じられた。
床に落ちた白いTシャツが、捨てられた「小坂慈」という過去のようだった。
慈は、紺色の海水パンツ一枚の、胸の平らな男の子になっていた。
でも、その水着の下では、女の子の証が、熱く、濡れて、疼き続けていた。
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