第8章: 現在の渇き(続き 2/2)
いつものことだ。
射精した後のこのむなしさ。全てが空っぽになる感覚。
スマホの画面はまだ点いていて、無音になった動画がループしている。男と女は、もう他人の顔に戻っている。
徹はゆっくりと起き上がり、ティッシュで身体を拭った。
汚れたシャツを脱ぎ、ゴミ箱に投げ込む。
そしてまた、ベッドに横たわる。
――なぜ、俺は……。
美咲の顔が浮かぶ。彼女は確かに、現実の女性だった。真面目で、好印象で、結婚を望んでいる。
それなのに。
徹の心は、微塵も動かなかった。
目を閉じると、また朋美の顔が浮かんでくる。十二歳の、あどけない横顔。頬を赤らめ、黒目を輝かせている。
――あれから、三十年以上。
――なのに、俺はまだ……。
突然、衝動に駆られる。
徹はスマホを手に取り、検索バーを開いた。
指が震えながら、文字を打ち込む。
『山田 朋美』
検索ボタンを押す。
何百というヒットが表示される。同姓同名の他人たちのプロフィール。SNSのアカウント。ブログ。
徹はそれらを、一つ一つスクロールしていく。
顔写真がないアカウントはスキップする。年齢が合わないものは除外する。
心臓が高鳴る。
もしかしたら――。
もしかしたら、彼女もどこかで、あの日のことを覚えているかもしれない。
そんな浅はかな期待が、胸の奥でちらつく。
画面をずっと下へ、下へとスクロールさせる。
窓の外は、夕暮れのオレンジ色に染まっていた。
コメント