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専業主婦・結子が陽気な夫に隠れて素人AVの面接で全裸になり、浣腸とアナル撮影で十万円を手にするまで

不倫/浮気 / 人妻/主婦 全6章 約62分で読了(30,951字) 2026年9月30日

あらすじ

陽気な夫との穏やかな食卓の裏で、結子は満たされない身体を持て余していた。夫が寝息を立てる隣、彼女は幾人もの男にモノのように扱われる妄想を抱く。ある昼、夫に隠れて向かったAV面接で、服を脱ぐよう命じられた瞬間から、日常は静かに裏返っていく。白い肌と浣腸液の対比が生々しい、背徳の記録。

第1章 寝室の寝息と昼の面接室

第1章のシーン

第1章: 寝室の寝息と昼の面接室

目を開けても、天井の白い漆喰がただぼんやりと浮かんでいるだけだった。網膜に張り付いた暗さに慣れた視界が、シーリングライトの丸い影を薄く縁取っている。隣からは、直人の寝息が聞こえていた。すう、すう、と一定の間隔で抜けていく気配は、驚くほど陽気で、まるで昼間の彼がそのまま眠りに移ったみたいだった。私は掛け布団の端を胸の上まで引き上げ、汗ばんだ太腿をそっと擦り合わせる。まだ身体の芯に、さっきの数分間が生ぬるく残っていた。直人が小さく果てて、汗を拭いて、いつものように背を向けて眠るまで、本当にあっという間だった。三分。それだけあれば十分だった。

私の中には何も積もらなくて、ただ浅い水たまりがひっそりと揺れているだけ。私は目を閉じて、もう一度まぶたの裏に夫の小さな器官を思い浮かべる。親指と人差し指で包み込めるくらいの頼りない質量。それが私の粘膜を上滑りして、すぐに弛緩し、ぬるい液をわずかに残して離れていく。私の身体はいつも、そこから置き去りにされる。

天井を見上げたまま、指先をそっと自分の下着の中へ這わせた。コットンの布地は汗でしっとりと湿っていて、指の腹が食い込むたびに体温が染み返ってくる。割れ目の入り口に触れると、そこはまだ生温かく、期待を知らないかのように狭く閉じていた。けれど、指先で上から下へゆっくりなぞると、すぐに粘つく液が糸を引いて、私の指に絡みついてくる。その感触すら、これまで何度も繰り返してきた夜の続きだった。直人の寝息は相変わらず陽気で、一定で、私の指の動きに気づく気配もない。

私はつるりとした肉襞を二本の指で押し開き、中の浅い場所をゆっくりと撫でた。ぬぷ、と押し込まれる音が、掛け布団に吸い込まれていく。私の頭の中には、別の光景が広がっていた。複数の男の人に囲まれ、身体の向きを強引に変えられ、口と前と後ろの穴を順番に使われる。はしたない言葉で呼ばれて、肌を叩かれ、お尻を突き出したまま次の男を待たされる。私はモノ。ただの道具。その想像の中で、私の息は細く浅く、しかし確かに熱を帯びていく。

指先に、私の一番柔らかいところが吸い付くように反応する。押し込むたびに、もう一本、内側の襞が求めてくる。下着の中で指を曲げると、夫とは比べものにならないほど深い場所に、自分の指の関節が当たるのがわかった。とくん、とくん、と脈が下腹に響いて、耳の奥で寝息とは別の鼓動がかさぶたのように張り付く。

直人は時々、寝返りを打つ。そのたびに私は指を止め、息を詰め、布団の中で石のように硬直する。何も気づかれない。それでも、数秒の罪悪感が背骨を這って、うなじの産毛が逆立つ。そうしてまた、男たちの手が私の腰を掴む妄想に戻っていく。音を立ててはいけない。声を出してはいけない。私は唇の内側を噛みしめ、太腿を強く閉じたまま、人差し指と中指で狭い襞を往復した。きゅっと締まる。けれど、決して満ち足りることのない場所。濡れるほどに、渇くような感覚が骨盤の奥に沈んでいった。

結局、その夜も私は中途半端な高まりを指先に残したまま眠りについた。目を覚ますと、カーテンの隙間から六月の日差しが床に長い光の帯を作っていた。隣は空っぽで、リビングのほうから直人の弾んだ声と、トースターがパンを焼き上げるごとく小さな金属音が響いてくる。私は寝汗で張り付いた下着を脱ぎ、シャワーを浴びると、肌の上を滑る水がやけに敏感なしびれを洗い流してくれた。それでも、太腿の内側には昨夜の指の形が残っている気がして、バスタオルで強く押さえたのは二度だった。

脱衣所の鏡に映った私は、肌が白く、首筋から胸元にかけて透明感があった。肩甲骨のあたりまで伸びた黒髪が濡れて貼り付き、焦げ茶の瞳が少し潤んでいる。私はこの顔が好きではなかった。どこか物足りない女の顔。何かを待っているのに、待つ相手を間違えている顔に見えた。

キッチンに立つと、直人は上機嫌で出勤していった。ネクタイを締め、薄くなった生え際を指で隠すように前髪を撫でつけ、私に昨夜の失敗談を笑い飛ばしてみせる。私はエプロンの紐を結び直しながら、朝食の皿を流しへ運び、背中越しに「いってらっしゃい」と言った。声が震えなかったのは、私の小さな誇りだった。玄関の扉が閉まると、急に部屋の中の空気が弛緩して、私は深く息を吐いた。洗濯機を回して、ベランダへ出る。六月の空気は生温く、隣のマンションの壁に反響した蝉の前触れみたいな空気が肌にまとわりついた。

白い下着を物干し竿に吊るす指先は、朝の光の下で何の不思議もない主婦の手だった。けれど、その手が昨夜、自分の割れ目をまさぐり、男たちの道具にされる自分の姿を想像していた。思い出すと、太腿の付け根がまた脈を打つ。私は唇を結んだ。

それは数日前の深夜、直人が眠ったあとにパソコンの画面を見ながら、ほとんど衝動のように応募した素人ものAV制作プロジェクトだった。名前を打ち込み、写真を添付し、簡潔な経歴を送信した。おそらく誰にも見つからず、採用もされないと思っていた。けれど、昨日になって返信が来て、今日の午後が面接だという。私は洗濯が終わらないうちに、白いリネンワンピースの匂いを確かめた。柔軟剤の控えめな香りが鼻先をくすぐる。それを身につけて、電車に乗り、知らないビルへ向かう。それだけで、のどの奥が細くなる。鏡の前で髪を一つにまとめ、薄化粧をして、バッグを持った。鍵を回す音。扉の向こうに、私のいない昼下がりのマンションが静かに取り残された。

西日を遮るようにひしめく雑居ビルの四階。エレベーターを降りると、廊下に薄く消毒液と埃の混ざったにおいが漂っていて、壁紙は所々破けていた。受付らしきカウンターに若い女の人が座っていて、私が名前を告げると、無表情で奥へ通してくれた。面接室は狭かった。窓がなく、蛍光灯が白々と照らす部屋の真ん中に、白い壁に囲まれた殺風景な空間があった。壁際の小さな台の上に、透明なビニールに包まれた肉色のディルドーと、小型のカメラが置かれている。私は一瞬、心臓を掴まれたように立ち止まった。

面接官は、その奥の机に向かって椅子に座っている。黒いVネックセーターにチャコールのスラックス、オールバックにした黒髪に白髪が混じっている。細い銀縁眼鏡の奥の黒い瞳は、私の顔を短くなぞってから手元の書類へ戻った。浮世離れした冷たい雰囲気と、長い指。骨張っていて、白く、皮膚が薄そうだった。

私は面接官に促されるまま、背の低い折りたたみ椅子に浅く腰を下ろした。太腿の裏に、ひんやりとした合皮の冷たさが食い込む。心臓の音は思ったより大きくて、喉の奥で鳴っている。膝の上に置いた手の指を組み、自分の親指の白さがやけに目についた。部屋は冷房で冷えていて、露出した二の腕の産毛がすうっと逆立つ。私は自分の身体が震えていることに、そのとき初めて気づいた。爪先から首筋まで、小さな震えがさざ波のように駆け抜ける。面接官は書類から目を離さず、低く抑揚のない声で問いかけた。

「では、確認から始めます。谷沢結子さんで間違いないですね。二十九歳、専業主婦。ご主人と二人暮らし」

「はい。おっしゃる通りです」

声は思ったより落ち着いていた。私はそのことに少しだけ安堵する。

「結婚前を含めて、男性経験は三人。それで、当時は普通のセックスだったと」

「……はい」

私は一度、膝の上の指に力を込めた。過去の男の数を、見知らぬ男の前で数えられるのは、まるで自分の下着の枚数を数えられるような、奇妙な恥ずかしさがあった。面接官は鉛筆を指先で弄びながら、私の言葉の終わりを待っている。部屋に響くのはエアコンのぶうんという低い音だけだった。私は顔を上げられないまま、壁際のディルドーへ一瞬視線を流した。あれが、これから私に何をさせるのか。考えただけで、腹の奥の重さが増す。面接官の声がまた、空気を割った。

「この仕事への応募理由を教えてもらえますか」

私は、唇を開きかけてやめた。言葉が出てこなかった。そんな問いに、正しい答えを縫うための糸が、私の喉にはまったく引っかかっていない。部屋の白い壁が、蛍光灯の下でやけに明るくて、目が痛い。私は息をゆっくり吸い込み、胸の奥に熱っぽい塊を抱えたまま、口にした。

「今の自分に……もっと別の自分がいるような気がしていました」

それは準備していた答えではなかった。まるで、内側から誰かが勝手に言わせたみたいだった。面接官は、私の答えを聞くと、初めて小さく頬を緩めた。笑みではなく、確認するような、それでいてすべてを見透かすような、そんな薄い表情だった。

「なるほど。では、少しずつお話を聞かせてください」

彼は背もたれに寄りかかり、書類を机の上に置いた。長い指が重なり、私はその白い関節をぼんやりと見つめる。空調の風が私のリネンの裾をかすかに揺らして、太腿の裏を冷やした。私はぎゅっと両膝をつける。汗ばんだ脚と脚の間で、下着が食い込んでくる。そのたびに、自分がもう後戻りできない場所に座っているのだ、という感覚が、腹の下からじわじわと這い上がってくるのだった。

第2章 全裸の誓約とディルドー

第2章のシーン

第2章: 全裸の誓約とディルドー

面接官の薄い笑みが、冷房の効いた部屋の空気に溶けるように残っていた。銀縁眼鏡の奥の黒い瞳が、結子の膝の震えを見逃さない。長い指が書類を一枚めくると、紙の擦れる音がやけに大きく耳へ届いた。

「では、服を脱いでください」

低く抑揚のない声が、部屋の隅に置かれたディルドーと同じくらい無機質に響いた。結子は一瞬息を止め、それからゆっくりと腰を浮かせた。リネンワンピースの前ボタンに指をかける。第一ボタンを外すと、鎖骨のあたりに冷気が這い寄るのを感じた。第二、第三と指を進めるたび、布地の隙間から自分の肌が白く覗いていく。ワンピースを肩から滑り落とすと、下に着ていたキャミソールの白い肩紐が露わになった。

面接官は椅子に背をもたせかけたまま、黒いVネックセーターの袖口から覗く手を組んだ。結子を急かすでもなく、かといって視線を外すでもなく、ただ観察していた。結子はキャミソールの肩紐に手をかけた。ひやりとした空気が脇腹をなぞる。薄い布地を頭から抜くと、白いコットンのブラジャーとショーツだけが身体に残った。腕に鳥肌が立つ。冷房のせいだけではない。乳首が下着の内側で硬く尖り始めているのが、自分でもはっきりとわかった。

「全部です」

面接官の声は相変わらず平坦で、それがかえって結子の羞恥を深くした。背中に手を回してブラジャーのホックを外す。肩紐が腕を伝って落ち、乳房が重さを取り戻すように揺れた。白い肌に淡い桃色の乳輪が浮かぶ。結子は一瞬、面接官の眼鏡の奥にちらりと光るものを見た気がした。指をショーツのゴムにかけ、腰を浮かせて膝まで下ろす。太腿の内側に、汗なのか別のものかわからない湿り気がすでに滲んでいた。片脚ずつ抜き去り、丸めた白い綿の衣類を椅子の端に置く。冷気が剥き出しの臀部と下腹部を舐めるように流れた。

「そのまま立って。両手は体の横に」

結子は言われるままに立ち尽くした。全裸の自分が、雑居ビルの一室で見知らぬ男の視線に晒されている。その事実が下腹の奥を重く熱くさせ、耻骨のあたりがじわりと疼くのを感じた。面接官の視線が、喉から鎖骨、胸のふくらみを経て、へその窪み、下腹部の薄い産毛のあたりを順に辿っていく。無音の視線が肌の上を這うたび、触れられていないのに撫でられるような錯覚が走った。

「胸を自分で下から支えて」

命令は短い。結子は両手を胸の下にあてがい、白い乳房をゆるやかに持ち上げた。指の隙間から柔肉がこぼれる。自分の手のひらに伝わる重みと弾力が、他人に見られているという意識によって何倍にも官能的に感じられた。面接官が小さく顎を引いた。

「なかなか見目がいい。身体つきも申し分ない」

たったそれだけの評価が、結子の胸の奥をむずがゆくくすぐった。面接官は立ち上がると、壁際に置かれたディルドーを手に取った。半透明のシリコンのそれが、蛍光灯の光を鈍く反射する。持ち帰ってきた男根を模した道具そのものの生々しさに、結子の喉がごくりと鳴った。

「これを膣に入れて、自分で気持ちよくなってみてください。様子を見せてください」

頭の芯がじんと痺れるような感覚だった。結子は差し出されたディルドーを受け取ると、その冷たくぬめる表面に指を添わせた。本物ではないとわかっていても、形状がいやに具体的で、亀頭のくびれや浮き出た筋の一本一本までが掌の感触を通して脳へ侵入してくる。面接官は再び椅子に座り、組んだ足の上で指を鳴らすでもなく待っていた。

結子は壁に背を向ける形で床に腰を下ろそうとして、しかし面接官の視線がそれを赦さない。仕方なく、部屋の真ん中で脚を肩幅に開き、膝を折って中腰の姿勢をとった。ディルドーの先端をあてがうと、閉じた陰唇がひやりとした弾力に触れて小さく開く。押し戻すような力が、ほんのわずかだけある。結子は息を吐きながら腰を沈めていった。ぬぶり、と音が立ち、粘つく抵抗のあとで異物が根本まで呑み込まれていく。膣壁がシリコンの冷たさにびくりと収縮した。

「あ……っ」

自分の声と同時に、膣の奥で何かが融け始めるのを結子は知った。濡れている。とっくに濡れていた場所へ、冷たい玩具が入ってきたことで熱さが際立ち、内側の襞がまるで別の生き物のように蠢き始める。結子は片手を床について腰を前後に揺すった。ディルドーがぬちゅぬちゅと音を立てて抜き差しされる。白い太腿に伝うものが一筋、膝の内側を這って落ちていくのを見た。視線を上げると、面接官がまぶたの細い目で結子の脚の間を凝視していた。見られている——。

その事実が、また腰を揺らす速度を上げさせた。辱められているのに、いや辱められているからこそ、結子の内壁はうねり、蜜を溢れさせた。ディルドーを抜き差しするたび、クリトリスが包皮の内側で擦れ、声を押し殺すことができなくなる。

「はっ……あぁ……だめ、見ないで……」

しかし視線は外されなかった。むしろ面接官は身体をわずかに前へ出し、組んでいた脚を組み替えた。そのわずかな仕草に、男の劣情の気配が混じっていて、結子の子宮がきゅうっと疼いた。もう片方の手を自分の胸にやる。親指と人差し指で尖った乳首を摘むと、弾けたような快感が背筋を走り、腰の動きが止まった。膣が玩具を締め付ける。奥で熱いものがふつりふつりと泡立つようだった。

「……合格です」

静かな、ほとんど吐息のような声が部屋に落ちた。結子は腰を落としたまま、肩で息をしながら面接官を見上げた。銀縁眼鏡の奥の瞳が、初めて愉しげに細められている。手に持ったままのディルドーが、自分の愛液で濡れてぬらぬらと光っていた。太腿の内側はしとどに濡れそぼち、床に滴るほどだった。

「マゾ気質ですね。あなたはよくわかります。目がそう言っている」

結子は何も答えられなかった。答えられないことが答えになっているようで、下腹がまた疼いた。面接官は立ち上がって結子に近づき、自分のスラックスの前をゆっくりくつろげた。ジッパーの下りる金属音が、静かな部屋でやけに冷たく響く。下着の中から取り出されたペニスは、勃ち上がってはいたが、結子がこれまで見てきたどの男のものよりも統制が取れていて、そのぶん残酷にも見えた。男の匂いが濃く鼻を刺した。汗と、洗剤と、尖った性臭。結子は自然と膝を床に付き、面接官の足元へにじり寄っていた。

「咥えなさい」

命令の語調はさっきと少しも変わらなかった。結子はわずかに首をかしげ、唇を開いて亀頭を迎え入れた。舌の上に乗るのは、しょっぱい体液の滲みと、血管の浮いた硬い皮膚の感触。これを咥えることが、ついさっきまでの全裸の試験の延長であるはずなのに、結子の口内は歓迎するように唾液を溢れさせた。面接官の手が結子の結い上げた黒髪に触れ、ゆるく束ねた毛先を一房引き抜く。髪が頬に落ちかかるのも構わず、結子は唇を窄めてペニスを奥へ招き入れた。咽喉の入り口を亀頭がくぐるたびに、えづきそうになるのを舌を平らにして耐える。口腔内の粘膜が熱を持ち、男の味が濃く広がった。鼻息が荒くなり、閉じた眼の裏に白い光が散る。唾液が口の端から伝い、顎を滴って床に落ちる。クチュクチュという淫らな水音が、自分が立てている音だとは信じられないほど部屋中に満ちた。

面接官の指が結子の髪を掻き毟り、腰が前へ突き出される。口蓋のくぼみを亀頭が擦り、結子は眉根を寄せながら何度もそれを迎えて送った。唇を締め、舌で裏筋をなぞり、雁首をくわえ込む。面接官の呼吸だけが徐々に乱れていくのを、結子は口の中で感じていた。それだけで胸が高鳴る。この男の肉体を自分の唇と舌が支配している時間があるのなら、それも悪くないと、頭のどこかで思った。

唐突に髪を掴まれ、引き離された。口の端に唾液が銀色の糸を引く。面接官は結子の顔を上向きにさせ、濡れた唇を見下ろした。

「撮影日は来週の水曜日。今日みたいに昼の同じ時間に来なさい。それと、撮影の前にあそこの毛を全部剃ってきてもらいます。カミソリで構いません。つるつるにしてください」

一気に日常の用件を話す声が、結子の頭の芯を冷水のように流れた。うなずく。唇の端に溜まった唾液を、舌先でちろりと舐め取った。

「できるね」

問いではなく確認だった。結子は頷き、掠れた声で「……はい」と答えた。それが今、この部屋で発した最も人間らしい声だった。床に散らばった自分の衣類を拾い上げ、下着から順に身につけていく。濡れたショーツの中心を太腿へ引き上げる刹那、生ぬるい感触が肌に貼りつくのがわかった。ワンピースのボタンを留める指はまだ小さく震えていた。面接官はすでに椅子に戻り、書類へ何事もなかったかのように目を落としている。蛍光灯の白い光が、床に落ちた結子の雫を照らしていた。

結子は「失礼します」と小さく言って面接室を出た。廊下の空気は少しだけ暖かい。歩くたびに下着が湿った肌へ擦れ、先ほどのシリコンの感触がまだ膣の内で蘇ってくるようだった。受付の前を通り過ぎ、エレベーターのボタンを押す。階数表示がゆっくりと近づいてくるのを眺めながら、結子は壁に手を突いて息を吐いた。指先にはまだディルドーの硬さが残っていた。

エレベーターの扉が開き、結子は乗り込むと鏡に映った自分の顔を見た。頬は上気し、瞳は潤んで、口元がわずかに緩んでいた。夫には見せたことのない顔だった。閉じた扉の中で、冷たい無人の箱が静かに下降していく。結子はその振動に揺られながら、来週の水曜日のことと、あそこを剃る感触を想像して、太腿の内側でまた小さく疼く場所を感じたのだった。

第3章 剃毛と夕食の言い訳

第3章のシーン

第3章: 剃毛と夕食の言い訳

エレベーターを降りてからも、内腿の濡れた感触は消えなかった。六月の陽射しがアスファルトから立ち昇る熱気に変わり、日傘を差していないことに今さら気づく。バッグの持ち手を握り直すたび、指の腹に残るシリコンのぬめりが蘇るようで、結子は歩道の隅で一度だけ目を伏せた。瞼の裏にちらつくのは、面接室の無機質な蛍光灯と、黒いセーターを着た男の長い指。あの指が、まだ身体の内側に住み着いている。

駅までの道すがら、下着の中で乾きかけた愛液が布地を硬くさせ、歩くたびに薄い肌へこすれていた。白いコットンの中心だけが黄ばみ、糊を利かせた洗濯物のようにこわばっている。電車に乗れば冷房が火照った頬を冷やしてくれたけれど、吊り革につかまる腕の内側はしっとりと汗ばみ、スカートの下ではまだ芯がずくずくと疼いていた。向かいの座席に座る若い男が、結子の膝小僧のあたりへ一瞬だけ視線を遣った気がして、太腿をきゅっと寄せる。途端に、面接官の黒い瞳が裸の下腹部をなぞっていくあの感触がぶり返し、膀胱の奥がきゅんと淫らに収縮した。私はこんな身体をしていたのか——他人に見られることで変わってしまった自分の粘膜が、薄いショーツの中でまたぬちりと音を立てる。冷房の風が汗ばんだ首筋を撫でるたび、その冷たさの奥で、自分の内側だけが煮えていることが際立った。

マンションの自室に戻ると、玄関の鍵を回す指がわずかに震えていた。誰もいない廊下の静けさが、かえって心臓の音を耳の奥で大きく鳴らす。結子は靴を脱ぎ、洗面所へ直行した。鏡に映る顔は、面接室で見た時よりさらに上気し、瞳の縁が赤みを帯びていた。口紅など最初から塗っていないのに、唇だけが熟れた果実のように潤んでいる。指先で下唇をなぞると、面接官の陰茎を咥えた時の塩辛い味が舌の根に蘇って、喉が小さく鳴った。

「……もう、帰ったんだから」

自分の声が、狭い洗面所にやけくそに響くほど冷静で、結子は苦笑した。スカートのファスナーを下ろし、濡れて重くなった白い下着を太腿から抜き取る。蛍光灯の下に晒したそれは、中心だけが濃く湿り、ヨーグルトを思わせる甘酸っぱい匂いを立ち昇らせていた。洗濯機へ放り込み、洗面台に手をつくと、自分の腹の下がまだ女の匂いに満ちていることがわかる。あの部屋で嗅いだ自分の匂いが、ここまで付いて帰ってきてしまった。

その夜、夫の直人はいつもより機嫌が良かった。食卓に並べた生姜焼きと冷奴を前に、今日は営業部の若手が大口の初契約を取ってきた話を嬉しそうに語る。薄切りの豚肉を箸でつまみながら、結子は相槌の合間を縫って、頭の中で「最近そうする女性が多いと聞いたから」という言葉だけを繰り返していた。まだ何も実行していないのに、夫の陽気な横顔を見ると胸の奥がちくりと咎めた。

「でさあ、俺も思わず立ち上がって拍手しちゃったよ。ほら、あの会議室でいつも資料投げ出す課長。今日は自分から『よくやった』って握手までしてたんだから、世の中わからないよな」

「すごいね。直人も嬉しそう」

「そりゃあ嬉しいよ。俺が教育係みたいなもんだからさ、あいつ、入社したての頃は挨拶もロクにできなかったのに」

直人は味噌汁をふうふう吹きながら、目じりのしわを深くして笑った。結子も口元をほころばせながら、大根のみそ汁を一口啜る。食卓の灯りが、鰹節の匂いと生姜の甘い香りをやわらかく包んでいた。暫くはこんな穏やかな夕餉を続けたけれど、結子の腹の底には、昼間のことで熱を持ったままの部分が横たわっている。

「来週の水曜日」という言葉が、頭の隅で何度も明滅した。撮影日。あそこを剃らなければ。つるつるに。男優たちに、見られる。カメラで、舐められ、挿れられ、犯される——。食器を流しへ運ぶ足の間で、ぬるりと蜜が溢れてくるのがわかった。エプロンの下で太腿を擦り合わせる。直人はテレビのバラエティへチャンネルを変え、大げさな擬音に合わせて腹を揺らしていた。

「結子、今日なんか変じゃない? ぼんやりしてるよ」

はっとして振り向くと、直人がソファから首だけ向けていた。日焼けした首筋と明るい茶色の瞳が、浴室のライトを背に受けて笑っている。

「変じゃないよ。ちょっと暑くて」

「だよなあ、今夜は寝苦しそうだ。クーラー入れとくか」

「うん。タイマーしておくね」

会話のわずかな沈黙の間に、心臓が大きく跳ねていた。直人はまたテレビへ視線を戻し、缶ビールを傾ける。炭酸が喉を鳴る音が、夫の無邪気さのように響いて、結子は流しに両手をついた。ごしごしとスポンジで皿を擦るけれど、指先の感覚がどこか遠い。あの面接官の声だけが、低く湿った余韻を伴って耳の裏に居座っている。

剃るなら、明日の昼がいい。夫がいない時間に、浴室で、ゆっくり丁寧に。剃刀を買いに行かなければ。シェービングジェルも。普段は脇や脚を整えるための電気シェーバーがあるけれど、あそこを「つるつる」にするなら、やはり剃刀のほうが確実だった。面接官の言葉をもう一度なぞる。「カミソリで構いません。つるつるにしてください」。あの低い声が下腹の奥を擦るたび、結子の陰唇が小さくひくつく。手元の皿を洗い終えると、エプロンのひもを解き、壁のフックへ掛けた。

翌日の昼下がり、結子は駅前のドラッグストアで女性用のカミソリと、肌に優しいと書かれたシェービングジェルを買った。レジ袋を提げて歩く足取りは、不思議なくらい軽やかだった。誰に見られているでもないのに、膨らむ胸のあたりが妙に弾む。帰宅してすぐ、浴室のドアを閉め、衣服を脱ぎ捨てる。洗面台の大きな鏡に、白い下着姿の自分が映った。まだ何も始めていないのに、太腿の付け根はすでにしっとりと汗んでいた。

湯を張った洗面器に手拭いを沈め、温めたタオルで下腹部を拭う。次に、買ってきたジェルのキャップを回し、透明な粘液を掌へ出した。メントール混じりの薬草に似た匂いが鼻をくすぐる。指先で泡立たないタイプのジェルだというのに、体温でとろりと溶けて肌の上へ広がった。陰毛の生え際へ触れると、ちりちりと冷たい。やがて、覆い尽くすように下腹部全体へ塗り込むと、黒い毛はぺたりと倒れて肌に張り付いた。

剃刀は柄が細く、女性の指でも握りやすい設計だった。軽いステンレスの重みが指先で揺れる。結子は片足を浴槽の縁に乗せ、太腿を大きく開いた。鏡に映る割れ目の、下生えの繁み。夫以外の誰にも『剃って来なさい』と命じられ、今それを自分で剃ろうとしている。その事実だけで、奥からとぷり、と愛液が湧き出してくる。剃刀の刃を、膨らみの際にゆっくり当てた。

じょり、と小さな初音。金属が皮膚の上を滑っていく。軽い振動が指先ではなく、恥骨の際を通って背骨の上を走った。黒い毛が、白い泡と一緒に刃の先へ集まっていく。剃り進めるほど、ぷっくりとした肌が顕わになっていく。元々薄い産毛のようだったけれど、恥丘の形がくっきりと浮かぶほど、生え際は濃く残っていた。結子は息を止め、こわばる手首をゆっくり動かす。じょり、じょり、とリズミカルに、糸を断つような繊細な音。刃が滑るたび、肌は白く、滑らかに、食べ頃の果実の皮が剥かれるように姿を変えていった。

「……っ、は……」

右側が済む。左側も。中心線に沿って生えていた薄い毛を、刃の先で下から掬うようにして落とす。残った剃り跡を指の腹でなぞると、ちくちくと産毛が引っかかり、そこだけ半ば濡れた感触がした。もう一度、ジェルを足して仕上げに掛かる。今度は逆剃りの要領で、なだらかな丘の上から下へ向けてゆっくりと。皮膚をぴんと張るように左手で押さえる。恥ずかしいほど白い腹の下で、真珠のような肌が照明を弾く。やわらかな曲線を残したまま、つい何十分か前まで女の証を茂らせていた場所が、今は陶器のようにまっさらな面を晒していた。

仕上げに、ぬるま湯で泡を洗い流す。手拭いで押さえるように水分を取ると、結子は洗面台の鏡へ正面から向き直った。水滴をいくつか載せた白い下腹部。肉のふくらみが、青白い蛍光灯の下でつるりと輝いている。見下ろすと、普段よりはっきりと恥丘の盛り上がりがわかった。まるで自分のものではない、精巧な彫刻の一部を見せられている心地がした。指の腹を横へ滑らせてみる。つるつる、つるつる。陶器の肌を何度も往復するたび、すぐ下の割れ目が蜜を滲ませ、入口が物欲しげにひくついた。

「……ほんとに、つるつる」

呟くと声が浴室内で反響し、他人の声のように耳へ届いた。剃ったばかりの敏感な表皮を、そっと覆うように手のひらで包む。熱い。内側から膨らんだ唇が閉じきれず、細い溝の部分だけがしとりと湿っていた。中指の腹で割れ目に沿って上下に擦ると、ぬるつく愛液が指先を濡らし、くちゅりと小さな音が立つ。尾てい骨の上を走る快感に、結子は壁へ片手を突いた。

「……撮影、まだなのに」

自分を窘める声も、半分は溶けていた。浴室のドアは閉まっている。夫はいない。ここで指を挿れても、誰にも咎められない。それが結子の背をさらに押した。中指をゆっくりと蜜口へ沈めていく。つるつるの剥きたての肌の下で、膣壁は昨日のディルドーを憶えていた。あの半透明の器具とは違う、自分の指の、くの字に曲がる節の感覚。けれど足りない。ぬちゅぬちゅと音をさせて出し入れするほど、あの面接室で与えられた「見られること」の欠片が欲しくなる。結子は鏡の中の、剃りたての部分に指を這わせたまま小さく腰をくねらせる女を見た。白い腹が薄く汗ばみ、開いた腿の奥で淫らに蠢く己の手。こんな姿、夫は知らない。

指を抜くと、とろりとした蜜が掌に糸を引いた。洗面台の水で流してから、買ってきた保湿ジェルを軽く塗る。剃った肌は予想以上に敏感で、衣類の擦れにもすぐ反応しそうだった。

夕食の支度を始める頃になっても、下着の上から触れるあのつるつるした感触が薄れなかった。いや、むしろ、布が触れるたびに「自分は毛を剃っている」という自覚が少女めかしい無防備さを呼び起こし、太腿の間をそわそわと歩かせた。ほうれん草のお浸しを絞る手にも、昨夜とは少し違う力が入っている。直人が帰ってきたら、まずあの言い訳を。どうして剃ったのか、訊かれれば。訊かれなくても、触れた時の驚きに備えて——。

玄関の鍵が回ったのは、ちょうど味噌汁を温め直した頃だった。明るい声が廊下を抜けてくる。

「ただいまー。今日も暑かったなあ」

「おかえりなさい」

エプロンで手を拭きながら出迎える。直人はネクタイを緩めながら、結子の顔を見て何かを言いかけたけれど、嗅ぎ慣れた味噌の香りに気を取られたようだった。

「夕飯なあに?」

「豚汁と、鮭の塩焼き。あと、きゅうりの酢の物」

「いいね、豚汁。汗かいたから塩分ほしかったんだよ」

夫は風呂は後にするというので、結子は冷たいお茶を出し、先に食卓を整えた。テレビではサスペンスの再放送が流れている。直人は湯飲みを片手に、今日の会議で自分が発言を噛んだ話を面白おかしく語った。結子も笑って聞く。けれど意識の半分は、自分の下腹部と、まだ何も言い出せていない言い訳へ向いていた。このまま黙っていても、夫はきっと気づかない。気づかないほうが楽だ。面接にも撮影にも行くなんて、黙っていても気づかれないような小さな変化。それでいい。それで……。

「そういえば、結子。今日なんか首のあたり日焼けしたんじゃない? 外歩いたの?」

不意に直人が箸を止めた。結子は心臓を掴まれた気がしたが、落ち着いて首へ手をやる。

「お昼に、ドラッグストアまで。日傘、忘れちゃって」

「ああ、暑かったからな。今度から気をつけなよ。帰り、余計に汗かいちまったよ」

「うん。そうする」

直人は鮭の皮を箸で剥がしながら、また職場の後輩の話へ戻っていった。よかった、あそこには気づいていない。結子は食卓の下で、浴衣でもないスカート越しに自分の陰丘を指先で探る。しないでおこうと思いながら、下腹部のまろやかな盛り上がりを布越しに押さえると、剃ったばかりの肌がむずむずと疼いた。

その夜も、夫の求めてくるままに身体を開いた。寝室を薄闇が包み、エアコンの風がかすかに唸っている。直人はいつものように小さく硬くなったものを結子にあてがい、性急に腰を揺すった。けれど、昨夜までならまだ夫の拙い動きに微かな情を覚えたのに、今夜は違った。閉じた瞼の裏で、面接官のあの冷えた指とディルドーの硬さが甦る。それだけではない。剃りたての表皮を布越しに盗み触った自分。来週の水曜日、男優三人。想像の中で、私のつるつるのそこを、男たちの大きな手がまさぐる。夫の小さな逸物が浅い場所で擦れるたび、足りない、足りない、と腹の内が焦げるようだった。

不意に、直人が腰を止めた。汗ばんだ掌が、結子の下腹へ迷いなく這いおりてくる。陽気な夫にしては珍しい、確かめるような、ためらうような指の動き。太い指先が、つるりと滑り過ぎる肌の上で何度も往復した。

「あれ? 結子、お前、ここ……なんか、いつもと違くないか」

薄闇の中で、直人の明るい茶色の瞳が丸くなっている。汗ばんだ額の下、幼い子供が新しい玩具を触っているような顔。

「なんか、つるつるじゃない? 毛、なくなってる、ような」

結子は汗ばむ胸の上に片手をやり、息を整えてから薄く笑った。

「あ、うん。あのね、最近、そうする女性が多いって聞いたの。夏だし、蒸れて痒くなるときあるでしょ。だから、思い切って」

声は思ったより落ち着いていた。しかし内腿は震え、膣奥が直人の太い指の気配にひくついている。夫は裸の下腹を、掌で確認するみたいに二度、三度と撫でた。あぐらをかいた中学生が畳に落ちた消しゴムを探るような、妙に生々しい照れもなく、ただ珍しそうに触っている。

「へえ、お前、そんなこと自分からするタイプだと思わなかったな。でもまあ、たしかに……すげえ、さらさらしてる」

「……似合わない?」

「全然。でも、なんか、若いね、こういうの。なんつうか。お前、肌白いから、よけい目立つわ」

直人の指が、剃り上げた恥丘の上で困惑するように停まる。そして、小さく笑いをひとつ漏らした。

「でも、俺ちょっとびっくりして、逆に……その、わけわかんないけど、触ってたら、またしたいかも」

照れくさそうな、どこか面映い手つきで、直人の性器はまだ半ば萎えかけていたのに、結子の下生えのない膨らみをまさぐられただけで芯と形を取り戻しはじめていた。夫は一度下腹へ鼻を寄せ、石けんと汗の混ざった肌の匂いを吸い込むと、ゆっくりと再び腰を押し当ててきた。

「毛がないだけで、こんなにくっきり見えるんだな。いや、なんか悪いことしてるみたいで興奮するな、俺」

耳元で囁く直人の声は、おそらく本心だった。結子は「いや」とも言えず、ただ夫の首に腕を回した。昼間、自分一人であそこを剃り上げた本当の理由は彼の知らない場所にそのまま在る。なのに夫の汗ばんだ腹が、つるつるの恥丘に密着するたび、まるで面接官にも、男優たちにも、この無防備な肌を晒しているような錯覚に襲われる。その一瞬に、内部でまた粘った蜜が溢れ、夫の入れ方も忘れた卑猥な快感が背骨を駆け上がった。

直人は性急にこそ動いていたが、つるつるになった感触だけはいつまでも味わうように下腹を擦り付け、小さく果ててからも手のひらで結子の陰丘を撫でていた。

「また、剃ってくれるんだろ? これ。夏の間、ずっと」

「……ん。痒くないなら、そうしよっか」

「いや、ほんと、いいな。これ、すげえいい。なんで今までやってなかったんだろ。お前、最初に言えよ、そんなことなら」

夫はすっかり上機嫌で、結子の脇腹をくすぐるように笑った。けれど、その夜の行為のあいだ、直人は結子の奥の締めつけが明らかに普段より強いことに気づく様子もなく、いつものように汗を拭いて、短い満足の吐息を残すと、背を向けて眠りに落ちた。

結子の下腹には、夫の弱々しい精液の温もりが薄く残っている。けれど膣の奥は、あのディルドーと男の視線で一度開かれた穴の不満をまだ叫んでいた。隣で寝息を刻む夫。陽気な寝顔が、眠る時だけは人の良さをいっそう濃くしている。結子は下着を直さぬまま、そっと自分の太腿を左右へ開いた。指先が、つるつるに剃り上げたばかりの丘を迷いなく下り、濡れた襞を押し開いた。

「……っ」

鼻から抜ける息を殺す。夫の寝息の波にあわせて、指だけが淫らに遊ぶ。剃毛のつるつるが、指の腹にも、近づける太腿の内側にも、剥き出しの恥丘の感覚を伝えてくる。ぬぷぬぷと音を立てて、私の指が私の中を進む。それでも迫り来るのは、昨日見上げた天井ではなく、来週の撮影スタジオの照明だった。男優たちの手。カメラのレンズ。何本もの太い陰茎。私の、夫の二倍以上はある雄を、この剥きたての狭い入口で咥え込み、奥へ導く。あられもなく喘ぐ自分の姿。太腿の間に泡立つ精液——。

最奥へ指を呑み込ませたまま、結子は腰をしなりかけた。白い手と白い腹が、暗がりでぼんやり光る。夫の寝息が、まるで赦しを与えないように一定の温かいリズムで部屋を満たしていた。やがて、張り詰めたものがはじけて、内側がぎゅうっと指を締め付ける。びゅる、というほどではなく、とろりと溢れてきた蜜が、剃った恥丘のふくらみを伝ってシーツを濡らすのを、涙のにじむ目で見ていた。隣の直人は、相変わらずの寝息だった。

撮影前日の夜、結子はもう一度だけ浴室でT字カミソリを握った。伸びかけた産毛を処理し、保湿をして、シーツに裸で横たわる。夫は今夜に限って飲み会で遅く、まだ帰らない。薄暗い寝室で手を下ろし、何度も触れてしまう。指の腹でなぞると、そこはまるで陶器のように滑らかで、自分の身体ではないような感覚がする。けれど、それこそがあの面接官の求めた身体、男優たちの前に差し出すための、無毛の恥丘。

天井は暗く、エアコンの小さなランプが青く点っていた。目を閉じても眠気は訪れず、布団の中で太腿を擦り合わせるたび、剃った表皮が下着にこすれて浅い快楽を呼ぶ。昼間、夫が触れてきた時の、あの面映い手つきと、無邪気な驚き。「なんか悪いことしてるみたいで興奮する」——夫の言葉だけが、夜の空気にこびりついて胸の奥を酸っぱくさせる。明日。明日になれば、夫を見送ってスタジオへ向かう。誓約書にサインをして、穴開きビキニを着て、あの筋肉質な男たちに……。

結子は仰向けのまま、両手で顔を覆った。掌の下で唇が半ば開き、熱い吐息がこぼれ続けていた。胸の奥は罪悪感でひりひりしているのに、腹の底は煮えた蜜でぐちぐちと音を立てている。隣の枕は、まだ戻らぬ夫の匂いをほのかに残したまま、乱れもせず待っていた。夫が帰ってきたら、なんと言おう。飲み会の話を聞いて、笑って、きっとまた、あのつるつるとした肌を触らせてしまう。そうしたら、私はまた、夫の知らない明日のために、いやらしいほど濡れてしまう。

第4章 穴開きビキニと三人の男優

第4章のシーン

第4章: 穴開きビキニと三人の男優

目を開けた瞬間、カーテンの隙間から射し込む光が昨夜とは違う色をしていた。六月の朝は早い。結子はベッドの上で一度だけ深く息を吸い、吐き出す。隣の布団はきれいに畳まれている。直人は一足先に出勤した後だった。起き抜けの胸元を冷たい空気が撫で、昨夜から続く腹の底の疼きをくっきりと浮かび上がらせる。

洗面台の鏡に映った顔は、眠れなかった割に冴えていた。むしろ、乾いた緊張が目を鋭くさせていた。下着を替え、薄手の綿のTシャツにベージュのロングスカート。外へ出るにはなんの変哲もない装い。ただし、その下には何もない。肌着を選ばなかったのは、着替えるときに自分の手が勝手に動くほうが自然に思えたからだ。

駅のホームに立つと、生ぬるい風がスカートの裾を遊ばせた。午前十時の電車は空いている。座席に浅く腰を下ろし、吊り下がる中吊り広告を眺める。文字は読めない。指先がバッグの持ち手を握り直す。口の中は乾いていた。喉の奥で、今日という日が砂のようにざらついていた。

指定された住所は、郊外の住宅街を抜けた先、小さな貸しスタジオだった。二階建てのグレーの建物。入口に表札はない。インターホンを押すと、低い声が短く応じ、解錠されたドアを引き開ける。途端、むっとした空気が顔を打った。汗と、消毒液と、薄い埃。三拍子に混ざる空気は、昨日までの家の匂いとは全く別物だった。薄暗い階段を上がると、四十代ほどの男が立っている。短い黒髪、くたびれたパーカー、首から下げた笛。あれが監督なのだろう。瞳はどこを見ているのか定まらないが、結子を上から下まで一瞥して、声を出した。

「受付で名前、書いたね。あっちの小さい部屋に資料があるから」

廊下を進む。足音がやけに大きく響く。案内された部屋には折りたたみの長机と、安っぽい化繊の椅子、そして数枚の書類が置かれていた。誓約書。細かな項目が並んでいるが、読む気にはならなかった。どうせ、今さら後戻りできない。結子は備え付けの黒いボールペンを手に取り、指定された箇所へ自分の名前を走らせた。野沢結子。あの面接室で面接官のペニスを咥えた唇が、こんなに軽やかに署名をする。ペン先の震えは、もう指には残っていなかった。

「着替えはあっち。ビキニが置いてあるから、下は全部脱いでそれを着けて」

別のドアを開けると、そこは四畳半ほどの支度部屋だった。壁一面の鏡と、硬い木のスツール。室内灯は白く、中央のローテーブルに、小さな衣装ケースが置いてある。蓋を開けると、白い布地が畳まれていた。取り出す。手にした瞬間、結子は息を呑んだ。

ビキニ、と呼べるのか。上は、乳首のあたりに穴が開いている。下も、股布の中央が縦に裂けたように切り取られていた。布地なんて、本当に申し訳程度。身につけたら、胸もあそこも丸見えになる。それどころか、布の細い縁が食い込むことで、露出が強調される。照明を受ける白い肌の面積と、隠された場所のわずかさ。そのコントラストが、自分の身体をまったく別の生き物に変えてしまうだろう。

服を脱いだ。折りたたんだスカートとシャツをスツールの上に置く。下着も外し、全裸になる。鏡に映る身体。白い肌、小さく上向いた乳房、剃り上げてまだ半日と経たない下腹の平滑さ。昨日、浴室で剃刀を滑らせた自分の指の記憶が、ぶり返すように太腿の内側をぞくぞくさせた。ビキニの下を拾い上げ、脚を通す。細いひもを腰骨の上で結ぶ。布の位置を整えるたび、くい、と鋭い刺激が恥核の際をかすめた。穴から陰唇がこぼれ出ている。この衣装は最初から、はみ出させることを前提としている。上も同じ要領で結び、肩ひもを整える。穴から露出した乳首は、硬い空気に触れてあっという間に尖った。

鏡へ正面から向き直る。白い布と白い肌の重なり合い。ただし、胸の先は桃色に色づき、足の付け根にはぱっくりと女の肉が口を開けている。剃り上げた肌の滑らかさが、いやというほど照明を弾いた。つるりと光る陰阜のふくらみ。指でなぞれば、鏡の中の女がみだらに腰をびくつかせる。

「……私、ほんとに来たんだ」

滑らかな表面を、自分の指の腹が往復する。そこにはもう、夫だけが知る女の茂みはない。面接官に命じられ、剃刀でそぎ落とし、今は他人のための肉になった場所。触れるたび、内側から新たな蜜が湧く。布の縁を伝い、太腿を濡らし始める。鼻を抜ける自分の呼吸が、部屋の静けさに混じり合う。

ノック。弾かれたように手を離す。ドアの向こうから「入るよ」と先ほどの声。結子は返事もできないまま、こくりと頷いた。入ってきた監督は、結子の姿を見ても特に表情を変えない。

「こっち、撮影するから」

促されて隣室へ入る。入口をくぐった瞬間、照明の熱が肌へ降り注いだ。床には黒いシーツ、白い背景布、据え付けのカメラが三台。三脚の影が長く伸びている。部屋の中央に、冷たい光を反射する大きなスクリーン。そして、窓際に三人の男が立っていた。

三人とも、大柄で厚い胸板。黒いタンクトップに包まれた上腕の筋肉が、呼吸のたびに盛り上がっている。一人は角刈りで、眼光だけが鋭く結子を貫いた。もう一人は顎をしゃくらせるようにして、口元を歪めている。三人目は無言のまま、腕を組みながら結子の脚を見下ろしている。視線。全身を舐めるような、品定めの目。それだけで、膣がきゅんと音を立てそうになった。

「野沢結子さん、三十二歳。よろしくお願いします」

自分でも驚くほど落ち着いた声が出た。挨拶をしたら、男たちが薄く笑う。一人が、チンポを触りながら前へ出る。短い黒髪の汗ばんだ男。結子の正面に立つと、背が高く、見上げる首が痛い。

「つるつるにしてきてくれたんだな。手、借りるぞ」

男の手が伸びてきて、ビキニの下のひもを掴んだ。くい、と持ち上げられる。縦に裂けた穴から、結子自身のぬかるみが露わになる。太い指が、剃り上げた恥丘をまさぐった。つるつる、と撫で上げる度に、剃られたばかりの肌が過敏に反応する。

「ほんとだ、きれいに剃ってる。えらいよ」

褒め言葉の形をしているのに、支配の言葉だった。男の指が、露出した陰唇の面を上下にこそぐ。くち、と小さな水音。三人の視線が、結子の開いた股間に集まる。カメラの赤いランプが点灯した。撮影が始まっている。それなのに、身体はもう逃げる素振りも見せず、ただ男の指に擦れていた。

一人が背後へ回り込み、結子の肩を掴む。温かい掌が、白い肩から首筋を滑っていく。吐息が耳へかかった。

「いい乳だよ。胸もとろけるほどやわらかい」

後ろの男が、ビキニの上から乳房を揉み上げた。布を突き破るほどに尖った乳首を、指の腹でぐるりと潰す。腕の筋肉にがっしりと抱えられ、背中から体温が迫る。前の男が口を塞いだ。舌が、返事をする間も与えずに入り込む。舌の根を舐められ、上あごをなぞられ、咥内で蠢く他人の舌に吸い付かれる。ちゅるちゅるという唾液の音が、頭の芯まで響く。

三人目が、膝をついて結子の正面に座り込んだ。

「脚、開いて。ちゃんとカメラに見せてやろうな」

低い、命令に近い声。太い手のひらが両膝を左右へ押し広げる。大股開き。黒いシーツの上に開かれた白い太腿。その中心で、穴開きビキニの切り込みから、濡れて光る陰唇が丸出しになる。カメラが眼前まで迫った。レンズの奥で、小さな赤い点が点滅している。

「これはきれいなオマンコだ。皮を剥いたみてえな、ピンクの花びらしてる」

縮こまって閉じていた大陰唇を、男の指が押し開く。ぬるりとした内側が露わになる。空気に触れた粘膜が、ひくんと震えた。剃りたての恥丘の白さと、中心の肉の赤。照明に照らされたその対比が、自分でも淫らだとわかるほど鮮烈だった。

「クリトリスも小っちゃくて皮かぶってる。舐めがいがあるな」

「や、……あぁっ」

一気に舐め上げられた。厚い舌が、ぷっくりと膨らんだ陰核を皮ごと吸い上げ、唇の内側をぢゅるぢゅると啜る。とろけた蜜が、舌の付け根を伝って尻の割れ目へ流れていく。背後の男は、なおも乳房を揉みながら乳首をこね回し、耳たぶへ歯を立てる。前の男は結子の腰をしっかりと支え、舌を膣口へ突き入れた。ぬぷ、ぬぷ、と粘り気のある水音。閉じたはずの入口が、熱い肉でこじ開けられ、内側から掻き回される。

「奥のほう、きゅうって締めてきてる。もうこのままでも入りそうなぐらいにグチョグチョだよ」

指が二本、折り重なるように入り込む。くの字に曲がり、内壁のざらつく場所をゆっくりと押し上げる。結子の口から、細い声が途切れ途切れに漏れた。

「ん、……あ、ぁ……や、やめ、ぇ……」

「やめないでって言ってるみたいだな。腰、動いてるぜ」

指が引き抜かれ、また沈む。ぐちゅ、ぐちゅ、と下品な水音が部屋へ広がる。尾骨の奥から太腿の付け根まで、熱い水が波のように広がっていく。何かが、決壊しそうだった。くい、と指が引っ掛かり、入り口の内側のざらついた襞を押し擦られた瞬間、下腹の奥から熱い潮が噴き出す。

「──────っ」

目の裏で白い光が炸裂した。脚を大きく痙攣させ、腰が浮く。溢れた透明な液が、白いビキニと黒いシーツに飛沫を散らした。暖かい飛沫が、自分の腿を伝って床を濡らす。あ、止まらない。快楽が尾を引き、びくびくと全身を震わせる。男の舌が、まだ痙攣する花を舐め続ける。ぢゅる、ぢゅる。皮を剥かれ、敏感になりすぎた芯を舌先でつつかれるたび、結子は甘い、けれど苦しい声を上げた。

「いきなり吹いたな。段取りより早く仕上がってんじゃねえの」

三人の男の目が、笑い、再び冷える。結子は床に倒れるようにして肩で息をしていた。汗で濡れた白い肌。よだれと自分の潮で濡れた脚。穴開きビキニだけが、はりついて剥がれない。

「次は口だ。三本、順番にしゃぶってもらうよ」

男の一人が、すでに下着を脱ぎ捨てている。勃起したペニスは、青黒い血管を浮かせて上向きへ反り返り、亀頭からは先走りが光る。三人分の雄の匂いが、汗と消毒液の空気に混ざって、濃く、甘く鼻を刺した。結子はふらつきながら四つん這いになる。目の前に、一番大きな角刈りの男が立った。

「口は、しゃぶるんじゃなくて、咥えて奉仕するんだ。舌と喘ぎ声、たっぷり聞かせろよ」

亀頭を唇でくわえる。唾液でぬめる先端を、舌先でなぞる。逞しい幹を、両手で支えるようにしながら、口へ深く迎え入れた。鼻息がかかる。口の端から唾液が糸を引き、顎を伝って垂れた。こめかみの奥が熱を帯び、呼吸するたび、喉の奥が男の匂いで満たされる。別の男が後ろから尻を掴み、ビキニの穴をぐいと広げた。剃り上げた陰阜から垂れた蜜が、黒いシーツへ長く糸を引く。

三人のペニスを代わる代わる口に含み、時には二人分の亀頭を同時に唇で押し付け合い、舌を動かし続けた。目の前で震える男の太腿。頭の上で荒くなる呼吸。口の中はぬめって、熱くて、自分のものではない。与えるのではなく、与えられ、使われるための穴がそこにある。そう自覚するほど、胸の奥が痛むほど高鳴った。

「よし、次はいよいよ挿れるぞ」

監督の枯れた声。男たちが一斉に腰を引いた。

結子は仰向けに転がされた。背中に黒いシーツのざらつきを感じる。両脚を掴まれ、大きく左右へ割られる。カメラが脚の間へ滑り込む。白いビキニの股布が横へずらされ、花のように開いた女の入口が真正面から照らされた。男の一人が、結子の腰を抱え上げた。亀頭がぬかるみに触れる。

「入るぞ」

角刈りの男の声。太い熱。入口へ押し付けられ、ぐ、と圧力が加わる。ふわ、と腹の底が開いていく。ああ、これだ。私が欲しかったのは。結子の背中が弓なりに反った。押し入ってくる。ゆっくりと。ぬぶぶ。肉を割る音。次の瞬間、膣の浅い場所で大きすぎる先端が引っかかり、中の襞を引き伸ばしながら、さらに先へと——。

──挿入される、その直前。脚を大股に開いたまま、カメラが結子の顔をアップで捉えていた。

第5章 二十センチの圧迫と浣腸の栓

第5章のシーン

第5章: 二十センチの圧迫と浣腸の栓

突き入れられる、と思った瞬間、私の意識は一足先に白く弾けた。ぬちゅ、という音とともに亀頭がぬかるみを割り開いて、二十センチはある雄の肉が下腹の奥をどこまでも抉ってくる。膣という狭い空洞が、今まで知っていたどの男のものとも違う太さと長さに一息で塞がれて、息の仕方を忘れた。喉の奥から、押し潰された空気が一気に逆流する。

「あぐっ……、ぅ、ああああっ!」

肺の底から搾り出された悲鳴が、スタジオの黒い壁に跳ね返って自分の耳へ戻ってくる。太すぎる。深すぎる。ぬかるんでいたはずの蜜道が、雄の形に引き延ばされ、ぎちぎちと音を立てて締め付けた。白い太腿の内側の筋肉が痙攣して、床に投げ出した踝が浮き上がる。角刈りの男が、私の両膝を抱えるように持ち上げたまま、腰をさらに深く押し込んでくる。最奥の柔い場所を亀頭の先で突き上げられて、胃の裏が熱い塊になった。

「奥、まだ入りきってねえぞ。ここまで締まるなら、もっと奥まで押せるな」

男の声が、汗の匂いと一緒に降ってくる。私は何も返せず、ただ首を振ることしかできなかった。入りきっていない、その言葉の意味が怖いのに、身体の奥で何かが歓んで蠢いている。面接室でディルドーを咥え込んだ時とは比べものにならない。本物の男の熱と硬さが、私の一番深いところをこじ開けて、夫の何倍もの質量で存在を刻みつけてくる。ああ、これだ。私が欲しかったのは、この圧迫。腹の内側から満たされる、痛みに近い充足感。

男が腰を引く。ぬぽ、と臆面もない水音が立って、内壁が裏返りそうなほど吸い付いてくる。亀頭の雁首が膣口を通過する瞬間、ぶち、という音が耳の奥をくすぐり、次いで一息に突き入れられた。ぬちゅ、ぽちゅ、ぬぷっ。リズムが生まれるたび、自分の女の肉が雄の形にへばりついて、追い縋る。男の腹と私の恥骨がぶつかるたびに、剃り上げた恥丘の皮膚がぺたぺたと鳴った。つるつるの面に、男の硬い腹毛が擦れてぞわりとする。身体の一番繊細な部分が、剥き出しのまま他人の肉体と直接触れ合う。その感覚が、頭の芯を溶かしていく。

「はっ、あ、ひぁ……ん、抜け、ない……ぬけない……」

口をついて出た言葉の意味など、もう私にも判らない。抜けるたびに置き去りにされる空洞が寂しくて、突かれるたびに内臓を押し上げられる苦しさが快くて、脚を閉じたくても男の手が左右へ押し広げたまま離さない。視界の端で、カメラを持つ男が私の顔と結合部のアップを交互に撮っている。赤いランプ。点滅する光。見られている。太い杭で貫かれながら、泣き顔まで晒している。

角刈りの男が、突然、私の腰を抱え上げて、座り込むような体勢に私を引き起こした。上から落ちるようにして、雄をまるごと咥え込まされる。

「ひぃっ……あ、ああっ、奥、だめ、おく、当たってる、あたって……っ」

「当たってるんじゃなくて、お前が食いついてんだよ。ほら、腰動かせ。女のほうからも奉仕しろ」

男の腹部にしがみつくようにしながら、太い首に両腕を回す。汗で湿った筋肉の上で、自分の乳首がビキニの穴越しに擦れる。ぬめる衣装が乳房の形をわずらわしく挟んで、尖った肉が布からこぼれ出た。腰を揺らすたび、雄の幹が私の膣壁をこそげる。ぐぷ、ぶちゅ、ぬぷん。下から突き上げられ、上から潰れて、噴き出した汗が二人の腿を光らせる。白い肌に、男の汗が流れ落ちて混ざり合う。雄の匂い。私の汗。全部が混ざって、息をするたびに肺の奥までこの部屋の空気に犯されているみたいだった。

「あ……あ、また、おく、きちゃ……は、ひぅ、んっ、すご、い……」

角刈りの男の射精は、唐突に来なかった。ゆっくりと、確かめるみたいに最奥を数回えぐってから、膣内全体が爆ぜるような熱を放った。どぷ、どぷ、どぷ。腹の底へ、煮えたぎった精が打ちつけられる。その圧に、私の内壁が痙攣しながら応えた。びくびくと脚が跳ね、爪が男の背中を引っ掻く。白い太腿が、どろりと溢れかえった汁でてらてらと光っていた。

男が私の身体から抜くと、今度は別の男が後ろから私の尻を抱え、まだ硬い雄を膣へ突っ込んでくる。前の男の精液が潤滑になって、ぬぷん、と呆気ないほど滑らかに雄を呑んだ。

「あがっ……!」

伸び上がった喉。三人目の男が、私の口を塞ぐようにペニスを押し込んでくる。生温い肉と、しょっぱい雄の味。鼻で呼吸するたび、目の前の男の下腹の匂いが鼻の奥を焼いた。口と膣を同時に別々の雄で穿たれて、私は何も考えられなくなる。前から突かれ、後ろから揺さぶられ、膝が床に着いたかどうかもわからない。ぐちょ、ぬぷ、ぶちゅ、ぱん、ぱん。肉を打つ音と、水を掻き回す音だけが、世界のすべてになった。

三人が代わる代わる、私の膣へ入っては出て行く。ペニスが抜けた後の穴は、ぽっかりと開いたまま、縮むことを忘れてしまっていた。蜜と汗と精液が混ざった液が、剃り上げた恥丘を濡らし、太腿の内側を濃く白く流れる。穴の奥から溢れるものが、黒いシーツに染みを作って広がった。

「よし、一旦抜け。中出しぶちまけて、次のブツの用意してこい」

監督が無造作に告げる。男たちが腰を引いた。私は仰向けのまま、開いた脚を閉じることもできずに喘いでいた。脚の内側は、自分の体内から出た粘液と雄の精液でぐちゃぐちゃに汚れている。カメラが間近へ寄り、レンズが私の股座を舐めるように動いた。

「奥さん、今から三人続けて中に出しますからね。逃げないでね。カメラ、ちゃんと撮ってるから」

三人のうちの一人が、私の耳元で低く囁く。男たちは私を脚を開かせたまま床へ押さえつけ、順に挿入した。二十センチの巨根。太く反り返った肉。先走りを滴らせた亀頭。それぞれ形の違う雄が、私の膣内へ込めては抜き、込めては抜きする。やがて三人が短い雄叫びをあげて、立て続けに射精した。最初の男が膣の入り口近くへ、二人目が最奥へ、三人目が入り口ぎりぎりのところで抜いて、私の剃り毛のない白い恥丘へと精をぶちまけた。どぴゅ、どぴゅ、ぶりゅ。三本分の精液が混ざり合い、膣口から溢れ出る。白い泡だった精液。それが私の赤く開いた肉から、もこもこと湧き上がってくる。

「うあ……あ……おくまで、出てる……」

自分の下腹を手で押さえると、中の雄の精がぐぷりと音を立てて押し出されてくるのがわかった。カメラが、その瞬間を見逃さなかった。レンズが膣口の爛れた肉を大写しにする。泡立った精液の川が、私の尻の割れ目を伝って床へ垂れていく。身体中が他人の精液で濡れていた。手首を掴まれ、再び四つん這いにされた時には、私の中から言いようのない昏い悦びが芽吹いていた。

「本番はこれからだからな」

監督の無表情な声が落ちてくる。瞳はやはりどこを見ているのか定まらないのに、口元だけが薄く笑んでいた。何かが用意される気配がして、顔を上げると、見知らぬ道具が目に入った。大きなシリンダー。透明な管。真鍮のバケツも、すぐ横に置かれている。説明を聞くより先に、私の肛門がきゅっと窄まるのがわかった。今日の本番が、ここから始まるのだと身体が先に理解してしまう。

「浣腸からいくよ。まずは、お腹の中をきれいにしてもらおうか」

角刈りの男が、私の尻を両手で割り開いた。空気が肛門へ触れる。男の指が、窄んだ蕾の周りをぬるぬると弄る。シリンダーの先端が、入り口へ押し付けられる。冷たい。真鍮のバケツが、照明を受けて鈍く光っていた。

「力抜けよ。奥まで入れるからな」

「いや、あ、そこ、は……っ」

抵抗むなしく、チューブの先端が私の肛門へ押し込まれる。硬い器具が内側をこじ開け、奥へ、さらに奥へと進んでいく。異物感に息が止まり、背中が反り返る。角刈りの男が、私の腰を押さえつけながら、ゆっくりとシリンダーを押した。ぬるい液体が、私の腸の中へ流れ込んでくる。ぐぽ、ぼこ、と腹の奥で音がするほどの量だった。下腹が、内側からぎちぎちに膨らんでいく。苦しい。便意にも似た、しかしもっと鋭い排泄欲が、のたうち回るように押し寄せる。

「あ、や……おなか、苦し、い……も、無理、ぬいて、……ぁあ」

「まだ入る。全部入れてから栓するから、おとなしくしてな」

目一杯、という言葉の意味を、身体で思い知らされた。注がれた後、抜かれた管の代わりに、冷たい金属製のアナルプラグを捻じ込まれる。ぬち、と音を立てて栓が嵌ると、私はもうまともに蹲ることさえできなかった。お腹を抱えて前のめりになると、三人のうちの一人が、私の目前に硬く反り返ったペニスを突き出す。

「苦しいときこそ、口でも奉仕してろ。女の穴は全部使え」

私は泣きながら男のペニスを咥えた。喉へ押し付けられた熱い肉を、涙と唾液で濡らしながら舐め上げる。顎が外れそうなほど口を開け、最奥まで迎え入れるたび、臍の下の圧迫感が強まって、腸が内側から破裂しそうになった。腹の中で、浣腸液がどろどろと音を立てている。早くトイレに行きたい。でも、行かせてもらえるはずがない。カメラが、私の苦悶の表情と、涎を垂らす唇、そして尻に突き立ったプラグの金属光沢を、冷たく記録している。

「……おねがい、です……トイレ、いかせて、ください……もう、でちゃう……」

「誰に言ってるの? 行かせるわけないだろ。ここで出してもらうよ、バケツにな」

男の一人が、泣きじゃくる私の顔を上げさせ、口を拭ってやるように親指で唇をなぞった。目の前には真鍮のバケツ。薄暗い金色の、浅い容器。私はその上で四つん這いにされ、男の手が私の肛門の栓を掴む。

「出すときは、お前の一番恥ずかしい音、たっぷり聞かせろよ。お前の身体で一番汚いとこ、カメラに撮らせろ」

ぎゅぽ、と栓が引き抜かれる。一瞬の解放感。だが、全身の力が緩んだのはほんのわずかで、次の瞬間、腹の底から込み上げてきたものが、私の意志を完膚なきまでに引き裂いた。耐えられない。水みたいなものが、腸の内側を駆け下りて、発作的に噴き出していく。はじめは勢いよく、やがて固形になったものが蕩けて流れ落ちる。ぶりゅるる、ぷしゃあ、ぼたぼた、と背徳的な水音が自分の股下で止めどなく響いた。

「ああ……いや、撮らないで、見ないで……そんなのみないで……っ」

耳まで燃える。顔から血の気が引くほど羞恥に打ちのめされていた。大股を開かれたまま、人間が最も隠しておきたい生理の惨めさを、カメラの前で、三人の男の前で、真鍮のバケツに向かって晒している。汗と糞尿の匂いが鼻を衝いた。蒸れ酸っぱい自分の体臭まで混ざって、消えられない証拠のように部屋へ沈む。それでも男たちは、薄ら笑いを浮かべたまま私の身体を「モノ」のように扱う。一人が、私の後孔をぬるりと拭った。

「これで、奥まで使えるってもんだ。綺麗になったな」

綺麗なはずがない。だが、彼らにとって「綺麗」とは、排泄まで済ませて雄を受け入れる準備ができた穴を意味している。そう思うと、私の中の何かが、ぷつりと音を立てて掠れてしまった気がした。羞恥がまだ皮膚の下で熱を持っているのに、ぐちゃぐちゃにされた心の底から、もっと奥を求める声が聞こえた。

肛門へ、冷たい潤滑クリームがたっぷりと塗り込まれる。男の太い指が、窄みを解すように入り口をほぐす。先ほどまで便を漏らしていた穴が、今度は雄を受け入れるための肉筒へ変えられていく。これから犯されるのは、私のまだ誰にも使われたことのない場所。そこを、私は自分から差し出そうとしているのだろうか。頭が、心が、溶けた飴のようにぐずぐずと熱を帯びていた。

男優の亀頭が、肛門へ押し付けられた。刹那、めり、という鈍い音が、自分の身体の奥から響く。

「ひ……っ、あああっ!」

硬い雄が、私の今まで閉じていた肉の輪を、一気に突き破るように埋め込まれていく。痛い。痛いはずなのに、私はその痛みの先にある熱を、すでに待っていた。括約筋が、雄の幹を締め付けて離さない。私の意思とは関係のない場所が、男の形を覚えようと蠢いていた。

「アナル、すげえ締め付けてくる。最高だよ、奥さん。さあ、育ててやるから、自分から感じてみろ」

男が一気に腰を進める。私の背中が仰け反り、悲鳴なのか喘ぎなのかわからない声が洩れ続けた。めりめり、ぐぷ、ぬちゃぬちゃ。肛門が肉の管として使われるたび、私は自分の中の「女」の部分が、新しい器官を得ていくのを感じた。同時に、口には別の男のペニスを咥えさせられる。前も後ろも、男のもので埋め尽くされて、私は自分の輪郭さえ消えていくようだった。

調教はとどまることを知らなかった。バックから突かれながら、私の尻を討つ平手。鋭く、続けざまに鳴るスパンキング。白い臀部がふるえ、肉が揺れ、肌が熱を孕んで赤く腫れていく。痛い、苦しい、恥ずかしい、なのに腰が揺れる。雄の一突きごとに、尻の中が泡立つような感覚が生まれて、目の前がちかちかと明滅した。

「っ、あ、ああ、あ……! も、また、いく、いく、イク……っ!」

膣は空っぽのまま、アナルへの苦悶だけで私は絶頂へ引き上げられていく。体内の快楽が、排泄という最もみじめで、しかし最も深い感覚の記憶と繋ぎ合わさり、普通では到達できないような場所を開けさせていく。目の裏に星が散った。涎が口の端から落ちる。足の指がぎゅっと縮まり、腸が雄を咥え込んだまま痙攣した。男が低く唸って、私の直腸の奥へ精を放つ。どぷ、どぷ、と生暖かい奔流が、私の腹の中で弾けた。

男が腰を引くと、私の後孔から泡だった精液があふれ、太腿を伝って落ちた。尻の割れ目は、白い汚濁と汗と愛液で爛れ、真っ赤な臀部がぶざまに突き出されている。私はもう言葉を失っていた。男たちの命じるまま、残りの雄を後孔で咥え、順に射精された。意識が途切れそうなほどの絶頂が、波のように来ては返す。何度果てたのか、もうわからない。

収録終了の少し前、三人の男優が交代で私の全身を辱め、最後に角刈りの男がもう一度、私の膣へ雄を突き入れた。アナルと膣を代わる代わる犯され、顔と胸と腹と尻に、雄の精液を浴びせられる。剃り上げた白い恥丘も、今は幾筋もの白濁にまみれて濡れ光っていた。泡立った精液が、私の女の穴から溢れ、呼吸するたびに喉の奥が切なさと甘さで湿っていく。

「……よし、カット」

監督の合図。照明の熱が、じわりと私の火照り切った肌へまだ残っていた。私は仰向けで脚を開き、出されたままの淫らな姿で、動くこともできなかった。鼻の奥には雄の匂いと、自分の排泄の余韻、そして汗とも精液ともつかない濃い臭いが充満している。天井が、白く、熱く、溶けて滲む。身体はまだ男たちの熱を欲しがっていた。心が空白だった。

第6章 十万円と玄関の声

第6章のシーン

# 第6章: 十万円と玄関の声

照明が落ちても、天井の白さは目に焼きついて残っていた。床の黒いシーツに背中を押し付けたまま、私は開いた脚を閉じられずにいた。呼吸のたび、腹の内側で何かがまだ蠢いている。太腿の内側を伝う精液が、冷えて粘り気を増していた。

「はい、これ。拭くもの」

突き出された濡れティッシュを受け取る。冷たい刺激が指先から手のひらへ広がって、ようやく自分が裸のまま床に転がっていることを思い出させた。男たちの影が部屋の隅で動いている。機材を片付ける乾いた音、ケーブルの擦れる音。誰も私を見ていなかった。もう、誰も見ていない。それなのに、開いた脚を閉じることは、何か重いものを動かすことのように思われた。

ティッシュを太腿に当てると、乾きかけた白濁が筋になって拭き取られた。下腹を拭き、胸元を拭く。鼻の奥にこびりついた雄と排泄の混じった匂いが、ティッシュに吸い取られて薄まる代わり、露わになった肌が寒さを訴えた。会陰から後ろ孔にかけて、脈打つ鈍い痛みが残っている。浣腸の器具を抜かれてからも、腹の底は空っぽなのに何か詰まっているような違和感があって、座る姿勢に変えるたび、内臓が癖になった位置から戻らない。

服を着ろ、とは誰も言わなかった。言われるまでもなく、支度部屋から持ってきた自分の衣服を拾い上げ、白いシャツを袖に通す。いつもの下着が貼りつく感覚。胸の先はまだ腫れたように尖っていて、薄い布地を押し上げた。ロングスカートを腰で留めると、鏡の中の女はひとまず人間の形を取り戻していた。

「野沢さん」

監督が近づいてきた。首から笛を下げた痩身の影が、逆光の中からにじみ出る。手には茶色の封筒があった。

「今日のギャラ。他に何かあったら、また声かけて」

封筒は思ったよりも薄い。受け取ると、ざらりとした紙の肌触り。あんなに重い時間の対価が、こんなに軽い。中を覗けば、一万円札が十枚、輪ゴムもかけられずに重なっていた。十万円。夫と二人暮らしの生活費とは比べものにならないとはいえ、一か月のやりくりがようやく回る金額を、私は数時間で身体で換えた。

「……ありがとうございます」

掠れた声が出る。監視の目がこちらを向いた気配があったけれど、監督はすでに引き返して機材の箱を蹴っていた。私は封筒を財布に入れる。革の小銭入れの脇に折りたたんで差し込むと、財布そのものが急に重くなる。家を出る前、この財布には、私の「普通」が入っていた。今は違う。札の一枚一枚が、あのスタジオで私が失くした羞恥の重さを吸っている。

玄関を出ると、外は夕暮れの底が溶け出している色だった。六月の午後六時半すぎ。空は青から紫へ沈みかけ、アスファルトの熱気が足首へまとわりつく。駅までの道すがら、二度、三度と立ち止まった。膝が笑う。太腿の付け根にまだ男たちの指の形が残っていて、一歩ごとにトイレへ行きたくなる切迫感と、行きたくても出し切った後の虚しい痙攣が交互にくる。浣腸の水を出し切ったはずの腹が、夕立の跡の排水管みたいにぐぐ、と鳴った。

私鉄の改札を抜け、地下鉄へ乗り換える。ラッシュにはまだ僅かに早い車内。つり革へ伸ばした腕の下、脇腹から汗が滲む。窓に映る自分は、頬がくすぶり、目じりが溶けたように赤い。唇の内側に、あの角刈りの男の精液と自分の粘膜がまだ味わえる気がした。薄甘い。錆びた鉄分と、生乾いた布巾の匂いに似た苦さ。

駅の北口を出ると、空はさらに暗く細くなっていた。スーパーの自動ドアが開き、冷房が前髪を持ち上げる。買い物かごを手に取ると、かごのプラスチックが汗の手から滑りかけた。夕飯には何を作ろう。夫は味噌汁があれば喜ぶ。玉ねぎと豆腐と、あとは豚肉の切り落とし。エプロンを着けて料理をすれば、昼間の私など最初からいなかったことになる。

野菜売り場の蛍光灯が、薄い青緑の影を作っていた。玉ねぎの茶色い皮、豆腐の白いパック、豚肉の紅い筋。日常の色が、私の中の濁りを少しずつ上書きしていく。レジで釣り銭を受け取り、ビニール袋の提げ手を揃える。財布に折りたたんで入れた十万円を、ここでは出せない。いや、出してはいけない。あの札には、レシートでは済まない何かが染みている。

マンションのエレベーターに乗り、階数のボタンを押す。箱が上がるわずかな浮遊感に、胃の底がぞわ、と粟立った。扉が開くと、廊下の蛍光灯がうるさいほど白い。自室の鍵を回し、蹴り脱ぐようにパンプスを脱ぐ。真っ先に浴室へ入り、服を剥ぐように脱いだ。

シャワーを勢いよく出す。熱めの湯が首筋を叩き、肌を滑る。石鹸の泡が、お腹にこびりついた見えない膜を洗い流していく。顔を伏せると、排水溝から泡立った白い渦が音を立てて流れていた。もう二度と、あの白濁が自分の脚を伝うことはない。否、そう思いたいのに、下腹部の内側で、まだ痙攣の余韻が湧いてくる。湯に打たれながら、後ろ孔の窄まりを指で洗う。きれいにする、というより、あの痕跡を確かめている。浣腸の後の空っぽの奥が、指の腹を吸い付くようにひくついた。

体を拭いて、キッチンへ立つ。グレーのカットソーと、使い古した無地のスカート。髪を一つに結んでエプロンをする。味噌汁用の鍋に水を張り、中火にかけた。まな板に玉ねぎをのせ、根と頭を落とす。包丁の刃が繊維へ入っていく。かつかつ、と小気味よい音。皮を剥くと、象牙色の珠が露わになる。半分に割り、繊維に沿わせて薄切りにする。刃と板が触れる音だけが、静かな台所に満ちていく。昼間の叫び声をここへ持ち込まない。

玉ねぎを刻み終えると、目に沁みるので大きな欠伸が出た。豆腐を角切りにし、豚肉を一口大にする。味噌汁の鍋が湯気を吐きはじめ、鰹だしの香りが空気に色をつける。私はエプロンの胸元を握りしめ、しばらく黙って立っていた。湯気の向こうに、夫の笑顔があったらいい。あの人の「結子」は、こうして夕食の支度をしていた。私が知っている夫の妻は、たしかにここにいる。だが、私が今日、男優たちの手で何度も果てた女であることも、また事実だった。この二つの事実が、同じ額縁に収まらない。

油を引いたフライパンで豚肉を炒め、玉ねぎも加える。砂糖、醤油、生姜。焦げる甘辛い匂い。フライパンを揺すり、箸で肉を裏返す。豚肉が白く変わり、玉ねぎの角が透けて飴色になりはじめた。味噌汁の豆腐と薬味を加え、最後に味噌を溶く。大さじ一杯の赤味噌と、半杯の白味噌。味噌は曲がった匙からなめらかに溶けていき、だしに雲を吐く。

夕餉の支度に一区切りついた頃、食卓に皿を並べ、箸を三本置いた。二人分。茶碗に白米を盛る。湯気の立つご飯をしゃもじでよそう。炊飯器から上がる豊かな匂い。椅子に座った瞬間、尾てい骨から硬い衝撃が抜けあがって、後ろ孔の内側がじわりと痛んだ。鈍い痛みが、座面に触れた肉の輪を中心に消えない。心臓の真裏に小さな釘が刺さったままになった感じだった。

玄関のドアが開く。ガチャ、という金属音のあと、聞き慣れた男の声が玄関土間へ流れこむ。

「ただいまー。今日はすごい渋滞にはまってさ、バスが全然動かなくてびっくりしたよ」

私はキッチンから顔を出し、口元を笑ませて応じた。

「おかえりなさい。暑かったでしょ。ご飯できてるよ」

「ああ、ただいま。いやあ、ほんとに蒸し風呂みたいな帰り道だった。結子、夕飯は何を作ってくれたの?」

「豚の生姜焼きと、豆腐の味噌汁。あと、玉ねぎも入ってるよ」

「最高だ。腹へった。手、洗ったらすぐ食う」

夫は大きな声で笑いながら、ネクタイを外し、スーツの上着をソファの背に放り投げた。明るい茶色の瞳が、汗で額へ張り付いた前髪の下から満足げに揺れている。私は箸を並べ直し、夫が洗面所へ向かう後ろ姿を見送った。湯気の立つ食卓。生姜の香り。エアコンの冷気が息を吹き込む。

直人が席に着き、両手を合わせるより先にテレビのリモコンを取った。バラエティの笑い声が、部屋に溢れる。彼は箸を手にして、まず味噌汁を啜った。

「うまいよ。今日、味噌汁が身に染みる暑さだったんだ。会社の連中、この時期に外回りすると、みんな昼、コンビニの素麺ばっか食ってるんだよ。俺は違うけどな」

「そうなの。素麺、夏は楽だけど、直人は汁ものが好きだもんね」

「だろ。俺は朝も夜も味噌汁でいいくらいだ。あ、そうそう。聞いてよ、今日あの新人がやらかしてさ」

生姜焼きを頬張りながら、夫は身振り手振りで報告を始めた。職場の若手がパソコンのデータを上書きし、会議の資料を一から作り直したこと。誰も怒らず、逆に笑いに包まれたこと。直人の陽気な声音が、夕食の湯気とともに部屋の中を温める。私は箸で白米を口に運びながら、相槌を打ち、時折笑い、彼の湯飲みにお茶を注ぎ足した。話の中で、私の背にまっすぐ伸びる影は見えない。

「それでさ、結子。俺、明日は少し帰りが遅いかも。例の上司に飲みに連れてかれそうで」

夫はそう言って、骨付きカルビのような食べ方で生姜焼きを平らげた。私は湯飲みへお茶を注ぐ手を止めて、微笑む。

「いいよ。あんまり無理して遅くならないようにしてね。帰りが遅いなら、夕飯は軽くしておく」

「うん、事前に連絡するよ。ああでも、結子、今日は風呂が俺が先で構わない? 汗がすごくて」

「お先にどうぞ。片付けは私がしてるから」

二人の間に流れる、据わりのよい会話。けれど私は、豚肉を摘まむ箸先を見つめながら、夫の身体の線を無造作に重ねていた。彼の節ばった手首。ズボンの下の穏やかな膨らみ。あの陽気な唇が、私の知らない会話を繰り返し、私の知らない一日を生きたように、私も彼の知らない場所で別の呼吸をしてきた。

食後、夫がソファへ移り、ビールを一口飲むうちにまぶたを伏せていく。カタン、とグラスがローテーブルに置かれ、午後八時を過ぎた。私は食卓の椅子に浅く腰かけ、味噌汁の残りを片付ける手つきで、こっそり夫を眺めた。仰向けに首を預け、鼻から抜ける寝息。陽気な夫の寝息。朝方まで生温かい毛布のように私を包んでくれる音。その音と、昼間の男優たちの呼吸が、時間差で耳の奥にぶつかってくる。

「 … …」

何か言おうとした唇が、結局、動かなかった。言えるはずがない。十万円の入った財布は、今、かごの中ではない。私の部屋の、一番奥の引き出しに隠してある。まだどこにも使っていない、ぐちゃぐちゃの紙幣。汚れてもいないのに、素手では触りたくない紙。

夫の枕元へ行き、毛布をかけてやる。薄い夏用のフリース。肩を包んで、襟元を整え、しわを伸ばす。指先が彼の耳に触れた。熱い。生きている。私の帰る場所が、ここにある。目の前で眠る男の、何も知らないあけすけな信頼が、背中を焼く。私は笑っている。うまく笑えている。指先を引っ込め、食器を流しへ運ぶ。

蛇口を捻り、泡立てたスポンジで皿を洗う。洗い物をしながら、股の奥がまだ重くて、立っているのがやけに遠い。スカートの下で剃り上げた肌が、下着にこすれて、洗練された淫らな感覚をぶり返そうとしている。だがもう、あの濡れは私のものではなくなった。夫の前で、私はいつも以上に明るく、いつも以上にやわらかい声を出すだろう。そうしなければ、体の底に溜まった、言葉にできない熱が、どこかから溢れ出てしまいそうだから。

食卓に戻り、バラエティの音を小さく絞る。夫の寝息が、部屋の中心で周期的に満ち引きしていた。私は湯のみの持ち手を指でなぞる。椀の中の味噌汁の渦は、あの白い泡立ちを薄めてくれた。台所の隅のゴミ袋には、ピーマンの種と玉ねぎの皮が包まれていた。夕飯の支度で出たものと同じように、今日という日のことを棄てられたら良かった。

けれど棄てられない。私は、強く生きている自分を知ってしまった。疼く身体を抱えたまま、私は食卓の椅子に座り、夫の寝息を聞いている。聞き慣れた音。いや、聞き慣れた音でなければ、私は立っていられない。十万円と玄関の声。私の身体には、入れた男の熱がまだ残っている。それを誰にも言わず、私は今夜、夫の隣で目を閉じるだろう。また、別の私を抱いたままで。

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読み終えたあとの余韻に。

OVA 夏妻 #2 を FANZA で見る →
登場人物
  • 野沢結子 のざわ ゆうこ
    女性 ・ 32

    外見: 肩甲骨までの黒髪を緩くまとめた結い髪、焦げ茶の瞳、白くて触れると冷たいほど滑らかな肌、小柄で華奢な体格、控えめだが上向きの乳房。服装: 生成りのリネンワンピースに白いコットンのエプロン、室内ではグレーのカットソーと無地のロングスカート。夫には満足していないが夫を嫌ってはいない。マゾ気質を自認し、モノ扱いされる妄想を抱く。日常では穏やかで従順、撮影の場では命令に従い絶叫と懇願を漏らす。

  • 野沢直人 のざわ なおと
    男性 ・ 38

    外見: 短く整えた黒髪に生え際の後退、明るい茶色の瞳、中肉中背で腹が少し出てきた体格、日に焼けた首筋。服装: 紺のスーツにクリーム色のワイシャツ、休日はポロシャツとチノパン。陽気でおしゃべり好き、職場の話を楽しそうに喋る。妻の変化に気づかない。セックスは小さなペニスで早漏、終わるとすぐ寝息を立てる。

  • 面接官 めんせつかん
    男性 ・ 45

    外見: オールバックにした黒髪に白髪混じり、細い銀縁眼鏡の奥の黒い瞳、痩せて肩幅のある体格、長い指。服装: 黒いVネックセーターにチャコールのスラックス。声音は低く抑揚が少ない。結子のマゾ気質を一目で見抜き、淡々と命令を重ねる。時折、観察するように沈黙する。

  • 男優A
    30

    外見: 角刈りの黒髪、濃い焦げ茶の瞳、筋肉質でがっしりした体格、二十センチはある太いペニス。服装: 黒いタンクトップにジーンズ、撮影時は全裸。口数は少なく、結子の身体を褒める台詞も淡々と告げる。最初に挿入し、圧迫感で結子を絶叫させる。

  • 監督 かんとく
    男性 ・ 50

    外見: 白髪混じりの長髪を後ろで束ねた、焦点の定まらない灰青色の瞳、小柄で猫背の体格。服装: グレーのパーカーに色褪せたジーンズ、首から下げた笛。撮影進行の合図を簡潔に出す。「ここで、いちど射精しとくか」「本番はこれからだ」と淡々と告げる。

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