第5章: 「あなた、何をしてるのっ!」(続き 2/2)
その背中は、何年も前に、自分を抱きしめてくれたあの温もりを、すっかり失っていた。
「あ……ああ……神様……」
雅子の膝が、完全に力を失った。
彼女はゆっくりと床へと崩れ落ち、買い物袋を放り出した。
中の野菜や缶詰が、床に散乱する。
「なんで……なんでこんなことに……」
嗚咽が、肩を震わせた。
これまでの人生で積み重ねてきたすべて――子供ができなかった悲しみ、それでも夫と築いてきた平穏、そして里親として迎え入れた希望。
すべてが、この一瞬で木っ端微塵に砕け散った。
「おばさん、泣かないで」
優菜は、慈しむような口調で言った。
「だって、これで家族になったんだよ。おじさんが優菜の中に、赤ちゃん作るためのいっぱい出してくれたんだから。きっと、優菜、赤ちゃんできちゃうかも」
「……は?」
雅子が、ぼんやりとした目を上げた。
「そしたら、もっと本当の家族になれるでしょ? おじさんと優菜の赤ちゃん。おばさんも、おばあちゃんになれるよ」
「や……やめろ……そんなこと……」
孝雄が、ようやく動いた。
彼は優菜の体内から陰茎を引き抜くと、その場にうずくまるようにして床に降りた。
勃起は萎え、陰茎は白濁液で汚れ、無様に垂れ下がっていた。
「雅子……雅子……すまない……本当にすまない……」
彼は這うようにして妻に近づき、その足元に額を擦り付けた。
「俺が悪い……すべて俺が……あの子を……あの子を止められなかった……」
「止められなかった?」
雅子の声は、氷のように冷たかった。
「あなたは……あの子の上に乗って……腰を振って……中に出したんでしょ?」
「そ……それは……だが……」
「『だが』なんてないわ」
雅子はゆっくりと立ち上がった。
彼女の目には、もう涙はなかった。
そこにあったのは、すべてを諦めたような、深い虚無だけだった。
「あなたは、私の夫じゃない。あの子を犯すような男は、私の夫じゃない」
「雅子……!」
「そしてあなた」
雅子の視線が、ベッドの上の優菜に向けられた。
優菜はまだ仰向けに寝たままで、股間を広げていた。
孝雄の精液が、彼女の膣口からとろりと溢れ出し、内腿を伝って流れている。
「あなたは……私の娘じゃない。こんな残酷なことをする子は……私の娘じゃない」
「でも、おばさん」
優菜は無邪気に首をかしげた。
「優菜、何も悪いことしてないよ。ただ、気持ちよくなりたかっただけ。おじさんも、気持ちよくなりたかっただけじゃん」
その言葉が、最後の一撃となった。
雅子は静かに振り返り、部屋を出ていった。
ドアを閉める音も、何もなかった。
ただ、彼女の足音が階段を下りていく音だけが、静かな家の中に響いた。
孝雄はその場にうずくまったまま、動けなかった。
床に散乱した買い物の品々、ベッドの上で精液に汚れた少女、そして去っていった妻の背中。
すべてが、彼の人生の終わりを告げていた。
優菜はゆっくりとベッドの上に坐り直した。
彼女は自分の股間に手をやり、ぬるぬるとした液体を指先ですくい上げた。
それをじっと眺めると、そっと舌先で嘗めた。
「ん……おじさんの味……」
彼女は満足げに微笑んだ。
窓の外では、夕暮れが近づいていた。
家族という名の檻は、音もなく崩れ落ち、三人をそれぞれの孤独の中に解き放った。
そして誰も、もう元の場所には戻れないことを、この家に残された二人は、深い沈黙の中で理解していた。
コメント