第4章: 日常に溶け込んでいく、ヴェールでの生活

第4章: 日常に溶け込んでいく、ヴェールでの生活
オークションの夜から一週間が過ぎた。
智美は大学の講義でノートを取っていた。経済学の教授の声は耳に入ってくるが、頭には残らない。手元の振込明細の数字が、ちらちらと視界の隅に浮かんでくる。母の口座に振り込んだ残額。自分の口座に残った金額。あの紳士の顔ではなく、あの札束の感触だけが、皮膚の奥にこびりついていた。
――もう、戻れない。
その言葉には、最初ほどの絶望も悲壮感もなかった。ただ、事実としてそこにある。ヴェールの舞台で脚を広げ、見知らぬ男たちに股間を覗き込まれたあの瞬間から、普通の女子大生である目黒智美と、ヴェールのさとみは、別の生き物になったのだ。
「智美さん、今日のバイトある?」
同じゼミの女子が声をかけてきた。優しく、何も知らない瞳。
「うん。ちょっと遅くまでになりそうだから、先に帰るね」
智美は作り笑いを浮かべて答える。その顔は、鏡で何度も練習したものだ。穏やかで、少し疲れた様子の、良い娘の顔。母に見せる顔と、同学に見せる顔は、同じ型から作られていた。
ヴェールに着くと、空気が変わった。
甘ったるい香水と、酒と、男の体臭が混ざった熱気が、肌を包む。紫織が、真紅のレースのガーターストッキングと、乳首が透けて見える黒いネットのボディスーツ姿で待っていた。
「おかえり、智美ちゃん。今日のステージ、覚えてる?」
紫織の声は、いつものように明るく、どこか底に艶やかな毒を含んでいる。
「放尿……ですよね」
智美は小声で答える。喉が渇いていた。涼から指示された通り、夕方から水をがぶ飲みし、トイレに行くのを我慢している。下腹部は重く、膀胱がじんわりと疼いていた。
「そう。初めてでしょ?緊張するわよね。でも大丈夫、客はみんな、優しいから」
紫織は智美のほほを軽くつまんだ。その指先は冷たかった。
「ただね、智美ちゃん。おしっこを我慢してる時の顔、すごくエロいのよ。もじもじして、腿をすり合わせて……ああ、もう自分でも気づいてるでしょう?あそこ、濡れてきてる」
智美は顔を赤らめた。紫織の言う通りだった。恥ずかしさと、我慢のストレスと、どこか期待のようなものとが混ざり、股間はじっとりと汗ばみ、パンティーは陰唇の形に張り付いていた。
舞台袖で、涼が立っていた。
黒いスラックスに、袖まくりしたシャツ。銀髪が暗がりで鈍く光る。彼は智美を一瞥し、微かにうなずいた。
「客は満席だ。高額なチップを期待している者も多い。恥ずかしがらず、たっぷりと見せてやれ」
その言葉は、命令でもあり、励ましでもあるような、曖昧な調子だった。
智美はうなずくしかなかった。さっきまで着ていた大学のカーディガンとスカートは、ロッカーにしまってある。今から着るのは、腰までしかない透ける白いサロペットと、それすらも意味をなさないほど小さな白いパンティーだけだ。
スポットライトが浴びせられる。
客席から、どよめきが起こった。智美は舞台中央の椅子に座らされる。その椅子は、ただの椅子ではない。座面には丸い穴が開いていて、その下には透明なアクリルの器が設置されている。
――見られる。全部、見られる。
鼓動が耳朶で鳴る。紫織がマイクを持って現れた。
「皆さま、本日はヴェールの新星、さとみちゃんに、特別なプレゼントをしていただきます。たっぷりと水分を摂り、我慢に我慢を重ねた、清楚な女子大生の……熱い放尿ショーでございます!」
拍手と野次が飛び交う。智美は椅子に深く座り、腿を開く。サロペットの裾は十分に短く、白いパンティー越しに、陰毛の生え際と、陰唇の膨らみがはっきりと客に見えている。
「さあ、さとみちゃん。お客様が待ってらっしゃるよ」
紫織の声が、優しく背中を押す。
智美は目を閉じた。下腹部に力を込める。我慢の限界だった。最初はチョロチョロと、恥ずかしいほどの細い流れが、パンティーを伝わり、アクリルの器に落ちた。音は、静かな室内に響く。
「おおっ!」
客席から歓声が上がる。その声に押されるように、智美の身体が緩んだ。我慢していたものが、一気に解放される。ぐしゃっ、と水音がして、白いパンティーはたちまち黄色く染まり、腿を伝って滴り落ちる。透明な器には、温かい液体が勢いよく注がれ、泡立つ。
恥ずかしさ。でも、それ以上に、我慢を解放した安堵が、身体を熱くした。股間はぐしゃぐしゃに濡れ、客の視線がその恥ずかしい局部を、貪るように見つめている。智美はうつむいたまま、自分のおしっこが器に溜まっていくのを、ただ見つめていた。
終わった時、身体はくたくただった。しかし、客席からはさらなる拍手が起こり、舞台脇からはスタッフが駆け寄り、器を持ち上げて客に見せて回る。黄色い液体が揺れる。
「おめでとう、智美ちゃん。大成功よ」
紫織がタオルを差し出し、智美の濡れた腿を拭いてくれた。その動作は、母のようでもあり、どこか卑猥でもあった。
「これ、チップ」
紫織は、客から直接渡された札束を智美の手に握らせた。まだ温かい。湿ったパンティー越しに、智美は自分の股間が、またじんわりと熱を持つのを感じた。
あの夜から、流れは加速した。
放尿ショーの次の週は、アナルビーズだった。
舞台の上で、うつ伏せにされ、腰を高く上げさせる。紫織が潤滑油をつけた指で、智美のまだ硬い肛門の縁をぐりぐりとほぐす。
「んっ……!」
「大丈夫、すぐに慣れるから。三本だけ、入れていくね」
細いビーズが、一つずつ、ずぶりずぶりと、締まった肛門の襞を押し広げて入っていく。異物感。しかし、油の滑りと、紫織の巧みな指さばきで、痛みよりも、奥まで埋められる変な充実感が先に立った。
三本目が根元まで入った時、智美は思わず息を詰めた。腸の内壁が、連なったビーズの形に押し広げられる。客席からはため息混じりの歓声が聞こえる。
「さあ、お客様。どなたか、このビーズを抜いて差し上げましょうか?一番大きいのを、一番最後にね」
男たちの手が挙がる。智美は顔を紅潮させてうつ伏せのまま、誰かが見知らぬ男の手が、自分の肛門に触れるのを待った。
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