第2章: 雨の日の招待
第2章: 雨の日の招待
窓の外では、雨がざあざあと降り続けていた。
午後になっても止む気配のない雨に、徹は朋美の家のリビングで退屈そうに漫画をめくっていた。週末の計画していた野球も流れ、ただ時間が過ぎていくだけの午後だった。
「ねえ、徹くん」
隣で折り紙をしていた朋美が、ふと顔を上げた。
ショートカットの黒髪が頬にかかり、ぱっちりとした黒目がきらりと光る。半袖のタンクトップから伸びた細い腕を組んで、彼女はいたずらっぽく笑った。
「面白いもの見せてあげようか?」
徹は首をかしげた。
「面白いもの?」
「うん。でも……絶対に誰にも言っちゃダメだよ。お父さんとお母さんに内緒のものなんだ」
朋美はそう言うと、ちゃぶ台の下からごそごそと何かを取り出した。それはビデオテープで、ラベルには外国語の文字がびっしりと書かれている。
徹の胸が、わずかに高鳴った。
――なんだろう、これ。
知らない世界の匂いが、そのテープから漂ってくるように感じた。大人たちが隠すもの、子供には見せないもの。そんな予感が、幼い心臓をそっと掴んだ。
「いいの? これを見て」
「だいじょうぶ。だって、私も一度だけこっそり見たことあるから」
朋美はいたずらっぽくウインクすると、テープをビデオデッキにセットした。機械がごそりと音を立て、テレビの画面にざらついたノイズが走る。
徹は息を潜めた。
雨音が遠のき、耳の奥で自分の鼓動が響くのがわかった。
画面のノイズが収まり、ぼんやりとした映像が映し出された。古びたキッチンで、ブロンドの女性が流しに向かって立っている。蛍光灯の青白い光が、彼女の肌を不自然に浮かび上がらせていた。
「これ……外国の映画?」
徹が小声で聞くと、朋美は唇に人差し指を当てた。
「しーっ。もっと近くで見なよ」
彼女は徹の腕を引っ張り、ちゃぶ台にもっと身を寄せた。その瞬間、朋美の肩が徹の腕に触れ、温もりが伝わってきた。
徹はどきりとした。
朋美は普段から活発で、体を触れ合うことも多い幼馴染だ。でも今、その肌の感触がなぜかいつもより強く胸に響く。
画面では、女性が振り向いた。そしてドアから黒人の男性が入ってくる。二人は何か言葉を交わしているが、外国語なので意味がわからない。
でも、その会話の調子から、何かが起こりそうな気配が伝わってきた。
男性が女性に近づき、手を腰に回す。女性は少し抵抗するような仕草を見せたが、すぐにその腕を受け入れた。
「うわ……」
徹は思わず声をもらした。
男性が女性の服を乱暴に脱がせ始めたのだ。ブラウスのボタンがはじけ、白い乳房がのぞく。
――あれは、お母さんのとも違う。
母親の入浴をこっそり覗いたことはあった。でも、あれはぼんやりとした影で、これほどはっきりと形が見えるものではなかった。
画面の中の乳房は、大きくてふくよかで、先端が濃いピンク色をしていた。男性の黒い手がその上に覆い被さり、ぎゅっと握りしめる。
「あっ……」
今度は朋美のほうから小さな息づかいが漏れた。
徹は横目で彼女の様子をうかがった。朋美は画面に釘付けになり、唇をわずかに開けている。頬がほんのり赤く染まり、胸のあたりが速く上下していた。
自分の胸の奥でも、同じように鼓動が早まっているのがわかった。
映像はさらに進んでいった。
女性は完全に上半身を裸にされ、男性にベッドへと押し倒される。スカートがめくり上げられ、下着も脱がされていく。
そして──ついに、二人の体が重なり合う瞬間が来た。
男性がズボンを下ろし、巨大な黒いものが現れた時、徹は目を見開いた。
「で、でかい……」
思わず呟いてしまった。
それはこれまで見たこともない大きさで、血管が浮き出て、先端がむき出しになっていた。まるで別の生き物のように、威圧感すら感じさせる。
朋美が小さく息を吸い込んだ。
「ほら……あれが、男の人のあれなんだよ」
彼女の声はかすかに震えていた。吐息が徹の耳元にかかり、温かく湿った感触が伝わってくる。
徹はその吐息に背筋がぞくっとした。
画面では、男性がその巨大なものを女性の股間に押し当てていた。女性は顔を歪め、痛そうな声をあげている。でも、その声にはどこか甘ったるい響きも混じっていた。
ぐちゅっ、と水っぽい音がスピーカーから流れた。
男性の腰がぐいっと押し出され、黒い肉棒が女性の体の中に沈み込んでいく。
「入った……」
今度は朋美が呟いた。
彼女の声は、驚きと興奮が入り混じっていた。徹は思わず彼女の手を見た。ちゃぶ台の上に置かれた彼女の細い指が、こぶしをぎゅっと握りしめている。
自分の手も、知らないうちに膝の上で固く握られていた。
映像は残酷なほどに生々しかった。
男性の腰が前後に動き、そのたびに女性の体が揺さぶられる。結合部からはねっとりとした音が響き、女性の喘ぎ声が部屋中に溢れていた。
徹は息を詰めて見つめていた。
――ああやって、男と女はくっつくんだ。
頭では理解できなかった。でも、目の前に広がる光景は紛れもない現実だった。肉体と肉体が絡み合い、汗を光らせて動き続ける。
ふと、横にいる朋美の存在が気になった。
徹はゆっくりと顔を向けた。
朋美は相変わらず画面を見つめていたが、その頬はより赤く、唇は潤んで光っていた。ショートパンツから伸びた太腿が、かすかに震えているように見えた。
――朋美も、女の人なんだ。
その考えが、胸の奥で熱く膨らんだ。
テレビの中の女性の体と、目の前の朋美の体が、頭の中で重なり合っていく。朋美のショートパンツの下にも、あんなふうに割れ目があるのだろうか。もし触れたら、どんな感触なんだろう。
「ねえ、徹くん」
突然、朋美が声をかけた。
彼女は画面から目を離さずに、小声で続けた。
「こういうのって……気持ちいいのかな」
徹は答えに詰まった。
知らない。わからない。でも、画面の中の女性の声は、確かに苦しそうなだけではなかった。どこかとろけるような、甘い響きが混じっている。
「僕……わかんない」
「私もわからない。でも……」
朋美は一度言葉を切り、深く息を吸った。
「なんか……ドキドキするよね」
彼女がそう言うと、今度ははっきりと腰を揺らした。ショートパンツの布地が太腿に擦れ、かすかな音を立てる。
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