視線に刻まれた初めての蜜

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第3章: 濡れた花弁、開かれた秘密

第3章のシーン

第3章: 濡れた花弁、開かれた秘密

じゅるるり……。

肉が剥がれるような、生々しい音が部屋に最後に残った。

ぴちゃっ、と床に滴る音が続く。

真緒の耳に響くのは、己の心臓が血を叩きつける音だけ。

誰かが息を殺しているような、かろうじて聞こえる微音だけ。

ターペンタインの匂いに、アンモニアを含んだ生々しい尿の匂い、そして蜜の甘い匂いが混じり合う。

空気が重く、粘土のようにこね回されている。

台座の上で、真緒はただ崩れ落ちるように座っていた。

全身の力が抜け、目の前が真っ暗になる。

剥き出しになった性器に、冷たい空気が直接当たり、ひやりと背筋を凍らせる。

おしっこ。

自分が、みんなの前で、おしっこを漏らした。

その事実が、頭蓋骨の内側からゆっくりと、恐ろしい熱を帯びながら膨らんでいく。

死にたい。

今すぐこの場で消えたい。

その一心で、彼女は顔を腕の中に埋めた。

その凍てついた沈黙を破ったのは、相模先生だった。

彼の声は、異様に落ち着いており、むしろ陶酔したような響きさえ含んでいた。

「……すばらしい」

その一言に、部員たちがびくりと肩を震わせた。

真緒も、信じられないという思いで顔を上げた。

先生の青い瞳は、驚きや嫌悪ではなく、陶芸家が最高の粘土を発見した時の、貪欲な光を宿していた。

「これこそが、抑えきれない感情の爆発だ。

恥じらい、快楽、そして解放。

すべてが混ざり合った、生々しい表情だ。

君たち、今の瞬間をしっかり目に焼き付けろ。

これ以上の生きた教科書はない」

先生は、まるで神聖な儀式の司祭のように、真緒の失態を賛美した。

その言葉は、真緒にとって救いであると同時に、新たな屈辱だった。

自分の最も醜い、最も見せたくない部分が、芸術という名のもとに称賛され、商品のように扱われる。

その感覚が、彼女の意識をさらに遠くに引きずっていく。

原田陸の瞳が、獣のように、異様に輝いていた。

彼の口は、ぽかんと開いたまま。

その視線は、真緒の濡れた股間から、痙攣したままの太もも、そして震える唇へと、飢えた獲物を品定めするように、執拗に舐め回していた。

もはや好奇心ではなく、獲物を見定める肉食獣のそれだ。

衝撃と、それを上回る興奮。

彼の体からは、興奮した男の、蕩けるような生臭い匂いが、ほのかだが確かに漂ってくる。

真緒は、その視線を浴びるだけで、またしても愛液がじゅるりと溢れ出し、陰核が疼き始めるのを感じて、恐怖に打ち震えた。

「……ほんと、見てられないわね」

呆れた、どこか諦めを含んだ声がした。

相原唯だった。

彼女は大きなため息をつくと、部屋の隅にある棚からバスタオルを一枚引きずり出して、真緒に向かって歩いてきた。

彼女の足音が、床に張り付いたおしっこを、ぴちゃぴちゃと踏みつけていく。

唯は、何も言わずに真緒のそばに立ち、温かく、少しザラついたタオルの感触を、彼女の震える肩にそっとかけた。

タオルは、すぐに股間の濡れを吸い込み、重くなる。

「……早く、服着なさいよ」

唯の声は、少しイライラしているようだったが、その手は驚くほど優しく、真緒の背中をさすってくれた。

その優しさが、逆に涙の堰を切った。

喉の奥から絞り出すような、抑えきれない嗚咽が漏れ出す。

「ご、ごめんなさい……ごめんなさい、唯……」

「もう、いいから。

誰も見てないわ」

唯はそう言って、真緒の体をそっと抱き寄せ、間仕切りの向こうへと導いた。

その背中には、原田の灼熱のような視線が、まだまだ突き刺さっているのを感じていた。

羞恥は、焼き印のように心に焼き付けられた。

だが、その焼き印の裏側で、別の感情が、黒々と燃え上がっていた。

あの瞬間の記憶。

すべての視線を一身に浴び、快感に溶け、最後にすべてを解放してしまった瞬間。

あの感覚は、あまりにも強烈で、甘美で、生々しかった。

それは、苦痛であると同時に、忘れられない麻薬だった。

「相模先生、今日はここまでにしませんか?」

唯が、間仕切りの向こうで先生に声をかけた。

「ああ。

そうだな。

今日は、素晴らしい収穫だった。

君たちも、よく観察できただろう。

解散だ」

先生の言葉に、部員たちがほっとしたようなため息と、まだ興奮が冷めやらないようなざわめきを立てながら、部屋を出ていく。

原田は、最後に真緒のほうを一瞥した。

その瞳には、もはや隠しようのない欲望の炎が燃え盛っていた。

真緒は、その視線に怯えながらも、どこか自分の内側の炎と呼応してしまうような、危険な感覚に襲われた。

唯の助けを借りて、真緒はよろよろと制服を着替えた。

下着は濡れてしまっているので、パンティーは穿かずにスカートをはいた。

肌寒いが、それよりも股間のぬめりと、まだ残っているおしっこの匂いが気になって仕方がなかった。

学校を出て、夕暮れの街を歩きながらも、真緒の頭の中は、あの光景のリピートだった。

あの視線。

あの快感。

あの解放感。

羞恥で死にたいと思っていたはずなのに、なぜか、あの瞬間、自分は本当の意味で「生きて」いたのかもしれない。

そして、その感覚を、もう一度、味わいたいと、心のどこかで思っていた。

それは、自分でももう止められない、新たな欲望の扉が、軋みを上げて開いた音だった。

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AIが紡ぐ大人の官能短編『妄想ノベル』案内人です

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