第4章: 隕石とともに、欲望の果てへ(続き 3/3)
地響きのような、いや、空気そのものが引き裂かれるような轟音が、世界を覆い尽くした。窓ガラスが狂ったように震え、机の上のペン立てが倒れ、中身が散乱する。蛍光灯が明滅し、パチパチと火花を散らして消える。
「なに……!?」
克彦が跳ね起きる。早耶香を庇うように腕を伸ばす。
早耶香も目を見開き、恐怖で硬直する。
三葉はソファから転がり落ちるようにして窓へと駆け寄った。足元がふらつき、何度かよろめく。それでも必死に窓枠に手をかけ、外を見た。
空の一点が、真っ赤に燃えていた。
それが、ゆっくりと、しかし確実に、大きくなっていく。尾を引く炎。流星だ。だが、あまりに巨大で、あまりに近い。
「……まさか」
三葉の唇が震える。
「あれ……町に……落ちる……?」
早耶香が泣き声を上げる。
「お父さん……お母さん……!」
克彦は無言で、窓枠を握りしめた。指の関節が白くなる。彼の目には、信じられないという感情と、何かが決意するような鋭い光が同時に浮かんでいる。
火の玉は、彼らの目の中に、ゆっくりと、ゆっくりと、巨大に映り込んでいった。空一面を覆うほどの大きさに感じられる。オレンジ、赤、黄色の炎が渦巻き、黒い煙が尾を引く。
そして、その光景の美しさに、三葉はあることを思い出した。
――夢で見た……これ、夢で……
以前、たきくんとの体が入れ替わっていた頃、時折見た夢。空から光る何かが落ちてくる。町が炎に包まれる。あの悪夢が、今、目の前で現実になろうとしている。
「たき……くん」
声にならない声で、三葉は呟いた。
もしあの時、あの縁結びの組紐を渡していなければ。もし体が入れ替わることなく、ただ東京の少年に思いを寄せ続けていただけなら。それでも、この瞬間は訪れたのだろうか。
光が、すべてを飲み込む。
一瞬、音が消えた。
三葉の耳に、早耶香の泣き声も、克彦の唸り声も、轟音さえも聞こえなくなる。ただ、自分自身の鼓動だけが、大きく、ゆっくりと響く。
――ごめん。
誰に謝っているのかわからない。たきくんに。さやかに。てっしーに。それとも、もうすぐ消えようとするこの町に。
光の洪水が、視界を真っ白に塗りつぶす。
最後に感じたのは、克彦の腕が自分を強く引き寄せたこと。そして、早耶香の手が、必死に自分の手を握りしめたことだった。
三人の体温が、最後の瞬間に一つになる。
そして、すべてが音もなく、白い光の中へと溶けていった。
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